JP4765242B2 - 錠剤、その製造方法およびそれから得られる成形品 - Google Patents
錠剤、その製造方法およびそれから得られる成形品 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性(計量性)に優れた錠剤、さらに強度にも優れた錠剤、その製造方法およびそれから得られる成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、デザインの多様化から、成形品の形状の自由度が要求されるようになってきた。しかし、従来使用していた金属では成形品の自由度に限界がある。そこで、金属代替のため、フィラー強化熱可塑性樹脂で検討が行われている。例えば、熱伝導性、電磁波シールド性、高温時の寸法精度をはじめとする各用途で必要とされる特性が従来のフィラー強化熱可塑性樹脂では満足されず、限りなくフィラー単体に近い特性が要求されるようになってきた。
【0003】
また、上記ニーズに対し、フィラー単体では、フィラー同士が接合せずに脆い材料しか得られないか、あるいは熱硬化性樹脂を用いた場合、成形加工性、生産性が良好とは言えない。また、フィラー強化熱可塑性樹脂において多量のフィラーを充填しようとする場合、通常の溶融混練方法では限界があり、必要特性に見合うまでの十分な高充填化材料の取得は難しかった。
【0004】
フィラー高充填配合組成物の取得方法として、押出機のヘッド部を解放した状態で混練・押し出すことを特徴とする製造方法(特許文献1)、オレフィンのフィラー高充填組成物の取得方法として不飽和炭化水素とα,β−不飽和ジカルボン酸無水物との反応生成物またはその水素添加物とネオペンチルポリオールと飽和または不飽和脂肪酸との部分エステル化物を配合することにより、押出特性等を改良する方法(特許文献2)が提案されており、また、熱可塑性樹脂にエポキシ樹脂を配合した組成物が、例えば特許文献3に開示されている。
【0005】
また、熱可塑性樹脂にフィラーを高充填する方法として特許文献4にその手法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の方法では混練時にダイを外していることから、混練時に押出機バレル内の圧力が上がらないために十分に熱可塑性樹脂とフィラーが混合せず、得られた組成物中で組成バラツキがおき、それにより特性バラツキ大きくなる可能性がある。また、特許文献2記載の方法は、各成分を2軸押出機を用いて配合するものであり、フィラーの充填量には限界がある。また、この技術を特にナイロンをはじめとするエンプラで高充填組成物に転用しようとしても、高充填により低下する流動性を改良するため、押出機のシリンダー温度を高くする必要がある。すると、押出時に一部熱分解が始まり、さらに射出成形の時にシリンダー内での滞留により添加剤の分解が促進してガスが発生するため、計量性が不安定で成形品重量および外観をはじめとする成形品特性にばらつきが大きくなる恐れがある。
【0007】
また、特許文献3には、特定のポリアリーレンサルファイド樹脂にエポキシ樹脂を配合した組成物が開示されているものの、その効果は溶融粘度を安定的に増加せしめるものであり、フィラーと共にビスフェノール型エポキシ樹脂とネオポリオールエステルを併用配合することにより、優れた溶融流動性と機械強度のバランスが得られることについては何ら開示されていない。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−1663号公報(第2頁、実施例)
【特許文献2】
特開2002−60556号公報(第2頁、実施例)
【特許文献3】
特開昭59−51944号公報(第4頁、実施例)
【特許文献4】
国際公開第02/94529号パンフレット(第3頁、実施例)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上述の問題を鑑み、解消すること、即ち、溶融加工が可能で用いるフィラーの特性を高効率に発揮することをも可能とした成形性(計量性)に優れた錠剤、かかる特性に加え、さらに強度にも優れた錠剤、その製造方法および成形品を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
【0011】
すなわち本発明は、
(1)(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーの組成比が(a)熱可塑性樹脂5〜30重量%、(b)フィラー95〜70重量%である(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーの合計量100重量部に対し、(c)ネオポリオールエステル0.1〜10重量部を固相状態で均一にブレンドした混合物を打錠機により錠剤化した錠剤、
(2)さらに(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーの合計量100重量部に対し、(d)下記構造を有するビスフェノール型エポキシ樹脂を0.1〜10重量部配合してなる上記(1)記載の錠剤。
【0012】
【化2】
【0013】
(ここでR,R’は水素、または炭素数1〜10のアルキル基であり、RとR’は同じでも異なっていても良い。またnは上記繰り返し単位数の平均値であり、その範囲はn=0〜30である。)
(3)(a)熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂、非液晶性ポリエステル樹脂、液晶性ポリエステル樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂から選ばれた1種または2種以上である上記(1)または(2)記載の錠剤、
(4)(b)フィラーが繊維状、板状または鱗片状である上記(1)〜(3)いずれか記載の錠剤、
(5)(a)熱可塑性樹脂、(b)フィラーおよび、(c)ネオポリオールエステル、および所望により(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂を固相状態で均一にブレンドした混合物を打錠機により錠剤化することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の錠剤の製造方法、
(6)上記(1)〜(4)のいずれか記載の錠剤を溶融成形してなる成形品である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。なお本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0015】
本発明において(a)熱可塑性樹脂は、成形加工できる合成樹脂のことである。
【0016】
その具体例としては、例えば、非液晶性半芳香族ポリエステル、非液晶性全芳香族ポリエステルなどの非液晶性ポリエステル樹脂、液晶ポリマー(液晶性ポリエステル樹脂、液晶性ポリエステルアミド樹脂など)、ポリカーボネート、脂肪族ポリアミド、脂肪族−芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドなどのポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、フェノキシ樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる(“/”は共重合を表す。以下同じ)。
【0017】
上記非液晶性半芳香族ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの共重合ポリエステル等が挙げられる。
【0018】
また、ポリアミド樹脂の具体例としては、例えば環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン4・6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、ポリ(メタキシレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)などの脂肪族−芳香族ポリアミド、およびこれらの共重合体が挙げられ、共重合体として例えばナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)などを挙げることができる。なお、共重合の形態としてはランダム、ブロックいずれでもよいが、ランダムが好ましい。
【0019】
また、液晶ポリマーとは、異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、エステル結合を有するものが好ましい。例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル樹脂、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミド樹脂などが挙げられ、具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなど、また液晶性ポリエステルアミドとしては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位以外にさらにp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドなどが挙げられる。
【0020】
上記液晶性ポリエステルおよび液晶性ポリエステルアミドのうち、好ましい構造の具体例としては、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、または、(I)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0021】
特に好ましいのは(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルである。
【0022】
【化3】
【0023】
(ただし式中のR1は
【0024】
【化4】
【0025】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0026】
【化5】
【0027】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
【0028】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【0029】
【化6】
【0030】
であり、R2が
【0031】
【化7】
【0032】
であるものが特に好ましい。
【0033】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記したように、構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体および上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体から選択される1種以上であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0034】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜90モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜10モル%がより好ましい。また、構造単位(I)の(II)に対するモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0035】
一方、上記構造単位(II) を含まない場合は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(III)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0036】
ここで実質的に等モルとは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットが等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0037】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0038】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0039】
本発明において使用する上記液晶性ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0040】
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0041】
上記液晶性ポリエステル樹脂は、(b)フィラーを高充填した場合の流動性低下を抑制するため、溶融粘度は0.5〜80Pa・sが好ましく、特に1〜50Pa・sがより好ましい。また、流動性がより優れた錠剤を得ようとする場合には、溶融粘度を40Pa・s以下とすることが好ましい。
【0042】
なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0043】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を指す。
【0044】
さらに上記ポリアリーレンサルファイド樹脂の代表例としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられ、中でもポリフェニレンスルフィドが特に好ましい。上記ポリフェニレンスルフィドは、下記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、好ましくは90モル%以上を含む重合体であり、この繰り返し単位が上記範囲内である場合に耐熱性に優れる。
【0045】
【化8】
【0046】
また、上記ポリフェニレンスルフィド樹脂は、その繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式
【0047】
【化9】
【0048】
を有する繰り返し単位などで構成することが可能である。
【0049】
かかるポリアリーレンサルファイド樹脂は、通常公知の方法、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。
【0050】
本発明においては、上記のようにして得られたポリアリーレンサルファイド樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸もしくは酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
【0051】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。この場合の加熱処理温度としては、通常150〜280℃の範囲が選択され、好ましくは200〜270℃であり、処理時間としては、通常0.5〜100時間の範囲が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この両者をコントロールすることによって目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0052】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下(好ましくは7,000Nm-2以下)で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間の条件で加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0053】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリアリーレンサルファイド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
【0054】
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリアリーレンサルファイド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンサルファイド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、さらに水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0055】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるポリアリーレンサルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンサルファイド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンサルファイド樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、ポリアリーレンサルファイド樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0056】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はポリアリーレンサルファイド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンサルファイド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、さらに水または温水で数回洗浄することが好ましい。この時、洗浄に用いる水は、酸処理によるポリアリーレンサルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
【0057】
上記ポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は、よりすぐれた溶融流動性を得る上で、316℃、剪断速度1000/秒の条件下で80Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以下がより好ましく、20Pa・s以下が更に好ましい。下限としては、2Pa・s以上が好ましい。
【0058】
上述した(a)熱可塑性樹脂のうち機械的性質、成形性などの点からポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびポリエチレンテレフタレートなどの非液晶性ポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン4・6、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)などのポリアミド樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなどの液晶ポリマーや、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、ポリフェニレンオキシド、フェノキシ樹脂、から選ばれる1種または2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0059】
なかでもナイロン6などのポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレートなどの非液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステルなどの液晶性ポリエステル樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂を特に好ましく用いることができる。
【0060】
本発明に用いる(b)フィラーとしては、繊維状もしくは、板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、炭化ケイ素、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。ガラス繊維あるいは炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。本発明においては、上記フィラーのうち、繊維状、板状、鱗片状の形状および破砕品が錠剤型樹脂組成物(錠剤)の取得性の点から好ましく用いられ、さらに成形品の強度等の点から繊維状あるいは板状、鱗片状が好ましい。なお、本発明において繊維状は、通常繊維状と呼ばれるものであって、ウィスカー形状のものも含み、例えば、平均繊維長あるいは平均長径/平均繊維径あるいは平均短径(アスペクト比)3〜10000程度の形状を有するものが挙げられる。板状、鱗片状は、通常、板状、鱗片状と呼ばれるものであって、長径に対し厚みを有する形状を有し、例えば平均長径/平均厚みが3〜5000程度のものが挙げられる。粒状は、比較的球状に近い形状をなす粒状のものであって、例えば、平均長径/平均短径が3未満程度のものが挙げられる。不定形状は、粉砕品等の形が定まっていないものである。なお、これらの充填剤の形状(平均繊維長/平均繊維径、平均長径/平均厚み、平均長径/平均短径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)により繊維長、繊維径、長径、短径あるいは厚みを各100個測定し、その数平均をもとめ、算出することができる。
【0061】
また、上記の充填剤は機械強度と成形品そりのバランスを得るために2種以上を併用して使用することもでき、例えば、ガラス繊維とマイカあるいはカオリン、ガラス繊維とガラスビーズ、炭素繊維とマイカあるいはカオリン、炭素繊維と黒鉛、黒鉛とカーボンブラック等が挙げられる。
【0062】
なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。また、上記の充填剤は、導電性物質で被覆して用いることもできる。
【0063】
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0064】
本発明において(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーとの配合比率は、用いるフィラーの特性を発揮し、かつ溶融加工性とのバランスの点から、配合される(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーの合計量における配合比率が、(a)熱可塑性樹脂5〜30重量%、(b)フィラー95〜70重量%である。
【0065】
本発明において用いられる(c)ネオポリオールエステルとは、ポリオールと飽和または不飽和脂肪酸との全部あるいは部分エステル化物である。中でもネオポリオールと炭素数6〜22の飽和または不飽和脂肪酸との部分あるいは全部のエステル化物が好ましい。ネオポリオールとは、分子内に少なくとも1個の第4級炭素を含有する多価アルコールであり、なかでも炭素数5〜30のネオポリールが好ましい。
【0066】
炭素数5〜30のネオポリオールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、2,2− ジエチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどの他、それらの脱水縮合物などを挙げられる。好ましくはトリメチロールプロパンである。炭素数6〜22の飽和脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、ベヘン酸を挙げることができる。炭素数6〜22の不飽和脂肪酸としては、例えば、オブシツル酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツヅ酸、フィデセリン酸、ミリストレイン酸などを挙げることができる。
【0067】
本発明の特徴を最大限に引き出すためには、中でも常温(23℃)で粉末状のものが好ましい。
【0068】
ネオポリオールと飽和または不飽和脂肪酸はそれぞれ1種または2種以上用いて、公知の方法によりエステル化反応することにより得ることができる。
【0069】
本発明における(c)ネオポリオールエステルの添加量は、(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーの合計量100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部、より好ましくは0.3〜6重量部の範囲が選択される。
【0070】
(c)ネオポリオールエステルの配合(添加)量が本発明の範囲より多すぎる場合、得られた成形品表面にブリードアウトしてくると共に、それによって(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラー界面の剥離を引き起こし、機械物性が低下する傾向にあり、少なすぎる場合、成形時の溶融流動性が著しく低下するため好ましくない。
【0071】
本発明においては、さらにビスフェノール型エポキシ樹脂を配合することが、成形性のみならず強度をも飛躍的に改良し得る点で好ましい。本発明に用いられるビスフェノール型エポキシ樹脂(d)とは下記構造を有する化合物である。
【0072】
【化10】
【0073】
ここでR,R’は水素、または炭素数1〜10のアルキル基であり、RとR’は同じでも異なっていても良い。またnは上記繰り返し単位数の平均値であり、その範囲はn=0〜30である。
【0074】
中でも、R、R’がメチル基であるビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0075】
その分子量には特に限定はないが、通常900〜7000のものが挙げられ、中でも1000〜5000のものが錠剤化成形性などの点から特に好ましい。ここでいう分子量はガス透過クロマトグラフで測定した、ポリスチレン換算の数平均の分子量である。
【0076】
本発明で使用できるビスフェノール型エポキシ樹脂は市場で入手が可能であり、具体的な商品名としては、油化シェルエポキシ(株)社製エピコート1001、1002、1003、1055、1004、1004AF、1007、1009、1010、1003F、1004F、1005F、1100Lなどが例示できる。
【0077】
本発明においてビスフェノール型エポキシ樹脂としては、上記の物質のいずれか1種、または2種以上の混合物であってもよい。
【0078】
本発明においてネオポリオールエステルおよびビスフェノール型エポキシ樹脂を併用することが熱可塑性樹脂にフィラーを高充填する際に、何故溶融流動性を改良しつつ、強度を飛躍的に改良し得るか定かではないが、ネオポリオールエステルおよびビスフェノール型エポキシ樹脂が溶融し、熱可塑性樹脂とフィラーに対し滑剤的に作用し、さらにフィラーと樹脂の界面接着性を向上させるため、熱可塑性樹脂やフィラーの種類にかかわらず、溶融流動性改良効果と強度の両立化を発現するものと推定される。
【0079】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂の配合量は、(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーの合計量100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜4重量部、さらに好ましくは1〜3重量部である。
【0080】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の配合量が上記上限以下である場合に、得られた成形品表面にブリードアウトが生じにくく、、ブリードアウトによる熱可塑性樹脂とフィラー界面の剥離も生じにくいため、優れた機械物性が得られる。
【0081】
本発明における錠剤には、本発明の効果を損なわない範囲で上記成分以外の他の化合物、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤、耐候剤、離型剤及び滑剤、顔料、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、他の重合体を添加することができる。
【0082】
本発明において、錠剤は、粉末状の原料を圧縮成形することにより得ることができる。圧縮成形には、打錠機(ロータリー、単発式、2連式、3連式)を用いる。上記粉末状の原料としては、錠剤中に含有せしめるべき(a)熱可塑性樹脂の粉末(熱可塑性樹脂粉末)、(b)フィラー、(c)ネオポリオールエステルおよび必要に応じて配合する(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられるが、予め(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラー、あるいは(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラー、(c)ネオポリオールエステルおよび必要に応じて配合する(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂とを溶融混練して得られる組成物の粉末を用いることもでき、これらの一種以上を所望の組成となるよう適宜選択して用いることができる。
【0083】
本発明の錠剤の製造方法は、たとえば熱可塑性樹脂粉末、(b)フィラー、(c)ネオポリオールエステルおよび必要に応じて配合する(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂の粉末をバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸もしくは二軸の押出機、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダーなどを用い、固相状態で均一ブレンドし、打錠機により錠剤(タブレット)化することにより得ることができる。また、(a)熱可塑性樹脂、(b)フィラーおよび(c)ネオポリオールエステルおよび必要に応じて配合する(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂とをバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ヘンシェルミキサー、リボブレンダーを用いて予めドライブレンドし、もしくはドライブレンドしないで、単軸もしくは二軸の押出機などを用い、一度溶融混練し、冷却粉砕して粉末状としたのち、打錠機により錠剤(タブレット)化することも可能である。この場合、溶融混練に供する(a)熱可塑性樹脂および(c)ネオポリオールエステルおよび必要に応じて配合する(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂は、溶融混練が可能であれば、粉末状でもペレット状でも特に制限はないが、(b)フィラーの分散不良による特性のバラツキを低減する点から粉末状あるいは粉砕品であることが好ましい。また、単軸もしくは2軸押出機を用いて、予め溶融混練した組成物を粉末状とする場合、(b)フィラーの使用量が多いと、流動性が悪化するため、ダイからの押出ができずペレット化が困難になる場合があるが、その場合には、特開平8−1663号公報に記載の如く、押出機のヘッド部を開放した状態で混練・押出すことも可能である。(b)フィラーが多量である場合、フレーク状の組成物が得られることもある。本発明においてはこれらの方法で予め溶融混練して得られたペレットもしくはフレーク状の組成物を必要により、冷却粉砕して粉末状とした後、錠剤化する。また、これらの方法を組み合わせて錠剤化することも可能である。すなわち、(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーおよび(c)ネオポリオールエステルを溶融混練してなる組成物と、熱可塑性樹脂粉末、(b)フィラー、(c)ネオポリオールエステルおよび必要に応じて配合する(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂から選択される一種以上とを、所望の含有量となるよう調整し、打錠して錠剤化することも可能である。上記方法のうち、工程が簡素である点で、熱可塑性樹脂粉末、(b)フィラーおよび粉末状の(c)ネオポリオールエステルおよび必要に応じて配合する(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂を固相状態で均一ブレンドした混合物を打錠機により錠剤(タブレット)化する方法が好ましい。
【0084】
上記熱可塑性樹脂粉末としては、通常、粉末状で入手できる熱可塑性樹脂の他、ペレットを冷凍粉砕、常温粉砕することによっても得ることができる。冷凍粉砕は、ドライアイスあるいは液体窒素等で凍結させた後、一般的に知られている通常の粉砕機あるいは石臼型の粉砕機により行うことができる。本発明において用いる熱可塑性樹脂粉末としては、得られる錠剤間の組成の均一化および得られた錠剤のハンドリング性を良好にする点から、数平均粒子径が1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。かかる粒径を有する粉末を得るには、粉砕などにより得られた粉体を適宜所望の大きさの篩を用いてふるい分けすればよい。
【0085】
また、(b)フィラーについても溶融加工性、得られる成形品の表面外観等を考慮した場合、(b)フィラーのサイズはJIS-K0069に基づく篩分け試験法に基づき測定した場合、1000μmに相当する篩を通過するものであることが好ましく、より好ましくは800μmに相当する篩を通過するもの、特に500μmに相当する篩を通過するものであることが好ましい。また、5μmに相当する篩は実質的に通過しないものであることが好ましい。なお、ここで「実質的に通過しない」とは、95重量%以上が通過しないことを意味する。
【0086】
かかる(b)フィラーは市販されているものから選択してもよいし、また、篩を用いて分級し、必要なサイズのものを取り出し使用することも可能である。また、用いる(b)フィラーの形状については、組成物のペレットの取得性から、繊維状、板状、鱗片状および破砕品が好ましく用いられ、さらに製造上得られた成形品の強度等の点から繊維状あるいは板状、鱗片状が好ましい。
【0087】
さらに、必要特性によっては、異なった粒子径のものを2種以上併用しても良い。
【0088】
(c)ネオポリオールエステルおよび必要に応じて配合する(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂については、錠剤中での分散を向上させる上で好ましくは上記(a)熱可塑性樹脂と同様に得られる錠剤間の組成の均一化および得られた錠剤のハンドリング性を良好にする点から、粉末状の場合、数平均粒子径が1000μm以下の粉末であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。かかる粒径を有する粉末は、粉砕または粉砕などにより得られた粉体を適宜所望の大きさの篩を用いてふるい分けすることにより得ることができる。
【0089】
本発明において、必要に応じて配合し得る他の成分を配合する場合、その配合方法に特に制限はなく、予め(a)熱可塑性樹脂に溶融混練した熱可塑性樹脂組成物の粉末を熱可塑性樹脂粉末として用いてもよいし、(a)熱可塑性樹脂の粉末と(b)フィラー、(c)炭素数5〜20の脂肪酸類のネオポリオールエステルおよび必要に応じて配合する(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂を固相状態で均一にブレンドする際に、かかる他の成分も一緒に添加してブレンドしてもよい。また、予め(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラー、(c)ネオポリオールエステルおよび必要に応じて配合する(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂とを溶融混練した組成物の粉末を用いる場合には、その溶融混練の際に他の成分も一緒に添加してブレンドしてもよい。さらには錠剤のまわりに付着せしめることにより添加してもよい。
【0090】
本発明の錠剤の錠剤形状としては、輸送時の形状保持性と成形時の易圧壊性を考慮した場合、例えば、円柱状、楕円柱状、円錐台形状、球状、楕円球状、鶏卵型形状、マセック型、円盤状、キュービック状、角柱状のものが挙げられる。なかでも加工時の計量安定性の点から円柱状、楕円柱状、球状、楕円球状、円錐台形状、鶏卵型形状、マセック型が好ましい。錠剤の錠剤サイズとしては、錠剤の縦、横、高さ、直径のいずれかの最大値が15mm未満、最小値が1mm以上が好ましく、最大値が12mm以下であることがより好ましい。また、最小値としては1.5mm以上であることがより好ましい。最大径、最小径の規定方法としては、得られた錠剤が入る仮想の直方体容器において、その縦、横、高さのいずれかの最大値、最小値を測定することとする。
【0091】
かかる方法を用いることにより、従来、成し得なかった導電剤を高充填化した組成物を得ることが可能となる。
【0092】
かくして得られた錠剤は、溶融成形が可能であり、射出成形、押出成形、プレス成形、インジェクションプレス成形などの方法ににより、三次元成形品、シート、容器状物などに加工することができる。特に、生産性から、射出成形、プレス成形、射出圧縮成形(インジェクションプレス成形)などが好ましく用いられるが、フィラーを特に多量に含有せしめる場合には、生産性のメリットを損なわない点から、また成形が容易に行える点から高速高圧射出成形、インジェクションプレス成形が特に好ましい。
【0093】
本発明の錠剤を溶融成形する前に、加熱処理すると成形性(計量性)が向上するので好ましい。加熱処理は、樹脂が溶融して錠剤が融着しない程度の条件で行われるが、通常、50〜250℃、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜160℃で1時間以上、好ましくは2〜12時間、より好ましくは3〜6時間の条件で、通常の減圧乾燥機、熱風乾燥機やオーブンなどで行うことができる。
【0094】
かくして得られる成形品は、用いる充填剤の特徴を極限まで生かしつつ、かつ溶融成形可能であることを生かし、例えば、高放熱用途、金属代替用途、電磁波シールド用途、高精度部品(低寸法変化)、高導電用途等に有用であり、具体的には、パソコン、液晶プロジェクター、モバイル機器、携帯電話等の放熱部品、シールド部材、あるいは筐体、その他情報通信分野において電磁波などの遮蔽性を必要とする設置アンテナなどの部品、導電板、ヒートシンク、光ピックアップ部品、自動車用の電装部品を収納する筐体やそれに用いる部品などの自動車部品、機械機構部品、屋外設置用機器あるいは建築部材で高寸法精度、電磁波シールド性、気体・液体等のバリアー性を必要とする隔壁板、熱および電気伝導性を必要とする用途、特に軽量化等で金属代替が熱望されている自動車部品用途、電気・電子部品用途、熱機器部品用途等に有用である。
【0095】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0096】
参考例1 熱可塑性樹脂
PPS(ポリフェニレンスルフィド樹脂):M3910(東レ社製)を、篩にて60メッシュパスのものを使用した。
PA6(ナイロン6):CM1001(東レ社製)を液体窒素に浸し、サンプルミル(協立理工社製SK−M型)にて粉砕し、篩にて42メッシュパス、80メッシュオンで分級して数平均粒子径300μmのものを得た。
LCP(液晶性ポリエステル):“シベラス”L201E(東レ社製)を液体窒素に浸し、サンプルミル(協立理工社製SK−M型)にて粉砕し、篩にて80メッシュパス、150メッシュオンで分級して数平均粒子径150μmのものを得た。
【0097】
なお、上記において数平均粒子径は島津社製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。
PBT(ポリブチレンテレフタレート):1100S(東レ社製)を液体窒素に浸し、サンプルミル(協立理工社製SK−M型)にて粉砕し、篩にて42メッシュパス、80メッシュオンで分級して数平均粒子径300μmのものを得た。
【0098】
参考例2 フィラー
ガラス繊維(GF):EPDM70M10A(繊維状フィラー、日本電気ガラス社製)
グラファイト(KS):KS−150(鱗片状フィラー、ティムカルジャパン社製)
マイカ粉(MK):A−31(板状フィラー、山口雲母工業社製)。
炭素繊維(CF):MLD30(繊維状フィラー、繊維径7μm、東レ社製)
参考例3 ネオポリオールエステル
C−1:“ユニスター”H−476(ネオポリオールステアリン酸エステル、日本油脂社製)を液体窒素に浸し、サンプルミル(協立理工社製SK−M型)にて粉砕し、篩にて42メッシュパス、80メッシュオンで分級して数平均粒子径220μmのものを使用した。
C−2:“ユニスター”H−334R(ネオポリオールオクチル酸エステル、日本油脂社製)
参考例4 ビスフェノールA型エポキシ樹脂(粉砕し、篩にて42メッシュパス、80メッシュオンで分級して数平均粒子径約200μmにしたものを使用)D−1:油化シェルエポキシ(株)社製”エピコート1004粉末、数平均分子量1600
D−2:油化シェルエポキシ(株)社製”エピコート1009粉末数平均分子量3750。
【0099】
実施例1〜8、比較例1〜5
参考例1の熱可塑性樹脂、参考例2に示したフィラーおよび参考例3に示したネオポリオールエステルをヘンシェルミキサーで表1に示す量でブレンドし、自動原料供給フィーダーを備えた月島機械製ロータリー打錠機を用いて常温タブレット化により、7mm直径×3mm長の円柱状のタブレット(錠剤)(最大値7mm、最小値3mm)を得た。ついで140℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、住友SG75M−III射出成形機(住友重機械工業)を用いて、表1の樹脂温度、金型温度の温度条件で、50mm×50mm×厚さ3mmの角形成形品(フィルムゲート)を成形し、以下に示す評価を行った。
【0100】
比較例6
参考例1のPPS樹脂、20重量部、参考例2に示したフィラーとしてGF、80重量部、および参考例3に示したネオポリオールエステルを5重量部、ヘンシェルミキサーでブレンドし、ヘッド部をはずしたPCM30(2軸押出機;池貝鉄鋼社製)にて樹脂温340℃で溶融混練を行い、不定形状の組成物を得た。ついで140℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、住友SG75M−III射出成形機(住友重機械工業)を用いて、樹脂温度340℃、金型温度150℃の温度条件で成形を行ったところ、噛み込みが悪すぎ、計量が不安定で成形品が得られなかった。
【0101】
実施例9〜16
参考例1の熱可塑性樹脂、参考例2に示したフィラー、参考例3に示したネオポリオールエステル、参考例4に示したビスフェノールA型エポキシ樹脂をヘンシェルミキサーで表2に示す量でブレンドし、自動原料供給フィーダーを備えた月島機械製ロータリー打錠機を用いて常温タブレット化により、7mm直径×3mm長の円柱状のタブレット(錠剤)(最大値7mm、最小値3mm)を得た。ついで140℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、住友SG75M−III射出成形機(住友重機械工業)を用いて、表2の樹脂温度、金型温度の温度条件で、50mm×50mm×厚さ3mmの角形成形品(フィルムゲート)を成形し、以下に示す評価を行った。
【0102】
(1)流動性
住友SG75M−III射出成形機(住友重機械工業)を用いて表1に示す樹脂温度および金型温度で射出成形を行った(80mm×80mm×3mm厚角板)際の成形片を充填するのに要した最低充填圧力を測定した(圧力が低い方が流動性に(成形性)に優れる)。
【0103】
(2)計量安定性
住友SG75M−III射出成形機(住友重機械工業)を用いて表1に示す樹脂温度および金型温度で射出成形を行った(80mm×80mm×3mm厚角板)際のシリンダー計量時の時間ばらつきを測定した(最大値−最小値)(ばらつきが低い方が成形性に優れる)。
【0104】
(3)離型性
住友SG75M−III射出成形機(住友重機械工業)を用いて表1に示す樹脂温度および金型温度で射出成形を行った(80mm×80mm×3mm厚角板)際のイジェクトピンでイジェクトした時の成形品割れ性を型離れ性として評価した。評価は、○:イジェクト性に問題なし、×:イジェクト時に成形品割れとした。
【0105】
(4)曲げ強度
住友SG75M−III射出成形機(住友重機械工業)を用いて表2に示す樹脂温度および金型温度で80mm×80mm×3mm厚角板を射出成形した。得られた成形品を流れ方向に中心から両端に向け、幅12.7mmに切り出し、12.7mm×80mm×3mmの成形品を得た。その成形品を用い、ASTM D790に従い、曲げ強度を測定した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
表1、表2の結果から明らかなように本発明の錠剤から得られた成形品はフィラー高充填可能となり、従来得られなかった領域の特性が得られることがわかる。また、成形性(流動性、計量安定性)に優れた溶融加工が可能であり、特定構造のエポキシ樹脂を併用することで強度とのバランス化が図ることができることから、軽量化目的に用いられる金属代替をはじめとする新規用途への展開を図ることが可能となる。
【0109】
【発明の効果】
本発明により、従来得られなかったハイフィラー熱可塑性樹脂組成物においてもその取得が可能となり、また、成形性に優れた溶融加工が可能なことから、用いるフィラーの特性を高効率に発揮することを可能とし、従来得ることができなかった特性を熱可塑性樹脂に付与できることが可能となり、電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品、熱機器、建材などの各種用途に展開可能である。
Claims (6)
- (a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーの組成比が(a)熱可塑性樹脂5〜30重量%、(b)フィラー95〜70重量%である(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーの合計量100重量部に対し、(c)ネオポリオールエステル0.1〜10重量部を固相状態で均一にブレンドした混合物を打錠機により錠剤化した錠剤。
- (a)熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂、非液晶性ポリエステル樹脂、液晶性ポリエステル樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂から選ばれた1種または2種以上である請求項1または2記載の錠剤。
- (b)フィラーが繊維状、板状または鱗片状である請求項1〜3いずれか記載の錠剤。
- (a)熱可塑性樹脂、(b)フィラーおよび、(c)ネオポリオールエステル、および所望により(d)ビスフェノール型エポキシ樹脂を固相状態で均一にブレンドした混合物を打錠機により錠剤化することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の錠剤の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか記載の錠剤を溶融成形してなる成形品。
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