JP3948241B2 - 溶融成形用錠剤、その製造方法およびそれから得られる成形品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性(流動性、計量安定性)に優れた溶融成形用錠剤、その製造方法およびそれから得られる成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、デザインの多様化から、成形品の形状の自由度が要求されるようになってきた。しかし、従来、使用していた金属では成形品の自由度に限界がある。そこで、金属代替のため、フィラー強化熱可塑性樹脂で検討が行われている。例えば、熱伝導性、電磁波シールド性、高温時の寸法精度をはじめとする各用途で必要とされる特性が従来のフィラー強化熱可塑性樹脂では満足されず、限りなくフィラー単体に近い特性が要求されるようになってきた。
【0003】
フィラー高充填配合組成物の取得方法として、押出機のヘッド部を解放した状態で混練・押し出すことを特徴とする製造方法が提案されている(特開平8−1663号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法では混練時にダイを外していることから、混練時に押出機バレル内の圧力が上がらないために十分に熱可塑性樹脂とフィラーが混合せず、得られた組成物中で組成バラツキがおき、それにより特性バラツキ大きくなる可能性がある。
【0005】
また、上記ニーズに対し、フィラー単体では、フィラー同士が接合せずに脆い材料しか得られないか、あるいは熱硬化性樹脂を用いた場合、成形加工性、生産性が良好とは言えない。また、フィラー強化熱可塑性樹脂において多量のフィラーを充填しようとする場合、通常の溶融混練方法では限界があり、必要特性に見合うまでの十分な高充填化材料の取得は難しかった。
【0006】
そこで、本発明は上述の問題を鑑み、解消すること、即ち、溶融加工が可能で用いるフィラーの特性を高効率に発揮することをも可能とした成形性(流動性、計量安定性)に優れた溶融成形用錠剤、その製造方法および成形品を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)熱可塑性樹脂とフィラーの組成比が両者の合計100容量%に対して熱可塑性樹脂1〜50容量%、フィラー99〜50容量%であり、熱可塑性樹脂とフィラーの合計量100重量部に対し、リン酸エステルを0.1〜30重量部配合してなる溶融成形用錠剤、
(2)熱可塑性樹脂とフィラーの組成比が両者の合計100容量%に対して熱可塑性樹脂1〜40容量%、フィラー99〜60容量%である請求項1記載の溶融成形用錠剤、
(3)熱可塑性樹脂とフィラーの組成比が両者の合計100容量%に対して熱可塑性樹脂3容量%以上15容量%未満、フィラー97容量%以下85容量%超である請求項1〜いずれか記載の溶融成形用錠剤、
(4)熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリフェニレンスルフィドおよび液晶ポリマーから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれか記載の溶融成形用錠剤、
(5)フィラーの比重が3.5以下である請求項1〜4いずれか記載の溶融成形用錠剤、
(6)フィラーが繊維状、板状または鱗片状である請求項1〜5いずれか記載の溶融成形用錠剤、
(7)フィラーがガラス繊維、炭素繊維、グラファイトおよびマイカから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれか記載の溶融成形用錠剤、
(8)熱可塑性樹脂、フィラーおよびリン酸エステルを圧縮成形して錠剤化することを特徴とする請求項1〜のいずれか記載の溶融成形用錠剤の製造方法、
(9)打錠機を用い、錠剤化することを特徴とする請求項記載の製造方法、
(10)熱可塑性樹脂および/またはリン酸エステルが粉末であり、その数平均粒子径が1000μm以下であることを特徴とする請求項または記載の製造方法、
(11)圧縮成形が固相状態で行われる請求項10のいずれか記載の製造方法、
(12)請求項1〜のいずれか記載の溶融成形用錠剤を溶融成形してなる成形品、
(13)請求項1〜のいずれか記載の溶融成形用錠剤を射出成形、射出圧縮成形あるいはプレス成形してなる自動車部品、電気・電子部品あるいは熱機器部品に用いられる成形品である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0010】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、成形加工できる合成樹脂のことである。その具体例としては、例えば、非液晶性半芳香族ポリエステル、非液晶性全芳香族ポリエステルなどの非液晶性ポリエステル、ポリカーボネート、脂肪族ポリアミド、脂肪族−芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドなどのポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる(“/”は共重合を表す。以下同じ)。
【0011】
さらに非液晶性半芳香族ポリエステルの具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの共重合ポリエステル等が挙げられる。また、ポリアミドの具体例としては、例えば環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン4・6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、ポリ(メタキシレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)などの脂肪族−芳香族ポリアミド、およびこれらの共重合体が挙げられ、共重合体として例えばナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン66/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)などを挙げることができる。なお、共重合の形態としてはランダム、ブロックいずれでもよいが、ランダムが好ましい。また、液晶ポリマーとは、異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、エステル結合を有するものが好ましい。例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられ、具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなど、また液晶性ポリエステルアミドとしては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位以外にさらにp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドである。
【0012】
上記液晶性ポリエステルおよび液晶性ポリエステルアミドのうち、好ましい構造の具体例としては、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、または、(I)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0013】
特に好ましいのは(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルである。
【0014】
【化1】
Figure 0003948241
【0015】
(ただし式中のR1は
【0016】
【化2】
Figure 0003948241
【0017】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0018】
【化3】
Figure 0003948241
【0019】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
【0020】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【0021】
【化4】
Figure 0003948241
【0022】
であり、R2が
【0023】
【化5】
Figure 0003948241
【0024】
であるものが特に好ましい。
【0025】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記したように、構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体および上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体から選択される1種以上であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0026】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜15モル%がより好ましい。また、構造単位(I)の(II)に対するモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0027】
一方、上記構造単位(II) を含まない場合は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(III)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0028】
ここで実質的に等モルとは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットが等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0029】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0030】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0031】
本発明において使用する上記液晶性ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0032】
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0033】
本発明に使用する液晶性ポリエステルは、フィラーを高充填した場合の流動性低下を抑制するため、溶融粘度は0.5〜80Pa・sが好ましく、特に1〜50Pa・sがより好ましい。また、流動性がより優れた組成物を得ようとする場合には、溶融粘度を40Pa・s以下とすることが好ましい。
【0034】
なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0035】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0036】
上述した熱可塑性樹脂のうち機械的性質、成形性などの点からポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびポリエチレンテレフタレートなどの非液晶性ポリエステル、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン4・6、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン66/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)などのポリアミド、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、ポリフェニレンオキシド、フェノキシ樹脂、から選ばれる1種または2種以上の混合物が好ましく用いることができる。
【0037】
なかでもナイロン6、ポリフェニレンスルフィド、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステルを特に好ましく用いることができる。
【0038】
本発明に用いるフィラーとしては、繊維状もしくは、板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。ガラス繊維あるいは炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。本発明においては、上記フィラーのうち、繊維状、板状、鱗片状の形状および破砕品が錠剤型樹脂組成物(錠剤)の取得性の点から好ましく用いられ、さらに成形品の強度等の点から繊維状あるいは板状、鱗片状が好ましい。なお、本発明において繊維状は、通常繊維状と呼ばれるものであって、ウィスカー形状のものも含み、例えば、平均繊維長あるいは平均長径/平均繊維径あるいは平均短径(アスペクト比)3〜10000程度の形状を有するものが挙げられる。板状、鱗片状は、通常、板状、鱗片状と呼ばれるものであって、長径に対し厚みを有する形状を有し、例えば平均長径/平均厚みが3〜5000程度のものが挙げられる。粒状は、比較的球状に近い形状をなす粒状のものであって、例えば、平均長径/平均短径が2未満程度のものが挙げられる。不定形状は、粉砕品等の形が定まっていないものである。なお、これらの充填剤の形状(平均繊維長/平均繊維径、平均長径/平均厚み、平均長径/平均短径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)により繊維長、繊維径、長径、短径あるいは厚みを各100個測定し、その数平均をもとめ、算出することができる。
【0039】
また、上記の充填剤は機械強度と成形品そりのバランスを得るために2種以上を併用して使用することもでき、例えば、ガラス繊維とマイカあるいはカオリン、ガラス繊維とガラスビーズ、炭素繊維とマイカあるいはカオリン、炭素繊維と黒鉛、黒鉛とカーボンブラック等が挙げられる。
【0040】
なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。また、上記の充填剤は、導電性物質で被覆して用いることもできる。
【0041】
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0042】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂とフィラーとの配合量は、用いる充填剤の特性を発揮し、かつ溶融加工性とのバランスの点から、熱可塑性樹脂とフィラーの合計量100容量%に対し、通常、熱可塑性樹脂1〜50容量%、フィラー99〜50容量%であり、熱可塑性樹脂1〜40容量%、フィラー99〜60容量%が好ましく、熱可塑性樹脂2〜25容量%、フィラー98〜75容量%であることがさらに好ましく、熱可塑性樹脂3〜20容量%、フィラー97〜80容量%であることが特に好ましく、とりわけ熱可塑性樹脂3容量%以上15容量%未満、フィラー97容量%以下85容量%超であることが好ましい。
【0043】
本発明に使用されるリン酸エステルとしては、リン酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルから選ばれ、好ましくは、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
【0044】
【化6】
Figure 0003948241
【0045】
まず前記式(1)で表されるリン酸エステルの構造について説明する。前記式(1)の式中nは0以上の整数であり、好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。上限は分散性の点から40以下が好ましい。
【0046】
またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0047】
また前記式(1)の式中、R3〜R10は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、2ーイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、3−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、ネオイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0048】
またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なる芳香族基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換された芳香族基を表す。かかる芳香族基としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、インデン骨格、アントラセン骨格を有する芳香族基が挙げられ、なかでもベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格を有するものが好ましい。これらはハロゲンを含有しない有機残基(好ましくは炭素数1〜8の有機残基)で置換されていてもよく、置換基の数にも特に制限はないが、1〜3個であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などの芳香族基が挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
【0049】
またYは直接結合、O、S、SO2、C(CH32、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
【0050】
このようなリン酸エステルの具体例としては、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−130、CR−733S、TPP、CR−741、CR−747、TCP、TXP、CDPから選ばれる1種または2種以上が使用することができ、中でも好ましくはPX−200、TPP、CR−733S、CR−741、CR−747から選ばれる1種または2種以上、特に好ましくはPX−200、CR−733S、CR−741を使用することができるが、最も好ましくはPX−200である。
【0051】
本発明においてリン酸エステルのいずれか1種、または2種以上の混合物であってもよい。
【0052】
本発明においては、リン酸エステルは成形加工時の可塑化特性に優れるだけでなく、熱可塑性樹脂とフィラーとの馴染みが良いために、リン酸エステルを用いることにより、錠剤としての形状保持と成形時の錠剤の安定的な圧壊による計量安定性付与効果の両立とさらに金型内での流動性向上効果を併せて得られるものと推察される。
【0053】
上記リン酸エステルを添加する場合の添加量は、熱可塑性樹脂とフィラーの合計量100重量部に対し、0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは2〜15重量部である。なかでも3〜10重量部が、特に好ましい。
【0054】
リン酸エステルの添加量が本発明の範囲より多すぎる場合、得られた成形品表面にブリードアウトしてくると共に、それによって熱可塑性樹脂とフィラー界面の剥離を引き起こし、機械物性が低下する傾向にあり、少なすぎる場合、添加による成形時の計量安定性、流動安定性付与効果が小さい。
【0055】
本発明における錠剤型樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化PPO、臭素化PC、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0056】
本発明において、溶融成形用錠剤は、粉末状または粉末状および液状の原料を圧縮成形することにより得ることができる。圧縮成形には、打錠機を用いることが好ましい。上記粉末状の原料としては、樹脂組成物中に含有せしめるべき、熱可塑性樹脂の粉末(熱可塑性樹脂粉末)、フィラー、粉末状のリン酸エステル、予め液状のリン酸エステルを添加した熱可塑性樹脂粉末および/またはフィラーなどが挙げられるが、予め熱可塑性樹脂とフィラー、あるいは熱可塑性樹脂とフィラーおよびリン酸エステルとを溶融混練して得られる組成物の粉末を用いることもでき、これらの一種以上を所望の組成となるよう適宜選択して用いることができる。
【0057】
本発明の溶融成形用錠剤の製造方法は、たとえば熱可塑性樹脂粉末、フィラーおよびリン酸エステルをバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸もしくは二軸の押出機などを用い、熱可塑性樹脂粉末が固相の状態で均一ブレンドし、打錠機により錠剤(タブレット)化することにより得ることができる。また、熱可塑性樹脂、フィラーおよびリン酸エステルとをバンバリーミキサー、ニーダー、ロールを用いて予めドライブレンドし、もしくはドライブレンドしないで、単軸もしくは二軸の押出機などを用い、一度溶融混練し、冷却粉砕して粉末状としたのち、打錠機により錠剤(タブレット)化することも可能である。この場合、溶融混練に供する熱可塑性樹脂としては、溶融混練が可能であれば、粉末状でもペレット状でも特に制限はないが、フィラーの分散不良による特性のバラツキを低減する点から粉末状あるいは粉砕品であることが好ましい。また、単軸もしくは2軸押出機を用いて、予め溶融混練した組成物を粉末状とする場合、フィラーの使用量が多いと、流動性が悪化するため、ダイからの押出ができずペレット化が困難になる場合があるが、その場合には、特開平8−1663号公報に記載の如く、押出機のヘッド部を開放した状態で混練・押出すことも可能である。フィラーが多量である場合、フレーク状の組成物が得られることもある。本発明においてはこれらの方法で予め溶融混練して得られたペレットもしくはフレーク状の組成物を必要により、冷却粉砕して粉末状とした後、錠剤化する。また、これらの方法を組み合わせて錠剤化することも可能である。すなわち、熱可塑性樹脂とフィラーおよびリン酸エステルを溶融混練してなる組成物と、熱可塑性樹脂粉末および/又はフィラーおよび/またはリン酸エステルとを、所望の含有量となるよう調整し、打錠して錠剤化することも可能である。上記方法のうち、工程が簡素である点で、熱可塑性樹脂粉末、フィラーおよびリン酸エステルを熱可塑性樹脂粉末が固相の状態で均一ブレンドした混合物を打錠機により錠剤(タブレット)化する方法が好ましい。
【0058】
上記熱可塑性樹脂粉末としては、通常、粉末状で入手できる熱可塑性樹脂の他、ペレットを冷凍粉砕することによっても得ることができる。冷凍粉砕は、ドライアイスあるいは液体窒素等で凍結させた後、一般的に知られている通常の粉砕機あるいは石臼型の粉砕機により行うことができる。本発明において用いる熱可塑性樹脂粉末としては、得られる錠剤間の組成の均一化および得られた錠剤のハンドリング性を良好にする点から、数平均粒子径が1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。かかる粒径を有する粉末を得るには、粉砕などにより得られた粉体を適宜所望の大きさの篩を用いてふるい分けすればよい。
【0059】
また、フィラーについても溶融加工性、得られる成形品の表面外観等を考慮した場合、フィラーのサイズはJIS-K0069に基づく篩分け試験法に基づき測定した場合、1000μmに相当する篩を通過するものであることが好ましく、より好ましくは800μmに相当する篩を通過するもの、特に500μmに相当する篩を通過するものであることが好ましい。また、5μmに相当する篩は実質的に通過しないものであることが好ましい。なお、ここで「実質的に通過しない」とは、95重量%以上が通過しないことを意味する。
【0060】
かかるフィラーは市販されているものから選択してもよいし、また、篩を用いて分級し、必要なサイズのものを取り出し使用することも可能である。また、用いるフィラーの形状については、組成物のペレットの取得性から、繊維状、板状、鱗片状および破砕品が好ましく用いられ、さらに製造上得られた成形品の強度等の点から繊維状あるいは板状、鱗片状が好ましい。
【0061】
さらに、必要特性によっては、異なった粒子径のものを2種以上併用しても良い。
【0062】
リン酸エステルとしては、液状のものは通常、そのまま使用するが、粉末状のものは上記熱可塑性樹脂と同様に得られる錠剤間の組成の均一性および得られた錠剤のハンドリング性を良好にする点から、数平均粒子径が1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。かかる粒径を有する粉末は、粉砕または粉砕などにより得られた粉体を適宜所望の大きさの篩を用いてふるい分けすることに得ることができる。
【0063】
本発明において、必要に応じて配合し得る他の成分を配合する場合、その配合方法に特に制限はなく、予め熱可塑性樹脂に溶融混練した熱可塑性樹脂組成物の粉末を熱可塑性樹脂粉末として用いてもよいし、熱可塑性樹脂粉末とフィラーおよびリン酸エステルを固相状態で均一にブレンドする際に、かかる他の成分も一緒に添加してブレンドしてもよい。また、予め熱可塑性樹脂とフィラーとを溶融混練した組成物の粉末を用いる場合には、その溶融混練の際に他の成分も一緒に添加してブレンドしてもよい。さらには溶融成形用錠剤のまわりに付着せしめることにより添加してもよい。
【0064】
本発明の溶融成形用錠剤の錠剤形状としては、特に制限はなく、例えば、円柱状、円盤状、キュービック状のものが挙げられる。なかでも加工時の計量安定性の点から円柱状が好ましい。溶融成形用錠剤の錠剤サイズとしては、底面15mm直径以下×長さ20mm以下が好ましい。
【0065】
かかる方法を用いることにより、従来、成し得なかったフィラー高充填組成物を得ることが可能となる。
【0066】
さらに、熱可塑性樹脂とフィラーとの均一混合性の点からフィラーの比重は3.5以下であることが好ましく、特に3以下であることが好ましい。なお、複数種のフィラーを用いる場合には、配合量の最も多いフィラーの少なくとも1種の比重が上記範囲にあることが好ましい。
【0067】
かくして得られた溶融成形用錠剤は、溶融成形が可能であり、射出成形、押出成形、プレス成形、インジェクションプレス成形などの方法により、三次元成形品、シート、容器状物などに加工することができる。特に、生産性から、射出成形、プレス成形、射出圧縮成形(インジェクションプレス成形)などが好ましく用いられるが、フィラーを特に多量に含有せしめる場合には、成形が容易に行える点で高速高圧射出成形、インジェクションプレス成形が特に好ましい。
【0068】
本発明の溶融成形用錠剤を溶融成形する前に、加熱処理すると成形性(計量性)が向上するので好ましい。加熱処理は、50〜250℃、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜160℃で1時間以上、好ましくは2〜12時間、より好ましくは3〜6時間の条件で、通常の熱風乾燥機やオーブンなどで行う。
【0069】
かくして得られる成形品は、用いる充填剤の特徴を極限まで生かしつつ、かつ溶融成形可能であることを生かし、例えば、高放熱用途、金属代替用途、電磁波シールド用途、高精度部品(低寸法変化)等に有用であり、具体的には、パソコン、液晶プロジェクター、モバイル機器、携帯電話等の放熱部品、シールド部材、あるいは筐体、その他情報通信分野において電磁波などの遮蔽性を必要とする設置アンテナなどの部品、自動車部品、機械機構部品、屋外設置用機器あるいは建築部材で高寸法精度、電磁波シールド性、気体・液体等のバリアー性、熱および電気伝導性を必要とする用途、特に軽量化等で金属代替が熱望されている自動車部品用途、電気・電子部品用途、熱機器部品用途等に有用である。
【0070】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0071】
参考例1 熱可塑性樹脂
PPS−1(リニアタイプ):M2588(東レ社製)をサンプルミル(協立理工社製SK−M型)にて粉砕し、篩にて60メッシュパス、150メッシュオンで分級して数平均粒子径200μmのものを得た。
PPS−2(リニアタイプ):M2588(東レ社製)をサンプルミル(協立理工社製SK−M型)にて粉砕し、篩にて16メッシュパス、32メッシュオンで分級して数平均粒子径800μmのものを得た。
PA6:CM1001(東レ社製)を液体窒素に浸し、サンプルミル(協立理工社製SK−M型)にて粉砕し、篩にて42メッシュパス、80メッシュオンで分級して数平均粒子径300μmのものを得た。
LCP:“シベラス”L201E(東レ社製)を液体窒素に浸し、サンプルミル(協立理工社製SK−M型)にて粉砕し、篩にて80メッシュパス、150メッシュオンで分級して数平均粒子径150μmのものを得た。
【0072】
なお、上記において数平均粒子径は島津社製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。
【0073】
参考例2 フィラー
炭素繊維(CF):MLD30(繊維状フィラー、繊維径7μm、東レ社製)
ガラス繊維(GF):EPDM70M10A(繊維状フィラー、日本電気ガラス社製)
グラファイト(KS):KS−75(鱗片状フィラー、ティムカルジャパン社製)
マイカ粉(MK):A−31(板状フィラー、山口雲母工業社製)。
【0074】
後述の表中のフィラーサイズは、500gの試料をとり、そのサイズに相当する粗さの篩を用いて分級した時、篩上に残留しなかったことを表す。
【0075】
参考例3 リン酸エステル
PX:PX−200(大八化学工業社製粉末状芳香族縮合リン酸エステル、CAS No. 139189-30-3)(篩にて42メッシュパスしたものを使用)
CR:CR−741(大八化学工業社製液状芳香族縮合リン酸エステル、CAS No. 5945-33-5)
実施例1〜7
参考例1の熱可塑性樹脂および参考例2に示したフィラーおよび参考例3に示したリン酸エステルを所定量をリボンブレンダーでブレンドし、月島機械製ロータリー打錠機を用いて10mm径×5mm長のタブレットを得た。ついで140℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、各評価毎に成形品を成形し、以下の測定方法に従い、特性評価を行った。
【0076】
比較例1〜7
参考例1の熱可塑性樹脂および参考例2に示したフィラー所定量をリボンブレンダーでブレンドし、月島機械製ロータリー打錠機を用いて10mm径×5mm長のタブレットを得た。ついで140℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、各評価毎に成形品を成形し、以下の測定方法に従い、特性評価を行った。
【0077】
(1)線膨張率(寸法安定性)
プレス成形機を用いて表1に示す樹脂温度で150mm×150mm×2mm厚の板状成形品を成形し、寸法安定性について成形品の中央部から長さ10mm×幅1mm×2mm厚の角柱成形品を切り出し、TMA(セイコー電子社製)を用い、30℃〜70℃(5℃/分)で測定した。
【0078】
(2)ソリ変形性
J85ELIII-UPS(日本製鋼所社製)成形機を用いて表1に示す樹脂温度、金型温度で50mm×50mm×3mm厚の板状成形品を成形し、得られた板状成形品を150℃で2時間アニール処理を行い、4角のうち、一点を押さえ、対角側の浮き上がりによるソリ変形性について評価した。評価は、○:1mm未満、×:1mm以上とした。
【0079】
(3)計量安定性
住友SG75M−III射出成形機(住友重機械工業)を用いて表1に示す樹脂温度でスクリュー回転数30rpmで計量した時の負荷圧力を測定した(負荷圧力が低い方が、計量安定性が優れる)。
【0080】
(4)流動性
J85ELIII-UPS(日本製鋼所社製)成形機を用いて表1に示す樹脂温度および金型温度で80×80×3mm厚の板状成形品が成形可能か評価を行った。評価結果は、○:末端部まで成形可能、×:末端部充填までにバリが発生し成形不可。
【0081】
結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
Figure 0003948241
【0083】
表1の結果から明らかなように本発明の製造方法によって得られた成形品はフィラー高充填可能となり、従来得られなかった領域の特性が得られることがわかる。また、成形性(流動性、計量安定性)に優れた溶融加工が可能であることから、軽量化目的に用いられる金属代替をはじめとする新規用途への展開を図ることが可能となる。
【0084】
【発明の効果】
本発明の溶融成形用錠剤により従来得られなかったハイフィラー熱可塑性樹脂組成物の取得が可能となり、また、成形性(流動性、計量安定性)に優れた溶融加工が可能なことから、用いるフィラーの特性を高効率に発揮することを可能とし、従来得られることができなかった特性を熱可塑性樹脂に付与できることが可能となり、電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品、熱機器、建材などの各種用途に展開可能である。

Claims (13)

  1. 熱可塑性樹脂とフィラーの組成比が両者の合計100容量%に対して熱可塑性樹脂1〜50容量%、フィラー99〜50容量%であり、熱可塑性樹脂とフィラーの合計量100重量部に対し、リン酸エステルを0.1〜30重量部配合してなる溶融成形用錠剤。
  2. 熱可塑性樹脂とフィラーの組成比が両者の合計100容量%に対して熱可塑性樹脂1〜40容量%、フィラー99〜60容量%である請求項1記載の溶融成形用錠剤。
  3. 熱可塑性樹脂とフィラーの組成比が両者の合計100容量%に対して熱可塑性樹脂3容量%以上15容量%未満、フィラー97容量%以下85容量%超である請求項1〜いずれか記載の溶融成形用錠剤。
  4. 熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリフェニレンスルフィドおよび液晶ポリマーから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれか記載の溶融成形用錠剤。
  5. フィラーの比重が3.5以下である請求項1〜4いずれか記載の溶融成形用錠剤。
  6. フィラーが繊維状、板状または鱗片状である請求項1〜5いずれか記載の溶融成形用錠剤。
  7. フィラーがガラス繊維、炭素繊維、グラファイトおよびマイカから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれか記載の溶融成形用錠剤。
  8. 熱可塑性樹脂、フィラーおよびリン酸エステルを圧縮成形して錠剤化することを特徴とする請求項1〜のいずれか記載の溶融成形用錠剤の製造方法。
  9. 打錠機を用い、錠剤化することを特徴とする請求項記載の製造方法。
  10. 熱可塑性樹脂および/またはリン酸エステルが粉末であり、その数平均粒子径が1000μm以下であることを特徴とする請求項または記載の製造方法。
  11. 圧縮成形が固相状態で行われる請求項10のいずれか記載の製造方法。
  12. 請求項1〜のいずれか記載の溶融成形用錠剤を溶融成形してなる成形品。
  13. 請求項1〜のいずれか記載の溶融成形用錠剤を射出成形、射出圧縮成形あるいはプレス成形してなる自動車部品、電気・電子部品あるいは熱機器部品に用いられる成形品。
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