JP4765147B2 - 重荷重用空気入りスタッドレスタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は重荷重用空気入りスタッドレスタイヤに関し、更に詳しくは、トレッド部が3層構造の氷上性能及び耐摩耗性の改良された重荷重用空気入りスタッドレスタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
重荷重用タイヤにおいては、近年耐摩耗性向上を目的として、天然ゴム(NR)単独またはNR/ポリブタジエンゴム(BR)ブレンド系に超微粒子系カーボンブラックを配合したキャップがトレッド部に多用されている。しかしながら、耐摩耗性と耐久性の両立や氷上性能と耐摩耗性の両立など二律背反する性能を両立させることは1層のトレッド部では難しいため、2層又は3層構造のトレッド部を用いることが提案され、その配合及び構造に関して多くの特許出願が出されている。しかしながら、かかる構造のトレッドではその性能をさらに向上させようとすると、成形時の作業性が悪化したり、ベルト部との接着性が悪化したりするという問題の発生が懸念される。
【0003】
3層構造のトレッド部としては、例えば特開平11−60810号公報には3層構造のトレッド部を用いて耐摩耗性、発熱耐久性及び耐ワンダリング性を改良した重荷重用タイヤが記載されている。また特開平6−8708号公報には、3層構造のトレッド部の内側の層ほど発泡率を大きくしたゴム層を用いて摩耗の中期以降の氷上性能を改良したスタッドレスタイヤが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は前記した従来技術の現状に鑑み、氷上性能及び耐摩耗性の両性能を改良した重荷重用空気入りスタッドレスタイヤを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、トレッド部がキャップ−A,キャップ−B及びベース−Cの3層構造から成り、かつキャップ−A層に溝底が位置するトレッド部を有する重荷重用空気入りスタッドレスタイヤにおいて、
ショルダー部およびクラウンセンター部でのA層/B層/C層のゲージ比が35〜80/60〜20/2〜20(合計100%とする)で、ベース−C層がタイヤショルダー部からクラウンセンター部において各溝底を繋いだ線より下に位置し(即ち、溝底まで使用してもベース−C層は露出しない)、
キャップ−A層は天然ゴム(NR)/ポリブタジエンゴム(BR)=40〜80/60〜20(重量%比)(合計100%とする)で、キャップ−B層はNR/BR=60〜100/40〜0(重量%比)(合計100%とする)、ベース−CはNR及び/又はポリイソプレンゴム(IR)から構成され、そして
キャップ−A層、キャップ−B層及びベース−C層の中の軟化剤及び/又は可塑剤の合計配合量が
キャップ−A層中の配合量>キャップ−B層中の配合量≧ベース−C層中の配合量(但しベース−C層中の配合量は実質上ゼロである)
の関係を満足する重荷重用空気入りスタッドレスタイヤが提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、重荷重用タイヤにおいて課題となっている氷上性能の向上と共に、耐摩耗性及び耐久性を保持するという課題を解決すべく研究をすすめた結果、3層構造のトレッドを採用し、第1層には氷上性能を重視したコンパウンドを用い、第2層には耐摩耗性のコンパウンドを、そして第3層にオイルマイグレーション防止し、高粘着性のコンパウンドを配置し、これらのゲージ化率を規定することにより、上記目的を達成した重荷重用スタッドレスタイヤを得ることに成功した。以下、更に説明する。
【0007】
図1に示すように、本発明に従った重荷重用空気入りスタッドレスタイヤはトレッド部1をキャップ−A層2、キャップ−B層3及びベース−C層4の3層構造とし、以下に説明するように、A,B及びCの3層のショルダー部5及びクラウンセンター部6のゲージ厚並びにA,B及びCの構成ゴムと共に軟化剤/可塑剤の配合量比を特定化することにより前記目的を達成したものである。なお、図1に示すように、本発明に従った空気入りスタッドレスタイヤのトレッド部1の溝底7はキャップ−A層2に位置する。
【0008】
本発明に係る空気入りスタッドレスタイヤのトレッド部のA,B及びC層を構成するゴムは従来からタイヤ用ゴム組成物に一般的に配合されている天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)を単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0009】
本発明に係る空気入りスタッドレスタイヤのトレッド部のショルダー部及びクラウンセンター部でのA層/B層/C層のゲージ比はそれぞれ35〜80/60〜20/2〜20(合計で100%とする)、好ましくはそれぞれ40〜70/50〜30/2〜15にしなければならない。
【0010】
本発明に係る空気入りスタッドレスタイヤのトレッド部のキャップ−A層はNR/BR=40〜80/60〜20(重量%比)(合計100%、好ましくはNR/BR=50〜80/50〜20で構成されなければならない。
【0011】
本発明に係る空気入りスタッドレスタイヤのトレッド部のキャップ−B層はNR/BR=60〜100/40〜0であり、そしてベース−C層はNR及び/又はIR(好ましくはNR単独)で構成される。
【0012】
本発明に従った空気入りスタッドレスタイヤのトレッド部の層A,B及びCのそれぞれに配合される従来公知の軟化剤(例えば各種プロセスオイル、アロマティックオイル、パラフィニックオイル等)及び/又は可塑剤(例えばセバシン酸ジオクチル(DOS)を配合する場合には以下の関係を満足しなければならない。
キャップ−A層中の配合量>キャップ−B層中の配合量≧ベース−C層中の配合量(但し、ベース−C層中の配合量は実質上ゼロである。)
【0013】
上記キャップ−B層中の配合量がキャップ−A層中の配合量より大きい場合には特に低温での硬度上昇により十分な氷雪上性能が確保できないので好ましくない。
【0014】
本発明のA,B及びC層においては前記したゴムにカーボンブラックを配合することができる。本発明で使用するカーボンブラックとしては従来から重荷重用空気入りスタッドレスタイヤに使用されているカーボンブラックを用いることができる。
【0015】
本発明に係る空気入りスタッドレスタイヤのトレッド部のA,B及びC層を構成するゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、シリカなどの補強剤(フィラー)、加硫促進剤、老化防止剤などの従来から空気入りタイヤ用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる配合物は一般的な方法で混練、加硫して組成物とし、加硫することができる。これらの添加剤の配合量も本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
実施例1〜2及び比較例1〜5
表Iに示す構成のトレッド層A−1又はA−2、B−1又はB−2及びC−1又はC−2層を調製した。使用したゴム及びカーボンブラックは以下の通りである。
NR:天然ゴム(RSS 3号)
BR:日本ゼオン製 BR Nipol BR1220
カーボンブラックISAF:昭和キャボット製 ショウブラックN220
カーボンブラックSAF:東海カーボン製 シースト9
【0017】
トレッド構成層A−1〜C−2の各層を構成するゴム組成物には以下の添加剤を共通に配合した(配合量はゴム100重量部当りの重量部である)。
Figure 0004765147
【0018】
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.8リットルの密閉型ミキサーで3〜5分間混練し、165±5℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄を8インチのオープンロール混練し、ゴム組成物を得た。次に、この組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で20分間プレス加硫して目的とする試験片(ゴムシート)を調製し、加硫物性を評価した。結果を表Iに示す。
【0019】
各例において得られた組成物の評価物性の試験方法は以下の通りである。
氷上性能指数:フリティッシュペンデュラムテスターを用いて、氷温−3℃の氷盤で氷上スキッド抵抗を測定した。トレッドA−1の値を100℃した指数値で示した(大ほど氷上性能良)。
耐摩耗性指数:ランボーン摩耗試験機(岩本製作所(株)製)を使用して、荷重5kg、スリップ率25%、時間4分、室温の条件で測定した摩耗減量を指数として示した(数字が大きい程耐摩耗性が良好)。
【0020】
【表1】
Figure 0004765147
【0021】
次に、上で得たタイヤトレッド用ゴム組成物A−1〜C−2を表IIに示す組み合せ及びゲージ比で用いて3層構造のタイヤトレッド部を製造した。製造方法は以下の通りである。
3色押出機を用いて一体押出で、実施した。但し、A/B/Cをそれぞれ単独押出してから圧着成形、或いはA/B一体押出(又はA単独押出)とA単独押出(又はB/C一体押出)を圧着成形のいずれでも可能である。
【0022】
【表2】
Figure 0004765147
【0023】
【表3】
Figure 0004765147
【0024】
得られた3層構造のタイヤトレッドの物性を以下の方法で評価し、結果を表IIに示した。
氷上性能指数:残溝50%時点で露出しているトレッドの前述の氷上性能指数で代用した(大ほど良)。
トレッド耐摩耗指数:溝底から上に位置するトレッドに占めるA/B/Cの各々の今回の内、ゲージ比率と前述の耐摩耗性指数との積の和をトレッド耐摩耗性指数とした(大ほど良)。
【0025】
耐チッピング性:溝底からのトレッド残溝15%時点での表面状態を目視確認し、トレッド部分の欠け(チッピング)の大きさより耐チッピング性の良否を判断した。
Figure 0004765147
成形作業性:押出日から3日後にトレッドを成形使用し、成形ドラム上でトレッドを巻付ける作業においてトレッド先端の剥がれ落ちの有無から成形作業性良否を判断した。
Figure 0004765147
マイグレーション防止:溝底からのトレッド残溝が3mm時点でのタイヤ最外層に位置するスチールベルトの外層被服ゴムを採取し、JIS K6229規定に従い、アセトンによる抽出成分の重量百分率を求めた。予め測定しておいた新品時被服ゴムのアセトン抽出成分の重量百分率の差をオイルマイグレーション量とした。
Figure 0004765147
カーフクラック性:残溝3mm時点でのトレッドカーフ間のクラック発生状況を測定した。
Figure 0004765147
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に従った重荷重用空気入りスタッドレスタイヤは、少なくとも氷上性能が重視されるプラットフォームまでは氷上性能を重視したキャップゴム層Aで走行し、NR/BRブレンドでカーフクラック防止効果ももたせ、摩耗の中期以降の耐摩耗性および末期の耐チッピング性はトレッド部のキャップゴム層Bで確保する。またゴム層Aでは低硬度化のために軟化剤/可塑剤を配合することができるが、ゴム層Bではゴム層Aより少なくし、更にゴム層Cでは配合量を実質的に0とすることによりスチールベルト層への軟化剤のマイグレーションによる耐久性の低下を防止することができる。なお、本発明では天然ゴム/ポリブタジエンゴムからなるゴム層A及びBで耐摩耗性を確保し(ゴム層Aは溝底のクラック防止)、天然ゴム(又はポリイソプレンゴム)からなるゴム層Cによりタックおよびスチールベルト層への接着性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る重荷重用空気入りスタッドレスタイヤのトレッド部の構造の一例を示す図面である。
【符号の説明】
1…トレッド部
2…キャップ−A層
3…キャップ−B層
4…ベース−C層
5…ショルダー部
6…クラウンセンター部
7…溝底

Claims (1)

  1. トレッド部がキャップ−A,キャップ−B及びベース−Cの3層構造から成り、かつキャップ−A層に溝底が位置するトレッド部を有する重荷重用空気入りスタッドレスタイヤにおいて、
    ショルダー部およびクラウンセンター部でのA層/B層/C層のゲージ比が35〜80/60〜20/2〜20(合計100%とする)で、ベース−C層がタイヤショルダー部からクラウンセンター部において各溝底を繋いだ線よりも下に位置し
    キャップ−A層は天然ゴム(NR)/ポリブタジエンゴム(BR)=40〜80/60〜20(重量%比)(合計100%とする)で、キャップ−B層はNR/BR=60〜100/40〜0(重量%比)(合計100%とする)、ベース−CはNR及び/又はポリイソプレンゴム(IR)から構成され、そして
    キャップ−A層、キャップ−B層及びベース−C層の中の軟化剤及び/又は可塑剤の合計配合量が
    キャップ−A層中の配合量>キャップ−B層中の配合量≧ベース−C層中の配合量(但しベース−C層中の配合量は実質上ゼロである)
    の関係を満足する重荷重用空気入りスタッドレスタイヤ。
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