以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。はじめに図1〜図4を参照しながら、芝刈機の概要について説明する。図1は芝刈機の全体の側面図、図2は同平面図、図3は芝刈機の走行機体を示す側面図、図4は同平面図である。
図1及び図2に示すように、この実施形態の芝刈機においては、走行機体1は、複数の横桟フレーム2を介して一体的に連結された左右の機体フレーム3,4を備えている。当該機体フレーム3,4は、その左右両側の前後に配置した左右の前車輪5及び左右の後車輪6によって支持されている。
走行機体1の上面前部を覆うフロントカウル7の上側のボンネット8には、動力源としてのエンジン9が内蔵されている。ボンネット8の後部の上方側には、丸形の操向ハンドル10を有する操縦コラム部11が搭載されている。操縦コラム部11の進行方向に向かって右側の下方には、車速を適宜調節するための変速ペダル12と、走行機体1を制動操作するためのブレーキペダル13とが配置されている。
走行機体1の上面後部を覆うリヤカウル14上には運転座席15が設けられている。この運転座席15に座ったオペレータが操向ハンドル10を回動操作することにより、その操作量(回動量)に応じて左右の前車輪5の舵取り角(操向角度)が変わるように構成されている。運転座席15の左側には、後述するモア装置16を昇降操作するためのモア昇降レバー17が前後回動可能に設けられている。運転座席15の右側には、モア装置16を駆動または停止操作するためのPTOクラッチレバー18が前後回動可能に設けられている。
リヤカウル12内には、静油圧式無段変速機(HST式)等を有するミッションケース19が配置されている。機体フレーム3,4の後部に前低後高形の傾斜部を形成し、機体フレーム3,4の傾斜部の前後幅の中間部にミッションケース19を支持している。ミッションケース19は、エンジン9からの動力をミッションケース19によって適宜変速して左右の後車輪6に伝達するように構成されている。機体フレーム3,4の傾斜部の後端部に、エンジン9に燃料を供給する燃料タンク20を搭載している。右機体フレーム4の傾斜部の外側に、ミッションケース19の静油圧式無段変速機69等に作動油を供給するオイルタンク21を搭載している。オイルタンク21と反対側で、燃料タンク20を挟むように、左機体フレーム3の傾斜部の外側に、エンジン9の始動等に用いるバッテリ22を搭載している。
機体フレーム2の下面のうち左右両前車輪5と左右両後車輪6との間には、芝刈り用のモア装置16が前後のリンク杆23,24を介して昇降動可能に装着されている。モア装置16は、下向き開口椀状のモアケース25内に、水平回転可能な左右一対のロータリ刈刃(図示省略)を備えている。また、モアケース25の左右両側の前後には、下降時にモア装置16の高さを調節する4つの前後のゲージ車輪26,27が取付けられている。モアケース25の上面には、後向きに開口したダクト部28が設けられている。
ダクト部28は、機体フレーム3,4の下面のうち左右両後車輪6の間に配置した排出ダクト29を介して走行機体1の後部に配置した集草ボックス30に連通している。集草ボックス30は、網状シートを四角箱形に張設して形成し、集草ボックス30の上面を防塵カバー31によって覆っている。モアケース25内のロータリ刈刃によって刈取られた芝草は、そのロータリ刈刃の起風によってダクト部28から排出ダクト29を介して集草ボックス30の内部に搬送され、モア装置16で刈取られた芝草が集草ボックス30に収集されるように構成している。
次に、図1乃至図6を参照しながら、芝刈機の動力伝達系統について説明する。この実施形態の芝刈機では、エンジン9の回転動力の一部を左右両後車輪6に配分する二輪駆動方式が採用されている。
すなわち、エンジン9の回転動力の一部は、当該エンジン9から前後外向きに突出する出力軸32の後端部から、前後両端に自在継手を備えた推進軸33と、ミッションケース19よりも前方の部位に配置した走行用伝動中継ケース34と、後述する無端入力ベルト35とを介して、ミッションケース19に伝達される。そして、このミッションケース19に左右外向きに突設した水平な後輪駆動軸36から、無端後輪駆動チェン37及びスプロケット38,39を介して走行機体1の後ろ寄り部位に設けた左右長手の車軸40に伝達される。その結果、車軸40の左右両端に取付けた後車輪6が回転駆動されることになる。
他方、エンジン9の他の回転動力は、出力軸32の前端部から、PTO動力伝達用の無端PTO伝動ベルト41を介して、機体フレーム4の前部に軸支したPTO軸42に伝達される。次いで、このPTO軸42から、前後両端に自在継手を備えた中間軸43を介して、モアケース25の上面のうち機体フレーム4よりも右側の部位に配置したモア用ギヤボックス44に動力伝達される。その結果、モアケース25内の左ロータリ刈刃(図示省略)は平面視で時計方向に回転駆動し、右ロータリ刈刃(図示省略)は平面視で反時計方向に回転駆動し、左右ロータリ刈刃によって芝草を刈取りながら、刈取った芝草をモアケース25の左右幅の中央に集めてダクト部28から排出ダクト29に放出することになる。
次に、図5及び図6を参照しながら、ミッションケース19及び走行用伝動中継ケース34の取付け構造及び動力入力構造について説明する。図6及び図7に示されるように、ミッションケース19の前部の左側は、左機体フレーム3の受け台45にボルト46にて締結する。同じく、ミッションケース19の前部の右側は、右機体フレーム4の受け台47にボルト48にて締結する。
図6に示されるように、ミッションケース19の後部の左側及び右側に、左右の後輪駆動軸36をそれぞれ軸支するための左右の変速出力用の軸受部19aをそれぞれ突出し、左右の機体フレーム3,4の受け台49に左右の変速出力用の軸受部19aを各2本のミッション取付ボルト50にてそれぞれ締結する。即ち、排出ダクト29の上方で、排出ダクト29の上面に沿わせて前低後高形に走行機体1の機体フレーム3,4を傾斜させ、その機体フレーム3,4の前後方向の傾斜部の中間にミッションケース19を前低後高形(前傾形)に傾斜させて支持することになる。
左の変速出力用の軸受部19aを締結する2本のミッション取付ボルト50のうち、ほかのミッション取付ボルト50よりも長尺に機体前方側のミッション取付ボルト50aを形成する。その機体前方側のミッション取付ボルト50aの頭部側に、後述するバネ取付け部51としての円筒体51a及び鍔体51bが被嵌されている。円筒体51aの外径より鍔体51bの外径を大きく形成している。
なお、ミッション取付ボルト50aの頭部と、左の変速出力用の軸受部19aとの間に、円筒体51a及び鍔体51bを挟むように、軸受部19aがミッション取付ボルト50aによって締結される。即ち、円筒体51a及び鍔体51bは、左の変速出力用の軸受部19aとともに、ミッション取付ボルト50aによって受け台49に締結されることになる。
一方、図6に示されるように、左右の機体フレーム3,4に左右の連結ブラケット2bをボルト53にてそれぞれ締結し、左右の連結ブラケット2bにパイプ形の横桟フレーム2aの両端部を一体的に連結する。走行用伝動中継ケース34の前面側は、横桟フレーム2aに固着した受け台52に2本のボルト54にて締結されている。また、走行用伝動中継ケース34の底部は、端面が四角パイプ形の左機体フレーム3の内側の側面に2本のボルト55にて締結されている。即ち、機体フレーム3,4の前後方向の傾斜部の前端側(傾斜下端側)に、前傾形(前低後高形)に傾斜させた姿勢で、走行用伝動中継ケース34が支持されることになる。
図5及び図6に示されるように、伝動中継ケース34の前面で前側方に中継入力軸56を突出し、推進軸33の後端側にこの自在継手33aを介して中継入力軸56を連結する。伝動中継ケース34の上面に上向きに中継出力軸57を突出し、その中継出力軸57に、エンジン9の動力を伝える中継プーリ58を被嵌する。中継入力軸56と中継出力軸57とは、伝動中継ケース34に内蔵したベベルギヤ(図示省略)等を介して連結されている。
また、ミッションケース19の上面に上向きに変速入力軸59を突出し、その変速入力軸59に、空冷ファン60を有する変速入力プーリ61を被嵌する。中継プーリ58と変速入力プーリ61とは、機体フレーム3,4と略平行な平面上に配置されることになる。
中継プーリ58と変速入力プーリ61との間に、テンションローラ62を介してVベルト形の入力ベルト35が張設されている。テンションアーム64の先端側の上面に支点軸体64aを上向きに突出し、支点軸体64aにテンションローラ62を回転自在に軸支する。テンションアーム64の基端側は、中継出力軸57回りに回動可能に伝動中継ケース34に軸支されている。中継プーリ58の下方側でテンションアーム64が中継出力軸57回りに回動することになる。
テンションアーム64の下面側に下向きに係止軸体65を突出し、係止軸体65にテンションバネ66の一端側のバネフック66aを連結する。上述した円筒体51a及び鍔体51bを有するバネ取付け部51にテンションバネ66の他端側のバネフック66bを連結する。バネフック66bは円筒体51aに係止される。バネフック66bが円筒体51aから離脱するのを鍔体51bにて阻止され、バネ取付け部51にテンションバネ66が係止維持されることになる。なお、テンションバネ66は引張バネにて形成している。
上記の構成により、テンションバネ66は、側面視において、左の機体フレーム3と入力ベルト35との間で、左の機体フレーム3及び入力ベルト35と略平行に延設されている。また、テンションバネ66は、平面視において、左の機体フレーム3及び入力ベルト35と交叉する方向に延設されている。そして、テンションバネ66によって入力ベルト35にテンションローラ62が圧接されて、入力ベルト35の緊張力が設定値に維持され、エンジン9からの動力が、伝動中継ケース34及び入力ベルト35を介して、ミッションケース19に伝えられる。したがって、ミッションケース19の後輪駆動軸36から変速された走行駆動力が出力され、その走行駆動力によって後車輪6が駆動されて、走行機体1が前進または後進方向に移動する。
図1、図6に示されるように、走行機体1の下面側に配置した草刈部としてのモア装置16と、走行機体1の後方に配置した集草部としての集草ボックス30との間に、刈取った芝草を搬送するための排出ダクト29を延設し、排出ダクト29の上方で前低後高形に傾斜させた走行機体1に、ミッションケース19を前低後高形に傾斜させて支持し、ミッションケース19の前側方の走行機体1に走行用伝動中継ケース34を配置し、走行用伝動中継ケース34の上面に上向きに突出した中継出力軸57に、エンジン9の動力を伝える中継プーリ58を取付け、ミッションケース19の上面に上向きに突出した変速入力軸59に、変速入力プーリ61を取付けた構造であって、中継出力軸57回りに回動可能なテンションアーム64にテンションローラ62を配置し、テンションアーム64にテンションバネ66を連結し、変速入力プーリ60と中継プーリ58との間に、テンションローラ62を介して変速入力ベルト35を張設したものであるから、排出ダクト29の上方にミッションケース19をコンパクトに配置でき、且つ走行機体1にミッション取付ボルト50aを介してテンションバネ66を高剛性に支持できる。
しかも、上記の構成により、エンジン9の動力を1本の推進軸33にてミッションケース19に伝達するものでありながら、排出ダクト29の通風断面積(上下幅寸法及び左右幅寸法)を所定の大きさに確保できるように、ミッションケース19を走行機体1の高い部位に配置した状態で、伝動中継ケース34の上下伝達寸法だけ推進軸33を低く配置できるから、エンジン9とミッションケース19との間で、運転座席15に座乗姿勢のオペレータが足を載せる走行機体1の床面(ステップ)の下方に推進軸33を配置しても、走行機体1の床面(ステップ)を低く形成できる。したがって、ミッションケース19への動力伝達機構を簡単に構成することと、走行機体の左右幅の中央部に大きな排出ダクト29を配置して刈取り芝草の後方への排出を円滑にすることと、且つオペレータが運転座席15に簡単に乗降することを、同時に達成できる効果がある。
また、ミッションケース19に内蔵した無段変速機69には、上述したオイルタンク21内の作動油がチャージ油管70を介して供給される。また、その無段変速機69の入力側(後述する油圧ポンプ102)の回転の有無に関らず、無段変速機69の出力側(後述する油圧モータ103)の回転を略零に維持するためのバイパス切換アーム71がミッションケース19の上面に配置されている(図6参照)。即ち、バイパス切換アーム71の切換操作によって無段変速機69の入力側(油圧ポンプ102)を短絡し、無段変速機69の出力側(油圧モータ103)を無負荷にできる。
バイパス切換アーム71には、バイパス切換アーム71を切換操作するバイパス切換レバー72の一端側が連結されている。バイパス切換レバー72の他端側は、左右の機体フレーム3,4の間で、それらの後端部に延設されている(図6参照)。例えば燃料タンク20の燃料がなくなる等の故障により、エンジン9の動力によって後車輪6を駆動できない状態になった場合、走行機体1から集草ボックス30を取外し、オペレータがバイパス切換レバー72を引き操作し、バイパス切換アーム71を切換えて、ミッションケース19内の無段変速機69を無負荷状態に保ち、オペレータが走行機体1を押して移動できる。
なお、オペレータがバイパス切換レバー72を押し操作し、バイパス切換アーム71を初期位置に戻すことにより、ミッションケース19内の無段変速機69を運転状態に復帰できる。
図7は本実施形態の作業車両の油圧回路104を示し、エンジン9の回転力により作動するチャージ用油圧ポンプ105を備える。チャージ用油圧ポンプ105は、集草ボックス30昇降用の複動式の昇降油圧シリンダ106に作動油を供給するための昇降用油圧切換弁107に接続している。したがって、オペレータが集草ボックス昇降レバー108を操作して、昇降用油圧切換弁107を切換えて、昇降油圧シリンダ106を作動させることにより、集草ボックス30が上昇して内部の草を放出する一方、集草ボックス30が下降してモア装置16で刈取った草を投入する位置に支持されることになる。
図7に示すように、上述した油圧無段変速機69の可変容量形の変速用油圧ポンプ102と、この油圧ポンプ102から吐出される高圧の作動油にて作動する定容量形の変速用油圧モータ103とは、閉ループ油路109を介してそれらの吸入側及び吐出側が接続されている。前記エンジン9の動力にとって駆動される変速用油圧ポンプ102の斜板110を、変速ペダル12にて角度調節することにより、変速用油圧モータ103を介して駆動される主変速出力軸111の回転数が変更される。したがって、主変速出力軸111を介して駆動される後車輪6の回転速度が変更されることになる。
上述した油圧回路104には、図7に示すように、リリーフ弁やオイルフィルタ、チェック弁等を備えている。チャージ用油圧ポンプ105の吸入側には、低圧チャージ油路112を介して、作動油タンクとしてのオイルタンク21の内部のストレーナ113を接続している。チャージ用油圧ポンプ95の吐出側には、補給用リリーフ弁114、及び戻し用リリーフ弁115を配置した高圧チャージ油路116が接続されている。高圧チャージ油路116は、補給用リリーフ弁114、及び前進補充用のチェック弁117、及び後進補充用のチェック弁118等を介して、閉ループ油路109に接続されている。
即ち、エンジン9を作動中、チャージ用油圧ポンプ102からの作動油が閉ループ油路109に常に補充されることになる。また、チャージ用油圧ポンプ105から閉ループ油路109に供給するためのチャージ油路116の作動油が余った場合、チャージ油路116の作動油が戻し用リリーフ弁115を介してオイルタンク21に戻されることになる。なお、昇降用油圧切換弁107のタンクポートが、戻し用リリーフ弁115に、並列状のラインフィルタ119、及びリリーフ弁120を介して接続され、昇降用油圧切換弁107からの作動油は、ラインフィルタ119を介してオイルタンク21に戻されることになる。
一方、閉ループ油路109には、変速用油圧ポンプ102の吸入側及び吐出側、変速用油圧モータ103の吸入側及び吐出側を短絡するためのバイパスバルブ121を接続している。上述したバイパス切換レバー72を前方に押し操作した場合、変速用油圧ポンプ102の吸入側及び吐出側、変速用油圧モータ103の吸入側及び吐出側を遮断する状態(図7のバイパスバルブ121の状態)にバイパスバルブ121を切換え、変速用油圧ポンプ102と変速用油圧モータ103とを走行駆動状態に接続することになる。一方、バイパス切換レバー72を後方に引き操作した場合、変速用油圧ポンプ102の吸入側及び吐出側、変速用油圧モータ103の吸入側及び吐出側を短絡する状態にバイパスバルブ121を切換え、変速用油圧モータ103を自由回転状態(無負荷で回転する状態)に保つことになる。
即ち、燃料不足等によってエンジン9の動力を利用して後車輪6を駆動することができない場合、集草ボックス30を取外して、機体フレーム3,4の後方に作業者が位置し、バイパス切換レバー72を後方に引き操作した状態で、作業者が機体フレーム3,4を押して移動させることになる。この場合、変速用油圧ポンプ102が停止した状態で、変速用油圧モータ103が殆ど無負荷で自由に回転するから、機体フレーム3,4を押すための作業者の労力を軽減できる。
次に、図8乃至図12を参照して、燃料タンク20及びバイパス切換レバー72の構造について説明する。図8乃至図10に示されるように、ブロー成形加工によって形成した合成樹脂製の燃料タンク20の左右側面から左右側方に向けて略水平に左右のタンク取付け座20aを突出する。左右の機体フレーム3,4の外側に左右の側枠フレーム3a,4aを固着し、左右の機体フレーム3,4の上方に延出した左右の側枠フレーム3a,4aの上面側に、左右のタンク取付け座20aを上方から当接する。左右の側枠フレーム3a,4aの上面側に左右のタンク取付け座20aをボルト122にて締結する。
燃料タンク20は、左右の機体フレーム3,4の上面とリヤカウル14の下面との間に配置している。燃料タンク20の上面に給油口123を設ける。その給油口123の着脱可能な給油キャップ124は、リヤカウル14の上面側に突出されている(図1参照)。リヤカウル14の上面側で、作業者が給油キャップ124を開閉操作し、給油口123から燃料タンク20に燃料を補給することになる。なお、給油口123から外側に漏れた燃料を受ける受け皿125と、その受け皿125の燃料を走行機体1の下方に排出するドレンパイプ126とを備えている。また、燃料タンク20の内部には、燃料の残量を測定する燃料測定機構127を配置している。
図8乃至図11に示されるように、燃料タンク20の底部の略中央で走行機体1の前進方向に向かって右寄りに、下向きに突出した燃料取出し口128を配置し、その燃料取出し口128に燃料供給パイプ129の一端側を接続し、エンジン9に燃料供給パイプ129を介して燃料タンク20内の燃料を供給する。また、燃料タンク20の上面の略中央で上向きに燃料戻し口130を突出し、その燃料戻し口130に燃料戻しパイプ131の一端側を接続し、エンジン9から燃料戻しパイプ131を介して余った燃料を燃料タンク20内に戻す。即ち、エンジン9と燃料タンク20とに、燃料タンク20内の燃料を循環させることにより、エンジン9によって加熱された燃料が、その循環によって燃料タンク20側で冷却されながら、エンジン9に供給されることになる。
なお、エンジン9はディーゼルエンジンであり、エンジン9の燃料として軽油が使用されている。エンジン9には、図示しない燃料供給ポンプ、及び燃料フィルタ、及び燃料噴射ポンプ、及び燃料噴射バルブ等が付設されている。その燃料供給ポンプ、及び燃料フィルタ、及び燃料噴射ポンプ、及び燃料噴射バルブ等を介して、エンジン9に燃料タンク20内の燃料が供給されることになる。
図10乃至図12に示されるように、燃料タンク20の底部は、その左右及び前後の中央付近が最も低くなるように、下向き四角錐形状に形成している。下方に突出した燃料タンク20の底部の谷底部20bを挟んで前側と後側とに、前後方向及び下方向に開放した前側凹部132aと後側凹部132bとを形成している。谷底部20bから燃料タンク20の前側及び後側に向かって前側凹部132a及び後側凹部132bの高さ寸法(燃料タンク20の内方への突出寸法)を少しずつ大きく形成している。前側凹部132a及び後側凹部132bの形成により、前側凹部132a及び後側凹部132bの両側部に前後方向に長い前側リブ133及び後側リブ134が形成されることになる。
図8乃至図12に示されるように、燃料タンク20の底部の略中央で、谷底部20b及び前側凹部132a及び後側凹部132bが、走行機体1の前後方向に延びた直線上に形成されている。前側リブ133及び後側リブ134は、断面U字状の前側凹部132a及び後側凹部132bと、燃料タンク20の他の底部との連結部に形成される。前側リブ133及び後側リブ134によって燃料タンク20の左右幅の中間の底部中央が補強されることになる。また、燃料タンク20内の左右の底部が谷底部20bの上面を介して連通されて、燃料タンク20内の燃料が、谷底部20bの上面を介して、左右いずれか一方の側から反対側に移動することになる。
図12に示されるように、燃料取出し口128の開口縁128aより、前側リブ133及び後側リブ134が形成された燃料タンク20の底部を低く形成する。燃料取出し口128の開口縁128aより寸法Lだけ低い位置に谷底部20bの上面が形成されている。即ち、外部から燃料タンク20に入った塵が沈殿した場合、沈殿した塵が谷底部20bに溜まることになる。また、燃料取出し口128を設けた燃料タンク20の右側底部に、燃料タンク20の左側底部に沈殿した塵が移動するのを、前側リブ133及び後側リブ134によって防止されることになる。したがって、沈殿した塵が燃料取出し口128に吸込まれるのを防止し、燃料取出し口128に吸込まれる塵の量を低減し、エンジン9に付設した燃料フィルタの塵詰り等を低減できる。
他方、図8及び図11に示されるように、上述したバイパス切換レバー72には、側面視で縦方向にクランク状に折り曲げて、クランク前部72aと、クランク中間部72bと、クランク後部72cとを形成している。機体フレーム3,4上で前方のミッションケース19と後方の燃料タンク20との間にクランク中間部72bを配置する。ミッションケース19の上面側にクランク前部72aを延長して、クランク前部72aの前端部に、上述したバイパス切換アーム71を連結する。燃料タンク20の下面と、上述した排出ダクト29の上面壁29aの上面との間に、クランク後部72cを配置している。排出ダクト29の上面壁29aに燃料タンク20の底部が近接することにより、クランク後部72cが後側凹部132bに前後方向に移動可能に挿通されることになる。
上述したクランク後部72cの後端側は、機体フレーム3,4の後部後方、換言すると、燃料タンク20の後部後方に突出している。クランク後部72cの後端部を横方向に折り曲げて、クランク後部72cの後端部に握り部72dを一体的に形成している(図10参照)。走行機体1から集草ボックス30を取外すことにより、走行機体1の後方に握り部72dが露出され、走行機体1の後方に位置する作業者によって握り部72dが前後方向に押し引き操作されることになる。
上記の構成により、例えば芝刈り作業中、燃料不足等によってエンジン9が停止し、エンジン9の動力によって移動できなくなった場合、走行機体1の後部から集草ボックス30を取外し、作業者が走行機体1の後方に位置し、作業者が握り部72dを握ってバイパス切換レバー72を後方に引き操作することにより、前側凹部132a内にクランク中間部72bが入り込む。一方、バイパス切換レバー72の前端側のバイパス切換アーム71が切換えられ、上述した油圧モータ103が自由に回転する状態に保たれる。したがって、作業者が走行機体1を押して、燃料補給場所等に走行機体1を移動させる場合、後車輪6の回転が油圧ポンプ102からエンジン9に伝わらないので、作業者が走行機体1を押した際にエンジン9が回転するのに比べて、エンジン9の回転に必要な労力だけ、走行機体1を押すための作業者の労力を軽減できることになる。
なお、燃料の補給等が完了して、エンジン9の駆動によって走行機体1の自走が可能になった場合、作業者が握り部72dを握ってバイパス切換レバー72を前方に押し操作することにより、バイパス切換アーム71が切換えられ、油圧モータ103を走行駆動状態に戻すことができる。走行機体1の後部に集草ボックス30を再び装着し、芝刈り作業を再開できることになる。
上記の記載及び図11、図12から明らかなように、走行機体1に搭載されたエンジン9と、走行機体1に設けた走行部としての前車輪5及び後車輪6にエンジン9の動力を変速して伝えるミッションケース19と、エンジン9に燃料を供給する燃料タンク20とを備えてなる作業車両において、燃料タンク20の底部に、その燃料タンク20の左右幅の中間で、前後方向及び下方向に開放した前側凹部132a及び後側凹部132bを形成し、前側凹部132a及び後側凹部132bに操作レバーとしてのバイパス切換レバー72の中間部を挿通し、燃料タンク20の前後方向にバイパス切換レバー72の両端側を延設したものであるから、前側凹部132a及び後側凹部132bの形成によってバイパス切換レバー72の設置位置より低い位置に燃料タンク20の底部を突出して、燃料タンク20の容量を確保できる。また、燃料タンク20内の左右幅の中間(底部中央の内面)に、前側凹部132a及び後側凹部132bの形成によって、前後方向に長い前側リブ133及び後側リブ134を形成できる。燃料タンク20の底部近傍でその内部が前側リブ133及び後側リブ134によって左右に仕切られることにより、燃料タンク20に入った塵等の堆積物を前側リブ133及び後側リブ134の近傍で燃料タンク20の底部に沈殿させることができ、その堆積物の移動を前側リブ133及び後側リブ134によって阻止できる。したがって、燃料タンク20の底部の堆積物が燃料供給パイプ129に流入するのを、前側凹部132a及び後側凹部132bの形成によって防止できる。且つ燃料タンク20の底部の中央部の強度を、前側凹部132a及び後側凹部132bの形成によって簡単に向上でき、燃料タンク20の前後左右の横幅寸法を大きく形成できる。
例えば合成樹脂製の燃料タンク20では、従来、その燃料タンク20の底部中央にリブを形成して、燃料タンク20の底部中央の強度を向上させる場合、低コストのブロー成形加工等では、燃料タンク20の底部中央の内面側にリブを簡単に形成できないから、燃料タンク20の底部中央の下面にリブを下方に突出する必要があり、タンク容量が小さくなる問題がある。なお、燃料タンク20の底部の下面を扁平に形成する構造では、燃料タンク20の前後左右の横幅寸法が制限されるから、上下の高さ寸法を大きくして容量を維持する必要がある。本発明では、合成樹脂材料を低コストの成形加工(ブロー成形)によって燃料タンク20を形成しても、燃料タンク20の底部に、その燃料タンク20の左右幅の中間で、前後方向及び下方向に開放した前側凹部132a及び後側凹部132bを形成することにより、燃料タンク20の底部中央の内面に前後方向に長い前側リブ133及び後側リブ134を形成でき、その前側リブ133及び後側リブ134によって燃料タンク20の底部中央を補強できるから、タンク容量を小さくすることなく、またタンク高さ寸法を大きくすることなく、低コストの成形加工(ブロー成形)によって、大きなタンク容量で横幅(前後幅、左右幅)が広くて上下の高さ寸法が小さい燃料タンク20、即ち底面積が大きい合成樹脂製の燃料タンク20を高剛性構造に簡単に形成できる。
上記の記載及び図7から明らかなように、ミッションケース19に、油圧ポンプ102及び油圧モータ103等を有する油圧無段変速機69を備え、油圧無段変速機69の油圧モータ103を走行駆動状態または自由回転状態のいずれか一方に切換えるためのアンロード機構としてのバイパスバルブ121を配置し、バイパスバルブ121の切換手段としてのバイパス切換アーム71にバイパス切換レバー72の一端側を連結したものであるから、ミッションケース19から燃料タンク20の下方を介して走行機体1の外側方にバイパス切換レバー72を延長でき、走行機体1の外側方で、作業者がバイパス切換レバー72を手動操作して、バイパスバルブ121を切換えることができる。例えば、走行機体1の後方に位置した作業者によって、バイパス切換レバー72を操作して油圧モータ103を走行駆動状態または自由回転状態に切換えることができる。したがって、燃料不足等によって走行不能になっても、走行機体1の後方に位置した作業者が、バイパス切換レバー72を操作して、走行機体1を押して移動する作業を簡単に実行できる。
上記の記載及び図1、図8、図10、図11から明らかなように、走行機体1における左右の機体フレーム3,4上にミッションケース19を配置し、左右の機体フレーム3,4の間でこれらの下方側に排出ダクト29を配置し、走行機体1の下方のモア装置16にて刈取った草が、走行機体1の後方の集草部としての集草ボックス30に排出ダクト29を介して排出されるように構成し、ミッションケース19の後方の前記左右の機体フレーム3,4上に燃料タンク20を配置し、燃料タンク20の後方にバイパス切換レバー72の他端側を突出したものであるから、排出ダクト29の上方に燃料タンク20の設置スペースを確保しながら、排出ダクト29の上面と燃料タンク20の下面との間を利用して、前方のミッションケース19から走行機体1の後方にバイパス切換レバー72を延長できる。したがって、走行機体1を押して移動し易い後方位置で、作業者がバイパス切換レバー72を簡単に操作できるものでありながら、排出ダクト29の上面と燃料タンク20の下面とを接近させて、燃料タンク20を大容量に形成できる。また、燃料タンク20及びバイパス切換レバー72の設置によって、排出ダクト29の上面の高さを低くする必要がないから、刈取った草の排出に必要な充分な大きさに排出ダクト29の断面積を形成でき、刈取った草が排出ダクト29の内部に詰るのを防止できる。
上記の記載及び図9、図10から明らかなように、機体フレーム3,4の後端側に走行部としての後車輪6を配置し、後車輪6の上方側に、燃料タンク20と、ミッションケース19等に作動油を供給するオイルタンク21と、エンジン9の始動等に使用するバッテリ22とを配置し、燃料タンク20を挟んでその左右両側方にオイルタンク21及びバッテリ22を配置したものであるから、後車輪6及び排出ダクト29の上方で、機体フレーム3,4の上面側に略横一列に、燃料タンク20及び前記オイルタンク21及びバッテリ22を支持でき、燃料タンク20内の燃料の増減に殆ど関係なく走行機体1の左右バランスを良好に維持でき、走行機体1の横転等を防止できる。また、排出ダクト29の後端側の走行機体1の高位置に、燃料タンク20及びオイルタンク21及びバッテリ22を設置できるから、燃料タンク20又はオイルタンク21又はバッテリ22が倒木等の障害物に衝突して損傷するのを防止できる。