以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図23)に基づいて説明する。図1は実施形態における芝刈機の側面図、図2は図1の平面図、図3は図1において集草ボックスを取り外して斜め後方から見た斜視図、図4は図1において集草排出機構を斜め前方から見た斜視図、図5は図4のIV−IV視断面図、図6は集草排出機構を構成するリフト機構を示す斜視図、図7は図6の要部拡大図、図8は集草ボックスを最大上げ位置で斜め前方から見た斜視図、図9は集草ボックスを最大上げ位置で斜め後方から見た斜視図、図10は刈草放出作業の第1状態を示す図、図11は刈草放出作業の第2状態を示す図、図12は刈草放出作業の第3状態を示す図、図13は刈草放出作業の第4状態を示す図、図14は刈草放出作業の第5状態を示す図、図15は芝刈機の油圧回路図、図16は昇降操作レバー及び開閉操作レバーの取り付け構造を示す一部切欠き側面図、図17は昇降操作レバー及び開閉操作レバーの取り付け構造を示す正面図、図18は開閉操作レバーの作動説明図、図19は昇降操作レバーの作動説明図、図20は制限機構の電気回路図、図21はPTO規制機構の電気回路図、図22は放てき作業の状態を示す側面図、図23は走行機体の一部省略正面図である。
(1).芝刈機の概略
これらの図において、符号1は、乗用型の芝刈機を示し、この芝刈機1は、前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム3にて構成した走行機体2を有し、この走行機体2は、地面4に接地する左右一対の前輪5と、同じく地面4に接地する左右一対の後輪6とで支持され、且つ、この走行機体2には、その上面に前部から順番にエンジン7、操縦ハンドル8、操縦座席9が設けられていると共に、前記エンジン7を着脱可能に覆うボンネットカバー10、前記操縦座席9に対するステップ台11及び前記両後輪6を覆うフェンダー12が設けられている。この場合、操縦座席9に座ったオペレータが操縦ハンドル8を回動操作すると、その操作量(回動量)に応じて後述するパワーステアリング用の油圧式トルクジェネレータ137(図15参照)が作動して、左右の前車輪5の舵取り角(操向角度)が変わるように構成されている。
操縦座席9の下方には、後述する静油圧式(HST式)無段変速機95等を有するミッションケース61が配置されている。実施形態では、左右両サイドフレーム3の後部が前低後高形の傾斜部になっており、これら両傾斜部にミッションケース61が支持されている。また、ミッションケース61は、エンジン7からの動力を適宜変速して左右の後車輪6に伝達することによって、前進走行又は後退走行するように構成されている。
前記走行機体2における下面には、前輪5と後輪6との間の部位に、前記エンジン7からの動力伝達による駆動にて前記地面4における芝草を刈り取るようにしたロータリー式の芝刈り機構13が昇降可能に設けられているとともに、両後輪6間の部位に、前記ロータリー式の芝刈り機構13にて刈り取った刈草を走行機体2の後方に向かって放出するようにした排出ダクト14が後方に延びるように設けられている。
なお、前記両後輪6における中心部の外側面には、図1及び図2に示すように、金属棒を半円形のループ状等に曲げ加工して成るロープ掛け具15が、当該後輪6の中心におけるハブをその車軸に対して着脱可能に取付けるための複数本のボルト15aによる同時締結にて着脱自在に取付けされており、前記芝刈機1をトレーラ等に載せて搬送するときにおいて、当該芝刈機1のうち後部をトレーラ等に対して固定するためのロープ又は鎖等を前記ロープ掛け具15に対して掛けることができるように構成している。
このロープ掛け具15は、ループ状にすることに限らず、フック状に構成しても良いが、図示のように半円形のループ状に構成した場合には、これに草等が巻き付くことを低減できるばかりか、剛性を向上できる等の利点がある。また、このような構成のロープ掛け具15は、前記両後輪6に代えて両前輪5に設けるか、両前輪5及び両後輪6の両方に設けることができる。
前記芝刈機1の後部には、前記排出ダクト14から後方に放出される刈草を、詳しくは後述するように、集めて高く持ち上げて排出するように集草排出機構16が装着されている一方、前記芝刈機1の前部には、前記集草排出機構16に対して前後の重量バランスを図るためのウエイト17が取付けられている。
左右両サイドフレーム3における傾斜部の後端部分には、エンジン7に燃料を供給する燃料タンク62が搭載されている。右サイドフレーム3における傾斜部の外側に、ミッションケース61の静油圧式無段変速機95等に作動油を供給するためのオイルタンク63が搭載されている。左サイドフレーム3における傾斜部の外側(燃料タンク62を挟んでオイルタンク63と反対側)には、エンジン7の始動等に用いるバッテリ64が搭載されている。
(2).動力伝達系統
次に、主として図1及び図2を参照しながら、芝刈機1の動力伝達系統について説明する。
実施形態の芝刈機1では、エンジン7の回転動力の一部を左右両後輪6に配分する二輪駆動方式が採用されている。すなわち、エンジン7の回転動力の一部は、エンジン7から前後外向きに突出する出力軸65の後端部から、前後両端に自在継手を有する推進軸66と、ミッションケース61より前方の部位に配置された走行用伝動中継ケース67と、無端入力ベルト68とを介して、ミッションケース61に伝達される。そして、ミッションケース61に左右外向きに突設した水平な左右の後輪駆動軸69から、左右の無端後輪駆動チェン70を介して走行機体1の後部側にある左右の車軸に伝達される。その結果、左右の車軸に取り付けられた左右の後車輪6が回転駆動することになる。
他方、エンジン7の他の回転動力は、出力軸65の前端部から、PTO動力伝達用の無端PTO伝動ベルト71を介して、エンジン7の下方に回動可能に配置されたPTO軸72に伝達される。次いで、PTO軸72から、前後両端に自在継手を有する中間軸73を介して、芝刈り機構13の上面のうち右サイドフレーム3より更に右側の部位に配置されたモア用ギヤボックス74に動力伝達される。その結果、芝刈り機構13を構成する左右一対の刈刃(図示せず)が回転駆動し、これら両刈刃にて地面に植立した芝草等を刈り取りながら、刈草を芝刈り機構13の左右幅中央に集めて排出ダクト14に放出することになる。
実施形態では、出力軸65の前端部に固着された駆動プーリ161と、PTO軸72の前端部に固着された従動プーリ162との間に、クラッチ手段としてのPTOクラッチ163が配置されている(図23参照)。PTOクラッチ163は、駆動プーリ161と従動プーリ162とに巻き掛けられた無端PTO伝動ベルト71を緊張・弛緩させることによって、エンジン7からの動力を継断するベルトテンション式のものである。なお、図23では、説明の便宜上、ボンネットカバー10の図示を省略している。
PTOクラッチ163は、連結リンク機構165及びPTOクラッチワイヤ166を介して、継断用アクチュエータとしてのPTOクラッチモータ(図示せず)に連動連結されている。この場合、PTOクラッチモータの駆動にて、無端PTO伝動ベルト71を緊張させたり(図23の二点鎖線状態参照)弛緩させたり(図23の実線状態参照)するように、連結リンク機構165及びPTOクラッチワイヤ166を介してPTOクラッチ163を下端部の回動支軸164回りに入り切り回動させることにより、出力軸65からPTO軸72への動力伝達が継断される。
(3).集草排出機構の構成
次に、図1〜図9を参照しながら、集草排出機構16の構造について説明する。
前記集草排出機構16は、前面に前記排出ダクト14の後端が臨む開口部18aを備えた集草ボックス18と、前記集草ボックス18を、下降した位置において前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる前向きの姿勢(前面側を開口した姿勢)と、この前向き姿勢のままで高く持ち上げた状態とに往復して昇降動するように構成したリフト機構19とを備えている。
(3−1).集草ボックスの詳細
前記集草排出機構16の集草ボックス18は、左右両側面及び上面を、多孔板(パンチング板)又は金網等の通気性板製の側面板18b及び天井板18cにて囲う一方、その底面及び後面を開放するという構成であり、この集草ボックス18のうち開放された底面は、開閉自在な底蓋板20にて、同じく開放された後面は、開閉自在な後蓋板21にて塞ぐように構成されている。
前記底蓋板20は、前記集草ボックス18の左右両側面板18bの外側に固着したブラケット部材22の下端に枢着ピン23にて回動自在に枢着されている。この底蓋板20は、多孔板(パンチング板)又は金網等のように通気性を有する薄金属板を、図5に示すように、前端から後方に向かって比較的緩やかな角度で斜め上向きに傾斜する傾斜部20aと、この傾斜部20aの後端から下向きに折れ曲がる鉛直部20bとを複数回にわたって繰り返して設けるというように、高さの低い鋸歯状の断面に折り曲げることでその剛性を高めるという構成になっている。
枢着ピン23の位置は、当該底蓋板20における後端よりも前側の部位で、且つ、当該底蓋板20における前端と後端との間の中心位置よりも適宜寸法だけ後端にずれた部位に位置している。従って、前記底蓋板20は、通常の状態においてはその枢着ピン23より前側の重量にて前記集草ボックス18における左右両側面板18bの下端相互間を連結する横部材39の上面に接当して、前記集草ボックス18における開放された底部の全てを閉じて(塞いで)いるが、その後端部に対して下向きに外力が作用すると、その枢着ピン23を中心にして前端が跳ね上がるように開き回動するという構成にされている。
一方、前記後蓋板21は、同じく、多孔板(パンチング板)又は金網等のよう通気性板製であり、その左右両側面において前記集草ボックス18の左右両側面板18bの外側面にピン軸24a,25aにて回転自在に枢着して成る上下一対のリンク24,25に対して回動自在に連結することにより、前記集草ボックス18において開放された後面を閉じる状態と、後面から跳ね上がるように開く状態とに開閉作動するように構成されており、この開閉作動を、前記ブラケット部材22と、前記上下一対のリンク24,25のうち下部リンク25との間に装架した複動型の開閉用油圧シリンダ26によって行うように構成している。
前記後蓋板21と、前記底蓋板20における前端部との間を、前記集草ボックス18の内部に配設した連係手段の一例としての左右一対の金属製ワイヤ27又はチェン等の可撓性部材にて連結することにより、前記後蓋板21が開閉用油圧シリンダ26におけるピストン突出動にて集草ボックス18の後面を開放するように跳ね上がり回動すると、これに前記金属製ワイヤ27を介して連動して、前記底蓋板20が、その前端が跳ね上がる一方後端が下がるように回動して集草ボックス18の底面を開放し、前記後蓋板21が開閉用油圧シリンダ26におけるピストン後退動にて集草ボックス18の後面を閉じる状態に戻ると、これに連動して、前記底蓋板20が、その前側の重量にて集草ボックス18の底面を閉じる状態に戻るというように構成している。
前記可撓性部材を、前記したように金属製ワイヤ27にした場合には、この両金属製ワイヤ27の両端を前記底蓋板20及び後蓋板21に対してピン27a,27bにて回動自在に連結するに際し、前記金属製ワイヤ27をその長手軸線の回りに適宜角度(例えば、90〜180度)だけその弾性に抗して捩じった状態にし、この状態で前記ピン27a,27bにて結合するという構成にする。
これにより、前記底蓋板20及び後蓋板21が閉じた状態にあるとき、前記金属製ワイヤ27における途中で弛んでいる部分は、その捩じりにて、図1に示すように、前記底蓋板20の上面に接当する状態に維持できることになるから、前記集草ボックス18内への刈草の受け入れに際し、前記金属製ワイヤ27が邪魔になることを回避できる。
この場合、他の実施の形態としては、前記集草ボックス18における両外側において、前記後蓋板21に対する開閉機構であるところの前記上下部リンク24,25のうち一方又は前記開閉用油圧シリンダ26と、前記底蓋板20とを連動連結することによって、前記後蓋板21の開き作動に連動して前記底蓋板20が開き回動するように構成することができる。
底蓋板20の前部には、排出ダクト14の後端から後方に放出される刈草を集草ボックス18内に零すことなく円滑に誘導するための底部誘導板28が設けられている。図4、図9、図11及び図12に示すように、底蓋板20を閉止した状態では、底部誘導板28は、集草ボックス18の前面開口部18a(刈草受入口)から排出ダクト14に向けて前向きに突出している。底部誘導板28の前端部は、集草ボックス18が刈草を受け入れる下げ位置(図1及び図10参照)にあり且つ底蓋板20を閉止した状態で、排出ダクト14の後端部内に臨ませており、このため、底部誘導板28は、排出ダクト14の後端排出口と集草ボックス18の前面開口部18aとの間のうち底側の部分を塞いでいる。
この場合、底部誘導板28は、枢着ピン23を回動支点として底蓋板20と一体的に回動する。実施形態では、底蓋板20がその前端を跳ね上げる一方後端を下げるように回動して、集草ボックス18の底面を開放する構成が採用されている。そこで、底部誘導板28が集草ボックス18内に入り込んで底蓋板20が大きく(略鉛直に近い姿勢にまで)開き回動できるように、底部誘導板28と集草ボックス18の前面開口部18aとは、底蓋板20の開閉回動の途次において互いに干渉しない形状に形成されている。
すなわち、図14の側面視において、底部誘導板28における前端部の回動半径D(枢着ピン23から底部誘導板28の前端部までの距離)は、枢着ピン23から集草ボックス18における前面開口部18aの上縁部までの距離Lよりも小さく設定されている(D<L)。底部誘導板28の左右幅寸法は、集草ボックス18における前面開口部18aの左右内法寸法よりも小さく設定されている(図4参照)。このため、底蓋板20の開閉回動の途次において、底部誘導板28は、集草ボックス18における前面開口部18aの周縁に引っ掛かることなく、集草ボックス18内に前方からスムーズに入り込める。
実施形態の底部誘導板28は、集草ボックス18における最前部の横部材39に当接し得る底板28aと、集草ボックス18における左右両側面板18bの内面に近接する左右のガイド側板28bを備えており、正面視で上向きコ字状に形成されている。左右のガイド側板28bの後端部は底蓋板20の上面前部まで延出している。
このように構成すると、集草ボックス18が下げ位置にあり且つ底蓋板20を閉止した状態では、排出ダクト14の後端排出口と集草ボックス18の前面開口部18aとの間のうち底側の部分が上向きコ字状の底部誘導板28にて囲われることになるから、集草ボックス18内に刈草を回収する際のつなぎ目部分からの刈草のこぼれを確実に抑制できる。しかも、左右のガイド側板28bの後端部を底蓋板20の上面前部まで延出させているから、底部誘導板28の底蓋板20に対する取り付け強度(剛性)も高いのである。
(3−2).リフト機構の詳細
前記集草排出機構16におけるリフト機構19は、図3〜図7に示すように構成されている。すなわち、このリフト機構19は、前記集草ボックス18を挟む左右両側の各々に配設したマスト部材29、昇降用アクチュエータとしての複動型の昇降用油圧シリンダ30及び上下一対のリフト用リンク31,32を備え、前記両マスト部材29は、中空断面の角パイプ製で上下方向に延びて、その下端部29aにおいて前記走行機体2の後部に対してボルト59の締結等にて着脱可能に取付けられており、且つ、その相互間は複数本の横部材33にて連結され、前記芝刈機1の走行方向から見て井桁状に構成されている。
なお、この両マスト部材29の走行機体2への着脱可能な状態での取付けは、前記走行機体2における両サイドフレーム3の後端へのボルト59による締結と、前記両サイドフレーム3の後端から下向きに延びる後輪支持用フレーム3aへのボルト59による締結にて行うように構成している。
また、前記両マスト部材29は、側面視(図1、図3、図4及び図6)において、その上端部29bが前記走行機体2に対する取付け部である下端部29aよりも適宜寸法Eだけ前方に位置するように、その途中の部分において前側に曲げられており、この両マスト部材29における上端部29bの後面には、後ろ向きの溝型断面に構成した上部ブラケット部材34が溶接等にて固着されている一方、この両マスト部材29における下端には、下部ブラケット部材35が、後ろ向きに突出するように固着されている。
前記上下一対のリフト用リンク31,32の基端は、前記両マスト部材29の上端部29bにおける上部ブラケット部材34に対して、当該上部ブラケット部材34における溝内に挿入した状態で、この上部ブラケット部材34を貫通するように着脱自在に差し込んだリフトピン36,37にて回動自在に枢着されている。
つまり、前記両リフト用リンク31,32の基端に対するリフトピン36,37は、前記上部ブラケット部材34に対して両端支持の構造であることにより、当該リフトピン36,37による支持の剛性及び耐久性を向上でき、これに加えて、前記両リフト用リンク31,32の基端は、前記上部ブラケット部材34における溝内に挿入されていることにより、前記リフト用リンク31,32の横方向への振れを確実に低減できる。
また、前記両マスト部材29を、上端部29bが下端部29aよりも適宜寸法Eだけ前方に位置するというように前側に曲げた構成にしたことにより、前記上下一対のリフト用リンク31,32基端のリフトピン36,37における前記走行機体2の前後方向に沿った位置を、前記マスト部材29を真っ直ぐの構成にした場合よりも、前記適宜寸法Eだけ前方(走行機体2側)の部位に位置することができるから、前記集草ボックス18を、後述するように、最高に上昇動したときに、その最高上昇高さを前記適宜寸法Eの分だけ高くすることができ、また、その最高高さを得ることに要するリフト用リンク36,37の長さを、前記適宜寸法Eの分だけ短くできる。
しかも、この集草ボックス18における前記走行機体2に対する支持荷重の作用点が、前記適宜寸法Eの分だけ前方(走行機体2側)に位置するから、前記走行機体2における後ろ荷重を低減することができる。
一方、前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち上部リンク31の先端は、前記集草ボックス18の左右両側面板18bの外側に固着したブラケット部材22にピン38にて回動自在に枢着され、前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32の先端は、前記底蓋板20に対する枢着ピン23にて前記集草ボックス18の左右両側面板18bの下端部に対して回動自在に枢着されている。
なお、前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32の先端における前記集草ボックス18に対する枢着ピンは、前記集草ボックス18における底蓋板20に対する枢着ピン23と一体の兼用にしているが、下部リンク32先端における集草ボックス18に対する枢着ピンを、底蓋板20に対する枢着ピン23とを別体に構成できることは勿論である。
前記両マスト部材29の下端における下部ブラケット部材35の内面の各々には、レバー体40が回動自在にピン41にて枢着され、この両レバー体40の相互間は、両レバー体40が同時に回動するように横部材42を介して一体的に連結されており、この両レバー体40の各々には、前記昇降用油圧シリンダ30の基端がシリンダ枢着用ピン43にて回動自在に連結されている。
また、前記両レバー体40は、当該レバー体40が後方に回動したときに、前記シリンダ枢着用ピン43が前記下部ブラケット部材35の後端におけるストッパー部44に対して、これ以上の後方回転を阻止するように接当するという構成である。
この場合、前記ストッパー部44に対して前記シリンダ枢着用ピン43が接当するという構成にすることに代えて、前記ストッパー部44に対して前記レバー体40に設けた別のストッパー部材が接当するという構成にしても良い。
これに加えて、前記両レバー体40には、当該レバー体40が後方回動して、シリンダ枢着用ピン43がストッパー部44に対して接当した状態において、前記下部ブラケット部材35の下面から下向きに突出するようにしたアウトリガー45と、前記下部ブラケット部材35におけるストッパー部44と実質的に同じ位置にまで後方に突出するか、このストッパー部44よりも更に後方に突出するようにしたバンパー体46とが設けられている。
更に、前記両レバー体40には、当該レバー体40が前方に回動したときに、前記下部ブラケット部材35又は前記マスト部材29に対して、これ以上の前方回転(収納姿勢からの更なる前方回転)を阻止するように接当するストッパー片47が設けられている。従って、左右両レバー体40とそれぞれに設けられたアウトリガー45、バンパー体46及びストッパー片47は、ピン41を回動中心として一体的に姿勢変更動する構成になっている。
そして、前記両昇降用油圧シリンダ30の先端を、前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32に対してピン48にて連結して、前記上下一対のリフト用リンク31,32を、前記両昇降用油圧シリンダ30にて上下方向に回動することにより、前記集草ボックス18を、下げ位置において前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる前向きの姿勢と、この前向きの姿勢のままで高く持ち上げた状態とに往復して昇降動するように構成している。
すなわち、前記昇降用油圧シリンダ30におけるピストン突出動にて前向き姿勢の集草ボックス18を高く持ち上げる一方、前記昇降用油圧シリンダ30におけるピストン後退動にて前向き姿勢の集草ボックス18を元の位置に下降するように構成している。
なお、上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32には、前記集草ボックス18を高く持ち上げた姿勢のときに、前記両マスト部材29の上端部29b又は第1ブラケット部材34に対して、下向き回動を阻止するように着脱自在に係合するフック状のロック手段49が設けられており、このフック状のロック手段49は、上部リンク31に設けるか、前記両マスト部材29の上端部29b又は第1ブラケット部材34側に設けても良い。
また、右側におけるリフト用リンク31,32と、左側におけるリフト用リンク31,32との相互間は、これらの各リンクが同時に回動するように、その上端の部分において横部材50,51を介して連結されている。
更にまた、前記芝刈機1のうちその操縦座席9から手が届く部位には、前記ロータリー式の芝刈り機構13をON・OFF操作するPTO操作体としてのPTO操作レバー52が設けられているとともに、前記開閉用油圧シリンダ26を、ピストン突出動する開位置、ピストン後退動する閉位置及びその中間でピストン作動停止する中立位置に切り換え操作するための開閉操作レバー53が設けられ、更に、前記昇降用油圧シリンダ30を、ピストン突出動する上げ位置、ピストン後退動する下げ位置及びその中間でピストン作動停止する中立位置に切り換え操作するための昇降操作レバー54が設けられている。
PTO操作レバー52は、後述する所定条件下で入り操作(前傾操作)すると、PTOクラッチモータの駆動にてPTOクラッチ163(図23参照)が入り作動して無端PTO伝動ベルト71を緊張させ、切り操作(後傾操作)すると、PTOクラッチモータの駆動にてPTOクラッチ163が切り作動して無端PTO伝動ベルト71を弛緩させるように構成されている。PTO操作レバー52には、これを入り操作したときに入り作動するPTO検出手段としてのPTO入りセンサ171(図21参照)が設けられている。このPTO入りセンサ171の入り切り動作にて、PTO操作レバー52が入り操作位置(動力接続位置)にあるか否かを検出できる。
(4).芝刈機の油圧回路構造
次に、図15を参照しながら、芝刈機1の油圧回路91構造について説明する。
芝刈機1の油圧回路91は、エンジン7の回転力にて作動するチャージ用油圧ポンプ92及び可変容量形の変速用油圧ポンプ93と、変速用油圧ポンプ93から吐出される高圧の作動油にて作動する定容量形の変速用油圧モータ94とを備えている。変速用油圧ポンプ93と変速用油圧モータ94とは静油圧式無段変速機95を構成するものであり、実施形態の静油圧式無段変速機95(変速用油圧ポンプ93及び変速用油圧モータ94)は、ミッションケース61に内蔵されている。
変速用油圧ポンプ93と変速用油圧モータ94とは、閉ループ油路96を介してそれらの吸入側及び吐出側が接続されている。エンジン7の動力にて駆動する変速用油圧ポンプ93の斜板97を、操縦ハンドル8の右側下部に配置された変速ペダル81(図1、図2及び図15参照)にて角度調節することにより、変速用油圧モータ94からの動力にて駆動する左右の車軸(走行機体1後部側の車軸)の回転数が変更される。その結果、左右の車軸に取り付けられた後車輪6の回転速度、ひいては走行機体1の車速(走行速度)が変更されることになる。
上述した油圧回路91には、図15に示すように、リリーフ弁やオイルフィルタ、チェック弁等を備えている。チャージ用油圧ポンプ92の吸入側は、低圧チャージ油路98を介して、オイルタンク63内にあるストレーナ99に接続されている。チャージ用油圧ポンプ92の吐出側には、補給用リリーフ弁100及び戻し用リリーフ弁101を有する高圧チャージ油路102が接続されている。高圧チャージ油路102は、補給用リリーフ弁100、前進補充用のチェック弁103及び後進補充用のチェック104弁等を介して、閉ループ油路96に接続されている。
従って、エンジン7の作動中は、チャージ用油圧ポンプ92からの作動油が閉ループ油路96に常に補充されることになる。また、チャージ用油圧ポンプ92から閉ループ油路96に供給するための各チャージ油路98,102の作動油が余れば、各チャージ油路98,102の作動油が戻し用リリーフ弁101を介してオイルタンク63に戻されることになる。
一方、閉ループ油路96には、変速用油圧ポンプ93の吸入側及び変速用油圧モータ94の吐出側の間と、変速用油圧モータ94の吸入側及び変速用油圧ポンプ93の吐出側の間とで短絡させるためのバイパスバルブ105が接続されている。バイパスバルブ105に関連して設けられたバイパス切換レバー106の操作にて、閉ループ回路96が短絡していない状態(図15に示すバイパスバルブ105の状態)にバイパスバルブ105を切り換えると、変速用油圧ポンプ93と変速用油圧モータ94とが閉ループ油路96を介して走行駆動状態に連通し、エンジン7の回転動力にて後車輪6が駆動されることになる。
他方、バイパス切換レバー106の操作にて、閉ループ回路96が短絡した状態にバイパスバルブ105を切り換えると、変速用油圧モータ94が自由回転状態(無負荷で回転する状態)に保持されることになる。例えば燃料タンク62の燃料がなくなる等の故障に起因して後車輪6を駆動できない状態になったときに、上述の切換操作を実行すると、ミッションケース61内の静油圧式無段変速機95が無負荷状態に保持されるから、オペレータは走行機体1を押して移動させることができる。
チャージ用油圧ポンプ92は、複動型の昇降用油圧シリンダ30に作動油を供給するための昇降用油圧バルブ107に、誤作動防止用チェック弁108及び昇降用油圧バルブ107(昇降用油圧シリンダ30)への作動油の供給を調節制御するための電磁放てきバルブ135を介して接続されている。電磁放てきバルブ135は、後述する各種センサ142〜145(図20参照)の検出信号(入り切り信号)に対応した電磁放てきソレノイド136の駆動にて自動的に切換作動する構成になっている。昇降用油圧バルブ107のタンクポートには、複動型の開閉用油圧シリンダ26に作動油を供給するための開閉用油圧バルブ109が接続されている。また、前述の電磁放てきバルブ135は、開閉用油圧バルブ109とその下流側にあるトルクジェネレータ137(詳細は後述する)との間の油路にも接続されている。
電磁放てきバルブ135が昇降用油圧バルブ107に作動油を供給する状態(図15に示す電磁放てきバルブ135の状態であり、以下、供給状態と称する)で、昇降操作レバー54の操作にて昇降用油圧バルブ107を切換作動させると、昇降用油圧シリンダ30が伸縮作動して、集草ボックス18が、排出ダクト14から放出される刈草を前向きの姿勢で受け入れる下げ位置と、前向きの姿勢のままで高く持ち上げたときの上げ位置とに昇降動することになる。
開閉操作レバー53の操作にて開閉用油圧バルブ109を切換作動させると、開閉用油圧シリンダ26が伸縮作動して、後蓋板21が、集草ボックス18において開放された後面を閉じる状態と、後面から跳ね上がるように開く状態とに開閉作動することになる。また、後蓋板21の開閉作動に伴い、底蓋板20は、金属製ワイヤ27の引張りにて前端が跳ね上がり後端が下がるように回動して集草ボックス18の底面を開放した状態と、前側の重量にて集草ボックス18の底面を閉じた状態とに開閉作動することになる。
電磁放てきバルブ135が昇降用油圧バルブ107に作動油を供給停止した状態(以下、供給停止状態と称する)になると、チャージ用油圧ポンプ92から電磁放てきバルブ135を経由した作動油は、昇降用油圧シリンダ30には送られず、開閉用油圧バルブ109ひいては開閉用油圧シリンダ26のみに供給されることになる。従って、この状態では、開閉操作レバー53の操作にて後蓋板21及び底蓋板20だけが開閉作動でき、昇降操作レバー54を操作しても、昇降用油圧シリンダ30ひいては集草ボックス18は昇降動しない。
実施形態では、電磁放てきバルブ135が供給停止状態の場合において、開閉操作レバー53を開位置に向けて操作すると、後蓋板21と連動して開き回動する底蓋板20が後ろ斜め下向きの放てき傾斜姿勢(図22参照)になるまで、開閉用油圧シリンダ26が作動するように構成されている。そして、開閉用油圧バルブ109を自動的に中立位置にして、開閉用油圧シリンダ26を作動停止させる結果、底蓋板20を放てき傾斜姿勢に保持する構成になっている。また、実施形態では、底蓋板20が放てき傾斜姿勢のときに、底部誘導板28の前端部(先端部)を排出ダクト14における後端排出口(刈草排出口)の上部に臨ませる(近接させる)ように構成されている。
底蓋板20を放てき傾斜姿勢に保持した状態では、集草ボックス18の底面開口が開放されるので、この状態で芝刈り機構13を駆動させると、芝刈り機構13にて刈り取られた刈草が排出ダクト14を介して集草ボックス18内に導かれ、底蓋板20の裏面側(下面側)に受け止められる。そして、刈草は、底蓋板20の後ろ斜め下向きの傾斜に沿って後方下側にスムーズにガイド(案内)され、集草ボックス18の底面開口から地面に散布される。
つまり、実施形態では、集草ボックス18が下げ位置にある状態で、底蓋板20を開き作動可能に構成したことにより、下げ位置にある集草ボックス18の底面開口を開放できるから、走行機体2の後部に集草ボックス18を取り付けたままで、刈草を回収せずに地面に敷き詰めるように撒く放てき作業を簡単に行える。
また、実施形態では、底蓋板20の開閉姿勢を、閉止姿勢(底面開口を閉じた状態、図1及び図10参照)か放てき傾斜姿勢かに切り換えるだけで、1台の芝刈機1を、刈草回収作業(刈草を集草ボックス18内に回収する作業)に用いたり、放てき作業に用いたりできる。すなわち、オペレータは、前記従来のように集草ボックス18と放てきカバーとを付け替えたりすることなく、刈取回収作業から放てき作業への切り換え又はその逆を簡単に行えるから、実施形態の芝刈機1は、1台を刈草回収作業に用いたり放てき作業に用いたりできる汎用性の高いものでありながら、オペレータの作業負担が少なくて取り扱い易いのである。
しかも、実施形態における底蓋板20の開き作動は、底部誘導板28側を集草ボックス18内に向けて跳ね上げるように開き回動する構成であると共に、集草ボックス18が下げ位置にある状態で開き回動した底蓋板20は、底部誘導板28の前端部を排出ダクト14における後端排出口の上部に臨ませた放てき傾斜姿勢に保持されるから、底蓋板20の裏面側(下面側)は、刈草を地面に向けて導く案内面になる。すなわち、底蓋板20は刈草の排出先を変更するデフレクタとして機能でき、排出ダクト14から放出された刈草を、底蓋板20のガイド作用(デフレクタ作用)にてスムーズに地面に放出できるのである。
また、この場合(底蓋板20が放てき傾斜姿勢のとき)は、底部誘導板28の前端部を排出ダクト14における後端排出口の上部に臨ませているから、底部誘導板28の前端部と排出ダクト14における後端排出口の上部との間の隙間が狭く、排出ダクト14から放出される刈草が底蓋板20の表面側(上面側)に漏れる(逃げる)おそれは少ない。従って、排出ダクト14からの刈草を、底蓋板20の表面側に堆積させることなく、効率よく地面に放出できるという利点もある。
一方、ダンプバルブ109のタンクポートには、操向ハンドル10の操作にて発生させた大きな油圧力を利用して前車輪5を操舵作動するためのパワーステアリング用のトルクジェネレータ137が接続されている。トルクジェネレータ137は、並列状のラインフィルタ110及びリリーフ弁111を介して、戻し用リリーフ弁101に接続されている。従って、トルクジェネレータ137からの作動油は、ラインフィルタ112を介してオイルタンク63に戻されることになる。なお、トルクジェネレータ137は、操向ハンドル10の回動操作にて切り換えるコントロールバルブと、該コントロールバルブにて作動させる油圧ポンプ等とからなり、当該油圧ポンプの回転力を利用して前車輪5を方向転換させるように構成されている。
図15から明らかなように、昇降用油圧バルブ107、開閉用油圧バルブ109及びトルクジェネレータ137は、チャージ用油圧ポンプ92に対してそれぞれ直列に接続されている。このため、電磁放てきバルブ135が供給状態のときにおいて、昇降用油圧バルブ107の切換作動にて昇降用油圧シリンダ30が伸縮駆動している間は、開閉用油圧シリンダ26及びトルクジェネレータ137が駆動しない。
また、電磁放てきバルブ135が供給状態のときに、開閉用油圧バルブ109の切換作動にて開閉用油圧シリンダ26が伸縮駆動している間は、トルクジェネレータ137が駆動しない。更に、電磁放てきバルブ135が供給状態のときに、昇降用油圧シリンダ30及び開閉用油圧シリンダ26が共に駆動していなければ、トルクジェネレータ137が駆動することになる。
すなわち、電磁放てきバルブ135が供給状態のときにおいて、昇降用油圧バルブ107、開閉用油圧バルブ109及びトルクジェネレータ137は、この順番で優先的に駆動する構成になっている。
(5).昇降操作レバー及び開閉操作レバーの取り付け構造
次に、図16〜図19を参照しながら、昇降操作レバー54及び開閉操作レバー53の取り付け構造について説明する。
操縦座席9の右斜め後方に配置された油圧ユニットケース116(図2参照)には、チャージ用油圧ポンプ92、昇降用油圧シリンダ30及び開閉用油圧シリンダ26に油圧配管(図示せず)を接続するための油圧配管ブロック114と、昇降用油圧バルブ107及び開閉用油圧バルブ109を有する油圧バルブユニット体115とが内蔵されている。
油圧バルブユニット体115の前面には、レバー軸受部117を介して、昇降操作レバー54及び開閉操作レバー53が上下方向に回動操作可能に取り付けられている。昇降操作レバー54は、昇降用油圧バルブ107が中立の状態で、油圧バルブユニット体115の前方に向けて略水平に突出している。昇降操作レバー54を上下に回動操作すると、昇降用油圧バルブ107が上昇側又は下降側に切り換わって、昇降用油圧シリンダ30が伸縮駆動する。開閉操作レバー53を上下に回動操作すると、開閉用油圧バルブ109が開き動側又は閉じ動側に切り換わって、開閉用油圧シリンダ26が伸縮駆動する。
また、油圧ユニットケース116は、両操作レバー53,54の上下回動をガイド(案内)するためのレバーガイド体118と、操縦ハンドル8の右側下部に配置されたブレーキペダル82(図1、図2及び図15参照)に制動検出用ワイヤ119を介して連動連結されたロックアーム体120と、リフト両操作レバー53,54のうちいずれか一方を操作したときに他方の操作を制限する牽制アーム体121とを備えている。実施形態では、油圧ユニットケース116内に固定されたレバーガイド体118に、ロックアーム体120及び牽制アーム体121が、前後に延びる支軸122を介してそれぞれ独立的に回動可能に軸支されている。
ロックアーム体120は正面視略鉤状の形態になっており、ロックアーム体120において昇降操作レバー54に対峙する側端部120bには、昇降操作レバー54の軸部に引っ掛かり係合可能な昇降規制ノッチ120aが形成されている。牽制アーム体121には、昇降操作レバー54の軸部に引っ掛かり係合可能な昇降牽制ノッチ121aと、開閉操作レバー53の軸部に引っ掛かり係合可能な開閉牽制ノッチ121bとが形成されている。また、牽制アーム体121には、リフトレバー110の軸部に当接し得る上下一対の加圧ロール123,124が上下ロール軸125,126を介して回動可能に軸支されている。両加圧ロール123,124は、牽制アーム体121におけるリフト牽制ノッチ121aを挟んだ上下両側に分かれて配置されている。
制動検出用ワイヤ119の一端部に取り付けられた連結金具130は、連結ピン129を介してロックアーム体120の一端部に固定されている。ロックアーム体120のうち支軸122を挟んで連結ピン129と反対の他端部には、昇降規制ノッチ120aがリフトレバー110から離れる方向へのロックアーム体120の回動を規制するためのストッパー体131が一体形成されている。
連結ピン129には、一端部127aをレバーガイド体118の前面に固定した挟みバネ状の制動検出バネ127の他端部127bが引っ掛けられている。制動検出バネ127は、その弾性付勢力にて、昇降操作レバー54から昇降規制ノッチ120aが離れるような回動方向に、ロックアーム体120を付勢している。連結ピン129と上加圧ロール123の上ロール軸125との間には、開閉操作レバー53から開閉牽制ノッチ121bが離れるような回動方向に牽制アーム体121を付勢するための引張りバネ状の解除バネ128が装架されている。
なお、制動検出バネ127のバネ力は、ブレーキペダル82を初期位置(ブレーキ解除位置)に維持するペダル復帰バネ(図示せず)のバネ力より小さく設定されている。解除バネ128のバネ力は、制動検出バネ127のバネ力より小さく設定されている。
ブレーキペダル82が踏み込み操作されていない初期位置(ブレーキ解除位置)にある場合は、ペダル復帰バネのバネ力にて制動検出用ワイヤ119が引っ張られるため、ロックアーム体120は、制動検出バネ127のバネ力に抗して、図17における支軸122回りの時計方向に回動し、昇降規制ノッチ120aが昇降操作レバー54の軸部に引っ掛かり係合する。このとき、牽制アーム体121は、解除バネ128のバネ力にて、図17における支軸122回りの反時計方向に回動し、下加圧ロール124がロックアーム体120の側端部120bに当接する。この状態では、開閉牽制ノッチ121bが開閉操作レバー53の軸部に引っ掛かり係合する。
従って、ブレーキペダル82が踏み込み位置(ブレーキ位置)になければ、昇降操作レバー54及び開閉操作レバー53のいずれの操作も、ロックアーム体120と牽制アーム体121とによって禁止される。
図18に示すように、ブレーキペダル82が踏み込み操作されて後車輪6にブレーキを掛けた場合は、制動検出用ワイヤ119が緩むため、ロックアーム体120は、制動検出バネ127のバネ力にて、ストッパー体131がレバーガイド体118の上面に当接するまで図18における支軸122回りの反時計方向に回動し、昇降規制ノッチ120aが昇降操作レバー54の軸部から外れる。このとき、牽制アーム体121は、解除バネ128のバネ力にて、図18における支軸122回りの反時計方向に回動し、開閉牽制ノッチ121bが開閉操作レバー53の軸部から外れる。上下両加圧ロール123,124は昇降操作レバー54の軸部に当接する。
すなわち、ブレーキペダル82を踏み込み操作して後車輪6にブレーキを掛けると、昇降操作レバー54及び開閉操作レバー53は操作可能な状態になる。
そこで、図18に示すように、先に開閉操作レバー53を上下回動操作すると、開閉操作レバー53が牽制アーム体121の規制端部121c又は121dとの当接位置に移動して、牽制アーム体121を図18に示す支軸122回りの反時計方向に更に回動させ、上下両加圧ロール123,124の間にある昇降牽制ノッチ121aを昇降操作レバー54の軸部に引っ掛かり係合させる。
この状態で昇降操作レバー54を上下回動操作しようとしても、開閉操作レバー53の軸部に牽制アーム体121の規制端部121c又は121dが当たって、牽制アーム体121の時計方向の回動が阻止され、昇降操作レバー54の軸部と昇降牽制ノッチ121aとの係合が維持されるから、昇降操作レバー54を上下回動操作できない。つまり、開閉操作レバー53を上下回動操作した状態では、開閉操作レバー53と牽制アーム体121との協働作用によって昇降操作レバー54の上下回動操作が禁止される。
他方、図19に示すように、先に昇降操作レバー54を上下回動操作すると、昇降操作レバー54が解除バネ128のバネ力に抗して一方の加圧ロール123又は124を押圧して、牽制アーム体121を図19に示す支軸122回りの時計方向に回動させ、開閉牽制ノッチ121bを開閉操作レバー53の軸部に引っ掛かり係合させる。
この状態で開閉操作レバー53を上下回動操作しようとしても、昇降操作レバー54の軸部に一方の加圧ロール123又は124が当たって、牽制アーム体121の反時計方向の回動が阻止され、開閉操作レバー53の軸部と開閉牽制ノッチ121bとの係合が維持されるから、開閉操作レバー53を上下回動操作できない。つまり、昇降操作レバー54を上下回動操作した状態では、昇降操作レバー54と牽制アーム体121との協働作用によって開閉操作レバー53の上下回動操作が禁止される。
従って、ブレーキペダル82を踏み込み操作して後車輪6にブレーキを掛けておけば、オペレータは昇降操作レバー54及び開閉操作レバー53のいずれか一方を択一的に上下回動操作できるのである。
(6).制限機構の構造
次に、図20を参照しながら、昇降操作レバー54の誤操作による集草ボックス18の昇降動を防止するための制限機構の構造について説明する。
実施形態における芝刈機1の制限機構140は、バッテリ64と、電源印加用のキースイッチ141と、電磁放てきバルブ135の電磁放てきソレノイド136とを備えている。この場合、バッテリ64に、キースイッチ141と電磁放てきソレノイド136とが直列に接続されている。キースイッチ141は、エンジン7を始動するためのスタータ(図示せず)にも接続可能に構成されている。
キースイッチ141と電磁放てきソレノイド136との間には、操縦座席9にオペレータが着座すると入り作動するオンオフ切換スイッチ型のオペレータセンサ142と、後蓋板21が集草ボックス18の後面開口を塞ぐ閉位置にあると切り作動するオンオフ切換スイッチ型の後蓋板検出センサ143と、底蓋板20が集草ボックス18の底面開口を塞ぐ閉位置にあると切り作動するオンオフ切換スイッチ型の底蓋板検出センサ144と、集草ボックス18が下げ位置にあると入り作動するオンオフ切換スイッチ型の集草ボックスセンサ145とが直列に接続されている。
後蓋板検出センサ143は、後蓋板21に対する上部リンク24を回動可能に軸支するピン軸24aに関連付けて設けられている。底蓋板検出センサ144は、底蓋板20を回動可能に軸支する枢着ピン23に関連付けて設けられている。集草ボックスセンサ145は、排出ダクト14の後方(走行機体2側、例えば両マスト部材29をつなぐ最下の横部材33上)に設けられており、集草ボックス18が下げ位置にあるときに、底部誘導板28が集草ボックスセンサ145に接触することによって、集草ボックスセンサ145が入り作動するように構成されている。
かかる構成において、(1)操縦座席9にオペレータが着座し、(2)(3)後蓋板21及び底蓋板20が開き作動し、且つ(4)集草ボックス18が下げ位置にある、という4つの条件が全て揃えば、前述した4つのセンサ142〜145の入り作動にて電磁放てきソレノイド136が切換駆動し、電磁放てきバルブ135から昇降用油圧バルブ107への作動油の供給が停止する。その結果、作動油が昇降用油圧シリンダ30には送られず、昇降操作レバー54を操作しても、昇降用油圧シリンダ30ひいては集草ボックス18が昇降動しないのである。
(7).PTO規制機構の構造
次に、図21を参照しながら、芝刈り機構13の不用意な駆動を防止するためのPTO規制機構170の構造について説明する。
実施形態における芝刈機1のPTO規制機構170は、バッテリ64と、PTO操作レバー52を入り操作したときに入り作動するPTO検出手段としてのPTO入りセンサ171と、集草ボックス18の上下位置を検出する集草検出手段の一例としてのリフトストロークセンサ172と、PTOクラッチモータ(図示せず)を駆動させるためのモータ駆動回路部173とを備えている。この場合、バッテリ64に対して、PTO入りセンサ171、リフトストロークセンサ172及びモータ駆動回路部175が直列に接続されている。
リフトストロークセンサ172は、昇降用油圧シリンダ30のピストン突出量(突出位置)から、集草ボックス18の上下位置を検出するものであり、昇降用油圧シリンダ30のピストンが最も短縮した状態のとき、すなわち集草ボックス18が下げ位置にあるときに入り作動するように構成されている。
リフトストロークセンサ172とモータ駆動回路部175との間には、姿勢検出手段としての底蓋板閉じセンサ173及び底蓋板放てきセンサ174が互いに並列に接続されている。底蓋板閉じセンサ173は、底蓋板20が集草ボックス18の底面開口を塞ぐ閉止姿勢(閉位置、図1及び図10参照)にあると入り作動するオンオフ切換スイッチ型のものであり、底蓋板放てきセンサ174は、底蓋板20が図22に示す後斜め下向きの放てき傾斜姿勢になると入り作動するオンオフ切換スイッチ型のものである。これら各センサ173,174は、例えば集草ボックス18における底面開口の周縁部や、底蓋板を回動可能に軸支する枢着ピン23に関連付けて設けられている。
かかる構成において、(1)集草ボックス18が下げ位置にあり且つ底蓋板20が閉止姿勢である場合、(2)集草ボックス18が下げ位置にあり且つ底蓋板20が放てき傾斜姿勢である場合、という条件のうちいずれか一方を満たしたときに、PTO操作レバー52を入り操作すれば、前述した各センサ171,172,173(若しくは171,172,174)が入り作動して、バッテリ64からの電流が各センサ171,172,173(若しくは171,172,174)を経由してモータ駆動回路部175に流れる。その結果、PTOクラッチモータが駆動してPTOクラッチ163(図23参照)が入り状態(動力接続状態)になる。すなわち、集草ボックス18が下げ位置にあり且つ底蓋板20が閉止姿勢か放てき傾斜姿勢である場合のみ、芝刈り機構13の駆動が許容される。
一方、集草ボックス18が上げ位置にあるか又は上昇途中であれば、リフトストロークセンサ172が切り状態になるので、PTO操作レバー52を入り操作してもバッテリ64からの電流が途中で遮断され、その結果、PTOクラッチ163が切り状態(動力遮断状態)になり、芝刈り機構13の駆動が禁止される。また、底蓋板20が閉止姿勢でも放てき傾斜姿勢でもない中途半端な開き姿勢であれば、底蓋板閉じセンサ173及び底蓋板放てきセンサ174が両方とも切り状態になるので、PTO操作レバー52を入り操作してもバッテリ64からの電流が途中で遮断され、その結果、PTOクラッチ163が切り状態(動力遮断状態)になり、芝刈り機構13の駆動が禁止されるのである。
このため、例えば芝刈り機構13の駆動中に昇降用操作レバー54や開閉用操作レバー53に誤って接触したとしても、PTOクラッチ163が切り状態になって芝刈り機構13の駆動が自動的に停止するから、排出ダクト14の後端排出口から走行機体2の後方に、刈草や小石等が不用意に撒き散らされるのを防止できる。
また、集草ボックス18が上げ位置にあるとき(刈草の放出作業時)にオペレータが誤ってPTO操作レバー52を入り操作したとしても、PTOクラッチ163は切り状態に保持され、芝刈り機構13が駆動することはないから、この場合も、排出ダクト14の後端排出口から走行機体2の後方に、刈草や小石等が不用意に撒き散らされるのを防止できるのである。
しかも、集草ボックス18が下げ位置にあり且つ底蓋板20が閉止姿勢か放てき傾斜姿勢である場合は、芝刈り機構13の駆動が許容されるから、実施形態の芝刈機1を用いて刈草回収作業や放てき作業を支障なく行えることは言うまでもない。
また、前述の通り、底蓋板20が閉止姿勢でも放てき傾斜姿勢でもない中途半端な開き姿勢である場合(所定の開閉姿勢でない場合)は、芝刈り機構13の駆動が禁止されるから、オペレータは、例えば放てき作業の際に、底蓋板20が適正な放てき傾斜姿勢であるか否かを、芝刈り機構13の駆動の有無から簡単に把握できる。その上、排出ダクト14から放出される刈草が底蓋板20の表面側に流れて堆積するおそれを防止でき、排出ダクト14からの刈草を確実且つスムーズに地面に放出できるのである。
(8).集草排出機構の動作態様
次に、図1及び図10〜図14を参照しながら、集草排出機構の動作態様の一例について説明する。
以上の構成において、前記集草排出機構16における集草ボックス18を、その底蓋板20及び後蓋板21を閉じた状態で下降した位置に保持することにより、前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる姿勢になり、この状態で、芝刈機1を、そのロータリー式芝刈り機構13を駆動しながら前進走行することにより、所定の芝刈りを行うことができ、前記ロータリー式芝刈り機構13にて刈り取られた刈草は、排出ダクト14及び底部誘導板28を介して前記集草ボックス18内に入るように集められる。
そして、前記集草ボックス18内に所定量の刈草が溜まると、草刈り作業及び前進走行を停止して、集草ボックス18内からの刈草の放出作業を開始する。この放出作業に際しては、先ず、前記両昇降用油圧シリンダ30を、その昇降操作レバー54の上げ位置への操作によりピストンが突出動するように作動して、前記集草ボックス18を持ち上げるようにする。
すると、先ず、この両昇降用油圧シリンダ30の基端におけるレバー体40が後方に回動して、その枢着ピン43がストッパー部44に接当する状態になるから、図10に示すように、このレバー体40に設けたアウトリガー45が、地面4に接近するように突出して、芝刈機1の前部が浮き上がるように後ろ方向に傾くことを阻止できる状態になる。
つまり、集草ボックス18内に受け入れた刈草の排出に際し、集草ボックス18の持ち上げ開始前から持ち上げ途中までの間のいずれかの時期に、アウトリガー45が地面に近接するように突出することにより、集草ボックス18を高く持ち上げた状態で走行機体2が後方に傾くおそれを確実に低減できる。
しかも、アウトリガー45の突出は、集草ボックス18の持ち上げ開始前から持ち上げ途中までの間のいずれかの時期において行われるから、アウトリガー45の存在が芝刈機1における通常走行の妨げになることを確実に回避できる。その上、アウトリガー45は、地面に近接するという突出であることにより、アウトリガー45を突出した状態のもとで、芝刈機1を集草用コンテナA等に近づけるように走行できる。
特に実施形態では、アウトリガー45を、リフト機構19における昇降用油圧シリンダ30にて突出するように構成しているから、アウトリガー45を突出動するための構成を別に設ける必要がなく、その構成が簡単になり、小型軽量化を図れるという利点もある。
アウトリガー45が地面4に接近するように突出動する際には、これと同時に、前記レバー体40に設けたバンパー体46が、前記ストッパー部44と実質的に同じ位置にまで後方に突出するか、このストッパー部44よりも更に後方に突出する状態になる。つまり、前記集草ボックス18の持ち上げ作動の前に、アウトリガー45が地面4に接近するように突出し、バンパー体46が後方に突出する。
次いで、前記両昇降用油圧シリンダ30における更なるピストン突出動にて上下一対のリフト用リンク31,32が上向きに回動することにより、図11に示すように、前記集草ボックス18が、その底蓋板20及び後蓋板21を閉じた状態のままで持ち上げられ、そして、最も高い最大上げ位置まで持ち上げられると、前記昇降操作レバー54を中立位置に操作することにより、前記両昇降用油圧シリンダ30における更なるピストン突出動、つまり、前記集草ボックス18の持ち上げが停止すると同時に、前記集草ボックス18がロック手段49にて前記した最も高い位置から下降しないようにロックされる。
なお、前記両昇降用油圧シリンダ30は、前記集草ボックス18を最大上げ位置に持ち上げた状態になると、自動的にそのピストンの作動を停止する中立位置になるように構成することができる。また、前記集草ボックス18は、下げ位置において排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる状態のときには、前部が低くて後部が高くなるように前傾斜しているが、最も高い位置まで持ち上げられた状態においては、逆に前部が高くて後部が低くなるように後ろ傾斜になるように構成されている。
そして、この状態で、前記芝刈機1を、前進又は後進走行するように走行操作することで、図12に示すように、その後部が地面4に置かれた集草用コンテナAに接近するように移動して、前記のように高く持ち上げた集草ボックス18が前記集草用コンテナAの真上に位置する。前記芝刈機1をその後部が前記集草用コンテナAに接近するように後進走行する際に、前記集草用コンテナAへの衝突にてリフト機構19の破損が発生することを前記バンパー体46にて確実に回避できる。特に、バンパー体46を、リフト機構19のうち少なくとも昇降用油圧シリンダ30の基端部より外向きに突出するように構成しているので、昇降用油圧シリンダ30の基端部が損傷するのを確実に防止できる。
その上、バンパー体46は、集草ボックス18の持ち上げ開始前から持ち上げ途中までの間のいずれかの時期において突出し、通常走行時には突出しない状態になっていることから、バンパー体46の存在が通常走行の妨げになるのを確実に回避できる。なお、実施形態では、バンパー体46の突出動が、アウトリガー45と同様に、リフト機構19の昇降用油圧シリンダ30にて行われるから、バンパー体46を突出動するための構成を別に設ける必要がなく、その構成が簡単になり、小型軽量化を図れる。
前記芝刈機1を、その後部が地面4に置かれた集草用コンテナAに接近するように移動させた後は、前記開閉用油圧シリンダ26を、その開閉操作レバー53の開位置への操作によりピストンが突出動するように作動させる。すると、図12に示すように、前記集草ボックス18に対する後蓋板21が開き回動するから、前記集草ボックス18内における刈草の前記集草用コンテナA内への排出が始まる。
次いで、前記集草ボックス18に対する底蓋板20が、前記後蓋板21における開き回動に可撓性を有する金属製ワイヤ27を介して連動して、図13に示すように、その前端が跳ね上がる一方後端が下がるように回動して集草ボックス18の底面を開放するから、前記集草ボックス18内における刈草の前記集草用コンテナA内への排出が更に進行する。
前記後蓋板21が全開になると、前記開閉操作レバー53を中立位置に操作することにより、前記両開閉用油圧シリンダ26における更なるピストン突出動、つまり、前記後蓋板21の開き作動を停止する。なお、前記両開閉用油圧シリンダ26は、前記後蓋板21が最大に開くと、自動的にそのピストンが作動停止する中立位置になるように構成することができる。
次いで、前記集草ボックス18内における刈草の排出に伴い、その排出落下中の刈草が、前記底蓋板20における後端に当たることにより、前記底蓋板20が、図14に示すように、当該底蓋板20と前記後蓋板21とを連動連結する金属製ワイヤ27を弛ませながら、前記後蓋板21の開き回動にかかわらず、自動的に更に大きく開き回動するから、前記集草ボックス18内における刈草の全てを排出できると共に、刈草の排出位置を芝刈機1から離れた位置にできる。
特に実施形態では、底蓋板20の開き作動を、底蓋板20のうち前端部が集草ボックス18内に向かって跳ね上がり後端部が下がるように開き回動する構成にしているから、集草ボックス18内の刈草が、集草ボックス18の後面開口部から排出されるだけでなく、集草ボックス18における開放された底部のうち底蓋板20における後端部に該当する部分からも排出されることになるから、刈草の排出を確実且つ迅速にできる利点がある。
また、実施形態では、底蓋板20を、薄金属板を鋸歯状の断面に折り曲げて成る構成にしたことで、底蓋板20の剛性を確保した状態のもとで大幅に軽量にできて、集草ボックス18の更なる軽量化を図れるから、芝刈機1全体の更なる小型化及び軽量化を達成できる。しかも、底蓋板20における鋸歯状の断面に、前端から後方に向かって斜め上向きの傾斜部20aを備えているから、底蓋板20の跳ね上げ回動時には、その上面にある刈草が傾斜部20aに沿って滑り落ちることになる。このため、底蓋板20の上面に刈草が付着するのを確実に回避できる。特に、底蓋板20を、通気性を有する薄金属板製にしたので、底蓋板20の更なる軽量化が可能であり、前記した効果を助長すると共に、低価格化にも寄与できる。
上記態様から明らかなように、集草ボックス18内からの刈草の排出は、集草ボックス18における開放された底部を塞ぐ底蓋板20と、集草ボックス18の後面の開口を塞ぐ後蓋板21とを開くことによって行われるものである。このため、前記従来のように、集草ボックス18を、高く持ち上げた状態で、その全体を大きく後ろ回動させなくて済むから、高く持ち上げたときにおける地面からの重心高さを従来の場合よりも大幅に低くできる。しかも、底蓋板20及び後蓋板21の開閉作動を、前記従来の場合より比較的出力の小さい小型の機構(例えば油圧シリンダ)にて行え、集草ボックス18全体の重量を軽減できるから、集草ボックス18を高く持ち上げた状態での支持安定性をより向上できると共に、リフト機構19の小型化及び軽量化、ひいては、芝刈機1全体の小型化及び軽量化を図れる。
そればかりか、実施形態では、底蓋板20と後蓋板21とを、集草ボックス18内に配設した可撓性部材27(金属製ワイヤ)を介して連動連結しているので、かかる連動機構を集草ボックス18に内蔵でき、ひいては、集草ボックス18の更なる小型化及び軽量化を図れるから、芝刈機1全体の更なる小型化及び軽量化に寄与できる。
特に、金属製ワイヤ27の両端を、その軸線回りに適宜角度だけ捩じった状態にして後蓋板21及び底蓋板20に結合したことにより、可撓性部材における耐久性の向上及び軽量化を図れる。また、金属製ワイヤ27のうち途中の部分は、底蓋板20が閉じたときにその上面に接当する状態になるから、集草ボックス18内に刈草を受け入れる際に、金属製ワイヤ27が邪魔になることはない。
なお、前記底蓋板20におけるその後端に排出落下中の刈草が当たることによる開き回動は、以下に述べるように、前記後蓋板21における開き回動に追従して行うように構成している。すなわち、図9に示すように、前記開閉用油圧シリンダ26の基端における枢着ピン55に、前記底蓋板20における後端部の下面が接当する受け片56aを備えたレバー体56を回転自在に設け、このレバー体56を、リンク57を介して前記下部リンク25に、当該下部リンク25の上向き回動、つまり、前記後蓋板21を開く方向への回動に伴って下向きに回動するように連結している。このため、前記底蓋板20におけるその後端に排出落下中の刈草が当たることによる開き回動、ひいては、当該底蓋板20における開き回動による刈草の排出を、急速に一挙に行うことがない。
しかも、実施形態では、底部誘導板28が前記底蓋板20と共に開き回動して、集草ボックス18内に入り込むから、底部誘導板28上に堆積する刈草は、底部誘導板28の上面から底蓋板上の刈草と共に、集草用コンテナA内に落下することになる。すなわち、実施形態の芝刈機によると、底部誘導板28の上面に堆積する刈草をも集草ボックス18外に確実に排出できるのである。
このようにして、前記集草ボックス18内における刈草の集草用コンテナA内への排出が完了すると、前記開閉操作レバー53の閉位置への操作にて前記後蓋板21を閉じる。この場合、底蓋板20における開き回動の中心は、底蓋板20における前端と後端との中心位置よりも後端にずれた部位に位置しているから、前記底蓋板20は、その前端における重量によって自動的に閉じる。なお、前記開閉操作レバー53は、前記後蓋板21を閉じたときにおいて中立位置にするが、これを自動的に行うように構成することもできる。
次いで、前記芝刈機1を前記集草用コンテナAから離れるように移動したのち、前記昇降操作レバー54を下げ位置に操作して、前記両昇降用油圧シリンダ30をピストン後退動に作動することにより、前記集草ボックス18は、前記図10に示すように、下降して前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる姿勢に戻る。
次いで、前記両昇降用油圧シリンダ30が更にピストン後退動することにより、前記両レバー体40が、その枢着ピン43がストッパー部44から離れるように前方向に回動して、そのストッパー片47が下部ブラケット部材35又はマスト部材29に接当するように前方回転するから、前記アウトリガー45及びバンパー体46が、図1に示すように、元の後退した位置に戻って、前記草刈り作業を行う状態に復帰する。
なお、前記昇降操作レバー54は、前記両レバー体40が第2ブラケット部材35又はマスト部材29に接当するように前方回転したときにおいて中立位置にするが、これを自動的に行うように構成することもできる。また、前記実施の形態は、前記アウトリガー45における突出を、前記集草ボックス18の持ち上げを開始する前(直前)の時期において行うように構成した場合であったが、更に別の実施の形態においては、集草ボックス18の持ち上げを開始したあとで、且つ、高い高さにまで持ち上げるまでの間、つまり、持ち上げ途中の時期において行う構成にすることができる。
(9).その他
なお、上記した実施形態の各構成は図示のものに限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。