以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図27)に基づいて説明する。図1は実施形態における芝刈機の側面図、図2は図1の平面図、図3は図1において集草ボックスを取り外して斜め後方から見た斜視図、図4は図1において集草排出機構を斜め前方から見た斜視図、図5は図4のV−V視断面図、図6は集草排出機構を構成するリフト機構を示す斜視図、図7は図6の要部拡大図、図8は集草ボックスを最大上げ位置で斜め前方から見た斜視図、図9は集草ボックスを最大上げ位置で斜め後方から見た斜視図、図10は刈草放出作業の第1状態を示す図、図11は刈草放出作業の第2状態を示す図、図12は刈草放出作業の第3状態を示す図、図13は刈草放出作業の第4状態を示す図、図14は刈草放出作業の第5状態を示す図、図15は芝刈機の油圧回路図、図16は昇降操作レバー及び開閉操作レバーの取り付け構造を示す一部切欠き側面図、図17は昇降操作レバー及び開閉操作レバーの取り付け構造を示す正面図、図18は開閉操作レバーの作動説明図、図19は昇降操作レバーの作動説明図、図20は制限機構の電気回路図、図21はPTO規制機構の電気回路図、図22は刈草放出作業の第1状態を示す集草排出機構の拡大側面図、図23は下げ位置において底蓋板及び後蓋板を開き回動させた集草排出機構の拡大側面図、図24は放てき作業の状態を示す集草排出機構の拡大側面図、図25は集草ボックスを後方斜め下側から見た斜視図、図26は走行機体の一部省略正面図、図27はPTO制限機構の別例を示す電気回路図である。
(1).芝刈機の概略
これらの図において、符号1は、乗用型の芝刈機を示し、この芝刈機1は、前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム3にて構成した走行機体2を有し、この走行機体2は、地面4に接地する左右一対の前輪5と、同じく地面4に接地する左右一対の後輪6とで支持され、且つ、この走行機体2には、その上面に前部から順番にエンジン7、操縦ハンドル8、操縦座席9が設けられていると共に、前記エンジン7を着脱可能に覆うボンネットカバー10、前記操縦座席9に対するステップ台11及び前記両後輪6を覆うフェンダー12が設けられている。この場合、操縦座席9に座ったオペレータが操縦ハンドル8を回動操作すると、その操作量(回動量)に応じて後述するパワーステアリング用の油圧式トルクジェネレータ137(図15参照)が作動して、左右の前車輪5の舵取り角(操向角度)が変わるように構成されている。
操縦座席9の下方には、後述する静油圧式(HST式)無段変速機95等を有するミッションケース61が配置されている。実施形態では、左右両サイドフレーム3の後部が前低後高形の傾斜部になっており、これら両傾斜部にミッションケース61が支持されている。また、ミッションケース61は、エンジン7からの動力を適宜変速して左右の後車輪6に伝達することによって、前進走行又は後退走行するように構成されている。
前記走行機体2における下面には、前輪5と後輪6との間の部位に、前記エンジン7からの動力伝達による駆動にて前記地面4における芝草を刈り取るようにしたロータリー式の芝刈り機構13が昇降可能に設けられているとともに、両後輪5間の部位に、前記ロータリー式の芝刈り機構13にて刈り取った刈草を走行機体2の後方に向かって放出するようにした排出ダクト14が後方に延びるように設けられている。
なお、前記両後輪6における中心部の外側面には、図1及び図2に示すように、金属棒を半円形のループ状等に曲げ加工して成るロープ掛け具15が、当該後輪6の中心におけるハブをその車軸に対して着脱可能に取付けるための複数本のボルト15aによる同時締結にて着脱自在に取付けされており、前記芝刈機1をトレーラ等に載せて搬送するときにおいて、当該芝刈機1のうち後部をトレーラ等に対して固定するためのロープ又は鎖等を前記ロープ掛け具15に対して掛けることができるように構成している。
このロープ掛け具15は、ループ状にすることに限らず、フック状に構成しても良いが、図示のように半円形のループ状に構成した場合には、これに草等が巻き付くことを低減できるばかりか、剛性を向上できる等の利点がある。また、このような構成のロープ掛け具15は、前記両後輪6に代えて両前輪5に設けるか、両前輪5及び両後輪6の両方に設けることができる。
前記芝刈機1の後部には、前記排出ダクト14から後方に放出される刈草を、詳しくは後述するように、集めて高く持ち上げて排出するように集草排出機構16が装着されている一方、前記芝刈機1の前部には、前記集草排出機構16に対して前後の重量バランスを図るためのウエイト17が取付けられている。
左右両サイドフレーム3における傾斜部の後端部分には、エンジン7に燃料を供給する燃料タンク62が搭載されている。右サイドフレーム3における傾斜部の外側に、ミッションケース61の静油圧式無段変速機95等に作動油を供給するためのオイルタンク63が搭載されている。左サイドフレーム3における傾斜部の外側(燃料タンク62を挟んでオイルタンク63と反対側)には、エンジン7の始動等に用いるバッテリ64が搭載されている。
(2).動力伝達系統
次に、主として図1及び図2を参照しながら、芝刈機1の動力伝達系統について説明する。
実施形態の芝刈機1では、エンジン7の回転動力の一部を左右両後輪6に配分する二輪駆動方式が採用されている。すなわち、エンジン7の回転動力の一部は、エンジン7から前後外向きに突出する出力軸65の後端部から、前後両端に自在継手を有する推進軸66と、ミッションケース61より前方の部位に配置された走行用伝動中継ケース67と、無端入力ベルト68とを介して、ミッションケース61に伝達される。そして、ミッションケース61に左右外向きに突設した水平な左右の後輪駆動軸69から、左右の無端後輪駆動チェン70を介して走行機体1の後部側にある左右の車軸に伝達される。その結果、左右の車軸に取り付けられた左右の後車輪6が回転駆動することになる。
他方、エンジン7の他の回転動力は、出力軸65の前端部から、PTO動力伝達用の無端PTO伝動ベルト71を介して、エンジン7の下方に回動可能に配置されたPTO軸72に伝達される。次いで、PTO軸72から、前後両端に自在継手を有する中間軸73を介して、芝刈り機構13の上面のうち右サイドフレーム3より更に右側の部位に配置されたモア用ギヤボックス74に動力伝達される。その結果、芝刈り機構13を構成する左右一対の刈刃(図示せず)が回転駆動し、これら両刈刃にて地面に植立した芝草等を刈り取りながら、刈草を芝刈り機構13の左右幅中央に集めて排出ダクト14に放出することになる。
実施形態では、出力軸65の前端部に固着された駆動プーリ161と、PTO軸72の前端部に固着された従動プーリ162との間に、クラッチ手段としてのPTOクラッチ163が配置されている(図26参照)。PTOクラッチ163は、駆動プーリ161と従動プーリ162とに巻き掛けられた無端PTO伝動ベルト71を緊張・弛緩させることによって、エンジン7からの動力を継断するベルトテンション式のものである。なお、図23では、説明の便宜上、ボンネットカバー10の図示を省略している。
PTOクラッチ163は、連結リンク機構165及びPTOクラッチワイヤ166を介して、継断用アクチュエータとしてのPTOクラッチモータ(図示せず)に連動連結されている。この場合、PTOクラッチモータの駆動にて、無端PTO伝動ベルト71を緊張させたり弛緩させたりするように、連結リンク機構165及びPTOクラッチワイヤ166を介してPTOクラッチ163を下端部の回動支軸164回りに入り切り回動させることにより、出力軸65からPTO軸72への動力伝達が継断される。
(3).集草排出機構の構成
次に、図1〜図9を参照しながら、集草排出機構16の構造について説明する。
前記集草排出機構16は、前面に前記排出ダクト14の後端が臨む開口部18aを備えた集草ボックス18と、前記集草ボックス18を、下降した位置において前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる前向きの姿勢(前面側を開口した姿勢)と、この前向き姿勢のままで高く持ち上げた状態とに往復して昇降動するように構成したリフト機構19とを備えている。
(3−1).集草ボックスの詳細
前記集草排出機構16の集草ボックス18は、左右両側面及び上面を、多孔板(パンチング板)又は金網等の通気性板製の側面板18b及び天井板18cにて囲う一方、その底面及び後面を開放するという構成であり、この集草ボックス18のうち開放された底面は、開閉自在な底蓋板20にて、同じく開放された後面は、開閉自在な後蓋板21にて塞ぐように構成されている。
前記底蓋板20は、前記集草ボックス18の左右両側面板18bの外側に固着したブラケット部材22の下端に枢着ピン23にて回動自在に枢着されている。この底蓋板20は、多孔板(パンチング板)又は金網等のように通気性を有する薄金属板を、図5に示すように、前端から後方に向かって比較的緩やかな角度で斜め上向きに傾斜する傾斜部20aと、この傾斜部20aの後端から下向きに折れ曲がる鉛直部20bとを複数回にわたって繰り返して設けるというように、高さの低い鋸歯状の断面に折り曲げることでその剛性を高めるという構成になっている。
枢着ピン23の位置は、当該底蓋板20における後端よりも前側の部位で、且つ、当該底蓋板20における前端と後端との間の中心位置よりも適宜寸法だけ後端にずれた部位に位置している。従って、前記底蓋板20は、通常の状態においてはその枢着ピン23より前側の重量にて前記集草ボックス18における左右両側面板18bの下端相互間を連結する横部材39の上面に接当して、前記集草ボックス18における開放された底部の全てを閉じて(塞いで)いるが、その後端部に対して下向きに外力が作用すると、その枢着ピン23を中心にして前端が跳ね上がるように開き回動するという構成にされている。
一方、前記後蓋板21は、同じく、多孔板(パンチング板)又は金網等のよう通気性板製であり、その左右両側面において前記集草ボックス18の左右両側面板18bの外側面にピン軸24a,25aにて回転自在に枢着して成る上下一対のリンク24,25に対して回動自在に連結することにより、前記集草ボックス18において開放された後面を閉じる状態と、後面から跳ね上がるように開く状態とに開閉作動するように構成されており、この開閉作動を、前記ブラケット部材22と、前記上下一対のリンク24,25のうち下部リンク25との間に装架した複動型の開閉用油圧シリンダ26によって行うように構成している。
前記後蓋板21と、前記底蓋板20における前端部との間を、前記集草ボックス18の内部に配設した連係手段の一例としての左右一対の金属製ワイヤ27又はチェン等の可撓性部材にて連結することにより、前記後蓋板21が開閉用油圧シリンダ26におけるピストン突出動にて集草ボックス18の後面を開放するように跳ね上がり回動すると、これに前記金属製ワイヤ27を介して連動して、前記底蓋板20が、その前端が跳ね上がる一方後端が下がるように回動して集草ボックス18の底面を開放し、前記後蓋板21が開閉用油圧シリンダ26におけるピストン後退動にて集草ボックス18の後面を閉じる状態に戻ると、これに連動して、前記底蓋板20が、その前側の重量にて集草ボックス18の底面を閉じる状態に戻るというように構成している。
前記可撓性部材を、前記したように金属製ワイヤ27にした場合には、この両金属製ワイヤ27の両端を前記底蓋板20及び後蓋板21に対してピン27a,27bにて回動自在に連結するに際し、前記金属製ワイヤ27をその長手軸線の回りに適宜角度(例えば、90〜180度)だけその弾性に抗して捩じった状態にし、この状態で前記ピン27a,27bにて結合するという構成にする。
これにより、前記底蓋板20及び後蓋板21が閉じた状態にあるとき、前記金属製ワイヤ27における途中で弛んでいる部分は、その捩じりにて、図1に示すように、前記底蓋板20の上面に接当する状態に維持できることになるから、前記集草ボックス18内への刈草の受け入れに際し、前記金属製ワイヤ27が邪魔になることを回避できる。
図1、図5、図9及び図25に示すように、前記開閉用油圧シリンダ26の基端における枢着ピン55には、三角板状の回動板体191が回転可能に設けられており、回動板体191の上コーナ部が、リンク57を介して下部リンク25のうちピン軸25aより前方側の端部に連動連結されている。回動板体191の下コーナ部は集草ボックス18の側面下端よりも更に下向きに突出しており、左右両回動板体191の下コーナ部間には、後述する放てきロック手段200(図23及び図24参照)の一構成要素である頭部付きのロック長軸192が取り外し可能に装架されている。実施形態では、左右両回動板体191の下コーナ部にロック長軸192を貫通させ、ロック長軸192における頭部と反対側の先端部に、抜け止め用の止めピン193を取り付けることによって、ロック長軸192が抜け不能で且つ取り外し可能になっている。
従って、下部リンク25が後蓋板21を開く方向へ上向き回動すると、これに伴い、ロック長軸192が底蓋板20の後部下面を支持しつつ、回動板体191が枢着ピン55回りに下向き回動することになる(図5、図13及び図14参照)。このため、底蓋板20の開き回動に際しては、底蓋板20の後端に排出落下中の刈草が当たって開き回動速度が急激に速まるのを防止できる。すなわち、底蓋板20の開き回動による刈草の排出を急速且つ一挙に行うことはない。なお、下部リンク25、リンク57及び回動板体191の組合せが特許請求の範囲に記載した開閉リンク機構190に相当する。
少なくとも一方の回動板191(実施形態では左回動板体)の前コーナ部には、集草ボックス18の側面板18bに沿って前後に延びる検出ロッド194の後端部が横向きピン195にて上下揺動回動可能に枢着されている。検出ロッド194の先端部は、集草ボックス18の側面前部に設けられたガイドブラケット196の縦長溝穴197に貫通させている(図1、図5、図8及び図9等参照)。すなわち、検出ロッド194の先端部は、ガイドブラケット196の縦長溝穴197に遊嵌されていて、当該ガイドブラケット196の存在にて前後に延びる姿勢を維持し得るように構成されている(垂れ下がり不能になっている)。
検出ロッド194における中途部の下面側には、L字板状のロッド支持板198がボルト締結されている。検出ロッド194のロッド支持板198は、後述するアウトリガー215が突出姿勢(図10〜図14及び図22参照)のときに後方斜め上向きに突出するバンパー体216に当接するように設定されている(検出ロッド194をバンパー体206にて下方から支持可能である)。この状態では、検出ロッド194の先端部がガイドブラケット196における縦長溝穴197の上部側を通過して、検出ロッド194自体がほぼ水平状の姿勢に保持されることになる(図1及び図22〜図24参照)。このとき、検出ロッド194の先端部がガイドブラケット196の縦長溝穴197内で遊んだ状態になっていることは言うまでもない。
底蓋板20の前部には、排出ダクト14の後端から後方に放出される刈草を集草ボックス18内に円滑に誘導する底部誘導板28が設けられている。図1、図4及び図10に示すように、底蓋板20を閉止した状態では、底部誘導板28は、集草ボックス18の前面開口部18a(刈草受入口)から排出ダクト14に向けて前向きに突出している。底部誘導板28の前端部は、集草ボックス18が刈草を受け入れる下げ位置(図1、図10及び図22〜図24参照)にあり且つ底蓋板20を閉止した状態で、排出ダクト14の後端部内に臨ませており、このため、底部誘導板28は、排出ダクト14の後端排出口と集草ボックス18の前面開口部18aとの間のうち底側の部分を塞ぐことになる。
底部誘導板28は、枢着ピン23を回動支点として底蓋板20と一体的に回動する。実施形態では、底蓋板20がその前端を跳ね上げる一方後端を下げるように回動して、集草ボックス18の底面を開放する構成が採用されている。そこで、底部誘導板28が集草ボックス18内に入り込んで底蓋板20が大きく(略鉛直に近い姿勢にまで)開き回動できるように、底部誘導板28と集草ボックス18の前面開口部18aとは、底蓋板20の開閉回動の途次において互いに干渉しない形状に形成されている。
すなわち、図14の側面視において、底部誘導板28における前端部の回動半径D(枢着ピン23から底部誘導板28の前端部までの距離)は、枢着ピン23から集草ボックス18における前面開口部18aの上縁部までの距離Lよりも小さく設定されている(D<L)。また、図4から分かるように、底部誘導板28の左右幅寸法は、集草ボックス18における前面開口部18aの左右内法寸法よりも小さく設定されている。このため、底蓋板20の開閉回動の途次において、底部誘導板28は、集草ボックス18における前面開口部18aの周縁に引っ掛かることなく、集草ボックス18内に前方からスムーズに入り込める。
実施形態の底部誘導板28は、集草ボックス18における最前部の横部材39に当接し得る底板28aと、集草ボックス18における左右両側面板18bの内面に近接する左右のガイド側板28bを備えており、正面視で上向きコ字状に形成されている。左右のガイド側板28bの後端部は底蓋板20の上面前部まで延出している。
このように構成すると、集草ボックス18が下げ位置にあり且つ底蓋板20を閉止した状態では、排出ダクト14の後端排出口と集草ボックス18の前面開口部18aとの間のうち底側の部分が上向きコ字状の底部誘導板28にて囲われることになるから、集草ボックス18内に刈草を回収するに際して、排出ダクト14と集草ボックス18とのつなぎ目部分から刈草がこぼれるのを確実に抑制できる。しかも、左右のガイド側板28bの後端部を底蓋板20の上面前部まで延出させているから、底部誘導板28の底蓋板20に対する取り付け強度(剛性)も高いのである。
図5、図23及び図24に示すように、集草ボックス18と底蓋板20とには、底蓋板20を開き回動した後方斜め下向きの放てき傾斜姿勢(図5の一点鎖線状態、並びに図23及び図24参照)に保持するための放てきロック手段200が設けられている。実施形態の放てきロック手段200は、集草ボックス18の左右両底フレーム201と、底蓋板20の上面後部に設けられた左右一対のロック板202と、前述したロック長軸192及び止めピン193とにより構成されている。
各底フレーム201において底蓋板20に対する枢着ピン23より後方の箇所には、互いに左右方向の同心状に貫通した貫通穴203が形成されている。また、各ロック板202にも、互いに左右方向の同心状に貫通したロック穴204が形成されている。底蓋板20が放てき傾斜姿勢の状態では、左右両底フレーム201の貫通穴203と左右両ロック板202のロック穴204とが左右方向の同心状(直線状)に位置するように設定されている。従って、この状態では、貫通穴203及びロック穴204にロック長軸192を嵌脱可能となる。なお、実施形態では、底蓋板20が放てき傾斜姿勢のときに、底部誘導板28の前端部(先端部)を排出ダクト14における後端排出口(刈草排出口)の上部に臨ませる(近接させる)ように構成されている。
刈草を回収せずに地面に敷き詰めるように撒く放てき作業の際は、手動操作等にて底蓋板20を放てき傾斜姿勢にして、左右両底フレーム201の貫通穴203と左右両ロック板202のロック穴204とを合致させてから、これら貫通穴203及びロック穴204にロック長軸192を貫通させ、ロック長軸192の先端部に抜け止め用の止めピン193を取り付ける。その結果、底蓋板20が放てき傾斜姿勢に安定的に保持されることになる(図24参照)。ロック操作(係合操作)自体も極めて簡単である。
(3−2).リフト機構の詳細
前記集草排出機構16におけるリフト機構19は、図3〜図7に示すように構成されている。すなわち、このリフト機構19は、前記集草ボックス18を挟む左右両側の各々に配設したマスト部材29、昇降用アクチュエータとしての複動型の昇降用油圧シリンダ30及び上下一対のリフト用リンク31,32を備え、前記両マスト部材29は、中空断面の角パイプ製で上下方向に延びて、その下端部29aにおいて前記走行機体2の後部に対してボルト59の締結等にて着脱可能に取付けられており、且つ、その相互間は複数本の横部材33にて連結され、前記芝刈機1の走行方向から見て井桁状に構成されている。
なお、この両マスト部材29の走行機体2への着脱可能な状態での取付けは、前記走行機体2における両サイドフレーム3の後端へのボルト59による締結と、前記両サイドフレーム3の後端から下向きに延びる後輪支持用フレーム3aへのボルト59による締結にて行うように構成している。
また、前記両マスト部材29は、側面視(図1、図3、図4及び図6)において、その上端部29bが前記走行機体2に対する取付け部である下端部29aよりも適宜寸法Eだけ前方に位置するように、その途中の部分において前側に曲げられており、この両マスト部材29における上端部29bの後面には、後ろ向きの溝型断面に構成した上部ブラケット部材34が溶接等にて固着されている一方、両マスト部材29の下端には、後ろ向きの溝型断面(コ字状断面)に形成された下部ブラケット部材35が、後ろ向きに突出するように固着されている。
前記上下一対のリフト用リンク31,32の基端は、前記両マスト部材29の上端部29bにおける上部ブラケット部材34に対して、当該上部ブラケット部材34における溝内に挿入した状態で、この上部ブラケット部材34を貫通するように着脱自在に差し込んだリフトピン36,37にて回動自在に枢着されている。
つまり、前記両リフト用リンク31,32の基端に対するリフトピン36,37は、前記上部ブラケット部材34に対して両端支持の構造であることにより、当該リフトピン36,37による支持の剛性及び耐久性を向上でき、これに加えて、前記両リフト用リンク31,32の基端は、前記上部ブラケット部材34における溝内に挿入されていることにより、前記リフト用リンク31,32の横方向への振れを確実に低減できる。
また、前記両マスト部材29を、上端部29bが下端部29aよりも適宜寸法Eだけ前方に位置するというように前側に曲げた構成にしたことにより、前記上下一対のリフト用リンク31,32基端のリフトピン36,37における前記走行機体2の前後方向に沿った位置を、前記マスト部材29を真っ直ぐの構成にした場合よりも、前記適宜寸法Eだけ前方(走行機体2側)の部位に位置することができるから、前記集草ボックス18を、後述するように、最高に上昇動したときに、その最高上昇高さを前記適宜寸法Eの分だけ高くすることができ、また、その最高高さを得ることに要するリフト用リンク36,37の長さを、前記適宜寸法Eの分だけ短くできる。
しかも、この集草ボックス18における前記走行機体2に対する支持荷重の作用点が、前記適宜寸法Eの分だけ前方(走行機体2側)に位置するから、前記走行機体2における後ろ荷重を低減することができる。
一方、前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち上部リンク31の先端は、前記集草ボックス18の左右両側面板18bの外側に固着したブラケット部材22にピン38にて回動自在に枢着され、前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32の先端は、前記底蓋板20に対する枢着ピン23にて前記集草ボックス18の左右両側面板18bの下端部に対して回動自在に枢着されている。
なお、前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32の先端における前記集草ボックス18に対する枢着ピンは、前記集草ボックス18における底蓋板20に対する枢着ピン23と一体の兼用にしているが、下部リンク32先端における集草ボックス18に対する枢着ピンを、底蓋板20に対する枢着ピン23とを別体に構成できることは勿論である。
前記両マスト部材29の下端における下部ブラケット部材35の内面の各々には、レバー体210が回動自在にピン211にて枢着されている。これら両レバー体210の相互間は、両レバー体210が同時に回動するように横部材212を介して一体的に連結されており、各レバー体210には、前記昇降用油圧シリンダ30の基端がシリンダ枢着用ピン213にて回動自在に連結されている。
前記両レバー体210には、当該レバー体210がピン211回りに下向き回動した状態において、地面4に向けて近接するように下向きに突出するアウトリガー215と、このときに後方に向けて突出するバンパー体216とが設けられている。更に、前記両レバー体210には、当該レバー体210がピン211回りに下向き回動したときに、前記マスト部材29の下端部29a後面に対して、これ以上の下向き回転(突出姿勢からの更なる下向き回転)を阻止するように接当するストッパー片217が設けられている。従って、左右両レバー体210と、それぞれに設けられたアウトリガー215、バンパー体216及びストッパー片217とは、ピン211を回動中心として一体的に姿勢変更動する構成になっている。
そして、前記両昇降用油圧シリンダ30の先端を、前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32に対してピン48にて連結して、前記上下一対のリフト用リンク31,32を、前記両昇降用油圧シリンダ30にて上下方向に回動することにより、前記集草ボックス18を、下げ位置において前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる前向きの姿勢と、この前向きの姿勢のままで高く持ち上げた状態とに往復して昇降動するように構成している。
すなわち、前記昇降用油圧シリンダ30におけるピストン突出動にて前向き姿勢の集草ボックス18を高く持ち上げる一方、前記昇降用油圧シリンダ30におけるピストン後退動にて前向き姿勢の集草ボックス18を元の位置に下降するように構成している。
なお、上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32には、前記集草ボックス18を高く持ち上げた姿勢のときに、前記両マスト部材29の上端部29b又は第1ブラケット部材34に対して、下向き回動を阻止するように着脱自在に係合するフック状のロック手段49が設けられており、このフック状のロック手段49は、上部リンク31に設けるか、前記両マスト部材29の上端部29b又は第1ブラケット部材34側に設けても良い。
また、右側におけるリフト用リンク31,32と、左側におけるリフト用リンク31,32との相互間は、これらの各リンクが同時に回動するように、その上端の部分において横部材50,51を介して連結されている。
検出ロッド194と同じ側にあるマスト部材29(実施形態では左マスト部材29)の内面側には、検出ロッド194の先端部を検出するロッド検出手段としての接触式のリミットスイッチ218がブラケット板219を介して設けられている。ブラケット板219の後面側には、弾性を有する側面視略く字状の板バネ部材220が、リミットスイッチ218から後ろ向きに突出した感知体221と検出ロッド194の先端部との間に介在するように吊り下げ配置されている。
この場合、検出ロッド194の先端部が板バネ部材220を後方から押圧して板バネ部材220が感知体221に当接するとリミットスイッチ218が入り作動し、検出ロッド194による押圧が解除されて板バネ部材220が感知体221から離れるとリミットスイッチ218が切り作動するように構成されている。
更にまた、前記芝刈機1のうちその操縦座席9から手が届く部位には、前記ロータリー式の芝刈り機構13をON・OFF操作するPTO操作体としてのPTO操作レバー52が設けられているとともに、前記開閉用油圧シリンダ26を、ピストン突出動する開位置、ピストン後退動する閉位置及びその中間でピストン作動停止する中立位置に切り換え操作するための開閉操作レバー53が設けられ、更に、前記昇降用油圧シリンダ30を、ピストン突出動する上げ位置、ピストン後退動する下げ位置及びその中間でピストン作動停止する中立位置に切り換え操作するための昇降操作レバー54が設けられている。
PTO操作レバー52は、後述する所定条件下で入り操作(前傾操作)すると、PTOクラッチモータの駆動にてPTOクラッチ163(図26参照)が入り作動して無端PTO伝動ベルト71を緊張させ、切り操作(後傾操作)すると、PTOクラッチモータの駆動にてPTOクラッチ163が切り作動して無端PTO伝動ベルト71を弛緩させるように構成されている。PTO操作レバー52には、これを入り操作したときに入り作動するPTO検出手段としてのPTO入りセンサ171(図21参照)が設けられている。このPTO入りセンサ171の入り切り動作にて、PTO操作レバー52が入り操作位置(動力接続位置)にあるか否かを検出できる。
(4).芝刈機の油圧回路構造
次に、図15を参照しながら、芝刈機1の油圧回路91構造について説明する。
芝刈機1の油圧回路91は、エンジン7の回転力にて作動するチャージ用油圧ポンプ92及び可変容量形の変速用油圧ポンプ93と、変速用油圧ポンプ93から吐出される高圧の作動油にて作動する定容量形の変速用油圧モータ94とを備えている。変速用油圧ポンプ93と変速用油圧モータ94とは静油圧式無段変速機95を構成するものであり、実施形態の静油圧式無段変速機95(変速用油圧ポンプ93及び変速用油圧モータ94)は、ミッションケース61に内蔵されている。
変速用油圧ポンプ93と変速用油圧モータ94とは、閉ループ油路96を介してそれらの吸入側及び吐出側が接続されている。エンジン7の動力にて駆動する変速用油圧ポンプ93の斜板97を、操縦ハンドル8の右側下部に配置された変速ペダル81(図1、図2及び図15参照)にて角度調節することにより、変速用油圧モータ94からの動力にて駆動する左右の車軸(走行機体1後部側の車軸)の回転数が変更される。その結果、左右の車軸に取り付けられた後車輪6の回転速度、ひいては走行機体1の車速(走行速度)が変更されることになる。
上述した油圧回路91には、図15に示すように、リリーフ弁やオイルフィルタ、チェック弁等を備えている。チャージ用油圧ポンプ92の吸入側は、低圧チャージ油路98を介して、オイルタンク63内にあるストレーナ99に接続されている。チャージ用油圧ポンプ92の吐出側には、補給用リリーフ弁100及び戻し用リリーフ弁101を有する高圧チャージ油路102が接続されている。高圧チャージ油路102は、補給用リリーフ弁100、前進補充用のチェック弁103及び後進補充用のチェック104弁等を介して、閉ループ油路96に接続されている。
従って、エンジン7の作動中は、チャージ用油圧ポンプ92からの作動油が閉ループ油路96に常に補充されることになる。また、チャージ用油圧ポンプ92から閉ループ油路96に供給するための各チャージ油路98,102の作動油が余れば、各チャージ油路98,102の作動油が戻し用リリーフ弁101を介してオイルタンク63に戻されることになる。
一方、閉ループ油路96には、変速用油圧ポンプ93の吸入側及び変速用油圧モータ94の吐出側の間と、変速用油圧モータ94の吸入側及び変速用油圧ポンプ93の吐出側の間とで短絡させるためのバイパスバルブ105が接続されている。バイパスバルブ105に関連して設けられたバイパス切換レバー106の操作にて、閉ループ回路96が短絡していない状態(図15に示すバイパスバルブ105の状態)にバイパスバルブ105を切り換えると、変速用油圧ポンプ93と変速用油圧モータ94とが閉ループ油路96を介して走行駆動状態に連通し、エンジン7の回転動力にて後車輪6が駆動されることになる。
他方、バイパス切換レバー106の操作にて、閉ループ回路96が短絡した状態にバイパスバルブ105を切り換えると、変速用油圧モータ94が自由回転状態(無負荷で回転する状態)に保持されることになる。例えば燃料タンク62の燃料がなくなる等の故障に起因して後車輪6を駆動できない状態になったときに、上述の切換操作を実行すると、ミッションケース61内の静油圧式無段変速機95が無負荷状態に保持されるから、オペレータは走行機体1を押して移動させることができる。
チャージ用油圧ポンプ92は、複動型の昇降用油圧シリンダ30に作動油を供給するための昇降用油圧バルブ107に、誤作動防止用チェック弁108及び昇降用油圧バルブ107(昇降用油圧シリンダ30)への作動油の供給を調節制御するための電磁放てきバルブ135を介して接続されている。電磁放てきバルブ135は、後述する各種センサ142〜145(図20参照)の検出信号(入り切り信号)に対応した電磁放てきソレノイド136の駆動にて自動的に切換作動する構成になっている。昇降用油圧バルブ107のタンクポートには、複動型の開閉用油圧シリンダ26に作動油を供給するための開閉用油圧バルブ109が接続されている。また、前述の電磁放てきバルブ135は、開閉用油圧バルブ109とその下流側にあるトルクジェネレータ137(詳細は後述する)との間の油路にも接続されている。
電磁放てきバルブ135が昇降用油圧バルブ107に作動油を供給する状態(図15に示す電磁放てきバルブ135の状態であり、以下、供給状態と称する)で、昇降操作レバー54の操作にて昇降用油圧バルブ107を切換作動させると、昇降用油圧シリンダ30が伸縮作動して、集草ボックス18が、排出ダクト14から放出される刈草を前向きの姿勢で受け入れる下げ位置と、前向きの姿勢のままで高く持ち上げたときの上げ位置とに昇降動することになる。
開閉操作レバー53の操作にて開閉用油圧バルブ109を切換作動させると、開閉用油圧シリンダ26が伸縮作動して、後蓋板21が、集草ボックス18において開放された後面を閉じる状態と、後面から跳ね上がるように開く状態とに開閉作動することになる。また、後蓋板21の開閉作動に伴い、底蓋板20は、金属製ワイヤ27の引張りにて前端が跳ね上がり後端が下がるように回動して集草ボックス18の底面を開放した状態と、前側の重量にて集草ボックス18の底面を閉じた状態とに開閉作動することになる。
電磁放てきバルブ135が昇降用油圧バルブ107に作動油を供給停止した状態(以下、供給停止状態と称する)になると、チャージ用油圧ポンプ92から電磁放てきバルブ135を経由した作動油は、昇降用油圧シリンダ30には送られず、開閉用油圧バルブ109ひいては開閉用油圧シリンダ26のみに供給されることになる。従って、この状態では、開閉操作レバー53の操作にて後蓋板21及び底蓋板20だけが開閉作動でき、昇降操作レバー54を操作しても、昇降用油圧シリンダ30ひいては集草ボックス18は昇降動しない。
実施形態では、電磁放てきバルブ135が供給停止状態の場合において、開閉操作レバー53を開位置に向けて操作すると、後蓋板21と連動して開き回動する底蓋板20が後ろ斜め下向きの放てき傾斜姿勢になるまで、開閉用油圧シリンダ26が作動するように構成されている(図23参照)。
なお、開閉用油圧バルブ109を自動的に中立位置にして開閉用油圧シリンダ26を作動停止させてから、前述した放てきロック手段200の係合操作を行えば、底蓋板20を手動で開き操作しなくても、開閉用油圧シリンダ26の駆動力にて底蓋板を簡単に放てき傾斜姿勢まで開き回動させることができ、その後の放てきロック手段200の係合操作もスムーズに行える。放てきロック手段200にて底蓋板20を放てき傾斜姿勢に保持した後は、開閉操作レバー53を閉位置に向けて操作して、開閉用油圧シリンダ26の作動にて後蓋板21のみを閉じ作動させることになる(図24参照)。この場合、後蓋板21と底蓋板20は可撓性部材である金属製ワイヤ27にて連結されていて、後蓋板21の閉じ作動時は金属製ワイヤ27が弛むだけであるから、底蓋板20の姿勢保持状態が邪魔されることはない(底蓋板20は、後蓋板21が閉じ状態になっても放てき傾斜姿勢を維持できる)。
一方、ダンプバルブ109のタンクポートには、操向ハンドル10の操作にて発生させた大きな油圧力を利用して前車輪5を操舵作動するためのパワーステアリング用のトルクジェネレータ137が接続されている。トルクジェネレータ137は、並列状のラインフィルタ110及びリリーフ弁111を介して、戻し用リリーフ弁101に接続されている。従って、トルクジェネレータ137からの作動油は、ラインフィルタ112を介してオイルタンク63に戻されることになる。なお、トルクジェネレータ137は、操向ハンドル10の回動操作にて切り換えるコントロールバルブと、該コントロールバルブにて作動させる油圧ポンプ等とからなり、当該油圧ポンプの回転力を利用して前車輪5を方向転換させるように構成されている。
図15から明らかなように、昇降用油圧バルブ107、開閉用油圧バルブ109及びトルクジェネレータ137は、チャージ用油圧ポンプ92に対してそれぞれ直列に接続されている。このため、電磁放てきバルブ135が供給状態のときにおいて、昇降用油圧バルブ107の切換作動にて昇降用油圧シリンダ30が伸縮駆動している間は、開閉用油圧シリンダ26及びトルクジェネレータ137が駆動しない。
また、電磁放てきバルブ135が供給状態のときに、開閉用油圧バルブ109の切換作動にて開閉用油圧シリンダ26が伸縮駆動している間は、トルクジェネレータ137が駆動しない。更に、電磁放てきバルブ135が供給状態のときに、昇降用油圧シリンダ30及び開閉用油圧シリンダ26が共に駆動していなければ、トルクジェネレータ137が駆動することになる。
すなわち、電磁放てきバルブ135が供給状態のときにおいて、昇降用油圧バルブ107、開閉用油圧バルブ109及びトルクジェネレータ137は、この順番で優先的に駆動する構成になっている。
(5).昇降操作レバー及び開閉操作レバーの取り付け構造
次に、図16〜図19を参照しながら、昇降操作レバー54及び開閉操作レバー53の取り付け構造について説明する。
操縦座席9の右斜め後方に配置された油圧ユニットケース116(図2参照)には、チャージ用油圧ポンプ92、昇降用油圧シリンダ30及び開閉用油圧シリンダ26に油圧配管(図示せず)を接続するための油圧配管ブロック114と、昇降用油圧バルブ107及び開閉用油圧バルブ109を有する油圧バルブユニット体115とが内蔵されている。
油圧バルブユニット体115の前面には、レバー軸受部117を介して、昇降操作レバー54及び開閉操作レバー53が上下方向に回動操作可能に取り付けられている。昇降操作レバー54は、昇降用油圧バルブ107が中立の状態で、油圧バルブユニット体115の前方に向けて略水平に突出している。昇降操作レバー54を上下に回動操作すると、昇降用油圧バルブ107が上昇側又は下降側に切り換わって、昇降用油圧シリンダ30が伸縮駆動する。開閉操作レバー53を上下に回動操作すると、開閉用油圧バルブ109が開き動側又は閉じ動側に切り換わって、開閉用油圧シリンダ26が伸縮駆動する。
また、油圧ユニットケース116は、両操作レバー53,54の上下回動をガイド(案内)するためのレバーガイド体118と、操縦ハンドル8の右側下部に配置されたブレーキペダル82(図1、図2及び図15参照)に制動検出用ワイヤ119を介して連動連結されたロックアーム体120と、リフト両操作レバー53,54のうちいずれか一方を操作したときに他方の操作を制限する牽制アーム体121とを備えている。実施形態では、油圧ユニットケース116内に固定されたレバーガイド体118に、ロックアーム体120及び牽制アーム体121が、前後に延びる支軸122を介してそれぞれ独立的に回動可能に軸支されている。
ロックアーム体120は正面視略鉤状の形態になっており、ロックアーム体120において昇降操作レバー54に対峙する側端部120bには、昇降操作レバー54の軸部に引っ掛かり係合可能な昇降規制ノッチ120aが形成されている。牽制アーム体121には、昇降操作レバー54の軸部に引っ掛かり係合可能な昇降牽制ノッチ121aと、開閉操作レバー53の軸部に引っ掛かり係合可能な開閉牽制ノッチ121bとが形成されている。また、牽制アーム体121には、リフトレバー110の軸部に当接し得る上下一対の加圧ロール123,124が上下ロール軸125,126を介して回動可能に軸支されている。両加圧ロール123,124は、牽制アーム体121におけるリフト牽制ノッチ121aを挟んだ上下両側に分かれて配置されている。
制動検出用ワイヤ119の一端部に取り付けられた連結金具130は、連結ピン129を介してロックアーム体120の一端部に固定されている。ロックアーム体120のうち支軸122を挟んで連結ピン129と反対の他端部には、昇降規制ノッチ120aがリフトレバー110から離れる方向へのロックアーム体120の回動を規制するためのストッパー体131が一体形成されている。
連結ピン129には、一端部127aをレバーガイド体118の前面に固定した挟みバネ状の制動検出バネ127の他端部127bが引っ掛けられている。制動検出バネ127は、その弾性付勢力にて、昇降操作レバー54から昇降規制ノッチ120aが離れるような回動方向に、ロックアーム体120を付勢している。連結ピン129と上加圧ロール123の上ロール軸125との間には、開閉操作レバー53から開閉牽制ノッチ121bが離れるような回動方向に牽制アーム体121を付勢するための引張りバネ状の解除バネ128が装架されている。
なお、制動検出バネ127のバネ力は、ブレーキペダル82を初期位置(ブレーキ解除位置)に維持するペダル復帰バネ(図示せず)のバネ力より小さく設定されている。解除バネ128のバネ力は、制動検出バネ127のバネ力より小さく設定されている。
ブレーキペダル82が踏み込み操作されていない初期位置(ブレーキ解除位置)にある場合は、ペダル復帰バネのバネ力にて制動検出用ワイヤ119が引っ張られるため、ロックアーム体120は、制動検出バネ127のバネ力に抗して、図17における支軸122回りの時計方向に回動し、昇降規制ノッチ120aが昇降操作レバー54の軸部に引っ掛かり係合する。このとき、牽制アーム体121は、解除バネ128のバネ力にて、図17における支軸122回りの反時計方向に回動し、下加圧ロール124がロックアーム体120の側端部120bに当接する。この状態では、開閉牽制ノッチ121bが開閉操作レバー53の軸部に引っ掛かり係合する。
従って、ブレーキペダル82が踏み込み位置(ブレーキ位置)になければ、昇降操作レバー54及び開閉操作レバー53のいずれの操作も、ロックアーム体120と牽制アーム体121とによって禁止される。
図18に示すように、ブレーキペダル82が踏み込み操作されて後車輪6にブレーキを掛けた場合は、制動検出用ワイヤ119が緩むため、ロックアーム体120は、制動検出バネ127のバネ力にて、ストッパー体131がレバーガイド体118の上面に当接するまで図18における支軸122回りの反時計方向に回動し、昇降規制ノッチ120aが昇降操作レバー54の軸部から外れる。このとき、牽制アーム体121は、解除バネ128のバネ力にて、図18における支軸122回りの反時計方向に回動し、開閉牽制ノッチ121bが開閉操作レバー53の軸部から外れる。上下両加圧ロール123,124は昇降操作レバー54の軸部に当接する。
すなわち、ブレーキペダル82を踏み込み操作して後車輪6にブレーキを掛けると、昇降操作レバー54及び開閉操作レバー53は操作可能な状態になる。
そこで、図18に示すように、先に開閉操作レバー53を上下回動操作すると、開閉操作レバー53が牽制アーム体121の規制端部121c又は121dとの当接位置に移動して、牽制アーム体121を図18に示す支軸122回りの反時計方向に更に回動させ、上下両加圧ロール123,124の間にある昇降牽制ノッチ121aを昇降操作レバー54の軸部に引っ掛かり係合させる。
この状態で昇降操作レバー54を上下回動操作しようとしても、開閉操作レバー53の軸部に牽制アーム体121の規制端部121c又は121dが当たって、牽制アーム体121の時計方向の回動が阻止され、昇降操作レバー54の軸部と昇降牽制ノッチ121aとの係合が維持されるから、昇降操作レバー54を上下回動操作できない。つまり、開閉操作レバー53を上下回動操作した状態では、開閉操作レバー53と牽制アーム体54との協働作用によって昇降操作レバー54の上下回動操作が禁止される。
他方、図19に示すように、先に昇降操作レバー54を上下回動操作すると、昇降操作レバー54が解除バネ128のバネ力に抗して一方の加圧ロール123又は124を押圧して、牽制アーム体121を図19に示す支軸122回りの時計方向に回動させ、開閉牽制ノッチ121bを開閉操作レバー53の軸部に引っ掛かり係合させる。
この状態で開閉操作レバー53を上下回動操作しようとしても、昇降操作レバー54の軸部に一方の加圧ロール123又は124が当たって、牽制アーム体121の反時計方向の回動が阻止され、開閉操作レバー53の軸部と開閉牽制ノッチ121bとの係合が維持されるから、開閉操作レバー53を上下回動操作できない。つまり、昇降操作レバー54を上下回動操作した状態では、昇降操作レバー54と牽制アーム体121との協働作用によって開閉操作レバー53の上下回動操作が禁止される。
従って、ブレーキペダル82を踏み込み操作して後車輪6にブレーキを掛けておけば、オペレータは昇降操作レバー54及び開閉操作レバー53のいずれか一方を択一的に上下回動操作できるのである。
(6).集草排出機構の動作態様
次に、図1及び図10〜図14を参照しながら、集草排出機構の動作態様の一例について説明する。
以上の構成において、前記集草排出機構16における集草ボックス18を、その底蓋板20及び後蓋板21を閉じた状態で下降した下げ位置に保持することにより、前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる姿勢になる。この状態で、芝刈機1を、そのロータリー式芝刈り機構13を駆動しながら前進走行することにより、所定の芝刈りを行うことができ、前記ロータリー式芝刈り機構13にて刈り取られた刈草は、排出ダクト14及び底部誘導板28を介して前記集草ボックス18内に入るように集められる。
そして、前記集草ボックス18内に所定量の刈草が溜まると、草刈り作業及び前進走行を停止して、集草ボックス18内からの刈草の放出作業を開始する。この放出作業に際しては、先ず、前記両昇降用油圧シリンダ30を、その昇降操作レバー54の上げ位置への操作によりピストンが突出動するように作動して、前記集草ボックス18を持ち上げるようにする。
すると、先ず、両昇降用油圧シリンダ30の基端におけるレバー体210がピン211回りに下向き回動して、レバー体210のストッパー片217が左マスト部材29の下端部29a後面に接当する状態になるから、レバー体210に設けられたアウトリガー215が地面4に接近するように突出する突出姿勢になって、芝刈機1の前部が浮き上がるように後ろ方向に傾くことを阻止できる状態になる(図10及び図22参照)。
つまり、集草ボックス18内に受け入れた刈草の排出に際し、集草ボックス18の持ち上げ開始前から持ち上げ途中までの間のいずれかの時期に、アウトリガー215が地面に近接するように突出することにより、集草ボックス18を高く持ち上げた状態で走行機体2が後方に傾くおそれを確実に低減できる。
しかも、アウトリガー215の突出は、集草ボックス18の持ち上げ開始前から持ち上げ途中までの間のいずれかの時期において行われるから、アウトリガー215の存在が芝刈機1における通常走行の妨げになることを確実に回避できる。その上、アウトリガー215は地面4に近接するという突出姿勢になることにより、アウトリガー215が突出した状態であっても、芝刈機1を集草用コンテナA等に近づけるように走行できる。
特に実施形態では、アウトリガー215を、リフト機構19における昇降用油圧シリンダ30にて突出するように構成しているから、アウトリガー215を突出動するための構成を別に設ける必要がなく、その構成が簡単になり、小型軽量化を図れるという利点もある。
アウトリガー215が地面4に接近するように突出動する際には、これと同時に、前記レバー体210に設けたバンパー体216が後方に向けて突出した状態になる。つまり、前記集草ボックス18の持ち上げ作動の前に、アウトリガー215が地面4に接近するように突出すると共に、バンパー体216が後方に突出する。
次いで、前記両昇降用油圧シリンダ30における更なるピストン突出動にて上下一対のリフト用リンク31,32が上向きに回動することにより、図11に示すように、前記集草ボックス18が、その底蓋板20及び後蓋板21を閉じた状態のままで持ち上げられ、そして、最も高い最大上げ位置まで持ち上げられると、前記昇降操作レバー54を中立位置に操作することにより、前記両昇降用油圧シリンダ30における更なるピストン突出動、つまり、前記集草ボックス18の持ち上げが停止すると同時に、前記集草ボックス18がロック手段49にて前記した最も高い位置から下降しないようにロックされる。
なお、前記両昇降用油圧シリンダ30は、前記集草ボックス18を最大上げ位置に持ち上げた状態になると、自動的にそのピストンの作動を停止する中立位置になるように構成することができる。また、前記集草ボックス18は、下げ位置において排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる状態のときには、前部が低くて後部が高くなるように前傾斜しているが、最も高い位置まで持ち上げられた状態においては、逆に前部が高くて後部が低くなるように後ろ傾斜になるように構成されている。
そして、この状態で、前記芝刈機1を、前進又は後進走行するように走行操作することで、図12に示すように、その後部が地面4に置かれた集草用コンテナAに接近するように移動して、前記のように高く持ち上げた集草ボックス18を前記集草用コンテナAの真上に位置させる。前記芝刈機1をその後部が前記集草用コンテナAに接近するように後進走行する際に、前記集草用コンテナAへの衝突にてリフト機構19の破損が発生することを前記バンパー体216にて確実に回避できる。特に、バンパー体216を、リフト機構19のうち少なくとも昇降用油圧シリンダ30の基端部より外向き(後ろ向き)に突出するように構成しているので、昇降用油圧シリンダ30の基端部が損傷するのを確実に防止できる。
その上、バンパー体216は、集草ボックス18の持ち上げ開始前から持ち上げ途中までの間のいずれかの時期において突出し、通常走行時には突出しない状態になっていることから、バンパー体216の存在が通常走行の妨げになるのを確実に回避できる。
なお、実施形態では、バンパー体216の突出動が、アウトリガー215と同様に、リフト機構19の昇降用油圧シリンダ30にて行われるから、バンパー体216を突出動するための構成を別に設ける必要がなく、その構成が簡単になり、小型軽量化を図れる。
また、アウトリガー215及びバンパー体216が突出姿勢のときは、レバー体210のストッパー片217が左マスト部材29の下端部29a後面に接当しているから、アウトリガー215及びバンパー体216を突出姿勢に安定的に保持でき、アウトリガー215の機体後傾阻止機能とバンパー体216の緩衝機能とを確実に発揮できる利点がある。
前記芝刈機1を、その後部が地面4に置かれた集草用コンテナAに接近するように移動させた後は、前記開閉用油圧シリンダ26を、その開閉操作レバー53の開位置への操作によりピストンが突出動するように作動させる。すると、図12に示すように、前記集草ボックス18に対する後蓋板21が開き回動するから、前記集草ボックス18内における刈草の前記集草用コンテナA内への排出が始まる。
次いで、前記集草ボックス18に対する底蓋板20が、前記後蓋板21における開き回動に可撓性を有する金属製ワイヤ27を介して連動して、図13に示すように、その前端が跳ね上がる一方後端が下がるように回動して集草ボックス18の底面を開放する。このため、前記集草ボックス18内における刈草の前記集草用コンテナA内への排出が更に進行する。
前記後蓋板21が全開になると、前記開閉操作レバー53を中立位置に操作することにより、前記両開閉用油圧シリンダ26における更なるピストン突出動、つまり、前記後蓋板21の開き作動を停止する。なお、前記両開閉用油圧シリンダ26は、前記後蓋板21が最大に開くと、自動的にそのピストンが作動停止する中立位置になるように構成することができる。
次いで、前記集草ボックス18内における刈草の排出に伴い、その排出落下中の刈草が、前記底蓋板20における後端に当たることにより、前記底蓋板20が、図14に示すように、当該底蓋板20と前記後蓋板21とを連動連結する金属製ワイヤ27を弛ませながら、前記後蓋板21の開き回動にかかわらず、自動的に更に大きく開き回動するから、前記集草ボックス18内における刈草の全てを排出できると共に、刈草の排出位置を芝刈機1から離れた位置にできる。
特に実施形態では、底蓋板20の開き作動を、底蓋板20のうち前端部が集草ボックス18内に向かって跳ね上がり後端部が下がるように開き回動する構成にしているから、集草ボックス18内の刈草が、集草ボックス18の後面開口から排出されるだけでなく、集草ボックス18における開放された底部のうち底蓋板20における後端部に該当する部分からも排出されることになるから、刈草の排出を確実且つ迅速にできる利点がある。
また、実施形態では、底蓋板20を、薄金属板を鋸歯状の断面に折り曲げて成る構成にしたことで、底蓋板20の剛性を確保した状態のもとで大幅に軽量にできて、集草ボックス18の更なる軽量化を図れるから、芝刈機1全体の更なる小型化及び軽量化を達成できる。しかも、底蓋板20における鋸歯状の断面に、前端から後方に向かって斜め上向きの傾斜部20aを備えているから、底蓋板20の跳ね上げ回動時には、その上面にある刈草が傾斜部20aに沿って滑り落ちることになる。このため、底蓋板20の上面に刈草が付着するのを確実に回避できる。特に、底蓋板20を、通気性を有する薄金属板製にしたので、底蓋板20の更なる軽量化が可能であり、前記した効果を助長すると共に、低価格化にも寄与できる。
上記態様から明らかなように、集草ボックス18内からの刈草の排出は、集草ボックス18における開放された底部を塞ぐ底蓋板20と、集草ボックス18の後面の開口を塞ぐ後蓋板21とを開くことによって行われるものである。このため、前記従来のように、集草ボックス18を、高く持ち上げた状態で、その全体を大きく後ろ回動させなくて済むから、高く持ち上げたときにおける地面からの重心高さを従来の場合よりも大幅に低くできる。しかも、底蓋板20及び後蓋板21の開閉作動を、前記従来の場合より比較的出力の小さい小型の機構(例えば油圧シリンダ)にて行え、集草ボックス18全体の重量を軽減できるから、集草ボックス18を高く持ち上げた状態での支持安定性をより向上できると共に、リフト機構19の小型化及び軽量化、ひいては、芝刈機1全体の小型化及び軽量化を図れる。
そればかりか、実施形態では、底蓋板20と後蓋板21とを、集草ボックス18内に配設した金属製ワイヤ27(可撓性部材)を介して連動連結しているので、かかる連動機構を集草ボックス18に内蔵でき、ひいては、集草ボックス18の更なる小型化及び軽量化を図れるから、芝刈機1全体の更なる小型化及び軽量化に寄与できる。
特に、金属製ワイヤ27の両端を、その軸線回りに適宜角度だけ捩じった状態にして後蓋板21及び底蓋板20に結合したことにより、可撓性部材における耐久性の向上及び軽量化を図れる。また、金属製ワイヤ27のうち途中の部分は、底蓋板20が閉じたときにその上面に接当する状態になるから、集草ボックス18内に刈草を受け入れる際に、金属製ワイヤ27が邪魔になることはない。
また、実施形態では、底部誘導板28が前記底蓋板20と共に開き回動して、集草ボックス18内に入り込むから、底部誘導板28上に堆積する刈草は、底部誘導板28の上面から底蓋板上の刈草と共に、集草用コンテナA内に落下することになる。すなわち、実施形態の芝刈機によると、底部誘導板28の上面に堆積する刈草をも集草ボックス18外に確実に排出できる。
このようにして、前記集草ボックス18から集草用コンテナA内へ刈草の排出が完了すると、前記開閉操作レバー53の閉位置への操作にて前記後蓋板21を閉じる。この場合、底蓋板20における開き回動の中心は、底蓋板20における前端と後端との中心位置よりも後端にずれた部位に位置しているから、前記底蓋板20は、その前端における重量によって自動的に閉じる。なお、前記開閉操作レバー53は、前記後蓋板21を閉じたときにおいて中立位置にするが、これを自動的に行うように構成することもできる。
次いで、前記芝刈機1を前記集草用コンテナAから離れるように移動したのち、前記昇降操作レバー54を下げ位置に操作して、前記両昇降用油圧シリンダ30をピストン後退動に作動することにより、前記集草ボックス18は、前記図10に示すように、下降して前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる姿勢に戻る。
次いで、前記両昇降用油圧シリンダ30が更にピストン後退動することにより、前記両レバー体210が、そのストッパー片217を左マスト部材29の下端部29a後面から離すように上向き回動して、前記アウトリガー215及びバンパー体216が、元の収納姿勢に戻り、前記草刈り作業を行う状態に復帰する(図1参照)。
なお、前記昇降操作レバー54は、前記両レバー体40を元の収納姿勢にまで上向き回動させたときにおいて中立位置にするが、これを自動的に行うように構成することもできる。また、前記実施の形態は、前記アウトリガー215の突出を、前記集草ボックス18の持ち上げを開始する前(直前)の時期において行うように構成した場合であったが、更に別の実施の形態においては、集草ボックス18の持ち上げを開始したあとで、且つ、高い高さにまで持ち上げるまでの間、つまり、持ち上げ途中の時期において行う構成することができる。
(7).制限機構の構造
次に、図20を参照しながら、昇降操作レバー54の誤操作による集草ボックス18の昇降動を防止するための制限機構の構造について説明する。
実施形態における芝刈機1の制限機構140は、バッテリ64と、電源印加用のキースイッチ141と、電磁放てきバルブ135の電磁放てきソレノイド136とを備えている。この場合、バッテリ64に、キースイッチ141と電磁放てきソレノイド136とが直列に接続されている。キースイッチ141は、エンジン7を始動するためのスタータ(図示せず)にも接続可能に構成されている。
キースイッチ141と電磁放てきソレノイド136との間には、操縦座席9にオペレータが着座すると入り作動するオンオフ切換スイッチ型のオペレータセンサ142と、後蓋板21が集草ボックス18の後面開口を塞ぐ閉位置にあると切り作動するオンオフ切換スイッチ型の後蓋板検出センサ143と、底蓋板20が集草ボックス18の底面開口を塞ぐ閉位置にあると切り作動するオンオフ切換スイッチ型の底蓋板検出センサ144と、集草ボックス18が下げ位置にあると入り作動するオンオフ切換スイッチ型の集草ボックスセンサ145とが直列に接続されている。
後蓋板検出センサ143は、後蓋板21に対する上部リンク24を回動可能に軸支するピン軸24aに関連付けて設けられている。底蓋板検出センサ144は、底蓋板20を回動可能に軸支する枢着ピン23に関連付けて設けられている。集草ボックスセンサ145は、排出ダクト14の後方(走行機体2側、例えば両マスト部材29をつなぐ最下の横部材33上)に設けられており、集草ボックス18が下げ位置にあるときに、底部誘導板28が集草ボックスセンサ145に接触することによって、集草ボックスセンサ145が入り作動するように構成されている。
かかる構成において、(1)操縦座席9にオペレータが着座し、(2)(3)後蓋板21及び底蓋板20が開き作動し、且つ(4)集草ボックス18が下げ位置にある、という4つの条件が全て揃えば、前述した4つのセンサ142〜145の入り作動にて電磁放てきソレノイド136が切換駆動し、電磁放てきバルブ135から昇降用油圧バルブ107への作動油の供給が停止する。その結果、作動油が昇降用油圧シリンダ30には送られず、昇降操作レバー54を操作しても、昇降用油圧シリンダ30ひいては集草ボックス18が昇降動しないのである。
(8).PTO規制機構の構造及びその作動態様
次に、図21〜図24を参照しながら、芝刈り機構13の不用意な駆動を防止するためのPTO規制機構225の構造及びその作動態様について説明する。
実施形態における芝刈機1のPTO規制機構225は、バッテリ64と、PTO操作レバー52を入り操作したときに入り作動するPTO検出手段としてのPTO入りセンサ226と、前述したロッド検出手段としての接触式のリミットスイッチ218と、PTOクラッチモータ(図示せず)を駆動させるためのモータ駆動回路部227とを備えている。この場合、バッテリ64に対して、PTO入りセンサ226、リミットスイッチ218及びモータ駆動回路部227が直列に接続されている。
リミットスイッチ218は、検出ロッド194の先端部が板バネ部材220を介して感知体221に接触しているか否かによって、集草ボックス18のダンプ状態(上げ位置か下げ位置か)と後蓋板21の開閉状態とを検出するためのものであり、前述の通り、検出ロッド194の先端部が板バネ部材220にて感知体221を押圧した状態でリミットスイッチ218が入り作動し、押圧解除の状態ではリミットスイッチ218が切り作動するように構成されている。
かかる構成において、刈草放出作業のために昇降操作レバー54を上げ位置に操作した場合は、図22に示すように、両昇降用油圧シリンダ30が突出動し、前記集草ボックス18の持ち上げ作動の前に、アウトリガー215が地面4に接近するように突出すると共に、バンパー体216が後方に突出する。
そうすると、検出ロッド194のロッド支持板198に対するバンパー体216の支持が外れて、検出ロッド194が後端の横向きピン195を支点にして前方斜め下向きに傾き、検出ロッドの先端部がガイドブラケット196における縦長溝穴197の下端部に突き当たる(引っ掛かる)。このとき、検出ロッド194の先端部は板バネ部材220の下端側に当接することになるため、板バネ部材220は自らの弾性復原力にて下端側を後方に動かすように弾性変形して、リミットスイッチ218の感知体221から離れ、リミットスイッチ218が切り状態になる。
その結果、PTO操作レバー52を入り操作してもバッテリ64からの電流が途中で遮断され、PTOクラッチ163が常に切り状態(動力遮断状態)になる。従って、芝刈り機構13の駆動が禁止されることになる。
また、集草ボックス18が下げ位置にある状態で開閉操作レバー53を開位置に操作した場合は、図23に示すように、後蓋板21と底蓋板20とが金属製ワイヤ27を介して連動して開き作動するが、このとき、開閉リンク機構190の回動板体191は、開閉用油圧シリンダ26の枢着ピン55を支点として、図23の側面視で時計方向に下向き回動するから、検出ロッド194は、バンパー体216にて下方から支持されたままで、回動板体191の回動作用にて後方に引っ張られることになる。
そうすると、検出ロッド194の先端部が板バネ部材220から離れ、板バネ部材220も自らの弾性復原力にて下端側を後方に動かすように弾性変形して、リミットスイッチ218の感知体221から離れる。その結果、リミットスイッチ218が切り状態になって、PTO操作レバー52を入り操作してもバッテリ64からの電流が途中で遮断され、PTOクラッチ163が常に切り状態(動力遮断状態)になる。従って、この場合も、芝刈り機構13の駆動が禁止されることになる。
このため、例えば芝刈り機構13の駆動中に昇降操作レバー54や開閉操作レバー53に誤って接触したとしても、PTOクラッチ163が切り状態になって芝刈り機構13の駆動が自動的に停止するから、排出ダクト14の後端排出口から走行機体2の後方に、刈草や小石等が不用意に撒き散らされるのを防止できる。
また、集草ボックス18が上げ位置にあるとき(刈草の放出作業時)にオペレータが誤ってPTO操作レバー52を入り操作したとしても、PTOクラッチ163は切り状態に保持され、芝刈り機構13が駆動することはないから、この場合も、排出ダクト14の後端排出口から走行機体2の後方に、刈草や小石等が不用意に撒き散らされるのを防止できるのである。
他方、集草ボックス18が下げ位置にあり且つ後蓋板21が閉止姿勢のとき(底蓋板20は閉止姿勢でも放てき傾斜姿勢でもよい)は、図1及び図24に示すように、検出ロッド194がバンパー体206にて下方から支持されていて、開閉リンク機構190の回動板体191は、開閉用油圧シリンダ26の枢着ピン55を支点として、図24の側面視で反時計方向に上向き回動した状態に保持されるから、検出ロッド194自体はほぼ水平状の姿勢で板バネ部材220の上端側に当接して、板バネ部材220を介して感知体221を後方から押圧する。このため、リミットスイッチ218は入り状態になっている。
この状態でPTO操作レバー52を入り操作すれば、前述したPTO入りセンサ226が入り作動して、バッテリ64からの電流がPTO入りセンサ226及びリミットスイッチ218を経由してモータ駆動回路部175に流れる。その結果、PTOクラッチモータが駆動してPTOクラッチ163(図26参照)が入り状態(動力接続状態)になる。
すなわち、集草ボックス18が下げ位置にあり且つ後蓋板21が閉止姿勢であれば、底蓋板20が閉止姿勢か放てき傾斜姿勢かに拘らず、芝刈り機構13の駆動が許容されることになる。従って、実施形態の芝刈機1を用いて刈草回収作業(刈草を集草ボックス18内に回収する作業)や放てき作業(刈草を地面に敷き詰めるように撒く作業)を支障なく行えるのである。
特に図24に示すように、放てきロック手段200の係合操作をして底蓋板20を放てき傾斜姿勢に保持した状態では、集草ボックス18の底面開口のみが開放されるので、この状態で芝刈り機構13を駆動させると、芝刈り機構13にて刈り取られた刈草が排出ダクト14を介して集草ボックス18内に導かれ、底蓋板20の裏面側(下面側)に受け止められる。そして、刈草は、底蓋板20の後ろ斜め下向きの傾斜に沿って後方下側にスムーズにガイド(案内)され、集草ボックス18の底面開口から地面に散布される。
つまり、実施形態では、下げ位置にある集草ボックス18の底面開口だけを開放し後蓋板21は閉じたままにして、PTOクラッチ163を入り状態にできるから、走行機体2の後部に集草ボックス18を取り付けたままで放てき作業を簡単に行える。従って、集草ボックス18を例えば放てきカバーに付け替えたりしなくても、1台の芝刈機1を刈草回収作業に用いたり放てき作業に用いたりできるから、実施形態の芝刈機1は、刈草回収作業と放てき作業との両方に対処できる汎用性の高いものでありながら、オペレータの作業負担が少なくて取り扱い易いという利点を有するのである。
また、実施形態における底蓋板20の開き作動は、底部誘導板28側を集草ボックス18内に向けて跳ね上げるように開き回動する構成であると共に、集草ボックス18が下げ位置にある状態で開き回動した底蓋板20は、底部誘導板28の前端部を排出ダクト14における後端排出口の上部に臨ませた放てき傾斜姿勢に保持されるから、底蓋板20の裏面側(下面側)は、刈草を地面に向けて導く案内面になる。すなわち、底蓋板20は刈草の排出先を変更するデフレクタとして機能することになり、排出ダクト14から放出された刈草を、底蓋板20のガイド作用(デフレクタ作用)にてスムーズに地面に放出できるのである。
しかも、この場合(底蓋板20が放てき傾斜姿勢のとき)は後蓋板21が閉じているから、排出ダクト14から放出される刈草は、集草ボックス18の後面開口から漏れ出すことなく、底面開口側から効率よく地面に放出されるのである。
更に、後蓋板21が閉じ状態であることと、集草ボックス18が下げ位置にあることとを、1つのリミットスイッチ218にて検出できる。すなわち、ロッド検出手段としてのリミットスイッチ218が、集草ボックス218のダンプ状態を検出する役割と、後蓋板21の開閉状態を検出する役割とを兼ねることになる。このため、PTOクラッチ162の入り作動を許否する機構を部品点数の少ない簡単な構造にでき、製造コストの抑制に寄与できるという利点もある。
(9).PTO規制機構の別例
図27はPTO規制機構230(安全機構)の別例を示している。PTO規制機構230は、バッテリ64と、PTO操作レバー52を入り操作したときに入り作動するPTO検出手段としてのPTO入りセンサ231と、エンジン7への燃料噴射量を調節するためのガバナ付き燃料噴射ポンプ(図示せず)に関連して設けられたエンジン停止機構としてのエンジン停止ソレノイド232とを備えている。この場合、バッテリ64に対して、PTO入りセンサ231とエンジン停止ソレノイド232とは直列に接続されている。燃料タンク62からエンジン7への燃料供給は、エンジン停止ソレノイド232の駆動にて中止され、その結果、エンジン7の駆動が停止することになる。
PTO入りセンサ226とエンジン停止ソレノイド232との間には、着座センサ233と、パーキングセンサ234と、ロッド検出手段としての接触式のリミットスイッチ235とが互いに並列に接続されている。これらの検出手段233〜235から見ると、それぞれ233〜235は、PTO入りセンサ231とエンジン停止ソレノイド232とに直列に接続されている。
着座センサ153は、操縦座席9からオペレータが離れると入り作動するオンオフ切換スイッチ型のものである。操縦座席9にオペレータが着座しておらず且つPTO操作レバー52を入り操作した場合は、着座センサ153とPTO入りセンサ231とが入り作動してエンジン停止ソレノイド232が駆動し、その結果、エンジン7の駆動が自動的に停止する。従って、操縦座席9にオペレータが着座していない間は、芝刈り機構13の駆動が禁止される。
パーキングセンサ234は、ブレーキペダル82を踏み込み位置(ブレーキ位置)に維持するパーキングレバー236の入り操作にて入り作動するオンオフ切換スイッチ型のものである。ここで、パーキングレバー236は、ブレーキペダル82を踏み込み位置に係脱可能に係止保持するためのものであり、詳細は図示していないが、操縦ハンドル8の下方に配置されている。
パーキングレバー236が入り状態(ブレーキペダル82を踏み込み位置に保持した状態)で且つPTO操作レバー52を入り操作した場合は、パーキングセンサ234とPTO入りセンサ231とが入り作動してエンジン停止ソレノイド232が駆動し、その結果、エンジン7の駆動が自動的に停止する。従って、パーキングレバー234が入り状態である間は、芝刈り機構13の駆動が禁止される。
リミットスイッチ235は、検出ロッド194の先端部が板バネ部材220を介して感知体221に接触しているか否かによって、集草ボックス18のダンプ状態(上げ位置か下げ位置か)と後蓋板21の開閉状態とを検出するという点では、先に説明したリミットスイッチ218と同じ構成のものである。但し、検出ロッド194の先端部が板バネ部材220にて感知体237を押圧した状態ではリミットスイッチ235が切り作動し、押圧解除の状態ではリミットスイッチ235が入り作動するように構成されている(先に説明したリミットスイッチ218とは入り切り時の作動態様が逆になっている)。
刈草放出作業のために昇降操作レバー54を上げ位置に操作するか、又は、集草ボックス18が下げ位置にある状態で開閉操作レバー53を開位置に操作した場合は、板バネ部材220がリミットスイッチ235の感知体237から離れて、リミットスイッチ235が入り状態になるから、バッテリ64からの電流がPTO入りセンサ231とリミットスイッチ235とを経由してエンジン停止ソレノイド232に流れ、エンジン停止ソレノイド232が駆動し、その結果、エンジン7の駆動が自動的に停止する。
従って、集草ボックス18が下げ位置にあり且つ後蓋板21が閉止姿勢のとき(底蓋板20は閉止姿勢でも放てき傾斜姿勢でもよい)のみ、芝刈り機構13の駆動が許容され、集草ボックス18を上げ操作したり、後蓋板21を開放姿勢にしたりしている間は、芝刈り機構13の駆動が禁止されるのである。
以上をまとめると、(1)操縦座席9にオペレータが着座していない場合、(2)パーキングレバー236が入り状態の場合、(3)集草ボックス18を上げ操作したり、後蓋板21を開放姿勢にしたりしている場合、という条件のいずれか1つを満たせば、PTO操作レバー52が入り状態であっても芝刈り機構13の駆動が禁止されるのである。
このため、例えば芝刈り機構13の駆動中に昇降用操作レバー54や開閉用操作レバー53に誤って接触したとしても、エンジン7の駆動が自動的に停止するから、芝刈り機構13の駆動を自動的に停止できると共に、集草ボックス18、後蓋板21及び底蓋板20が不用意に作動することがない。従って、排出ダクト14の後端排出口から走行機体2の後方に、刈草や小石等が不用意に撒き散らされるのを防止できる。
また、集草ボックス18が上げ位置にあるとき(刈草の放出作業時)にオペレータが誤ってPTO操作レバー52を入り操作したとしても、エンジン7と共に芝刈り機構13の駆動は自動的に停止するから、この場合も、排出ダクト14の後端排出口から走行機体2の後方に、刈草や小石等が不用意に撒き散らされるのを防止できるのである。
特に実施形態では、後蓋板21が閉じ状態であることと、集草ボックス18が下げ位置にあることとを、1つのリミットスイッチ235にて検出できる。すなわち、ロッド検出手段としてのリミットスイッチ235が、集草ボックス18のダンプ状態を検出する役割と、後蓋板21の開閉状態を検出する役割とを兼ねることになる。このため、エンジン7の駆動を強制停止させる機構を部品点数の少ない簡単な構造にでき、製造コストの抑制に寄与できるという利点がある。
(10).その他
なお、上記した実施形態の各構成は図示のものに限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。