JP4763443B2 - ジケトン重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
これらのプラズマ重合体を基材上に形成する方法の一つとしては、プラズマCVD法が知られている。このプラズマCVD法としては、例えば、特許文献1では、基板をセットした真空チャンバ内を真空ポンプにより真空状態として、炭素ガスなどの有機モノマーガス(原料ガス)を導入し、平行平板型のRFプラズマ(13.56MHz)中で、前記有機モノマーを重合させている。このようなプラズマCVD法により、通常状態では重合しない有機モノマーであっても容易に重合させることができるため、前記優れた表面物性を付与することができる。
しかし、従来の手法では、前記炭素膜やシリコン膜などでは重合が良好に行われ、優れた表面物性を有する膜の形成が可能であるが、これら以外の多くの有機モノマーではプラズマ重合が良好に行われずに、オイル状となって固化しない場合が多かった。また、プラズマ重合体を形成することができた場合であっても、その膜は弾性や潤滑性や耐薬品性に乏しく、表面物性の向上が図れなかった。
一方、潤滑性を有するプラズマ重合体としては、フッ素系モノマーの使用が挙げられる。しかし、フッ素系モノマーは非常に高価であり、かつ、環境保護の観点からも使用は好ましくない。他の潤滑性を付与するプラズマ重合体としてアルコキシシランを用いる方法もある。しかし、これにより形成されるプラズマ重合体が無機系のシリカ系であるため、弾性力に乏しかった。そのため、金属やセラミックなどの硬質基材には適用できるものの、ゴムなどの軟質基材では、基材の弾性変形に対して、基材の表面に形成された膜が追従して柔軟に変形しないため、膜の剥離や亀裂が生じ易い問題があった。
<1> ジケトンをプラズマ状態にして重合させてなることを特徴とするジケトン重合体である。該<1>に記載のジケトン重合体は、金属及びセラミックスなどの硬質基材のみならず、プラスチック及びゴムなどの軟質基材にも密着性が良く、成膜が容易で、該成膜時に溶剤などが不要であり、かつ、潤滑性、耐薬品性、及び耐熱性に優れるものとなる。
<2> ジケトンのプラズマ状態が、ジケトンと、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、及びクリプトンから選択される少なくとも1種とが存在する空間に、電圧を印加することによって形成された前記<1>に記載のジケトン重合体である。
<3> ジケトンが、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,4−ペンタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、及びアセト酢酸プロピルから選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載のジケトン重合体である。
<4> ジケトン重合体が膜として形成され、該膜の表面の算術平均粗さRaが、0.1〜100μmである前記<1>から<3>のいずれかに記載のジケトン重合体である。
<5> ジケトン重合体の膜が基材の表面に形成され、該基材がポリマーで形成された前記<4>に記載のジケトン重合体である。
<7> ジケトンのプラズマ状態が、ジケトンと、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、及びクリプトンから選択される少なくとも1種とが存在する空間に、電圧を印加することによって形成された前記<6>に記載のジケトン重合体の製造方法である。
<8> ジケトンのプラズマ状態が、電極間の距離を5〜500mmとし、印加電力を1〜500Wとする電圧を印加することによって形成された前記<6>から<7>のいずれかに記載のジケトン重合体の製造方法である。
<9> 大気圧下及び真空下のいずれかで行う前記<6>から<8>のいずれかに記載のジケトン重合体の製造方法である。
<10> 重合時間が5〜30分間である前記<6>から<9>のいずれかに記載のジケトン重合体の製造方法である。
<11> 空間内へのジケトンの流量が10〜1,000sccmである前記<6>から<10>に記載のジケトン重合体の製造方法である。
<12> ジケトンが、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,4−ペンタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、及びアセト酢酸プロピルから選択される少なくとも1種である前記<6>から<11>のいずれかに記載のジケトン重合体の製造方法である。
<13> ジケトン重合体が膜として形成され、該膜の表面の算術平均粗さRaが、0.1〜100μmである前記<6>から<12>のいずれかに記載のジケトン重合体の製造方法である。
<14> ジケトン重合体の膜が基材の表面に形成され、該基材がポリマーで形成された前記<13>に記載のジケトン重合体の製造方法である。
本発明のジケトン重合体は、ジケトンをプラズマ状態にして重合させてなる。前記ジケトン重合体は、膜として形成されるのが好ましい。該ジケトン重合体の膜が、基材の表面に形成されることにより、基材の表面物性を向上させることができる。
本発明のジケトン重合体は、金属及びセラミックスなどの硬質基材のみならず、プラスチック及びゴムなどの軟質基材にも密着性が良く、弾性があり、成膜が容易で、該成膜時に溶剤などが不要であり、かつ、潤滑性、耐薬品性、及び耐熱性などに優れる。従って、環境保護の上でも好ましく、また、該ジケトン重合体の膜を基材の表面に形成することにより、基材の潤滑性、耐薬品性、及び耐熱性などの表面物性を向上させることができるとともに、可撓性にも優れ、亀裂や破損を生じにくく、前記優れた表面物性を持続させることができる。
前記膜の形状としては、特に制限はなく、任意の形状に形成し、使用時にその使用目的に応じた形状に成形してもよいし、基材の表面に、該基材の形状に対応した形状で形成してもよい。
前記膜の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて任意の大きさとすることができ、例えば、基材の表面全体を被覆可能な大きさとしてもよいし、基材の表面の一部に対応した大きさとしてもよい。
前記膜の構造としては、単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
前記膜の材質としては、ジケトン単独で形成してもよいし、ジケトンと他のモノマーとを混合して形成し、ジケトン重合体に、該他のモノマーの有する機能を付加してもよい。 前記他のモノマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素系モノマー;メタノール、エタノールなどのアルコール類;アセトン、ブタノンなどのモノケトン類;アミノメタン、アミノエタンなどのアミン類;などが挙げられ、この他にも、含芳香族環モノマー類、カルボン酸類、エステル類、含フッ素モノマー類、含ケイ素モノマー(例えば、アルコキシド類)類、などの有機モノマー、などが挙げられる。
前記ジケトンと他のモノマーとを混合する場合は、ジケトンの含有量100質量部に対して、他のモノマーの含有量を0.1〜100質量部とするのが好ましい。他のモノマーの含有量が、0.1質量部未満であると、濃度が低すぎて他のモノマー骨格が重合体に取り込まれないために、ジケトンのみの重合体と特性が変わらないことがあり、100質量部を超えると、ジケトン重合体の特徴である凹凸が膜表面に形成されにくくなり、良好な潤滑性が得られないことがある。
前記膜としては、表面に凹凸を有するのが好ましい。その表面の算術平均粗さRaとしては、0.1〜100μmであるのが好ましく、0.1〜10μmであるのが特に好ましく、該膜と、該膜が接触する相手部材との実接触面積が小さくなるので、摩擦係数が低く抑えられ、優れた潤滑性を得ることができる。前記Raの値が、0.1μm未満であると、膜表面の凹凸が小さすぎて、低摩擦面とはならないことがあり、良好な潤滑性が得られないことがある。また、100μmを超えると、相手部材との実接触面積が小さくなりすぎるため、ジケトン重合体の膜への負荷荷重が大きくなり、該膜が摩耗し易くなることがある。
前記算術平均粗さRaは、例えば、JIS B0601、JIS B0651、JIS B0652に基づいて測定することができる。
前記ジケトンは、分子中にカルボニル基を2個有する有機モノマーである。前記ジケトンとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数が6以下の炭素鎖で、分子量が200以下のジケトンモノマーが好ましい。
前記ジケトンの具体例としては、例えば、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,4−ペンタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、などのケトン系ジケトン;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、などエステル系ジケトン;などが挙げられる。これらの中でも、2,3−ブタンジオン、2,4−ペンタンジオンが特に好まく、これらは蒸気化した際の蒸気圧が比較的低いために、モノマーの加熱装置などが不要で低コストな実施が可能となり、かつ成膜効率(成膜速度)が良好である。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの材料は従来のフッ素系モノマーなどに比べて、安価に入手することができる。
前記ジケトン重合体の膜を表面に形成する基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜の形状を選択することができ、例えば、平面形状、曲面形状であってもよいし、複数の凹凸や開口部を有する形状などであってもよい。
前記基材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜の大きさのものを選択することができ、例えば、自動車のボディーなど大型のものであってもよいし、シリコンウエハーなど微細なものであってもよい。
前記基材の材質としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、金属、ガラスなどの硬質基材、プラスチック、ゴムなどの軟質基材などが挙げられる。本発明のジケトン重合体は、特に、プラスチック、ゴムなどのポリマーからなる軟質基材の表面改質に好適である。
前記プラスチックとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、メラニン・ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、などの熱硬化性樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルホルマール、ポリ2塩化ビニル、塩素化ポリエーテル、などのビニル系熱可塑性樹脂;ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、ABS、などのポリエステル系熱可塑性樹脂;ポリプロピレン、ポリアセタール、などのポリエチレン系熱可塑性樹脂;ポリメチルメタクリレート、変性アクリル、などのアクリル系熱可塑性樹脂;6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、などのナイロン系熱可塑性樹脂;エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピルセルロース、酢酸・酪酸セルロース、硝酸セルロース、などのセルロース系熱可塑性樹脂;フェノキシ、ポリエステル、などのポリカーボネート樹脂;3フッ化塩化エチレン、4フッ化エチレン、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン、フッ化ビニリデン、などのフッ素樹脂系;ポリウレタン、などが挙げられる。
本発明のジケトン重合体では、基材の形状、大きさ、及び材質がいずれの場合でも、基材への密着性が良く、潤滑性、耐薬品性、及び耐熱性に優れる膜を形成することができる。
前記ジケトン重合体の製造方法としては、ジケトンをプラズマ状態にして重合させる工程を少なくとも含み、必要に応じて他の工程を含んでもよい。
前記ジケトンは、空間内に10〜1,000sccmの流量速度で供給するのが好ましい。前記流量速度が、10sccm未満であると、プラズマ状態でのジケトン濃度が薄すぎて重合が良好に行われないことがあり、1,000sccmを超えても、ジケトンの重合効率の向上が図られず、原料の無駄となることがある。
前記処理ガスを供給することにより、ジケトンをプラズマ化する際に、プラズマ放電をさせ易くなり、成膜効率が向上する。
前記空間内でのジケトンと処理ガスの混合割合(流量速度比)は、ジケトン:処理ガス=100:10〜100:5,000が好ましい。前記ジケトンと処理ガスとの混合割合が100:10未満であると、ジケトン濃度が高すぎてプラズマ放電が起きにくくなることがあり、100:5,000を超えると、ジケトンの濃度が低すぎて成膜効率が低下することがある。
前記電圧の印加は、電極間の距離を5〜500mmとし、印加電力を1〜500Wの間で行なうのが好ましい。前記電極間の距離が、5mm未満であると、基材の温度上昇が著しくなり、プラスチックなどの軟質基材には不適であるし、金属などの硬質基材であっても物性変化を起こすことがあり、500mmを超えると、プラズマ放電が起きにくくなることがある。また、前記印加電力が、1W未満であると、ジケトン重合体が高粘調となって固化せず、成膜が困難となることがあり、500Wを超えると、電圧印加に伴う発熱により、ジケトン重合体が炭化してしまうことがある。
また、プラズマ重合を行う際のチャンバ内の圧力は、特に限定されず、大気圧下で行ってもよいし、真空下で行ってもよいが、作業及び環境への安全性が確保され、高品質な膜が得られるなどの観点から、真空下で行うのが好ましい。この場合の真空度は、0.5〜10Torr(66.7〜1,333Pa)とするのが好ましい。
したがって、上記測定結果に鑑みて、ジケトンの重合時間としては、前記チャンバ内の圧力及び前記印加電力の設定値などに応じて、5〜30分間とするのが好ましい。前記重合時間が5分間未満であると、重合が充分に進行せず、良好な耐溶媒性が得られないことがあり、30分間を超えても、重合効率の向上が図れないことがある。
この凹凸を有する膜の表面の算術平均粗さRaが、前述したように0.1〜100μmであることにより、ジケトン重合体の有する弾性が得られるとともに、基材と相手部材との実接触面積が小さくなり、摩擦係数が低く抑えられ、優れた潤滑性を得ることができる。前記凹凸の形成理由は定かではないが、重合反応の初期段階で既に凹凸が形成されていることから、ジケトン特有のプラズマ重合過程に起因していると考えられる。
また、前記工程で得られたジケトン重合体は、ジケトンがプラズマ重合して形成されたものか否かは、固体NMR(固体核磁気共鳴)分析で判断することができる。該NMRスペクトルにより、ポリマーの各種架橋状態や炭素−炭素間の結合状態を同定することができ、プラズマ重合によるジケトン重合体は、スペクトルの数が多く出現するなど、通常の溶液重合や塊状重合によるジケトン重合体とは明らかに異なる分析結果を示す。そのため、これらとの比較により本発明のジケトン重合体が、プラズマ重合により形成されたものであることが判る。
更に、該膜の表面に凹凸が形成されることにより、摩擦係数が低く抑えられ、優れた潤滑性を得ることができるとともに、プラズマ重合によりポリマーの架橋性が向上し、優れた耐薬品性及び耐熱性を得ることができる。
また、本発明のジケトン重合体の製造方法では、成膜が容易で、該成膜時に溶剤などが不要であるため、製造コストや環境保護の観点からも好適なものである。
−ジケトン重合体の製造−
図1に示すプラズマCVD装置により、基材の表面に、下記成膜条件でジケトン重合体を製造(合成)するとともに、該ジケトン重合体による厚み3μmの膜を形成した。
<成膜条件>
基材:ウレタンゴムシート
ジケトン(有機モノマー):2,4−ペンタンジオン 100sccm
処理ガス:窒素(N2) 500sccm
電力源:高周波電力(周波数13.56MHz、100W)
電極間の距離:50mm
成膜真空度(真空チャンバ内の真空度):2Torr(266.6Pa)
成膜時間(重合時間):15分間
以下、前記基材へのジケトン重合体の膜の形成工程(成膜工程)を説明する。
図1のプラズマCVD装置において、1はプラズマ重合を行う真空チャンバで、2は前記真空チャンバ内にジケトンガスなどを供給するための成膜用原料ガス供給部である。3は電圧印加電極で、4は基材を載置する基板ステージであり、これらの電極間に、電力源である高周波電源装置7からマッチングボックス6を介して高周波電力が供給される。前記マッチングボックス6は、高周波電力のインピーダンス整合のための装置である。また、5は接地電極(アース)であり、8は真空チャンバ1内の減圧及びガスの排気を行うための排気装置である。
形成された膜の物性を分析したところ、厚みが3μmであり、前記IR分析や固体NMR分析により、2,4−ペンタンジオンがプラズマ重合して形成されたジケトン重合体膜であることが判った。
−ジケトン重合体の製造−
実施例1において、前記基材をガラス板に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、ジケトン重合体を製造(合成)するとともに、該ジケトン重合体による厚み3μmの膜を前記基材の表面に形成した。
−ジケトン重合体の製造−
実施例1において、前記基材をエチレンプロピレンゴムシートに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、ジケトン重合体を製造(合成)するとともに、該ジケトン重合体による厚み3μmの膜を前記基材の表面に形成した。
−ジケトン重合体の製造−
実施例1において、前記基材をアクリル板に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、ジケトン重合体を製造(合成)するとともに、該ジケトン重合体による厚み3μmの膜を前記基材の表面に形成した。
−ジケトン重合体の製造−
実施例1において、前記ジケトン(有機モノマー)を2,3−ブタンジオンに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、ジケトン重合体を製造(合成)するとともに、該ジケトン重合体による厚み3μmの膜を前記基材の表面に形成した。
−ジケトン重合体の製造−
実施例1において、前記ジケトン(有機モノマー)をアセト酢酸メチルに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、ジケトン重合体を製造(合成)するとともに、該ジケトン重合体による厚み3μmの膜を前記基材の表面に形成した。
下記表面粗さ測定機を使用して、実施例1〜4、参考例5、6で得られたジケトン重合体の膜の算術平均粗さRaを測定した。
測定装置:ランク・テイラー・ホブソン社製 フォームタリサーフS5型
測定条件:測定範囲 4.0mm
下記回転摺動評価装置を使用して、実施例1〜4、参考例5、6のジケトン重合体の膜を形成した基板において、100gの負荷で剛体球(SUJ2球)を、円を描くように下記摺動距離分摺動させる。この摺動後のジケトン重合体の摩擦係数を測定した。
測定装置:ナノテック社製 摩擦磨耗試験機 TRIBOMETER
測定条件;剛体球の材質:SUJ2
剛体球の直径:6mm
剛体球の円運動回転半径:6mm
剛体球の円運動回転速度:2cm/秒
摺動距離:2,000m
下記熱重量分析装置を使用して、実施例1〜4、参考例5、6のジケトン重合体の膜を加熱して、その膜が熱分解される温度(熱分解温度)により耐熱性を評価した。
測定装置:セイコーインスツルメンツ社製 熱重量分析装置 TG/DTA6300
測定条件:N2雰囲気下において、初期温度30℃とし、10℃/分で500℃まで昇温させた。
前記ジケトン重合体の膜を形成した実施例2、参考例5、及び参考例6の各基板を、表2に示す薬品に7日間浸漬した後の膜表面をレーザー顕微鏡で観察し、ジケトン重合体の膜の溶解、亀裂、及び剥離の有無を下記評価基準により評価した。結果を表2に示す。
○:膜の表面形状に何ら変化が無く、溶解、亀裂、及び剥離が生じてない。
×:膜の溶解、亀裂、及び剥離が生じている。
前記ジケトン重合体の膜の基材に対する密着性の評価項目として、スクラッチ試験による評価を行った。結果を表3に示す。
具体的には、下記スクラッチ試験機を使用して、実施例1〜4、参考例5、6で得られたジケトン重合体をロックウェルダイヤモンド圧子により試料表面をスクラッチした後、レーザ顕微鏡を用いて該重合体の亀裂や基材からの剥離の有無を観察した。
評価装置:(株)レスカ製 スクラッチ試験機 CSR−01
評価条件:スクラッチ長さ=10mm
スクラッチ速度=10mm/min
荷重=1,000g
比較例1〜4として、ジケトン重合体の膜を形成しないウレタンゴムシート(ゴム硬度70°)、ガラス板、エチレンプロピレンゴムシート、及びアクリル板を使用し、前記各実施例と同様に、表面の算術平均粗さRa及び摩擦係数を評価した。結果を表1に示す。
また、表2の結果から、実施例2の2,4−ペンタンジオンの重合体、参考例5の2,3−ブタンジオンの重合体、及び参考例6のアセト酢酸メチルの重合体は、いずれも試験後の膜の変化は起きておらず、本発明のジケトン重合体は耐薬品性に優れることが判った。また、これらの薬品中においても亀裂及び剥離も生じてないことから、本発明のジケトン重合体の膜は基材との強固な結合力を有し、かつ該膜は可撓性にも優れていることが判った。
さらに、表3の結果から、実施例1〜4、参考例5、6の重合体は、いずれも剥離及び亀裂が確認されなかったことから、本発明のジケトン重合体の膜は基材との強固な結合力を有し、密着性に優れていることが判った。特に、基材として採用したウレタンゴム(軟質基材)に対して高い密着性を呈することから、弾性が高いことが判った。
また、本発明のジケトン重合体の製造方法では、成膜が容易で、該成膜時に溶剤などが不要であるため、弾性が高く、潤滑性、耐薬品性、及び耐熱性に優れるジケトン重合体を安価に製作することができるとともに、環境保護の観点からも好ましいものである。このため、本発明のジケトン重合体の製造方法によって得られたジケトン重合体の膜を有する各種製品は、ワイパー、研磨パッド、シール部材、歯車、ローラーなどとして広く用いることができる。
2 成膜用原料ガス供給部
3 電圧印加電極
4 基板ステージ
5 接地電極
6 マッチングボックス
7 高周波電源装置
8 排気装置
Claims (5)
- 2,3−ペンタンジオン、2,4−ペンタンジオン、及び2,5−ヘキサンジオンから選択される少なくとも1種をプラズマ状態にして重合させてなることを特徴とする膜。
- 膜の表面の算術平均粗さRaが、0.1〜100μmである請求項1に記載の膜。
- 膜が基材の表面に形成され、該基材がポリマーで形成された請求項1から2のいずれかに記載の膜。
- 請求項1から3のいずれかに記載の膜の製造方法であって、2,3−ペンタンジオン、2,4−ペンタンジオン、及び2,5−ヘキサンジオンから選択される少なくとも1種をプラズマ状態にして重合させる工程を含むことを特徴とする膜の製造方法。
- プラズマ状態が、2,3−ペンタンジオン、2,4−ペンタンジオン、及び2,5−ヘキサンジオンから選択される少なくとも1種と、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、及びクリプトンから選択される少なくとも1種とが存在する空間に、電圧を印加することによって形成された請求項4に記載の膜の製造方法。
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