JP4763157B2 - 皮膚貼付用粘着テープ及びその製造方法 - Google Patents

皮膚貼付用粘着テープ及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚貼付用粘着テープ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、手切れ性、伸縮性、透湿性に優れており、手で切断後の外観が良好な皮膚貼付用粘着テープ及びその製造方法に関する。本発明の皮膚貼付用粘着テープは、医療現場や家庭などでの救急治療の際に、例えば、脱脂綿、ガーゼ、包帯、カテーテル、チューブ、シップ剤などを人体に固定するのに好適である。
【0002】
【従来の技術】
絆創膏などの皮膚貼付用粘着テープは、一般に、支持体の片面に粘着剤層が形成された構造を有している。支持体としては、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルム類;和紙などの紙類;ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステルなどの繊維からなる不織布;などが用いられている。
【0003】
一般に、皮膚貼付用粘着テープは、粘着性を利用した固定機能に加えて、貼付した皮膚面の動きに追随できる伸縮性、発汗により貼付部位に汗が溜まるのを防ぐための透湿性を有することが求められている。さらに、皮膚貼付用粘着テープは、通常、所望の長さに切断して使用されるが、使い易さの観点から、手を用いて簡単に切断できること、すなわち、手切れ性のあることが要求されている。
【0004】
支持体としてフィルム類を用いた皮膚貼付用粘着テープは、一般に、伸縮性を有しているものの、手切れ性及び透湿性に劣っている。支持体として紙類を用いた皮膚貼付用粘着テープは、一般に、手切れ性及び透湿性を有しているものの、伸縮性に欠けている。
【0005】
支持体として不織布を用いた皮膚貼付用粘着テープは、一般に、透湿性に優れており、伸縮性も有しているが、手切れ性が悪い。しかも、この皮膚貼付用粘着テープは、手で切断すると、切断面に繊維の毛羽立ちが発生し、皮膚面に貼付した状態での外観がよくないという問題がある。
【0006】
従来、皮膚貼付用粘着テープに手切れ性を付与するために、様々な方法が提案されている。例えば、実公昭52−8775号公報には、合成樹脂、紙、不織布などの基材に、長手方向の長さより幅方向の長さの方が長い形状を有し、かつ、引裂かれ方向にある端部が常に鋭角である方向性を有する孔を設けてなる医療用粘着テープが提案されている。
【0007】
実公平5−2576号公報には、支持体上に薬剤を含有するポリマー層が形成された貼付剤に、該支持体を貫通する長手方向及び幅方向に鋭角な切れ目を持つ微小孔を規則的に設けた貼付剤が提案されている。より具体的には、ポリエチレンシートなどのシート状支持体に、前記のごとき形状を有する多数の微小孔を形成して、手切れ性と通気性を付与している。
【0008】
特開平8−199123号公報には、非伸張性かつ寸法安定性のプラスチックフィルム基材に、微細な貫通孔または非貫通状の凹部を形成し、そして、該フィルムの片面に粘着剤層を設けた易裂性粘着テープが提案されている。
【0009】
しかし、支持体に微細な貫通孔を設ける従来法は、不織布を支持体とする皮膚貼付用粘着テープに適用した場合、充分に改善された手切れ性を得ることが困難であることが判明した。しかも、貫通孔を設けても、手で切断後に、切断面に毛羽立ちが発生する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、不織布を支持体とする皮膚貼付用粘着テープであって、手切れ性、伸縮性、透湿性に優れており、手で切断後の外観が良好な皮膚貼付用粘着テープ及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリオレフィン不織布を支持体とする皮膚貼付用粘着テープに、ポリオレフィンの融点付近の温度に調整した穿孔手段を圧着させる方法が有効であることを見出した。より具体的には、ポリオレフィン不織布を支持体とする皮膚貼付用粘着テープに、多数の突起を備えた穿孔手段を、該突起の温度を〔ポリオレフィンの融点−10℃〕〜〔ポリオレフィンの融点+50℃〕の温度に加熱しながら圧着して、多数の微小孔を形成するとともに、各微小孔の周辺部の不織布繊維を溶融させてフィルム状にする方法が有効であることが見出された。
【0012】
本発明の皮膚貼付用粘着テープは、熱圧着により形成された各微小孔の周辺部の不織布繊維が溶融してフィルム状となっていることによって、手切れ性が向上しており、その上、切断面の毛羽立ちの発生が抑制され、伸縮性(柔軟性)も改善されている。
【0013】
各微小孔は、ポリオレフィン不織布を貫通していても、貫通していなくてもよい。また、各微小孔の孔形状を、引裂かれる方向にある両端部が鋭角または鈍角などの角のある孔形状として、引裂きに方向性を付与することにより、手切れ性をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明によれば、手切れ性、伸縮性、透湿性に優れており、手で切断後の外観が良好な皮膚貼付用粘着テープが低コストで提供される。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、支持体の片面に粘着剤層が設けられた皮膚貼付用粘着テープにおいて、
(1)支持体がポリオレフィン不織布であり、
(2)該ポリオレフィン不織布には、穿孔のために先端部が尖っている多数の突起を備え、かつ、突起の温度を〔ポリオレフィンの融点−10℃〕から〔ポリオレフィンの融点+50℃〕の温度に加熱した穿孔手段を、該ポリオレフィン不織布に圧着して形成した、貫通または非貫通の多数の微小孔が形成されており、かつ、
(3)各微小孔の周辺部の不織布繊維が溶融してフィルム状となっている
ことを特徴とする皮膚貼付用粘着テープであって、
(A)10%引張応力が2〜20N/25mm、
(B)透湿度が300g/m 2 ・24h以上、及び
(C)対ベークライト粘着力が5.0N/25mm以下
の特性を有している皮膚貼付用粘着テープが提供される。
【0016】
また、本発明によれば、支持体の片面に粘着剤層が設けられた皮膚貼付用粘着テープの製造方法において、
(I)支持体としてポリオレフィン不織布を使用し、その片面に粘着剤層を形成した後、
(II)粘着剤層とは反対側のポリオレフィン不織布面側に、穿孔のために先端部が尖っている多数の突起を備えた穿孔手段を、突起の温度を〔ポリオレフィンの融点−10℃〕から〔ポリオレフィンの融点+50℃〕の温度に加熱しながら圧着して、ポリオレフィン不織布に貫通または非貫通の多数の微小孔を形成するとともに、各微小孔の周辺部の不織布繊維を溶融させてフィルム状にする
ことを特徴とする皮膚貼付用粘着テープの製造方法であって、該皮膚貼付用粘着テープが、
(A)10%引張応力が2〜20N/25mm、
(B)透湿度が300g/m 2 ・24h以上、及び
(C)対ベークライト粘着力が5.0N/25mm以下
の特性を有している皮膚貼付用粘着テープである、皮膚貼付用粘着テープの製造方法が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
1.ポリオレフィン不織布
本発明では、支持体としてポリオレフィン不織布を使用する。ポリオレフィン不織布を用いることにより、伸縮性、透湿性などが良好な皮膚貼付用粘着テープを得ることができる。それに加えて、後述の熱穿孔法によって、ポリオレフィン不織布に微小孔を形成すると、各微小孔の周辺部の不織布繊維を溶融させてフィルム状にすることができる。
【0018】
ポリオレフィン不織布としては、ポリオレフィン繊維を用いて製造された不織布であれば特に限定されない。ポリオレフィン不織布の製造方法は、特に限定されず、湿式法、乾式法、その他の方法を採用することができる。乾式法には、繊維ウェブを接着剤で結合するケミカルボンド法、自己接着または接着繊維で結合するサーマルボンド法などがある。その他の製造方法としては、スパンボンド法やメルトブローン法、ニードルパンチ法などがある。
【0019】
これらの不織布の製造方法の中でも、スパンボンド法が好ましい。スパンボンド法では、一般に、シャワーのノズルに似た細い穴を多数有する紡糸口金から多数のフィラメントを押し出し、それを走行するベルト上に集めてウェブとする。高温状態のフィラメントは、フィラメント同士が互いに熱融着して、不織布を形成する。ポリオレフィンフィラメントは、通常、連続フィラメントである。
【0020】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンまたはポリプロピレンを含有するブレンド物が好ましい。
【0021】
ポリオレフィン不織布の坪量は、好ましくは20〜150g/m2、より好ましくは25〜100g/m2である。ポリオレフィン不織布の坪量が上記範囲内にあることによって、皮膚貼付用粘着テープに求められる強度、通気性、風合い、伸縮性などを高度にバランスさせることができ、コスト面でも有利である。
【0022】
2.微小孔の形成方法
本発明では、ポリオレフィン不織布からなる支持体の片面に粘着剤層を設けた粘着テープの支持体面側に、多数の突起を備えた穿孔手段を、突起の温度をポリオレフィンの融点前後の温度に加熱しながら圧着して、支持体を貫通するか、あるいは非貫通の多数の微小孔を形成する。この方法を熱穿孔法と呼ぶ。この熱穿孔法によって、各微小孔の周辺部の不織布繊維(典型的には、フィラメント)が溶融してフィルム状になる。
【0023】
熱穿孔法により、支持体であるポリオレフィン不織布を貫通する微小孔を形成してもよい。また、熱穿孔法により、支持体と粘着層を含む粘着テープ全体を貫通する微小孔を形成してもよい。しかし、手切れ性の観点からは、微小孔の周辺部の不織布繊維が溶融してフィルム状になっていることが重要であって、微小孔がポリオレフィン不織布を貫通していることは、必ずしも必要ではない。穿孔条件によっては、微小孔の周辺部だけではなく、底部においても不織布繊維が溶融してフィルム化していることがある。微小孔の底部にフィルムが形成されると、微小孔は、貫通孔ではなく、非貫通の凹部を形成することになるが、この場合でも、手切れ性が顕著に改善される。
【0024】
穿孔手段としては、例えば、表面に多数の突起を設けた穿孔ロールを用いることが、連続生産を行う上で好ましい。穿孔ロールの内部には、ヒータまたは熱媒(オイル)を内蔵させて、突起及び穿孔ロール表面の温度を制御する。この他、多数の突起を設けたエンドレスベルトを用いてもよい。エンドレスベルトの材質が鉄やニッケル、これらの合金、フェライト系ステンレスなどの場合には、電磁誘導加熱方式により温度制御を行ってもよい。
【0025】
穿孔は、ポリオレフィン不織布を支持体とする皮膚貼付用粘着テープに対して連続的に行うことが好ましい。微小孔の形成方法としては、粘着テープ原反(ウエブ)の繰り出し部と巻き取り部の途中に、穿孔ロールと加圧ロールとを対向して配置し、両ロールの接触面間に粘着テープ原反を通して、連続的に熱穿孔する方法が好ましい。加圧ロールとしては、表面が平滑なステンレスロール、芯金上にシリコーンゴムを被覆した表面が平滑なゴムロールなどが挙げられる。粘着テープ原反の支持体面側が穿孔ロールの突起と接触するように、粘着テープ原反を穿孔ロールと加圧ロールとの間に導く。
【0026】
熱穿孔は、粘着テープ原反の支持体面側が穿孔ロールにより圧着されるように実施する。粘着テープ原反は、ポリオレフィン不織布からなる支持体の片面に粘着剤層を形成し、好ましくは、支持体の粘着剤層とは反対面側に、側鎖が長鎖アルキル基系ポリビニル化合物等の剥離剤を塗布したものである。粘着テープ原反の剥離剤加工面側から熱穿孔を行う。ただし、剥離剤加工は、場合によっては必要とされないことがある。
【0027】
粘着剤層の表面には、剥離紙を設けてもよい。熱穿孔は、剥離紙を除去してから行うことができるが、剥離紙が付着したままで行ってもよい。粘着剤層の表面に剥離紙が存在すると、熱穿孔時、剥離紙がクッション材として作用する。剥離紙がクッション材として作用すると、加圧ロールの表面が傷つきにくくなり、また、熱穿孔時に、微小孔の周辺部のみならず、底部にも不織布繊維の溶融によるフィルムが形成されて、非貫通の凹部が形成され易くなる。
【0028】
穿孔ロール等の穿孔手段の表面に設ける突起の形状は、特に限定されないが、支持体に形成される各微小孔が、引裂かれる方向にある両端部が鋭角または鈍角である孔形状(角のある孔形状)を有するに至るような突起形状とすることが望ましい。引裂かれる方向は、粘着テープまたは支持体の幅方向であることが好ましい。
【0029】
図1に、突起の具体例を示す。突起の形状は、穿孔のために先端部が尖っている。図1に上面図を示すように、好ましい突起の形状は、例えば、底面が菱形の四角錘(a)、底面が六角形の六角錘(b)などの四角形以上の多角錘;底面が楕円形の円錐(c);などが挙げられる。これらの突起の底面の形状は、両端部を鋭角または鈍角の角のある形状とすることが、引裂きに方向性を付与する上で好ましい。図2に、底面が菱形の四角錘である突起の斜視図を示す。
【0030】
穿孔手段上の突起の配列は、例えば、図3及び4に上面図を示すように、各横列(幅方向の列)間の間隔xを等間隔とすることが好ましい。また、各縦列(流れ方向または回転方向)間の間隔yは、等間隔とすることができるが、各縦列は、粘着テープの流れ方向に対して連続的に左右にずれていてもよい。すなわち、各縦列は、必ずしも直線状に配置されていなくてもよい。
【0031】
突起の底面は、最長部分の長さが好ましくは0.3〜2mm、より好ましくは0.5〜1mmで、高さが好ましくは0.2〜1.5mm、より好ましくは0.3〜1mm程度である。突起が四角錘の場合、四角形の底面の各対角線長さは、好ましくは0.3〜2mm、より好ましくは0.5〜1mmから選択され、高さは、好ましくは0.2〜1.5mm、より好ましくは0.3〜1mmから選択される。
【0032】
図3及び4に示すように、横列における各突起間の間隔(ピッチy)及び各横列間の間隔(ピッチx)は、いずれも、好ましくは0.3〜10mm、より好ましくは0.5〜8mm程度である。横列における各突起は、図4に示すように、それぞれの基端部同士が接触した状態であってもよい。熱穿孔時には、各突起の先端部から中ほどまでがポリオレフィン不織布と接触し、基部までは接触しないことがあるため、基端部同士が接触した形状の突起を有する穿孔手段を用いても、ポリオレフィン不織布に独立した微小孔を形成することができる。
【0033】
各横列間は、各突起の基端部同士が接触していてもよいが、通常は、各突起の基端部間の間隔(z)が0.1mm以上、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは0.2〜2mm程度の間隔となるように調整する。各突起の形状及び間隔は、熱穿孔によって、支持体上に各微小孔がそれぞれ独立して形成されるように調整することが好ましい。
【0034】
穿孔ロール等の穿孔手段を、突起の温度をポリオレフィンの融点前後の温度に加熱しながら粘着テープ原反に圧着する。穿孔ロールの場合、突起の温度をポリオレフィンの融点前後の温度に加熱するには、通常、穿孔ロールの表面温度をポリオレフィンの融点前後の温度にまで加熱する。
【0035】
熱穿孔によって、穿孔時に穿孔部周辺の不織布繊維(典型的には、フィラメント)を、その表面部を中心に溶融させて、繊維同士が融着したフィルム状に変化させる。そのためには、突起及び穿孔ロールなどの穿孔手段表面の温度を、不織布繊維を構成するポリオレフィンの融点(Tm)前後の高温に設定する。
【0036】
突起の加熱温度は、〔Tm−10℃〕〜〔Tm+50℃〕であり、好ましくは〔Tm−5℃〕〜〔Tm+40℃〕、より好ましくはTm〜〔Tm+30℃〕である。熱穿孔時の突起温度が低すぎると、ポリオレフィン不織布に圧着しても、微小孔の周辺部の不織布繊維を溶融してフィルム状にすることができなくなる。突起温度が高すぎると、不織布繊維のフィルム化が進みすぎて、ポリオレフィン不織布に固有の透湿性が低下したり、不織布繊維や粘着剤の劣化または分解が生じるおそれがある。
【0037】
突起の温度がポリオレフィンの融点より低い温度であっても、融点付近の温度であれば、穿孔手段をポリオレフィン不織布に圧着させることによって、不織布繊維を軟化溶融させて、フィルム状にすることができる。ただし、多くの場合、突起の温度をポリオレフィンの融点よりも高温に設定することにより、良好な結果を安定的に得ることができる。この点で、穿孔手段の突起の温度を好ましくは〔Tm+1℃〕〜〔Tm+50℃〕、より好ましくは〔Tm+3℃〜Tm+40℃〕の範囲に調整することが望ましい。ポリオレフィン不織布がポリプロピレン繊維からなる場合、ポリプロピレンの融点が約165℃であることから、突起の温度を165〜195℃程度に設定することが特に好ましい。
【0038】
粘着テープ原反の流れ速度や穿孔手段の圧着力(例えば、ロール間の圧力)などは、突起の形状、突起の温度、ポリオレフィンの融点、不織布の厚みなどを考慮に入れて、支持体のポリオレフィン不織布に微小孔が形成され、かつ、微小孔の周辺部がフィルム化するような条件を選択する。
【0039】
粘着テープ原反を、加熱した穿孔ロールと加圧ロールとの間を通過させて圧着させる場合には、例えば、穿孔ロールまたは加圧ロールに取り付けられたエアシリンダーの調節により、両ロールの接触圧(線圧)を、好ましくは0.01〜20kg/cm、より好ましくは0.05〜10kg/cm程度になるように調整することが望ましい。線圧は、付属の圧力ゲージにより読み取った圧力とエアシリンダー径とロール面長とから算出することができる。
【0040】
粘着テープ原反を穿孔ロールと加圧ロールとの間を通過させる速度(ウエブ速度)は、通常、0.1〜50m/分、好ましくは0.5〜30m/分、より好ましくは1〜20m/分である。突起の加熱温度が低い場合には、ウエブ速度を遅くし、突起の加熱温度が高い場合には、ウエブ速度を速くすることにより、微小孔の周辺部のフィルム化の程度を調整することができる。
【0041】
3.粘着テープ
皮膚貼付用粘着テープの粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコン系等の一般的な粘着剤を用いることができるが、これらの中でも、透湿性に優れたアクリル系粘着剤が好ましい。
【0042】
好ましいアクリル系粘着剤としては、例えば、炭素数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル70〜95重量%、(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル4〜29重量%、水酸基やカルボキシ基などの官能基含有モノマー1〜10重量%、及びその他の共重合可能なビニルモノマー0〜25重量%を共重合した共重合体が挙げられる。
【0043】
アクリル系粘着剤としては、所定量の各モノマーをトルエン等の有機溶剤中に溶解し、窒素置換後、昇温下攪拌し、過酸化物等の反応開始剤を使用して重合させた後、そのままあるいは有機溶剤にて希釈したものを用いることができる。
【0044】
アクリル系粘着剤は、そのままでは一般に凝集力が乏しく、剥離時に皮膚表面に粘着剤が残留することがあるので、多官能性化合物からなる架橋剤等を粘着剤液に添加すること等により架橋を施すことが好ましい。また、アクリル系粘着剤は、透湿性や通気性を付与するために、粘着剤層形成工程において、粘着剤中に微細な気泡を含有させてもよい。
【0045】
支持体への粘着加工は、シリコーン樹脂等の剥離性物質を紙基材に塗布した剥離紙上に、粘着剤液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成後、ポリオレフィン不織布の表面に貼り合わせて粘着剤層を転写し、剥離紙を除去しながら、粘着加工面が背面の剥離処理面上に重なるように巻き取り粘着テープ原反を得る。剥離紙を除去することなく、巻き取って、粘着テープ原反としてもよい。ポリオレフィン不織布には、一般に、予めその片面に剥離剤処理を施しておく。粘着剤層は、処理をしていない不織布表面に転写する。
【0046】
粘着剤の塗布厚みは、乾燥後で、通常、20〜100μm、好ましくは30〜70μmである。粘着テープは、穿孔を施した粘着テープ原反をレザー刃等により原反幅方向に10〜50mm程度の細幅となるように裁断後、適当な長さに巻き取ることにより得る。
【0047】
4.皮膚貼付用粘着テープ
本発明の皮膚貼付用粘着テープは、熱穿孔によって、各微小孔の周辺部の不織布繊維が溶融してフィルム状となっている。例えば、スパンボンド法によるポリプロピレン不織布は、ポリプロピレンフィラメントが互いに熱融着して結合した構造を有しているが、各フィラメントは、その形状を保持しており、各フィラメント表面で部分的に熱融着しているだけである。
【0048】
これに対して、穿孔手段の突起または突起を含む穿孔手段表面の温度をポリオレフィンの融点前後の温度にして圧着すると、微小孔の周辺部のフィラメントが溶融し、元のフィラメント形状を失ってフィルム状になる。ただし、完全なフィルムになっている必要はなく、溶融したフィラメント同士が密に融着して面状に広がり、もはや元の独立したフィラメント形状を保持していない状態であればよい。
【0049】
各微小孔の周辺部の不織布繊維が溶融してフィルム状となっている部分の大きさは、微小孔の周縁から、好ましくは0.01〜2mm、より好ましくは0.03〜1mm、特に好ましくは0.05〜0.8mm程度の幅であることが望ましい。
【0050】
各微小孔は、ポリオレフィン不織布を貫通する貫通孔であってもよいが、非貫通の凹部であってもよい。熱穿孔時に、ポリオレフィン不織布に突起が接触して微小孔が形成されるが、その際に、微小孔の周辺部だけではなく底部の不織布繊維も溶融してフィルム化することがある。その結果、微小孔の底部にフィルムが形成され、非貫通の凹部の孔形状となることがある。
【0051】
ポリオレフィン不織布に形成される微小孔の形状は、引裂かれる方向にある両端部が鋭角または鈍角などの角のある孔形状を有していることが好ましい。粘着テープを手で引裂いて所望の長さに切断するには、引裂かれる方向は、粘着テープの幅方向に一致させることが好ましい。このような両端部が鋭角または鈍角である孔形状は、前述の図1に示されるような突起を備えた穿孔手段を用いることにより形成することができる。ただし、熱穿孔によって不織布に微小孔を形成しているため、各微小孔の孔形状は、必ずしも突起の形状とは完全に一致していないことがある。しかし、その場合でも、図1に示されるような形状の突起を用いることによって、手切れ性が向上し、かつ、引裂きの方向性を付与することができる。
【0052】
不織布に微小孔を設けても、様々な方向に繊維が絡み合っているため、引裂きの方向性がなく、手切れ性が不充分となる。これに対して、本発明の皮膚貼付用粘着テープは、ポリオレフィン不織布の微小孔の周辺部がフィルム状になっていることにより、穿孔パターン(例えば、菱形の孔形状)の方向性に沿った開裂の連続性が付与され、手切れ性が顕著に改善される。
【0053】
また、各微小孔の周辺部の不織布繊維が溶融してフィルム状となっていることにより、引裂き断面に毛羽立ちが生じにくい。さらに、微小孔の周辺部がフィルム状となっていることにより、粘着テープ自体の伸縮性(柔軟性)が顕著に改善される。
【0054】
本発明の粘着テープは、以下のような特性を有していることが望ましい。
(A)10%引張応力が2〜20N/25mm、
(B)透湿度が300g/m2・24h以上、及び
(C)対ベークライト粘着力が5.0N/25mm以下。
【0055】
粘着テープの10%引張応力が小さすぎると、ロールに巻回した粘着テープの展開時(解き解し時)や皮膚面からの粘着テープの剥離時に、容易に伸びすぎて取り扱い性が低下する。10%引張応力が大きすぎると、伸縮性(柔軟性)に乏しく、貼付時に皮膚の動きに追従しないため、突っ張り感を惹起してしまう。粘着テープの10%引張応力は、4〜15N/25mm程度がより好ましい。
【0056】
透湿度が低すぎると、発汗により貼付部位に汗が溜まり、むれによるかゆみや剥がれの原因となる。透湿度の上限は、通常20,000g/m2・24h程度、多くの場合15,000g/m2・24h程度である。
【0057】
対ベークライト粘着力が大きすぎると、剥離時の痛みを引き起こす。対ベークライト粘着力の下限は、通常0.5N/25mmであり、多くの場合0.8N/25mm程度である。
【0058】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
【0059】
[実施例1]
スパンボンド法により得られたポリプロピレン不織布〔出光石油化学(株)製ストラテックRN2040;坪量=40g/m2〕の片面を剥離剤(ポリビニルアルコールにオクタデシルイソシアネートを付加した剥離剤)により処理した。一方、粘着剤の基剤としてアクリル酸イソノニル/アクリル酸メトキシノナエチレングリコール/メタクリル酸ノナエチレングリコール(83/16/1重量%)を共重合して得たアクリル共重合体を使用し、該共重合体の固形分100重量部に対して、コロネートL(日本ポリウレタン製)0.6部を添加して、粘着剤溶液〔溶剤=トルエン/酢酸エチル(7/3重量部)、濃度30重量%〕を調製した。
【0060】
表面にシリコーン処理を施した剥離紙に、乾燥後厚みが38μmになるように粘着剤溶液を塗布し、120℃で3分間乾燥した。次に、粘着剤層上に、ポリプロピレン不織布を剥離処理面の反対面側で貼り合わせ、粘着剤層をポリプロピレン不織布に転写しつつロールに巻き取った。
【0061】
該粘着テープ原反をロールから繰り出しながら、形状が四角錐の突起を多数設けた穿孔ロールとステンレスロールとの間を通過させて熱穿孔することにより、原反表面に菱形状の多数の微小孔を設け、再度巻き取った。これを25mm幅に裁断し皮膚貼付用粘着テープを得た。
【0062】
突起の形状は、図1(a)に示すように、四角錘であって、その底面のロール幅方向0.6mm、回転方向0.8mmで、突起の高さは0.5mmであった。また、突起のピッチは、ロール幅方向0.8mm、回転方向1.1mmであった。穿孔ロールの表面温度を175℃とし、ウエブ速度を8m/分として、熱穿孔を行った。
【0063】
[比較例1]
穿孔ロールの表面温度を145℃としたこと以外は、実施例1と同一の方法で皮膚貼付用粘着テープを得た。
【0064】
<評価方法>
(1)手切れ性
左右の親指と人差し指にて指どうしをくっつける状態で粘着テープを掴み、捻るようにして引裂きを試み、手切れ性を評価した。容易に引裂けた場合を「良」とし、引裂きが困難な場合を「不良」と評価した。
【0065】
(2)毛羽立ち
手で引裂いた後の粘着テープの端部を目視にて観察し、毛羽立ちの状態を評価した。
【0066】
(3)伸縮性(柔軟性)
JIS K−7115に準拠し、引張試験機を用いて、温度23±2℃、相対湿度50±5%雰囲気下、伸長速度300mm/分で試料を10%伸長した時の応力(試料幅25mm、つかみ間隔100mm)を測定した。数値が小さいほど伸縮性(柔軟性)が高い。
【0067】
(4)透湿度
JIS Z−0208のβ条件に従って、温度40℃、相対湿度90%で測定した。すなわち、試料の片面側を温度40℃、相対湿度90%に調節し、他面側には約16gの吸湿剤(塩化カルシウム)を置いて、試料を通過した水分を吸収させ、吸湿剤の重量変化量を1m2、24時間当りに換算して透湿度とした。
【0068】
(5)対ベークライト粘着力
JIS Z−0237の180度引き剥がし法に準拠して、幅25mmの粘着テープのベークライトパネルに対する粘着力を測定した。測定雰囲気は、温度23±2℃、相対湿度50±5%とした。
【0069】
【表1】
Figure 0004763157
【0070】
表1に示したとおり、実施例1の粘着テープは、手切れ性が良好であるが、比較例の粘着テープは良くなかった。また、実施例1の粘着テープは、切断面に毛羽立ちが殆んどなく、10%引張応力が小さく伸縮性に富んでいる。これに対して、比較例1の粘着テープは、切断面に毛羽立ちがあり、また、10%引張応力が大きく、伸縮性(柔軟性)が改善されていない。実施例1の粘着テープは、透湿性や粘着力は損われていない。
【0071】
実施例1で得られた粘着テープの電子顕微鏡写真を図5に示す(倍率=100倍)。また、比較例1で得られた粘着テープの電子顕微鏡写真を図6に示す。これらの電子顕微鏡写真から明らかなように、実施例1の粘着テープは、不織布に多数の微細孔が形成され、かつ、その周辺部がフィラメントの熱融着によりフィルム状になっていることが分かる。これに対して、比較例1の粘着テープは、不織布に微小孔があいているが、微小孔の周辺部のフィラメントは、その形状が保持されており、僅かに微小孔内の周囲にだけごく部分的な融着のあることが分かる。
【0072】
穿孔による微小孔だけであると、不織布は、様々な方向で繊維が絡み合っていて引裂き時の方向性がないため手切れ性が不足している。これに対して、微小孔の周辺部が熱融着してフィルム状になると、穿孔パターンの方向性に沿った開裂の連続性が維持され、充分な手切れ性が付与される。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、手切れ性、伸縮性、透湿性に優れており、手で切断後の外観が良好な皮膚貼付用粘着テープ及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】突起の形状の具体例を示す上面図であり、それぞれ四角錘(a)、六角錘(b)、及び円錐(c)である。
【図2】四角錘の斜視図である。
【図3】穿孔ロール表面の突起のパターンの一例を示す上面図である。
【図4】穿孔ロール表面の突起のパターンの他の一例を示す上面図である。
【図5】実施例1で得られた粘着テープの微小孔の状態を示す顕微鏡写真である。
【図6】比較例1で得られた粘着テープの微小孔の状態を示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】
x:各横列間の間隔(ピッチ)
y:横列における各突起間の間隔(ピッチ)
z:各横列間での各突起の基端部間の間隔

Claims (4)

  1. 支持体の片面に粘着剤層が設けられた皮膚貼付用粘着テープにおいて、
    (1)支持体がポリオレフィン不織布であり、
    (2)該ポリオレフィン不織布には、穿孔のために先端部が尖っている多数の突起を備え、かつ、突起の温度を〔ポリオレフィンの融点−10℃〕から〔ポリオレフィンの融点+50℃〕に加熱した穿孔手段を、該ポリオレフィン不織布に圧着して形成した、貫通または非貫通の多数の微小孔が形成されており、かつ、
    (3)各微小孔の周辺部の不織布繊維が溶融してフィルム状となっている
    ことを特徴とする皮膚貼付用粘着テープであって、
    (A)10%引張応力が2〜20N/25mm、
    (B)透湿度が300g/m 2 ・24h以上、及び
    (C)対ベークライト粘着力が5.0N/25mm以下
    の特性を有している皮膚貼付用粘着テープ
  2. ポリオレフィン不織布が、坪量20〜150g/m2を有している請求項1記載の皮膚貼付用粘着テープ。
  3. ポリオレフィン不織布が、ポリオレフィンフィラメントからスパンボンド法により製造されたものである請求項1または2記載の皮膚貼付用粘着テープ。
  4. 支持体の片面に粘着剤層が設けられた皮膚貼付用粘着テープの製造方法において、
    (I)支持体としてポリオレフィン不織布を使用し、その片面に粘着剤層を形成した後、
    (II)粘着剤層とは反対側のポリオレフィン不織布面側に、穿孔のために先端部が尖っている多数の突起を備えた穿孔手段を、突起の温度を〔ポリオレフィンの融点−10℃〕から〔ポリオレフィンの融点+50℃〕の温度に加熱しながら圧着して、ポリオレフィン不織布に貫通または非貫通の多数の微小孔を形成するとともに、各微小孔の周辺部の不織布繊維を溶融させてフィルム状にする
    ことを特徴とする皮膚貼付用粘着テープの製造方法であって、該皮膚貼付用粘着テープが、
    (A)10%引張応力が2〜20N/25mm、
    (B)透湿度が300g/m 2 ・24h以上、及び
    (C)対ベークライト粘着力が5.0N/25mm以下
    の特性を有している皮膚貼付用粘着テープである、皮膚貼付用粘着テープの製造方法
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