JP4762554B2 - アクリロニトリルの製造方法 - Google Patents
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Description
このように、経時的なアクリロニトリル収率の低下を抑えるためには、触媒粒子へ加わる衝撃力および衝撃頻度の両方を制御することが極めて重要であることが明らかとなった。
本発明のアクリロニトリルの製造方法においては、サイクロンの流入口のガス線速度を3〜40m/sの範囲とすることが好ましい。
また、製造装置が、反応器内にプロピレン、分子状酸素、およびアンモニアを供給する原料ガススパージャーをさらに具備し、原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度を3〜100m/sの範囲とすることが好ましい。
本発明における触媒は、モリブデン、ビスマス、鉄、ニッケル、およびシリカを必須成分として含有するものである。触媒としては、アクリロニトリル収率の観点から、下記式で表される組成のものが好適である。
Mo10Bia Feb Nic Dd Ee Gf Hg Ox ・(SiO2 )y
シリカ成分の原料としては、コロイダルシリカが好ましく、市販のものから適宜選択して用いることができる。
その他の成分の原料としては、通常、酸化物、あるいは強熱することにより酸化物になり得る硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、水酸化物等、またはそれらの混合物が用いられる。
まず、コロイダルシリカまたは水中に、各成分の原料を固体または溶液の状態で加え、これらを混合することによってスラリーを調製する。混合工程の途中または調製完了時にpH調整、加熱処理、またはホモジナイザー処理を行うこともできる。ここで、コロイダルシリカまたは水中に加えられる各成分の原料は、あらかじめ一部の複数成分を水等に溶解した状態のものでもよいし、さらにpH調整や加熱処理やホモジナイザー処理を施した状態のものでもよいし、乾燥・焼成して粉砕した状態のものでもよい。
アクリロニトリルは、このように調製された触媒の流動層が設けられた反応器と、該反応器からのガスと触媒とを分離し、触媒を流動層に返送するサイクロンとを具備する製造装置を用い、触媒の存在下、プロピレンと分子状酸素およびアンモニアとを反応させることによって製造される。
なお、原料ガスは、例えば、空気、プロピレン、アンモニア等を別々の原料ガススパージャーのノズルから噴出させてもかまわないが、それぞれの線速度が規定範囲に収まっている必要がある。
また、通常の粉末X線回折法による測定では、試料を粉砕し、これを成型して測定に供するが、本発明では、粉砕時に触媒に衝撃が加わり、β型の二価金属モリブデイト結晶相がかなりの割合でα型に転位し、正確な評価ができないため、粉砕は実施せずに、測定を行うものとする。
本実施例におけるプロピレンの転化率、アクリロニトリルの収率、アクリロニトリルの選択率、および一酸化炭素の収率は以下のように定義される。
プロピレンの転化率(%)=Q/P×100
アクリロニトリルの収率(%)=R/P×100
アクリロニトリルの選択率(%)=R/Q×100
一酸化炭素の収率(%)=S/P×100
ここで、Pは供給したプロピレンのモル数、Qは反応したプロピレンのモル数、Rは生成したアクリロニトリルのモル数、Sは生成した一酸化炭素のモル数を表す。また、反応生成ガスの分析は、ガスクロマトグラフィーにより行うことができる。
実験式がMo10Bi0.5Fe4.3Ni6Cr0.4Ce0.4Sb3.5P0.2B0.2K0.2O53.75(SiO2)40で表される酸化物組成物(触媒)を以下のように調製した。
(スラリー(A)の調製)
32質量%硝酸水溶液2050質量部に電解鉄粉139質量部を少しずつ加え溶解した。三酸化アンチモン粉末800質量部を上記の鉄の硝酸溶液に加え、このスラリーをよく攪拌しながら100℃で2時間加熱した。スラリーを50℃に冷却後、これにホウ酸19.5質量部、ついで75質量%リン酸水溶液41.3質量部を攪拌しながら加えた。これを、回転円盤式噴霧乾燥機を用い、導入口温度を320℃に、出口温度を160℃にコントロールしながら、噴霧乾燥した。得られた粒子を250℃で加熱処理し、さらに950℃で3時間焼成した。この焼成した粒子から152質量部を採取し、これに純水380部を加え、平均粒径が1.2μmとなるまでアトライタで粉砕してスラリー(A)を得た。
純水1200質量部にパラモリブデン酸アンモニウム327質量部を40℃にて溶解し、この溶液に、硝酸ニッケル325質量部、40質量%硝酸第二クロム水溶液74.0質量部、硝酸カリウム3.7質量部、クエン酸30.0質量部、および硝酸ビスマス36.3質量部を3質量%硝酸水溶液320質量部に溶解したものを攪拌しながら加えた。ついで、これに、硝酸第一セリウム32.3質量部を純水100質量部に溶解したものを攪拌しながら加えた。ついで、これに、20質量%コロイダルシリカ2190質量部を攪拌しながら加えた。ついで、これに、硝酸第二鉄82.0質量部およびクエン酸30.0質量部を純水320質量部に溶解したものを攪拌しながら加えた。このスラリーを15質量%アンモニア水でpH2.2(40℃)に調整し、99℃で1.5時間加熱処理した。これをスラリー(B)とした。
スラリー(B)を50℃に降温した後、これにスラリー(A)380質量部を攪拌しながら加え、ホモジナイザー処理を施して、スラリーを完成させた。完成したスラリーのpHは1.7(40℃)であった。その後、このスラリーを、回転円盤式噴霧乾燥機を用い噴霧乾燥した。得られた粒子を250℃で加熱処理し、さらに640℃で3時間焼成して触媒を得た。
反応器として塔径0.20m、高さ9mの反応塔を使用した。プロピレン、アンモニア、および空気は、原料ガススパージャーを分けて供給した。
以下の条件は、反応が定常に到達以降の反応条件である。サイクロンの流入口のガス線速度は22m/s、原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度は32m/s(プロピレン、アンモニア)および25m/s(空気)、反応器とサイクロンとの間の1時間あたりの触媒循環量は全触媒量(100質量%)の800質量%とした。
反応開始後、20〜28時間ごとにプロピレンの転化率、アクリロニトリルの収率、アクリロニトリルの選択率、および一酸化炭素の収率を測定した。結果を1000時間ごとに抜粋して表1に示す。
触媒の粉末X線回折測定結果を図5に示す。(a)はアクリロニトリルの製造を開始して約3000時間経過後、(b)はアクリロニトリル製造開始前の回折線である。(a)の回折線から、触媒の受ける衝撃がよく制御されて、α型の二価金属モリブデイト結晶相の生成が少ないことがわかる。
実施例1の触媒を用いてアクリロニトリルの製造を行った。
(アクリロニトリルの製造)
反応器として塔径0.25m、高さ16mの反応塔を使用した。プロピレン、アンモニア、および空気は、共通の原料ガススパージャーから供給した。
以下の条件は、反応が定常に到達以降の反応条件である。サイクロンの流入口のガス線速度は30m/s、原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度は22m/s、反応器とサイクロンとの間の1時間あたりの触媒循環量は全触媒量(100質量%)の2300質量%とした。
反応開始後、20〜28時間ごとにプロピレンの転化率、アクリロニトリルの収率、アクリロニトリルの選択率、および一酸化炭素の収率を測定した。結果を1000時間ごとに抜粋して表2に示す。
触媒の粉末X線回折測定結果を図6に示す。(a)はアクリロニトリルの製造を開始して約3000時間経過後、(b)はアクリロニトリル製造開始前の回折線である。(a)の回折線から、触媒の受ける衝撃がよく制御されて、α型の二価金属モリブデイト結晶相の生成が少ないことがわかる。
実施例1の触媒を用いてアクリロニトリルの製造を行った。
(アクリロニトリルの製造)
反応器として実施例1の反応塔を使用した。
以下の条件は、反応が定常に到達以降の反応条件である。サイクロンの流入口のガス線速度は30m/s、原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度は44m/s(プロピレン、アンモニア)および34m/s(空気)、反応器とサイクロンとの間の1時間あたりの触媒循環量は全触媒量(100質量%)の3500質量%とした。
反応開始後、20〜28時間ごとにプロピレンの転化率、アクリロニトリルの収率、アクリロニトリルの選択率、および一酸化炭素の収率を測定した。結果を1000時間ごとに抜粋して表3に示す。
触媒の粉末X線回折測定結果を図7に示す。(a)はアクリロニトリルの製造を開始して約3000時間経過後、(b)はアクリロニトリル製造開始前の回折線である。(a)の回折線から、使用中の衝撃によって、α型の二価金属モリブデイト結晶相が顕著に生成していることがわかる。
実験式がMo10Bi0.4Fe1.5Ni4.3Mg1.5Mn0.2La0.5K0.1Rb0.1O39.7(SiO2)40で表される酸化物組成物(触媒)を以下のように調製した。
(スラリー(C)の調製)
17質量%硝酸水溶液399質量部に、硝酸ニッケル277質量部、硝酸マグネシウム85.0質量部、硝酸マンガン12.6質量部、硝酸ランタン47.6質量部、硝酸第二鉄133質量部、硝酸カリウム2.2質量部、硝酸ルビジウム3.3質量部、および硝酸ビスマス43.1質量部を順に攪拌しながら加えてスラリー(C)を得た。
20質量%コロイダルシリカ2600質量部を、40℃にて攪拌しながら混合して、そこにパラモリブデン酸アンモニウム388質量部を純水780質量部に溶解したものを攪拌しながら加えてスラリー(D)を得た。
そして、スラリー(D)にスラリー(C)を攪拌しながら加えて、ホモジナイザー処理を施して、スラリーを完成させた。完成したスラリーのpHは0.9(40℃)であった。その後、このスラリーを、回転円盤式噴霧乾燥機を用い噴霧乾燥した。得られた粒子を250℃で加熱処理し、さらに590℃で3時間焼成して触媒を得た。
反応器として実施例2の反応塔を使用した。
以下の条件は、反応が定常に到達以降の反応条件である。サイクロンの流入口のガス線速度は18m/s、原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度は12m/s、反応器とサイクロンとの間の1時間あたりの触媒循環量は全触媒量(100質量%)の700質量%とした。
反応開始後、20〜28時間ごとにプロピレンの転化率、アクリロニトリルの収率、アクリロニトリルの選択率、および一酸化炭素の収率を測定した。結果を1000時間ごとに抜粋して表4に示す。
触媒の粉末X線回折測定結果を図8に示す。(a)はアクリロニトリルの製造を開始して約3000時間経過後、(b)はアクリロニトリル製造開始前の回折線である。(a)の回折線から、触媒の受ける衝撃がよく制御されて、α型の二価金属モリブデイト結晶相の生成が少ないことがわかる。
実施例3の触媒を用いてアクリロニトリルの製造を行った。
(アクリロニトリルの製造)
反応器として実施例1の反応塔を使用した。
以下の条件は、反応が定常に到達以降の反応条件である。サイクロンの流入口のガス線速度は27m/s、原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度は40m/s(プロピレン、アンモニア)および30m/s(空気)、反応器とサイクロンとの間の1時間あたりの触媒循環量は全触媒量(100質量%)の2700質量%とした。
反応開始後、20〜28時間ごとにプロピレンの転化率、アクリロニトリルの収率、アクリロニトリルの選択率、および一酸化炭素の収率を測定した。結果を1000時間ごとに抜粋して表5に示す。
触媒の粉末X線回折測定結果を図9に示す。(a)はアクリロニトリルの製造を開始して約3000時間経過後、(b)はアクリロニトリル製造開始前の回折線である。(a)の回折線から、触媒の受ける衝撃がよく制御されて、α型の二価金属モリブデイト結晶相の生成が少ないことがわかる。
実施例4の触媒を用いてアクリロニトリルの製造を行った。
(アクリロニトリルの製造)
反応器として実施例1の反応塔を使用した。
以下の条件は、反応が定常に到達以降の反応条件である。サイクロンの流入口のガス線速度は17m/s、原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度は24m/s(プロピレン、アンモニア)および19m/s(空気)、反応器とサイクロンとの間の1時間あたりの触媒循環量は全触媒量(100質量%)の400質量%とした。
反応開始後、20〜28時間ごとにプロピレンの転化率、アクリロニトリルの収率、アクリロニトリルの選択率、および一酸化炭素の収率を測定した。結果を1000時間ごとに抜粋して表6に示す。
触媒の粉末X線回折測定結果を図10に示す。(a)はアクリロニトリルの製造を開始して約1000時間経過後、(b)はアクリロニトリル製造開始前の回折線である。(a)の回折線から、使用中の衝撃は僅かで、α型の二価金属モリブデイト結晶相の生成も僅かであることがわかる。
実験式がMo10Bi0.4Fe1.3Ni4Mg2Cr0.4Ce0.6K0.15Cs0.05O40.15(SiO2)40で表される酸化物組成物(触媒)を以下のように調製した。
(スラリー(E)の調製)
17質量%硝酸水溶液398質量部に、硝酸ニッケル257質量部、硝酸マグネシウム113質量部、40質量%硝酸第二クロム水溶液87.5質量部、硝酸第一セリウム57.3質量部、硝酸第二鉄114質量部、硝酸カリウム3.3質量部、硝酸ルビジウム2.1質量部、および硝酸ビスマス42.9質量部を順に攪拌しながら加えてスラリー(E)を得た。
20質量%コロイダルシリカ2590質量部を、40℃にて攪拌しながら混合して、そこにパラモリブデン酸アンモニウム387質量部を純水778質量部に溶解したものを攪拌しながら加えてスラリー(F)を得た。
そして、スラリー(F)にスラリー(E)を攪拌しながら加えて、ホモジナイザー処理を施して、スラリーを完成させた。完成したスラリーのpHは0.9(40℃)であった。その後、このスラリーを、回転円盤式噴霧乾燥機を用い噴霧乾燥した。得られた粒子を250℃で加熱処理し、さらに580℃で3時間焼成して触媒を得た。
反応器として実施例2の反応塔を使用した。
以下の条件は、反応が定常に到達以降の反応条件である。サイクロンの流入口のガス線速度は25m/s、原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度は18m/s、反応器とサイクロンとの間の1時間あたりの触媒循環量は全触媒量(100質量%)の1200質量%とした。
反応開始後、20〜28時間ごとにプロピレンの転化率、アクリロニトリルの収率、アクリロニトリルの選択率、および一酸化炭素の収率を測定した。結果を1000時間ごとに抜粋して表7に示す。
触媒の粉末X線回折測定結果を図11に示す。(a)はアクリロニトリルの製造を開始して約3000時間経過後、(b)はアクリロニトリル製造開始前の回折線である。(a)の回折線から、触媒の受ける衝撃がよく制御されて、α型の二価金属モリブデイト結晶相の生成が少ないことがわかる。
実施例5の触媒を用いてアクリロニトリルの製造を行った。
(アクリロニトリルの製造)
反応器として実施例2の反応塔を使用した。
以下の条件は、反応が定常に到達以降の反応条件である。サイクロンの流入口のガス線速度は36m/s、原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度は27m/s、反応器とサイクロンとの間の1時間あたりの触媒循環量は全触媒量(100質量%)の3300質量%とした。
反応開始後、20〜28時間ごとにプロピレンの転化率、アクリロニトリルの収率、アクリロニトリルの選択率、および一酸化炭素の収率を測定した。結果を1000時間ごとに抜粋して表8に示す。
触媒の粉末X線回折測定結果を図12に示す。(a)はアクリロニトリルの製造を開始して約3000時間経過後、(b)はアクリロニトリル製造開始前の回折線である。(a)の回折線から、使用中の衝撃によって、α型の二価金属モリブデイト結晶相が顕著に生成していることがわかる。
実施例5の触媒を用いてアクリロニトリルの製造を行った。
(アクリロニトリルの製造)
反応器として実施例2の反応塔を使用した。
以下の条件は、反応が定常に到達以降の反応条件である。サイクロンの流入口のガス線速度は13m/s、原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度は8m/s、反応器とサイクロンとの間の1時間あたりの触媒循環量は全触媒量(100質量%)の200質量%とした。
反応開始後、20〜28時間ごとにプロピレンの転化率、アクリロニトリルの収率、アクリロニトリルの選択率、および一酸化炭素の収率を測定した。結果を1000時間ごとに抜粋して表9に示す。
触媒の粉末X線回折測定結果を図13に示す。(a)はアクリロニトリルの製造を開始して約1000時間経過後、(b)はアクリロニトリル製造開始前の回折線である。(a)の回折線から、使用中の衝撃は僅かで、α型の二価金属モリブデイト結晶相の生成も僅かであることがわかる。
2 反応器
4 サイクロン
Claims (3)
- モリブデン、ビスマス、鉄、ニッケル、およびシリカを必須成分として含有する触媒の流動層が設けられた反応器と、該反応器からのガスと触媒とを分離し、触媒を流動層に返送するサイクロンとを具備する製造装置を用い、触媒の存在下、プロピレンと分子状酸素およびアンモニアとを反応させてアクリロニトリルを製造する方法において、
反応器とサイクロンとの間の1時間あたりの触媒循環量を全触媒量(100質量%)の500〜3000質量%の範囲とすることを特徴とするアクリロニトリルの製造方法。 - サイクロンの流入口のガス線速度を3〜40m/sの範囲とする、請求項1に記載のアクリロニトリルの製造方法。
- 製造装置が、反応器内にプロピレン、分子状酸素、およびアンモニアを供給する原料ガススパージャーをさらに具備し、
原料ガススパージャーのノズル孔から噴出したガスと触媒とが接触する部分の線速度を3〜100m/sの範囲とする、請求項1または2に記載のアクリロニトリルの製造方法。
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