JP4762454B2 - さや管推進工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、水道、ガス、下水道等に用いる流体輸送用配管を非開削で布設するさや管推進工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダクタイル鋳鉄管等の流体輸送用配管を埋設する工法としては、地面を開削して布設する開削工法が一般的であったが、近来は幹線道路だけではなく一般道路においても交通量が増加しているので、開削工法のために交通を遮断することは困難となっている。このため、発進坑と到達坑だけを開削し、さや管(鞘管)としてヒューム管や鋼管等を推進埋設した後にダクタイル鋳鉄管を挿入する工法や、既設管をさや管として、その中に口径の小さい新管を挿入して管路を更新する工法等のさや管推進工法が広く採用されるようになった。
【0003】
そのさや管推進工法は、図17に示すように発進坑Sと到達坑Rとの間に埋設されている既設管P’内にこれよりも径の小さな新管Pを挿入敷設するものであり、発進坑Sには油圧ジャッキJが設置され、この油圧ジャッキJの後部は反力受けHに当接し、前部は押角Bを介して新管Pを押圧するようになっている。新管Pは、その先端部の挿し口1を先行の新管Pの後端部の受口2に挿入することによって順次接合され、既設管P’内に押し込まれて行く。
【0004】
このさや管推進工法においては、通常、後行の新管Pが先行の新管Pを接続状態で確実に押圧するように、さや管(既設管)P’からなる管路を発進抗Sから到達抗Rに向けて、勾配なし、若しくは上り勾配となるように設計する。下り勾配であると、先行の新管Pが自走して、施工上危険であるうえに、両新管P、PがS形管などの耐震管であると、抜け代がなくなる恐れがあるからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発進抗Sの適切な位置の用地不足や、上り勾配を選定すると、曲線部が発進抗Sの近傍となり、多くの短い新管Pを使用しなければならない等の理由により、やむを得ず、発進抗Sから下り勾配のさや管P’の管路を選定する場合もある。この下り勾配の場合、上述の先行新管Pの自走による問題が生じる。
【0006】
従来では、特開平10−252944号公報等で開示され、図18、19に示すように、新管Pの周囲にキャスター24を取付けて、ローリングに関係なく、新管Pの円滑な走行(推進)を行っている。そのキャスター24は本来抵抗を抑えて円滑に動かすもののため、新管Pは動き易く、下り勾配のさや管P’では、上記の自走が大きな問題となっている。また、実開平4−133084号公報などに記載の新管Pの周囲にソリを取付けたものにあっても、そのソリはキャスター24と同じ目的のもののため、同様に、自走が大きな問題となっている。
【0007】
因みに、図20(a)に示すように、発進抗S近傍に曲線部P’1 があると、その曲線部P’1 の曲率を通り得る長さの新管Pを使用せねばならず、曲線部P’1 から到達抗Rまでの残りの長いさや管P’内(距離L2 )もその短い新管Pで管路を形成することとなる。一方、同図(b)に示すように、曲線部P’1 が到達抗Rの近傍にあれば、その曲線部P’1 から到達抗Rまでの短い部分(距離L3 )のみを短い新管Pとすればよい。このことから、施工経済上、曲線部P’1 はでき得るかぎり到達抗Rに近い方がよい。
【0008】
また、さや管P’として主に用いられる推進工法用ヒューム管は、図21に示すように、その継目bにはクッション材cを介在してその内面に開口部b’を形成し、推進中の端面の損傷を防止するようになっている。このため、さや管P’内に管Pを推進する時、キャスター24がその開口部b’に嵌まって走行を妨げる場合がある。管路が長距離にわたる推進の場合、このさや管開口部b’上をキャスター24は幾度となく通過するため、開口部b’の縁dが欠損し、図21(b)に示すように、キャスター24の開口部b’への落ち込み量も大きくなる。
大きく落ち込めば、走行性は低下する。
【0009】
この発明は、下り勾配の推進においても、新管Pの自走をなくすことを第1の課題とし、キャスターの落ち込みをなくすことを第2の課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記第1の課題を達成するために、この発明は、上述のキャスターやソリと同様の作用を行うガイドのさや管内面との摩擦抵抗力を、新管が自走しない程度としたのである。すなわち、摩擦抵抗力によって自走を阻止することとしたのである。
【0011】
また、第2の課題を達成するために、この発明は、キャスターを複数個設けて、一のキャスターがさや管継目開口部に対応しても、他のキャスターがさや管内面に当接して、一のキャスターがその開口部に嵌まり込み(落ち込み)しないようにしたのである。
【0012】
この第2の課題の達成手段は、勾配に関係なく、さや管に継目凹部がある推進工法の全てのものに採用できるが、第1の課題の達成手段と併用し得る。
【0013】
【発明の実施の形態】
第1の課題を達成するこの発明の実施形態としては、管の挿し口を先行する管の受口に挿入して継合わせつつさや管内に下り勾配で送り込んで管路を施設する推進工法において、前記管の長さ方向適宜位置の周方向所要位置に、前記さや管内面に摺接して管を案内するガイドを設け、このガイドのさや管内面との摩擦抵抗力を、管が自走しない程度とした構成を採用し得る。
【0014】
このとき、上記挿し口外面に環状フランジを嵌め、推進時には、挿し口側からその環状フランジを介して受口側に推力を伝達させるさや管推進工法においては、そのフランジに前記ガイドを設けることができる。そのフランジは、その周方向で複数に分割されて、その分割面を締結することにより環状とされ、かつその締結により、挿し口外周面に上記推進力では動き得ないように圧接されているものとするとよい。
【0015】
第2の課題を達成するこの発明の実施形態としては、上記管のさや管内の走行をその周囲に設けたキャスターによって案内するさや管推進工法において、前記キャスターを管軸方向前後に複数設けて、その一のキャスターがさや管間の継目凹部に対応しても他のキャスターがさや管内面に接して一のキャスターが継目凹部に嵌まるのを防止するようにして推進する構成を採用し得る。
【0016】
この第1の課題を達成する実施形態と第2の課題を達成する実施形態は、それぞれ単独でも十分な効果を発揮するが、併用することができる。
【0017】
【実施例】
一実施例を図1乃至図6に示し、この実施例は、ダクタイル鋳鉄管PのS形継手構造でもって、鋼管、コンクリート管などの地中に埋設されたさや管P’に推進工法によりダクタイル鋳鉄管Pの管路を施設するものであり、その継手部は、挿し口1の先端に突起3、受口2の内面にロックリング5がそれぞれ設けられ、ゴム輪6及びバックアップリング6aを介在して挿し口1を受口2に挿し込んだ後、押し輪9を割輪9aを介してゴム輪6に当てがい、植込みボルト12を押し輪9を通して受口2にねじ込んで締結することにより、ゴム輪6を押し込んでシールしている。
【0018】
受口2の外側の挿し口1外周には環状のフランジ20が嵌め込まれ、このフランジ20と植込みボルト12(受口2端面)の間に保護リング13を介在して推進力伝達材14が設けられている。この推進力伝達材14は円環状であるが、周方向に分割されていてもよく、その際、間欠的でもよい。要は、推進力に抗する強さを有すればよい。
【0019】
この推進力伝達材14は、圧縮応力が1〜30kgf/cm2 (≒0.1〜3MPa)の高強度の樹脂発泡体で(樹脂単体の5倍以上の膨張率)、発泡倍率を変えることにより弾性限界応力が変化するものである。これらの材質の例を示すと、ポリスチレン、ポリウレタン等が代表的である。当然ではあるが、目的とする推進力の伝達と収縮性とを備えた他の樹脂材またはダンボール等の硬質紙、発泡金属などでも構わない。また、液体や気体を封入した樹脂容器等も有効な手段となり得る。
【0020】
保護リング13は周縁一部に鍔13cが設けられて、この鍔13cをボルト12の上面に当てがうことにより位置決めされる(芯出しされる)。この保護リング13を介在することにより、ボルト12からの力が集中せずに推進力伝達材14の当接全面に伝達される。この伝達されるかぎりにおいて、リング13は分割でき、また間欠的でもよい。鍔13cも省略し得る。
【0021】
フランジ20は、図2、図3に示すように断面L字状で4等分割されてサドルバンド状となっており、その分割片21の両端に締結片22、中程にリブ23がそれぞれ設けられている。その大部分のフランジ20の隣り合う分割片21、21の締結片22、22間にはキャスター24が回転自在に設けられているとともに、ボルト・ナット25が挿通されており、そのボルト・ナット25を締結することにより、フランジ20が縮径して挿し口1の外周面に圧接される(図19参照)。
【0022】
一方、一部のフランジ20の隣り合う分割片21、21の締結片22、22間には図4に示すガイドとなるソリ30が介在されてボルト・ナット25により締結されている。このソリ30は、鉄製で、基部31とさや管P’内面との摺接部32とから成り、キャスター24の代わりに設けてさや管P’との摩擦力を増大させるものであり、管Pが下り勾配(角度:θ)で自走しないように、各管Pに適宜に設ける。例えば、Wsinθ<μ1W1cosθ+μ2W2cosθ・・・(1)の式を満たすようにする。
【0023】
すなわち、W:挿入延長の管全部の重量、W1:ソリ等自走しない手段を設けた管の重量、W2:キャスターを取り付けた管の重量とすると、W=W1+W2となり、管P全体が滑り落ちようとする力は、Wsinθで表される。また、管Pの滑りを止めようとする力は、管重量の垂直成分からWcosθで表される。さらに、ソリ等自走しない手段を設けた管Pとさや管P’との摩擦係数をμ1とすると、その抵抗力はF1=μ1W1cosθとなる。一方、キャスター24を設けた管Pの摩擦係数をμ2とすると、その抵抗力はF2=μ2W2cosθとなる。これらより、管Pが自走しないためには、上記(1)式が成り立つことが必要となり、この(1)式の条件を満足するまで、自走しない手段を設けた管Pを増やすこととする。なお、ソリ30の形状は図4に示すものに限定されず、その位置も、図1に示すように継手部以外でもよい。
【0024】
この実施例の構成は以上のとおりであり、図17に示した推進工法において、受口2に挿し口1を挿入して管P、Pを接合する場合には、まず、図5(a)に示すように、挿し口1を規定胴付寸法Lまで挿入し、保護リング13等は挿し口1にあずける。この状態で、通常通りの手順で、ゴム輪6などを装填して継手接合をおこなう(同図(b))。
【0025】
つぎに、保護リング13をボルト12頭部に当たる位置にずらし、2つ割の推進力伝達材14をリング状にして取付け、さらにフランジ20を嵌めて締結する(同図(c)から(d))。この状態で、ジャッキで推進力を加えて推進する。この推進は、仮にローリングを生じてもいずれかのキャスター24又はソリ30で管Pを支持でき、推進力が過大になることを防止できるため、ローリングの懸念がある長距離推進には有効である。また、さや管P’の線状(管路)が下り勾配であっても、管Pが自走しないように、ソリ30によって十分な摩擦力が付与されているため、その自走の恐れもない。
【0026】
管Pの所要長さの敷設が終了すれば、図6に示すように、さや管P’と新管Pの間にモルタルaが打設される。この更新管路は、地震時などにおいて大きな引き抜き力が作用すれば、同図(a)に示すように挿し口2が突起3がロックリング5に当接するまで動いてその力を吸収し、逆に、大きな挿し込み力が作用すれば、同図(b)に示すように、推進力伝達材14が収縮又は圧壊して、挿し口2がさらに挿し込まれてその力を吸収する。
【0027】
上記実施例は、ソリ30を別途に設けたが、図7、図8に示すように、フランジ20の締結片(サドル)22の端縁22aを外方に延ばして、摩擦力を得るようにすることができる。また、図9、図10に示すように、推進時の管Pとさや管P’の間隔を維持する樹脂製管保護用スペーサ40を管Pの適宜位置に巻回取付けして、そのスペーサ40とさや管P’内面との摩擦により、管自走を防止するようにもし得る。この場合には、コンクリートと樹脂との摩擦となるため、鉄製のソリ30とコンクリートよりも若干低い摩擦係数となる。
【0028】
上記各実施例はS形継手の場合であったが、この発明は、図11、図12に示すように、SII形継手の場合でも採用でき、その際、保護リング13は、図12に示すように受口2の端面に当接する断面コ字状とし得る。このとき、同図に示すように、環状のリング13aとそのリング13aから受口2端面に延びて周方向等間隔にあるコ字状片13bとから構成したり、その両者13aと13bを一体ものとしてもよい。このコ字状保護リング13は上述のS形継手でも採用し得る。また、図13に示すように、NS形継手でも、図14に示すように、PII形継手などの各種の離脱防止機能付伸縮継手(耐震継手)に採用し得る。
【0029】
さらに、特開2001−27092号公報で開示され、図15に示すように、推進力伝達材14を省略し、挿し口2のさらなる挿し込みには押し輪9を摺らさせて行う構造でも採用し得る。この押し輪構造は、図示のSII形継手に限らず、上述のNS形継手などの各種の離脱防止機能付伸縮継手に採用し得ることは勿論である。
【0030】
また、この発明は、離脱防止機能付伸縮継手に限らず、A形、K形、T形などの、受口に対し挿し口がその軸方向に抜けない範囲で所要長さ動き得る伸縮継手、UF形、KF形などの固定継手の管路の推進工法でも採用し得る。
【0031】
なお、キャスター24及びソリ30は、実施例では、同一の軸線上としたが、管軸方向に徐々にずらした螺旋状とすることもできる。また、ソリ30、サドル22、スペーサ40の摺接面(摩擦面)は、鋸刃状、溝を入れる、高摩擦材を使用するなど、適宜な摩擦向上処理を施すとよい。
【0032】
上記各実施例は、さや管P’内における管Pの支持及び案内の大部分をキャスター24で行い、下り勾配における管Pの自走を妨ぐべく、ソリ30を設けたが、キャスター24の全てをソリ30にすることもできる。なお、キャスター24の場合、図21で示した問題が生じる。このため、図16(a)に示すように、フランジ20の締結片22を管軸方向に長くして、2ツ以上のキャスター24を設け、同図(b)に示すように、一のキャスター24が継目開口部(凹部)b’に対応しても、他のキャスター24がさや管P’の内面に当接して、その一のキャスター24の開口部b’への落ち込みをなくすようにする。この複数のキャスター24の構成は、ソリ30を有しない全てがキャスター24の場合や、さや管P’が下り・上り勾配に関係なく採用し得る。
【0033】
【発明の効果】
この発明は、以上のように、下り勾配の推進において、管の自走を防止したので、施工性が向上し、S形管などの耐震管にあっては、所定の胴付間隔を保持したままさや管内に施設できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例の要部切断正面図
【図2】同実施例の要部切断側面図
【図3】同実施例の要部断面図
【図4】同実施例のソリを示し、(a)は正面図、(b)は切断側面図
【図5】同実施例の作用図
【図6】一実施例の伸縮作用図
【図7】他の実施例の要部切断正面図
【図8】同実施例の要部切断側面図
【図9】他の実施例の要部切断正面図
【図10】同実施例の要部切断側面図
【図11】他の実施例の要部断面図
【図12】他の実施例の要部断面図
【図13】他の実施例の要部断面図
【図14】他の実施例の要部断面図
【図15】他の実施例の要部断面図
【図16】他の実施例を示し、(a)は部分正面図、(b)は同作用図
【図17】さや管推進工法の説明図
【図18】従来例の要部切断正面図
【図19】同要部切断側面図
【図20】推進配管図
【図21】従来例の作用図
【符号の説明】
1 挿し口
2 受口
3 挿し口突起
5 ロックリング
6 シール用ゴム輪
8、14 推進力伝達材
9 押し輪
13 保護リング
20 推進力伝達材支持フランジ
24 キャスター
25 フランジ締結ボルト・ナット
30 ソリ
40 管保護スペーサ
P 新管
P’ さや管(既設管)
b 継目凹部(開口部)
Claims (3)
- 管(P)の挿し口(1)を先行する管(P)の受口(2)に挿入して継合わせつつさや管(P’)内に下り勾配で送り込んで管路を施設する推進工法において、
上記送り込む管(P)を、その管(P)の長さ方向適宜位置の周方向所要位置に上記さや管(P’)内面に摺接して管(P)を案内するガイド(30)を設けたものと、その管(P)の長さ方向適宜位置の周方向所要位置にさや管(P’)内面を転動して案内するキャスター(24)を設けたものとし、前記ガイド(30)のさや管(P’)内面との摩擦抵抗力(F 1 )とキャスター(24)のさや管(P’)内面との摩擦抵抗力(F 2 )との間に、Wsinθ<F 1 +F 2 を満たすように設定して、管(P)が自走しないようにしたことを特徴とするさや管推進工法。
ここで、W:挿入延長の管(P)全部の重量、W 1 :ガイド(30)を設けた管(P)の重量、W 2 :キャスター(24)を設けた管(P)の重量、μ 1 :ガイド(30)とさや管(P’)との摩擦係数、μ 2 :キャスター(24)とさや管(P’)との摩擦係数、θ:さや管(P’)の傾斜角度、W=W 1 +W 2 、F 1 :μ 1 W 1 cosθ、F 2 :μ 2 W 2 cosθとする。 - 上記挿し口(1)外面に環状フランジ(20)を嵌め、推進時には、挿し口(1)側からその環状フランジ(20)を介して受口(2)側に推力を伝達させ、そのフランジ(20)に上記ガイド(30)又はキャスター(24)を設けたことを特徴とする請求項1に記載のさや管推進工法。
- 上記フランジ(20)は、その周方向で複数に分割されて、その分割面を締結することにより環状とされ、かつその締結により、挿し口(1)外周面に上記推進力では動き得ないように圧接されているものとしたことを特徴とする請求項2に記載のさや管推進工法。
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