上述したように、従来から用いられているITOなどの金属酸化物系の薄膜は、スパッタ、蒸着等の真空プロセスを用いて形成されている。そのため、タッチパネルにおける透明電極膜の形成においても、大がかりな設備が必要になり、タッチパネルの量産性に乏しいという問題があった。
また、透明電極膜に従来から用いられているITOなどの金属酸化物系の薄膜は、可撓性がないため、曲げや衝撃に弱く、割れやすい性質がある。そのため、タッチパネルとして使用するときに、操作面をペン先や爪先のように硬くとがったもので強く筆記摺動すると、透明電極膜にひび割れ等の損傷を受け、タッチパネルとしての動作に不具合、例えば、位置検出精度の低下することなどが発生するという問題があった。
ところで、この透明電極膜にひび割れ等の損傷が発生することを回避するものとして、特許文献1、2に示されるように、タッチパネルの透明電極膜に、導電性高分子膜を採用することが知られている。特許文献1のタッチパネルでは、上下基板ともに導電電極部分がストライプ状に形成され、この上基板の導電電極部分に、導電化処理がされた導電性高分子が形成されている。また、特許文献2のタッチパネルでは、透明電極膜として、ITO等の微粒子を樹脂中に分散させた導電性樹脂膜を使用し、複数の領域に分割された透明電極形成されている。
これらのタッチパネルでは、透明電極膜の損傷発生を低減できても、透明電極膜が複数に分けられた形式のタッチパネルであるので、透明電極膜の形成に手間取り、コスト低減を図ることが困難であり、同時多点入力を簡単な方法で実現することも難しいという問題がある。
そこで、本発明では、タッチパネルを抵抗膜方式とし、その透明電極膜を、透明導電ポリマー材を溶液に分散させた溶液を基板の一面に塗布させ乾燥することによって成膜するという仕方を採用して、コスト低減を図り、量産化が可能であり、また、同時多点入力も簡単に実現できるタッチパネル及びその製造方法を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明では、相対向する透明樹脂シートからなる第1及び第2基板の内面に形成された第1及び第2透明電極膜が複数のドットスペーサを介して配置され、押された位置による抵抗値変化を検出できるタッチパネルにおいて、前記第1基板と前記第2基板との一部が、前記透明樹脂シートからなる連結部で連結され、該連結部が折り曲げられ、前記第1及び第2透明電極膜が複数のドットスペーサを介して対向して配置され、前記第1透明電極膜及び前記第2透明電極膜が、夫々、透明導電ポリマー材の成膜により形成された透明導電ポリマー膜であることとした。
また、前記第1基板が、ガラスで形成され、前記第2基板が、透明樹脂シートで形成されていること、或いは、前記第1基板及び前記第2基板が、夫々透明樹脂シートで形成されていることとし、さらに、前記第1基板又は前記第2基板の外面に、第3基板が貼着されるようにした。
また、前記第1又は第2透明電極膜は、前記第1基板又は前記第2基板の片面の全面に成膜された透明導電ポリマー膜であって、前記透明導電ポリマー膜の外周部面上において、導電パターン電極又は配線パターン電極が積層されていることとし、或いは、前記第1基板又は前記第2基板の片面の外周部において、導電パターン電極又は配線パターン電極が、前記第1基板又は前記第2基板と前記透明導電ポリマー膜の間に積層されていることとした。
さらに、本発明のタッチパネルにおいて、前記第1又は第2透明電極膜は、ITO膜と透明導電ポリマー膜との積層体であることとした。
また、本発明のタッチパネルにおいて、前記第1又は第2基板の少なくとも一方の面上に形成される透明電極膜は、透明導電ポリマー膜が複数領域に分割されて成膜されるものであって、前記複数領域を有する電極膜が独立して夫々に押された位置の抵抗値変化を検出できることとし、前記透明電極膜は、前記第1又は第2基板の一方の辺に沿って平行に分割されるようにした。
また、本発明のタッチパネルにおいて、前記透明導電ポリマー材膜の表面は、微細な凹凸を有することとした。
また、本発明では、押された位置による抵抗値変化を検出できるタッチパネルが形成されるタッチパネル製造方法において、一部が連結部で繋がる第1及び第2基板が、1枚の透明樹脂シートから型抜きされて形成され、溶媒に分散された透明導電ポリマー材が前記第1及び第2基板の各々の片面に塗布された後、加熱乾燥されることにより、第1及び第2透明電極膜が成膜され、前記連結部が折り曲げられ、前記第1及び第2透明電極膜が複数のドットスペーサを介して対向して配置された後、前記第1及び第2基板の周縁部が貼り合わされることとした。
また、前記第1透明電極膜及び前記第2透明電極膜は、連続した前記透明樹脂シートの一表面上に、溶媒に分散された前記透明導電ポリマー材が前記第1及び第2基板の各々に対応して順次に塗布された後、加熱乾燥されることにより成膜され、一部が連結部で繋がる第1及び第2基板が、前記透明樹脂シートから夫々型抜きされて形成されることとした。
本発明のタッチパネル製造方法においては、前記第1又は第2透明電極膜が、前記透明導電ポリマー材により成膜された後に、電極パターン又は配線パターンが、該第1又は第2透明電極膜の外周部面上に形成されることとし、或いは、電極パターン又は配線パターンが、前記第1又は第2基板の外周部面上に形成された後に、前記第1又は第2透明電極膜が、該前記第1又は第2基板の面上及び電極パターン又は配線パターン上に、前記透明導電ポリマー材により成膜されることとした。
本発明のタッチパネル製造法においては、前記第1及び第2透明電極膜の少なくとも一方は、複数領域に分割されて前記透明導電ポリマー材が基板に塗布され、複数に分割された電極膜であることとした。
また、本発明では、前記透明導電ポリマー材の成膜で形成される前記第1又は第2透明電極膜の表面が、微細な凹凸を有することとし、前記第1透明電極膜及び前記第2透明電極膜の少なくとも一方は、溶媒に分散された透明導電ポリマー材が基板面に塗布された後、凹凸加工又はメッシュ加工された表面を有する板を該塗布面に重ねた状態で加熱乾燥され、該板を外されることにより成膜されるようにし、或いは、前記第1透明電極膜及び前記第2透明電極膜の少なくとも一方が、溶媒に分散された透明導電ポリマー材と無機粒子とが溶媒に分散されて基板面に塗布された後、加熱乾燥されて成膜され、電極膜表面に前記微細な凹凸が形成されるようにした。
以上のように、本発明では、抵抗膜方式のタッチパネルにおいて、透明電極膜の形成に当たって、溶液に透明導電ポリマー材を分散した溶液を、基板の一面に塗布して乾燥させるようにしたので、スパッタ、蒸着装置など、特別な透明電極膜形成用の装置を必要とせず、溶液塗布には、スクリーン印刷などの位置合わせがいらない手軽な手法を採用可能として、タッチパネル製造コストの低減を図ることができた。
さらに、透明電極膜を透明導電ポリマーで形成するようにしたので、透明電極膜の損傷の発生が低減できたことにより、透明電極膜を形成する基板が、必ずしも硬いものでなくても、タッチパネルとしての機能を十分に発揮できるため、基板に透明樹脂シートを採用することができるので、量産性を向上させることができ、タッチパネルの製造コストを低減できる。
また、透明電極膜を、透明導電ポリマー材の溶液を塗布して乾燥させることによって形成できるようにしたので、基板上への透明電極膜の形成における自由度が増すこととなる。そのため、同時多点入力を可能とする複数に分割された透明電極膜が簡単に得られ、さらには、透明電極膜がITO膜である場合に、このITO膜上の全体的な又は部分的な表面においても、筆記耐久性向上、摺動特性向上のための透明導電ポリマー膜を簡単に形成できる。
さらに、透明電極膜の基板上への形成には、透明導電ポリマー材の溶液を塗布して乾燥させる手法が採用されているので、その乾燥の過程で、電極膜表面に簡単に微細な凹凸を形成することができるため、タッチパネルへの押下時におけるアンチニュートンリング効果を付与することができる。
次に、本発明による抵抗膜方式のタッチパネルに係る実施形態について、図1乃至図16を参照しながら、説明するが、以下においては、その抵抗膜方式タッチパネルに係る実施形態が、タッチパネルにおける構成の仕方に応じて、実施例1乃至5に分けられて説明される。
実施例1は、上側基板に透明導電膜ポリマーを形成した透明樹脂シートを使用している場合であり、実施例2は、タッチパネルの上側と下側の両方ともに、透明導電膜ポリマーを形成した透明樹脂シートを使用した場合であり、実施例3は、上側基板に、ITO膜と透明導電膜ポリマーを形成した透明樹脂シートを使用している場合であり、実施例4は、上側基板に、複数領域に分割された透明導電膜ポリマーを形成した透明樹脂シートを使用している場合であり、そして、実施例5は、表面が微細な凸凹で粗面化された透明導電膜ポリマーを形成した透明樹脂シートを使用している場合である。
図1は、本発明に係る実施例1による抵抗膜方式のタッチパネルの断面図である。ここで説明される実施例1は、上側基板に透明導電膜ポリマーを形成した透明樹脂シートを使用している場合である。図1に示された抵抗膜方式のタッチパネルに係る基本的構成は、図17に示された抵抗膜方式のタッチパネルの構成と同様であるので、同じ部分には、同じ符号が付されている。実施例1のタッチパネルの構成が、図17に示された従来のタッチパネルの構成と異なるところは、従来のタッチパネルでは、透明樹脂シート4の下面に形成された透明電極膜が、ITO膜3であるのに対し、実施例1のタッチパネルでは、ITO膜3の代わりに、透明導電ポリマー膜7で形成されている点である。この点が、実施例1の特徴である。
図1において、ガラス基板1には、ITO膜2による透明電極膜が形成されており、ITO膜上に、複数のドットスペーサ6を配置してある。上側基板は、可撓性のある透明樹脂シート4あり、例えば、PET、ポリカーボネート、シクロオレフイン等のフィルム材による。その上に、チオフェン系導電ポリマーによる透明電極膜が形成されている。チオフェン系導電ポリマーは、透明性が高く、膜厚500nm程度の場合では、光透過率が90%以上となる。この透明電極膜の形成には、チオフェン系導電ポリマーに限られず、このほかにも、透明導電ポリマーとして、ポリアニリン等、他の材料を使用しても良い。
次に、図1に示された抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順について、図2を参照して説明する。図1のタッチパネルでは、従来のタッチパネルの構成と異なるところが、透明樹脂シート4に形成された透明電極膜としての透明導電ポリマー膜7であり、ガラス基板1上に形成されるITO膜2は、従来のままであるので、図2のフロー図においては、透明導電ポリマー膜7を形成する手順のみを示し、ITO膜2を形成する手順については、省略し、ここでは、説明されない。
図2において、先ず、PET、ポリカーボネート、シクロオレフイン等、透明樹脂シートをワークサイズに切断し(ステップS1)、そして、切断された透明樹脂シートの歪を除去するためにアニール処理を行う(ステップS2)。
その後、アニール処理された透明樹脂シート上に透明導電ポリマー膜の形成が行われる(ステップS3)。具体的には、透明樹脂シート上の所定の領域に、スクリーン印刷によって、透明導電ポリマーが分散された溶液を塗布し(ステップS3−1)、溶液によるパターンを形成し、この溶液を加熱乾操すると、透明導電ポリマー膜が透明樹脂シート上に成膜される(ステップS3−2)。
そして、透明導電ポリマー膜が表面に形成された透明樹脂シートの対向する端辺の夫々に、位置検出用の電圧を透明導電ポリマー膜に供給するための電極となる導電パターンを形成する(ステップS4)。この導電パターンの形成には、従来から知られている銀(Ag)ペーストによるスクリーン印刷を使用することができる。
次いで、形成された導電パターンのみを絶縁するために、絶縁レジスト膜がスクリーン印刷などにより形成される(ステップS5)。これで、透明樹脂シートによるタッチパネルの上側基板が出来上がったことになる。
下側基板は、この製造フローとは、並行して、別途の手順で製造される。下側基板では、ガラス基板上にITO膜が形成され、そのITO膜の上に、ドットスペーサ、電極となる導電パターンが形成され、そして、導電パターン上に絶縁レジスト膜が形成されている。上側基板が出来上がったところで、上側基板と下側基板とを、透明導電ポリマー膜とITO膜とが内側になるように対向させ、周囲を、スペーサとなる両面テープで貼り合わせ、そして、各基板に設けられた導電パターンにFPCを接続すると、タッチパネルが完成する。
図2に示された製造フローでは、透明樹脂シートをワークサイズに切断してから、透明導電ポリマー膜の形成を行ったが、ロール状のPETフィルムにマイクログラビア式コーティング装置を用いて連続的にチオフェン系導電ポリマー溶液を塗布することもできる。この場合には、該溶液の加熱乾操においても、連続的に処理される。
実際に、この手法により、約0.1μmの膜厚の透明導電ポリマー膜を作成した。この透明導電ポリマー膜の全光線透過率は、約92%であり、シート抵抗は、1〜2kΩ/□であった。タッチパネルを作成する際には、図2の製造フローの手順とは異なることになるが、この透明導電ポリマー膜が形成された透明樹脂シートを所定のサイズに切断した後に、アニール処理し、その後、電極および配線パターンとなるAgペースト印刷を行った。一方、下側基板には、ITO付きガラス基板を用いており、従来のタッチパネルと同様の工程で作成し、上側基板の透明樹脂シートとガラス基板の周囲を両面テープで貼り合わせ、FPCによる引き出し線を接続することにより、タッチパネルを完成させた。
図3に、実施例1のタッチパネルにおいて採用された透明導電ポリマー膜の耐久性を表す摺動特性について、従来のITO膜の場合と比較して示した。図3に示されたグラフでは、横軸に、プラスチックペンによる直線摺動回数が示され、縦軸には、位置検出誤差に相当するリニアリティ変化率が示されている。
図3に示されたグラフからも分かるように、本実施例によるタッチパネルは、筆記耐久性がきわめて優れており、例えば、荷重500gにおける、先端が0.8Rのプラスチックペンによる往復摺動寿命は、ITO膜の場合によるタッチパネルの5倍以上あることが確認された。ITO膜によるタッチパネルの方が、導電ポリマー膜に比較して早い段階で、リニアリティの変化が見られ、劣化が早いことを示している。
なお、これまでに説明した実施例1による抵抗膜方式のタッチパネルでは、図1に示されるように、透明電極膜としての透明導電ポリマー膜7が透明樹脂シート4の表面に形成されている。図1においては、タッチパネルとして必要な、位置検出用の電圧を透明導電ポリマー膜に供給するための電極や配線パターンなどのタッチパネルとして必要な導電パターンは、図示されていないが、実際には、この導電パターンは、押下又は接触検知領域を取り囲むように、タッチパネルの外周部における額縁状帯部に形成されている。
図1に示された構成を有する抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順が、図2のフロー図に示されている。この製造手順によれば、導電パターンは、導電ポリマー膜7が透明樹脂シート4の表面上に成膜された後に、形成される。そして、その導電パターン上に、絶縁レジスト膜が形成され、導電パターンに対する絶縁処理が施される。
この導電パターンが、例えば、Agペーストを用いたスクリーン印刷で形成される場合には、このAgは、マイグレーションを起こし易いため、導電パターン上に設けられた絶縁ペースト膜が突き破られる可能性があり、絶縁劣化となる。そこで、このマイグレーションが発生しても、絶縁劣化を抑制できる構成として、導電パターン上に、直接絶縁レジスト膜を配置するのではなく、透明導電ポリマー膜を介するようにした。
この絶縁劣化を抑制できる抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順に係る変形例が、図4のフロー図に示される。この製造手順は、図2に示されたフロー図を基本としており、同じ工程ステップには、同じ符号が付されている。
図4に示されたフロー図による変形例に係る抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順が、図2に示された製造手順と異なるところは、ステップS4による導電パターン形成の製造工程が、ステップS2のアニール処理工程と、ステップS3の透明導電ポリマー膜形成工程との間に挿入されていることである。
図4に示された抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順に従えば、タッチパネルの額縁状の周辺部における透明樹脂シート4上に形成された導電パターンが、透明導電ポリマー膜7で覆われるようになり、さらに、絶縁レジスト膜がその上に形成されるので、Agのマイグレーションが発生しても、透明導電ポリマー膜が介在することによって、絶縁レジスト膜を突き破ることがなくなり、絶縁劣化を抑制することができる。
これまでに説明してきた実施例1の抵抗膜方式のタッチパネルでは、下側基板におけるガラス基板上に形成された透明電極膜に、ITO膜が使用されていた。次に、この実施例1に係る抵抗膜方式のタッチパネルの変形例を図4に示した。この変形例による抵抗膜方式のタッチパネルでは、下側基板に形成されている透明電極膜であるITO膜も、透明導電ポリマー膜に置き換えることとした。
このITO膜を透明導電ポリマー膜に置き換えることによって、ITO膜を形成するための、例えば、スパッタ、蒸着装置を製造装置として必要なくなる。ガラス基板上への透明導電ポリマー膜の形成においても、透明導電ポリマー材を分散した溶液をスクリーン印刷で塗布し、該溶液を加熱乾燥させるという簡単な手法を採用できるようになり、タッチパネルの製造手順全体において、低コスト化を図ることができる。
図5に示された抵抗膜方式のタッチパネルの構成は、図1に示された抵抗膜方式のタッチパネルと同様であるが、ガラス基板1の上に形成されたITO膜2が、透明導電ポリマー膜8に置き換えられている。この場合の透明導電ポリマー膜の形成に当たっては、図2に示されたフローによる透明導電電極の形成手順が使用されるが、下側基板を製造する手順としては、透明電極膜上に、複数のドットスペーサが配置されることから、同フローにおける透明導電ポリマー膜形成のステップS3と導電パターン形成のステップS4との間に、ドットスペーサ形成のステップが挿入されることになる。このステップ以外では、この場合のタッチパネルの製造手順の全体は、図1に示された抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順と同様である。
実施例1の抵抗膜方式のタッチパネルでは、下側基板にガラス基板を使用した場合であった。そこで、実施例2では、下側基板にも、上側基板に使用した透明樹脂シートを採用し、タッチパネル全体に可撓性を持たせることとし、タッチパネルを湾曲させた状態でも設置可能として、利便性を高め、そして、量産性の向上をさせて、コスト低減を図るようにした。
図6に実施例2に係る抵抗膜方式のタッチパネルの構成を示した。この構成は、基本的には、図5に示された抵抗膜方式のタッチパネルの場合と同様に、上下側基板に形成された透明電極膜には、透明導電ポリマー膜7、8が採用されているが、下側基板にガラス基板1ではなく、透明樹脂シート9を使用している。このことにより、上側基板と下側基板とに、同様の構成のものを使用することができるようになり、上下側基板ともに、同じ製造ラインに乗せて製造することができ、量産化しやすく、コスト低減になる。
従来のITO膜の量産化は、ロール状のプラスチックシートにスパッタ、真空蒸着等で連続成膜していたが、それらの装置は、非常に大がかりな上、成膜時間も長いので、量産性に乏しく、コストが高い。それに比較し、本実施例における透明導電ポリマー膜の形成には、透明導電ポリマー材を分散した溶液を使用しているため、プレードコーター、ロールコーター、印刷機、等の比較的簡便な装置を用い、シート表面に透明導電ポリマーの分散溶液を塗布し、そして、乾燥するだけなので、成膜時間も短く、コストはITO膜形成よりはるかに安くなる。
そこで、図7に、図6に示された抵抗膜方式のタッチパネルに係る概略的製造工程のフローを示した。同フローでは、最初の段階において、上側基板における上側シートの形成と、下側基板における下側シートの形成とに分かれている。これは、上側基板と下側基板の構成は、基本的に同じであるが、下側基板には、ドットスペーサが配置されることになるため、このドットスペーサ形成の工程が挿入されることによる。
図7のフローにおいて、先ず、PET、ポリカーボネート、シクロオレフイン等の透明樹脂シートを、上側基板用、下側基板用ともに、夫々、ワークサイズに切断し(ステップS11、S21)、そして、夫々において、アニール処理が行われる(ステップS12、S22)。
その後、透明樹脂シート4及び9の夫々における所定の領域に、スクリーン印刷によって、透明導電ポリマー材が分散された溶液の塗布によるパターンを形成し、加熱乾操して、透明導電ポリマー膜を形成する(ステップS13、S23)。これらのステップは、図2における透明導電ポリマー膜形成のステップS3と同様である。
ここで、上側シートの形成では、透明導電ポリマー膜が形成された後には、電極となる導電パターン形成が行われるが(ステップS14)、下側シートの形成では、形成された透明導電ポリマー膜の上に、ドットスペーサが形成された後に(ステップS24)、電極となる導電パターンが形成される(ステップS25)。
そして、形成された夫々の導電パターンの上に絶縁レジスト膜が形成され(ステップ15、S26)、これで、上側基板と下側基板とが出来上がる。この後に、上側基板に形成された透明導電ポリマー膜と、下側基板に形成された透明導電ポリマー膜とが対向して向き合うように、それらの周囲を、スペーサとなる両面テープで貼り合わせる(ステップS31)。
次いで、貼り合わされて積層された上側基板と下側基板とを所定のサイズに最終的な型抜き処理が行われ(ステップS32)、各シートに形成された導電パターンによる電極にFPCを接続すると、抵抗膜方式のタッチパネルが完成する(ステップS33)。このタッチパネルの完成品に対して試験が実行され、製品の出荷となる(ステップS34)。
以上のような製造処理手順によると、従来のITO膜では、不要なITO膜部分の処理のために電極パターン印刷の前に、必ず絶縁パターン印刷か、ITO膜エッチングする工程が必要になるが、本実施例では、始めから導電パターンは、必要な部分しか形成されていないので、前記のようなITO膜の不要部分を処理するための工程が省略でき、製造工程の簡単化を図れる。
なお、図7に示された抵抗膜方式のタッチパネルの製造工程において、上側シートと下側シートとを、1枚のマザーシートから作成することも可能である。その場合は、1枚のワークサイズの透明樹脂シートに、上側シートに相当する部分と、下側シートに相当する部分とに、夫々、パターン印刷により溶液の塗布を施し、加熱乾燥して透明導電ポリマー膜を形成するようにしてもよい。
そして、下側シートに相当する部分に、ドットスペーサを形成した後に、上側シート側、下側シート側、さらに、それらに繋がり且つ折り曲げ部分となる連結部を型抜きする。型抜きされた連結部を折り曲げて、上側シート相当部と下側シート相当部を対向させて周縁部を貼り合わせるようにする。このような手法を採用することにより製造工程が簡略化され、さらに低コストが実現できる。
これまでに説明した抵抗膜方式のタッチパネルは、図6に示されるように、上下側基板ともに、透明樹脂シートで形成されているので、タッチパネル全体が可撓性を有している。勿論のこと、タッチパネル単体で使用することもできるが、可撓性を有することを利用して、例えば、湾曲した表示画面に貼着して使用することもでき、また、硬い適当な基体に貼り付けて使用することもできる。
実施例2による抵抗膜方式のタッチパネルの変形例を、図8に示した。抵抗膜方式のタッチパネル部分は、図6に示されたタッチパネルの構成と同様である。本変形例では、上側基板、下側基板とも透明樹脂シート4、9上に透明導電ポリマー膜7、8が形成され、可撓性を有するタッチパネルとなっている。実施例2によるシート−シート横成のタッチパネルは、そのまま透明粘着剤を用いて、LCD等の表示画面に貼り付けて使用することも可能であるが、図8のように、下側基板である透明樹脂シート9の裏面に、透明粘着剤層11により、サポ―ト用のプラスチック基体10に貼り付け、従来のフィルム−ガラス構成のタッチパネルのように、表示画面に重ねて使用することも可能である。
実施例3は、抵抗膜方式のタッチパネルにおいて、上側基板に、透明電極膜として、ITO膜と透明導電膜ポリマーとを積層して形成した透明樹脂シートを使用した場合である。透明導電ポリマー材の溶液を塗布して乾燥することにより形成された導電ポリマー膜が摺動特性に優れていることは、図3を示して前述された。そこで、実施例3では、透明導電ポリマー膜がポリマーであることの特徴を活かして、ITO膜を透明電極膜として使用した場合におけるタッチパネルのリニアリティの劣化を抑制しようとするものである。
図9に、実施例3による抵抗膜方式のタッチパネルの構成が、断面図で示されている。図9に示された抵抗膜方式のタッチパネルは、図17に示された従来から使用されている抵抗膜方式のタッチパネルを基本にしており、同じ部分には同じ符号が付されている。該タッチパネルは、ガラス基板1、透明電極膜2及び3、透明樹脂シート4、スペーサ5、そして、複数のドットスペーサ6からなり、全体として、これらによる積層構造になっている。
ここで、実施例3におけるタッチパネルの構成と、図17のタッチパネルの構成とにおいて、ガラス基板1上に形成された透明電極膜2は、ITO膜が使用されていることに変わりがないが、実施例3のタッチパネルでは、透明樹脂シート4上に形成された透明電極膜3が、ITO膜12の上に、さらに、透明導電ポリマー膜13が成膜されていることが特徴になっている。
次に、実施例3による抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順について、図10に、そのフロー図を示した。実施例3では、透明導電ポリマー膜の成膜に、透明導電ポリマー材の溶液を塗布した後に、加熱乾燥させて成膜する手法を採用していることから、図2に示された実施例1における抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順を基本とすることができる。そのため、図10に示された製造手順のフロー図では、図2のフロー図と同じ工程ステップ部分には、同じステップ符号が付されている。
実施例1におけるタッチパネルでは、透明樹脂シート4上に、透明導電ポリマー膜が成膜されるのに対して、実施例3では、透明導電ポリマー膜が、透明樹脂シート4の全表面に形成されたITO膜12の全面に成膜されるところから、図10に示された製造手順においては、ITO膜形成処理工程(ステップS6)が、ステップS3の透明導電ポリマー膜形成工程の前に、行なわれる。ここで、透明導電ポリマー膜13の成膜の手順は、図2に示された場合と同様であるが、実施例3の場合には、その成膜厚さは、透明導電ポリマー膜のみの場合に比して、薄くすることができる。
この様に、透明導電ポリマー膜13がITO膜12の全面に渡って成膜されることによって、押下又は接触検知領域におけるITO膜に、クラックなどの損傷が発生しても、この透明導電ポリマー膜が電気的な導通を維持できるので、タッチパネルのリニアリティに影響を与えることが少なくなり、摺動特性を改善することができる。また、この場合におけるタッチパネルの明るさは、透明導電ポリマー膜だけで透明電極膜を形成する場合に比較して、明るくなる。
これまで説明した実施例3の場合では、透明導電ポリマー膜13が、透明樹脂シート4に形成されたITO膜12の上で、全面に渡って成膜され、タッチパネルの摺動特性が改善された。しかし、透明電極膜にITO膜を使用する場合、押下又は接触によって、最もクラックなどの損傷が発生し易い場所は、タッチパネルの検知領域のなかでも、周縁部分の近傍に集中している。
そこで、実施例3の変形例として、この周縁部分の近傍に集中することに着目し、ITO膜の全面に透明導電ポリマー膜を成膜せず、検知領域における周縁部分の近傍のみに、透明導電ポリマー膜を成膜することとした。そのタッチパネルの断面図が、図11に示されている。図9に示されたタッチパネルの構成と同様であるが、透明導電ポリマー膜が、符号14で示されるように、ITO膜12の周縁部分の近傍のみに、額縁状に成膜されている。
この実施例3の変形例における抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順は、図10に示されたフロー図による製造手順と同様であるが、ステップS3による透明導電ポリマー膜形成工程において、透明導電ポリマー材の溶液がITO膜の全面に塗布されるのではなく、スクリーン印刷などで、ITO膜12の周縁部分の近傍のみに、額縁状に塗布され、成膜される。
この様に、透明導電ポリマー膜が、ITO膜12の周縁部分の近傍のみに、額縁状に成膜されることによって、検知領域の周縁部分に集中して発生するクラックなどの損傷が発生しても、透明導電ポリマー膜の存在によって、この部分の電気的な導通を維持することができる。
これまでに説明した実施例1乃至3では、透明導電ポリマー膜の成膜は、主として、連続した1枚の透明電極膜を形成する場合であったが、実施例4は、上側基板に、複数領域に分割された透明導電膜ポリマー膜を形成した透明樹脂シートを使用した抵抗膜方式のタッチパネルの場合である。
ここで、実施例4のタッチパネルが適用される原理的な抵抗膜方式のタッチパネルの構成を、図12に示した。この抵抗方式のタッチパネルは、相対向する基板1及び4を有し、基板1の上面には、電位勾配を形成するための抵抗膜であるITO膜によって透明電極膜が形成され、透明樹脂シートからなる基板4の下面には、ITO膜などの透明電極膜が夫々形成されている。
基板1上のITO膜の各辺には、複数の電極が形成されており、その辺毎に、複数のダイオードからなるダイオード群D1乃至D4が接続されている。対向する2辺におけるダイオード群D1とD3とが、そして、他の対向する2辺におけるダイオード群D2とD4とが同じ導通方向になるように接続されている。
図12に示されたタッチパネルでは、例えば、X軸方向の位置についての検出原理が示されている。ペンPが、基板4の検知領域のある点に押下又は接触されて、基板4がITO膜に接触したとき、先ず、ダイオード群D4のカソード側に、電圧Vcが供給され、ダイオード群D2のアノード側に、アース電圧V0が供給される。そこで、ダイオード群D4側からダイオード群D2に向く電位勾配が形成され、X軸方向における抵抗R1とR2とで分圧された電圧V1が検出される。この電圧Vx1の検出により、X軸方向の位置が特定される。
次いで、電圧供給が切り換えられて、ダイオード群D3のカソード側に、電圧Vcが供給され、ダイオード群D1のアノード側に、アース電圧V0が供給される。これによって、Y軸方向における電圧Vy1が検出され、Y軸方向の位置が特定される。X軸方向及びY軸方向の位置が特定されるので、ペンPの検知領域における座標が求められる。
そこで、実施例4では、この様なペンの押下又は接触位置に応じた座標が求められる抵抗方式のタッチパネルにおいて、同時多点入力が可能となるように、上側基板に使用された透明樹脂シートへの透明導電ポリマー膜の成膜の仕方を工夫した。実施例4に係る抵抗方式のタッチパネルの構成を、図13に示した。図13に示された抵抗方式のタッチパネルの構成は、図12に示されたタッチパネルの構成を基本とし、同じ部分には、同じ符号を付した。
実施例4に係る抵抗方式のタッチパネルでは、図13では図示が省略されている上側基板4の下面には、透明導電ポリマー膜が、検知領域の全面に渡る1枚の膜ではなく、複数に分割された膜に成膜されている。図13には、検知領域を2つに分割するように形成された透明導電ポリマー膜7−1、7−2の例が示されている。透明導電ポリマー膜は、X軸方向又はY軸方向に、2以上の複数に分割されて、成膜される。透明導電ポリマー膜7−1と7−2の一辺に、夫々独立した電圧検出用の電極が形成されている。
ここで、図13に示されるように、ペンP1とP2が、同時に、検知領域の2箇所で押下又は接触し、例えば、ペンP1が、透明導電ポリマー膜7−1を押下し、ペンP2が、透明電動ポリマー膜7−2を押下したとき、先ず、ダイオード群D4のカソード側に、電圧Vcが供給され、ダイオード群D2のアノード側に、アース電圧V0が供給される。そこで、ダイオード群D4側からダイオード群D2に向く電位勾配が形成され、ペンP1とペンP2とにより、X軸方向における抵抗R1、R2、R3とで分圧された電圧Vx1とVx2が別々に検出される。これらの電圧Vx1、Vx2の検出により、X軸方向の2位置が特定される。
次いで、電圧供給が切り換えられて、ダイオード群D3のカソード側に、電圧Vcが供給され、ダイオード群D1のアノード側に、アース電圧V0が供給される。これによって、Y軸方向における電圧Vy1とVy2が別々に検出され、Y軸方向の2位置が特定される。この様にして、X軸方向及びY軸方向の2位置が特定されるので、ペンP1とペンP2が押下する位置の検知領域における夫々の座標が独立して求められる。
この様に、2個のペンが同時にタッチパネルに押下又は接触したとき、夫々の座標が独立して求められる抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順について、図14のフロー図に示した。同フローでは、最初の段階において、上側基板に係る上側シートの形成と、下側基板に係る下側ガラス基板の形成とに分かれ、最終的な段階では、形成された上側基板と下側基板とが合わされて、タッチパネルが製造される。
図14のフローにおいて、上側シートの形成では、先ず、PET、ポリカーボネート、シクロオレフイン等の透明樹脂シートを、上側基板用として、ワークサイズに切断し(ステップS41、S42)、そして、アニール処理が行われる(ステップS43)。
その後、透明樹脂シートにおける所定の領域に、スクリーン印刷によって、透明導電ポリマー材が分散された溶液の塗布による分割されたパターンを形成し、加熱乾操して、透明導電ポリマー膜17−1、17−2を形成する(ステップS44)。このステップS44は、スクリーン印刷の際に、複数のパターンに分割されていること以外には、図2における透明導電ポリマー膜形成のステップS3と同様である。
ここで、上側シートの形成では、透明導電ポリマー膜が形成された後には、電極となる導電パターン形成が行われ(ステップS45)、さらに、透明樹脂シートの型抜きが行なわれて(ステップS46)、上側シートが完成する。
一方、下側ガラス基板の形成では、ガラス基板の片面にITO膜を形成し(ステップS51)、形成されたITO膜の上に、ドットスペーサが印刷手法により形成される(ステップS52)。その後、ITO膜の額縁状の周縁部分に、絶縁レジスト膜を形成し(ステップS53)、電極となる導電パターンが、Agペースのトスクリーン印刷によって形成される(ステップS54)。
そして、ステップS53と同様に、その導電パターンの表面を絶縁するための額縁状の絶縁レジスト膜が形成され(ステップS55)、下側基板が出来上がる。この段階で、上側基板と下側基板とが出来上がる。この後に、上側基板である透明樹脂シートに形成された透明導電ポリマー膜と、下側基板であるガラス基板に形成されたITO膜とが対向して向き合うように、それらの周囲を、スペーサとなる両面テープで貼り合わせる(ステップS61)。
次いで、ガラス基板の上面において、ITO膜の周辺に、ダイオード群D1乃至D4を搭載した後に(ステップS62)、ワークサイズであったガラス基板をスクライブして、最終的なタッチパネルとしての所定サイズにされる(ステップS63)。そして、形成された導電パターンによる電極にFPCを接続すると、抵抗膜方式のタッチパネルが完成する(ステップS64)。このタッチパネルの完成品に対して試験が実行され、製品の出荷となる(ステップS65)。
以上のような製造処理手順によると、抵抗膜方式のタッチパネルの透明電極膜が、透明導電ポリマー材の溶液を複数に分割したパターンに従って塗布し、加熱乾燥することにより成膜されるので、複数に分割された透明電極膜が、透明樹脂シート上に簡単に形成され、同時多点入力を実現できる抵抗膜方式のタッチパネルが得られる。
また、従来のように、上側の透明電極膜にITO膜を用いた場合には、該ITO膜をエッチングする工程が必要になるが、実施例4では、透明導電ポリマー材の溶液による塗布の段階で、始めから複数に分割されたスクリーン印刷でパターン化されており、必要な部分にしか成膜されないので、ITO膜の不要部分を処理し、複数に分割するための工程が省略でき、製造工程の簡単化を図れる。
実施例5は、表面が微細な凸凹により粗面化された透明導電ポリマー膜を形成した透明樹脂シートを使用した抵抗膜方式のタッチパネルの場合である。抵抗膜方式のタッチパネルにおける上側基板と下側基板との間隔は、通常、10μm以下になることがあり、この様な間隔になると、ニュートンリング効果で膜面に干渉縞が現れることがある。そこで、実施例5では、アンチニュートンリング効果を付与するために、成膜される透明導電ポリマー膜の表面に、微細な凸凹による粗面化を施すこととした。
実施例5による抵抗膜方式のタッチパネルにおける透明導電ポリマー膜の成膜の様子について、図15(a)及び(b)に、その要部拡大による断面図で示した。図15(a)及び(b)は、上述した他の実施例において使用される透明樹脂シート4上に透明導電ポリマー膜を成膜する場合を示しており、抵抗膜方式のタッチパネルの製造手順におけるステップS3の透明導電ポリマー膜形成工程の途中段階の様子である。
図15(a)では、表面が、凹凸加工又はメッシュ加工された型板体16を用意しておき、透明樹脂シート4上に、透明導電ポリマー材の溶液を塗布し、該溶液を加熱乾燥させる際に、該溶液の塗布面に、型板体16押し当てる。そして、溶液が乾燥したとき、型板体16を塗布面から剥がすと、表面に微細な凸凹により粗面化された透明導電ポリマー膜15が成膜される。
また、図15(b)では、透明導電ポリマー材の溶液を塗布する前に、該溶液に、シリカなどによる適宜の径を有する無機粒子を分散させておき、透明樹脂シート4上に、無機粒子が分散された溶液を塗布する。その後、溶液を加熱乾燥させると、溶液の溶媒が抜けて成膜される。このとき、溶液は、厚さ方向に収縮する。ところが、無機粒子は、加熱によっても収縮しないので、無機粒子が存在する部分の膜厚は、無機粒子が無い部分に比べて厚くなる。そのため、無機粒子が溶液中に適当に分散されていると、乾燥されて成膜された透明導電ポリマー膜15の表面には、微細な凸凹が形成される。
ここで、実施例5に係る抵抗膜方式のタッチパネルにおける上側基板の製造手順が、図16のフロー図に示されている。図16に示された製造手順は、上側基板に、透明樹脂シートを採用した場合の例であり、図2に示された実施例1のタッチパネル製造手順を基本としている。図16の製造手順では、図2の製造手順と同じ工程には、同じ符号が付されている。
実施例5に係るタッチパネル製造手順においては、ステップS3における透明導電ポリマー膜形成工程が、図2に示されたステップS3の工程と異なっており、ステップS3−2の導電ポリマー材乾燥工程の代りに、ステップS3−3の乾燥・表面凹凸形成工程に置き換えられている。
図15(a)に示された型板体16を使用して、表面に微細な凸凹を有する透明導電ポリマー膜を成膜する場合には、ステップS3−3の乾燥・表面凹凸形成工程において、型板体16を塗布面に押し当てながら、溶液を乾燥させ、次いで、型板体16を外す。この様にすると、型板体16の押し当て面に形成された凹凸加工又はメッシュ加工形状が、成膜された透明導電ポリマー膜の膜面に転写される。
また、図15(b)に示されるように、無機粒子を使用して、表面に微細な凸凹を有する透明導電ポリマー膜を成膜する場合には、ステップ3−1の導電ポリマー材塗布工程の段階で、導電ポリマー材の溶液に無機粒子17を分散させておき、その溶液が透明樹脂シート上に塗布される。次いで、ステップS3−3の乾燥・表面凹凸形成工程において、塗布された溶液が加熱乾燥され、透明導電ポリマー膜が成膜される。このとき、無機粒子17の存在により、その膜面に凹凸が現れる。
以上のように、実施例5による透明導電ポリマー膜の成膜方法を採用した抵抗膜方式のタッチパネルでは、透明電極膜の表面に微細な凹凸によって粗面化され、アンチニュートンリング効果が付与されるので、ペンなどの押下又は接触によるニュートンリングの発生を抑制することができる。また、この成膜方法を採用すれば、特別な粗面化手段を別途に用意する必要がなく、成膜工程中で、アンチニュートンリング効果を付与することができる。