JP4761638B2 - ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板、円筒容器、アルミニウム電解コンデンサー外装容器 - Google Patents
ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板、円筒容器、アルミニウム電解コンデンサー外装容器 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板、およびそれを用いた円筒状容器、アルミニウム電解コンデンサー外装容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルミニウム電解コンデンサーなどの外装容器に絶縁性を付与する目的で、外装容器の外側面を被覆する方法としては、コンデンサーの外側面にポリ塩化ビニル製の熱収縮チューブを被せて熱風オーブンの中を通過させ、コンデンサー外装容器の外側面に密着させて、被覆膜を形成する方法が採用されている。
【0003】
近年、ポリ塩化ビニルは、樹脂の分子鎖内に塩素を含んでいるので焼却時に環境を汚染するという問題があることから、他素材、例えばポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂への代替が進められている。しかしながら、ポリ塩化ビニル製の熱収縮性チューブは、熱収縮性、絶縁性、耐熱性、加工性などにおいて極めて優れており、ポリオレフィン樹脂製またはポリエステル樹脂製の熱収縮性チューブでは、コンデンサー外装容器との密着性、絶縁性などの点でポリ塩化ビニル製のものには及ばなかった。
【0004】
さらに、樹脂製の熱収縮チューブをコンデンサー外装容器の表面に被せ、熱風オーブンの中を通過させることによってコンデンサー外装容器の外側面に密着させ、絶縁性を付与する従来の製造方法では、生産性の点でも効率的なプロセスではない。また、コンデンサー外装容器の表面に樹脂フィルムを接着して、外装容器の外側面に絶縁性を付与する方法は有効であるが、二軸延伸ポリエステルフィルムやポリアミド樹脂フィルムを金属板と接着剤で結合した材料では密着性が劣る、成形性が不十分である、耐熱性が劣る、経時的にフィルムの密着性が低下するなどの欠点があった。さらに、ハンダリフロー工程における加熱により、ポリアミド樹脂フィルムをラミネートした製品では、黄変が目立って外観が劣るなどの欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記した従来技術の問題点を解消したポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板などを提供すべく鋭意検討した結果、本発明を完成したものである。すなわち、本発明の目的は次のとおりである。
1.ポリ塩化ビニルを使用せず、成形性、耐熱性、絶縁性、外観などに優れた、コンデンサー外装用容器製造用に適したポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を提供すること。
2.ポリエステル樹脂フィルムとアルミニウム板との界面密着性が、経時的に劣化しないポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を提供すること。
3.このポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板製の有底状の円筒容器などを提供すること。
【0006】
【発明を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1発明では、少なくとも一方の表面にポリエステル樹脂フィルムがラミネートされたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板において、このポリエステル樹脂フィルムは、テレフタル酸成分が80%以上のポリエステル樹脂より調製されたものであり、かつ、動摩擦係数が0.15〜0.30であって、上記のポリエステル樹脂フィルムがラミネートされたアルミニウム板の表面について、X線光電子分光法(ESCA法)によって表面ケイ素元素を測定した際の表面ケイ素元素の存在量が、3〜15原子%であって、ラミネートされたポリエステル樹脂ラミネートアルミニウム板を元の厚さの40%にまで圧延したあと、アルミニウム板からポリエステル樹脂フィルムを180°方向に剥離する際の剥離強度が、0.30kg/20mm幅以上であることを特徴とする、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を提供する。
【0007】
第2発明では、上記第1発明に係るポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を、ポリエステル樹脂フィルム面が外側となるように絞り、しごき加されたものであることを特徴とする有底状の円筒容器を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においてアルミニウム板とは、ラミネート板に基体となる金属板である。素材となるアルミニウムは、特に限定されないが、アルミニウム合金が好ましい。アルミニウム合金としては、アルミニウム系の1000系合金、Al−Cu系、Al−Cu−Mg系の2000系合金、Al−Mn系の3000系合金、Al−Si系の4000系合金、Al−Mg系の5000系合金、Al−Mg−Si系の6000系合金、Al−Zn−Mg−Cu系、Al−Zn−Mg系の7000系合金、Al−Fe−Mn系の8000系合金などが用いられ、成形用合金、構造用合金、電気用合金、AC1A、AC2A、AC3A、AC4Bなどの鋳造用合金が挙げられる。アルミニウム板の厚さは、0.2〜5mmの範囲のものが好ましい。
【0009】
これらのアルミニウム板に、その表面に溶体化処理、時効処理などの種々の改質処理を施したものでもよい。さらに、これらアルミニウム材の表面には、化成処理である浸漬クロメート酸処理、リン酸クロメート処理、さらにアルカリ溶液または酸溶液によるエッチング処理、または陽極酸化処理などが施されていてもよい。
【0010】
本発明で使用されるポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを縮合させて得られた樹脂をいう。ジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4−ジカルボン酸、ジフェニルエ−テル−4,4−ジカルボン酸、マロン酸、1,1−ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、デカメチレンジカルボン酸などを挙げることができる。
【0011】
これらのジカルボン酸のうち、テレフタル酸、イソフタル酸が耐熱性、絶縁性などの観点から好ましい。本発明では、テレフタル酸成分が80%以上であること必要がある。テレフタル酸成分が80%より少ないと、共重合成分が多くなり、加工性、密着性などは良いが、耐熱性、すべり性などが劣る、経済性も悪いなどの欠点が生じ好ましくない。
【0012】
グリコ−ル成分としては特に限定されないが、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類、シタロヘキサンジメタノールなどの脂肪族グリコール類、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール類、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを挙げることができる。これらの中でも、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどが、フィルムに収縮性を付与する観点から好ましい。
【0013】
フィルムの製造方法としては、特に限定されないが例えばポリエステル樹脂を、必要に応じて乾燥した後、従来から知られている押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化させて、未延伸シートを得る方法が挙げられる。また、この未延伸シートを、逐次2軸延伸法や同時2軸延伸法などによって2軸延伸フィルムとする方法によって製造することもできる。
【0014】
フィルム厚さは、5μ〜50μの範囲で選ぶのが好ましい。厚さが5μより薄いと、フィルムをアルミニウム板にラミネートすることが困難となり、50μを越えると経済性やプレス加工性が劣る。フィルム厚さ、上記範囲の中でも、10μ〜30μが特に好ましい。
【0015】
ポリエステル樹脂フィルムは、アルミニウム板との接着性を向上させる目的で、アルミニウム板と接着する面に、あらかじめコロナ処理などの放電処理、火炎処理などの表面処理を施すこともできる。
【0016】
本発明の目的を効果的に達成するには、ポリエステル樹脂フィルム表面(アルミニウム板に接着されない面)の動摩擦係数を0.15〜0.30とすることが必要である。これは、アルミニウム電解コンデンサー外装容器は有底状の円筒容器であり、成形した後の後工程で、振動法によるパーツフィーダーなどで容器を整列させたあと、コンデンサー素子を封入させることが一般であるが、動摩擦係数が0.30を越えると、パーツフィーダーで整列させる工程で外装容器が相互に接触または金属製のフィーダーに接触した際に、すべり性が悪く、生産性が著しく劣る。また、動摩擦係数が0.15未満であると、容器同士がすべり過ぎてフィーダーでの送りが悪くなるという問題が生じる。
【0017】
ポリエステル樹脂フィルム表面の摩擦係数を0.30以下にするには、(1)フィルム化する前のポリエステル樹脂に、微粉末を配合する方法、(2)フィルム表面が溶融状態にある間に、微細な凹凸が刻設されたエンボスロールで押圧して表面を荒らす方法、(3)上記(1)と(2)とを組合わせた方法、などが挙げられる。上記(1)および(3)の方法でポリエステル樹脂に配合できる微粉末としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタンなどの金属酸化物微粒子、または、アクリル酸、メタリル酸などのアクリル系単量体、スチレンやアルキル置換スチレンのスチレン系単量体などジビニルベンゼン、ジスルホン、エチレングリコールジメタクリレートなどの架橋性単量体との共重合体などの、ポリエステル樹脂と非相溶の熱可組成樹脂などが挙げられる。中でも、シリカ、アルミナなどが好適である。
【0018】
本発明の目的を効果的に達成するには、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を、元の厚さの40%にまで圧延したあと、アルミニウム板からポリエステル樹脂フィルムを180°方向に剥離する際の剥離強度が、0.30kg/20mm幅以上とすることが必要である。剥離強度が、0.30kg/20mm幅未満であると、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を、絞り加工法によってアルミニウム電解コンデンサーの外装容器のような有底状の円筒容器を製造する際、さらにかしめ加工する際などに、アルミニウム板の表面にラミネートしたポリエステル樹脂フィルムが、層間剥離、破損、クラックなどが生じ易く、また、経時的に劣化し易くなり、好ましくない。
【0019】
本発明に係るポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板は、アルミニウム板表面について、X線光電子分光法(ESCA法)によって表面ケイ素元素を測定した際の表面ケイ素元素の存在量が、3〜15原子%の範囲が好ましい。表面ケイ素元素の存在量が3%未満であると、ラミネート樹脂フィルムの密着性が十分ではなく、絞り加工、しごき加工を施したときにラミネート樹脂フィルムの剥離が生じ易く、他方15原子%をこえると、ラミネート樹脂フィルムの密着性は飽和に達し、効果は存在量に比例せず、いずれも好ましくない。
【0020】
本発明においてX線光電子分光法(ESCA法)とは、試料に軟X線を照射し、試料表面から放出される光電子を静電型エネルギー分析器により検知し、運動エネルギーまたは結合エネルギーを横軸とするスペクトルで表す固体表面分析法である。このESCAによる測定条件は通常の測定条件でよく、例えばX線源がMgKaで出力15Kv×33mA、真空度が5×10-8torrにおいて、ケイ素元素のスペクトル強度分布から測定するものである。
【0021】
アルミニウム板表面の表面ケイ素元素量を所定の範囲となるようにするには、アルミニウム板表面を、シランカップリング剤で処理すればよい。シランカップリング剤とは、分子中に2個以上の異なった反応基をもつ有機ケイ素単量体をいい、2個の反応基のうちの一方は無機質(ガラス、金属など)と化学結合する反応基であり、他方の反応基は有機材料(各種合成樹脂)と化学結合する反応基である。
【0022】
アルミニウム板と結合する反応基は、特には限定されないが、例えばメトキン基、エトキシ基、シラノール基などがある。アルミニウム板またはアルミニウム合金板とシランカップリング剤とは、Al−O−Siの結合を形成して強固に結合し、ポリエステル樹脂とシランカップリング剤とは、シランカップリング剤中の有機官能基が有機樹脂と反応して強固な結合力を与え、アルミニウム板またはアルミニウム合金板とポリエステル樹脂フィルムの間は強固に接着される。
【0023】
アルミニウム板にシランカップリング剤を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、従来から知られている塗布方法、例えば、ディッピング法、グラビアロール法、リバースロール法、キスロール法、噴霧法などにより所定量塗布する方法が挙げられる。
【0024】
シランカップリング剤を塗布したアルミニウム板の少なくとも一方の面に、ポリエステル樹脂フィルムをラミネ−トする方法としては、(1)Tダイ、Iダイなどの口金を装着した押出機により薄膜状に押出しながら、アルミニウム板の表面にラミネ−トする方法や、(2)あらかじめ製膜したポリエステル樹脂フィルムを加熱したアルミニウム板の表面に、ニップロ−ルで圧着する方法、などを挙げることができる。
【0025】
本発明に係るポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板は、絞り加工などのプレス加工性に優れ、アルミニウム電解コンデンサー外装用容器の製造用に好適に使用される。しかも、アルミニウム板には、特定のポリエステル樹脂フィルムがラミネートされているので、アルミニウム板とポリエステル樹脂フィルムとの界面における密着性に優れ、絞り加工する際にラミネートされたポリエステル樹脂フィルムに剥離、クラック、破損などが生じ難い。また、プレス加工によって容器に成形した後、振動法によるパーツフィーダーなどで整列させる際に、整列させ易く、アルミニウム電解コンデンサーの生産性が劣ることがない。さらに、経時的にポリエステル樹脂フィルムの密着性が低下することがない。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって、さらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における物性の評価方法は以下のとおりである。
【0027】
(a)ケイ素元素量(%):シランカップリング剤を塗布乾燥したアルミニウム板の表面を、X線光電子分光法(ESCA法)によって、X線源をMgKa、出力15Kv×33mA、真空度5×10-8torrの条件下で、ケイ素元素のスペクトル強度分布から測定した。
(b)動摩擦係数:23℃のステンレス430板の上に、以下の例で調製したフィルムラミネ−トアルミニウム板のフィルム面を、ステンレス板側になるようにしてセットし、60mm×60mmの接触面積を有する重量200gの滑走子を、速度100mm/分で滑走させたときの動摩擦係数を測定した。
【0028】
(c)剥離強度(kg/20mm幅):以下の例で調製したフィルムラミネートアルミニウム板を、元の厚さの40%になるまで圧延し、アルミニウム板のフィルムがラミネートされていない面にノッチを入れて折り返してフィルムを剥離し、フィルムを50mm/分の速度で、180°方向に剥離したときの最高値を剥離強度とした。
(d)絞り加工性:以下の例で調製したフィルムラミネートアルミニウム板を用い、ランス順送り絞り機により7段の絞り加工を行い、容器外面側がフィルム層となるように10mmφ×20mm高さの円筒容器(しごき率20%)を作成し、層間の剥離状態を目視観察した。層間剥離が全く認められなかったものを○と判定し、層間剥離が観察されたものを×と判定した。
【0029】
(e)かしめ性(%):上記(d)絞り加工性の評価用に作成した10mmφ×20mm高さの円筒容器を、100rpmの回転速度で回転させながら、厚さ3mmの円板状のかしめごま(側面はR=1.5mmの半円状)を押し当てて、直径が7.5mm(直径変化率=25%)になるようにかしめ加工し、層間の剥離状態を確認した。100個の容器について目視観察し、層間剥離が認められなかったものを良品とし、評価結果を良品率(%)で示した。この数値が高いほど、好ましい。
(f)すべり性:上記(d)絞り加工性の評価用に作成した10mmφ×20mm高さの円筒容器を、摩擦を与えながら旋回運動をさせて整列させるパーツフィーダーで搬送させたときに、円筒容器の送りが円滑にできるものを○と判定し、円筒容器の送りが円滑にできないものを×と判定した。
【0030】
(g)耐熱密着性:上記(e)かしめ性の評価用に作成した10mmφ×20mm高さの円筒容器で良品のものについて、270℃の熱風乾燥機内に1分間保持し、その後の円筒容器側壁部のフィルム層の剥離程度を目視観察した。かしめ部に層間剥離が全く認められなかったものを○と判定し、層間剥離が認められたものを×と判定した。
(h)総合評価:上記、絞り加工性、かしめ性、すべり性、耐熱密着性の全ての項目において合格品質のものを○と判定し、一項目でも不合格品質のものを×と判定した。
【0031】
[実施例1]
テレフタル酸が97モル%で、共重合成分がイソフタル酸の共重合ポリエステル樹脂に、平均粒径が1.5μの凝集シリカ微粉末を0.5重量%配合し、押出機で溶融しTダイから押出し二軸延伸して厚さが20μのポリエステル樹脂フィルムを製造した。表面をリン酸クロメート処理を施した厚さが0.3mmのアルミニウム板(JIS A1050 H22)の表面に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤)を塗布し、このアルミニウム板を270℃の温度に加熱し、上記ポリエステル樹脂フィルムを2本のシリコン製押圧ロールによって10kg/cmの圧力で押圧して、ラミネートした。得られたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板の動摩擦係数は0.27、剥離強度が0.31kg/20mm幅であった。また、ESCAにより測定したときのケイ素元素存在量が8原子%であった。ポリエステル樹脂フィルムの摩擦係数、剥離強度などをまとめて表−1に示した。さらに、絞り加工後、かしめ性、すべり性、耐熱密着性について評価した。得られた結果を、表−2に示した。
【0032】
[実施例2]
実施例1に記載の例において、共重合ポリエステル樹脂を、テレフタル酸が95モル%で、共重合成分がイソフタル酸の共重合ポリエステル樹脂に代え、凝集シリカ微粉末を平均粒径が1.5μのシリカゲル微粉末に代え、カップリング剤をγ−グリシドキシプロピルエトキシシランに代えた他は、同例におけると同様の方法でポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を製造した。得られたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板の諸物性を表−1に、加工性などの評価結果を表−2に示した。
【0033】
[実施例3]
実施例2に記載の例において、共重合ポリエステル樹脂を、テレフタル酸が80モル%で、共重合成分がイソフタル酸の共重合ポリエステル樹脂に代え、カップリング剤をγ−アミノプロピルトリエトキシシランに代え、シリコン製押圧ロールをシリコン製エンボス押圧ロールに代えた他は、同例におけると同様の方法でポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を製造した。得られたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板の諸物性を表−1に、加工性などの評価結果を表−2に示した。
【0034】
[実施例4]
実施例1に記載の例において、共重合ポリエステル樹脂を、ホモポリエステル樹脂に代え、凝集シリカ微粉末の配合量を0.8重量%とした他は、同例におけると同様の方法でポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を製造した。得られたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板の諸物性を表−1に、加工性などの評価結果を表−2に示した。
【0035】
[比較例1]
テレフタル酸が90モル%で、共重合成分がイソフタル酸の共重合ポリエステル樹脂に、平均粒径が1.5μのシリカゲル微粉末を1重量%配合し、押出機で溶融しTダイから押出し二軸延伸して厚さが20μのポリエステル樹脂フィルムを製造した。厚さが0.3mmのアルミニウム板(実施例1で使用したものと同種)の表面に、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを塗布し、ポリエステルフィルムをシリコン製押圧ロールによって10kg/cmの圧力で押圧して、ラミネートした。得られたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を再加熱し、酸化アルミニウムを含んだシリコン製エンボス押圧ロールによって、ポリエステル樹脂フィルム面にエンボスを施した。得られたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板の諸物性を表−1に、加工性などの評価結果を表−2に示した。
【0036】
[比較例2]
実施例1に記載の例において、共重合ポリエステル樹脂を、テレフタル酸が80モル%で、共重合成分がイソフタル酸の共重合ポリエステル樹脂に代え、平均粒径が1.8μのシリカゲル微粉末を0.05重量%配合したものに代え、アルミニウム板の加熱温度を250℃の温度に代えた他は、同例におけると同様の方法でポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を製造した。得られたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板の諸物性を表−1に、加工性などの評価結果を表−2に示した。
【0037】
[比較例3]
実施例1に記載の例において、共重合ポリエステル樹脂を、テレフタル酸が97モル%で、共重合成分がイソフタル酸の共重合ポリエステル樹脂に代え、アルミニウム板の加熱温度を250℃の温度に代えた他は、同例におけると同様の方法でポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を製造した。得られたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板の諸物性を表−1に、加工性などの評価結果を表−2に示した。
【0038】
[比較例4]
比較例1に記載の例において、共重合ポリエステル樹脂を、ポリアミド6に代え、シリカゲル微粉末の配合量を0.5重量%に代え、カップリング剤を3−アミノプロピルトリエトキシシランに代えた他は、同例におけると同様の方法でポリアミドフィルムラミネートアルミニウム板を製造した。得られたポリアミドフィルムラミネートアルミニウム板の諸物性を表−1に、加工性などの評価結果を表−2に示した。
【0039】
【実施例】
[比較例5]比較例1に記載の例において、共重合ポリエステル樹脂を、テレフタル酸が78モル%で、共重合成分がイソフタル酸の共重合ポリエステル樹脂に代え、凝集シリカ微粉末の配合量0.05重量%とした他は、同例におけると同様の方法でポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を製造した。得られたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板の諸物性を表−1に、加工性などの評価結果を表−2に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表−1および表−2より、次のことが明らかとなる。
(1)ポリエステル樹脂フィルムのテレフタル酸成分量が80%以上で、動摩擦係数が0.15〜0.30で、かつ、剥離強度が0.30kg/20mm幅以上のポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板は、絞り加工後、かしめ性、すべり性および耐熱密着性に優れている(実施例1〜実施例4参照)。
(2)ポリエステル樹脂フィルムのテレフタル酸成分量が90%以上で、剥離強度が0.30kg/20mm幅以上であっても、動摩擦係数が0.30を越えるものは、すべり性に劣る(比較例2参照)。また、動摩擦係数が0.15未満のものは、円筒容器同士がすべり過ぎて、パーツフィーダーでの円筒容器の送りが悪い(比較例1参照)。
(3)ポリエステル樹脂フィルムのテレフタル酸成分量が80%以上で、動摩擦係数が0.30以下であっても、剥離強度が0.30kg/20mm幅以下のものは、耐熱密着性に劣る(比較例3参照)。
(4)ポリアミドフィルムラミネートアルミニウム板は、剥離強度が0.30kg/20mm幅を越えないので、動摩擦係数が0.30以下であっても、かしめ性、耐熱密着性に劣る(比較例4参照)。
(5)ポリエステル樹脂フィルムのテレフタル酸成分が80%未満のものは、剥離強度が0.30kg/20mm幅以上であっても、動摩擦係数が0.30を越え、すべり性に劣る(比較例5参照)。
【0043】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係るポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板は、動摩擦係数が0.15〜0.30の範囲で、かつ、剥離強度が0.30kg/20mm幅以上のものは、絞り加工性、かしめ性、すべり性および耐熱密着性などのすべての評価項目において優れている。
2.本発明に係るポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板は、表面についてX線光電子分光法(ESCA法)によって表面ケイ素元素を測定した際の表面ケイ素元素の存在量が3〜15原子%であると、アルミニウム板とラミネート樹脂フィルムとの界面の密着性が十分で、絞り加工、しごき加工を施したときにラミネ−ト樹脂フィルムの剥離が生じ難い。
3.本発明に係るポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板は、動摩擦係数が0.30以下とされているので、円筒容器に成形した後、振動法によるパーツフィーダーなどで整列させる際に、円筒容器を整列させ易いので、アルミニウム電解コンデンサーの外装容器のような有底状の円筒容器の生産性が向上する。
4.本発明に係るポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板は、アルミニウム板とポリエステル樹脂フィルムとの界面における密着性が経時的に低下することがないので、品質が長期間に亘って安定している。
5.本発明に係るポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板は、ポリ塩化ビニルを使用せず樹脂の分子鎖内に塩素元素を含んでいないので、焼却時に環境を汚染するという問題がない。
Claims (3)
- 少なくとも一方の表面にポリエステル樹脂フィルムがラミネートされたポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板において、このポリエステル樹脂フィルムは、テレフタル酸成分が80%以上のポリエステル樹脂より調製されたものであり、かつ、動摩擦係数が0.15〜0.30であって、上記のポリエステル樹脂フィルムがラミネートされたアルミニウム板の表面について、X線光電子分光法(ESCA法)によって表面ケイ素元素を測定した際の表面ケイ素元素の存在量が、3〜15原子%であって、ラミネートされたポリエステル樹脂ラミネートアルミニウム板を元の厚さの40%にまで圧延したあと、アルミニウム板からポリエステル樹脂フィルムを180°方向に剥離する際の剥離強度が、0.30kg/20mm幅以上であることを特徴とする、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板。
- 請求項1に記載のポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム板を、ポリエステル樹脂フィルム面が外側となるように絞り、しごき加工されたものであることを特徴とする有底状の円筒容器。
- 有底状の円筒容器が、アルミニウム電解コンデンサーの外装容器である、請求項2に記載の有底状の円筒容器。
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