まず、本発明が適用されたICカードについて、図面を参照して説明する。
本発明に係るICカード10は、図1に示すように、オーディオデータ等の記録再生装置1の外部記憶装置として用いられ、記録再生装置1に設けられたICカード10の挿脱口2より記録再生装置1に装着されて、オーディオデータ等の記録や再生が行われる。
本発明に係るICカード10は、図2及び図3に示すように、合成樹脂をモールド成型した略矩形板状のカード本体11を備える。カード本体11には、図3に示すように、4メガバイト(以下、単にMBともいう。)以上、例えば4MB、16MB、32MB、64MB、128MB、256MBといった大きな記憶容量を有するフラッシュメモリ等の半導体メモリ素子71、この半導体メモリ素子71に対しオーディオデータ等のデータの書き込みやあるいは半導体メモリ素子71に記憶されたデータの読み出しを制御する制御回路部が構成された制御回路素子72、更には、著作権保護回路素子等の複数の半導体素子が内蔵されている。
このように複数の半導体素子を内蔵し、更にこれら半導体素子を実装したプリント配線基板を内蔵したカード本体11は、使用時に加わる通常の外力等によっては曲がらない程度の機械的強度を有するように形成され、内蔵した半導体メモリ素子71等の半導体素子及びこれら半導体素子を実装したプリント配線基板の保護を図るようにしている。
本発明に係るICカード10は、既に用いられている標準使用のICカードと電気的仕様を共通としながら、物理的仕様を異にするものであり、具体的には、標準のICカードより外形状の小型化が図られたものである。即ち、半導体メモリ素子71等の半導体素子を内蔵した合成樹脂の成型体により形成されたカード本体11は、図4及び図5に示すように、短辺の長さWを略20.00mmとなし、長辺の長さLを略31mmとなし、厚さTを略1.6mmとなす略略矩形状に形成されている。
なお、標準の大きさのICカードは、基本的な使用は上述したICカードと同様であるが、その大きさのみを異にするものである。標準の大きさのICカードは、短辺の長さWを略21.45mmとなし、長辺の長さLを略50mmとなし、厚さTを略2.8mmとなす略略矩形状に形成さている。
カード本体11の一方の短辺側には、図6及び図7に示すように、記録再生装置1への挿入端となる前面11aから底面11bに亘るように、端子部12が形成されている。この端子部12は、電極15の数に対応して仕切壁13によって区画された複数の係合凹部14が設けられている。各係合凹部14は、記録再生装置1の装着部側に設けられた端子群が係合できるようにカード本体11の前面11aから底面11bに亘って開放されている。複数の電極15は、各係合凹部14の底面にそれぞれ位置して設けられ、仕切壁13によって互いに分離されている。複数の各電極15は、仕切壁13によって手指の大きさより小さい区画された係合凹部14の底面にそれぞれ設けられているので、ICカード10の取り扱い時に手指や大きな異物等が直接触れることが防止され、汚損や損傷等から確実に保護されている。
本発明に係るICカード10においては、端子部12を構成する電極15は10個設けられている。ICカード10と、このICカード10が装着される記録再生装置1との間のデータの授受は、シリアルインターフェースにより、端子部12に設けられた電極15を介して行われる。具体的に、少なくとも電極15は、少なくともシリアルプロトコルバスステート信号BSの入力端子、シリアルプロトコルデータ信号SDIOの入力端子、シリアルクロックSCLKの入力端子、電源電圧VCC端子として用いられる。
カード本体11の前面11a及び仕切壁13の開放端には、図8に示すように、カード本体11の前面11aの厚さ方向の中程から底面11bに亘って傾斜面部16が設けられている。この傾斜面部16は、ICカード10を記録再生装置1の挿脱口2に挿入する際の挿入ガイド部として機能する。また、カード本体11には、各係合凹部14の底面からカード本体11の底面11bに亘って傾斜面部17が設けられている。傾斜面部17は、記録再生装置1の装着部にICカード10が装着されたとき、装着部側の端子群によって、電極15に付着した塵埃等の異物を係合凹部14の外部に掃き出すことができるようにしている。
カード本体11の端子部12が形成された前面11a側の一方のコーナ部には、図2、図3、図4及び図6に示すように、利用者が記録再生装置1や後述する本発明に係るアダプタ装置30への挿入方向を容易に判別することができるようにするため面取り部18が設けられている。カード本体11の面取り部18が形成された側の底面11bには、前面11a及び面取り部18が設けられた側の側面11c側を開放し、カード本体11の底面11bより1段低くなった窪み部19が設けられている。この窪み部19には、面取り部18が設けられた側の側面11cと連続し、頂部が底面11bと略同じ高さの突部20が設けられている。突部20は、窪み部19に設けられることによって、その内側に記録再生装置1への挿脱口2への誤挿入防止用凹部21を構成する。誤挿入防止用凹部21には、ICカード10が正規な状態で挿脱口2に挿入されたとき、記録再生装置1の装着部に設けられた誤挿入防止突起が係合し、ICカード10の装着を許可する。
本発明に係るICカード10は、正規な状態で挿脱口2より記録再生装置1に挿入されなかったときには、面取り部18や窪み部19や誤挿入防止用凹部21が設けられたカード本体11の前面11aに記録再生装置1側の誤挿入防止突起がカード本体11の前面11aに当接することで、複数の電極15と記録再生装置1側の端子群が仕切壁13により区画された係合凹部14に係合することが規制され、各電極15が記録再生装置1側の端子群と接触することが防止され、これら電極15、更にはカード本体11に内蔵された半導体メモリ素子71等の半導体素子の保護を図るようにしている。
カード本体11の面取り部18が形成された側の底面11bには、図3、図5及び図6に示すように、窪み部19の近傍に、ICカード10が記録再生装置の装着部に装着されるとき、ICカード10の装着部からの脱落を防止するための脱落防止用凹部22が設けられている。脱落防止用凹部22は、ICカード10の記録再生装置1への挿入方向と平行な一方の側面11c及び底面11bを開放して設けられ、正規な状態でICカード10が記録再生装置1へ挿脱口2に挿入されたときに限って、装着部側の脱落防止片が係合することができる。なお、上述した誤挿入防止用凹部21を構成する突部20は、カード本体11の一方の側面11cに連続して設けられ前面11a側の先端部が略円弧状に形成されることで、ICカード10を記録再生装置1の装着部に装着するとき、脱落防止片が円滑に側面11cに乗り上げ脱落防止用凹部22に係合される。
カード本体11の面取り部18が形成された側の底面11bには、図6及び図9に示すように、カード本体11の前面11a側に、記録再生装置1の装着部側に設けられたICカード10を装着部よりイジェクトするためのイジェクト機構が係合されるイジェクト用凹部23が設けられている。イジェクト用凹部23は、ICカード10の記録再生装置1への挿入方向と平行な他方の側面11dから底面11bに亘る部分を開放して設けられ、正規な状態でICカード10が記録再生装置1へ挿脱口2に挿入されたときに限って、装着部側のイジェクト機構が係合する。
ところで、本発明に係るICカード10は、上述したように半導体メモリ素子71、制御回路素子72等をカード本体11に内蔵している。このとき、半導体メモリ素子71と制御回路子素子72は、図4及び図6に示すように、制御回路素子72を端子部12側に位置させ、ICカード10の装置への挿入方向に並列してカード本体11に内蔵されている。
なお、半導体メモリ素子71には、フラッシュメモリが用いられる。
更に、本発明に係るICカード10は、カード本体11に内蔵した半導体メモリ素子71に対し誤ってオーディオデータ等のデータの記録が行われことを防止する誤記録防止機構24が設けられている。誤記録防止機構24は、図3及び図6に示すように、カード本体11の底面11bの領域内であって、カード本体11に内蔵された制御回路素子72と、カード本体11の一の側面11dとの間に配置されている。
誤記録防止機構24は、カード本体11の底面11b内に設けられた開口部27内に切換操作子24aを臨ませている。切換操作子24aは、ICカード10の装置への挿入方向と平行な方向の図6中矢印X1方向及び矢印X2方向に移動可能とされている。誤記録防止機構24は、切換操作子24aが図6中矢印X1方向又は矢印X2方向に移動されることによって、半導体メモリ素子71へのデータの記録可否の状態が切り換え選択され、例えば、切換操作子24aが図6中矢印X1方向の一方側に移動されたときデータの記録を可能とし、図6中矢印X2方向に移動されたとき、新たなデータの記録、即ち上書きを禁止する記録禁止状態とする。
なお、切換操作子24aは、ICカード10の装置への円滑な挿脱を実現するため、開口部27からカード本体11の底面11b上に突出しないように形成される。
誤記録防止機構24は、制御回路素子72と並列するように近接して配置されることにより、誤記録防止機構24の切り換え状態が入力される制御回路素子72と誤記録防止機構24とを接続する接続ラインを短くでき、正確に誤記録防止機構24の切換情報を制御回路素子72に入力することが可能となるばかりか、制御回路素子72と誤記録防止機構24との間の接続ラインを短くでき、カード本体11の小型化が図られ、カード本体11内の半導体メモリの収納空間を大きくできる。さらに、記録再生装置や情報処理装置等のICカード10が装着される装置への挿入方向に並列して半導体メモリ素子71と制御回路素子72を配置し、切換操作子24aが装置への挿入方向と平行に移動するように誤記録防止機構24を配置しているので、カード本体11の空間を有効に利用してカード本体11内の半導体メモリ素子71の収納空間を大きくでき、その結果、大型で大容量の半導体メモリ素子71を収納させることが可能となる。
更に、本発明に係るICカード10は、カード本体11の背面11eに、オーディオデータの保存を目的とした著作権管理機能を備えたオーディオ用ICカードと画像データ、コンピュータで処理される処理データ等の他のデータを保存することを目的とした汎用のICカードとを識別するための識別用凹部25が設けられている。この識別用凹部25は、オーディオ用ICカードにのみ設けられ、汎用のICカードには設けられていない。したがって、識別用凹部25が設けられた本発明に係るICカード10は、オーディオデータの保存を目的として用いられるものである。
具体的に、この識別用凹部25は、図4、図6及び図10に示すように、カード本体11の当該ICカード10が装着される装置への挿入方向と直交する幅方向の中心P0からカード本体11の一方の側面11c側に偏倚した位置して設けられている。カード本体11の識別凹部25が設けられる一方の側面11cの側には、図4及び図6に示すように、面取り部18が設けられた側に偏倚した位置に設けられている。識別用凹部25は、他の凹部、すなわち係合凹部14、窪み部19、誤挿入防止用凹部21、脱落防止用凹部22、イジェクト用凹部23がカード本体11の底面11b側が開放されカード本体11の上面11f側が閉塞されているのに対して、カード本体11の上面11fから底面11bに亘って連続している。
なお、図示しないがカード本体11の上面11f及び/又は底面11bには、ラベル貼着部が設けられている。このラベル貼着部に貼着されるラベルには、ICカード10の機種名やICカード10に記録される記録内容等を示す表示が施される。
上述のように構成された本発明に係るICカード10を記録再生装置1に装着する状態を説明する。
本発明に係るICカード10は、図1に示すように、カード本体11の端子部12が設けられた前面11aを挿入端として、上面11fを上側にした状態で記録再生装置1の挿脱口2に挿入される。
このとき、利用者は、カード本体11の背面11eに設けられた識別用凹部25が手指に触れることにより、触感により当該ICカード10がオーディオデータ専用のものであることを容易に認識することができる。
ICカード10は、記録再生装置1への挿入端であるカード本体11の前面11a側に面取り部18や係合凹部14が設けられていることで、利用者が記録再生装置1への挿入方向を容易に識別することができるようになる。また、識別用凹部25がカード本体11の背面11eに設けられていることで、利用者は、背面と対向する前面11aが記録再生装置1への挿入端であると認識することもできる。
ICカード10は、上面11fを、凹部等を設けることなく平坦な面としているのに対し、底面11b側に係合凹部14や窪み部19、誤挿入防止用凹部21、脱落防止用凹部22、イジェクト用凹部23を設けているので、記録再生装置1への挿入時に表裏を容易に確認することができる。
ICカード10が記録再生装置1の挿脱口2より正規な状態で挿入されると、ICカード10は、誤挿入防止用凹部21に誤挿入防止突起が係合し、脱落防止用凹部22に記録再生装置1の装着部に設けられた弾性係合片等が係合することで、装着部に脱落が防止された状態で装着される。このとき、装着部に設けられた脱落防止片は、突部20によって側面11cに乗り上げてから脱落防止用凹部22に係合される。そして、ICカード10は、係合凹部14に装着部の端子群が進入しこの端子群が電極15に接触することでデータの送受信が可能な状態となる。
なお、ICカード10が正規で無い状態、例えば表裏を反転させた状態で記録再生装置1の挿脱口2に挿入されたときには、面取り部18や窪み部19や誤挿入防止用凹部21が設けられたカード本体11の前面11aに記録再生装置1側の誤挿入防止突起がカード本体11の前面11aに当たることで、記録再生装置1の装着部に装着されることが防止される。また、カード本体11の背面11eを挿入端として記録再生装置1の挿脱口2よりICカード10が挿入されたときには、誤挿入防止突起がカード本体11の背面11eに当たることで、記録再生装置1の装着部に装着されることが防止される。
記録再生装置1の装着部に装着されたICカード10は、カード本体11のイジェクト用凹部23に係合されたイジェクト機構によって挿脱口2より外部に排出される。
本発明に係るICカード10は、カード本体11の背面11eに識別用凹部25を設けているので、ICカードの種類、すなわちオーディオ用のICカードであるか汎用のICカードであるかを、更に、記録再生装置1の挿脱口2への挿入端か否かを触覚で識別することができる。識別用凹部25は、カード本体11の上面11fが閉塞され、側面11c,11d及び底面11bが開放された凹部である係合凹部14や窪み部19、誤挿入防止用凹部21、脱落防止用凹部22、イジェクト用凹部23のうちの何れか一と組み合わせることで、ICカードの種類及び挿入方向と共に挿入時の表裏も触覚で確認することができる。このように、ICカード10は、ICカードの種類、挿入方向、表裏等を触覚で識別することができることから、視覚障害者であっても容易に識別することができる。
上述したICカード10に設けられた識別凹部25は、標準の大きさのICカードとの識別を図り、オーディオ用のICカードであることを示す識別手段として用いているが、識別用凹部25は、カード本体11に内蔵した半導体メモリ素子71の記憶容量の違いを示す識別手段に用いるようにしてもよい。また、本発明に係るICカード10は、識別用凹部25とカード本体11の上面11fが閉塞され、側面11c,11d及び底面11bが開放された一又は複数の凹部とを組合せることにより、ICカード10が有するその他の機能を識別するようにすることができる。
上述したICカード10は、外部記憶装置として用いられるものであるが、本発明に係るICカード10は、例えばメモリ機能に指紋照合機能等他の機能を組み合わせたものであってもよく、また、メモリ機構を備えていない指紋照合機能等メモリ機能以外の機能のみを備えたものであってもよい。
本発明に係るICカード10は、上述した記録再生装置1の以外にも、パーソナルコンピュータ、移動通信端末装置、携帯型端末装置等の情報処理装置の情報記憶媒体として用いられる。
次に、本発明に係るICカードの他の例を説明する。
本発明に係るICカード10は、上述したように小型に形成されたものであるので、手指により把持して記録再生装置に装脱することが困難になってしまう場合がある。
そこで、本例のICカード100は、カード本体11の相対向する側面11c,11dにそれぞれ指掛け部102,103を設けたものである。これら指掛け部102,103は、図11及び図12に示すように、カード本体11の装置への挿入端となる端子部12が設けられた側とは反対側の他端側に近接した位置に設けられている。各指掛け部102,103は、カード本体11の各側面11c,11dの一部にカード本体11の厚さ方向に凹凸条部102a,103aを平行に複数設けることによって構成され、あるいは、各側面11c,11dの一部に微小な凹凸を設けて粗面化することによって構成される。
カード本体11に一部に指掛け部102,103を設けることにより、ICカード10を装置に挿脱する際、手指を指掛け部102,103に掛けることにより滑り止めが図られ、把持した手指からの脱落等を防止して確実な挿脱操作を行うことができる。
なお、指掛け部102,103は、カード本体11のいずれか一方の側面11c,11dに設けるのみであってもよい。
本例のICカード10は、指掛け部102,103を設けた以外の構成は上述したICカード10と同様の構成を有するもので、共通する部分には、図面中共通の符号を付して詳細な説明は省略する。
本発明に係るICカード10は、上述したように、図4に示すように、短辺の長さWを略20.00mmとなし、長辺の長さLを略31mmとなす小型の矩形状に形成している。このICカード10は、小型に形成され小面積とされたカード本体11の底面11bの領域内に誤記録防止機構24を配置している。小面積の底面11b内に配置される誤記録防止機構24も小型化される。即ち、半導体メモリ素子71及び制御回路素子72の収納空間、特に、半導体メモリ素子71の収納空間を大きくするようにすると、誤記録防止機構24の配置領域も小さくなり、誤記録防止機構24の小型化に伴って切換操作子24aも小型化してしまう。切換操作子24aが小型化されてしまうと、手指による操作が困難となってしまう。特に、上述したICカード10のように、切換操作子24aをカード本体11の底面11b内に設けられた開口部27内に位置するように構成したものにあっては、手指による切換操作子24aの操作が一層困難となってしまう。
次に説明する本発明に係るICカードは、上述したような問題点を解消し、誤記録防止機構、ひいては誤記録防止機構を構成する切換操作子24aの小型化を図りながら操作性の向上を図ったものである。
本例のICカード120は、前述したICカード10と同様に、誤記録防止機構124は、図13に示すように、カード本体11の底面11bの領域内であって、カード本体11に内蔵された制御回路素子72と、カード本体11の一の側面11dとの間に配置されている。この誤記録防止機構124も、カード本体11の底面11b内に設けられた開口部127内に切換操作子125を臨ませている。切換操作子125は、ICカード10の装置への挿入方向と平行な方向の図13中矢印X1方向及び矢印X2方向に移動可能とされている。誤記録防止機構24も、切換操作子125が図13中矢印X1方向又は矢印X2方向に移動されることによって、半導体メモリ素子71へのデータの記録可否の状態が切り換え選択され、例えば、切換操作子125が図13中矢印X1方向の一方側に移動されたときデータの記録を可能とし、図13中矢印X2方向に移動されたとき、新たなデータの記録、即ち上書きを禁止する記録禁止状態とする。
本例の誤記録防止機構124を構成する切換操作子125は、ICカード10の装置への円滑な挿脱を実現するため、開口部127内からカード本体11の底面11b上に突出しない高さに形成されている。
切換操作子125の移動方向の両側に移動操作治具係合用の切欠部128,129が設けられている。
なお、切換操作子125を移動操作するための移動操作治具としては、筆記具や金属製のピン等の先鋭体が用いられる。
切換操作子125に設けられる切欠部128,129は、図13及び図14に示すように切換操作子125の移動方向の両側面に三角形状の切り込みを設けることによって構成される。このような切欠部128,129を切換操作子125に設けたことにより、切換操作子125が開口部127を移動され、開口部127内のいずれか一方の側の内周面に側面を当接させた場合にであっても、図14に示すように、開口部127の内周面と切換操作子125との間に切欠部128,129によって移動操作治具挿入用の空間が維持される。この空間に、筆記具などの先端を挿入して切換操作子125を容易に移動操作することができる。
なお、本例の誤記録防止機構124は、切換操作子125が移動操作されると、図15に示すように、切換操作子125に一体的に設けられた接点131が設けられた切換接点部132がカード本体11内に配設されたプリント配線基板133を移動し、このプリント配線基板133上に設けられた図示しないスイッチング素子を切り換える。スイッチング素子が切り換えられることにより、カード本体11内の半導体メモリ素子71へのデータの記録可否の状態が切り換えられる。
なお、誤記録防止機構124が切換操作されることによって出力される半導体メモリ素子71へのデータの記録可否の切換情報は、カード本体11に内蔵された制御回路素子72に入力され、制御回路部71は入力された情報に応じて半導体メモリ素子71へのデータの記録の可否を制御する。
上述した各例では、本発明を小型のICカードに適用した例を挙げて説明したが、本発明は、小型のICカードのみならず、標準の大きさのICカードにも上述した小型のICカードと同様に適用して同様の利点を得ることができる。
ところで、上述したような標準のICカードと基本的な構成を一致しながら小型化を図った本発明に係るICカードは、専ら標準の大きさを有するICカードのみを装着可能とされたオーディオデータの記録及び/又は再生装置、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、ディジタルビデオカメラ等の装置に装着することができない。
そこで、本発明は、上述した小型のICカードを専ら標準の大きさを有するICカードのみを装着可能とされた装置への装着を可能とするアダプタ装置を提供しようとするものである。
小型のICカードを標準仕様のICカードと互換性をもって、標準使用のICカード用の装置に対し装着可能とするアダプタ装置30は、図16に示すように、オーディオデータの記録及び/又は再生装置、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、ディジタルビデオカメラ等のホスト機器1の外部記憶装置として用いられる半導体メモリを内蔵した前述した図2〜図7に示すように構成された小型のICカード10が装着された状態で、ホスト機器201に設けられた挿脱口202を介してホスト機器201内の装着部に装着される。このアダプタ装置30は、上述した標準の使用により構成されたICカードと略同じ大きさに形成されており、標準の仕様のICカードに対応した装着部を有するホスト機器201に、本発明が適用された上述したような小型のICカード10を装着することを可能とするものである。
このアダプタ装置30は、図17及び図18に示すように、装置本体を構成する筐体31を有し、この筐体31内にICカード10が装着される。
本発明が適用された小型のICカード10を標準のサイズのICカードと外形形状をほぼ等しくするアダプタ装置30は、図17及び図18に示すように、上述したように標準のICカードと略同じ大きさで、略矩形状に形成された筐体31を備え、この筐体31は、標準のICカードと略同じ大きさに形成された下ケース32と、この下ケース32に取り付けられ、下ケース32のホスト機器やアダプタ装置30への挿入側の前面31aに取り付けられる上ケース33と、上ケース33と共に下ケース32に取り付けられ、ICカード10を保持するカバー34とを有する。筐体31は、内部に、ICカード10が装着される装着部35を構成している。
下ケース32は、従来のICカードと略同じ大きさに合成樹脂を射出成形することにより形成され、筐体31の前面31a側には、図19に示すように、剛性を有するプリント配線基板よりなる中継基板36が配設されている。この中継基板36は、略矩形状に形成されており、長辺の一方の側、すなわち筐体31の前面31a側には、ホスト機器1の装着部に設けられた端子群が接触される第1の接点37がICカード10の電極15の数に対応して複数、具体的には10個一列に並んで設けられている。また、中継基板36の長辺の他方には、ICカード10の電極15と電気的接続を図るための端子板が半田付け等により電気的に接続される第2の接点38が第1の接点37の数に対応して複数設けられている。このような中継基板36は、相対向する短辺のそれぞれに位置決め用凹部40,40が設けられており、これら位置決め用凹部40,40が、下ケース32に設けられた位置決め突部41,41に係合されることにより、下ケース32に位置決めされた状態で下ケース32の短辺方向に亘って取り付けられる。
下ケース32には、この中継基板36に隣り合って、装着部35に装着されたICカード10の端子部12と中継基板36とを電気的に接続するための端子板42が取り付けられる。この端子板42は、金属板等導電性を有するものであり、全体が略矩形状に形成されている。端子板42には、中継基板36側に、中継基板36の第2の接点38に接続される端子43が第1及び第2の接点37,38の数に対応して複数設けられている。端子43は、中継基板36の第2の接点38に半田付け等により電気的に接続される。また、端子板42は、装着部35側に、ICカード10の端子部12を構成する電極15に圧接される接続端子44がICカード10の電極15に応じて設けられている。接続端子44は、弾性片により構成されており、装着部35側の延出されることで、装着部35にICカード10が装着されたとき、ICカード10の電極15に圧接され、電極15と電気的に接続されると共にICカード10を装着部35に保持するようにしている。
このような端子板42は、一方の短辺に位置決め孔45,45が設けられ、他方の短辺に位置決め凹部46が形成されている。中継基板36は、図19に示すように、下ケース32に設けられた位置決め突起47,47が位置決め孔45,45に挿通され、位置決め凹部46に下ケース32に設けられた位置決め突部49が係合され、位置決め突起47,47や位置決め突部49を超音波溶着等することにより、下ケース32に位置決めされた状態で下ケース32の短辺方向に亘って取り付けられる。
また、下ケース32には、端子板42に隣り合ってICカード10が装着される装着部35が設けられている。この装着部35には、ICカード10の誤挿入を防止するための誤挿入防止突起51が設けられている。この誤挿入防止突起51は、ICカード10が正規な状態で挿入されたとき、ICカード10の前面11aに設けられている誤挿入防止用凹部21に係合される。そして、誤挿入防止突起51は、ICカード10が正規でない状態、例えば裏返しで挿入されたときには、ICカード10の前面11aに突き当たり誤挿入防止用凹部19に係合しない。これにより、誤挿入防止突起51は、ICカード10が装着部35に装着されないようにしている。
以上のような下ケース32の前方には、上述した中継基板36や端子板42が所定位置に取り付けられた後、上ケース33が超音波溶着等により取り付けられる。すなわち、上ケース33は、下ケース32に取り付けられたとき、中継基板36や端子板42を収納する部品収納部を構成する。また、下ケース32には、上ケース33に連続するようにしてカバー34が取り付けられる。このカバー34は、下ケース32に取り付けられたとき、下ケース32と共にICカード10が装着される装着部35を構成する。また、これにより、筐体31には、前面31aと対向する背面側に、装着部35にICカード10を挿入するための挿脱口52が構成される。
以上のように、下ケース32に上ケース33とカバー34が取り付けられることで構成される筐体31には、前面31a側に、図18及び図19に示すように、アダプタ装置30がホスト機器1とデータの送受信を行うための端子部53が設けられている。この端子部53は、上述した中継基板36に設けられた第1の接点37を仕切る複数の仕切壁54を有し、これら仕切壁54は、ホスト機器1の装着部側に設けられた端子群が係合される複数の係合凹部55を構成している。これら係合凹部55は、ホスト機器1の装着部側に設けられた端子群が係合できるように筐体31の前面31a及び底面31b側が開放されている。第1の接点37は、各係合凹部55の底面に設けられており、仕切壁54によって分離されている。第1の接点37は、係合凹部55の底面に設けられることで、係合凹部55により手指等が直接触れることが防止され保護されている。
また、筐体31の端子部53が形成された前面31a側の一方のコーナ部には、利用者がアダプタ装置30をホスト機器1への挿入方向を容易に判別することができるようにするため面取り部56が設けられている。筐体31の面取り部56が形成された側の底面31bには、前面31a及び面取り部56が設けられた側の側面31c側を開放し、筐体31の底面31bより1段低くなった窪み部57が設けられている。この窪み部57は、アダプタ装置30のホスト機器1への誤挿入防止溝として機能するものであり、アダプタ装置30がホスト機器1の装着部に正規な状態で挿入されたときに限って、ホスト機器1側の装着部に設けられた誤挿入防止突起が係合する。すなわち、窪み部57によって構成された誤挿入防止溝は、アダプタ装置30がホスト機器1の装着部に正規でない状態、例えば裏返しに挿入されたとき、筐体31の前面31aに突き当たることで、ホスト機器1の装着部に装着されないようにし、ホスト機器1の装着部に設けられた端子群が係合凹部55に係合しないようにし、第1の接点37が損傷しないようにしている。
また、筐体31の面取り部56が形成された側の底面31bには、窪み部57の近傍に、ICカード10がホスト機器の装着部に装着されとき、ICカード10の装着部からの脱落を防止するための脱落防止用凹部58が設けられている。脱落防止用凹部58は、ICカード10のホスト機器への挿入方向と平行な一方の側面31c及び底面31bを開放して設けられ、正規な状態でICカード10がホスト機器へ挿入口に挿入されたときに限って、ホスト機器1の装着部側の脱落防止片が係合することができるようになっている。
また、筐体31の側面31cと対向する側の側面31d側の底面31bには、中程に、ホスト機器の装着部側に設けられたICカード10を装着部よりイジェクトするためのイジェクト機構が係合されるイジェクト用凹部59が設けられている。イジェクト用凹部59は、ICカード10のホスト機器への挿入方向と平行な他方の側面31d及び底面31bを開放して設けられ、正規な状態でICカード10がホスト機器へ挿入口に挿入されたときに限って、ホスト機器1の装着部側のイジェクト機構が係合することができるようになっている。
ところで、上述した装着部35は、ICカード10全体を収納できる大きさに形成されている。そこで、ICカード10を挿脱するための挿脱口52を構成する下ケース32とカバー34の背面側には、両コーナ部に、装着部35に装着されたICカード10の取り出しを行うことができるように、装着部35に装着されたICカード10の背面側両コーナ部を外部に臨ませる切欠部60,60が設けられている。これにより、利用者は、切欠部60,60より外部に臨まされいるICカード10の外面側を把持することによって、ICカード10をアダプタ装置30より引き出すことができる。なお、切欠部60,60は、いずれか一方のコーナ部に設けられるだけでもよい。
また、上述した装着部35を構成するカバー34は、板金により形成されている。したがって、ICカード10の挿脱を行うとき、ICカード10と板金で形成されたカバー34とが接触し、ICカード10の表面に傷が付いてしまうことになる。そこで、カバー34には、図20に示すように、少なくとも装着部35側の裏面の挿脱口52側に、保護コーティングとしてフッ素コーティング61が施されている。また、カバー34の外装を構成する表面側にも、図21に示すように、外装の一部を構成するようにフッ素コーティング62が全面に施されている。更には、挿脱口52の周囲には、フッ素コーティング61,62が施されていることで、カバー34等の端部に設けられるバリによって利用者が指等が傷つくことを防止することができる。なお、フッ素コーティング62が設けられる領域は、少なくともカバー34の表面背面側、すなわち挿脱口52の周辺に設けられればよく、その他の領域は、外装との関係で適宜変更が可能である。
次に、アダプタ装置30へのICカード10の挿脱方法について説明すると、図17及び図19に示すように、ICカード10は、カード本体11の端子部12が設けられた前面11aを挿入端として、上面11fを上側にした状態でアダプタ装置30の挿脱口52に挿入される。そして、ICカード10がアダプタ装置30の挿脱口52より正規な状態で挿入されると、ICカード10は、誤挿入防止用凹部19に誤挿入防止突起51が係合する。また、装着部35に臨まされている接続端子44は、ICカード10の端子部53を構成する係合凹部55に進入し、第1の接点37に圧接され、アダプタ装置30とICカード10とは、電気的に接続された状態となる。すなわち、ICカード10の電極15とアダプタ装置30の第1の接点37とは、中継基板36と端子板42を介して電気的に接続されることになる。アダプタ装置30に正規にICカード10が挿入された状態では、アダプタ装置30は、ICカード10の全体を装着部35に収納した状態となり、既存のICカードと同じ大きさとなり、ホスト機器1への装着部への装着が可能な状態になる。
なお、ICカード10が底面11bを上向きとした裏返しの状態や背面を挿入側とした逆向きの状態でアダプタ装置30に挿入されたときには、装着部35に設けられた誤挿入防止突起51は前面31aや背面に突き当たることになり、装着部35に装着されない。これによって、ICカード10は、背面側が挿脱口52より突出した状態となり、利用者は、直ぐさまICカード10の挿入方向を誤ったことを知ることができる。
また、装着部35に装着されたICカード10は、挿脱口52の近傍に設けられている切欠部60,60を把持して、アダプタ装置30の装着部35より引き出すことができる。かくして、ICカード10は、アダプタ装置30に対して挿脱されることになるが、カバー34の裏面には、フッ素コーティング61が施されていることから、合成樹脂でカード本体11が形成されているICカード10の表面が傷つくことを防止することができる。
次に、ICカード10が装着部35に装着されたアダプタ装置30のホスト機器1への挿脱方法について、図16及び図19を参照して説明すると、アダプタ装置30は、筐体31の端子部53が設けられた前面31aを挿入端として、上面31eを上側にした状態でホスト機器1の挿脱口2に挿入される。そして、アダプタ装置30が挿脱口52より正規な状態で挿入されると、アダプタ装置30は、窪み部57により構成されている誤挿入防止溝にホスト機器1の装着部に設けられている誤挿入防止突起が係合する。また、ホスト機器1の装着部に設けられた弾性片よりなる脱落防止片は、脱落防止用凹部58に係合する。更に、端子部53を構成する第1の接点37には、係合凹部55よりホスト機器1の装着部の端子群が進入することで端子群が圧接されアダプタ装置30と電気的に接続されているICカード10とデータの送受信が可能な状態となる。
このように利用者がアダプタ装置30をホスト機器1に挿入するとき、ホスト機器1への挿入端である筐体31の前面31a側には、面取り部56が設けられていることで、挿入方向を容易に識別することができる。また、アダプタ装置30は、上面31eには何も凹部が設けられておらず、底面31b側に係合凹部55、窪み部57、脱落防止用凹部58、イジェクト用凹部59が設けられていることで、ホスト機器1への挿入時に表裏を確認することができる。
なお、アダプタ装置30が底面31bを上向きとした裏返しの状態や背面を挿入側とした逆向きの状態でホスト機器1に挿入されたときには、ホスト機器1の装着部に設けられた誤挿入防止突起は前面31aや背面に突き当たることになり、装着部に装着されない。これによって、利用者は、直ぐさまICカード10の挿入方向を誤ったことを知ることができる。
また、ホスト機器1に装着されたアダプタ装置30は、筐体31のイジェクト用凹部59に係合されたイジェクト機構によって挿脱口2より外部に排出される。
以上のようなアダプタ装置30は、ICカード10の挿入方向がICカード10のホスト機器への挿入方向や既存のICカードのホスト機器への挿入方向と同じであり、利用者は、ICカード10のアダプタ装置30への挿入方向を容易に覚えることができる。また、アダプタ装置30は、装着部35に、ICカード10の誤挿入防止用凹部21に係合される誤挿入防止突起51が設けられていることから、ICカード10のアダプタ装置30への誤挿入を防止することができる。すなわち、ICカード10がアダプタ装置30に誤挿入されたときには、ICカード10の外面側が挿脱口52より突出することで、利用者は、ICカード10の挿入が誤挿入であることを容易に認識することができる。また、ICカード10が装着部35に装着されたときには、ICカード10は、全体がアダプタ装置30に収納されることになるが、筐体31には、挿脱口52の近傍に切欠部60,60が設けられていることから、容易にICカード10を装着部35より取り出すことができる。更に、装着部35を構成するカバー34は、装着部35側の裏面にフッ素コーティング61がされていることから、ICカード10の挿脱の繰り返しによっても、ICカード10の表面に傷が付くことを防止することができる。
以上、外部記憶装置として用いられるICカード10を例に取り説明したが、ICカード10は、例えばメモリ機能に指紋照合機能等他の機能を組み合わせたICカードであってもよく、また、メモリ機構を備えていない指紋照合機能等メモリ機能以外の機能のみを備えたICカードであってもよい。