JP4759938B2 - アニリンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アニリンの製造方法に関する。詳しくはアニリンを製造する際に、生成する軽沸点物を安定的に分離し、かつ軽沸点物に同伴して損失するアニリンを少なくするアニリンを製造する方法に関する。
アニリンは通常、触媒の存在下にニトロベンゼンを水素で還元して製造される。反応生成物を冷却し、油水分離すると、アニリンを含む水溶液と水を含むアニリン溶液が得られる。アニリンを含む水溶液から水を含むアニリン溶液を回収し、水を含むアニリン溶液は脱水塔に供給して、脱水し、脱水して得られた粗アニリンはアニリン蒸留塔に供給して蒸留し、塔頂から製品アニリンを得ている。脱水塔の留出ガスを冷却、油水分離し、軽沸点物を含む油層は廃棄している(非特許文献1参照。)。
しかしながら、このような方法では、軽沸点物に同伴して損失するアニリンが多く好ましくない。また、脱水塔の留出ガスを冷却、油水分離して得られる油層中の軽沸点物の濃度が高く(油層中の軽沸点物濃度:約43重量%)、油水分離の際の水層と油層の界面が安定せず、時には水層と油層が逆転するという不具合を起こし、安定した運転ができなくなることがある。
「アニリンおよび誘導体」(ANILINE AND DERIVATIVES)、Report No.76C、1993年、SRIインターナショナル発行(図5.1)
本発明の目的は、アニリンを製造する際に生成する軽沸点物を安定的に分離し、かつ軽沸点物に同伴して損失するアニリンを少なくするアニリンを製造する方法を提供することにある。
本発明者らはかかる課題を解決するために、ニトロベンゼンを水素で還元して得られる反応生成物からアニリンを蒸留分離してアニリンを製造する際の軽沸点物の分離方法について鋭意検討した結果、水を含むアニリン溶液を脱水塔で蒸留し、脱水塔の留出ガスを冷却、油水分離し、油層を軽沸点分離塔で蒸留し、塔頂から軽沸点物を分離し、塔底からアニリンを回収することによって、アニリンの損失を少なく、安定的に軽沸点物を分離できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ニトロベンゼンを水素で還元して得られる水を含むアニリン溶液を脱水塔で蒸留して脱水し、脱水塔の塔底から得られる粗アニリンをアニリン蒸留塔で蒸留してアニリンを製造する方法において、脱水塔の留出ガスを冷却、油水分離し、油層を軽沸点物分離塔で蒸留し、塔頂から軽沸点物を分離し、塔底からアニリンを回収することを特徴とするアニリンの製造方法。この方法によって軽沸点物に同伴して損失するアニリンを少なくすることができる。
また、脱水塔の留出ガスを20〜50℃に冷却し、油水分離して得られる油層の軽沸点物の濃度を10〜15重量%とすることを特徴とする。このことによって油水分離を安定して行うことが可能になる。
更に、 脱水塔の塔頂圧力を13KPaとした時、その塔底温度を125〜140℃、塔頂温度を85〜110℃で蒸留することを特徴とする。このことによって脱水塔の塔頂から留出するアニリンを少なくすることができ、その後のアニリンを回収するための負荷が少なくなる。
本発明によって、アニリンを製造する際に生成する軽沸点物を安定的に分離し、かつ軽沸点物に同伴して損失するアニリンを少なくすることができる。
図1は従来のアニリンの製造方法の一例を示す概略PFD(プロセスフローダイアグラム)である。
ニトロベンゼン1と水素ガス2とを触媒を有する反応器11に供給して反応させる。反応形式は限定されるものではなく、液相反応、気相反応のいずれでもよく、気相反応としては、流動層反応、多管式充填層反応が挙げられる。図1では多管式充填層反応の例を示している。
反応生成物は冷却器25で冷却し、気液分離槽15で排ガス4を分離し、凝縮液は油水分離槽16で水を含むアニリン溶液とアニリンを含む水溶液に分離し、水を含むアニリン溶液は粗アニリン貯槽17に貯蔵し、アニリンを含む水溶液はアニリン水溶液貯槽18に貯蔵している。
粗アニリン貯槽17の水を含むアニリン溶液は脱水塔12に供給して蒸留し、塔頂から軽沸点物と水を留出し、軽沸分離槽19で油水分離し、油層の一部を脱水塔に還流すると共に残りを軽沸廃油5として抜出し、廃棄処理している。アニリンを含む水層はアニリン水溶液貯槽に回収している。
アニリンを含む水溶液は、アニリン水溶液貯槽からアニリン分離塔14に供給し、蒸気8を吹き込んでアニリンをストリップし、塔頂から油水分離槽に回収し、塔底から排水7を抜き出し、廃棄処理している。
アニリンを含む水溶液からアニリンを分離する方法は、蒸気を吹き込んでストリップする方法以外に、単に蒸留して分離する方法、溶媒で抽出する方法でもよい。
脱水塔12の塔底液はアニリン蒸留塔13に供給し、蒸留して、塔頂から製品アニリン3を得、塔底から高沸廃油6を抜出している。
この従来法では、脱水塔の留出ガスを冷却、油水分離して得られる油層中の軽沸点物の濃度は43重量%程度である。上記したとおり、油層中の軽沸点物濃度が高くなると、油水分離の際の水層と油層の界面が安定せず、時には水層と油層が逆転するという不具合を起こし、安定した運転ができなくなることがある。
図2に本発明における脱水塔および軽沸点物分離塔まわりの概略PFDを示す。本発明において、これ以外の部分は従来法に準じて行われる。
本発明において、水を含むアニリン溶液31を脱水塔12に供給し、脱水塔の塔頂圧力を13KPaとした時、その塔底温度を約125〜140℃、好ましくは約130〜135℃、塔頂温度を約85〜110℃、好ましくは約90〜105℃で蒸留する。脱水塔の蒸留は、通常、その塔頂圧力を約10〜15KPa、好ましくは約12〜14KPaとする減圧蒸留で行われるが、これに限定されるものではない。なお、上記の塔底温度および塔頂温度は、圧力によって変わり、異なる圧力で蒸留する場合は、その圧力に見合った温度で行われる。
塔底から脱水され、軽沸点物が除かれた粗アニリン32が抜出される。この粗アニリンはアニリン蒸留塔で蒸留して塔底から高沸点物を分離し、塔頂から製品アニリンを得る。
脱水塔の留出ガスは冷却器26で約20〜50℃、好ましくは約25〜35℃に冷却され、凝縮液は油水分離槽19で油水分離される。油層中の軽沸点物濃度は約10〜15重量%にする。
凝縮液(水層、油層)の温度、油層の組成(軽沸点物濃度)によって、水層と油層の密度差が変化し、水層と油層の界面が安定せず、時には水層と油層が逆転するという不具合を起こすことがあるが、留出ガスを約20〜50℃に冷却し、油層中の軽沸点物濃度を約10〜15重量%とすることによって、水層と油層の界面が安定し、安定した油水分離が行うことができる。
油層中の軽沸点物濃度を約10〜15重量%とするには、上記脱水塔の塔底および塔頂の温度範囲内で温度を、および/または塔頂温度を変えて行う。温度を上げるとアニリンが多く留出し、油層中の軽沸点物濃度が低下する。
なお、上記温度を超えて上げると、油層中の軽沸点物濃度に影響するだけでなく、油層中のアニリン濃度が高くなる分、下記する軽沸点物分離塔の負荷が高くなり好ましくない。
分離した水層33はアニリンを含むのでアニリンを含む水溶液に回収される。油層は一部を脱水塔に還流すると共に、軽沸点物分離塔35に供給して蒸留し、塔底からアニリンを回収する。回収したアニリンには軽沸点物を含むので、通常、脱水塔に還流されるが、これに限られるものではない。
軽沸点物分離塔からの留出ガスは冷却器37で約20〜50℃に冷却され、凝縮液は油水分離槽36で油水分離される。
分離した水層34はアニリンを含むのでアニリンを含む水溶液に回収される。油層は一部を軽沸点物分離塔に還流すると共に残りを軽沸廃油5として抜き出し、廃棄処分される。
本発明の方法によって、アニリンを製造する際に生成する軽沸点物を安定的に分離し、かつ軽沸点物に同伴して損失するアニリンを少なくすることができる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
ニトロベンゼンを水素で還元して得られる反応生成物を油水分離して得られる水を含むアニリン溶液を図2に示すPFDに基づく装置で蒸留し、軽沸点物を分離すると共にアニリンを回収した。
塔径が2000mmφで理論段数が15段の脱水塔12に含水アニリンを平均13.7t/hrで供給し、0.6MPaGの蒸気をリボイラー21に供給して加熱し、塔頂圧力が13KPa、塔底温度が約132℃、塔頂温度が約100℃で減圧蒸留を行った。
塔底から粗アニリンを抜取り、アニリン蒸留塔で蒸留し、製品アニリンを平均12.8t/hrで得た。塔頂からの留出ガスを冷却器26で35℃に冷却し、凝縮液を油水分離槽19で油水分離した。油層中の軽沸点物濃度は13重量%であった。油水分離の際の水層と油層の界面は安定しており、油水分離は確実に行われた。分離した水層はアニリン分離塔に供給するアニリンを含む水溶液に回収した。油層は一部を脱水塔に還流し、残りを軽沸点物分離塔35で蒸留し、塔底からアニリンを回収し、脱水塔に還流した。
塔頂からの留出ガスを冷却器37で35℃に冷却し、凝縮液を油水分離槽36で油水分離した。分離した水層はアニリン分離塔に供給するアニリンを含む水溶液に回収した。油層は一部を軽沸点物分離塔に還流し、残りを軽沸廃油として平均8.0kg/hr(アニリン濃度:11重量%)で取り出し、廃棄処理した。
軽沸廃油発生量:0.6kg/t−製品アニリン
アニリン損失(軽沸点物に同伴する分):0.07kg/t−製品アニリン
非特許文献1の従来法では、製品アニリンを平均11.5t/hrで取得し、軽沸廃油を平均34kg/hr(アニリン濃度:47重量%)で廃棄しており、軽沸廃油発生量は3.0kg/t−製品アニリン、アニリン損失(軽沸点物に同伴する分)は1.4kg/t−製品アニリンとなっている。
本発明により、従来法に比べて軽沸廃油の発生量を5分の1に、軽沸点物に同伴して損失するアニリンを20分の1に低減することができる。
従来のアニリンの製造方法の一例を示す概略PFDである。 本発明の脱水塔および軽沸分離塔まわりの概略PFDである。
符号の説明
1 ニトロベンゼン
2 水素ガス
3 製品アニリン
4 排ガス
5 軽沸廃油
6 高沸廃油
7 排水
8 蒸気
11 反応器
12 脱水塔
13 アニリン蒸留塔
14 アニリン分離塔
15 気液分離槽
16、36 油水分離槽
17 粗アニリン貯槽
18 アニリン水溶液貯槽
19 軽沸分離槽
21、22、38 リボイラー
23 加熱器
25、26、27、28、29、30、37 冷却器
31 水を含むアニリン溶液
33、34 アニリンを含む水溶液
35 軽沸点物分離塔

Claims (2)

  1. ニトロベンゼンを水素で還元して得られる水を含むアニリン溶液を脱水塔で蒸留して脱水し、脱水塔の塔底から得られる粗アニリンをアニリン蒸留塔で蒸留してアニリンを製造する方法において、脱水塔の留出ガスを20〜50℃に冷却し、油水分離して得られる油層中の軽沸点物の濃度を10〜15重量%にし、油層を軽沸点物分離塔で蒸留し、塔頂から軽沸点物を分離し、塔底からアニリンを回収することを特徴とするアニリンの製造方法。
  2. 脱水塔の塔頂圧力を13KPaとした時、その塔底温度を125〜140℃、塔頂温度を85〜110℃で蒸留する請求項1記載のアニリンの製造方法。
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