JP4755735B2 - 偏光板保護フィルム用基材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板保護フィルム用基材に関するものであり、詳しくは、液晶表示板の偏光板に粘着剤等を介して貼着することにより、偏光板の表面を保護するために使用される偏光板保護フィルム用基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、液晶表示板は、2枚の基板の間に液晶を封入した液晶セルの両面に偏光板を積層することによって作製される。そして、流通過程やコンピューター、ワープロ、テレビ等の各種表示機器の組み立て工程における偏光板の表面の擦傷防止や塵芥付着防止のため、偏光板の表面には保護フィルムが貼着される。保護フィルムは、偏光板の保護の役目を果たした後においては不要物として剥離除去される。通常、保護フィルムの剥離除去は、保護フィルムにゴム系粘着テープを押し付けて当該粘着テープを持ち上げる方法により行われる。
従来、上記の保護フィルムとして、ポリエチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が使用されている。しかしながら、これらの保護フィルムは、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う検査には支障を来すことがあるため、検査時に一旦剥離し、検査終了後に再度貼付しなければならない欠点がある。
【0003】
特開平4−30120号公報には、光学的評価を伴う検査時に剥離する必要がない保護フィルムとして、光等方性基材フィルムに光等方性粘着性樹脂層を積層した保護フィルムが提案されている。しかしながら、この保護フィルムは、基材フィルムとして、流延法により製膜され、ほとんど配向しておらずに非晶質に近い状態のフィルムを使用しているため、耐薬品性、耐擦傷性などの点で十分とは言えない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、帯電防止性、耐薬品性、耐擦傷性、取扱性等に優れ、その結果、検査を容易にすることができ、かつ、液晶表示板への粘着剤、ゴミ等の付着防止に優れる等の特性を有し、偏光板の保護の役目を果たした後に不要物として剥離除去される際、剥離を容易に行うことができ、剥離帯電を抑制する効果があり、剥離帯電により液晶表示板と接続されている回路の破損等が防止できる偏光板保護フィルム用基材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定のフィルムによれば、上記課題が容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の表面に、カチオン性単量体単位、疎水性単量体単位およびオルガノポリシロキサン単位からなるカチオン性共重合体から形成された塗布層が設けられた積層フィルムからなり、塗布層表面の表面抵抗が1×1011Ω以下であり、塗布層表面の日東電工社製No.502テープによる粘着力(P2)が3000mN/cm以下であり、塗布層表面のニチバン社製セロテープ(登録商標)による粘着力(P1)と日東電工社製No.502テープによる粘着力(P2)との差(P1−P2)が100mN/cm以上であることを特徴とする偏光板保護フィルム用基材二軸配向ポリエステルフィルムの一方の表面に、カチオン性単量体単位、疎水性単量体単に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の偏光板保護フィルム用基材は、液晶表示板の偏光板の表面に粘着剤等を介して貼着し、使用され、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の表面に塗布層が設けられた積層フィルムからなる。そして、本発明の好ましい態様においては、他方の表面に粘着層が設けられ、粘着層の表面に離型フィルムが積層される。本発明の偏光板保護フィルム用基材は、一般的には、塗布層形成工程、粘着層形成工程、離型フィルム積層工程を順次に経て製造される。
本発明において、二軸配向ポリエステルフィルム(以下、フィルムと略記する)とは、いわゆる押出法に従い押出口金から溶融押出しされたシートを延伸して配向させたフィルムである。
【0007】
上記のフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるポリエステルを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
【0008】
上記のポリエステルは、第三成分を含有した共重合体であってもよい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。これらのジカルボン酸成分およびグリコール成分は、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、その取扱性を考慮した場合、透明性を損なわない条件でフィルムに粒子を含有させることが好ましい。用いる粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、カオリン、タルク、ゼオライト、フッ化リチウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、特公昭59−5216号公報に記載されているような、耐熱性高分子微粉体などが挙げられる。これらの粒子は、2種以上を併用してもよい。粒子の平均粒径は、通常0.02〜2μm、好ましくは0.05〜1.5μm、さらに好ましくは0.05〜1μmである。粒子の含有量は、通常0.01〜2重量%、好ましくは0.02〜1重量%である。
【0009】
フィルムに粒子を含有させる方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステル製造工程の任意の段階で粒子を添加することができる。特に、エステル化の段階またはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階において、エチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付混練押出機を使用し、エチレングリコールまたは水に粒子を分散させたスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、混練押出機を使用し、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法なども採用し得る。
【0010】
フィルムの製造は、押出法に従い押出口金から溶融押出しされたシートを縦および横方向の二軸方向に延伸して配向させる方法によって行われる。
押出法においては、ポリエステルを押出口金から溶融押出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法または液体塗布密着法が好ましく採用される。静電印加密着法とは、通常、シートの上面側にシートの流れと直行する方向に線状電極を張架し、該電極に約5〜10kVの直流電圧を印加することにより、シートに静電荷を付与してシートとドラムとの密着性を向上させる方法である。また、液体塗布密着法とは、回転冷却ドラム表面の全体または一部(例えばシート両端部と接触する部分のみ)に液体を均一に塗布することにより、ドラムとシートとの密着性を向上させる方法である。本発明においては必要に応じ両者を併用してもよい。
【0011】
フィルムの二軸方向の延伸配向方法については特に限定されるものではないが、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が採用される。同時二軸延伸法としては、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で通常4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜20倍である。そして、引き続き、通常170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。逐次二軸延伸法としては、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は、通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸を行う。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜115℃であり、延伸倍率は、通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
【0012】
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、必要に応じて熱処理を行う前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。
本発明において、フィルム厚さは特に限定されるものではないが、通常5〜150μm、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは25〜75μmである。フィルムの厚さが5μm未満の場合は、液晶表示板の表面保護性が低下する恐れがあり、耐摩耗性層形成工程や粘着層形成工程における取扱性なども悪くなる傾向がある。また、フィルムの厚さが150μmを超える場合は、可撓性の低下、全光線透過率の低下により、保護フィルムとしての取り扱い作業性、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う検査を行う場合に支障を来す場合がある。
【0013】
本発明のフィルムを構成する塗布層は、例えば、カチオン性共重合体を水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の溶媒に溶解した状態で二軸配向ポリエステルフィルムの一方の表面に塗工され、その後、乾燥したものである。塗工に関しては、特に制限はないが、通常は、エアーナイフコート、ブレードコート、バーコート、グラビアコート、カーテンコート、ロールコート等の塗工機械で行われる。塗布層の厚みは、通常0.01μm〜0.3μm、好ましくは0.05μm〜0.2μmの範囲である。塗布層の厚みが0.01μm未満の場合は、アクリル系粘着剤との粘着力が上昇する傾向があり、塗布量が0.3μmを超える場合には、塗布層に目視で観察できる干渉縞が発生してくるので、偏光板や液晶表示板の検査に支障をきたす場合がある。なお、塗工に際して、カチオン性共重合体の性能に悪影響を及ぼさない限り、必要に応じて、他の添加剤、例えば、モノマー、樹脂、架橋剤、顔料等を適宜混合して用いることができる。
【0014】
ここで言うカチオン性共重合体は主成分として、カチオン性単量体単位、疎水性単量体単位およびオルガノポリシロキサン単位からなる。
本発明に使用できるカチオン性単量体単位としては、例えば、その単位内に第4級アンモニウム塩基を含有するものである。中でも、下記一般式(a)で表される単量体単位を使用することにより、より優れた帯電防止性、防汚性を付与することができる。
【0015】
【化1】
【0016】
(上記式中、AはOまたはNHを表し、R2は水素またはCH3を表し、R3は炭素数2〜4のアルキレン基、または−CH2CH(OH)CH2−を表し、R4、R5、およびR6は、同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を表し、Xは、ハロゲンもしくはアルキル硫酸イオンを表す)
【0017】
上記のカチオン性単量体単位は、具体的には、例えば(メタ)アクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等の(メタ)アクリル系単量体単位、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の(メタ)アクリルアミド系カチオン性単量体単位が挙げられる。これらは、その該当する単量体を重合してもよいし、その前駆体である第3級アミノ基を有する単量体、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドをまず重合した後、メチルクロライド等の変性剤でカチオン化してもよい。
【0018】
カチオン性単量体単位は、共重合体中の通常15〜60重量%を占めればよい。15重量%未満の場合は、帯電防止性が不十分となる傾向がある。また、60重量%を超える場合は、ブロッキングが起こりやすくなる傾向がある。
本発明で使用できる疎水性単量体単位は、各種のものを使用することができる。疎水性単量体単位は具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、等のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられる。疎水性単量体単位は、共重合体中の30〜84.9重量%を有する。30重量%未満の場合は、防汚性が不十分となり、84.9重量%を超える場合は、相対的に帯電防止性能が低下する。
【0019】
本発明で使用できるオルガノポリシロキサン単位は、例えば、下記一般式(b)で表されるものである。
【0020】
【化2】
【0021】
(上記式中、R1は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を表し、nは、5以上の整数を表す)
ここで、nが5未満では、得られる共重合体に十分な滑性を付与することが困難となる傾向がある。また、オルガノポリシロキサン単位のカチオン性共重合体に含まれる割合は、通常0.1〜20重量%である。0.1重量%未満であると、防汚性が不十分となる傾向があり、20重量%を超えても防汚性はこれ以上良くなることが期待できない。
【0022】
カチオン性共重合体中のオルガノポリシロキサン単位は、具体的には下記一般式(イ)、(ロ)または(ハ)で示される前駆体を用いて共重合体中に組み込むのが好適である。下記の一般式において示した前駆体は、反応性基Dを用いて、これらを共重合体中に組み込むことができる。
【0023】
【化3】
【0024】
(上記式中、Dは、ビニル基、アクリロイルオキシアルキル基およびメタクリロイルオキシアルキル基からなる群から選ばれたラジカル重合性基、またはグリシドキシアルキル基等のエポキシ基またはアミノアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を表し、nは5以上の整数を表す)
【0025】
【化4】
【0026】
(上記式中、Dは、ビニル基、アクリロイルオキシアルキル基およびメタクリロイルオキシアルキル基からなる群から選ばれたラジカル重合性基、またはグリシドキシプロピル等のエポキシ基またはアミノアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を表し、nは5以上の整数を表す)
【0027】
【化5】
【0028】
(上記式中、Dは、グリシドキシプロピル等のエポキシ基、アミノアルキル基またはメルカプトアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を表し、mは1〜20の整数を表し、nは5以上の整数を表す)
これらの前駆体は反応性シリコーンとして市販されているものを使用することができるが、高分子量になると反応性が低下することから考えて、一般式(イ)、(ロ)の場合にはnとして200以下が好ましく、一般式(ハ)の反応性基が多い場合でも400以下が好ましい。
これら前駆体をカチオン性共重合体成分として組み込む方法としては、反応性基Dが重合性基の場合には他の単量体と同時に重合すればよく、メルカプトアルキル基の場合には、この前駆体存在下において、カチオン性単量体(a)と疎水性単量体(b)とを重合すれば、連鎖移動により効率よく導入できる。
【0029】
さらに、反応性基Dがエポキシ基の場合には、カチオン性単量体(a)と疎水性単量体(b)との共重合を、エポキシ基と反応性のある(メタ)アクリル酸等のカルボン酸基含有単量体またはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の第3級アミン基含有単量体の塩酸塩等の単量体類とともに行い、次いで前駆体のエポキシ基と反応させればよい。
【0030】
同様に、反応性基Dがアミノアルキル基の場合は、カチオン性単量体(a)と疎水性単量体(b)との共重合を、グリシジル(メタ)アクリレート等のアミノ基と反応する単量体と共に行い、次いで前駆体のアミノ基と反応すればよい。なお、帯電防止性と防汚性に影響の無い限り、必要に応じて、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン等の他の親水性単量体を共重合成分として含んでもよい。
重合法としては、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の公知のラジカル重合法が実施できる。好ましい重合法は、溶液重合法であり、各単量体を溶媒に溶解し、重合開始剤を添加し、窒素気流下において、加熱撹拌することにより実施される。溶媒は、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が好ましく、またこれらの溶媒は混合使用してもよい。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物、アゾビスブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ化合物が好適に用いられる。単量体濃度は、通常10〜60重量%であり、重合開始剤は通常単量体に対し、0.1〜10重量%である。
【0031】
カチオン性共重合体の分子量は、重合温度、重合開始剤の種類および量、溶剤使用量、連鎖移動等の重合条件、オルガノポリシロキサン前駆体の種類および反応性基の含有量等により任意のレベルとすることができる。一般には、得られるカチオン性共重合体の分子量は5000〜50万の範囲が好ましい。上記のように調整した塗料を使用し、二軸配向ポリエステルフィルム上に作成された塗布層は、帯電防止性、防汚性等に優れる。
本発明に用いることのできる他のカチオン性共重合体としては、オルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体と、分子内に3個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化樹脂を主成分とするものを挙げることができる。
【0032】
オルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体は、必要に応じて、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するものであってもよい。このオルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体は、1分子中に1個のラジカル重合性基または1分子中に2個のメルカプト基を有するオルガノポリシロキサン化合物と1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物とを重合して得た3級アミン重合体化合物を4級化剤で4級アンモニウム塩とすることにより得られる。オルガノポリシロキサン化合物と1分子中に1個のラジカル性基を有する3級アミン化合物を共重合する際、これらの単量体に加えて、他の(メタ)アクリル酸エステルを共重合させることもできる。また、このオルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体は、1分子中に1個のラジカル重合性基または1分子中に2個のメルカプト基を有するオルガノポリシロキサン化合物と、1分子中に1個のラジカル重合性基を有する4級アンモニウム塩とを重合することにより得られる。オルガノポリシロキサン化合物と1分子中に1個のラジカル重合性基を有する4級アンモニウム塩を共重合する際、これらの単量体に加えて他の(メタ)アクリル酸エステルを共重合することもできる。
【0033】
1分子中に1個のラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物は、アクリル、メタクリル、スチリル、ケイ皮酸エステル、ビニル、アリル等のラジカル重合性基を1分子中に1個有するものである限り特に制限されないが、1分子中に1個のラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物とラジカル重合性基を有する3級アミン化合物またはラジカル重合性基を有する4級アンモニウム塩との共重合の容易さを考慮すると、アクリル、メタクリル、スチリルのラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物であることが好ましい。
また、ラジカル重合性基を有する3級アミン化合物またはラジカル重合性基を有する4級アンモニウム塩が重合する際、連鎖移動によりスルフィド結合を介して、重合体中に導入される1分子中に2個のメルカプト基を有するオルガノポリシロキサン化合物も好適に用いることができる。このオルガノポリシロキサン化合物に含まれるオルガノポリシロキサン単位は下記一般式(c)で表される。
【0034】
【化6】
【0035】
(上記式中、R1とR2は、同一でも異なっていてもよく、メチル基またはフェニル基であり、nは、5以上の整数を表す)
1分子中に1個のラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物の数平均分子量は400〜60000、好ましくは1000〜30000である。ラジカル重合性基を有する3級アミン化合物の1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物は、下記式(d)で表される。
【0036】
【化7】
【0037】
(上記式中、R3はHまたはCH3を、R4とR5はHまたは置換基を含んでいてもよい炭素数が1〜9のアルキル基を、kは1〜6の整数を表す)
かかるラジカル重合性基を有する3級アミン化合物としては、例えば、N, N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N, N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N, N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N, N−ジメチルアミノブチルメタクリレート、N, N−ジヒドロキシエチルアミノエチルメタクリレート、N, N−ジプロピルアミノエチルメタクリレート、N, N−ジブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0038】
また、ラジカル重合性基を有する4級アンモニウム塩の1分子中に1個のラジカル重合性基を有する4級アンモニウム塩としては、上記式(d)で表される3級アミン化合物を、例えばメチルクロライド、ブチルクロライド等のアルキルクロライド、メチルブロマイド、メチルベンジルクロライド、ベンジルクロライド等のハロゲン化物、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸等のアルキル硫酸類、p−トルエンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル等のスルホン酸エステル類等の4級化剤により4級化したものが挙げられる。
1分子中に1個のラジカル重合性基または1分子中に2個のメルカプト基を有するオルガノポリシロキサン化合物と1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物または4級アンモニウム塩とを共重合する際、これら単量体に加えて(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、1分子中に1個のラジカル重合性基を有する、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソ−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
1分子中に1個のラジカル重合性基または1分子中に2個のメルカプト基を有するオルガノポリシロキサン化合物と1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物または4級アンモニウム塩とを共重合する際、1分子中に1個のラジカル重合性基または1分子中に2個のメルカプト基を有するオルガノポリシロキサン化合物の使用量は、共重合性単量体100重量%中、通常1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。1重量%未満では、ビニル重合体を塗布層表面に引き出す(ブリードアウト)能力に欠け、塗布層に十分な帯電防止性が得られない場合がある。また、40重量%を超えると、1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物または4級アンモニウム塩の使用割合が低下し、十分な帯電防止性が得られないことがある。
【0040】
他方の、1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物または、4級アンモニウム塩の使用量は、共重合性単量体100重量%中、通常60〜99重量%、好ましくは60〜95重量%である。60重量%未満では、塗布層に十分な帯電防止性が得られない場合がある。また、99重量%を超えると、オルガノポリシロキサン化合物の使用割合が低下し、塗布層に十分な帯電防止性が得られないおそれがある。
上記、オルガノポリシロキサン化合物単量体、ラジカル重合性基を有する3級アミン化合物単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体およびラジカル重合性基を有する4級アンモニウム塩単量体の共重合は、溶剤中で通常のラジカル重合開始剤を用いて行われる。溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、2−メトキシエトルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、等のエーテルエステル類および水が挙げられ、またこれらを混合使用することもできる。
【0041】
重合反応に使用するラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、2, 2’−アゾビスイソブチロニトリル、2, 2’−アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)、2, 2’−アゾビス(4−メトキシ−2, 4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が好適に用いられる。重合液中の単量体濃度は、通常10〜60重量%であり、重合開始剤は通常単量体混合物に対し、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%の量使用される。
オルガノポリシロキサン化合物と1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物および必要に応じ(メタ)アクリル酸エステルを共重合した場合は、共重合して得た3級アミン重合体化合物を4級化剤を用いて4級アンモニウム塩とする。4級化剤としては、例えば、メチルクロライド、ブチルクロライド、等のアルキルクロライド、メチルブロマイド、メチルベンジルクロライド、ベンジルクロライド等のハロゲン化物、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸等のアルキル硫酸類、p−トルエンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル等のスルホン酸エステル類等が挙げられる。
【0042】
これらの方法で得られるオルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体の中でも、1分子中に1個のラジカル重合性基または1分子中に2個のメルカプト基を有するオルガノポリシロキサン化合物と1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物、および必要に応じ(メタ)アクリル酸エステルを共重合して得た3級アミン重合体化合物をアルキルクロライドで4級アンモニウム塩とすることにより、得られる重合体が、分子内に3個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレートとの相溶性に優れ、透明性のよい塗布層が得られる点から特に望ましい。
オルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体として、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体を用いると、活性エネルギー線照射時にこの重合体と多官能アクリレートとの間に結合が形成され、帯電防止性能の耐久性の向上をはかることができる。
【0043】
オルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合体は、例えば、オルガノポリシロキサン化合物と1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物または4級アンモニウム塩を共重合する際、これら単量体に加えてグリシジル(メタ)アクリレートを共重合した後、(メタ)アクリル酸を付加(3級アミン化合物を用いた場合は、さらに得られた3級アミン重合体化合物を4級化剤で4級アンモニウム塩にする)することにより得られる。
また、オルガノポリシロキサン化合物と1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物または4級アンモニウム塩を共重合する際、これら単量体に加えてヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートを共重合した後、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートとトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物のモル比1対1の付加体や、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等を付加(3級アミン化合物を用いた場合は、さらに、得られた3級アミン重合体化合物を4級化剤で4級アンモニウム塩にする)することにより得られる。
【0044】
これらの方法で得られるオルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合体の中でも、1分子中に1個のラジカル重合性基または1分子中に2個のメルカプト基を有するオルガノポリシロキサン化合物と1分子中に1個のラジカル重合性基を有する3級アミン化合物および官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合し、次いでこの重合体に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加した後、3級アミン化合物をアルキルクロライドで4級アンモニウム塩とすることにより得られる重合体が、分子中に3個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレートとの相溶性に優れ、透明性の良い塗布層が得られる点から特に望ましい。
【0045】
分子内に3個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエルスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラカルボン酸二無水物と分子内に水酸基および3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有多官能アクリレートを反応して得られるカルボキシル基含有多官能アクリレート、およびこれら2種以上の混合物が挙げられる。
【0046】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビフタル酸無水物、4,4’−オキソジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0047】
また、分子内に水酸基および3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有多官能アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、およびこれらの混合物等が挙げられる。これら分子内に3個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレートの中でも、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、テトラカルボン酸二無水物と分子内に水酸基および3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有多官能アクリレートを反応して得られるカルボキシル基含有多官能アクリレート、およびこれらの混合物が耐摩耗性の優れた塗布層を与える点から特に望ましい。
【0048】
オルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体および分子内に3個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレートのほか、他の重合単量体、例えば分子内に1個または2個のアクリロイル基を有するアクリレートを用いることを妨げるものではない。具体的には、アクリロイル基を2個有するウレタンアクリレートやエポキシアクリレートを、耐摩耗性および帯電防止性の低下しない範囲(塗布層成分中の例えば20重量%以下)で用いることができる。
また、塗布組成物の硬化に活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、上記オルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体と、分子内に3個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレートに加えて光重合開始剤が用いられる。
【0049】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン、アントラキノン、フェニルジスルフィド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種類または2種類以上を併用して使用することができる。
【0050】
光重合開始助剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン、β−チオジグリコール等のチオエーテル等が挙げられる。
改質剤としては、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、有機高分子、染料、顔料、安定剤などが挙げられる。これらは、活性エネルギー線による反応を阻害しない範囲で使用され、活性エネルギー線硬化樹脂層の特性を用途に応じて改良することができる。活性エネルギー線硬化樹脂層の組成物には、粘度調整、塗工時の作業性向上、塗工厚さのコントロールのため、共重合体作成の際に用いた溶剤を配合することができる。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化塗布組成物には、塗布層特性を改良する目的で紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤)、紫外線安定剤(例えば、ヒンダードアミン系紫外線安定剤)、酸化防止剤(例えば、フェノール系、硫黄系、リン系酸化防止剤)、ブロッキング防止剤、スリップ剤、レベリング剤等の添加剤を配合することができる。
本発明において、活性エネルギー線硬化塗布組成物中のオルガノポリシロキサン単位および4級アンモニウム塩単位を有する重合体の配合量は、固形分100重量%中、通常1〜40重量%、好ましくは5〜25重量%である。配合量が1重量%未満の場合は、十分な帯電防止性を有する塗布層が得られない場合がある。また、40重量%を超える場合は、塗布層の耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0052】
本発明において、活性エネルギー線硬化塗布組成物中の3個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレートの配合量は、固形分100重量%中、通常60〜99重量%、好ましくは75〜95重量%である。60重量%未満の場合には、十分な耐摩耗性を有する塗布層が得られない場合があり、99重量%を超える場合には、十分な帯電防止性を有する塗布層が得られないことがある。
本発明において、活性エネルギー線硬化塗布組成物の固形分濃度は特に限定される訳ではないが、通常0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%に調整され用いられる。
【0053】
本発明において、活性エネルギー線硬化塗布組成物中の光重合開始剤配合量は、固形分100重量%中、通常0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。
本発明において、塗布層の形成は、フィルムの一方の表面に塗布組成物を塗布して硬化させる方法により行われる。塗布方法としては、リバースロールコート法、グラビアロールコート法、ロッドコート法、エアーナイフコート法などを採用し得る。塗布された塗布組成物の硬化は、例えば、活性エネルギー線や熱により行われる。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線、α線、β線、γ線などが使用される。熱源としては、赤外線ヒーター、熱オーブン等が使用される。活性エネルギー線の照射は、通常、塗布層側から行うが、フィルムとの密着を高めるため、塗布層の反対面側から行ってもよい。必要に応じ、活性エネルギー線を反射し得る反射板を利用してもよい。活性エネルギー線により硬化された皮膜は、特に耐擦傷性が良好である。
【0054】
本発明の基材において、塗布層の表面抵抗は1×1011Ω以下でなければならない。塗布層の表面抵抗が上記の値を超える場合は、静電気が発生しやすくなり、ゴミの付着が多くなる。塗布層の表面抵抗は、好ましくは5×1010Ω以下、さらに好ましくは1×1010Ω以下である。
本発明の基材において、塗布層表面のアクリル系粘着剤に対する粘着力(P2)は、3000mN/cm以下、好ましくは2750mN/cm以下、さらに好ましくは2500mN/cm以下である。その理由は次のとおりである。本発明のLCD偏光板保護フィルム用基材は、積み重ねた状態で保管される。この保管の際、所定寸法への裁断工程において、ポリエステルフィルムと離型フィルムとの間から偶発的にはみ出した粘着層が他の保護フィルムの塗布層に接触することがある。そして、粘着層の塗布層への接触は、粘着剤の粘着力が3000mN/cmを超えると、塗布層に対する粘着剤の付着汚れの原因となる場合があるので、好ましくない。
【0055】
本発明において、塗布層が設けられた表面のゴム系粘着剤による粘着力(P1)とアクリル系粘着剤による粘着力(P2)との差(P1−P2)は、100mN/cm以上、好ましくは、200mN/cm以上である。当該粘着力の差が100mN/cm未満の場合においては、最終工程でゴム系粘着テープを用いて保護フィルムを剥離する際に保護フィルムの剥離が困難になる場合があるので好ましくない。
本発明において、好ましい態様としては、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の表面に塗布層が設けられたフィルムのもう一方の面に粘着剤層およびそれを保護する離型フィルムが積層されてなる構成の積層フィルムである。
【0056】
本発明において、粘着層は、公知の粘着剤、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ブロックコポリマー系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などから構成される。一般に粘着剤は、エラストマー、粘着付与剤、軟化剤(可塑剤)、劣化防止剤、充填剤、架橋剤などの組成物として構成される。
エラストマーとしては、上記の各粘着剤の種類に従って、例えば、天然ゴム、合成イソプレンゴム、再生ゴム、SBR、ブロックコポリマー、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ポリアクリル酸エステル共重合体、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0057】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン、水添ロジンエステル、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂還族系水添石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。
【0058】
軟化剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、液状ポリブテン、液状ポリイソブチレン、液状ポリイソプレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ひまし油、トール油等が挙げられる。
劣化防止剤としては、例えば、芳香族アミン誘導体、フェノール誘導体、有機チオ酸塩等が挙げられる。
充填剤としては、例えば、亜鉛華、チタン白、炭酸カルシウム、クレー、顔料、カーボンブラック等が挙げられる。充填剤が含有される場合は保護フィルムの全光線透過率に大きく影響を与えない範囲で使用される。
【0059】
架橋剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤の架橋には、イオウと加硫助剤および加硫促進剤(代表的なものとして、ジブチルチオカーバメイト亜鉛など)が使用される。天然ゴムおよびカルボン酸共重合ポリイソプレンを原料とした粘着剤を室温で架橋可能な架橋剤として、ポリイソシアネート類が使用される。ブチルゴムおよび天然ゴムなどの架橋剤に耐熱性と非汚染性の特色がある架橋剤として、ポリアルキルフェノール樹脂類が使用される。ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムおよび天然ゴムを原料とした粘着剤の架橋に有機過酸化物、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどがあり、非汚染性の粘着剤が得られる。架橋助剤として、多官能メタクリルエステル類を使用する。その他紫外線架橋、電子線架橋などの架橋による粘着剤の形成がある。
【0060】
粘着層の形成は、特に限定される訳ではないが、フィルムの他方の表面に粘着剤を塗布する方法により行われる。塗布方法としては、耐摩耗性層の形成に使用したのと同様の方法を採用し得る。粘着層の厚さは、通常0.5〜100μm、好ましくは1〜50μmの範囲である。
本発明において、粘着層の粘着力は、塗布層に粘着テープを押し付けて当該粘着テープを持ち上げた際、偏光板の表面から粘着層が二軸配向ポリエステルフィルムとともに剥離除去されるような範囲に調節することが好ましい。この場合、偏光板と粘着層との間の粘着力は、10〜400mN/cmの範囲にするのが好ましい。そして、粘着層の表面には、その取扱性の便宜を図る観点から、公知の離型フィルムが積層される。ここで言う偏光板とは、ポリビニルアルコールにヨウ素や二色性染料などを含有させて一軸配向させた偏光フィルムの両面にトリアセテートセルロースフィルムなどの保護フィルムを積層した構造のものである。
【0061】
上記のように構成された本発明の偏光板保護フィルム用基材の全光線透過率(TL)は特に限定されるものではないが、通常80%以上、好ましくは85%以上である。その結果、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う検査は、偏光板の表面に保護フィルムを貼付したまま行うことができる。
【0062】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で使用した測定法および評価基準は次のとおりである。
【0063】
(1)塗布層の表面抵抗(Ω)
三菱油化社製「Hiresta MODEL HT−210」を使用し、23℃/50%RHの雰囲気下で試料を設置し、500Vの電圧を印加し、1分間充電後(電圧印加時間1分)の表面抵抗(Ω)を測定した。ここで使用した電極の型は、主電極の外径16mm、対電極の内径40mmの同心円電極である。
【0064】
(2)塗布層のアクリル系粘着剤に対する剥離力(P2)
塗布層上に両面粘着テープ(日東電工社製「No.502」)を貼り、ゴムローラーを使用し450g/cmの線圧で圧着し、50mm幅に切り出し剥離力測定用試料とした。圧着してから1時間放置後、インストロン型引張試験機を用いて、180度方向に引張速度300mm/分で剥し、その応力の平均値をその試料の剥離力とした。この試験を10回繰り返し行い、10回の相加平均をもって剥離力とした。なお、この試験を行った雰囲気は、23℃、50%RHの標準状態である。
【0065】
(3)塗布層のゴム系粘着剤に対する剥離力(P1)
塗布層上にニチバン社製セロテープを貼り、ゴムローラーを使用し450g/cmの線圧で圧着し、剥離力測定用試料とした。圧着してから1時間放置後、インストロン型引張試験機を用いて、180度方向に引張速度300mm/分で剥し、その応力の平均値をその試料の剥離力とした。この試験を10回繰り返し行い、10回の相加平均をもって剥離力とした。なお、この試験を行った雰囲気は、23℃、50%RHの標準状態である。
【0066】
(4)全光線透過率
日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−300Aにより、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の表面に塗布層が設けられた積層フィルムの全光線透過率を測定した。
【0067】
(5)ゴミ付着の有無
塗布層の表面にタバコの灰を落とし、1回転(360度の回転)させた際の灰の付着状態を観察し、ゴミ付着の有無を評価した。
【0068】
(6)粘着剤付着性の有無
塗布層の表面にアクリル系粘着剤を擦り付け、その粘着剤を指で擦り落とす時の粘着剤付着性の有無を評価した。
【0069】
(7)塗布層の厚み
塗布フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、塗布フィルムの断面を透過型電子顕微鏡にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に、明暗によってその塗布層が観察される。その塗布層の距離を透過型電子顕微鏡写真1枚について平均し厚みを計算した。これを少なくとも50枚の写真について行い、測定値の厚い方から10点、薄い方から10点を削除して30点の相加平均を塗布層の厚みとした。
【0070】
製造例1(ポリエステルA)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温するとともにメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、平均粒径1.54μmのシリカ粒子を0.1部含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加し、さらに、エチルアシッドフォスフェート0.04部、酸化ゲルマニウム0.01部を添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgに達せしめ、以後も徐々に圧力を減じて最終的に0.3mmHgとした。4時間後に系内を常圧に戻しポリエステルAを得た。ポリエステルAのシリカ粒子の含有量は0.1重量%であった。
【0071】
製造例2(ポリエステルフィルムA1)
ポリエステルAを180℃で4時間不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融押出し、静電印加密着法を使用し、表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。得られたシートを85℃で3.5倍縦方向に延伸した後、100℃で3.7倍横方向に延伸し、さらに、230℃にて熱固定し、厚さ38μmのポリエステルフィルムA1を得た。
【0072】
実施例1
疎水性単量体単位として、メチルメタクリレート55部、カチオン性単量体単位として、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド80%水溶液50部、オルガノポリシロキサン単位として、分子量約5000の片末端メタクリルオキシ変性オルガノポリシロキサン(チッソ社製FM0721)5部、およびエチルアルコール140部と重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1部を添加し、窒素気流下80℃で6時間重合反応を行い、カチオン性共重合体の40%エチルアルコール溶液を得た。このカチオン性共重合体をエチルアルコール/イソプロピルアルコール=50/50の混合溶媒で希釈し、ポリエステルフィルムA1の片面に乾燥後の塗布厚さが0.2μmとなるようにバーコーターを用いて塗布、乾燥して塗布層を形成した。そして、塗布層と反対側の面にアクリル系粘着剤を塗設し、離型フィルムで保護し積層フィルムを得た。
【0073】
実施例2
疎水性単量体単位として、メチルメタクリレート55部、カチオン性単量体単位として、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド80%水溶液40部、オルガノポリシロキサン単位として、分子量約7000のメルカプト変性オルガノポリシロキサン(信越化学社製、X−22−980)5部、およびイソプロピルアルコール150部と重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1部を添加し、窒素気流下80℃で5時間重合反応を行い、カチオン性共重合体の40%イソプロピルアルコール溶液を得た。このカチオン性共重合体をイソプロピルアルコールで希釈し、ポリエステルフィルムA1の片面に乾燥後の塗布厚さが0.15μmとなるようにバーコーターを用いて塗布、乾燥して塗布層を形成した。そして、塗布層と反対側の面にアクリル系粘着剤を塗設し、離型フィルムで保護し積層フィルムを得た。
【0074】
実施例3
疎水性単量体単位として、メチルメタクリレート51部、カチオン性単量体単位として、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド80%水溶液50部、メタクリル酸4部およびエチルアルコール140部と重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1部を添加し、窒素気流下80℃で6時間重合反応を行いその後、オルガノポリシロキサン単位として、分子量約1000の両末端エポキシ変性オルガノポリシロキサン(チッソ社製FM5511)5部添加し、80℃で10時間反応して、カチオン性共重合体の40%エチルアルコール溶液を得た。このカチオン性共重合体をエチルアルコールで希釈し、ポリエステルフィルムA1の片面に乾燥後の塗布厚さが0.2μmとなるようにバーコーターを用いて塗布、乾燥して塗布層を形成した。そして、塗布層と反対側の面にアクリル系粘着剤を塗設し、離型フィルムで保護し積層フィルムを得た。
【0080】
比較例1
p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩(40部)、ビニルスルホン酸ナトリウム塩(40部)、N,N’−ジメチルアミノメタクリレート(20部)を蒸留水中に溶解させ、60℃で加熱撹拌しながら重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)2塩酸塩を添加して重合を行い、帯電防止性樹脂を得た。次いで、上記の帯電防止性樹脂30部に、ポリウレタン樹脂(イソシアネート成分:イソホロンジイソシアネート、ポリオール成分:テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、ジエチレングリコールより構成されるポリエステルポリオール、鎖延長剤:2,2−ジメチロールプロピオン酸)50部、アクリル樹脂(構成単位:メチルメタクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレート)10部、3官能水溶性エポキシ化合物5部、平均粒径0.1μmのコロイダルシリカを5部を配合して水分散体塗布液を調製した。
製造例2において、縦方向に延伸した後、上記水分散体塗布液を延伸乾燥後の塗布厚さが0.1μmになるように塗布した以外は製造例2と同様にして、ポリエステルフィルムA2を得た。ポリエステルフィルムA2の水分散体塗布層と反対側の面にアクリル系粘着剤を塗設し、離型フィルムで保護し積層フィルムを得た。
【0081】
比較例2
疎水性単量体単位として、メチルメタクリレート60部、カチオン性単量体単位として、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド80%水溶液50部およびエチルアルコール140部と重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1部を添加し、窒素気流下80℃で6時間重合反応を行いカチオン性共重合体の40%エチルアルコール溶液を得た。このカチオン性共重合体をエチルアルコール/イソプロピルアルコール=50/50の混合溶媒で希釈しポリエステルフィルムA1の片面に乾燥後の塗布厚さが0.2μmとなるようにバーコーターを用いて塗布、乾燥して塗布層を形成した。そして、塗布層と反対側の面にアクリル系粘着剤を塗設し離型フィルムで保護し積層フィルムを得た。
【0082】
比較例3
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート80部、メチルメタクリレート20部およびイソプロピルアルコール150部の混合物を加熱して80℃に昇温した時、および同昇温時より2時間後に、それぞれアゾビスイソブチロニトリルを0.3部づつ添加し、80℃で8時間反応して、固形分40%の共重合体溶液を得た。次に、ここで得られた共重合体溶液に、イソプロピルアルコール83.3部を添加した後、塩化メチルを反応系に導入し、50℃で6時間反応し、4級アンモニウム塩単位を有する固形分濃度34%の重合体溶液(8A)を得た。
上記で得られた(8A)を17部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを53部、および光重合開始剤として、チバ・スペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907を3部、イソプロピルアルコールを927部の割合で均一に混合して、活性エネルギー線硬化塗布組成物を調整した。次いで、ポリエステルフィルムA1の一方の表面に、硬化後の厚さが0.15μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて15秒間照射し塗布層を形成した。そして、塗布層と反対側の面にアクリル系粘着剤を塗設し、離型フィルムで保護し積層フィルムを得た。
【0083】
比較例4
片末端にスチレン基を有する数平均分子量約11300のオルガノポリシロキサン化合物(信越化学社製X−22−2440)30部、メチルメタクリレート70部、およびイソプロピルアルコール150部の混合物を加熱して80℃に昇温した時、および同昇温時より2時間後に、それぞれアゾビスイソブチロニトリルを0.3部づつ添加し、80℃で8時間反応して、オルガノポリシロキサン単位を有する固形分40%の共重合体溶液(9A)を得た。
上記で得られた(9A)を15部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを53部、および光重合開始剤として、チバ・スペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907を3部、イソプロピルアルコールを929部の割合で均一に混合して、活性エネルギー線硬化塗布組成物を調整した。次いで、ポリエステルフィルムA1の一方の表面に、硬化後の厚さが0.15μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて15秒間照射し塗布層を形成した。そして、塗布層と反対側の面にアクリル系粘着剤を塗設し、離型フィルムで保護し積層フィルムを得た。
以上、得られた実施例1〜8、比較例1〜4のフィルムの特性を下記表1〜2に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、帯電防止性、耐薬品性、耐擦傷性、取扱性等に優れ、その結果、検査を容易にすることができ、かつ、液晶表示板への粘着剤、ゴミ等の付着防止に優れる等の特性を有する。また、偏光板の保護の役目を果たした後に不要物として剥離除去される際、剥離を容易に行うことができ、剥離帯電を抑制する効果があり、剥離帯電により液晶表示板と接続されている回路の破損等が防止できる偏光板保護フィルム用基材を提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
Claims (5)
- 二軸配向ポリエステルフィルムの一方の表面に、カチオン性単量体単位、疎水性単量体単位およびオルガノポリシロキサン単位からなるカチオン性共重合体から形成された塗布層が設けられた積層フィルムからなり、塗布層表面の表面抵抗が1×1011Ω以下であり、塗布層表面の日東電工社製No.502テープによる粘着力(P2)が3000mN/cm以下であり、塗布層表面のニチバン社製セロテープ(登録商標)による粘着力(P1)と日東電工社製No.502テープによる粘着力(P2)との差(P1−P2)が100mN/cm以上であることを特徴とする偏光板保護フィルム用基材。
- 塗布層の厚みが0.01μm〜0.3μmであることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護フィルム用基材。
- 塗布層と反対側のフィルム面に粘着剤層が積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光板保護フィルム用基材。
- 粘着剤層が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ブロックコポリマー系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤およびシリコーン系粘着剤の群から選ばれる少なくとも1種で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の偏光板保護フィルム用基材。
- 粘着剤層の表面に離型フィルムが積層されていることを特徴とする請求項4記載の偏光板保護フィルム用基材。
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