JP4754621B2 - 複合シール材 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、超真空状態で使用される複合シール材に関し、特に、半導体製造装置や半導体製造装置に組み込まれるゲート弁などに使用されて好適な複合シール材に関する。
半導体製造装置の進歩により、半導体製造装置に使用される部材に対する要求が更に厳しくなってきており、その要求も様々なものになってきている。
例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置に使用されるシール材は、基本的な性能として真空シール性能が必要である。そして、使用される装置やシール材の装着個所により、耐プラズマ性や耐腐食ガス性などの性能を併せ持つことが要求される。
このように真空シール性能に加えて、耐プラズマ性や耐腐食ガス性が求められるシール部では、これまで流体の影響を受けにくいフッ素ゴムが使用されてきた。
しかし、使用条件が厳しくなるにつれ、フッ素ゴムでは、耐プラズマ性や耐腐食ガス性などの性能が不十分となり新しい材料が求められるようになってきている。
このような要求に対して、真空シール性能、耐プラズマ性、耐腐食ガス性などの特性を併せ持ち、繰り返しの使用によっても真空シール性能が低下することがなく、使用時に金属パーティクルが発生することもなく、製造が容易で安価に製造でき、また半導体製造装置で一般的に用いられているいわゆる「あり溝」に適用可能であるシール材として、例えば、本出願人により特許文献1が提案されている。
特開2005−164027号公報
ところで、特許文献1に記載されている複合シール材においては、シールを担当する部分がゴム部材であるため繰り返し使用に対しても真空シール性能が低下することはないが、耐プラズマ性や耐腐食ガス性を担当する部分が合成樹脂製部材であるため、合成樹脂製部材はゴム部材のような弾性がなく繰り返し使用時においては緩和を生じてしまうために、相手部材との密着性が繰り返しとともに低減し、十分に性能を保持できないという問題がある。
本発明は、このような実状に鑑み、真空シール性能、耐プラズマ性、ならびに耐腐食ガス性などの性能を併せ持ち、また、繰り返しの使用によっても真空シール性能が低下することがなく、使用時に金属パーティクルが発生することもなく、また、半導体製造装置で一般的に用いられているいわゆるあり溝に適用可能で、さらにゲート弁開閉部などのように、繰り返し開閉が行なわれる場所に用いられても耐プラズマ性や耐腐食ガス性などの性能が低下することのない複合シール材を提供することを目的とする。

上記目的を達成するための本発明は、
シール溝2に装着される複合シール材10であって、
前記シール溝2における外周側に配置され弾性部材からなる第1のシール部材6と、
前記シール溝2における内周側に配置され前記第1のシール部材6よりも硬質の材料からなる第2のシール部材8とを備え、
前記第1のシール部材6は、その厚さ方向略中間部の径内方側から径内方に向かって横方向凸部12が突出して形成されているとともに、
前記第2のシール部材8は、両端部のフランジ部14,16と、これらのフランジ部14,16間を連結する略直線状の内壁部分18とにより、断面略コ字状に形成され、
前記第1のシール部材6と前記第2のシール部材8とが一体的に組み付けられた状態で、前記横方向凸部12と前記第2のシール部材8の略直線状の内壁部分18との間に、空所20が確保されていることを特徴としている。
このように構成することによって、複合シール材10が圧接された際に、横方向凸部12が空所20内に倒れこむように変形するので、第1のシール部材6によるシール性が確保される。また、空所20を設けたことにより、第1のシール部材6の変形が、第2のシール部材8により妨げられることはない。
しかも、第2のシール部材8が、第1のシール部材6よりも硬質の材料から構成されているので、第2のシール部材8側を、例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置における腐食性ガス、プラズマなどの厳しい環境側であるチャンバー側に配置することによって、第1のシール部材6が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、シール性が低下することがない。
また、この場合、厳しい環境側に、第1のシール部材6よりも硬質の材料から構成される第2のシール部材8が位置することになるので、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性が良く、しかも、弾性部材から構成される第1のシール部材6全体が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、シール性が低下することがない。
また、本発明の複合シール材は、前記第1のシール部材6の前記横方向凸部12は、その一方の側端面12aが略平坦に形状されていることが好ましい。
このような構成であれば、第1のシール部材6に対する第2のシール部材8の装着性が良好になる。
さらに、前記第1のシール部材6の前記横方向凸部12は、その他方の側端面12bが前記シール溝2の底面26側に突出して形成されていても良い。
また、前記第1のシール部材6と前記第2のシール部材8とは、互いの会合面の何れか一方に凸部が、いずれか他方に凹部が形成され、これら凸部と凹部が互いに嵌合されて組付けられていることが好ましい。
このような構成であれば、第1のシール部材6と第2のシール部材8との組付けが良好になる。
また、前記第1のシール部材6と前記第2のシール部材8との会合面には接着剤が介在されていても良い。
このように接着剤を介して互いに接着されていれば、シール部材間の固定を容易に行なうことができる。
また、本発明の複合シール材は、前記第1のシール部材を構成するゴムが、フッ素ゴムから構成されていることが好ましい。
このように第1のシール部材を構成するゴムが、フッ素ゴムから構成されていれば、万一、腐食性ガス、プラズマに接触したとしても、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性が良く、シール性が低下することがない。
また、本発明の複合シール材10は、前記第2のシール部材8が、合成樹脂から構成されていることが好ましい。
このように、第2のシール部材8が、第1のシール部材6よりも硬質の材料である合成樹脂から構成されていれば、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性が良く、しかも、弾性部材から構成される第1のシール部材6全体が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、シール性が低下することがない。
また、本発明の複合シール材は、前記第2のシール部材8を構成する合成樹脂が、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂から選択した1種以上の合成樹脂から構成されていることが好ましい。
このように、第2のシール部材8を構成する合成樹脂がこれらの合成樹脂から構成されていれば、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性が極めて良好であり、しかも、弾性部材から構成される第1のシール部材6全体が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、シール性が低下することがない。
本発明の複合シール材によれば、ゴムおよび合成樹脂の二部材を組み合せているので、真空シール性能、耐プラズマ性や、ならびに耐腐食ガス性などの性能を併せ持つことができる。また、締付力が加わった場合に第1のシール部材の横方向凸部が第2のシール部材との間に構成される空所内に速やかに変形し弾性変形するとともに、この締付力が解除されれば、第1のシール部材ならびに第2のシール部材が速やかに元の状態に復帰するので、繰り返しの使用によっても、真空シール性能および相手部材との密着性が低下することがない。また、第1のシール部材および第2のシール部材としてゴムあるいは合成樹脂を用いることにより、使用時に金属パーティクルが発生することがない。しかも、製造が容易で比較的安価に製造できる。
さらに、本発明の複合シール材によれば、半導体製造装置に用いられるいわゆるあり溝に好ましく適用することができる。
図1は、本発明の複合シール材をシール溝であるいわゆる「あり溝」に装着した場合のシール溝との寸法関係を示す概略図である。 図2は、本発明の複合シール材をシール溝に装着して圧接する場合の初期状態を説明する概略図である。 図3は、本発明の複合シール材をシール溝に装着して圧接する場合に図2の状態からさらに力が加えられたときの概略図である。 図4は、本発明の複合シール材をシール溝に装着して圧接する場合に図3の状態からさらに力が加えられたときの概略図である。 図5は、本発明の実施例によるシール材のシール性能を調べるために行った試験装置の概略図である。 図6はシール装置に試料サンプルを設置するときの評価用ジグを示した概略図である。 図7は、耐プラズマ性能を調べるための試験装置の概略図である。 図8は、本願発明の評価試験で採用された複合シール材を示したもので、図8(A)はその概略側面図、図8(B)はその拡大断面図である。 図9は図8に示したシール材が装着されるシール溝の各部の寸法を示した図である。
以下、本発明に係る複合シール材について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る複合シール材を示したものである。
本実施例による複合シール材10は、閉環状に形成され、例えば、略環状のシール溝2内に装着されるもので、図1では、水平状態に配置されたシール溝2の左側の断面を示したものである。
このシール溝2は、例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置の継手部分に形成されたもので、シール溝2は、その底面26側の幅が、シール溝2の開口部22側の幅より広くなったいわゆる「あり溝」となっている。
そして、複合シール材10は、シール溝2の一方の側壁28側(外周側)に、第1のシール部材6が配置され、シール溝2の他方の側壁30側(内周側)に、第2のシール部材8が配置されている。すなわち、この複合シール材10は、半導体製造装置における腐食性ガス、プラズマなどの厳しい環境側に第2のシール部材8が配置され、厳しい環境側とは反対側(例えば、大気側)に、第1のシール部材6が配置される。
第1のシール部材6は、その厚さ方向略中間部から径内方に向かって横方向凸部12が突出して形成されている。また、この第1のシール部材6は、変形したときに相手部材36との間でシール部として機能する第1の膨出部32がシール溝2の開口端側に形成され、第1の膨出部32とは反対側すなわちシール溝2の底面側に下方凸部34が形成されている。
第1の膨出部32の頂部は、略円弧状に膨出して形成されているが、下方凸部34の底面は、シール溝2の底面26に密着するように、略平坦に形成されている。また、横方向凸部12の一方の側端面12aは、略平坦に形成され、横方向凸部12の他方の側端面12bは、シール溝2の底面26側に突出されている。
このように、第1のシール部材6は、相手部材36との間でシール面を構成する第1の膨出部32と、シール溝2の底面側に配置される下方凸部34と、径内方側に突出される横方向凸部12とを備えており、断面形状でみれば三方に突出した形状となっている。また、横方向凸部12の突出方向と反対側の外周面に角部P1が形成され、この角部P1により、第1の膨出部32と下方凸部34との間がなだらかに連結されている。
上記第1のシール部材6は、弾性部材であるゴムから構成されているのが望ましい。ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴムのいずれも使用可能である。
このように第1のシール部材6を、弾性部材であるゴムから構成することによって、複合シール材10を相手部材36との間で圧接した際に、第1のシール部材6における第1の膨出部32が相手部材36により圧接されて高いシール性を付与することができる。第1のシール部材6を構成するゴムは、フッ素ゴムから構成されているのがさらに望ましい。
このようなフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/トリフルオロクロロエチレン系共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン系共重合体等の2元系のフッ化ビニリデン系ゴム、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体等の3元系のフッ化ビニリデンゴムやテトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレンlパーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体、熱可塑性フッ素ゴムなどが使用可能である。
このように第1のシール部材6を構成するゴムが、フッ素ゴムから構成されていれば、万一、第1のシール部材6が腐食性ガス、プラズマに接触したとしても、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性が良く、シール性が低下することがない。
第2のシール部材8は、第1のシール部材6の内周側に配置されるもので、第1のシール部材6とは別体で形成されている。この第2のシール部材8は、第1のシール部材6の横方向凸部12を両側から挟持できるように、一対のフランジ部14,16を有し、さらに、径内方側にこれら一対のフランジ部14,16間を連結する略直線状の内壁部分18を有している。そして、第2のシール部材8を断面形状で見れば、これら一対のフランジ部14,16と略直線状の内壁部分18とより、断面略コ字状に形成されている。
このような第2のシール部材8は、前記第1のシール部材6より硬質の合成樹脂から構成されているのが望ましく、好ましくは、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂から選択した1種以上の合成樹脂から構成するのが望ましい。
第2のシール部材8が第1のシール部材6よりも硬質の合成樹脂から構成されているので、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性が良く、しかも、弾性部材から構成される第1のシール部材6の全体が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、シール性の低下が防止されている。
この場合、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)樹脂、ポリビニリデンフルオライト(PVDF)樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)樹脂、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)樹脂、ポリビニルフルオライド(PVF)樹脂などを挙げることができ、この中では、耐熱性、耐腐食性ガス、耐プラズマ性などを考慮すれば、PTFEが好ましい。
本実施例による第1のシール部材6と第2のシール部材8は、上記のような材質から形成されているが、これらを一体的に組付ける場合には、第1のシール部材6の横方向凸部12と第2のシール部材8の略直線状の内壁部分18との間に、予め凹所20が確保された状態で組付けられる。
また、組み付けられたとき第1のシール部材6における下方凸部34および横方向凸部12bと、第2のシール部材8のフランジ部16との間に、空所21が画成される。
以下に、複合シール部材10の主たる部分の好ましい各部の寸法について説明する。
図1に示したように、複合シール材10のシールの幅Llは、シール溝2の溝幅L2よりも大きいほど脱落抵抗が増すが装着性が困難になるため、シールの幅L1は、溝幅L2の101〜130%とするのが望ましい。
また、第1のシール部材6によって規定されるゴム部シール高さL3は、つぶし率を、3〜45%、好ましくは5〜30%となる範囲が望ましい。ただし、つぶし率とは、[(シール高さL3)-(溝深さL5)/(シール高さL3)]×100とする。なお、L3とL4の大小関係は問わない。
第1のシール部材6における第1の膨出部32のゴム幅L6は、大きくすると相手部材36との接触部が大きくなり真空シール性能は安定するが、第2シール部材8の樹脂幅(L7+L8+L9)がその分小さくなり、プラズマ、腐食ガスの遮蔽効果が低下する。したがって、L6の範囲としてはL1の50%〜70%が望ましい。
第1のシール部材6の横方向凸部12の突出長さL7を大きくすると、第1のシール部材6の復元力を、第2のシール部材8が広い範囲で受けることができるため、プラズマ、腐食ガスの遮蔽効果が向上するが、L7を大きくすると、その分L6が小さくなり真空シール性能を低減させる虞があるため、L6に対し25%〜45%の範囲が望ましい。
第1のシール部材6と第2のシール部材8との間の空所20の距離L8は、圧縮時にこの空所20に第1のシール部材6の横方向凸部12が逃げ込むことにより、第2のシール部材8の肉薄部分Aが図1において時計方向に回転するように倒れ、フランジ部16を変形させる。空所20の距離L8の範囲としては、L7に対し50%以上が望ましい。
第2のシール部材8の略直線状の内壁部分18の厚さL9は、薄い方がスムースに変形するが、加工性を考慮すると、50μm〜2mmの範囲が望ましい。
第1のシール部材6の角部P1から溝開口部22と同じ高さになる点P2との間は、第1のシール部材6が圧縮されるときにシール溝2の側壁28に沿ってスムースに変形するために、角度θ1はシール溝12の角度θ2±2°となる傾斜とすることが望ましい。
点P2から第2のシール部材8との接触面までの第1の膨出部32のシール面はなだらかな曲面とする。
第1のシール部材6の底面から角部P1までの高さL10は、脱落防止のためシール溝2の溝深さL5以下であることが望ましいが、低すぎると装着時にシール溝2の側壁28に沿って複合シール材10が転動し装着性を低下させるため、L10の範囲としては、L3に対して50%〜70%かつL10<L5とするのが望ましい。
第1のシール部材6の底部幅L11は大きい方が転動を起こし難いが、圧縮時に第1のシール部材6の横方向凸部12が空所20内に逃げ込んで第2のシール部材8を倒れこむように変形させるためには、L11<L6であるため、L11の範囲としては、L2に対して20%以上、かつL11<L6とするのが望ましい。
また、圧縮時に第1のシール部材6のL7部分が空所20内に逃げ込んで第2シール部材8の薄肉部分Aを倒れ込むように変形させるには、
第2シール部材8の底部幅L12は、(L11+L12)<(L6+L7)
となるように設定するのが望ましい。
第1のシール部材6における下方凸部34の側端面から横方向凸部12の側端面までの距離L13は、L12に対し50%〜150%とするのが望ましい。
また、第2のシール部材8の薄肉部分Aは、全体的に変形するように、R形状であることが望ましい。仮に、薄肉部分Aの一部分のみが過剰変形してしまうと、破損されてしまう虞がある。第2のシール部材8のフランジ部16は、圧縮に伴い回転して薄肉部分Aを変形させるためにR形状であることが望ましい。すなわち、フランジ部16が回転しないと第2のシール部材8が倒れ込まず、第2のシール部8で荷重を受けてしまうため、緩和を生じ易くなる。
第1のシール部材6における横方向凸部12の側端面12bは、圧縮に伴い、フランジ部16を押圧して積極的に回転させるように凸形状であることが望ましい。
上記のように各部の寸法が規定された第1のシール部材6と第2のシール部材8とを接合一体化する方法としては、溶接、溶着、接着、一体成形など公知の接合方法が採用可能であり、特に限定されるものではないが、必要に応じて接着剤、好ましくは、耐熱性接着剤にて接合一体化することができる。
あるいは、第1のシール部材6と第2のシール部材8との会合面のいずれか一方に凸部を、いずれか他方に凹部を設け、これら凹凸の接合面に接着剤を介在させて、互いに一体化させて組付けることもできる。
このように構成される本発明の複合シール材10は、図2〜図4に示したように使用される。
先ず、図2に示したように、複合シール材10をシール溝2内に装着する。この場合、第1のシール部材6と第2のシール部材8との間に空所20および空所21が形成され、さらに第2のシール部材8に弾性変形が容易な略直線状の内壁部分18が形成されているので、複合シール材10をシール溝2内に容易に装着することができる。しかも、複合シール材10がシール溝2内に装着された後には、シール溝2の開口部22の幅よりも複合シール材10の全体の幅の方が大きいため、複合シール材10のシール溝2からの不用意な脱落が防止される。
そして、図2〜図4に示したように、複合シール材10への締付力を強化すれば、第1のシール部材6の第1の膨出部32および第2のシール部材8のフランジ部14が次第に圧縮されて真空シール性および耐プラズマ性が付与される。
第1のシール部材6における第1の膨出部32が相手部材36に当接された図2の状態から図3に示したように圧縮が進めば、第1のシール部材6の横方向凸部12が空所20内に入り込むように変形する。このとき、第2のシール部材8の薄肉部分Aが変形され、フランジ部16が上方に向かうように回動される。この状態からさらに圧縮力が加えられると、図4に示したように、第1のシール部材6の相手部材36との接触面積が十分に確保され、確実なシール力が得られることになる。特に、第1のシール部6の第1の膨出部32に応力集中が生じてシール性が付与される。
また、この図4の状態では、第2のシール部材8が第1のシール部材6よりも硬質の材料から構成されているので、第2のシール部材8側を、例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置における腐食性ガス、プラズマなどの厳しい環境側であるチャンバー側に配置することによって、第2のシール部材8のフランジ部14による圧接により、弾性部材から構成される第1のシール部材6の第1の膨出部32が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、シール性が低下することがない。
また、この場合に、厳しい環境側に、第1のシール部材6よりも硬質の材料から構成される第2のシール部材8が位置することになるので、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性が良く、しかも、弾性部材から構成される第1のシール部材6全体が、これらの腐食性ガス、プラズマなどから保護されることになり、シール性が低下することがない。
このように本実施例では、複合シール材10が圧接される場合に、第1のシール部材6の横方向凸部12が凹所20内に倒れこむとともに、薄肉部分Aの変形により第2のシール部材8が追随して変形する。さらに、力が解除されれば、横方向凸部12の復元力が上方のフランジ部14および下方のフランジ部16に作用する。したがって、第2のシール部材8に応力緩和が生じ難い。
よって、繰り返しの使用によっても、安定したシール性を維持することができる。また、金属材料を使用していないことから金属パーティクルの発生を防止することができる。さらに、シール部材10の幅L1がシール溝2の溝幅L2よりも大きく、下方凸部34の幅L11が尻つぼみとなっていることから、あり溝に好ましく用いることができる。
[実施例]
以下の試料について、シール性能および耐プラズマ性の評価を行った。
1.試料
a)本願発明品
寸法、材質は図8(A),(B)の通り。この発明品が装着されるシール溝は図9の通り。
b)従来品1
特開2005−164027号に記載の図9と同様品
c)従来品2
英国NES社製「NKリング(商品名)」
フッ素ゴムをフッ素樹脂のジャケットで完全に包んだシール材。
d)従来品3
フッ素ゴムOリング
c)およびd)の寸法:AS568A−241
2.シール性能評価方法
2−1)初期シール性能
図5に示したように、各試料サンプル10をフランジ72,74間にボルト76で所定の締付加重85kgfで締め付けた後に、ヘリウムリークディテクター78で試料サンプル10の内径側を真空引きし、試料サンプル10の外径側にヘリウムガスを流して(10ml/min)、各試料サンプル10の透過漏洩量を測定した。
2−2)繰り返し使用模擬サイクル後のシール性能
初期シール性能評価で用いた試料をそのまま用いた。
初期シール試験終了後ボルトをはずし、フランジを試験機(株式会社島津製作所製 油圧ターボ式強度試験機)に固定し、「開放→所定荷重まで圧縮→開放」のサイクルを一万回繰り返した。
サイクル終了後、2−1)と同様の手順で漏洩量を測定した。
3.耐プラズマ性評価試験方法
3−1)初期耐プラズマ性
図6に示したように、略円盤形状の上部材80および下部材82からなり、下部材82に試料サンプル装着用のあり溝84が形成されているアルミ製のプラズマ評価用ジグを作成した。試料サンプル10をプラズマ評価用ジグの下部材82に装着した後、上部材80を所定締付荷重85kgfとなるように、ボルトで締付けた。そして、試料サンプルを装着した評価用ジグを図7に示したように、プラズマCVD装置の下部電極の上に載置して、下記条件でプラズマを照射した。
プラズマ出力:500W
照射時間:3時間
導入ガス:酸素180sccm/CF4 20sccm
真空度:0.6Torr
治具隙間:0.1mm〜0.2mm
3−2)繰り返し使用模擬サイクル後の耐プラズマ性
3−1)とは別試料を用いて評価した。
試料を3−1)のジグに装着した後、2−2)と同様にジグを試験機(株式会社 島津製作所製油圧ターボ式試験機)に固定し、「開放→所定荷重まで圧縮→開放」のサイクルを一万回繰り返した。サイクル終了後、3−1)と同様の手順でプラズマを照射した。
4.試験結果
試験結果を表に示す。各試料サンプルの優劣を○または×の2段階で評価
実施例はシール性、耐プラズマ性共にサイクル後も良好であった。
従来例1では、繰り返しサイクル後の耐プラズマ性が十分ではなかったが、樹脂部が繰り返し圧縮と共に緩和が進行し、相手面との十分な密着を生じるだけの反発力を生じなくなったためと考えられる。
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、上記実施例では、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体装置に適用した場合について説明したが、本願発明の複合シール材は、その他の環境の厳しい条件で使用するその他の装置のシール部分にも用いることも可能である。また、あり溝以外のシール溝にも適用可能である。

Claims (7)

  1. シール溝(2)に装着される複合シール材(10)であって、
    前記シール溝(2)における外周側に配置され弾性部材からなる第1のシール部材(6)と、
    前記シール溝(2)における内周側に配置され前記第1のシール部材(6)よりも硬質の材料からなる第2のシール部材(8)とを備え、
    前記第1のシール部材(6)は、その厚さ方向略中間部の径内方側から径内方に向かって横方向凸部(12)が突出して形成されているとともに、
    前記横方向凸部(12)は、その上方側の側端面(12a)が略平坦に形状されているとともに、その下方側の側端面(12b)が前記シール溝(2)の底面(26)側に突出して形成されており、
    前記第2のシール部材(8)は、両端部の上方フランジ部(14)および下方フランジ部(16)と、これら上方フランジ部(14)および下方フランジ部(16)間を連結する略直線状の内壁部分(18)とにより、断面略コ字状に形成されるとともに、該下方フランジ部(16)は、その下面側が前記シール溝(2)の底面(26)側に向かって膨出したR形状に形成されており、
    前記第1のシール部材(6)と前記第2のシール部材(8)とが一体的に組み付けられた状態で、前記横方向凸部(12)と前記第2のシール部材(8)の略直線状の内壁部分(18)との間に、空所(20)が確保されるとともに、前記横方向凸部(12)の下方側の側端面(12b)の下端が、前記下方フランジ部(16)の下端よりも径内方に位置するように構成されていることを特徴とする複合シール材。
  2. 前記第1のシール部材(6)と前記第2のシール部材(8)とは、互いの会合面の何れか一方に凸部が、いずれか他方に凹部が形成され、これら凸部と凹部が互いに嵌合されて組付けられていることを特徴とする請求項1に記載の複合シール材。
  3. 前記第1のシール部材(6)と前記第2のシール部材(8)との会合面には接着剤が介在されていることを特徴とする請求項1または2に記載の複合シール材。
  4. 前記第1のシール部材(6)が、ゴムから構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の複合シール材。
  5. 前記第1のシール部材(6)を構成するゴムが、フッ素ゴムから構成されていることを特徴とする請求項に記載の複合シール材。
  6. 前記第2のシール部材(8)が、合成樹脂から構成されていることを特徴とする請求項1またはに記載の複合シール材。
  7. 前記第2のシール部材(8)を構成する合成樹脂が、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂から選択した1種以上の合成樹脂から構成されていることを特徴とする請求項に記載の複合シール材。
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