JP4754135B2 - 減圧下にある装置からの液体の抜出し装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は減圧下にある装置からの液体、特に固形物を含む可能性のある液体の抜出し装置に関するものである。本発明に係る液体抜出し装置を用いると、例えば重合性物質の減圧蒸留装置から、塔底の蒸留残渣や塔頂の還流槽からの凝縮液の抜出しを、減圧蒸留装置の運転に支障を与えることなく行うことができる。
【0002】
【従来の技術】
重合し易い物質、例えばアクリル酸やメタクリル酸、又はこれらのエステル等を蒸留精製する際には、重合を避けるため、重合防止剤を添加し、かつ減圧下で蒸留が行われる。しかし重合を完全に阻止することは不可能であり、通常は若干の重合が避けられない。特に蒸留装置の運転条件がなんらかの事情により大きく変動したりすると、急激に重合が進行することがある。従って蒸留装置の塔底から抜出される蒸留残渣中には若干の重合物が存在しているし、塔頂の還流槽の凝縮液中にも重合物が含まれていることがある。
【0003】
塔底の蒸留残渣を外部に抜出したり、塔頂の還流槽の凝縮液を外部に抜出したり蒸留塔に還流させるには、ポンプの助けをかりなければならない。しかし重合物などの固形物を含む液体をポンプに直接供給すると、固形物がポンプのケーシング部に付着したり、メカニカルシール部分に入り込んだりする。このような現象が起こると、この部分で流れが停滞するので蒸留残渣中の重合性物質の重合が進行し、ポンプの運転に重大な支障を生じ、最終的にはポンプの運転を停止せざるを得なくなる。また、ポンプを通過した固形物は、ポンプの吐出側に設置されている流量計や制御弁の閉塞を引き起すおそれがある。従って通常はポンプの上流側にストレーナを設置して固形物がポンプに供給されないようにしている。またストレーナが固形物で閉塞した場合にも蒸留塔の運転が続行できるように、ストレーナは2台並列に設置されている。作動中のストレーナが閉塞した場合には、弁の切替により直ちに並設されている予備のストレーナを作動させ得るようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に減圧蒸留装置からの液体の抜出しポンプのストレーナを予備のものに切替えると、ポンプの作動に異常を生じ易い。また重合性物質の蒸留精製の場合には、還流槽の凝縮液の抜出しポンプのストレーナを切替えると、還流槽の凝縮液中に重合物が生成してくることがある。塔底から蒸留残渣を抜出すポンプのストレーナの切替えの場合にも、塔内における重合物の生成が増加することがある。
【0005】
本発明者らはその原因を探究した結果、これが予備ストレーナに含有されている空気に起因することを見出した。すなわち固形物で閉塞したストレーナは、開放して掃除したのち予備ストレーナとするが、これらの作業は大気中で行われるので、予備ストレーナには大気圧の空気が存在している。従ってこの予備ストレーナを作動させると、内部の空気が上流側に逆流して減圧下にある装置に流入したり、下流のポンプ、更にはポンプの吐出液が流入する装置に流入したりする。その結果、ポンプの運転は乱され、場合によっては運転を停止せざるを得なくなる。
【0006】
また、ポンプの作動の乱れや空気の流入により、蒸留装置内における蒸気と液体との流れが乱れ、その結果、重合性物質の重合が促進される。すなわち、重合性物質の蒸留精製に際しては、塔頂の凝縮器に重合防止剤を供給して凝縮液が重合しないようにしているが、凝縮器における蒸気の流れが乱れると、局所的に重合防止剤の濃度の稀薄な凝縮液が生成し、重合が起きるものと考えられる。また、塔底から蒸留残渣を抜出すポンプの予備ストレーナの空気が逆流して蒸留塔に流入すると、塔内における蒸気と液との流れが乱れ、局所的に液の滞留や重合防止剤濃度の稀薄な部分が生じ、重合が促進されるものと考えられる。従って本発明は、このような予備ストレーナに含有されている空気により引起こされる運転障害を回避することのできる液体の抜出し装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る、減圧下にある装置からの液体の抜出し装置は、上流端が減圧下にある装置に開口しており、かつポンプを有する液体抜出し管;ポンプの上流側の液体抜出し管に、相互に並列となるように接続されている複数のストレーナ;各ストレーナの上流側と下流側とに設けられている弁、及びこれらの弁で挟まれた部分の空気を排出する排気手段;各ストレーナについてその上流側と下流側との弁で挟まれた部分と、ポンプの下流側の液体抜出し管とを連絡する分岐管;を有することを特徴とするものである。そして予備ストレーナへの切替に際しては、先ず弁の切替により分岐管を介してポンプの吐出液を予備ストレーナに導入して、予備ストレーナ内の空気を吐出液で置換し、しかる後に予備ストレーナを作動させる。従って予備ストレーナ内の空気による運転障害を回避することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明を図面に基いて更に具体的に説明する。図1は本発明に係る液体抜出し装置の1例である。A,Bはストレーナである。ストレーナとしては一般の化学装置で用いられているものを用いればよく、例えばY型ストレーナ、バケット型ストレーナ等が用いられる。Cはポンプであり、場合によってはストレーナと同じく予備のポンプも並設することがある。Dは上流側液体抜出し管、Eは下流側液体抜出し管、Fは分岐管である。ストレーナAの上流側と下流側には、それぞれ弁a,bが設けられており、かつストレーナAには排気弁hが設けられている。ストレーナBにも上流側及び下流側にそれぞれ弁c,dが設けられており、かつ排気弁iがストレーナBに設けられている。排気弁h及びiは、それぞれ弁a,b又はc,dで挟まれた部分の空気を、分岐管Fを経て供給されるポンプ吐出液で追出して排気するためのものであり、従って弁a,b又はc,dで挟まれた部分の最も高い位置に設ける。なお、図1では分岐管はストレーナAと弁aとの間に開口しているが、これはストレーナAと弁bとの間に開口していてもよい。ストレーナBについても同様にストレーナの下流側に開口していてもよい。
【0009】
この液体抜出し装置の作動について説明すると、ストレーナAが作動中には弁a,bが開いている以外は、全ての弁は閉じている。ストレーナAからストレーナBへの切替に際しては、弁i,gを開とし、次いで弁eを徐々に開いてポンプの吐出液を分岐管Fを経てストレーナBに流入させる。ストレーナBを含め、弁c,dで挟まれた部分の空気は、吐出液で追い出されて排気弁iから排気される。弁c,dで挟まれた部分が吐出液で完全に置換されたならば、弁e,g,iを閉め、弁c,dを開けて、ストレーナBを作動させる。次いで弁a,bを閉じて、ストレーナAをラインから切離す。ストレーナAは次いで弁j,hを開いて内部の液体を抜出したのち、開放して内部を掃除し、予備ストレーナとする。分岐管Fの内部の液体も弁kを開けて抜出しておくのが好ましい。
【0010】
本発明に係る液体抜出し装置を、図2に示すアクリル酸を精留して高純度のアクリル酸とする減圧蒸留装置に適用した場合について、以下に説明する。図2において、Gは蒸留塔、Hはリボイラー、Kはリボイラー供給ポンプ、Mは還流槽、Nは凝縮液抜出しポンプ、Rは塔底液抜出しポンプ、P及びQは凝縮器である。塔頂及び塔底には、それぞれポンプN及びポンプRを含む、図1に示す液抜出し装置が取付けられている。ストレーナはいずれもバスケット型ストレーナである。なお、図2には重合防止剤供給設置、真空発生設備その他の付帯設備は省略されている。
【0011】
蒸留塔を塔頂圧力3kPa、塔底圧力11kPaで運転した。運転中に塔頂及び塔底の液抜出し装置のストレーナAからBへの切替を前述の方法で行ったところ、ポンプの運転に変化はなく、また塔底と塔頂との差圧も変化しなかった。3ヶ月後に塔頂及び塔底の液抜出し装置のストレーナBを再び前述の方法でストレーナA切替えて、ストレーナBの内部を点検したが、いずれも重合物は見当らなかった。
【0012】
これに対し、塔頂及び塔底の液抜出し装置のストレーナAからBへの切替えを、他の弁は閉じたままで弁c,dを徐々に開ける方法で行うと、いずれもポンプが異常音を発し、かつ蒸留塔の圧力が急激に変動した。これはストレーナBを含む弁c,dで挟まれた部分の空気がポンプを経て、又は逆流して蒸留塔に流入したためと考えられる。しばらくしてポンプの異常音が無くなったので、弁a,bを閉じてストレーナの切替を完了した。引続き蒸留塔の運転を継続したが、塔底と塔頂との差圧が徐々に上昇してきた。そこで塔頂及び塔底の液抜出し装置のストレーナBを再びストレーナAに切替えて、ストレーナBの内部を点検したところ、いずれも重合物が見出された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液抜出し装置の1例を示す図である。
【図2】本発明に係る液抜出し装置が適用される、減圧蒸留塔の1例である。
【符号の説明】
A ストレーナ
B ストレーナ
C ポンプ
D 上流側液体抜出し管
E 下流側液体抜出し管
F 分岐管
G 蒸留塔
H リボイラー
K リボイラー供給ポンプ
M 還流槽
N 凝縮液抜出しポンプ
P 凝縮器
Q 凝縮器
R 塔底液抜出しポンプ
Claims (3)
- 上流端が減圧下にある装置に開口しており、かつ途中にポンプを有する液体抜出し管;ポンプの上流側の液体抜出し管に、相互に並列となるように接続されている複数のストレーナ;各ストレーナの上流側と下流側とに設けられている弁;これらの弁で挟まれた部分の空気を排出する排気手段;各ストレーナについてその上流側と下流側との弁で挟まれた部分と、ポンプの下流側の液体抜出し管とを連絡する分岐管;を有し、
前記排気手段が、各ストレーナについてその上流側と下流側との弁で挟まれた部分に分岐管から液体を導入したときに、液体で押出されたこの部分の空気を排気することを特徴とする減圧下にある装置からの液体の抜出し装置。 - 減圧下にある装置が、重合性物質の減圧蒸留装置であることを特徴とする請求項1記載の液体の抜出し装置。
- 減圧下にある装置が、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらのエステルより成る群から選ばれた重合性化合物の減圧蒸留装置であることを特徴とする請求項1記載の液体の抜出し装置。
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