JP4753553B2 - 移送方法及び溶液製膜方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ドープの製造方法及び溶液製膜方法に関し、製膜されたフィルムは、偏光板保護フィルム,偏光板,液晶表示装置,光学補償フィルム,写真感光材料などに好ましく用いられる。
ポリマーは、様々な用途で使用される。例えばセルロースアシレート(以下、TACと称する)をフィルム状とし、写真感光材料のベースフィルムとしたり、液晶表示装置に用いられる偏光板保護フィルムとしたりして用いられる。フィルムの製造方法としては、ポリマーを加熱して溶融状にして製膜する溶融製膜法や、溶媒とポリマーなどを含むドープを調製して製膜する溶液製膜法が知られている。溶液製膜方法により得られたフィルムは、光学等方性に優れており光学用フィルムの製造方法として好ましく用いられる(例えば、非特許文献1参照。)。
発明協会公開技報公技番号2001−1745号
ドープは、その製造工程でゲル状物質を発生することがある。ゲル状物質が発生すると、攪拌などを行っても再溶解し難いので、濾過により除去している。または、溶解工程を再度行い再溶解させている。しかしながら、濾過での除去は、濾過装置の濾材の寿命を極端に短くし、濾材の交換頻度が高まり、連続製膜に支障が生じる。また、再度、溶解工程を行うことは、ドープ製造工程において、1工程増加するため、生産性を著しく低下させる問題もある。また、溶解工程では、通常原料を加熱したり冷却したりするので、その温度変化による原料の特性の悪化が問題となる場合もある。なお、本発明においてゲル状物質とは、溶質などがゼリー状に固化した不可逆性の物質を意味する。
また、ゲル状物質を含んだドープを用いて溶液製膜を行った場合には、ゲル状物質がフィルム中に混入し、製品品質を落とす原因となる問題も生じる。さらに、ドープの調製,移送,保存の際には、通常熱媒体を用いた熱交換器により保温を行うが、熱交換効率が悪い場合には、ドープ温度の調整が不充分となり、低温部分で皮張りと称される異物が発生する場合がある。
本発明は、ドープの温度調整を厳密に行うドープ製造方法及び溶液製膜方法を提供するものである。
本発明は、ドープの調製,移送,保存の際に低温部分による異物の発生を抑制するドープ製造方法及び溶液製膜方法を提供するものである。
本発明は、ゲル状物質の発生を防止するドープ製造方法及びゲル状物資の発生を防止したドープを用いる溶液製膜方法を提供するものである。
本発明は、偏光板用の保護フィルム,偏光板,光学補償フィルム,写真感光材料及び液晶表示装置などに好ましく用いられるフィルムを製膜できる溶液製膜方法を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、ドープからのゲル状物質の発生と、ドープ温度あるいはドープの温度履歴とが、非常に密接な関係があることを見出した。ドープ中でポリマーの一部は、会合体を形成しており、この会合体がその後にゲル状物質となることを見出した。図9に示すように会合体の会合量(=会合体平均分子量/平均分子量。なお、平均分子量は、数平均分子量Mn,重量平均分子量Mwのいずれを用いても良い)Aは、ドープ温度T(℃)が低いほど大きくなる。本発明者らは、ポリマーにTACを用いた場合には、会合量の大きさ(本発明においては、見かけ上の分子サイズを意味する)が極大値Amax となる温度(以下、極大温度と称する)Tc(℃)が存在することを見出した。極大値Amax が存在する理由は、おそらくドープ中のTACに相転移が生じるためであると思われる。
さらに、本発明者が検討を重ねた結果、ドープ温度T(℃)が、極大温度Tc(℃)を横切ることでゲル状物質の誘発に寄与していることを見出した。極大温度Tc(℃)より高い温度を高温TH (℃)とし、低い温度を低温TL (℃)とする。また、極大温度Tc(℃)の横切りとは、ドープ温度T(℃)を低温TL (℃)から高温TH (℃)とする加温調整、ドープ温度T(℃)を高温TH (℃)から低温TL (℃)とする冷却調整を意味する。本発明者は、極大温度Tc(℃)を2回以上横切る履歴を有するドープからゲル状物質が発生しやすいことを見出した。その温度履歴を有するドープからは、通常の会合体と異なり、高温でも単分子に戻らない非可逆性の会合体が生成され、これからゲル状物質が生成されると思われる。
そこで、本発明では、ドープ温度T(℃)をできるだけ一定に保つことで、ゲル状物質の発生を抑制する。ドープ温度T(℃)は、溶媒組成、ポリマーの素材によって異なるが、溶媒の沸点Tbp(℃)〜(Tbp−30)℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくはTbp(℃)〜(Tbp−15)℃の範囲とすることである。また、溶媒が混合溶媒の場合には、それら溶媒のうち、もっとも沸点が低い溶媒の沸点Tbpmin (℃)〜(Tbpmin 〜30)℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくはTbpmin (℃)〜(Tbpmin −15)℃の範囲とすることである。なお、混合溶媒が共沸点Tap(℃)を有する場合には、その共沸点Tap(℃)〜(Tap−30)℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくはTap(℃)〜(Tap−15)℃の範囲とすることである。なお、Tbpmin (℃)とTap(℃)とを有する場合には、いずれか低い温度の値を用いる。これら、ドープ温度T(℃)の保温最低温度Tmin (℃)を図9に図示する。
またドープ中に溶存している気体は、低圧にすると気泡として現れる。このドープと気泡との間に気液界面が生じて、皮張りが発生する。そこで、本発明のドープ製造方法あるいは溶液製膜方法に用いられる配管または容器内のドープを0.05MPa以上加圧することが好ましい。
本発明は、セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを移送する移送方法において、(前記ドープ中で形成された前記セルロースアシレートの会合体の平均分子量)/(前記セルロースアシレートの平均分子量)で求める会合量と、ドープの温度との関係から、前記会合量が極大値となるドープの温度Tcを求めて、前記温度Tcよりも高い温度領域を第1領域、低い温度領域を第2領域とするときに、ドープが通る管と、この管の両端にそれぞれ配され、前記管に対応するようにJIS規格で規定される外径よりも大きな外径をもち、ボルト孔が形成されたフランジとを備えるとともに、一方の前記フランジから他方の前記フランジに亘って管の外周面との間に熱媒体の流路を形成するように管を覆うジャケットを備える移送手段により、熱媒体とドープとの間で熱交換をすることにより、ドープの温度が第1領域と第2領域との一方から他方へ変化しないようにドープの温度を制御しながらドープを移送することを特徴として構成されている。また、本発明は、セルロースアシレートと溶媒とを含むドープからフィルムを製造する溶液製膜方法において、(前記ドープ中で形成された前記セルロースアシレートの会合体の平均分子量)/(前記セルロースアシレートの平均分子量)で求める会合量と、前記ドープの温度との関係から、前記会合量が極大値となる前記ドープの温度Tcを求め、前記温度Tcよりも高い温度領域を第1領域、低い温度領域を第2領域とするときに、移送すべきドープを通す管と、この管の両端にそれぞれ配され、前記管に対応するようにJIS規格で規定される外径よりも大きな外径をもち、ボルト孔が形成されたフランジとを備えるとともに、一方の前記フランジから他方の前記フランジに亘って前記管の外周面との間に熱媒体の流路を形成するように前記管を覆うジャケットを備える移送手段により、前記ドープと前記熱媒体との間で熱交換をすることにより、前記ドープの温度が前記第1領域と前記第2領域との一方から他方へ変化しないように前記ドープの温度を制御しながら前記ドープを移送し移送されてきたドープを流延ダイから支持体上に流延して流延膜を形成する流延工程と、前記支持体から剥ぎ取った前記流延膜を乾燥する乾燥工程とを有することを特徴として構成されている。
本発明のドープ製造方法によれば、ポリマーと溶媒とを含むドープの調製工程,移送工程または保存工程の少なくとも1工程を含むドープ製造方法において、前記ドープと固体壁を介して熱伝達させる手段を用い、前記ドープを所定の温度に保持するために前記ドープ側の熱伝達係数Hd(W・m-2・K-1)が、前記固体壁面を介して前記ドープと相対する側の熱伝達係数Hm(W・m-2・K-1)よりも小さく、前記ドープ側を基準とする総括伝熱係数Uを10(W・m-2・K-1)よりも大きくする工程が、少なくとも前記いずれか1工程で行うから、ドープ製造中のゲル状物質,皮張りなどの異物の発生を抑制できる。
また、本発明によれば、
c)前記熱伝達係数Hd(W・m-2・K-1)と、前記熱伝達係数Hm(W・m-2・K-1)とを
2<(Hm/Hd)<1000の関係とする、
d)前記ドープの0℃〜100℃における粘度Vd(Pa・s)と、
前記熱媒体の0℃〜100℃における粘度Vm(Pa・s)とを
10<(Vd/Vm)<106 の関係とする、
e)前記ドープの定圧比熱Cd(J・K-1・g-1)と、
前記熱媒体の定圧比熱Cm(J・K-1・g-1)とを
0.1<(Cd/Cm)<2の関係とする、
f)前記ドープが前記容器または管に滞留する時間Td(s)と、
前記熱媒体が前記熱媒体用流路に滞留する時間Tm(s)とを
0<(Tm/Td)<100の関係とする、
前記c)〜f)の実験条件を適宜選択することで、ドープの加温条件を最適なものとすることができる。
本発明のドープ製造方法は、管の長手方向における温度分布を5℃以内とすることで、ポリマー会合体の発生を抑制でき、ゲル状物質の発生を防止できる。また、ポリマー会合体の発生を抑制するため、
前記ドープ温度T(℃)を
g−1)前記溶媒の沸点Tbp(℃)以下(Tbp−30)℃以上に調整する、
g−2)前記溶媒に混合溶媒を用いた場合であって、前記混合溶媒を構成する各溶媒の沸点のうち最も低い沸点温度Tbpmin (℃)以下(Tbpmin −30)℃以上に調整する、
g−3)前記溶媒に用いられる混合溶媒が共沸混合物であって、
共沸点Tap(℃)以下(Tap−30)℃以上に調整する、
のいずれかの範囲にドープ温度T(℃)を調整することで、ポリマー会合体の発生を抑制でき、ゲル状物質,皮張りなどの異物の発生を防止できる。
前記ドープ中で前記ポリマーが形成する会合体の大きさが温度Tc(℃)で極大となる場合であって、前記ドープの温度調整の際に、前記温度Tc(℃)未満から前記温度Tc(℃)より高温とする加温調整、前記温度Tc(℃)より高温から前記温度Tc(℃)未満とする冷却調整の温度調整を合計2回以下とすることで、会合体に起因するゲル状物質の発生を防止できる。また、前記熱伝達手段に容器または管を用い、前記容器または管内を0.05MPa以上加圧することで、ドープ中の溶存気体の発泡を防止して皮張りの発生を防止する。
本発明の前記熱伝達手段に管を用い、前記管の外周面から熱媒体で温度調整を行い、前記管の長手方向の接合部から5cm以内まで前記熱媒体を供給できる、フルジャケットを用いることで、ドープ調製,移送の際にドープ温度の温度分布を減少させて低温部が生じないようにすることで、前記低温部に起因する皮張りの発生を防止できる。
本発明のドープ製造方法は、前記容器または管の外面に真空断熱層を形成させることでもドープ温度を略一定に保持でき、ゲル状物質,皮張りなどの発生を防止できる。
本発明の溶液製膜方法は、前記ポリマーにセルロースアシレートを用い、前記溶媒に少なくとも酢酸メチルを含むものを用い、本発明に係るドープ製造方法によりドープの調製,移送,保存を行うと、前記ドープ中に会合体の発生を抑制でき、会合体に起因するゲル状物質の発生を防止できる。そのドープを用いて製膜されたフィルムはゲル状物質含有による光学特性の悪化が無く、光学特性に優れている。また、そのドープは、共流延法,逐次流延法の少なくともいずれかにより溶液製膜を行う際のドープとして用いることもできる。
本発明に係る溶液製膜方法により製膜されたフィルムは、光学特性に優れているため保護フィルム,偏光板,前記偏光板を用いて構成された液晶表示装置,光学補償フィルム,前記光学補償フィルムを用いて構成された液晶表示装置,前記製膜されたフィルムを用いて構成された写真感光材料のいずれも光学特性に優れている。
本発明の溶液製膜方法は、ドープ調製工程2を経た後に、濾過工程3, 保存工程4, 流延工程5及び製膜工程6により行われる(図1参照)。各工程間のドープの移送工程(図1中で矢印で示している)7は、後に説明する移送装置,移送管を用いて行う。図1に示す工程図は、本発明を実施するための一例であり、図示したものに限定されるものではない。例えば、濾過工程3の後に、ドープを保存することなく、移送して流延工程5を行うことも可能である。
[ポリマー]
本発明に用いられるポリマーは、特に限定されるものではない。具体的には、ポリアミド類, ポリオレフィン類, ノルボルネン類,ポリスチレン類,ポリカーボネート類,ポリスルホン類,ポリアクリル酸類,ポリメタクリル酸類,ポリエーテルエーテルケトン(PEEK;Polyetheretherketone)類,ポリビニルアルコール類,ポリビニルアセテート類,セルロース誘導体(例えば、セルロースの低級脂肪酸エステル,セルロースアシレートなど)などが挙げられる。
なお、用いられるポリマーは、製膜されたフィルムの光学異方性が小さくなるセルロース誘導体、好ましくはセルロースアシレート,より好ましくはセルロースアセテート、さらに好ましくはセルローストリアセテート、最も好ましくは酢化度59.5%〜62.5%のセルローストリアセテートを用いることである。
TACの原料であるセルロースには、化1で示すように、グルコース単位中でC2位,C3位及びC6位に水酸基が結合している。これら水酸基をアシル化(−CO−R)することによりTACが得られる。TACは、アシル化の割合(置換度),位置により物性,例えば溶解度などを調整できる。特に、6位の水酸基は、セルビオーズ基の副鎖であり、置換度,置換基を選択することによりTACの物性、さらにそのTACを含むドープの物性、例えば粘度,定圧比熱の調整を行うことが可能となる。
Figure 0004753553
[溶媒]
溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン,クロロホルムなど),エステル類(例えば、蟻酸メチル,酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸アミル,酢酸ブチルなど),エーテル類(例えば、ジオキサン,ジオキソラン,テトラヒドロフラン,ジエチルエーテル,メチル−t−ブチルエーテルなど),芳香族炭化水素類(例えば,ベンゼン,トルエン,キシレンなど),脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン,ヘプタンなど),アルコール類(例えば、メタノール,エタノール,n−ブタノールなど),ケトン類(例えば、シクロペンタノン,アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノンなど)などが挙げられる。また、これら溶媒は、単独で用いても良いし、混合させた混合溶媒として用いても良い。
なお、本発明においてポリマーにTACを用いた際には、酢酸メチル(Tbp=56.3℃)を主溶媒とした混合溶媒を用いることが好ましい。酢酸メチルは、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類と異なり、環境保全に優れており、溶液製膜後の廃液の処理が容易である。なお、混合溶媒中の酢酸メチルの組成比は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることが好ましい。混合溶媒の副溶媒としては、酢酸メチルと親和性に優れ、かつ沸点が30℃〜120℃の範囲にあり取り扱いが容易なものを用いることが好ましい。例えば、そのような溶媒としては、シクロペンタノン,アセトン,メタノール,エタノールなどが挙げられる。
[添加剤]
製膜されたフィルムの特性を好ましいものとするために、ドープ中に添加剤を添加しても良い。添加剤としては、可塑剤(トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する),ビフェニルジフェニルホスフェート,ジペンタエリスリトールヘキサアセテートなど),紫外線吸収剤(例えば、オキシベンゾフェノン系化合物,ベンゾトリアゾール系化合物など),マット剤(例えば、二酸化ケイ素の微粒子など),増粘剤,オイルゲル化剤,レターデーション制御剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。添加剤はポリマーを溶媒に溶解させるときに添加しても良いし、溶液製膜を行っている際に、調製されたドープにインラインで混合させても良い。また、添加剤を添加する際に、添加剤のみを添加しても良いし、添加剤を溶媒に溶解させた添加剤溶液を添加しても良い。
本発明の特徴は、ドープ調製,移送,保存の際にドープ温度T(℃)を一定の温度範囲に保持することである。温度保持のためにドープの物性,特に粘度及び定圧比熱を好ましいものとするように調整し、ドープを製造することが重要である。この点については、後に説明する。
[ドープ調製工程]
ドープを冷却溶解法で製造する際には、始めにTACを溶媒により膨潤させ、膨潤液を作製する。膨潤液の液温は、10℃〜60℃の範囲が好ましく、通常は室温で行うことが、取り扱いの容易さから好ましい。ポリマーを溶媒中で均一に膨潤させるため、攪拌を行うことが好ましい。攪拌方法は、公知の方法を用いることができる。なお、攪拌時間は特に限定されないが、5分〜120分であることが好ましい。5分未満であると均一に膨潤しないおそれが生じる。また、120分より長いと生産性の低下を招くため好ましくない。このような場合には、溶媒の選択、混合溶媒を用いている際には、溶媒種類の選択,組成比の変更などを適宜行う。膨潤液に添加剤を添加しても良い。添加剤は、直接膨潤液に添加しても良いし、添加剤が溶解している添加剤溶液を膨潤液中に混合させても良い。
膨潤液を図2に示すドープ調製装置10のタンク11に投入する。ドープ調製装置10は、シリンダ(管)12内にスクリュー13が設けられている。スクリュー13は、モータ14の回転が減速機(図示しない)によって減速された回転力が伝達され回転する。膨潤液を混合することにより溶解が進行してドープ15が得られる。シリンダ12の外周にはジャケット16が設けられており、熱媒体流路17が形成されている。熱媒体流路17内に熱媒体18を供給することで、ドープ(膨潤液であるものも含む)15の温度分布を5℃以下とすることができる。なお、熱媒体18の供給方向は、下流側開口部16aから上流側開口部16bへ送る向流が好ましいが、並流で送ることもできる。また、シリンダ12内の膨潤液またはドープ15に溶存している気体が発泡することによる皮張りの発生を抑制するために、シリンダ12内を大気圧から0.05MPa以上加圧しておくことが好ましい。
本発明においてドープ15の調製方法は、前述した方法に限定されるものではない。例えば、ミキシングタンク中にポリマー,溶媒,所定の添加剤を投入して、攪拌翼で攪拌し、液温を40℃〜130℃の温度範囲とする加温溶解法を適用することも可能である。また、ドープ調製工程2における各実験条件については、移送工程の説明の後に再度説明する。
[移送工程]
ドープ調製装置10の下流側には、ガスケット20を介して移送装置30がボルト21,22により締結されている。ドープ15を移送装置30で濾過装置(図示しない)まで移送する。図3の移送装置30は、シリンダ(管)31にフランジ32,33が取り付けられている。また、シリンダ31を覆うようにジャケット34が取り付けられ、熱媒体流路(以下、流路と称する)35が形成されている。ジャケット34には、熱媒体供給及び排出用に下流側開口部34aと上流側開口部34bとが形成されている。熱媒体36を下流側開口部34aから供給して、流路35を通して上流側開口部34bから送り出す向流であることが好ましいが、並流で供給しても良い。熱媒体36は配管37を通り、熱媒体調整装置38に送られ、温度調整などがなされる。その後に配管39を通り流路35に供給される循環式であることがコストの点から有利であるが、本発明ではその形態に限定されるものではない。
シリンダ31が熱媒体36と接する面をシリンダ外面31a、ドープと接する面をシリンダ内面31bと称する。シリンダ31の温度調整を行うために、シリンダ外面31aの下流側に温度計40、上流側に温度計41を設けることが好ましい。また、移送装置30におけるドープ15の流路(以下、ドープ流路と称する)42の移送方向(以下、長手方向と称する)の長さをL1(m)とする。なお、ドープ流路42の長さは、図3に示すようにフランジ32,33が取り付けられている場合には、フランジ32の上流側面32aを始点とし、フランジ33の下流側面33aを終点とする。また、流路35の長さをL2(m)とする。フランジ32,33には、ボルト孔43,44が形成されており、他の装置とボルトにより締結することができる(図1参照)。
図4に熱媒体36の流れに直角な断面を示し、ドープ15とシリンダ31、シリンダ31と熱媒体36それぞれの熱伝達について、ドープ15が熱媒体36より低温であり、熱媒体36を用いてドープ15を保温する例を用いて説明する。なお、本発明に係る熱伝達係数Hd,Hm、総括伝熱係数U、ドープ及び熱媒体の粘度Vd,Vm、ドープ及び熱媒体の定圧比熱Cd,Cm、ドープ及び熱媒体の滞留時間Td,Tmについても併せて説明する。
本発明に係る移送装置30による熱媒体36とドープ15との熱交換は、境膜により行われる。熱媒体36はシリンダ外面31a近傍で、層流状態に保たれている流体境膜(以下、熱媒体境膜と称する)36aが形成されている。熱媒体境膜36aでの伝熱は主として熱伝導で行われる。また、熱媒体境膜36aより外側を流れる熱媒体(以下、主流熱媒体と称する)36bは、通常乱流状態で流れており、主流熱媒体36bとシリンダ外面31aとの熱伝達は、対流により行われる。主流熱媒体36bの平均温度をT1(℃)とし、シリンダ外面温度をTs(℃)とする。
ドープ15も同様にシリンダ内面31b近傍で、層流状態に保たれている流体境膜(以下、ドープ境膜と称する)15aが形成され、ドープ境膜15aより内側に流れるドープ(以下、主流ドープと称する)15bは乱流で流れている。主流ドープ15bとシリンダ内面31bとの伝熱も熱伝達で行われる。主流ドープ15bの平均温度をT2(℃)とし、シリンダ内面温度をTs’(℃)とする。シリンダ外面31aからシリンダ内面31bの伝熱は、熱伝導で行われる。なお、熱媒体36,シリンダ31,ドープ15の温度こう配の概略を温度曲線TCとして図示する。
熱媒体平均温度T1(℃),シリンダ外面温度Ts(℃),シリンダ外面面積A1(m2 ),熱媒体とシリンダとの熱伝達係数(熱伝達率とも称される。以下、熱媒体側熱伝達係数と称する)Hm(W/(m2 ・K))とした場合に、主流熱媒体36bとシリンダ外面31aとの伝熱速度q1(W)は、下記式(1)から算出される。
q1=Hm・A1・(T1−Ts)・・(1)
シリンダ内面31bと主流ドープ15bとの伝熱速度q2(W)も、シリンダ内面温度Ts’(℃),シリンダ内面面積A2(m2 ),ドープ平均温度T2(℃),シリンダとドープとの熱伝達係数(以下、ドープ側熱伝達係数と称する)Hd(W/(m2 ・K))とした場合に、下記式(2)から算出される。
q2=Hd・A2・(Ts’−T2)・・(2)
また、シリンダ31を貫通する伝熱速度q3(W)は、シリンダの熱伝導率Ks(W/(m・K)),シリンダ対数平均値面積Alm(m2 ),シリンダ厚さL3(m),シリンダ外面温度Ts(℃),シリンダ内面温度Ts’(℃)とした場合に、下記式(3)から算出される。
q3=Ks・Alm・(Ts−Ts’)/L3・・(3)
なお、この場合のシリンダの熱伝導率Ksは、シリンダ内面31bの温度を基準温度として用いる。
熱媒体36がドープ15の温度調整を行う際に、伝熱速度qは、q1=q2=q3=qの関係となる。そこで、式(1)〜(3)を整理すると、
q=(T1−T2)/{(1/Hm・A1)+(L3/Ks・Alm)+(1/Hd・A2)}・・(4)
となる。
二重管式熱交換器である移送装置30の熱貫流の場合の伝熱速度q4(W)は、
q4=U・A2・(T1−T2)・・(5)
で示される。ここで、Uは、シリンダ内面面積A2(m2 )を基準とした総括伝熱係数(W/(m2 ・K))を意味し,T1は熱媒体平均温度であり、T2はドープ平均温度である。また、熱貫流伝熱速度q4=伝熱速度qであるから、式(4),(5)を整理して式(6)として示す。
1/(U・A2)=(1/Hm・A1)+(L3/Ks・Alm)+(1/Hd・A2)・・(6)となる。
式(6)中でシリンダ熱伝導率Ksが充分大きい場合には、(L3/(Ks・Alm) ≒0と見なすことができ、シリンダ厚さL3が薄い場合には、A1(シリンダ外面面積)≒A2(シリンダ内面面積)と見なすことができる。これらを用いて式(6)を変形すると、下記式(7)が得られる。
1/U=(1/Hm)+(1/Hd)・・(7)
また、
R=(1/U);全熱抵抗
Rm=(1/Hm);熱媒体側熱抵抗
Rd=(1/Hd);ドープ側熱抵抗
とすると、
R=Rm+Rd・・(8)
式(8)が得られる。
式(7)(8)より全熱抵抗を小さくする(すなわち、総括伝熱係数Uを大きくする)ためには、Rm,Rdを小さくする(すなわち、ドープ側熱伝達係数Hd,熱媒体側熱伝達係数Hmを大きくする)必要があることが分かる。そこで本発明においては
a)総括伝熱係数U>10(W・m-2・K-1
を満たすことにより熱抵抗が小さくなりシリンダ31の温度調整を容易に行うことができ、ドープ15の温度調整、特に保温を容易に行うことができる。
また、熱媒体36の熱エネルギーをドープ15に効率良く伝達するために熱媒体側熱伝達係数Hm(W・m-2・K-1)をドープ側熱伝達係数Hd(W・m-2・K-1)より大きくする。
b)熱媒体側熱伝達係数Hm>ドープ側熱伝達係数Hd
さらに、熱媒体側熱伝達速度Hmとドープ側熱伝達速度Hdとは、
c)2<(Hm/Hd)<1000
の範囲であることが好ましい。熱媒体側熱伝達係数Hmとドープ側熱伝達係数Hdとの比(Hm/Hd)が2以下であると、シリンダ31に熱が充分に供給されず、ドープ15を加温できない場合が生じる。また、(Hm/Hd)が1000以上であると、総括伝熱係数Uが、熱媒体側熱伝達係数Hmのみで決まり、シリンダ31からドープ15への伝熱がほとんど生じないためドープ平均温度T2(℃)を一定に保持することが困難になる場合がある。熱伝達係数Hm,Hdの測定方法は、ポールハウゼンの近似式で行う。
本発明においては、熱媒体36に液体を用いることが好ましい。例えば、水を流路35に流すと熱媒体側熱伝達係数Hmは、通常250W/(m2 ・K)〜5000W/(m2 ・K)程度となる。しかしながら、熱媒体36に空気を用いると、10W/(m2 ・K)〜250W/(m2 ・K)程度であり、ドープ平均温度T2(℃)を一定にすることが困難となる場合もある。そこで、本発明に用いられる液体である熱媒体36には、温水,油,ブライン(登録商標)などが挙げられる。
ドープ15及び熱媒体36のそれぞれの粘度も熱伝達に影響する。粘度が高すぎると、熱移動が生じ難くなり熱伝達係数Hd,Hmが小さくなる。また、ドープの粘度Vdと熱媒体の粘度Vmとが大きく異なると、熱伝達係数Hd,Hmもそれに伴いも変化し、それら係数が大きく異なると好ましい熱伝達係数比(2<(Hm/Hd)<1000)に制御が困難となる場合がある。そこで、本発明においては、ドープ平均温度T2(℃)におけるドープ粘度Vd(Pa・s)と熱媒体平均温度T1における熱媒体粘度Vm(Pa・s)との比を
d)10<(Vd/Vm)<106 とすることが好ましい。
(Vd/Vm)が10以下であると、ドープ15へ熱の供給を安定に行うことが困難になることがある。また、(Vd/Vm)が、106 以上であると、熱媒体36の熱がドープ15に伝わらない場合が生じる。また、ドープ平均温度T2(℃),熱媒体平均温度T1ともに0℃以上100℃以下であることが好ましい。
また、ドープ15がドープ流路42を通過する際に生じる圧力損失が1×105 Pa(≒1kgf/cm2 ) 以下となるようにドープ粘度Vd(Pa・s)やドープ流速(m/s)の制御を行うことが好ましい。圧力損失が大きくなると、その圧力に耐えられる素材からシリンダ31を作製する必要が生じ、コスト高になるおそれがある。また、通常耐圧性を向上させる際には、シリンダの厚さL3を厚くする必要が生じ、この場合には、熱貫流におけるシリンダ外面から内面への熱伝導の制御が困難となり、熱伝達係数Hm,Hdそれぞれの制御も困難となる。
ドープの定圧比熱Cd(J・K-1・g-1)と熱媒体の定圧比熱Cm(J・K-1・g-1)との関係を
e)0.1<(Cd/Cm)<2の範囲とすることが好ましい。
(Cd/Cm)を2以上とすると、ドープ15の温度上昇に必要な熱量が大きくなり、熱媒体36が有している熱量ではドープ平均温度T2(℃)に必要な量に達しない場合がある。また、(Cd/Cm)を0.1以下とすると、熱媒体36の定圧比熱が大きくなり過ぎ、ドープ平均温度T2(℃)に温度を維持する熱量より過度の熱量を含みコスト高の原因となる。
熱媒体が流路を通過する平均時間(以下、熱媒体滞留時間と称する)Tm(s)とドープ15の移送装置30中の滞留時間(以下、ドープ滞留時間)Td(s)との関係を
f)1<(Tm/Td)<100
とすることが好ましい。
(Tm/Td)が1以下であると、ドープ15の移送装置30での滞留時間が長くなり過ぎ、熱供給がスムーズにいかず、ドープが保温されない場合が生じる。また、滞留している際に、ドープ15や熱媒体36から放熱が生じて、エネルギーの無駄が発生する。また、溶媒の沸点近くで加温している場合には、ドープの変成や揮発分(主に溶媒)の蒸発が生じて、ポリマーや添加剤が析出して、皮張り発生の原因となる場合がある。また、熱媒体36の流速を速くすると伝熱の制御は容易となる。しかしながら、熱媒体36の流速を(Tm/Td)が100以上となるようにすると、熱媒体流路36の耐圧性を上げる必要が生じコスト高の原因となる。
図3に示すように、温度計40,41で測定された値は、熱媒体循環装置38に送信される。熱媒体調整装置38はそれら温度に基づき、前述した熱媒体36の平均温度T1(℃)と流速(m/s)とを調整する。シリンダ31の温度測定位置は、図示している下流側及び上流側の2箇所に限定されるものではない。さらに、他の箇所に温度計を取り付けても良い。または、シリンダ31の長手方向に渡って温度測定が可能な温度センサを取り付けて、シリンダ31の所望の箇所を測定して、その測定値に基づき熱媒体調整装置38が熱媒体平均温度T1(℃)と流速(m/s)とを調整しても良い。また、移送装置30の長手方向における温度分布は、低い方が均一な熱伝導が可能となり、ドープ成分は均一となり、かつ局所的加熱が生じることによる不純物の発生を抑制できる。しかしながら温度分布を低くする実験条件の選択は困難であり、またその実施にコストがかかり過ぎる場合があり好ましくない。そこで、本発明では、移送装置30の長手方向における温度分布を5℃以下とすることが好ましい。ドープまた、図3に示すように熱媒体の給排気口を1組とせず、長手方向に複数のジャケットを取り付け、各ジャケットの給排気口を用いて独立して熱媒体を供給する方法を適用しても良い。
ドープ15に含まれている有機溶媒が一種類の場合には、ドープ平均温度T2(℃)をその溶媒の沸点Tbp(℃)に対して、
g−1);
(Tbp−30)≦T2(℃)≦Tbp
の範囲とすることが好ましく、より好ましくは
(Tbp−15)≦T2(℃)≦Tbp
の範囲とする。沸点Tbp(℃)近傍の温度で保温することで、溶媒の溶解性の悪化に伴うポリマーなどの溶質の析出を防止でき皮張りの発生を抑制できる。また、ドープ温度を高温にすることによりドープ中に会合体の会合量が低下し、ゲル状物質の発生を抑制できる。また、溶媒の沸点以下とすることにより、溶媒の沸騰に伴う多量の溶媒の揮発を抑制でき、有機溶媒揮発に伴う溶質の析出を防止できる。
ドープ調製用溶媒は、溶解性を向上させる目的で、混合溶媒が用いられることが多い。例えば、酢酸メチルに複数種類のアルコールを混合させたものが用いられる。混合溶媒が共沸点をもたないものの組合わせの場合には、ドープ平均温度T2(℃)を混合溶媒中で最も沸点が低い溶媒の沸点Tbpmin (℃)を基準に
g−2);
(Tbpmin −30)≦T2(℃)≦Tbpmin
の範囲とすることが好ましく、より好ましくは
(Tbpmin −15)≦T2(℃)≦Tbpmin
の範囲とする。
混合溶媒が共沸混合物であるときには、ドープ平均温度T2(℃)を共沸混合物の共沸点Tap(℃)を基準に、
g−3);
(Tap−30)≦T2(℃)≦Tap
の範囲とすることが好ましく、より好ましくは
(Tap−15)≦T2(℃)≦Tap
の範囲とする。なお、混合溶媒が共沸混合物である場合に、共沸点Tap(℃)が前記沸点Tbpmin (℃)よりも高い場合には、ドープ平均温度T2(℃)の基準温度には、前記Tbpmin (℃)を適用することがドープの変成が生じ難くなることから好ましい。
移送装置30では、ジャケット34をフランジ32,33まで設けている。そのため、熱媒体36は、シリンダ34の長手方向において熱媒体流路長さL2(m)に渡り供給されるので、温度こう配の発生を抑制できる。さらに、シリンダ31とジャケット34とフランジ32,33とを一体として接続させることが好ましい。これによりシリンダ31に熱伝達された熱量が、フランジ32,33に容易に熱伝導し、シリンダ温度と略同一の温度まで加温することが可能となる。それによりドープ平均温度T2(℃)を移送装置30の長手方向全体に渡り、略一定に保持することが可能となり、フランジ32,33での溶質の析出に伴う皮張りの発生を抑制できる。なお、本発明において、図3に示す移送装置30のジャケットの形態をフルジャケットと称する。
本発明において、移送装置30の長さL1を15m以下とすることが好ましい。フランジ接合部は、前述したように熱媒体による熱伝達に起因する伝熱が生じ難く、もっぱらシリンダ31からの熱伝導による伝熱であるため、温度が冷える可能性が高い。そこで、できる限りフランジを減らしドープ流路42が長い移送装置であることが好ましい。しかしながら、あまりに長いドープ流路42を備えた移送装置は設置場所が制限されるなど配管の自由度が減少するおそれがある。また、熱媒体36が供給されない箇所は、上流側フランジ32の上流側面32aからの長さL4及び下流側フランジ33の下流側面33aからの長さL5それぞれを5cm以内とすることが好ましい。5cm以内とすることで、シリンダ31からの熱伝導によるフランジ32,33の加温のみで皮張りの発生を抑制できる。
本発明に用いられる移送装置30は、シリンダ31に取り付けるフランジをJIS規格で規定されているフランジより外径が大きなものを取り付けフルジャケットとしている。例えば、JIS 10K 25Aで規定される管をシリンダ31に用いる場合には、JIS 10K 40Aを用いることができる。なお、フランジの外径は、上流側フランジ32と下流側フランジ33とで同一であっても良いし、異なっていても良い。また、シリンダ31内のドープ15に溶存している気体が発泡することによる皮張りの発生を抑制するために、シリンダ31内を大気圧から0.05MPa以上加圧しておくことが好ましい。
図5にその一部を示した移送装置50では、シリンダ51とフランジ52との取り付け位置51aにジャケット53の端面53aを接続して熱媒体流路54を形成している。この場合にも、フランジ下流側面52aから熱媒体流路端部54aとの間隔L6を5cm以内とすることで、ドープ流路55の一部を構成するフランジ52まで加温することが可能となり、温度分布を減少させることが可能となる。
図6にその一部を示す移送装置60は、シリンダ61にフランジ62が取り付けられ、シリンダ61を覆うジャケット63が取り付けられた従来の形態のものである。フランジ下流側面62aから熱媒体64の供給最下流位置64aとの間隔L7(cm)は、通常5cmより長い。そこで、移送装置60の長手方向における温度分布を最小にするため、ジャケット外面63a,シリンダ露出面61a,フランジ上流側面62bに伝熱セメント65を塗布する。熱媒体64からシリンダ61に熱伝達された熱は、シリンダ61からフランジ62へ熱伝導すると共に伝熱セメント65によっても熱伝導してフランジ62の温度調整がなされる。なお、伝熱セメント65には、サーモンセメント,熱伝セメントT802,熱伝セメントT−3などを用いることできるが、これらに限定されるものではない。また、伝熱セメントに代えて、リボンヒータなどの補助加温装置を取り付けても良いし、伝熱セメントと補助加温装置とを同時に用いても良い。
[保存工程]
図7に示す保存装置70は、容器71にジャケット72が取り付けられ、熱媒体流路73が形成されている。また、容器71内に入れられたドープ74を均一にしておくための攪拌翼75及びその攪拌翼75を回転させるモータ76が取り付けられている。ドープ74は、配管77から容器71内に入れられる。配管77にもジャケット(図示しない)を取り付けて温度調整可能な構造のものを用いることが好ましい。熱媒体78は、図示しない供給装置によりジャケット72の開口部72aから熱媒体流路73に供給されて容器の外面(以下、容器外面と称する)71aとの間で熱伝達を行う。熱媒体78は、液体を用いることが熱伝導の点から好ましい。なお、ドープを保存する際にも、
a)総括伝熱係数U>10(W・m-2・K-1
b)熱媒体側熱伝達係数Hm>ドープ側熱伝達係数Hd
c)2<(Hm/Hd)<1000
d)10<(Vd/Vm)<106
e)0.1<(Cd/Cm)<2
の条件に従い行うことで、ドープ温度を均一に保持できるために好ましい。
例えば、200Lの攪拌タンクでは、熱媒体78が熱媒体流路73内を通過する滞留時間Tm(s)を10s〜3600sの範囲とすることが好ましい。3600sより長いと熱媒体78が有する熱量が容器外面71aに充分に熱伝達されず、容器外面71aの温度を一定に保つことが困難となる場合がある。また、そのような滞留時間Tmで熱媒体78を熱媒体流路73に供給するためには、熱媒体調整装置(図示しない)を大型化する必要が生じ、コストの点からも不利である。また、10sより短いとジャケットの抵抗が大きくなり耐圧が必要となる。
容器外面71aが熱媒体78の熱量を熱伝達で受け取ると、容器71を熱伝導して容器内面71bの温度調整がなされる。ドープ74と容器内面71bとの間で熱伝達されてドープ74の温度調整がなされる。また、熱伝達を行った熱媒体78は、ジャケットの開口部72bより排出される。熱媒体78は、熱媒体調整装置(図示しない)により温度調整,供給流量を調整しつつ循環させて用いることがコストの点から有利である。
ドープ74は、保存装置70により温度が一定に保持され保存されている。このドープ74を用いて流延工程(図1参照)5を行う際には、配管79を介して接続されているジャケット付きバルブ80の開閉度の調節により送液流量の制御を行う。なお、配管79にもジャケットを取り付け送液されているドープ74の温度調整を行うことがより好ましい。本発明において、図1に示す各工程で用いられるバルブにもジャケット付きバルブを用いることが好ましい。これは、バルブは、複数の部材より構成されているため低温部分生じるおそれがある。その低温部分でドープからポリマーなどが析出して皮張りの発生の原因となるからである。
容器71内のドープ74に溶存している気体が発泡することによる皮張りの発生を抑制するために、容器71に加圧機81及び圧力計82を取り付けて容器71内の圧力をモニタリングして加圧しておくことが好ましい。具体的には、大気圧から0.05MPa以上加圧しておくことが好ましい。
ドープ74の温度を略一定とするため、温度計83,84を取り付け、温度をモニタリングすることが好ましい。図7に示すようにドープ74の下方と上方とに設けられている温度計83,84の温度差が5℃以内となるように温度調整を行うことがより好ましい。また、ドープの保存温度も、移送する際の温度と同じように、
g−1);
(Tbp−30)≦T2(℃)≦Tbp
の範囲とすることが好ましく、より好ましくは
(Tbp−15)≦T2(℃)≦Tbp
の範囲とする。
g−2);
(Tbpmin −30)≦T2(℃)≦Tbpmin
の範囲とすることが好ましく、より好ましくは
(Tbpmin −15)≦T2(℃)≦Tbpmin
の範囲とする。
g−3);
(Tap−30)≦T2(℃)≦Tap
の範囲とすることが好ましく、より好ましくは
(Tap−15)≦T2(℃)≦Tap
の範囲とする。
保存装置70でもドープの溶媒の種類に応じて前記g−1)〜g−3)式のいずれかの条件下でドープ調製を行うことで、ドープに極大温度Tc(℃)を横切る履歴を残すことが無いか、2回以下とすることができる。
本発明において、ドープの温度調整は、濾過工程3以後から流延工程5を行う前までの間で行うことが好ましく、より好ましくはドープ調製工程2以後から流延工程5を行う前までであり、最も好ましくはドープ調製工程2から流延工程5を行う前までである(図1参照)。特に、移送工程7においては、出来る限りドープの温度調整を行うことが好ましい。この場合に、装置設置場所などの関係で熱媒体を用いた装置を設置することが困難な場合がある。そこで、本発明の移送工程7に用いられる他の実施形態について説明する。
本発明の移送工程7で用いられる移送管90を図8に示す。移送管90は、内管91とその内管91が挿入された外管92とを備えている。さらに、管91,92の両端には接合用のフランジ93,94を備えている。内管91内は、ドープ95の流路96となる。また、外管92と内管91との隙間を真空断熱層97とするため、外管92には真空装置98が取り付けられている。本発明において、内管91にはステンレス,ガラスなどを用いることが好ましく、その外径D3は、0.01m〜1mのものを用いることが好ましい。この場合に外管92にもステンレス,ガラスなどを用いることが好ましく、その外径D4は0.02m〜1.5mのものを用いることが好ましい。このときには、真空断熱層97の間隔L8は、0.005m〜0.745mとなり、また真空度が10Pa以下となるように真空装置98を稼動させる。さらに、ドープ95からの放射伝熱を移送管90外に放出されることを抑制するために、内管91の外面と外管92の内面とにめっき処理が施されたものを用いることがより好ましい。めっき材料にはクロム,亜鉛合金,黄銅クロムなどを用いることが好ましく、まためっき処理は電解法,無電解法などの公知の方法により行うことができる。
真空断熱層をドープ調製装置10,移送装置30,50,60及び保存装置70の各ジャケットの外側に形成することで、熱媒体がジャケットとの間で熱伝達し熱量が減少することを抑制できる。または、各装置10,30,50,60,70のジャケットに代えて真空断熱層を設けても良い。
ドープが接するシリンダ12,31,51,61及び容器71の内面の平均粗さが0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。平均粗さが0.1μm以上であるとドープとシリンダ又は容器内面との熱伝達面積が大きくなり、熱伝達の点から有利となる。また、平均粗さを50μmより大きくすると、その凹凸の箇所に気泡が残り、皮張り発生の原因となる場合がある。
図1に示す溶液製膜方法においてドープ調製工程2から流延工程5を行う前の間に、図9に示す極大温度Tc(℃)を横切る温度調整を2回以下とすることが好ましい。温度調整は、低温TL (℃)から高温TH (℃)とする加温調整と高温TH (℃)から低温TL (℃)とする冷却調整とがあるが、本発明では、各温度調整を併せて2回以下とすることが好ましい。より好ましくは、極大温度Tc(℃)を一度も横切らないように高温TH (℃)側でドープの調製から流延工程直前まで温度を保持することである。極大温度Tc(℃)は、ドープの種類に応じて変化するが、例えば、ポリマーにTAC(アセチル化置換度2.8)を用い、溶媒に酢酸メチルを用いた場合には、35℃となる。
[フィルムの製造方法]
図10に示すフィルム製膜ライン100の流延ダイ101は、流延ベルト102上に配置されている。流延ベルト102は回転ローラ103,104が図示しない回転駆動装置により回転することに伴い無端走行する。流延ダイ101からドープを流延ベルト102上に流延する。このときのドープの流延幅は、2000mm以上が好ましく、より好ましくは1400mm以上とする。ドープは、流延ベルト102上で流延膜105となり、自己支持性を有するようになった後に、剥取ローラ106により支持されながら剥ぎ取られ軟膜107が得られる。なお、図10には、支持体に流延ベルトを用いたものを示すが、本発明に用いられる支持体はそれに限定されるものでなく、例えば流延ドラム(回転ドラム)などを用いても良い。
軟膜107は、テンタ式乾燥機120により乾燥されてフィルム108が得られる。フィルム108は、多数のローラ122が備えられている乾燥室123に送られ乾燥された後に、冷却室124で冷却される。冷却温度は、特に限定されるものではないが、例えば、室温程度まで冷却する。これにより、巻取機125で巻き取る際に、フィルム同士の密着を防ぐことができるために好ましい。なお、フィルム108を巻き取る前にナーリングの付与を行ったり、耳切処理を行なったりしても良い。
本発明に係るフィルムの製造方法(溶液製膜方法)は、前述した方法に限定されるものではない。他の実施形態、特に多層流延の実施形態については、図面を参照して説明する。なお、図11ないし図13ではフィルム製膜ラインのうち先に示した実施形態と異なる箇所のみを図示して説明し、その他の箇所についての説明及び図示は省略する。
図11には共流延法により製膜を行う形態の要部断面図を示す。複数のマニホールド130,131,132を有するマルチマニホールド流延ダイ133を用いて製膜を行う。それぞれのマニホールド130〜132にドープ134,135,136が供給され(供給用配管の図示は省略している)、合流部137で合流した後に流延ベルト138にドープ134〜136を流延して流延膜139を形成した後に剥ぎ取りフィルムを得る。なお、図11のマルチマニホールド流延ダイ133を用いて流延を行う際に、本発明に係るドープ製造方法により製造されたドープを少なくとも1つに用いることが好ましいが、最も好ましくは3種類のドープ134〜136の全てを本発明に係るドープ製造方法により製造されたものを用いることである。
図12には共流延法により製膜を行う他の形態の側面図を示す。流延ダイ150の上流側にフィードブロック151を取り付け、フィードブロック151に接続されている配管151a,151b,151cに給液装置(図示しない)からドープ152,153,154を送液する。それらドープ152〜154をフィードブロック151内で合流させた後に流延ダイ150から流延ベルト155上に流延する。流延ベルト155上に形成された流延膜156が自己支持性を有した後に剥ぎ取り、乾燥してフィルムを得る。なお、図12の流延ダイ150にフィードブロック151を設けて流延を行う際に、本発明に係るドープ製造方法により製造されたドープを少なくとも1つに用いることが好ましく、最も好ましくは3種類のドープ152〜154の全てを本発明に係るドープ製造方法により製造されたものを用いることである。また、図11及び図12の支持体としては流延ベルト138,155に換えて回転ドラムを用いることも可能である。
図13には逐次流延法を用いた製膜を行う形態の要部断面図を示す。3基の流延ダイ160,161,162が流延ベルト163上に配置している。各流延ダイ160〜162には、それぞれドープ164,165,166が給液装置(図示しない)から送液される。それらドープ164〜166を逐次的に流延ベルト163上に流延して流延膜167を形成した後に剥ぎ取り乾燥してフィルムを得る。なお、図13の逐次流延を行う際に、本発明に係るドープ製造方法により製造されたドープを少なくとも1つに用いることが好ましく、最も好ましくは3種類のドープ164〜166の全てを本発明に係るドープ製造方法により製造されたものを用いることである。
前述した各実施形態の他に、例えば回転ドラムを支持体に用いて、その回転ドラムを冷却する超冷却流延法を用いた溶液製膜方法も本発明には含まれる。また、図13に示す逐次流延法を行う際に、流延ダイにマルチマニホールド流延ダイを用いたり、流延ダイの上流側にフィードブロックを取り付けたりした逐次共流延法も本発明の溶液製膜方法に含まれる。
[フィルムなど]
前述したいずれかの溶液製膜法により得られたフィルムは、ドープ中にゲル状物質や皮張りが無いため、光学特性に優れている。光学特性に優れたフィルムをベースフィルムとして用いるため、そのフィルムを用いて製造された保護フィルムも光学特性に優れている。さらに、偏光子を含有した偏光フィルムの両面に前記保護フィルムを貼付すると、光学特性に優れた偏光板を製造できる。さらに、フィルム上に光学補償シートを貼付した光学補償フィルム、防眩層をフィルム上に積層させた反射防止膜などの光機能性膜として用いることもできる。これら製品(例えば、偏光板,光学補償フィルムなど)からは、液晶表示装置の一部を構成することもできる。さらに、フィルムベース上に感光層などを積層して写真感光材料を製造することもできる。
本発明においては、前記総括伝熱係数Uを10(W・m-2・K-1)以上とすることで、熱媒体からドープへ所望の熱伝達速度q(W)で熱を加えることができる。なお、総括伝熱係数Uは、装置の形態、ドープの特性、例えば、定圧比熱Cd,粘度Vd、熱媒体の種類,定圧比熱Cm,粘度Vmなどを調整することにより適宜、最も好ましいものとすることが可能となる。
以下、実施例1を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。実験1で実験条件を詳細に説明し、実験2ないし実験6並びに比較例である実験7ないし実験15については、実験1と同じ点については説明を省略する。
実験1では、ドープA及びドープBは、下記に示すものを用いて調製した。
セルローストリアセテート(置換度2.83,粘度平均重合度320,含水率0.4質量%,ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度305mPa・s) 28質量部
酢酸メチル(沸点;56.9℃) 70質量部
シクロペンタノン(沸点;130℃) 5質量部
アセトン(沸点;56.1〜56.5℃) 5質量部
メタノール(沸点;64.65℃) 5質量部
可塑剤A(ジペンタエリスリトールヘキサアセテート) 1質量部
可塑剤B(トリフェニルフォスフェート) 1質量部
微粒子(シリカ(粒径20nm)) 0.1質量部
UV剤a:(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン 0.1質量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.1質量部
UV剤c:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.1質量部
1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 0.05質量部
なお、UV剤とは、紫外線吸収剤を表わす。
混合溶媒をミキシングタンクに入れた後に、溶媒温度を38℃〜42℃の範囲に保持しながら、TACを入れ攪拌翼で60分間攪拌し粗溶解液とした。その後に、適宜添加剤を投入し、30分攪拌を行った。なお、このときも溶媒温度を38℃〜42℃の範囲に保持した。そして、目視で不溶解物が無いことを確認し、ドープAを調製した。なお、このときのドープ調製用の溶媒は、前記4種類からなる混合溶媒を用いている。そして、これら溶媒の最も沸点が低いものは、アセトンの56.1℃であり、この温度を沸点温度Tbpmin (=56.1℃)とした。ドープAの調製及び保存時の温度は、38℃〜42℃であり、56.1−30(26.1℃)℃<38℃〜42℃<56.1℃の関係を満たしていた。
ドープAを移送装置30を用いて保温しつつ濾過装置まで移送した。移送装置30の長さL1が1mのパイプ(JIS 10K 25A)をシリンダとし,シリンダ内面31bの平均粗さが10μmのものを用いた。また、熱媒体36には温水を用い、ドープ平均温度T2が40℃,保温温度差が5℃以内となるように、熱媒体平均温度T1を41℃とし、流速を6.6×10-1m/sとして熱媒体流路35内をドープ15に対して向流で送液した。このときの熱媒体滞留時間Tmは、1.5秒間であった。また、それぞれの平均温度における粘度(Pa・s)をレオメーターにより測定し、粘度比(Vd/Vm)を算出したところ105 であった。移送装置30のドープ流路42を30秒間で通るように(=ドープ滞留時間Td)ドープ15の流速を3.1×10-2m/sとした。これにより、滞留時間比(Tm/Td)は、0.05であった。また、ドープ平均温度T2(40℃)でのドープの定圧比熱Cd及び熱媒体平均温度T1(41℃)での熱媒体比熱Cmを示差走査熱量分析法(DSC法)により測定したところ、定圧比熱比(Cd/Cm)は、0.35であった。移送されたドープを目視で確認したところ、ゲル状物質,皮張りのいずれも見られなかった(○)。なお、本実験において、熱交換実験法で算出された総括伝熱係数Uは、80(W・m-2・K-1)であった。また、熱媒体側熱伝達係数Hm(W・m-2・K-1)とドープ側熱伝達係数Hd(W・m-2・K-1)との比である熱伝達係数比(Hm/Hd)は、3.0であった。
実験2では、従来型の移送装置60に伝熱セメント(サーモンセメント)65を塗布した。移送装置60の長さが1mのパイプ(JIS 10K 25A)をシリンダとしシリンダ内面の平均粗さが10μmのものを用いた。また、熱媒体64には温水を用い、ドープ平均温度T2が40℃,保温温度差が5℃以内となるように、熱媒体平均温度T1を41℃とし、流速を6.6×10-1m/sとし、熱媒体滞留時間Tmを1.5秒とした。この移送装置60を用いてドープAの移送を行った。それぞれの平均温度における粘度(Pa・s)をレオメーターにより測定し、粘度比(Vd/Vm)を算出したところ105 であった。移送装置60のドープ流路を30秒間で通るように(=ドープ滞留時間Td)ドープの流速を3.1×10-2m/sとし、滞留時間比(Tm/Td)を0.05とした。ドープ平均温度T2(40℃)でのドープの定圧比熱Cdと熱媒体平均温度T1(41℃)での熱媒体の定圧比熱Cmとの定圧比熱比(Cd/Cm)は、0.35であった。移送されたドープ中を目視で確認したところ、ゲル状物質,皮張りのいずれも見られなかった(○)。なお、本実験において、総括伝熱係数Uは、90(W・m-2・K-1)であった。また、熱媒体側熱伝達係数Hm(W・m-2・K-1)とドープ側熱伝達係数Hd(W・m-2・K-1)との比である熱伝達係数比(Hm/Hd)は、3.1であった。
実験3では、TACを混合溶媒中に入れ、液温を40℃±3℃の範囲で一定に保持しつつ60分間攪拌を行った。TACが混合溶媒中で充分に膨潤したことを確認した後に、添加剤を適宜投入して、更に攪拌を60分間行った。なお、このときに、液温が一定の範囲内となるように温度調整を行い、膨潤液を得た。この膨潤液を図1に示したドープ調製装置10のタンク11に投入した。熱媒体18には、ハイドロフルオロカーボンを用いて−70℃に調整した後に、熱媒体流路17に供給した。スクリュー13を回転させ、膨潤液にせん断をかけながら、TACを混合溶媒中に溶解させ、ドープBを調製した。
ドープBを実験1で用いた移送装置30により40℃へ加温してそのまま40℃(=ドープ平均温度T2)で保温を行いながら移送した。また、ドープ移送時のドープ温度もTbpmin −30以上Tbpmin 以下(なお、Tbpmin は、アセトンの沸点56.1℃を用いた。)の範囲であった。このときに、熱媒体平均温度T1を41℃とし、流速を6.6×10-1とし、熱媒体滞留時間Tmを1.5秒とした。また、ドープ及び熱媒体のそれぞれの平均温度における粘度をレオメーターにより測定し、粘度比(Vd/Vm)を算出したところ105 であった。また、ドープの滞留時間Tdを30秒とし、滞留時間比(Tm/Td)は0.05とした。また、ドープ及び熱媒体のそれぞれの平均温度T2,T1における定圧比熱Cd,Cmの比である定圧比熱比(Cd/Cm)は0.35であった。なお、ドープBの極大温度Tc(℃)をDLS(ダイナミックライトスキャッタリング)により測定し、35℃であることが分かった。この場合に極大温度Tc=35℃の横切りが1回生じたが、移送されたドープを目視で確認したところ、ゲル状物質,皮張りなどの異物は見られなかった(○)。なお、本実験において、総括伝熱係数Uは、80(W・m-2・K-1)であった。また、熱媒体側熱伝達係数Hm(W・m-2・K-1)とドープ側熱伝達係数Hd(W・m-2・K-1)との比である熱伝達係数比(Hm/Hd)は、3.0であった。
実験4では、実験1と同様の実験条件で実験を行った。ドープAを濾過装置で濾過した。濾過装置には、定量濾過装置を用いた。なお、濾過装置の2次側送液初期圧力は0.07MPaとなるように調整した。濾過装置は、断面積が1m2 で濾紙を濾材としたものを用いた。また、濾過装置内面の平均粗さが10μmのものを用いた。さらに、濾過装置本体には、ジャケットが備えられており、ジャケット内に熱媒体を送液することで温度調整が可能な構成であるものを用いた。熱媒体には温水を用い、ドープ平均温度T2が40℃、保温温度差が5℃以内となるようにした。
熱媒体平均温度T1を41℃とし、流速を6.6×10-1m/sとして熱媒体流路内をドープに対して向流で送液した。このときの熱媒体滞留時間Tmは1.5秒間であった。また、それぞれの平均温度における粘度(Pa・s)をレオメーターにより測定し、粘度比(Vd/Vm)を算出したところ105 であった。また、ドープ平均温度T2(40℃)でのドープ定圧比熱Cd及び熱媒体平均温度T1(41℃)での熱媒体比熱Cmをそれぞれ示差走査熱量分析法により測定したところ定圧比熱比(Cd/Cm)は0.35であった。7時間連続して濾過しても発泡は生じなかった。また、発泡に伴う気液界面でのゲル状物質、皮張りの発生も見られなかった(○)。なお、連続運転後の濾過圧力は0.1MPaまで上昇していた。本実験において、熱交換実験法で算出された総括伝熱係数Uは、90(W・m-2・K-1)であった。また、熱伝達係数比(Hm/Hd)は2.8であった。
実験5では、図7に示した保存装置70を用いた。容器71は、内容積が0.4m3 でSUS316製のものを用いた。また、ジャケット72を取り付けて熱媒体流路73を形成した。容器71内のドープ74を均一にしておくために攪拌翼75を回転速度30rpmで回転させた。ドープ74を送液する配管77にもジャケット(図示しない)を取り付けて温度調整(約40℃)した。熱媒体78には、温水を用いた。
ドープ74を保存装置70により温度を41℃に一定にして24時間保存した。配管79にもジャケットを取り付け、ドープ74を41℃に温度調整した。容器71内のドープ74を加圧機81を用いて、N2 ガスを供給して圧力が0.18MPa加圧されるように調整した。これにより、ドープ74の温度を略一定とするため、ドープ74の下方と上方とに設けられている温度計83,84の温度差が5℃以内となるように温度調整された。この場合には、ドープ滞留時間Tdは、保存時間となるので、24時間である。ドープ74と熱媒体78とのそれぞれの平均温度における粘度(Pa・s)をレオメーターにより測定し、粘度比(Vd/Vm)を算出したところ105 であった。また、ドープ貯蔵温度(=ドープ平均温度T2,40℃)における定圧比熱Cdを示差走査熱量分析法(DSC法)により測定し、さらに熱媒体平均温度T1(41℃)における熱媒体比熱Cmを測定したところ定圧比熱比(Cd/Cm)は0.35であった。24時間貯蔵後のドープ74を目視で確認したところ、ゲル状物質,皮張りのいずれも見られなかった(○)。また、熱媒体側熱伝達係数Hmは、300(W・m-2・K-1)であり、ドープ側熱伝達係数Hdは、100(W・m-2・K-1)であり熱伝達係数比(Hm/Hd)は3であった。
実験6では、ドープAを移送装置30を用いて保温しつつ濾過装置まで移送した。移送装置30の長さL1が1mのパイプ(JIS 10K 25A)をシリンダとし,シリンダ内面31bの平均粗さが10μmのものを用いた。また、上流側フランジ32及び下流側フランジ33には、その径が40A用のものを用いて本発明に係るフルジャケット配管とした。熱媒体36には温水を用い、ドープ平均温度T2が40℃,保温温度差が5℃以内となるように、熱媒体平均温度T1を41℃とし、熱媒体流路35内をドープ15に対して向流で送液した。また、それぞれの平均温度における粘度(Pa・s)をレオメーターにより測定し、粘度比(Vd/Vm)を算出したところ200であった。これにより、滞留時間比(Tm/Td)は、0.03であった。また、ドープ平均温度T2(40℃)でのドープの定圧比熱Cd及び熱媒体平均温度T1(41℃)での熱媒体比熱Cmを示差走査熱量分析法(DSC法)により測定したところ、定圧比熱比(Cd/Cm)は、0.35であった。移送されたドープを目視で確認したところ、ゲル状物質,皮張りのいずれも見られなかった(○)。なお、本実験において、熱交換実験法で算出された総括伝熱係数Uは、100(W・m-2・K-1)であった。また、熱媒体側熱伝達係数Hm(W・m-2・K-1)とドープ側熱伝達係数Hd(W・m-2・K-1)との比である熱伝達係数比(Hm/Hd)は、3.0であった。
比較例である実験7では、内面平均粗さが105μmのシリンダを用いた以外は、実験1と同じ条件で行った。ゲル状物質の皮張りが微量生じていた(△)。
比較例である実験8では、伝熱セメントを用いない以外は、実験2と同じ条件で実験を行った。保温温度差が6℃あり、ゲル状物質が微量生じていた(△)。
比較例である実験9では、保温温度が25℃となるように調整した以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。ゲル状物質が多数生じていた(×)。
比較例である実験10では、実験3と同じ条件でドープBを調製した後に、移送装置を用いて40℃へ加温すると共に40℃に保温して移送を行った。なお、このときに、34℃までドープ温度が下がる箇所あり、極大温度Tc(=35℃)の横切りが3回生じた。移送した後のドープ中にはゲル状物質が微量生じていた(△)。
比較例である実験11では、濾過装置の2次側送液配管中の圧力が0.04MPaとなるように濾過した以外は実験4と同じ条件で実験を行った。発泡による気液界面での皮張り、ゲル状物質の発生が見られた(×)。
比較例である実験12では、ドープ側熱伝達係数Hdが8(W・/(m2 ・K))、熱媒体側熱伝達係数Hmが10(W・/(m2 ・K))となるように調整した以外は実験5と同じ条件で実験を行った。ゲル状物質が見られた(×)。
比較例である実験13では、ドープ側熱伝達係数Hdが8(W・/(m2 ・K))、熱媒体側熱伝達係数Hmが9000(W・/(m2 ・K))となるように調整した以外は実験5と同じ条件で実験を行った。ゲル状物質が見られた(×)。
比較例である実験14では、粘度比(Vd/Vm)を10、滞留時間比(Tm/Td)を0.03、定圧比熱比(Cd/Cm)を0.01とした以外は、実験6と同じ条件で実験を行った。なお、保温目標温度を40℃としたがなかなか熱媒体が温まらず、ドープの保温するまでに時間がかかり、ゲル状物質の発生が見られた(×)。
比較例である実験15では、粘度比(Vd/Vm)を106 、滞留時間比(Tm/Td)を100、定圧比熱比(Cd/Cm)を2とした以外は、実験6と同じ条件で実験を行った。なお、保温目標温度を40℃としたがなかなかドープが温まらなかった。そのためゲル状物質の発生が見られた(×)。
実施例2では、下記処方のドープCを副流として用い、実施例1の実験1ないし実験6で調製したドープAまたはドープBを主流とした共流延を行った。なお、ドープCの調製はドープAと同じ条件で行った。
セルローストリアセテート(置換度2.83,粘度平均重合度320,含水率0.4質量%,ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度305mPa・s) 25質量部
酢酸メチル 75質量部
シクロペンタノン 10質量部
アセトン 5質量部
メタノール 5質量部
エタノール 5質量部
可塑剤A(ジペンタエリスリトールヘキサアセテート) 1質量部
可塑剤B(TPP) 1質量部
微粒子(シリカ(粒径20nm)) 0.1質量部
UV剤a:(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン 0.1質量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.1質量部
UV剤c:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.1質量部
1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 0.05質量部
溶液製膜には、図10のフィルム製膜ライン100中の流延ダイ101に代えて、図11のマルチマニホールド流延ダイ133を用いた。実施例1の実験1で移送されたドープAをマニホールド135に送液して基層とし、ドープCをマニホールド130,132に送液してそれぞれ裏層,表層とした。これらドープをマルチマニホールド流延ダイ133から乾燥後のフィルムの表層が3μm,基層が74μm,裏層が3μmとなるように流延幅を600mmとして流延した。流延ベルト138の温度は5℃とし、流延速度は、0.2m/sとした。以下の説明は図10を用いて行う。
流延膜が流延ベルト上で自己支持性を有する膜となったときに剥取ローラで支持しながら軟膜として剥ぎ取った。次に、入口温度が100℃,出口温度が100℃のテンタ式乾燥機内を20分間搬送して乾燥させた。得られたフィルムを乾燥室に搬送し40分間乾燥させた。なお、乾燥室の温度は、130℃〜140℃の範囲に保持させた。次に、約25℃に温度調整がなされている冷却室にフィルムを搬送して1分間冷却を行った後に巻取機で巻き取った。
実験2ないし実験6では、それぞれの実施例1で用いたドープを主流に用いた以外は、実験1と同じ条件で実験を行った。実験1ないし実験6で製膜されたそれぞれのフィルムを用いて、反射防止膜を作製し、それらの評価を行った。
(防眩層用塗布液Aの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)125g、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド(MPSMA、住友精化(株)製)125gを、439gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50重量%/50重量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)5.0gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)3.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗布層の屈折率は1.60であった。さらに、この溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)10gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して防眩層の塗布液Aを調製した。
(防眩層用塗布液Bの調製)
シクロヘキサノン24gとメチルエチルケトン24gとの混合溶媒に、エアディスパで攪拌しながら酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(デソライトZ−7401、JSR(株)製)218gを添加した。さらに、カヤラッドDPHAを91g、イルガキュア(チバガイギー社製)10gを添加した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗布層の屈折率は1.61であった。さらに、この溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)5gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して防眩層の塗布液Bを調製した。
(防眩層用塗布液Cの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)91g、酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(デソライトZ−7401、JSR(株)製)218g、および酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(デソライトKZ−7161、JSR(株)製)19gを、52gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54重量%/46重量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)10gを加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗布層の屈折率は1.61であった。さらに、この溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)20gを80gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54重量%/46重量%の混合溶媒に高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌分散した分散液29gを添加、攪拌した後に、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して防眩層の塗布液Cを調製した。
(ハードコート層用塗布液Dの調製)
紫外線硬化性ハードコート組成物(デソライトZ−7526、72重量%、JSR(株)製)250gを62gのメチルエチルケトンおよび88gのシクロヘキサノンに溶解した溶液を加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗布層の屈折率は1.53であった。さらに、この溶液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過してハードコート層の塗布液Dを調製した。
(低屈折率層用塗布液の調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(TN−049、JSR(株)製)20093gにMEK−ST(平均粒径10nm〜20nm、固形分濃度30重量%のSiO2 ゾルのMEK(メチルエチルケトン)分散物、日産化学(株)製)8g、およびメチルエチルケトン100gを添加、攪拌の後に径径1μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
実施例2の実験1で作製した80μmの厚さのTACフィルム上に前記ハードコート層用塗布液Dをバーコータを用いて塗布し、120℃で乾燥の後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2 、照射量300mJ/cm2 の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ2.5μmのハードコート層を形成した。その上に、前記防眩層用塗布液Aをバーコータを用いて塗布し、前記ハードコート層と同条件にて乾燥、紫外線硬化して、厚さ約1.5μmの防眩層Aを形成した。さらに、その上に前記低屈折率層用塗布液をバーコータにて塗布し、80℃で乾燥の後に、さらに120℃で10分間熱架橋し、厚さ0.096μmの低屈折率層を形成して、反射防止膜を得た。
次に、実験1のフィルムを用いて、防眩層用塗布液Aを防眩層用塗布液Bに代え、その他の条件は同じにして反射防止膜を作製した。さらに、防眩層用塗布液Aを防眩層用塗布液Cに代え、その他の条件は同じにして反射防止膜を作製した。さらに、実験2ないし実験6の各フィルムからも防眩層用塗布液A, B,Cを1つずつ用いて前記実験条件で反射防止膜を作製した。得られた反射防止膜について、下記に記した評価をそれぞれ行った。結果は後に表1にまとめて示す。
(1)鏡面反射率及び積分反射率
分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターARV−474を装着して、380nm〜780nmの波長領域において、入射角5°における出射角−5°の鏡面反射率を測定し、450nm〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価した。鏡面反射率は、5%以下であれば、実用上問題がない。また、積分反射率は、分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターILV−471を装着して、380nm〜780nmの波長領域において、入射角5°における積分反射率を測定し、450nm〜650nmの平均反射率を算出した。積分反射率は10%以下であれば実用上問題がない。
(2)ヘイズ
得られた反射防止膜のヘイズをヘイズメータ MODEL 1001DP(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。ヘイズは、15%以下であれば実用上問題はない。
(3)鉛筆硬度評価
耐傷性の指標としてJIS K 5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。反射防止膜を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS S 6006に規定する3Hの試験用鉛筆を用いて、1kgの荷重で、n=5の評価において傷が全く認められない(○)、n=5の評価において傷が1または2つ(△)、n=5の評価において傷が3つ以上(×)の3段階評価を行った。
(4)接触角測定
表面の耐汚染性の指標として、反射防止膜を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、水に対する接触角を測定し、指紋付着性の指標とした。接触角は、90°〜180°の範囲であれば実用上問題がない。
(5)色味
前述して測定された鏡面反射スペクトルから、CIE標準光源D65の5°入射光に対する正反射光の色味を表わすCIE1976L*a*b*色空間のL*値、a*値、b*値を算出し、反射光の色味を評価した。色味は、それぞれの空間においてL*が0〜+15、a*が0〜+20、b*が−30〜0の範囲であれば、実用上問題がない。
(6)動摩擦係数測定
表面滑り性の指標として動摩擦係数にて評価した。動摩擦係数は反射防止膜を25℃、相対湿度60%RHで2時間調湿した後に、HEIDON−14動摩擦測定機により5mmφステンレス鋼球、荷重100g、速度60cm/minで測定した値を用いた。動摩擦係数は、0.15以下であれば実用上問題が生じない。
(7)防眩性評価
作成した反射防止膜にルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m2 )を映し、その反射像のボケの程度を蛍光灯の輪郭が全くわからない(◎)、蛍光灯の輪郭がわずかにわかる(○)、蛍光灯はぼけているが、輪郭は識別できる(△)、蛍光灯がほとんどぼけない(×)の基準で評価した。
(8)塗布層の面状評価
反射防止膜の塗布層の表面を目視で観察し、その面状を塗布層表面は平滑である(◎)、塗布層表面は平滑であるが、少し異物が見られる(○)、塗布層表面に弱い凹凸が見られ、異物の存在がはっきり観察される(△)、塗布層表面に凹凸が見られ異物が多数見られる(×)の4段階で評価した。
Figure 0004753553
表1から本発明の溶液貯蔵方法を用いて得られたドープから溶液製膜方法により製膜されたフィルムから作製された光学機能性膜の1つである反射防止膜は、防眩性、反射防止性に優れ、且つ色味が弱く、また、鉛筆硬度、指紋付着性、動摩擦係数のような膜物性を反映する評価の結果も良好であった。
[偏光板の作製及び評価]
偏光板はポリビニルアルコールを延伸してヨウ素を吸着させた偏光素子の両面に、実験1ないし実験6で得られたそれぞれのフィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼合し作成した。この偏光板を60℃、90%RHの雰囲気下で500時間暴露した。
分光光度計により可視領域における並行透過率Yp、直行透過率Ycを求め次式に基づき偏光度Pを決定した。
P=√((Yp−Yc)/(Yp+Yc))×100 (%)
実験1ないし実験6から製造されたフィルムを用いて構成された偏光板のいずれにおいても偏光度は99.6%以上であり、十分な耐久性が認められた。そこで、本発明の溶液濃縮方法を用いて得られたドープから溶液製膜方法により製膜されたフィルムは、偏光板保護膜(偏光板保護フィルム)に用いることが好ましく、製作された偏光板は光学特性に優れていることが分かった。
次に、実験1ないし実験6で製造されたそれぞれのフィルムを用いて防眩性反射防止偏光板を作成した。この偏光板を用いて反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作成したところ、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、防眩性により反射像が目立たず優れた視認性を有し、指紋付も良好であった。そこで、本発明の溶液濃縮方法、溶液製膜方法により製膜されたフィルムは、光学機能性膜として優れた性質を有し、その膜を液晶表示装置の一部として用いることが好ましいことが分かった。
本発明に係る溶液製膜方法の一連の工程を説明するための工程図である。 本発明に係るドープ調製工程に用いられる装置の概略図である。 本発明に係るドープ移送工程に用いられる装置の概略断面図である。 本発明に用いられるドープ調整装置を説明するための図である。 本発明に係るドープ移送工程に用いられる装置の他の実施形態の概略断面図である。 本発明に係るドープ移送工程に用いられる装置の他の実施形態の概略断面図である。 本発明に係るドープ保存工程に用いられる装置の概略断面図である。 本発明に係るドープ移送工程に用いられる装置の他の実施形態の概略断面図である。 本発明に係るドープ製造方法に用いられるドープ中のポリマー会合量とドープ温度との関係を説明するグラフである 本発明に係る溶液製膜方法に用いられる製膜ラインの概略図である。 本発明に係る溶液製膜方法に用いられる製膜ラインの他の実施形態の要部図である。 本発明に係る溶液製膜方法に用いられる製膜ラインの他の実施形態の要部図である。 本発明に係る溶液製膜方法に用いられる製膜ラインの他の実施形態の要部図である。
符号の説明
10 ドープ調製装置
15,74 ドープ
18,36 熱媒体
30,50,60 移送装置
70 保存装置
100 フィルム製膜ライン
108 フィルム
L1 移送装置長さ
L2 熱媒体流路長さ
Hd ドープ側熱伝達係数
Hm 熱媒体側熱伝達係数
U 総括伝熱係数
Tc 会合量極大温度

Claims (2)

  1. セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを移送する移送方法において、
    (前記ドープ中で形成された前記セルロースアシレートの会合体の平均分子量)/(前記セルロースアシレートの平均分子量)で求める会合量と、前記ドープの温度との関係から、前記会合量が極大値となる前記ドープの温度Tcを求めて、前記温度Tcよりも高い温度領域を第1領域、低い温度領域を第2領域とするときに、
    前記ドープが通る管と、この管の両端にそれぞれ配され、前記管に対応するようにJIS規格で規定される外径よりも大きな外径をもち、ボルト孔が形成されたフランジとを備えるとともに、一方の前記フランジから他方の前記フランジに亘って前記管の外周面との間に熱媒体の流路を形成するように前記管を覆うジャケットを備える移送手段により、前記熱媒体と前記ドープとの間で熱交換をすることにより、前記ドープの温度が前記第1領域と前記第2領域との一方から他方へ変化しないように前記ドープの温度を制御しながら前記ドープを移送することを特徴とするドープの移送方法。
  2. セルロースアシレートと溶媒とを含むドープからフィルムを製造する溶液製膜方法において、
    (前記ドープ中で形成された前記セルロースアシレートの会合体の平均分子量)/(前記セルロースアシレートの平均分子量)で求める会合量と、前記ドープの温度との関係から、前記会合量が極大値となる前記ドープの温度Tcを求め、
    前記温度Tcよりも高い温度領域を第1領域、低い温度領域を第2領域とするときに、
    移送すべき前記ドープを通す管と、この管の両端にそれぞれ配され、前記管に対応するようにJIS規格で規定される外径よりも大きな外径をもち、ボルト孔が形成されたフランジとを備えるとともに、一方の前記フランジから他方の前記フランジに亘って前記管の外周面との間に熱媒体の流路を形成するように前記管を覆うジャケットを備える移送手段により、前記ドープと前記熱媒体との間で熱交換をすることにより、前記ドープの温度が前記第1領域と前記第2領域との一方から他方へ変化しないように前記ドープの温度を制御しながら前記ドープを移送し、
    移送されてきた前記ドープを流延ダイから支持体上に流延して流延膜を形成する流延工程と、
    前記支持体から剥ぎ取った前記流延膜を乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とする溶液製膜方法。
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