次に、発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は作業機としてプラウを装着した状態のトラクタの側面図、図2はドラフトコントロール装置を含む油圧昇降装置の後方側からの斜視図、図3は同じく側面図である。
図4は同じく上部蓋を外した状態の平面図、図5は図4におけるA−A断面図、図6は図4におけるB−B断面図、図7は図4における後部拡大図、図8はドラフトセンシング荷重の調整範囲の一例を示すグラフである。
まず、本発明に係るドラフトコントロール装置を備えるトラクタの概略構成構成について図1を用いて説明する。トラクタ1の機体前部には、エンジン5等が収納されるボンネット4がエンジンフレーム上に配設され、このボンネット4の下方に前輪2が支承されている。ボンネット4の後方にはキャビン8が配置されており、このキャビン8内においては、ボンネット4後部のダッシュボード上に配置されるステアリングハンドル6が設けられている。このステアリングハンドル6の後方にはシート7が配置されており、このシート7の下方に後輪3が支承されている。また、シート7の近傍の運転部には、主変速レバーや副変速レバーやPTO変速レバー(共に図示略)やポジションレバー16やドラフト調整レバー17(図2参照)等が配設されている。
また、エンジン5の後方には、クラッチハウジング等を介してミッションケース11が設けられており、このミッションケース11上には油圧昇降装置15を構成する油圧シリンダケース10が載置固定されている。この油圧シリンダケース10においては、その後部からリフトアーム19・19が後方に突出しており、3点リンクのトップリンク20と左右のロアリンク21・21等とともに作業機装着装置13を構成している。
この作業機装着装置13においては、ロアリンク21・21は機体後部(ミッションケース11後部)に装着されている。そして、リフトアーム19・19の後端にはリフトリンク19a・19aの一端部がそれぞれ枢結されており、このリフトリンク19a・19aの他端部がロアリンク21・21の前後中途部に枢結されている。また、トップリンク20の前端部は、油圧シリンダケース10の後部に回動可能に取り付けられるトップリンクヒンジ18に枢結されており、機体に連結支持されている。このような構成の作業機装着装置13において、トップリンク20及びロアリンク21・21の後部に牽引式作業機であるプラウ14が昇降可能に装着される。なお、本実施形態においてはトラクタ1に装着される作業機をプラウ14としているが、これに限定されず、例えば、プラウ14に替えてディスクハローやボックススクレーパー等の作業機でもよい。
次に、前記油圧昇降装置15について図2〜図6を用いて説明する。前述したように、ミッションケース11の上面に載置固定される油圧シリンダケース10には、油圧シリンダ装置22が内装されており(図5参照)、この油圧シリンダケース10の前部には制御バルブケース25が付設されている。この制御バルブケース25内には図5に示すようにコントロールバルブ23やストップバルブ24やリリーフバルブ(図示略)等が収納されている。
前記油圧シリンダ装置22は、図5に示すように、油圧シリンダケース10内に着脱可能に装入されるシリンダライナ59を有しており、このシリンダライナ59内に形成される円筒形状の空間をシリンダとして、このシリンダ内に摺動自在に挿入されるピストン29aを有する構成となっている。また、シリンダライナ59と、このシリンダライナ59の前方に位置する前記制御バルブケース25との間にはシリンダヘッド60が介装されている。シリンダヘッド60は、段差付きの円柱状に構成され、その軸心部に開口されてコントロールバルブ23の出力ポートと連通する連通孔60aを有している。そして、シリンダヘッド60は、その両側にインロー部が形成され、油圧シリンダケース10及び制御バルブケース25にそれぞれインロー嵌合している。ここで、シリンダヘッド60の前面側と制御バルブケース25の後面側との間には潤滑油路を構成する油路61が形成されており、この油路61は油圧シリンダケース10に形成される収納部10a(後述)及び油路62と連通しており、ミッションケース11内に潤滑油が戻される構成となっている。
また、同じく図5に示すように、前記ピストン29aは、ピストンロッド29bを介してリフトクランク26の下端部に接続されており、ピストンロッド29bの前端は半球状に形成されピストン29a後面に形成される凹部に当接している。この当接部の後部外周には、Oリング48が嵌合している。前記リフトクランク26の上端部は、油圧シリンダケース10の後上部にて左右方向に支承されるリフト軸27に相対回動不能に連結されている。このリフト軸27の左右両端は油圧シリンダケース10より外側へ突出しており、この突出部に前記リフトアーム19・19の基端部が一体的に回動可能に接続固定されている。そして、前記ポジションレバー16の操作や耕深制御などでコントロールバルブ23が切り換えられ、圧油が前記シリンダ内に送油されてピストン29aが摺動すると、ピストンロッド29b、リフトクランク26及びリフト軸27を介してリフトアーム19・19が上下回動するように構成されている。ここで、ピストン29aの摺動方向が前後水平方向となるように構成されることにより、油圧シリンダケース10のコンパクト化が図られている。
また、油圧シリンダケース10の前部上、即ちピストン29aの摺動空間の上方であって制御バルブケース25の後部位置には、後述する操作リンク機構9を収納するための収納部10aが形成されている。この収納部10aは、上部蓋12によって覆われるとともに油圧シリンダケース10に形成される前記油路62を介してミッションケース11内と連通している。油路62は前記シリンダと前後方向に連通しており、この油路62を介して収納部10aからのリリーフ油が潤滑油としてミッションケース11内に流入し、このミッションケース11内の変速ギアやデフ装置などが潤滑される構成となっている。
前記上部蓋12の前後中央左右両側には、図6に示すように、ボス部12aL・12aRが形成されており、これらのうち、一方(本実施形態においては左方)のボス部12aLには筒軸40を介してアーム軸51が枢支され、他方(本実施形態においては右方)のボス部12aRには筒軸36を介してアーム軸44が枢支されている。これら筒軸40とアーム軸51、及び筒軸36とアーム軸44は、それぞれ相対回転可能に構成されている。また、上部蓋12の後部左右中央においては、その裏面(下面)から摺動支持部12bが下方に突設されており、この摺動支持部12bにコントロールロッド34(図5参照)が前後摺動自在に支持されている。このコントロールロッド34の一端(前端)はコントロールバルブ23のメインスプール23aの端部に当接しており、このメインスプール23aは付勢バネ54により中立位置方向に付勢されている。一方、コントロールロッド34の他端(後端)は、後述する操作リンク機構9において合流部とされており、このコントロールロッド34の端部には合流ピン43が枢支されている。この合流ピン43により、ドラフトフィードバックリンク32及びリフトフィードバックリンク33がそれぞれの中央部にて枢支されている。このようにして、操作リンク機構9が上部蓋12の下面に取り付けられた状態で収納部10a内に収納されている。
このような構成の油圧シリンダケース10の右側においては、操作リンク機構9から延設されるポジションレバー16及びドラフト調整レバー17が配設されており、このポジションレバー16を回動することによって、トラクタ1に装着されるプラウ14を手動にて任意の高さに調整することができ、ドラフト調整レバー17を回動することによって、プラウ14による対地作業を行う際の牽引力(または耕深)を調整することができる。一方、油圧シリンダケース10の左側においては、リフトアーム19・19の回動角を操作リンク機構9にフィードバックするポジションフィードバックリンク機構と、トップリンクヒンジ18の回動角を同じく操作リンク機構9にフィードバックするドラフトフィードバックリンク機構とが構成されており、この油圧シリンダケース10の左側にはポジションフィードバック機構を構成するアーム31と、ドラフトフィードバックリンク機構を構成するアーム30とが配設されている。また、前述したように油圧シリンダケース10の前部に付設される制御バルブケース25の前部には、油圧シリンダケース10内の作動油のドレン油量を調節するための前記ストップバルブ24の調節ノブ38が突設されており、運転部のシート7下方にて操作可能に構成されている。
ここで、操作リンク機構9について図6を用いて説明する。前述したように操作リンク機構9から右側に延設されるポジションレバー16の基部は、前記アーム軸44上の一端側に外嵌される基部パイプ16aに固設されており、この基部パイプ16aはアーム軸44に固設され一体的に回転するように構成されている。また、アーム軸44の他端側は収納部10a内に挿入されており、このアーム軸44の端部にはアーム49の基部が固設されている。このアーム49の先端にはピン50が突設されており、このピン50は、前記リフトフィードバックリンク33の先端が下方に折り曲げられて形成される突出部33aRに当接可能に設けられている。これにより、ポジションレバー16の回動によってリフトフィードバックリンク33を回動可能とし、このリフトフィードバックリンク33の移動により前記コントロールロッド34を介してコントロールバルブ23が切り換わる構成となっている。
また、同じく操作リンク機構9から右側に延設されるドラフト調整レバー17の基部は、アーム軸44に外嵌される基部パイプ17aに固設されており、この基部パイプ17aは前記筒軸36に固設され一体的に回転するように構成されている。収納部10a内における筒軸36には、アーム37が突設されており、このアーム37の先端にはピン39が突設されている。このピン39は前記ドラフトフィードバックリンク32の先端が上方に折り曲げられて形成される突出部32aRに当接可能に設けられている。これにより、ドラフト調整レバー17の回動によってドラフトフィードバックリンク32を回動可能とし、このドラフトフィードバックリンク32の移動によりコントロールロッド34を介してコントロールバルブ23が切り換わる構成となっている。ここで、基部パイプ17aと基部パイプ16aとの間には、皿バネ等によって構成される弾性部材45が介装されており、ポジションレバー16及びドラフト調整レバー17を任意の回動位置で保持可能となっている。
一方、操作リンク機構9の左側においては、前述したポジションフィードバックリンク機構を構成するアーム31と、ドラフトフィードバックリンク機構を構成するアーム30とが連結されている。ポジションフィードバックリンク機構について説明すると、アーム31の基部は、前記アーム軸51に固設されている。また、アーム軸51の他端側は収納部10a内に挿入されており、このアーム軸51の端部にはアーム52が固設されている。このアーム52の先端にはピン53が突設されており、このピン53は、リフトフィードバックリンク33の先端が下方に折り曲げられて形成される突出部33aLに当接可能に配置されている。また、アーム31の先端には、図2等に示すように、リフトフィードバックロッド57の一端が枢支されており、このリフトフィードバックロッド57の他端はリフトアーム19の基部外周に枢支されている。このような構成において、前記油圧シリンダ装置22の伸縮によりリフトアーム19が回動されると、リフトフィードバックロッド57、アーム31、アーム軸51、アーム52及びピン53を介してリフトフィードバックリンク33が回動されてポジションフィードバックが行われる。
また、ドラフトフィードバックリンク機構について説明すると、アーム30の基部は、前記筒軸40に固設され一体的に回転するように構成されている。収納部10a内における筒軸40には、アーム41が突設されており、このアーム41の先端はドラフトフィードバックリンク32の先端が上方に折り曲げられて形成される突出部32aLに当接可能に配置されている。また、アーム30の先端には、図2等に示すように、ドラフトフィードバックロッド55の一端が枢支され、このドラフトフィードバックロッド55の他端は回動アーム56の一端に枢支されており、ドラフトフィードバックロッド55が回動アーム56に連動連結されている。この回動アーム56の他端は、油圧シリンダケース10の後端壁10bに固設される枢支部58に枢支されており、同じく回動アーム56の中途部には、連結プレート63の一端が枢支されている。この連結プレート63の他端は、トップリンクヒンジ18の後部において水平方向左側に突設される連結ピン64に枢支されている。このような構成において、牽引力または耕深の変化によりトップリンクヒンジ18が回動すると、連結プレート63、回動アーム56、ドラフトフィードバックロッド55、アーム30、筒軸40及びアーム41を介してドラフトフィードバックリンク32が回動されてドラフトフィードバックが行われる。
すなわち、ポジションレバー16やドラフト調整レバー17の回動、またはリフトアーム19やトップリンクヒンジ18の回動にともなうリフトフィードバックリンク33またはドラフトフィードバックリンク32の移動により、メインスプール23aが摺動されると、コントロールバルブ23が切り換わる。これにより、圧油が前記シリンダ内に送油されるとリフトアーム19が上昇回転駆動し、逆にシリンダ内の圧油がドレンされるとリフトアーム19が下降回転駆動する。
そして、ポジションレバー16が回動されると、リフトフィードバックリンク33等を介してコントロールバルブ23が切り換えられてリフトアーム19が回動され、このリフトアーム19がポジションレバー16で設定された角度まで回動すると、前述したポジションフィードバックリンク機構によりコントロールバルブ23が中立位置にもどされる。また、ドラフトコントロールにおいては、ドラフト調整レバー17が回動されコントロールバルブ23が切り換えられて深さ設定がされる。作業時においてはトップリンクヒンジ18にかかる圧縮・引張り荷重が設定値となっていると、前述したドラフトフィードバックリンク機構によりコントロールバルブ23が中立位置に維持される。
このような油圧昇降装置における油圧制御について具体的に説明すると、ポジションコントロール側の構成においては、まず、ポジションレバー16を回動してリフトアーム19の位置を設定すると、この設定回動はアーム軸44に伝達され、このアーム軸44の回動がアーム49とピン50を介してリフトフィードバックリンク33の突出部33aRに伝達される。また、リフトアーム19側からのフィードバック値は、リフトフィードバックロッド57を介してアーム31からアーム軸51、アーム52及びピン53を経てリフトフィードバックリンク33の突出部33aLに伝達される。そして、設定側のポジションレバー16の動きと、フィードバック側のアーム31の動きとが、リフトフィードバックリンク33により合成され、合流ピン43を介してコントロールロッド34に伝達される。これにより、コントロールバルブ23のメインスプール23aが押動される。
また、作業機がロータリ耕耘装置として耕深制御を行う場合、まず、ドラフト調整レバー17を回動して耕深を設定する。この設定回動は筒軸36からアーム37に伝達され、このアーム37の回動がピン39を介してドラフトフィードバックリンク32の突出部32aRに伝達される。また、トップリンクヒンジ18からのフィードバック値は、前述した連結プレート63、回動アーム56及びドラフトフィードバックロッド55を介してアーム30から筒軸40、アーム41を経てドラフトフィードバックリンク32の突出部32aLに伝達される。そして、設定側のドラフト調整レバー17の動きと、フィードバック側のアーム30の動きとが、ドラフトフィードバックリンク32により合成され、合流ピン43を介してコントロールロッド34に伝達される。これにより、コントロールバルブ23のメインスプール23aが押動される。
つまり、前述したように、コントロールロッド34はコントロールバルブ23のメインスプール23aの端部に当接するように構成されており、このメインスプール23aが操作されることにより、油圧シリンダ装置22が制御されて作業機の昇降が切り換えられる。例えば、コントロールロッド34によりメインスプール23aが前方に押動されると、作業機は上昇し、コントロールロッド34が後方に戻ると、付勢バネ54によりメインスプール23aが後方へ押し戻されて作業機が下降するという具合である。
続いて、本発明に係るドラフトコントロール装置について図7を加えて説明する。前述したように、油圧シリンダケース10の後側においては、トップリンク20の前端部を支持するためのトップリンクヒンジ18が設けられている。トップリンクヒンジ18は、略三角形状のプレートが左右方向に平行に(側面視で重なるように)一対の状態で設けられ、その上端部が油圧シリンダケース10の後端壁10bに固設される同じく一対のヒンジブラケット28に、共通の枢支軸35により枢支されている。この枢支軸35を支点としてトップリンクヒンジ18が回動可能となっている。そして、このトップリンクヒンジ18には、トップリンク20の前端部を連結して支持するためのトップリンク支持孔18aが複数箇所(本実施形態においては2箇所)形成されており、作業機装着装置13に装着される作業機の種類などによって、トップリンク20の前端部が連結されるトップリンク支持孔18aが変更される。
また、トップリンクヒンジ18における前記枢支軸35の下方にはドラフトストッパピン67が挿通される孔部18bが形成されており、油圧シリンダケース10の後端壁10bには、後方に向けて突出するドラフトストッパ68が設けられている。これらは、ドラフトストッパピン67が孔部18bに挿通した状態で、ドラフトストッパピン67がドラフトストッパ68に当接するように配置構成されており、これにより、トップリンクヒンジ18の枢支軸35を中心とする回動が規制される。つまり、ドラフト(牽引)が不要な場合は孔部18bにドラフトストッパピン67を挿通することによりトップリンクヒンジ18の回動を規制し、ドラフトコントロールを行う場合はドラフトストッパピン67を外してトップリンクヒンジ18を回動可能とする。
また、トップリンクヒンジ18における前記枢支軸35と上下反対側に離れた位置と、トラクタ1の機体側との間には牽引緩衝機構70が介装されている。牽引緩衝機構70は、牽引作業時にプラウ14に作用する牽引抵抗によりトップリンク20にかかる圧縮荷重及び引張り荷重を緩衝するために設けられており、機体側とトップリンクヒンジ18との間を連結するセットボルト71と、このセットボルト71上に外嵌されるバランスバネ72とを備えている。つまり、セットボルト71の一端が機体側に枢支されるとともに他端がトップリンクヒンジ18側に支持されることにより、バランスバネ72を有する牽引緩衝機構70がトップリンクヒンジ18と機体側との間に介装される。
具体的には、セットボルト71の一端(先端)は、油圧シリンダケース10の後端壁10bに固設されるステー65を介して設けられるセットボルト枢支ホルダ66に枢支されている。このセットボルト枢支ホルダ66は左右方向に設けられる枢支軸66aにて枢支される。また、セットボルト71の他端(後端)は、後上方に向けて延出され、このセットボルト71が挿通されるとともにトップリンクヒンジ18の後下部に固設されるブラケット73により支持されている。すなわち、セットボルト71のトップリンクヒンジ18側の端部はブラケット73を介して支持されている。ブラケット73は平面視で略U字状となるように折曲げ形成される板状部材であり(図4参照)、その両側部によりトップリンクヒンジ18を挟み込むようにして底部を後側に向けた状態で配置され、このトップリンクヒンジ18に一体的に固定されている。つまり、セットボルト71の他端は、ブラケット73の底部に形成される孔部73aに挿通された状態で支持される(図7参照)。そして、セットボルト71の前記ブラケット73より後方に突出した部分には、ロックナット74が螺嵌されている。
このようにして牽引緩衝機構70において支持されるセットボルト71上には、前記バランスバネ72が外嵌されるとともに、このバランスバネ72のバネ荷重(以下、「ドラフトセンシング荷重」ともいう。)の調整を行うドラフトセンシング荷重調整機構80が設けられている。ドラフトセンシング荷重調整機構80は、機体側の後端壁10bとトップリンクヒンジ18との間に配置されるバランスバネ72の一側(本実施形態においては後側)に設けられる。このようにドラフトセンシング荷重調整機構80を設けることにより、ドラフト調整レバー17による耕深設定にともなうドラフトセンシング荷重の調整に加え、ドラフトセンシング荷重調整機構80による調整を行うことができるので、ドラフトセンシング荷重の調整範囲が拡大し、作業地の土壌条件やトラクタに装着される作業機の種類に十分に対応することが可能となる。以下、ドラフトセンシング荷重調整機構80の構成について図7を用いて説明する。
ドラフトセンシング荷重調整機構80は、前記セットボルト71上に相対回転可能に外嵌される調整ボルト81と、この調整ボルト81上に螺嵌されるとともに前記バランスバネ72の一端を支持するバネホルダ82とを有しており、調整ボルト81が回動されることによりバネホルダ82がセットボルト71の軸方向に移動する構成となっている。
具体的には、調整ボルト81は、ナット状に形成されスパナ等により操作可能な頭部などの操作部81aを有する筒状のボルトであり、セットボルト71に相対回転可能に外嵌されるとともに、その操作部81aをブラケット73の底部よりも外側(後側)に露出した状態でブラケット73の前記孔部73a内に回動可能に挿通される。つまり、調整ボルト81の外径は孔部73aの径と略同一(孔部73aより若干小さめ)となっており、セットボルト71の後端部は、調整ボルト81を介してこの孔部73aにて支持される。また、調整ボルト81は、ブラケット73の内側(前側)にて間座83を介して留め輪84により位置決めされている。すなわち、ブラケット73の内側においては、調整ボルト81に円環状の間座83が外嵌され、この間座83が、ブラケット73の底部の内側面と、調整ボルト81上に外嵌固定される留め輪84とにより挟まれた状態となっている。このような構成により、調整ボルト81が、セットボルト71とブラケット73との間に介装され、セットボルト71上に相対回転可能に外嵌されるとともに該セットボルト71に対して軸方向の位置決めがされた状態で設けられる。
そして、この調整ボルト81上には、ブラケット73の内側において前記バネホルダ82が螺嵌されている。バネホルダ82は、筒状に形成される基部82aとこの基部82a上に一体的に設けられる円環状のホルダ部82bとから構成されている。そして、基部82aの内周面にはネジ部が形成されており、この基部82aが調整ボルト81上に螺嵌されることにより、バネホルダ82が調整ボルト81上に設けられる。すなわち、調整ボルト81の外周面にはネジ部が形成されており、このネジ部上にバネホルダ82の基部82aの内周面に形成されるネジ部が螺合された状態でバネホルダ82が調整ボルト81上に螺嵌される。そして、このバネホルダ82と、前記セットボルト枢支ホルダ66との間に前記バランスバネ72が介装される。つまり、バランスバネ72の一端(前端)はセットボルト枢支ホルダ66の後部に形成される支持部66bに支持され、他端(後端)はバネホルダ82のホルダ部82bに支持される。このような構成により、バネホルダ82は、調整ボルト81上にて、該調整ボルト81に対しては相対回転可能に、セットボルト71に対しては回動することなく(回転方向に対しては定位置となるように)に設けられる。
以上のようにして構成される調整ボルト81とバネホルダ82との関係について説明すると、調整ボルト81が回動されることにより、バネホルダ82が調整ボルト81上にてセットボルト71の軸方向に移動する。つまり、セットボルト71上に位置決めされ軸方向の移動が規制されている調整ボルト81が回動されると、セットボルト71に対しては回転方向の移動が規制され調整ボルト81上に螺合されているバネホルダ82は、セットボルト71の軸方向にのみ移動する。このバネホルダ82の移動により、バランスバネ72が伸縮されることとなり、該バランスバネ72のバネ荷重の調整を行うことができる。すなわち、バランスバネ72の後端を支持するバネホルダ82がセットボルト71の軸方向に移動されることにより、前端が機体側(セットボルト枢支ホルダ66)に支持されるバランスバネ72は伸縮されることとなる。この調整ボルト81の回動及びそれにともなうバネホルダ82の移動は、トップリンクヒンジ18の枢支軸35を中心とする回動に影響を与えることなく行われる。
そして、前記バネホルダ82の移動範囲が、本構成のドラフトセンシング荷重調整機構80におけるドラフトセンシング荷重の調整範囲となる。本実施形態においては、図7に示すように、調整ボルト81上でバネホルダ82が移動可能な範囲となる距離dがその調整範囲となる。すなわち、バネホルダ82の移動に関し、後側はバネホルダ82の後端が前記留め輪84に当接するまで、前側はバネホルダ82が調整ボルト81上で可動な前端位置となるまでの範囲となる。つまり、バネホルダ82が移動可能となる範囲が調整範囲となる。
このような構成のドラフトセンシング荷重調整機構80において、実際にドラフトセンシング荷重の調整を行う際の具体的な操作としては、スパナ等の工具を用いて調整ボルト81の操作部81aを回動させる。これにより、バネホルダ82がセットボルト71の軸方向に前記距離dの範囲内で移動されバランスバネ72が伸縮される。この際、調整ボルト81の操作部81aはブラケット73から外部に露出しているため、良好な操作性を得ることができる。そして、バランスバネ72について所望のドラフトセンシング荷重が得られるようにバネホルダ82の位置を調整し、ドラフトセンシング荷重の設定を行う。このようにして、ドラフトセンシング荷重調整機構80におけるバランスバネ72のドラフトセンシング荷重の調整が行われ、本構成におけるドラフトコントロール装置の感度調節が行われる。
ここで、ドラフトセンシング荷重の調整後に、作業時における振動や衝撃などによって不作為に調整ボルト81が回動されてバランスバネ72のドラフトセンシング荷重の設定値が変更されることを防止するため、調整ボルト81に対しては、その回動を防止するため、操作部81aの回動を防止するための回り止め具85が設けられる。回り止め具85は、図2等に示すように、ブラケット73の底部から一側の側部にかけて沿うように略L字状に形成される板状部材であり、その一端側はブラケット73の一側の側部にボルト等の締結具86により固定され、他端側には操作部81aの形状に合わせて形成される嵌合部85aが形成される。例えば、図示のように、本実施形態においてナット状に形成される操作部81aに対して嵌合部85aは略V字状の切欠き形状に形成される。なお、本実施形態においては、回り止め具85はブラケット73の左側の側部にかけて設けられているが、右側の側部にかけて設けられてもよく、また両側に設けられてもよい。
以上のようにドラフトセンシング荷重調整機構80を構成することにより、ドラフトセンシング荷重を調整することによってトップリンクヒンジ18の回動が影響を受けることなく、トップリンクヒンジ18とは独立してドラフトセンシング荷重の調整を行うことができる。これにより、ドラフトセンシング荷重調整機構80におけるドラフトセンシング荷重の調整にともなうドラフトフィードバックリンク機構の調整を行う必要がなくなり、簡単な操作によってドラフトセンシング荷重の調整を行うことができる。
具体的な効果としてのドラフトセンシング荷重の調整範囲は、例えば図8に示すグラフのようになる。図8に示すグラフおいては、本構成のドラフトコントロール装置におけるドラフト調整レバー17によるレバー調整と、それに対応するドラフトセンシング荷重の調整範囲が示されている。このグラフにおいて、横軸はドラフト調整レバー17によるドラフト調整の変位であり、縦軸はドラフトセンシング荷重である。そして、網掛け部分が本構成のドラフトコントロール装置おけるドラフト調整の調整範囲を示している。このグラフからわかるように、グラフ中において上下方向の範囲がドラフトセンシング荷重調整機構80によるドラフトセンシング荷重の調整範囲に対応している。すなわち、ドラフト調整レバー17によるレバー調整にドラフトセンシング荷重調整機構80による調整が加わることにより、ドラフト調整レバー17によるレバー調整のみではグラフ上で直線状または点線状となる調整範囲が上下方向に拡大され、ドラフトセンシング荷重の調整範囲が拡大されることとなる。