JP4749562B2 - ハイドロキノン誘導体および動脈硬化治療用組成物 - Google Patents

ハイドロキノン誘導体および動脈硬化治療用組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なハイドロキノン誘導体および動脈硬化治療用組成物に関する。さらに詳しくは、生体内における低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールの酸化防止作用などの薬理活性を有し、動脈硬化の治療に有用な新規なハイドロキノン誘導体、及びLDLコレステロールの酸化防止剤として、生体内で十分な効果を発揮し得る動脈硬化治療用組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、動脈硬化の治療に当っては、コレステロールに代表される血清脂質の低下を目的とした、食事指導やコレステロール低下剤、コレステロールの代謝改善剤などの投与が行われている。
一方、動脈硬化の発症が、LDLコレステロールの酸化変性と、変性LDLを取り込んだマクロファージの泡沫化に起因することから、LDLコレステロールの酸化を防止するため、抗酸化剤であるプロブコール(probucol)も動脈硬化治療剤として用いられている。
【0003】
前者のような高脂血症の治療を目的とした薬剤は多く、様々な機序の薬剤が開発され、上市されているが、後者のようなLDLコレステロールの抗酸化剤としては、1986年にプロブコールが登場して以来、臨床に使われている薬剤は見当たらない。
それは、抗酸化剤が生体内でLDLコレステロールの酸化を防ぐためには、第一にLDLに局在すること、第二に、血管壁に分布すること、第三に、スカベンジする作用があまりに短時間に終了せず血管壁にLDLが沈着しても持続すること、第四に、ラジカルをトラップしたあと、生体内の抗酸化物質により還元されることが必要であり、これらの条件を兼ね備えることによって生体内で十分な効果を発揮し、かつ、安全な薬物を開発することが難しいことによるものと思われる。
【0004】
他方、ハイドロキノン類のモノアルキルエーテルは抗酸化作用(特開平5−301836号公報)、あるいは発がん抑制作用(特開平6−100441号公報)を有することが知られており、またこのハイドロキノン類のモノアルキルエーテルを含むハイドロキノン誘導体は、肝疾患治療剤として有用で、かつ安全性が高いことも知られている(特開平8−67627号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生体内におけるLDLコレステロールの酸化防止作用などの薬理活性を有し、動脈硬化の治療に有用な新規な化合物、及びLDLコレステロールの酸化防止剤として、生体内で十分な効果を発揮し、しかも安全性の高い動脈硬化治療用組成物を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、2,3,5−トリメチルハイドロキノンから誘導される特定な構造を有する化合物またはそのシクロデキストリン包接体が、新規な化合物であって、生体内におけるLDLコレステロールの酸化を防止し、特に粥状動脈硬化症の予防および治療に有効であることを見出した。
【0007】
また、2,3,5−トリメチルハイドロキノンから誘導されるモノアルキルエーテルやそのカルボン酸エステルあるいはそれらのシクロデキストリン包接体も、生体内におけるLDLコレステロールの酸化を防止し、特に粥状動脈硬化症の予防および治療に有効であることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)一般式(I)
【0009】
【化4】
Figure 0004749562
【0010】
(式中、R1は炭素数4〜8のアルキル基を示す。)
で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体、
(2)上記一般式(I)で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体を有効成分として含有することを特徴とする動脈硬化治療用組成物(以下、動脈硬化治療用組成物Iと称す。)、
(3)一般式(II)
【0011】
【化5】
Figure 0004749562
【0012】
(式中、R2は炭素数4〜8のアルキル基、R3は水素原子、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基または炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基を示す。)
で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体を有効成分として含有することを特徴とする動脈硬化治療用組成物(以下、動脈硬化治療用組成物IIと称す。)、
を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のハイドロキノン誘導体は、一般式(I)
【0014】
【化6】
Figure 0004749562
【0015】
(式中、R1は炭素数4〜8のアルキル基を示す。)
で表される構造を有する化合物またはそのシクロデキストリン包接体であって、新規な化合物である。
【0016】
上記一般式(I)において、R1で示される炭素数4〜8のアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。このアルキル基としては、薬理活性の面から、炭素数4〜7の直鎖状のものが好ましく、特にn−ヘキシル基が好適である。
上記一般式(I)で表される化合物の例としては、2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル 4−ニコチネートを、特に好ましく挙げることができる。
【0017】
上記一般式(I)で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体は、生体内におけるLDLコレステロールの酸化防止作用などの薬理活性を有し、高コレステロール血症、粥状動脈硬化症を自然発症し、家族性高コレステロール血症のモデル動物として用いられるWHHLウサギにおいて大動脈内壁におけるアテロームの発生を顕著に抑制する。また、該ハイドロキノン誘導体は、低毒性であって、安全性も高い。
【0018】
この一般式(I)で表される化合物は、以下に示す方法に従って製造することができる。
まず、公知の方法に従い、式
【0019】
【化7】
Figure 0004749562
【0020】
で示される2,3,5−トリメチルハイドロキノンと一価の脂肪族アルコールR1OH(R1は前記と同じである。)を反応させて、一般式
【0021】
【化8】
Figure 0004749562
【0022】
(式中、R1は前記と同じである。)
で表される2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−アルキルエーテルを得たのち、これにニコチン酸またはその酸ハライドなどの反応性誘導体を反応させることにより、前記一般式(I)で表される化合物である2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−アルキルエーテル 4−ニコチネートが得られる。
なお、出発原料の2,3,5−トリメチルハイドロキノンは、2,3,6−トリメチルフェノールの酸化により得られ、市販品として入手することができる。
【0023】
2,3,5−トリメチルハイドロキノンを出発原料とし、かつニコチン酸エステル誘導体である動脈硬化用治療剤として、ニコチン酸dl−α−トコフェロールが知られている。このものは、2,3,5−トリメチルハイドロキノンを出発原料とし、極めて煩雑な工程を経て、dl−α−トコフェロールを合成したのち、ニコチン酸エステルとすることにより製造される。前記一般式(I)で表される本発明の化合物は、上記ニコチン酸dl−α−トコフェロールに比べて、極めて簡単なプロセスで製造し得るので、製造コストが低い。
【0024】
また、一般式(I)で表される化合物のシクロデキストリン包接体は、α−、β−またはγ−シクロデキストリンを用い、公知の方法に従って、その分子空洞内に一般式(I)で表される化合物を取り込ませることにより、製造することができる。
【0025】
本発明の動脈硬化治療用組成物(I)は、前述の一般式(I)で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体を有効成分として含むものである。中でも、薬理活性の点から、2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル 4−ニコチネートまたはそのシクロデキストリン包接体を有効成分として含むものが好適である。
【0026】
一方、本発明の動脈硬化治療用組成物(II)は、一般式(II)
【0027】
【化9】
Figure 0004749562
【0028】
(式中、R2は炭素数4〜8のアルキル基、R3は水素原子、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基または炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基を示す。)
で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体を有効成分として含有するものである。
【0029】
上記一般式(II)で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体も、前述の一般式(I)で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体と同様に、生体内におけるLDLコレステロールの酸化防止作用などの薬理活性を有し、高コレステロール血症、粥状動脈硬化症を自然発症し、家族性高コレステロール血症のモデル動物として用いられるWHHLウサギにおいて大動脈内壁におけるアテロームの発生を顕著に抑制すると共に、低毒性であって、安全性も高い。
【0030】
上記一般式(II)において、R2で示される炭素数4〜8のアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、具体的には、前述の一般式(I)で表される化合物におけるR1の説明において、例示したものと同じものを挙げることができる。また、R3のうちの炭素数2〜6のアルキルカルボニル基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基などが挙げられる。さらに、R3のうちの炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基などが挙げられる。
【0031】
上記一般記(II)で表される化合物としては、薬理活性の点から、2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ブチルエーテル、2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテルおよび2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル 4−アセテートを好ましく挙げることができる。
【0032】
この一般式(II)で表される化合物は、以下に示す方法により、製造することができる。
2,3,5−トリメチルハイドロキノンと一価の脂肪族アルコールR2OH(R2は前記と同じである。)を、公知の方法に従って反応させることにより、一般式(II)におけるR3が水素原子である化合物が得られる。このものに、さらに炭素数2〜6の一価の脂肪族カルボン酸またはその酸無水物や酸ハライドなどの反応性誘導体を反応させることにより、一般式(II)におけるR3がアルキルカルボニル基である化合物が得られ、一方、炭素数2〜6のハロゲノギ酸アルキルエステルX−COOR4(R4は炭素数1〜5のアルキル基、Xはハロゲン原子を示す。)を反応させることにより、一般式(II)におけるR3がアルコキシカルボニル基である化合物が得られる。
【0033】
上記一般式(II)で表される化合物のシクロデキストリン包接体は、α−、β−またはγ−シクロデキストリンを用い、公知の方法に従って、その分子空洞内に一般式(II)で表される化合物を取り込ませることにより、製造することができる。
【0034】
本発明の動脈硬化治療用組成物IおよびIIは、前述の一般式(I)および(II)で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体を、それぞれ有効成分として含むものであって、従来慣用されている方法により、種々の形態に調製することができる。この場合、通常製剤用担体や賦形剤など、医薬品の添加剤として許容されている添加剤を用いて、製剤化される。
【0035】
上記組成物を経口投与製剤として用いる場合、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、内服用液剤等の形態で用いることができるが、消化管からの吸収に適した形態で用いることが好ましい。また、流通性、保存性などの理由から所望する形態の製剤を提供する場合も従来の製剤技術を用いることができる。また、非経口投与剤として用いる場合、注射剤、坐剤およびテープ、パップなどの経皮吸収剤等の形態で用いることができるが、流通性、保存性などの理由から固形製剤を使用時に適当な溶剤で溶解してから用いることも可能であり、液剤および半固形剤の形態で提供することも従来の製剤技術で可能である。
【0036】
投与量は目標とする治療効果、投与方法、年齢、体重などによって変化するので一概には規定できないが、通常一日の非経口的な投与量は体重当たり、有効成分として約0.01〜100mgであり、好ましくは約0.05〜10mgであり、経口的には約0.1〜300mgであり、好ましくは約0.5〜100mgであり、これを1〜5回に分割して投与すればよい。
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例および試験例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0038】
製造例1
トリメチルハイドロキノン3.4gをn−ブチルアルコール40mlに溶解させた溶液にリンモリブデン酸0.7gを加え、攪拌し120℃で6時間加熱した。次いで、この溶液に水および酢酸エチルを各々300ml加え振とうした。その後有機層を分取し、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付してヘキサンと酢酸エチルとの混液で溶出して2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ブチルエーテルの粗生成物を得た。これをヘキサンで再結晶し、式
【0039】
【化10】
Figure 0004749562
【0040】
で示される2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ブチルエーテル[化合物(1)]3.19g(mp65.5〜66.5℃)を得た。
【0041】
製造例2
製造例1において、n−ブチルアルコールの代わりにn−ヘキシルアルコールを用いた以外は、製造例1と同様にして、式
【0042】
【化11】
Figure 0004749562
【0043】
で示される2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル[化合物(2)]3.17g(mp72.5〜73℃)を得た。
【0044】
製造例3
製造例2で得られた化合物(2)500mgと、界面活性剤であるスパン1500mgを混合し、80℃に加温して完全に溶解させた。これをβ−シクロデキストリン2500mgに少しずつ加えて練合し、真空検体乾燥機で約24時間乾燥させてβ−シクロデキストリン包接体(dp約195℃)3700mgを得た。
【0045】
製造例4
製造例2で得た2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル2.36gをピリジン20mlと無水酢酸10mlの混合液に溶解させ、室温で一夜攪拌した。この反応液を氷200gに注ぎ、6モル/リットル塩酸にて酸性とし析出した沈殿をろ取し、水洗後乾燥した。これをエタノール−水から再結晶し、式
【0046】
【化12】
Figure 0004749562
【0047】
で示される2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル 4−アセテート[化合物(3)]2.62g(mp30℃)を得た。
【0048】
製造例5
ニコチン酸クロリド塩酸塩1.00gに、10mlのピリジンを加え、さらにN,N−ジメチルホルムアミドを少量ずつ、ニコチン酸クロリド塩酸塩が溶けるまで(約7ml)加えた。次いで、製造例2と同様にして得た2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル1.20gを10mlのピリジンに加え、この液を氷冷しながら上記ニコチン酸クロリド塩酸塩溶液を少しずつ全量加えた後、室温で一昼夜攪拌した。この反応液を2リットルの氷水に注ぎ、中性になるまで水洗後乾燥した。これをエタノール−水から再結晶し、式
【0049】
【化13】
Figure 0004749562
【0050】
で示される2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル 4−ニコチネート[化合物(4)]1.17g(dp173〜175℃)を得た。
化合物(4)の元素分析結果および分子量測定結果は次の通りである。
元素分析
C:73.87%、H:7.97%、N:4.10%、O:14.06%
分子量:341.20(MS)
なお、化合物(4)をC2127NO3として計算した分子量は341.44である。
また製造例3と同様にして化合物(4)のβ−シクロデキストリン包接体(dp約198℃)を得た
【0051】
試験例1(WHHLウサギを用いた粥状動脈硬化抑制試験)
化合物(1)〜化合物(4)それぞれをβ−シクロデキストリンで包接体としたのち、2wt%アラビアゴム、1wt%スパン溶液中に該化合物として100mg/30mlを含有する懸濁液を調製し、2カ月齢のWHHL雌ウサギ4例ずつに6カ月にわたり連日経口投与した。投与期間終了時に全例の大動脈内壁のアテロームの形成状態を調べた。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0004749562
【0053】
表1より、化合物(1)〜化合物(4)は、いずれも粥状硬化部の形成を抑制することが明らかである。
【0054】
試験例2(WHHLウサギを用いた粥状動脈硬化抑制試験)
化合物(2)をβ−シクロデキストリン包接体としたのち、2wt%アラビアゴム、1wt%スパン溶液中に(2)として10mg/30mlを含有する懸濁液を調製し、2ケ月齢のWHHL雌ウサギに6カ月にわたり、10mg/30ml/kg連日経口投与した。一方、陽性対照群としてユビキノンを上記と同様に6カ月にわたり、200mg/30ml/kg連日経口投与した。なお陽性対照群は2例、化合物(2)投与群は4例試験を行った。投与期間終了時に全例の大動脈内壁のアテローム形成状態を調べた。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
Figure 0004749562
【0056】
表2より、化合物(2)は、低用量で、粥状硬化部の形成を抑制することが明らかである。
【0057】
試験例3(血圧降下作用)
7週齢の高血圧自然発症ラット(SHR)5例に、その体重1kg当たり、化合物(4)1000mgを3週間毎日投与し、血圧の変動を溶媒対照群5例と比較した。また、同じく2000mg/kgを単回投与し一般状態の変化を観察した。連続投与の試験結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
Figure 0004749562
【0059】
表3より化合物(4)は高血圧動物の血圧を低下させる作用のあることが明らかである。また、休薬により血圧値が対照群とほぼ同程度に回復すること、ならびに2000mg/kg単回投与では一般状態の変化は認められなかったことから、安全性も高いものと考えられた。
【0060】
試験例4[化合物(2)の安全性試験]
(1)単回経口投与毒性試験
ラットに化合物(2)の2000、1000および500mg/kgを単回経口投与し、15日間にわたり毒性徴候の発現を観察したが、毒性徴候は全く発現しなかった。
(2)4週間反復経口投与毒性試験
ラットを用いて化合物(2)の1000、300、100、30および10mg/kgを4週間反復経口投与し、毒性徴候発現の有無を観察したが、重大な毒性徴候は発現しなかった。
(3)生殖・発生毒性試験
化合物(2)の600、300および150mg/kgをラットの胎児器官形成期に経口投与し、生殖発生過程における悪影響の有無を観察した。その結果、母体、胎児、出生児の生殖発生過程における悪影響は全く認められなかった。
(4)抗原性試験
モルモットに化合物(2)の100および20mg/kgを皮下投与感作したのち、化合物(2)を含む血清を静脈内投与して全身性アナフィラキシー反応の有無を観察した。その結果、陽性対照の卵白アルブミン投与群は全例が死亡したのに対し、化合物(2)投与群ではなんらの異常もなく、抗原性は認められなかった。
【0061】
【発明の効果】
一般式(I)で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなる本発明のハイドロキノン誘導体は、新規な化合物であって、生体内におけるLDLコレステロールの酸化防止作用(動脈硬化抑制作用)および血圧降下作用などの薬理活性を有し、かつ安全性も高い。また、一般式(II)で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体も動脈硬化抑制作用を示し、かつ安全性が高い。したがって、これらのハイドロキノン誘導体を有効成分とする本発明の組成物は、動脈硬化治療用医薬品として好適に用いられる。

Claims (6)

  1. 一般式(I)
    Figure 0004749562
    (式中、R1は炭素数4〜8のアルキル基を示す。)
    で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体。
  2. 2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル 4−ニコチネートまたはそのシクロデキストリン包接体である請求項1に記載のハイドロキノン誘導体。
  3. 一般式(I)
    Figure 0004749562
    (式中、R1は炭素数4〜8のアルキル基を示す。)
    で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体を有効成分として含むことを特徴とする動脈硬化治療用組成物。
  4. 一般式(I)で表される化合物が2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル 4−ニコチネートである請求項3に記載の動脈硬化治療用組成物。
  5. 一般式(II)
    Figure 0004749562
    (式中、R2は炭素数4〜8のアルキル基、R3は水素原子、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基または炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基を示す。)
    で表される化合物またはそのシクロデキストリン包接体からなるハイドロキノン誘導体を有効成分として含むことを特徴とする動脈硬化治療用組成物。
  6. 一般式(II)で表される化合物が、2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ブチルエーテル、2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテルまたは2,3,5−トリメチルハイドロキノン−1−ヘキシルエーテル 4−アセテートである請求項5に記載の動脈硬化治療用組成物。
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