JP4748035B2 - 電動パーキングブレーキ装置、電動パーキングブレーキ装置の異常検出方法 - Google Patents

電動パーキングブレーキ装置、電動パーキングブレーキ装置の異常検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、車両の電動パーキングブレーキ装置及び電動パーキングブレーキ装置の異常検出方法に関し、特に、ケーブルの異常を検出可能な電動パーキングブレーキ装置及び電動パーキングブレーキ装置の異常検出方法に関する。
電気モータにより駆動される車両のパーキングブレーキ装置では、電気モータの正回転駆動により制動状態となり、逆回転駆動により解除状態となる。例えば、制動状態となった場合には、ケーブルの牽引量等を検出して、パーキングブレーキ用のインジケータランプを点灯し制動状態であることを乗員に知らせる。また、このような電動モータによる電動パーキングブレーキ装置では、ケーブルの張力を監視する等によりケーブルの異常(例えば、切れ異常)を検出する技術が提案されている。
図5は、従来の電動パーキングブレーキ装置の構造を示す(例えば、特許文献1参照。)。図5の電動パーキングブレーキ装置は、電気モータ100の回転駆動力を直線駆動力に変換すると共に、イコライザ機構300により直線駆動力を二つのケーブル110、120に分配する。それぞれのケーブル110、120は左右後輪の一方のブレーキシューに接続されると共に、ケーブル120にはケーブル120の張力を検出する張力センサ200が配置されている。電気モータ100を正回転駆動すると、イコライザ機構300が直線駆動力を二つのケーブル110、120に分配しながら電気モータ側100の方に移動するため、ブレーキシューがホイールに押圧されて制動状態となる。
張力センサ200が接続されたケーブル120に切れ異常が生じた場合、電気モータ100を回転駆動しても張力が増大しないことから、ケーブル120の切れ異常が検出され、張力センサ200が接続されていないケーブル110に切れ異常が生じた場合、所定の張力が得られるまで電気モータ100を回転駆動した場合にイコライザ機構300の位置が正常時と異なることから、ケーブル110の切れ異常が検出される。したがって、パーキングブレーキの2系統のケーブルのそれぞれの切れ異常を一つの張力センサ200により検出できる。
特開2004−161101号公報
しかしながら、特許文献1記載の電動パーキングブレーキ装置は、張力センサ200が接続されていないケーブル110の切れ異常を検出するために、イコライザ機構300の位置を検出する位置検出センサが必要となるという問題がある。それぞれのケーブル110、120に張力センサを接続してもそれぞれの切れ異常を検出可能となるが、搭載スペースの確保が必要となり、重量増及びコスト増となるため好ましくない。
また、制動状態、すなわち駐車中に張力センサ200が接続されていないケーブル110が切れ異常を起こした場合、それを検出困難な場合がある。張力センサ200が接続されていないケーブル110が急激に切れた場合、イコライザ機構300が傾くため張力センサ200が検出するケーブル120の張力が急激に低下する(ゼロにはならない)ため、ケーブル110が急激に切れた場合には張力センサ200の検出値によりこれを検出することができる。
しかしながら、ケーブル110の切れ異常が徐々に進行して切断にいたる場合、イコライザ機構300が徐々に傾き張力センサ200が検出する張力も徐々に低下するため、切断に至った際の張力の変化量が判定のための閾値を超えず、ケーブル110の切れ異常を検出することが困難になる。
本発明は、上記課題に鑑み、一つの張力センサにより2系統のケーブルのそれぞれの切れ異常を精度よく検出できる電動パーキングブレーキ装置及び電動パーキングブレーキ装置の異常検出方法を提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明は、左右の車輪のブレーキユニットにそれぞれ接続されたケーブルを、所定の目標張力になるまで電気モータにより巻き上げる電動パーキングブレーキ装置において、前記車輪の車輪速を検出する車速センサと、車両に制動力が作用してない状態では車輪速が検出される状況であって、前記目標張力に到達した後に、前記車速センサにより検出された左の車輪と右の車輪の車輪速の差が所定値以上の場合、左右のいずれかのケーブルに異常があると判定する異常判定手段と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、左右のいずれかのケーブルに異常が生じた場合の左右の車輪速の差に着目することで、左右のケーブルの切れ異常を個別に検出することができる。
一つの張力センサにより2系統のケーブルのそれぞれの切れ異常を精度よく検出できる電動パーキングブレーキ装置及び電動パーキングブレーキ装置の異常検出方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、電動駐車ブレーキ装置10の概略を示す構成図である。電動駐車ブレーキ装置10は、車両の左右後輪RR,RLに制動力を作用させる駐車ブレーキユニット16,17と、駐車ブレーキユニット16に接続されたケーブル14と、駐車ブレーキユニット17に接続されたケーブル15と、ケーブル14,15を巻き上げて駐車ブレーキユニット16,17を作動させるケーブル巻き上げユニット11と、電動駐車ブレーキ装置10を制御する電子制御ユニット(以下、ECU(Electrical Control Unit))13とを有する。
図2は、ケーブル巻き上げユニット11の構成の一例を示す図である。ケーブル巻き上げユニット11は、電気モータ25の回転駆動力を減速して伝達する減速機26と、減速機26を介して伝達される電気モータ25の回転駆動力を直線駆動力に変換するねじ軸24と、ねじ軸24により変換された直線駆動力によって駆動され直線駆動力を二つのケーブル14、15に分配するイコライザ機構22とを有する。
電気モータ25はECU13により制御され、乗員がスイッチSWを操作することにより正方向に回転駆動され、再度スイッチSWを操作することにより逆方向に回転駆動されるようになっている。
ねじ軸24にはナット23が螺合して取り付けられていると共に、軸受27に回転自在に組付けられている。電気モータ25等と軸受け27は車体に固定されている。したがって、ねじ軸24が正方向に回転駆動されることによりナット23は減速機26側に移動され、また、ねじ軸24が逆方向に回転駆動されることによりナット23が減速機26側と反対方向(後輪側)に移動されるようになっている。
イコライザ機構22は、ナット23に作用する直線駆動力を二つのケーブル14、15に等分に分配するものであり、ナット23に揺動可能に組付けたレバー22aによって構成されている。レバー22aは、中央部にてナット23に所定量揺動可能に組付けられていて、レバー22aの一方にはケーブル14が張力センサ12を介して回動可能に連結され、他方にはケーブル15が直接に回動可能に連結されている。
張力センサ12は、ケーブル14における張力Fを検出するものである。張力センサ12は、張力に応じて微少変位を検出するセンサやひずみゲージセンサを用いる。張力センサ12は、張力Fに対し反力を出力する圧縮コイルスプリング、圧縮コイルスプリングの端部に固定されたマグネット、マグネットの変位を検出するホールICを有し、ホールICはケーブル14の張力Fに相当する圧縮コイルスプリングの圧縮量に応じて変位するマグネットの移動量をECU13に出力する。
ECU13は、プログラムを実行するCPU、プログラム実行の作業領域となり又は一時的にデータを記憶するRAM、イグニションオフしてもデータを保持するEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)、データの入力や他のECUとのインターフェイスとなる入出力インターフェイス、他のECUと通信する通信コントローラ、及び、プログラムを記憶するROM等がバスにより接続されたマイコンにより構成される。CPUがプログラムを実行することで異常判定手段13aが実現される。
ECU13には車両の傾き、特に前後方向(ピッチング方向)を検出する傾斜センサ5が接続されている。傾斜センサ5は、加速度センサや気泡位置を利用したセンサが用いられる。加速度センサを用いる場合、加速度センサは加速度により検知体に生じた変位量を電気抵抗や静電容量の変化で検出するセンサであり、車両前後、上下及び左右方向の3軸それぞれの加速度を検出することができる。車両が水平に停止している場合、加速度センサの下方向に重力加速度Gが加わるが、坂路に停止する場合、坂路の傾斜角θに応じて加速度センサに加わる重力加速度Gが分解される。傾斜センサ5は、重力加速度Gが前方向と下方向(車両前方が下向きに駐車した場合)に分解された場合のそれぞれの方向のGの大きさ、又は、重力加速度Gが後ろ方向と下方向(車両前方が上向きに駐車した場合)に分解された場合のそれぞれの方向のGの大きさ、に基づき駐車した坂路の傾きを検出する。なお、車両前方が上向きに駐車した場合の傾斜角θはプラスに、車両前方が下向きに駐車した場合の傾斜角θはマイナスに計測する。
また、ECU13には車輪速を検出するための車速センサ6RR、6RL、6FR、6FLが接続されている(以下、単に車速センサ6という場合がある)。車速センサ6は各輪に備えられており、各輪のロータの円周上に定間隔で設置された凸部が通過する際の磁束の変化をパルス(以下、車輪速パルスという)として検出し、所定のサンプリング時間毎の車輪速パルス数から算出した車輪速を出力する。
また、ECU13には、ケーブル巻き上げユニット11を「作動/解除」するためのスイッチSW、シフトレバーの位置を検出するシフトポジションセンサ2、ブレーキペダルの踏み込み時にオンとなるストップランプスイッチ3、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルストロークセンサ4、マスタシリンダの油圧を検出するマスタシリンダ圧センサ7、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルストロークセンサ8、が接続されている。
ECU13は例えばメータECUと接続されていて、電動パーキングブレーキ装置の作動又は解除に応じた信号をメータECUに送信するので、メータECUは電動パーキングブレーキ装置の作動又は解除の状態をインストルメントパネルに表示する。
電動パーキングブレーキ装置10の作動及び解除について説明する。電動パーキングブレーキ装置は、自動的に作動及び解除する自動モードとスイッチSWの操作により作動及び解除するマニュアルモードとが設定により選択可能となっている。したがって、マニュアルモードであれば、スイッチSWのオンにより駐車ブレーキユニット16,17が制動状態になり、スイッチSWのオフにより駐車ブレーキユニット16,17が解除される。
自動モードでは、車両の状態に応じて電動パーキングブレーキ装置10の作動及び解除が自動的に行なわれる。自動モードでは、例えば、シフトポジションセンサ2が指示するシフトレバーの位置がP(パーキング)又はN(ニュートラル)であり、ストップランプスイッチ3がブレーキペダルの踏み込みを検出していて、かつ、車輪速がゼロである場合に電動パーキングブレーキ装置10が作動する。この条件が成立すると、ECU13はケーブル巻き上げユニット11に駆動信号を出力して電気モータ25を正方向に回転駆動する。
自動モード又はマニュアルモードのいずれの場合でもECU13は、電気モータ25を正方向に回転駆動しながら張力Fを監視し、張力Fが予め定められた目標張力Fnに到達すると電気モータ25を停止する。目標張力Fnはケーブル14及び15に切れ異常が生じていない場合(イコライザ機構22が傾いていない)に、駐車ブレーキユニット16及び17のいずれもが制動状態になる張力である。ECU13は、傾斜センサ5により検出された傾斜θ及びシフトポジションセンサ2に検出されたシフトポジションに基づき目標張力Fnを算出する。
また、例えば、イグニションオン後に、シフトポジションセンサ2が指示するシフトレバーの位置がP(パーキング)又はN(ニュートラル)以外の走行ポジションであり、かつ、アクセルストロークセンサ4がアクセルペダルの踏み込みを検出する場合に、電動パーキングブレーキ装置10が解除される。ECU13はケーブル巻き上げユニット11に駆動信号を出力して電気モータ25を逆方向に回転駆動する。
続いて、ケーブル異常の検出について説明する。左右の車輪RR、RLが張力Fnにて制動状態にある場合に左右のケーブル14,15のいずれかに切れ異常が生じると、ケーブルが切れた側の車輪の制動力は略ゼロになり、ケーブルが切れていない側の車輪の制動力はイコライザ機構22が傾くため略半分になる。このような場合、坂路では車両が移動するおそれがある。
この点、ケーブルの切れ異常を検出するため、車輪のわずかな移動が検出された場合に目標張力Fnよりも大きい張力でケーブル14,15を巻き上げて、それで停止する場合には一方のケーブルの切れ異常であることが検出可能である。しかしながら、ケーブルの切れ異常が生じていなくても坂路では車両が移動する場合がある。この現象と切れ異常を判別するためには目標張力Fnよりもかなり大きい張力(例えば、2倍以上)で電気モータ25を駆動する必要があるが、実際には電気モータ25にそれだけの出力を要求することは困難とされている。
そこで、本実施形態では、目標張力Fnによる制動状態において、ケーブル14又は15のいずれか一方に切れ異常が生じた場合、切れ異常が生じた側の車輪の車輪速が生じていない側よりも高めに検出されることを利用して異常を検出する。例えば、ケーブル14に切れ異常が生じた場合、車速センサ6RR及び6FRの検出する車輪速は、車速センサ6RL及び6FLの検出する車輪速よりも高くなる。同様に、ケーブル15に切れ異常が生じた場合、車速センサ6RL及び6FLの検出する車輪速は、車速センサ6RR及び6FRの検出する車輪速よりも高くなる。そこで、異常判定手段13aは、左右の車輪速の差が所定以上の場合に、ケーブル14又は15のいずれか一方に切れ異常が生じたと判定する。
〔左右の車輪速の差を利用してケーブル14又は15のいずれか一方の切れ異常を検出する場合〕
図3は、ケーブル14又は15のいずれか一方の切れ異常を検出する処理手順を示すフローチャート図である。図3の処理手順は、自動モード又はマニュアルモードで電動パーキングブレーキ装置10が作動した後、例えばドアロックによりスタートする。
まず、異常判定手段13aは車両の傾斜角θが所定の範囲内か否かを判定する(S10)。車両前方が上向きの傾斜でも下向きの傾斜でも傾斜角θは同じ閾値により判定されるので、ここでは傾斜角θの絶対値が所定値α以上β以下に入るか否かにより判定する。
所定値αは車両が坂路に駐車されていることを判定するための閾値である。所定値βは傾斜角θが過大だとケーブル異常に関わらず重力により車輪速パルスが検出されるおそれがあるため、ケーブル異常を検出する傾斜角θに上限を設定するための閾値である。なお、ギア比によって傾斜角θの影響の程度は異なるので、α及びβはシフトポジションに応じて変更してもよい。
ECU13は、自動モードであれば上記の条件を満たした場合に、マニュアルモードであればスイッチSWがオンにされた場合に、電動パーキングブレーキ装置10を作動させる。したがって、ECU13は電気モータ25を正方向に回転駆動して、張力Fが予め定められた目標張力Fnに到達すると電気モータ25を停止する(S20)。
ついで、異常判定手段13aは、各輪の車輪速を車速センサ6RR、6RL、6FR、6FLから検出し、左側の車輪速と右側の車輪速の差が所定値以上であるか否かを判定する(S30)。
坂路においてケーブル14又は15のいずれかに切れ異常が生じていた場合、異常が生じた側の車輪が少なくとも数度以上回転すると考えられる。
左右の車輪速の比較はどのように行ってもよいが、例えば、4つの各輪から車輪速パルスを検出し、各輪毎に動き出してから所定時間(例えば停止するまで)の最高車輪速を算出する。そして、例えば、左側の車輪FL,RLの平均の車輪速と右側の車輪FR、RRの平均の車輪速、又は、左側の車輪FL,RLの最高値(最低値)と右側の車輪FR、RRの最低値(最高値)を比較して、差が所定値以上であるか否かを判定する。なお、車輪の回転角度が小さい場合は車輪速が誤差を含む場合があるので、左側の車輪FL,RLの車輪速パルス数と右側FR、RRの車輪の車輪速パルス数の差が所定値以上であるか否かを判定してもよい。
また、坂路による影響でなくケーブル異常により車輪速が検出されることをより明確に検出するため、電気モータ25を目標張力Fnよりも大きい張力(例えば、モータ25の最大駆動力)まで作動させてもよい。このような大きな張力Fで作動しても左右の車輪の車輪速に所定以上の差が検出される場合、ケーブル異常が生じていることが明確に検出できる。
左側の車輪速と右側の車輪速の差が所定値以上である場合(S30のYes)、異常判定手段13aは左右のケーブル14,15のいずれかに切れ異常が生じたと判定する(S40)。異常判定手段13aは例えばインストルメントパネルに電動パーキングブレーキ装置10の異常を知らせる警告マークを点灯する。左右どちらのケーブルに異常があるかは、車輪速が大きい方として判別される。
異常判定手段13aは、駐車中、各輪の車輪速パルスの検出及び左右の車輪速の差が所定値以上か否かの判定(S30)を繰り返しているので、ケーブル14又は15のいずれかに切れ異常が生じた場合、随時それを検出する。
以上のように、異常判定手段13aは左右のケーブル14,15のいずれかに切れ異常が生じたことを判定できる。特に、坂路に駐車中、ケーブル14又は15のいずれかの切れ異常が徐々に進行して切断にいたる場合、切断した時に車輪速が検出されるため、張力変化では検出が困難とされる徐々に進行する切れ異常も適格に検出することができる。なお、ケーブル14,15の両方に切れ異常が生じた場合、張力がゼロとなり、かつ、左右の車輪速がいずれも所定値以上となることで検出される。
ところで、図3では車両の駐車中を例に説明したが、作動前にすでに切れ異常が生じていた場合も、左右の車輪速の差に基づきケーブル切れ異常を検出しうる。坂路では、電動パーキングブレーキ装置10が作動して制動状態になるまで運転者はブレーキペダルを操作しているので、サービスブレーキによる制動が解除された時に、ケーブル切れが生じた側の車輪が回転するおそれがある。そこで、異常判定手段13aがストップランプスイッチ3がオフになった場合に、各輪の車輪速を検出し、左側の車輪速と右側の車輪速の差が所定値以上であるか否かを判定すれば、電動パーキングブレーキ装置10の作動前にすでに生じていた切れ異常を検出することができる。したがって、サービス等の修理の際にケーブルの復元が失念された場合(例えばトグル外れ)にも同様に検出可能である。なお、サービスブレーキによる制動の解除は、マスタシリンダ油圧センサ7が検出するマスタシリンダ油圧やブレーキペダルストロークセンサ8が検出するブレーキペダルの操作量に基づき検出してもよい。
また、以上のような判定方法は、雨にぬれた路面や凍結路面のような低μ(摩擦係数)の路面で有効である。低μ路面では車輪がロックしやすい傾向になるため、ケーブル切れが生じていない(制動力が略半分に残存した)車輪は回転しにくくなるが、ケーブル切れが生じ制動力がゼロになった車輪は低μ路面でも回転するため、低μ路面では左側の車輪速と右側の車輪速の差が生じやすくなる。したがって、本実施形態の電動パーキングブレーキ装置10は低μ路面において、左右のいずれかのケーブル切れを精度よく検出することができる。
〔左右の車輪速の差に加え、ヨーレートを利用してケーブル14又は15のいずれか一方の切れ異常を検出する場合〕
図4は、左右の車輪速の差に加え、ヨーレートを利用して車両が坂路に駐車している場合にケーブル14又は15のいずれか一方の切れ異常を検出する処理手順を示すフローチャート図である。図4の処理手順は、自動モード又はマニュアルモードで電動パーキングブレーキ装置10が作動した後、例えばドアロックによりスタートする。なお、ステップS10〜S30までは図3と同様であるので説明は簡単に行う。
まず、異常判定手段13aは車両の傾斜角θが所定の範囲内か否かを判定する(S10)。ついで、ECU13は電気モータ25を正方向に回転駆動して、張力Fが予め定められた目標張力Fnに到達すると電気モータ25を停止する(S20)。
異常判定手段13aは、各輪の車輪速を車速センサ6RR、6RL、6FR、6FLから検出し、左側の車輪速と右側の車輪速の差、又は、左側の車輪の車輪速パルス数と右側の車輪の車輪速パルス数の差が所定値以上であるか否かを判定する(S20)。
そして、左側の車輪速と右側の車輪速の差が所定値以上である場合(S20のYes)、異常判定手段13aは左右のケーブル14,15のいずれかに切れ異常が生じたと判定する(S40)。
また、左側の車輪速と右側の車輪速の差が所定値以上でない場合(S30のNo)、異常判定手段13aは車両のヨーレートが所定値以上か否かを判定する(S50)。左右のケーブル14,15のいずれかの切れ異常により、左(右)の後輪の制動力が略半分になり、右(左)の後輪の制動が完全に解除されると、車体が左右いずれかに傾きヨーレートが検出される。
特に、低μ路面ではケーブル切れ異常により生じた車両の移動が慣性力として働いて、車体全体が傾いて移動する現象が生じうる。低μ路面でケーブル切れが生じた側の車輪までロックすると、左側の車輪速と右側の車輪速の差が所定以上とならない場合があるので、ヨーレートを利用したケーブル切れ異常の検出が有効となる。
したがって、左側の車輪速と右側の車輪速の差が所定値以上でない場合であっても、ヨーレートが所定値以上の場合(S50のYes)、異常判定手段13aは左右のケーブル14,15のいずれかに切れ異常が生じたと判定することができる(S40)。
また、図4では、左右の車輪速の差が所定値以上でない場合にヨーレートによりケーブルの切れ異常を判定したが、左右の車輪速の差を判定することなくヨーレートのみによりケーブルの切れ異常を検出してもよい。
以上のように、本実施形態の電動パーキングブレーキ装置10は、張力センサ12が左右のケーブルのいずれかに一つしか配設されておらず、かつ、イコライザ機構22の位置検出手段が配設されていなくても、左右のケーブル14,15のいずれかに切れ異常が生じたことを検出できる。ケーブルの切れ異常が徐々に進行して切断にいたる場合、切断した時に車輪速が検出されるため、張力変化では検出が困難とされる徐々に進行する切れ異常も適格に検出することができる。また、車速センサ6や傾斜センサ(加速度センサ)5は車両が元々備えているので、本実施形態の以上検出方法を適用しても電動パーキングブレーキ装置10のコスト増は最小限に抑えられる。また、ケーブル異常に対応するために、電動パーキングブレーキ装置10を制動状態にするための張力を大きめにする必要がないので、電気モータ25への負荷が過大になることを防止できる。
電動駐車ブレーキ装置の概略を示す構成図である。 ケーブル巻き上げユニットの構成の一例を示す図である。 いずれか一方のケーブルの切れ異常を検出する処理手順を示すフローチャート図である。 左右の車輪速の差に加えヨーレートを利用していずれか一方のケーブルの切れ異常を検出する処理手順を示すフローチャート図である。 従来の電動パーキングブレーキ装置の一例を示す図である。
符号の説明
2 シフトポジションセンサ
3 ストップランプスイッチ
4 アクセルストロークセンサ
5 傾斜センサ
6、6RR、6RL、6FR、6FL 車速センサ
7 マスタシリンダ油圧センサ
8 ブレーキペダルストロークセンサ
10 電動パーキングブレーキ装置
11 ケーブル巻き上げユニット
12 張力センサ
13 ECU
14、15 ケーブル
16、17 駐車ブレーキユニット


Claims (6)

  1. 左右の車輪のブレーキユニットにそれぞれ接続されたケーブルを、所定の目標張力になるまで電気モータにより巻き上げる電動パーキングブレーキ装置において、
    前記車輪の車輪速を検出する車速センサと、
    車両に制動力が作用してない状態では車輪速が検出される状況であって、前記目標張力に到達した後に、前記車速センサにより検出された左の車輪と右の車輪の車輪速の差が所定値以上の場合、左右のいずれかのケーブルに異常があると判定する異常判定手段と、
    を有することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
  2. 車両が駐車された路面の傾斜を検出する傾斜センサを有し、
    前記異常判定手段は、前記傾斜センサにより検出される傾斜が所定範囲に入る場合、左右のいずれかのケーブルに異常があるか否かを判定する、
    ことを特徴とする請求項1記載の電動パーキングブレーキ装置。
  3. 前記異常判定手段は、前記傾斜センサにより検出される傾斜が所定の上限値以下に入る場合、左右のいずれかのケーブルに異常があるか否かを判定する
    ことを特徴とする請求項2記載の電動パーキングブレーキ装置。
  4. 車両のシフトレバーの位置を検出するシフトポジションセンサを有し、
    前記異常判定手段は、前記シフトポジションセンサにより検知されるシフトレバーの位置に応じて、前記所定範囲を変更する、
    ことを特徴とする請求項2又は3記載の電動パーキングブレーキ装置。
  5. 前記異常判定手段は、前記目標張力よりも大きい張力まで前記電気モータを作動させて、左右のいずれかのケーブルに異常があるか否かを判定する
    ことを特徴とする請求項2記載の電動パーキングブレーキ装置。
  6. 左右の車輪のブレーキユニットにそれぞれ接続されたケーブルを、所定の目標張力になるまで電気モータにより巻き上げる電動パーキングブレーキ装置の異常検出方法において、
    車両に制動力が作用してない状態では車輪速が検出される状況であって、前記目標張力に到達した後に、車速センサにより車輪の車輪速を検出するステップと、
    左の車輪と右の車輪の車輪速の差が所定値以上の場合、左右のいずれかのケーブルに異常があると判定するステップと、
    を有することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置の異常検出方法。
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