JP4747301B2 - 無電解ニッケルめっき方法 - Google Patents
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Description
無電解ニッケルめっき液は、主として、ニッケルイオン源としての硫酸ニッケル、ニッケルイオン錯化剤、ニッケルイオン還元剤としての次亜リン酸ナトリウムなどを含有しており、金属ニッケルを析出させると、めっき液中のニッケルイオンおよび次亜リン酸イオンの濃度が減少するため、通常、硫酸ニッケルおよび次亜リン酸ナトリウムを補給しつつ連続して無電解ニッケルめっき処理が行われている。
しかしながら、5ターン程度の使用で無電解ニッケルめっき液を廃棄処分すると、廃液が多量に発生し、これが大きな環境問題となる。しかも、寿命に達した無電解ニッケルめっき液は、リン化合物、錯化剤等を多量に含む多成分系であるため廃液処理が非常に困難である。
上記以外にも、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解めっき液の廃液のpHを調整した後、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させ、その後、有機相と水相とに分離し、再度、無電解めっき液の廃液からなる水相のpH値を調整し、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させる工程を繰り返す無電解めっき廃液の処理方法が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
即ち、本発明は、無電解ニッケルめっき液中に被めっき物を浸漬させて、前記被めっき物表面にニッケルめっき皮膜を施す無電解ニッケルめっき方法において、亜リン酸イオンが蓄積された前記無電解ニッケルめっき液をニッケルめっき槽から抜き出し、抜き出された前記無電解ニッケルめっき液を、アミン含有有機溶媒と次亜リン酸含有水溶液とを接触させて有機相中に次亜リン酸アミン錯体を形成させ相分離して得られる次亜リン酸アミン錯体含有有機抽出剤と接触させ、有機相中に亜リン酸イオンを亜リン酸アミン錯体として抽出するとともに水相中に次亜リン酸イオンを移行させた後、これを相分離して得られる水相を前記ニッケルめっき槽に戻すことを特徴とする無電解ニッケルめっき方法である。
本発明の無電解ニッケルめっき方法では、亜リン酸イオンが抽出された前記有機相は、アルカリ水溶液との接触により亜リン酸イオンが除去された後、前記アミン含有有機溶媒の少なくとも一部として用いられることが好ましい。
また、本発明の無電解ニッケルめっき方法では、前記水相中の次亜リン酸イオン濃度が0.05〜2.5モル/Lになるように、無電解ニッケルめっき液と接触させる前記次亜リン酸アミン錯体含有有機相の量および/または前記次亜リン酸アミン錯体含有有機相中の次亜リン酸アミン錯体濃度を調整することも好ましい。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る無電解ニッケルめっき方法を適用する無電解ニッケルめっき装置の構成を説明するためのフロー図である。
この無電解ニッケルめっき装置は、無電解ニッケルめっき液が収容されるニッケルめっき槽1と、無電解ニッケルめっき液と次亜リン酸アミン錯体含有有機相とを接触させるための第一抽出装置2と、次亜リン酸アミン錯体含有有機相を得るための第二抽出装置3とを備えている。そしてニッケルめっき槽1は無電解ニッケルめっき液抜き出し配管4を介して第一抽出装置2に接続されており、第二抽出装置3は無電解ニッケルめっき液戻し配管5を介してニッケルめっき槽1に接続されており、また、第二抽出装置3は、次亜リン酸アミン錯体含有有機相供給配管6を介して第一抽出装置2に接続されている。
図2は、本発明の実施形態2に係る無電解ニッケルめっき方法を適用する無電解ニッケルめっき装置の構成を説明するためのフロー図である。
図2において、本実施の形態に係る無電解ニッケルめっき方法に用いる無電解ニッケルめっき装置では、第一抽出装置2が亜リン酸アミン錯体含有有機相供給配管9を介して第三抽出装置8に接続されており、第三抽出装置8がアミン含有有機溶媒供給配管10を介して第二抽出装置3に接続されている。その他の構成については実施の形態1に係る無電解ニッケルめっき方法で用いた無電解ニッケルめっき装置と同じ構成であるので、本実施の形態では、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態では、第一抽出装置2において亜リン酸イオンが亜リン酸アミン錯体として抽出された有機相(亜リン酸アミン錯体含有有機相)を、亜リン酸アミン錯体含有有機相供給配管9を介して第三抽出装置8に供給し、この亜リン酸アミン錯体含有有機相を、逆抽出剤である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリを含むアルカリ水溶液と接触させることによって、有機相中に含まれる亜リン酸イオンをアルカリ水溶液に逆抽出する。亜リン酸イオンを除去して得られた有機相には次亜リン酸アミン錯体含有有機相を調製する際に用いたアミンが含まれているため、これをアミン含有有機溶媒供給配管10を介して第二抽出装置3に供給することで、アミン含有有機溶媒の一部として再利用することができる。アルカリ水溶液としては、操作性の面から、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリ水溶液中の強アルカリ濃度については特に限定されるものではないが、十分な逆抽出率を得るためには、3モル/L程度とすることが好ましい。なお、図2中、実線の矢印は有機相の移動を表しており、点線の矢印は水相の移動を表している。
各種のアミンを次亜リン酸によって酸処理し、無電解ニッケルめっき模擬液と混合し、模擬液中の各種成分の抽出率を調べた。
ここで用いたアミンは、第一級アミンとしてローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)社製Primene(登録商標)JM−T(一般式NH2Rで表され、ここでRは炭素数16〜22の分岐アルキル基であり、アミノ基が第三級炭素原子と結合している)、第二級アミンとしてジ−n−オクチルアミン(以下、DNOAと略記する)およびジ(2−エチルヘキシル)アミン(以下、DIOAと略記する)および第三級アミンとしてトリ−n−オクチルアミン(以下、TNOAと略記する)である。Primene(登録商標)JM−Tについては50vol%、その他については2Mとなるように、希釈剤として酢酸ブチルを用いて溶解してアミン含有有機溶媒を調製した。
まず、アミン含有有機溶媒15mLと、2Mの次亜リン酸含有水溶液15mLを分液ロートにて10分間激しく振とう混合し(酸処理)、静置・分相後、水相を採取し、次亜リン酸濃度を定量することにより、次亜リン酸の抽出率を求めた。次に、得られた有機相(次亜リン酸アミン錯体含有有機相)が入った分液ロートに模擬液15mLを入れ、10分間激しく振とう混合し、静置・分相後、水相を採取し、亜リン酸、乳酸、硫酸の各イオン濃度を定量し、各成分の抽出率を求めた。また次亜リン酸イオン濃度の定量とpH測定も行った。
実験結果を表1に示す。次亜リン酸含有水溶液からの抽出では88%以上の次亜リン酸抽出率が得られ、模擬液からの抽出では30%以上の亜リン酸イオン抽出率および0.6M以上の次亜リン酸イオン濃度増加が認められた。また14%以上の硫酸イオン抽出率も得られた。硫酸イオンの蓄積は硫酸ナトリウムの析出を招くので、亜リン酸イオンだけでなく硫酸イオンも抽出することができるのは望ましい結果である。
希釈剤が各種成分の抽出性に及ぼす影響を調べるために、抽出剤として2MのDIOA、希釈剤としてトルエン、ヘプタンおよびシェル化学社製シェルゾール(登録商標)D70(アルカン約50%、ナフテン約50%の工業溶剤)を用いて、実験例1と同様の実験を行った。その結果を、実験例1で示した酢酸ブチルを希釈剤として用いたときの結果とともに表2に示す。どの希釈剤を用いても、各種成分の抽出特性に顕著な差は認められなかった。ただし、酢酸ブチル以外の希釈剤では、次亜リン酸処理後に有機相が2相分離した。この分離した2相は模擬液と混合後は1相に戻るが、工業的な観点からはこのような有機相の2相分離は連続操作を難しくするため望ましくない。しかしこの点は高級アルコールや高級フェノールを有機相に改質剤として添加することにより、次に示す実験例3のように解決することができる。
実験例2で示したように、希釈剤によっては、次亜リン酸を抽出後、有機相が2相に分離する場合がある。このような2相分離は、有機相に少量の高級アルコールや高級フェノールを改質剤として添加することにより防止することができることが多い。そこで、ここではヘプタンにより希釈した2MのDIOAに2−エチルヘキシルアルコール(以下、EHAと略記)を改質剤として加えて実験例1および2と同様の実験を行った。その結果を表3に示す。これよりEHA濃度2vol%以上で次亜リン酸抽出後の有機相の2相分離がなくなることが分かった。また各種成分の抽出性は、EHA濃度を増やしても大きな変化がないことも分かった。
酸処理に用いる次亜リン酸含有水溶液中の次亜リン酸濃度が、模擬液からの各成分の抽出特性に及ぼす影響を調べるために、酢酸ブチルに溶解させた0.5〜2.0MのDIOA、0〜8Mの次亜リン酸溶液および模擬液を用いて実験例1と同様の操作を行った。
表4はその結果である。酸処理時の次亜リン酸濃度を増やすと、酸処理後の有機相中の次亜リン酸濃度も増加する。それに伴い、模擬液からの抽出において、亜リン酸イオン抽出率は、酸処理に用いる次亜リン酸含有水溶液中の次亜リン酸濃度が低いときには単調増加するが、その後一定値となった。また次亜リン酸イオン濃度の増加量および硫酸イオン抽出率は、酸処理に用いる次亜リン酸含有水溶液中の次亜リン酸濃度の増加にともない単調に増加する。ニッケルイオン抽出率も単調増加するが、DIOAが1M以下では抽出率は5%以下と僅かであった。
このように、酸処理に用いる次亜リン酸含有水溶液中の次亜リン酸濃度およびアミン濃度を変化させることにより、各種成分の抽出率および次亜リン酸濃度の増加を調節できることが分かった。
なお、酸処理に用いる次亜リン酸含有水溶液中の次亜リン酸濃度がゼロのときは、酸処理を行わないことに相当するが、このとき、模擬液からの亜リン酸イオンや硫酸イオンの抽出率は僅かであり、ほとんど抽出が起こらない。このことから、亜リン酸の抽出に先立って酸処理を行うことが有効であることが確認された。
亜リン酸イオン抽出後のめっき液中の次亜リン酸イオン濃度が所定値になるように酸処理に用いる次亜リン酸含有水溶液中の次亜リン酸濃度を設定した場合、めっき液からの抽出時における亜リン酸イオン抽出率が十分高くならない場合が考えられる。このような場合、酸処理時に用いる酸として、次亜リン酸単独ではなく、例えば次亜リン酸と硫酸との混酸を使用することによって酸処理後の有機相の陰イオン交換能力をより高めてから亜リン酸イオン抽出工程に送る方法がある。そこで、次亜リン酸濃度を0.5M一定とし硫酸濃度を0〜0.75Mまで変化させた次亜リン酸含有水溶液を用いて、酢酸ブチルに溶解させた0.5MのDIOAの酸処理を行った後、亜リン酸イオン抽出を行い、表5に示す結果を得た。酸処理に用いる次亜リン酸含有水溶液中の硫酸濃度を増加させることにより、亜リン酸イオンの抽出率は12%から54%まで増加しており、酸処理に用いる次亜リン酸含有水溶液中の次亜リン酸および硫酸濃度を適切に制御することにより、所望の亜リン酸イオン抽出率およびめっき液中次亜リン酸濃度を得ることが可能であることが分かる。
めっき液から抽出された亜リン酸、乳酸、硫酸、ニッケルの各イオンおよび有機相中に残留する次亜リン酸を有機相から除去し、アミンを再生させることができるかどうかを調べるために、模擬液と混合した後の有機相(亜リン酸アミン錯体含有有機相)を2〜4Mの水酸化ナトリウム溶液と混合し、上記各種成分の逆抽出率を調べた。
まず、酢酸ブチルに溶解させた2MのDIOA15mLと2Mの次亜リン酸含有水溶液15mLとを10分間激しく振とう混合し(酸処理)、静置・分相後、水相を取り除いた。次いで、得られた有機相(次亜リン酸アミン錯体含有有機相)と模擬液を等体積で10分間激しく振とう混合し、静置・分相後、水相を採取して各種成分を定量することにより有機相中の各種成分の濃度を求めたところ、亜リン酸イオン0.27M、次亜リン酸イオン0.95M、乳酸イオン0.15M、硫酸イオン69mM、ニッケルイオン6mMとなった。
このようにして得られた有機相(亜リン酸アミン錯体含有有機相)と所定濃度の水酸化ナトリウム溶液を等体積にて10分間激しく振とう混合し、静置・分相後、水相を採取し、各種成分を定量し、それら成分の逆抽出率を求めた。
得られた結果を表6に示す。亜リン酸、次亜リン酸の逆抽出率は水酸化ナトリウム濃度2M以上で100%であった。乳酸の逆抽出率は、水酸化ナトリウム濃度3M以上で100%であった。硫酸の逆抽出率は水酸化ナトリウム濃度の増加にともない僅かに増大するが4Mの水酸化ナトリウムでも78%であり、完全な逆抽出は難しいが、再使用するうえでの支障はないことが確認された。ニッケルについては、見掛け上の逆抽出率は21%以下と低い値に留まっているが、水酸化ナトリウム濃度3M以上では、水相に微量の緑色沈殿が見られたことおよびこのときのpHが13以上であることより、大部分は水酸化ニッケルとして晶析剥離されているものと考えられる。
酢酸ブチルで希釈された2MのDIONと2Mの次亜リン酸含有水溶液とを等体積にて10分間激しく振とう混合し、静置後、相分離して次亜リン酸アミン錯体含有有機相を得た。この次亜リン酸アミン錯体含有有機相と老化ニッケルめっき液(SK−100、日本カニゼン株式会社製、3.5ターン使用したもの)とを等体積にて10分間激しく振とう混合し、静置後、相分離して処理済老化ニッケルめっき液(水相)Aを得た。また、2MのDIONの代わりに2MのTNOAを用いる以外は上記処理済老化ニッケルめっき液Aを得るのと同様にして、処理済老化ニッケルめっき液Bを得た。老化ニッケルめっき液、処理済老化ニッケルめっき液Aおよび処理済老化ニッケルめっき液B中に含まれる次亜リン酸イオンおよび亜リン酸イオン濃度を表7に示した。表7から分かるように、DIONおよびTNOAいずれのアミン含有有機溶媒を用いて老化ニッケルめっき液を酸処理した場合にも、次亜リン酸イオンは増加するが、亜リン酸イオンは30%除去されている。
<めっき析出速度>
蛍光X線膜厚計を用いて測定した。
<皮膜成分>
蛍光X線分析装置によりP%を測定した。
<皮膜光沢の評価>
ニッケルめっき皮膜が施された圧延鋼板の表面を目視で観察し、下記の判定基準で評価した。
良好:光沢のある皮膜
不可:白っぽく光沢のない皮膜
以上のことから、亜リン酸イオンが蓄積された老化めっき液を次亜リン酸アミン錯体含有有機相と接触させた後、これを相分離して得られる水相をニッケルめっき槽に戻すことで、無電解ニッケルめっき液の長寿命化が可能であることが示された。
Claims (3)
- 無電解ニッケルめっき液中に被めっき物を浸漬させて、前記被めっき物表面にニッケルめっき皮膜を施す無電解ニッケルめっき方法において、
亜リン酸イオンが蓄積された前記無電解ニッケルめっき液をニッケルめっき槽から抜き出し、抜き出された前記無電解ニッケルめっき液を、アミン含有有機溶媒と次亜リン酸含有水溶液とを接触させて有機相中に次亜リン酸アミン錯体を形成させ相分離して得られる次亜リン酸アミン錯体含有有機相に接触させ、有機相中に亜リン酸イオンを亜リン酸アミン錯体として抽出するとともに水相中に次亜リン酸イオンを移行させた後、これを相分離して得られる水相を前記ニッケルめっき槽に戻すことを特徴とする無電解ニッケルめっき方法。 - 亜リン酸イオンが抽出された前記有機相は、アルカリ水溶液との接触により亜リン酸イオンが除去された後、前記アミン含有有機溶媒の少なくとも一部として用いられることを特徴とする請求項1に記載の無電解ニッケルめっき方法。
- 前記水相中の次亜リン酸イオン濃度が0.05〜2.5モル/Lになるように、無電解ニッケルめっき液と接触させる前記次亜リン酸アミン錯体含有有機相の量および/または前記次亜リン酸アミン錯体含有有機相中の次亜リン酸アミン錯体濃度を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の無電解ニッケルめっき方法。
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