JP4747259B2 - 嵩高柔軟性不織布及びそれを用いた繊維製品 - Google Patents

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Description

本発明は、嵩高柔軟性不織布及びそれを用いた繊維製品に関する。更に詳しくは、不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部が混在分散した外観を持つ、優れた掻き取り性と柔軟性を有する嵩高柔軟性不織布及びそれを用いた繊維製品に関する。
従来、おしり拭きや、ワイピングクロス等に使用される不織布は、汚物やホコリ等を捕集するために優れた掻き取り効果が要求される。一般に、掻き取り効果を向上させる為に、太繊度で構成される不織布を用いて繊維の剛性を利用することが考えられるが、この場合、不織布自体の柔軟性が低下し、おしり拭き等の人肌と接触して使用する場合は、触感が低下し、好まれない。
また、おしり拭き等、人肌に触れる製品には、人肌への触感上柔軟性も要求される。加えて不織布の掻き取り性能を向上させるには、適度な不織布の剛性が必要となるが、掻き取り性と柔軟性の両方の機能を満足することは非常に困難であつた。
一方、その他の手法として、エチレン−プロピレンランダムコポリマー(EP)を少なくとも70重量%以上含む高収縮性繊維を少なくとも50重量%含む第一繊維層の少なくとも片面に、他のポリマーからなる第二繊維層を配置させ、これら二層を高圧水流によるウォータージェット法で繊維間を交絡一体化させて交絡不織布とし、その後の熱処理によりその第一繊維層を収縮させて表面に第二繊維層による多数の皺を形成させた、見掛けの厚みが上記交絡不織布の2倍以上を有する嵩高性不織布が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、この場合ウォータージェット法で交絡を行って不織布を形成させても、熱接合されていないので強力が低くなり、実用面から好ましくない場合もある。
更に、その後の熱処理により、第一繊維層の熱収縮作用で相互に交絡一体化した第一繊維層と第二繊維層は、全面が収縮し、交絡不織布表面に第二繊維層による多数の微小皺が形成されるが、交絡不織布全面にわたって繊維の自由度が抑制されるため、おしり拭き等、人肌に触れる製品などには、柔軟性、風合いを損なうという問題が発生する。
特許第3138145号
本発明の課題は、前記問題点を解消せんとするものであり、熱接合領域(I)と非接合領域(II)を有する特殊な不織布層(A)と、前記不織布層(A)より熱収縮率が高い繊維を主体とする不織布層(B)を積層して使用することによって、積層不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部を混在分散させ、このような構成により、優れた掻きとり効果と人肌に優しい柔軟性を発揮する嵩高柔軟性不織布を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、下記構成を有することで、前記課題を解決することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の構成を有する。
(1)10℃以上の融点差を持った低融点成分と高融点成分からなる熱接着性複合繊維を主体とする不織布層(A)および前記不織布層(A)を構成する熱接着性複合繊維より熱収縮率が高い繊維を主体とする不織布層(B)が積層されて構成され、不織布層(A)は熱接合領域(I)と非接合領域(II)を有する不織布層であり、前記不織布層(A)及び不織布層(B)の一部は繊維相互が交絡され、かつ不織布層(B)の熱収縮により積層不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部が混在分散していることを特長とする嵩高柔軟性不織布。
(2)10℃以上の融点差を持った低融点成分と高融点成分からなる熱接着性複合繊維を主体とする不織布層(A)および前記不織布層(A)を構成する熱接着性複合繊維より熱収縮率が高い繊維を主体とする不織布層(B)が積層されて構成され、不織布層(A)は熱接合領域(I)と非接合領域(II)を有する不織布層であり、その熱接合領域(I)は繊維ウェブに熱風を通して熱接着された部分であり、前記不織布層(A)及び不織布層(B)の一部は繊維相互が交絡され、かつ不織布層(B)の熱収縮により積層不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部が混在分散していることを特長とする嵩高柔軟性不織布。
(3)不織布層(A)の熱接合領域(I)は、不織布層(B)との交絡が弱く、不織布層(B)の熱収縮により該不織布層(B)から離脱隆起して積層不織布表面に屋根状の嵩高な丘部を形成している前記(1)または(2)項に記載の嵩高柔軟性不織布。
(4)積層不織布表面の屋根状の嵩高な丘部は、下層部の不織布層(B)との間に、繊維が存在しないか、又は存在しても極く少量の空隙層を形成している前記(3)項に記載の嵩高柔軟性不織布。
(5)高収縮性の熱可塑性繊維が、低融点成分と高融点成分からなる熱接着性複合繊維である前記(1)〜(4)のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布。
(6)不織布層(A)及び不織布層(B)の繊維相互交絡が、高圧水流により成されたものである前記(1)〜(5)のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布。
(7)不織布層(A)及び、または不織布層(B)が、ステープルファイバー(短繊維)で構成されている前記(1)〜(6)のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布。
(8)前記(1)〜(7)のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布に、前記嵩柔軟性不織布以外の不織布、ウェブ、織物、編み物、紙状物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層してなる積層体。
(9)前記(1)〜(7)のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布または前記(8)項記載の積層体を用いたワイピングクロス。
(10)前記(1)〜(7)のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布または前記(8)項記載の積層体を用いた繊維製品。
本発明の嵩高柔軟性不織布は、不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部が混在分散しており、嵩高で優れた柔軟性を有する。このため、掻き取り(ふき取り)効果に優れ、また肌触りにも極めて優れるので、おしり拭き、ワイピングクロスに好適に使用できる。
本発明の嵩高柔軟性不織布は、低融点成分と高融点成分からなる熱接着性複合繊維を主体とする不織布層内に熱接合領域(I)と非接合領域(II)を有する不織布層(A)と、前記不織布層(A)より高収縮性の熱可塑性繊維を主体とする不織布層(B)とからなる積層不織布で構成され、前記不織布層(A)及び不織布層(B)は繊維が相互に交絡され、かつ不織布層(B)の熱収縮により積層不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部が混在分散していることを特長とする嵩高柔軟性不織布である。不織布層(A)と不織布層(B)が積層・交絡された場合、主に交絡に関与するのは非接合領域(II)であり、熱接合領域(I)の不織布層(B)との交絡は比較的弱い。したがって、後の熱処理によって不織布層(B)を熱収縮させた場合、熱接合領域(I)は隆起して嵩高な丘部を形成するが、交絡が十分行われている非接合領域(II)は隆起せずに嵩の低い平野部となる。
不織布層(A)とは、熱接着性複合繊維を主体とした繊維ウェブの任意の部分だけが集中的に熱接着された部分(熱接着された繊維交点を多数有する部分)である熱接合領域(I)と、非熱接合領域(II)とを有する不織布である。熱接合領域(I)が、熱風を通して熱接着されている場合、その部分が圧着扁平化されることがないので好ましい。
熱接着性複合繊維としては、低融点成分と高融点成分の構成による繊維があり、特にポリエチレンとポリプロピレン、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートから構成される鞘芯型、偏芯型の熱接着性複合繊維が好ましいが、低融点成分と高融点成分の構成による複合繊維であれば特に限定されない。低融点成分と高融点成分の融点差は、10℃以上であることが好ましい。これは、熱接合領域(I)を形成させるために、低融点成分の熱溶融によって複合繊維交点の接着を行うからであり、融点差が狭すぎると熱処理の温度が狭い範囲に限定されるからである。
熱接着性複合繊維の繊度は、特に限定されないが、風合いを重視した場合は細い繊度のものを選択し、その範囲は0.5dtexから4dtex、好ましくは1dtexから3dtex の範囲である。
不織布(A)の目付けは、後の熱収縮過程を容易とするために、低目付けが好ましい。その範囲は15g/m2から60g/m2、好ましくは15g/m2から50g/m2、より好ましくは15g/m2から30g/m2である。不織布層(A)を構成するウェブの形態は、特に限定されないが、ステープルファイバーをカード機で処理したウェブが好ましい。また、ステープルのカット長も20mmから150mmが好ましく、30mmから120mmであればさらに好ましい。
不織布層(A)の熱接合領域(I)の形状は、不織布中の繊維の流れ方向に対して直角方向に長径を持つ楕円形状が、不織布強力を向上させることができるので特に好ましく、その配列は千鳥模様が好ましいが、これに限定されるものではない。この形状に類似するものとして、例えば丸、楕円、長方形、菱形等が挙げられる。
熱接合領域(I)と非熱接合領域(II)との面積比率範囲は、必要に応じて任意に変更することができるが、より柔軟な不織布を得るためには、非熱接合領域を可能な限り多くとることが好ましい。具体的な熱接合領域(I)と非熱接合領域(II)との面積比率範囲としては、10:90から90:10が好ましく、30:70から70:30がより好ましい。
また、熱接合領域(I)の大きさは任意に設定することができ、特に限定されないが、楕円の場合短径5〜30mm程度、長径20〜50mmが実施しやすく、他の形状の場合もほぼこの大きさに準ずる。
不織布層(A)に用いる不織布は、例えば通常の熱風加工機(サクションバンドドライヤー)を使用して製造することが出来る。一般的に熱風加工機は、一定の温度の熱風を自走式のコンベアネットに吹き付けながら、コンベアネットの下から吸引するもので、熱接着性複合繊維を嵩高の不織布に加工するのに適している。
本発明に用いる不織布層(A)は、例えば任意の孔を開けた多孔部材(例えばパンチングプレート)でウェブを覆って熱風処理することで得られる。この孔の部分を熱風が通過し、熱接合領域(I)を形成する。
本発明に用いられる不織布層(A)は、前記条件を阻害しない程度(熱風によりウェブ中の熱接着性複合繊維が十分接着される程度)であれば、熱接着性複合繊維に他の繊維を混綿して使用することも出来る。混綿に使用する他の繊維として、木綿、麻などの木質繊維、天然繊維、レーヨンやアセテートなどの化学繊維、ポリエステル、アクリル、ナイロン塩化ビニルなどの合成繊維を挙げることができる。
不織布層(B)に使用される高熱収縮性の繊維は、前記不織布層(A)に用いられる熱接着性複合繊維よりも高い熱収縮率を示すものであれば、特に限定されない。この場合、不織布層(A)と不織布層(B)の繊維の熱収縮率は、実質的にはそれらのウェブあるいは不織布同士の熱収縮率をもって比較することによって決定される。不織布層(B)の実際の態様としては、100℃のオーブンで5分間熱処理した場合のウェブの収縮率が40%以上である繊維が好ましい。不織布層(A)に用いられる熱接着性複合繊維の熱収縮率は低く、通常0〜5%程度(ウェブを100℃のオーブンで5分間熱処理した場合)だからである。不織布層(B)として上記条件の熱収縮率が40%以上の繊維を用いることにより、得られる不織布の丘部の嵩を十分高くすることができ、掻き取り効果が向上する。このような繊維として、公知の合成繊維、例えばポリオフィン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等あるいはポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維等の中から、上記条件に適ったものを容易に選ぶことができる。
不織布層(B)に使用される高収縮性の繊維は、ステープルファイバーが好ましく、これをカード機で処理してウェブとするのが好ましい。不織布層(B)に使用される高収縮性の繊維の繊度範囲は、1dtexから20dtexが好ましく、1dtexから10dtexの範囲であればさらに好ましい。このような繊度範囲においては、不織布層(A)と交絡する際の絡みが十分となる。また、カット長も20mmから150mmが好ましく、30mmから120mmであればさらに好ましい。カット長がこの範囲内である場合、ウェブ形成時のカード工程における処理が行い易く、後の繊維同士を交絡させる工程でも、繊維が十分絡んで交絡状態が良好となる。
不織布層(A)と、不織布層(B)を構成するウェブの繊維同士を交絡させる方法としては、例えばウォーターニードル法(ウォータージェットあるいはスパンレースなどとも称される)を挙げることができる。ウォーターニードルの水圧は、4MPa〜10MPaが好ましい範囲である。積層不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部を混在分散させて発現させるためには、不織布層(A)と不織布層(B)を繊維の交絡により積層させた後、不織布層(B)の熱収縮を促すために熱処理を行う。
本発明を更に図面を用いて詳細に説明する。
「図1」は、本発明に係る不織布層(A)の一実施例の形態を示す全体平面図である。
図1において、不織布層(A)1は、熱接着性複合繊維が集中的に熱接着された部分を多数有する熱接合領域(I)2と非熱接合領域(II)3から構成されている。熱接合領域(I)2は、後述する千鳥配列に開口したパンチングプレートの部分を通過する熱風により、熱接着を受けている。この態様では熱接合領域(I)2は熱圧着扁平化されていない。熱接合領域(I)が熱圧着扁平化されていないことは、本発明の目的とする嵩高柔軟性不織布の柔軟性、肌さわり及び風合い面にとって特に好ましい。
「図2」は、「図1」のX−X断面における切り欠き断面図である。また、「図3」は、「図2」のA部を詳細に表した拡大図である。
前記熱接合領域(I)2の形成に際しては、次のようにして製造することが出来る。例えば、熱接着性複合繊維を使用し、カード機にてウェブを作製する。そのウェブ上に、楕円形の孔を千鳥配列に開孔したパンチングプレートを置き、所定の温度(熱接着性複合繊維の低融点成分は溶融するが高融点成分は溶融しない温度)で熱風熱処理を施す。これにより、パンチングプレートの開孔部を熱風が通過した部分は、熱接合領域(I)2となり、熱風が通過しない部分は熱接着を受けず非熱接合領域(II)3を形成する。
この時、熱接合領域(I)2と非熱接合領域(II)3との境界に、中間領域部分4が形成されるが、このような中間領域部分4の存在は、不織布層(A)、(B)の積層後の熱処理で形成される嵩高丘部と嵩の低い平野部の境界領域の傾斜が緩やかとなり、肌ざわり及び風合いの面からも好ましい。
「図4a」は、本発明に係る不織布層(A)と、不織布層(B)を構成するウェブ5の積層体断面図である。
また「図4b」は、従来技術の比較例に係る高収縮性繊維ウェブの第一繊維層と他の繊維ウェブの第二繊維層の積層体断面図である。
更に「図5a」は、「図4a」の状態に、不織布層(A)側からウォーターニードル加工を施した後の模式断面図である。
「図5b」は、「図4b」の状態(比較例)に、ウォーターニードル加工を施した後の模式断面図である。
「図6」は「図5a」のB部を詳細に示した拡大図である。
「図4a」に示した不織布層(A)1と不織布層(B)を構成するウェブ5との積層体において、不織布層(A)1の熱接合領域(I)2と非熱接合領域(II)3の存在価値は大きい。これらの領域がその後のウォーターニードル加工及び熱処理加工の相互作用によって、後述するようにそれぞれ嵩高丘部と嵩の低い平野部を形成する。その結果、本発明の目的とする嵩高性、柔軟性及び掻き取り性(拭き取り性)を兼備した本発明の嵩高柔軟性不織布が得られる。
「図4a」において、不織布層(A)1側からウォーターニードル加工が施されると、非熱接合領域(II)3と不織布層(B)を構成するウェブ5とが重なった部分は、熱処理などの拘束を受けていないので、ウォーターニードル加工により、容易に「図5a」に示すような強い交絡部分6を形成する。
一方、不織布層(A)1の熱接合領域(I)2は、熱接合領域(I)2の強い熱接合により、ウォーターニードル加工時の水流による交絡はある程度抑制される。このため、不織布層(B)を構成するウェブ5とは交絡の比較的弱い部分7を形成するのである。
これに対して、「図4b」の比較例に係る高収縮性繊維ウェブの第I繊維層11と他の繊維ウェブの第2繊維層12との積層体は、第I繊維層11及び第2繊維層12は両者共に熱接合されていないので、ウォーターニードル加工により両者は「図5b」に示すように全面が強く相互交絡した積層不織布になる。
「図7a」は、ウォーターニードル加工後の積層体(図5a)のB部について、熱処理後の状態を示した本発明の嵩高柔軟性不織布の模式拡大図である。
「図7b」は、ウォーターニードル加工後の比較例に係る積層体(図5b)について、熱処理後の状態を示した模式拡大図である。
不織布層(A)1と不織布層(B)を構成するウェブ5の積層体に、ウォーターニードル加工後、更に熱処理を施すと、不織布層(A)1の非熱接合領域(II)3は、不織布層(B)5の高収縮性繊維ウェブと強く相互交絡した部分6が交絡一体化した状態で熱処理により収縮し、嵩の低い平野部8を形成する。一方、不織布層(A)1の熱接合領域(I)2と不織布層(B)5の高収縮性繊維ウェブとの比較的交絡が弱い部分7は、不織布層(B)5の収縮に引っ張られることなく、不織布層(B)5から離脱隆起して図7aに示すような屋根状の嵩高丘部9を形成する。この時、屋根状の嵩高丘部9と不織布層(B)5の間には、繊維が存在しないか、又は存在しても極く少量繊維が存在する程度の空隙層10が形成される。したがって、上記の部分7における交絡の程度は、嵩高丘部9が十分に(熱接合領域(I)と非熱接合領域(II)との面積比率範囲の好ましい面積範囲とほぼ同じ面積率で、すなわち10〜90%の面積率が好ましく、より好ましくは30〜70%の面積率で)形成される程度の弱さであればよい。
このような構造において、屋根状の丘部9は嵩高性と掻き取り性に寄与し、また嵩の低い平野部8は掻き取りした汚物などの貯留効果に作用する。さらに空隙層10の存在は、積層不織布に柔軟性と好適な肌触り及び触感を付与することが出来るのである。
これに対し、比較例に係る高収縮性繊維ウェブの第一繊維層11と他の繊維ウェブの第二繊維層12の積層体は、ウォーターニードル加工により、積層不織布全面が強く相互交絡しているので、「図7b」に示すように高収縮性繊維ウェブの第一繊維層11の熱収縮により第二繊維層12も引きずられて不織布全面が緻密な小皺状態となる。そのため、自由度が抑制されるので、好適な柔軟性と肌触り触感が得られず、かつ掻き取性も十分な効果が得られない。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下に評価方法を示す。
<不織布強力>
島津製作所製『オートグラフAG500D』を用いて、JIS法のL1906で規定する引張り試験に準拠して、不織布の強度を求めた。強力測定用サンプルは、不織布の繊維の並び方向(MD方向)を150mm、その垂直方向(CD方向)に50mmにカットしたものを使用。引張速度100mm/min、つかみ幅100mmにて強度測定を行った。
<嵩高性(比容積)>
サンプルの目付(w:m2あたりの重量g 実際は100×100mmのサンプル重量を測定し、換算する)を測定し、そのサンプルの厚みを東洋精機製『デジシックネステスター』を用いて、荷重2g/cm2、測定速度2mm/secの条件で厚み(tmm)を測定、下記式により比容積(v)を算出する。
(式) v=t/w×1000 (cm3/g)
比容積(v)の値が高い程、嵩高であることを示す。
<柔軟性>
柔軟性(風合い)の評価は、10人のパネラーによる官能試験で行った。10人中8人以上のパネラーが柔軟であると判断した場合を○、10人中5〜7人のパネラーが柔軟であると判断した場合を△、柔軟と感じたパネラーが10人中4人以下であった場合を×とした。
<面積率>
OMRON社「3D Digital Fine Scope VC2400−IMU Ver.2.3」を使用して、測定サンプルの表裏を観察し、熱接合領域(I)の面積を測定し、測定サンプル全面積に対する面積率を算出した。測定サンプルは100×100mmにカットしたものを使用した。
<ウェブ収縮>
ミニチュアカード機を用いて、100gの原綿を幅40cmで全量通し、ウェブを作製した。このウェブを250×250mmに切断し、10分間放置した。次いで、繊維の並び方向(MD方向)の長さを3箇所測定し、クラフト紙に挟み100℃のオーブンに5分間入れた。取り出して冷却した後、同様の場所3箇所の長さを測定した。次式によりウェブ収縮率を求めた。
(式)
ウェブ収縮(%)=100×(熱処理前の平均長−熱処理後の平均長)/熱処理前の平均長
<ウォーターニードル処理条件>
不織布層(A)と不織布層(B)を構成するウェブを重ね合わせ、不織布層(A)側から2回、8MPaの水流を当て交絡させた。加工速度は10m/min。
<掻き取り評価>
人工汚れ(白色ワセリン、二酸化チタン、靴墨の混合物)をポリエステルフィルムに転写塗布し、その上に評価サンプル(100mm×100mm)を置き、1Kgの加重をかけて評価サンプルを3往復させた後、10人のパネラーにより人工汚れのふき取り状態を確認した。
10人中8人以上のパネラーが汚れが無いか、又は少ないと判断した場合を○、10人中5人〜7人のパネラーが汚れが無いか、又は少ないと判断した場合を△、汚れが無いか、又は少ないと感じたパネラーが10人中4人以下であった場合を×とした。
実施例1
不織布層(A)については、鞘成分に融点130℃のポリエチレン、芯成分に融点250℃のポリエチレンテレフタレートで構成される繊度1.8dtex、カット長51mmの熱接着性複合繊維を使用し、カード機にて目付け20g/m2のウェブを作製した。そのウェブ上に、楕円形で千鳥配列に開孔したパンチングプレート(図8及び図9:短径a=5mm、長径b=20mm)を置き、135℃で熱風処理(スルーエアー)加工をした。不織布層(A)の熱接合領域(I)の面積率は60%であった。
不織布層(A)を作製するのに用いる繊維のウェブ収縮率(100℃のオーブンで5分処理しても収縮が見られなかったので145℃のオーブンで5分熱処理した)は、1.2%であった。
不織布層(B)を構成するウェブについては、結晶配向が異なるポリプロピレン(融点160℃)を並列に組み合わせた繊度2.2dtex、カット長51mmの高収縮繊維を用い、カード機にて目付け30g/m2のウェブを作製した。この高収縮繊維のウェブ収縮を測定したところ収縮率は75%であった。
不織布層(B)を構成するウェブ上に不織布層(A)を重ね合わせ、不織布層(A)側から2回、8MPaの条件でウォーターニードル加工により水流交絡し、その後、125℃で10分間オーブンにて熱処理を行った。
得られた積層不織布は、表面に屋根状の嵩高丘部と嵩の低い平野部が混在分散しており、屋根状丘部と不織布層(B)の間には繊維はほとんど存在せず空隙層を形成した外観を有していた。その他の性能については、表1に示すように柔軟性及び嵩高性に優れ、かつ、強力も比較的高いものであつた。また、その積層不織布は掻き取り効果が極めて優れることから、おしり拭きや、ワイピングクロス等に適していることが判明した。
実施例2
不織布層(A)については、鞘成分に融点130℃のポリエチレン、芯成分に融点250℃のポリエチレンテレフタレートで構成される繊度1.8dtex、カット長51mmの熱接着性複合繊維を使用し、カード機にて目付け20g/m2のウェブを作製した。そのウェブ上に、楕円形で千鳥配列に開孔したパンチングプレート(図8及び図9:短径a=6mm、長径b=30mm)を置き、135℃でスルーエアー加工をした。不織布層(A)の熱接合領域(I)の面積率は50%であった。
不織布層(A)を作製するのに用いる繊維のウェブ収縮率(145℃のオーブン下で5分の熱処理)は、1.2%であった。
不織布層(B)を構成するウェブにあたる部分は、結晶配向が異なるポリプロピレン(融点160℃)を並列に組み合わせた繊度3.3dtex、カット長51mmの高収縮繊維を用い、カード機にて目付け30g/m2のウェブを作製した。この高収縮繊維のウェブ収縮を測定したところ収縮率は75%であった。その後の積層、ウォーターニードル加工及び熱処理加工条件は、実施例1と同様に行った。
得られた積層不織布は、表面に屋根状の嵩高丘部と嵩の低い平野部が混在分散しており、屋根状丘部と不織布層(B)の間には繊維は存在がしたがほとんど認められず空隙層を形成した外観を有していた。その他の性能については、表1に示すように柔軟性及び嵩高性に優れ、かつ、強力も比較的高いものであつた。また、その積層不織布は掻き取り効果が極めて優れることから、おしり拭きや、ワイピングクロス等に適していることが判明した。
実施例3
不織布層(A)については、鞘成分に融点130℃のポリエチレン、芯成分に融点250℃のポリエチレンテレフタレートで構成される繊度2.2dtex、カット長51mmの熱接着性複合繊維と繊度2.2dtex、カット長51mmのレーヨンを70:30で混綿し、実施例1と同様に加工した。不織布層(A)を作製するのに用いたパンチングプレートは、実施例1に同じで、不織布層(A)の熱接合領域(I)の面積率は55%であった。熱接着性複合繊維のウェブ収縮率(145℃のオーブン下で5分の熱処理)は、0.8%であった。
不織布層(B)を構成するウェブについては、融点130℃のポリプロピレン共重合体と融点160℃のポリプロピレンを並列に組み合わせた熱接着性複合繊維、繊度2.2dtex、カット長51mmを用い、実施例1同様に加工した。この高収縮繊維のウェブ収縮を測定したところ収縮率は70%であった。その後の積層、ウォーターニードル加工及び熱処理加工条件は、実施例1と同様に行った。
得られた積層不織布は、表面に屋根状の嵩高丘部と嵩の低い平野部が混在分散しており、屋根状丘部と不織布層(B)の間には繊維は存在がしたがほとんど認められず空隙層を形成した外観を有していた。その他の性能については、表1に示すように柔軟性及び嵩高性に優れ、かつ、強力も比較的高いものであつた。また、その積層不織布は掻き取り効果が極めて優れることから、おしり拭きや、ワイピングクロス等に適していることが判明した。
比較例1
繊度2.2dtex、カット長51mmのエチレン−プロピレンランダムコポリマー繊維(融点ピーク温度136℃)と、繊度2.2 dtex、カット長51mmのポリプロピレン繊維を70:30で混綿し、カード機にて、目付け20g/m2のウェブを作製した。このウェブを繊度2.2dtex、カット長51mmのレーヨン100%で構成されるウェブ、目付け20g/m2と積層後、実施例1と同条件でウォーターニードル加工で交絡させた。引き続き、120℃のオーブン下で10分熱処理した。
得られた積層不織布は、表1に示すように柔軟性はあるが、嵩高性が低く、低強力である。また、掻き取り効果もそれほど高くないことが分かる。
比較例2
繊度2.2dtex、カット長51mmのエチレン−プロピレンランダムコポリマー繊維(融点ピーク温度136℃)と、繊度2.2 dtex、カット長51mmのポリプロピレン繊維を70:30で混綿し、カード機にて、目付け20g/m2のウェブを作製した。このウェブを繊度2.2dtex、カット長51mmのレーヨン100%で構成されるウェブ、目付け20g/m2と積層後、実施例1と同条件でウォーターニードル加工を行い交絡させた。引き続き、140℃のオーブン下で10分熱処理した。
得られた積層不織布は、表1に示すように不織布強力は高いが、嵩高性が低く、柔軟性に劣っている。また、掻き取り効果もそれほど高くないことが分かる。
比較例3
鞘成分に融点130℃のポリエチレン、芯成分に融点160℃のポリプロピレンで構成される繊度1.8dtex、カット長51mmの熱接着性複合繊維を用いて、カード機にて目付け20g/m2のウェブを作製した。結晶配向が異なるポリプロピレン(融点160℃)を並列に組み合わせた繊度2.2dtex、カット長51mmの高収縮繊維を用い、カード機にて目付け30g/m2のウェブを作製した。この高収縮繊維のウェブ収縮を測定したところ収縮率は75%であった。
二種のウェブを重ね二層とし、ウォータージェット加工(ウォーターニードル条件は、実施例1と同様)で交絡した後、125℃のオーブンにて5分間の熱処理を行った。
得られた積層不織布は、表1に示すように柔軟性は高いが、嵩高性が低く、低強力である。また、掻き取り効果もそれほど高くないことが分かる。
比較例4
鞘成分に融点130℃のポリエチレン、芯成分に融点160℃のポリプロピレンで構成される繊度1.8dtex、カット長51mmの熱接着性複合繊維を用いて、カード機にて目付け20g/m2のウェブを作製した。結晶配向が異なるポリプロピレン(融点160℃)を並列に組み合わせた繊度2.2dtex、カット長51mmの高収縮繊維を用い、カード機にて目付け30g/m2のウェブを作製した。この高収縮繊維のウェブ収縮を測定したところ収縮率は75%であった。ウォーターニードル条件は、実施例1と同様。
二種のウェブを重ねて二層とし、ウォータージェット加工(ウォーターニードル条件は、実施例1と同様)で交絡した後、135℃のオーブンにて5分間の熱処理を行った。
得られた積層不織布は、表1に示すように不織布強力は高いが、嵩高性が低く、柔軟性に劣る。また、掻き取り効果もそれほど高くないことが分かる。
比較例5
不織布層(A)については、鞘成分に融点130℃のポリエチレン、芯成分に融点250℃のポリエチレンテレフタレートで構成される繊度1.8dtex、カット長51mmの熱接着性複合繊維を使用し、カード機にて目付け20g/m2のウェブを作製した。そのウェブ上に、楕円形で千鳥配列に開孔したパンチングプレート(図8及び図9:短径a=3、長径b=5)を置き、135℃で熱風処理(スルーエアー)加工をした。不織布層(A)の熱接合領域(I)の面積率は75%であった。
不織布層(A)を作製するのに用いる繊維のウェブ収縮率(100℃のオーブンで5分処理しても収縮が見られなかったので145℃のオーブンで5分熱処理した)は、1.0%であった。
不織布層(B)を構成するウェブについては、結晶配向が異なるポリプロピレン(融点160℃)を並列に組み合わせた繊度2.2dtex、カット長51mmの高収縮繊維を用い、カード機にて目付け30g/m2のウェブを作製した。この高収縮繊維のウェブ収縮を測定したところ収縮率は75%であった。
不織布層(B)を構成するウェブ上に不織布層(A)を重ね合わせ、不織布層(A)側から2回、8MPaの条件でウォーターニードル加工により水流交絡し、その後、125℃で10分間オーブンにて熱処理を行った。
得られた積層不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部の混在分散は見られず、本発明とする不織布が得られなかった。
Figure 0004747259
本発明の不織布は、不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部が混在分散しており、嵩高で優れた柔軟性を有することで、汚物の掻き取り(ふき取り)効果と肌触りの良い触感を有することから、おしり拭き、ワイピングクロスに好適に使用できる。また、嵩高性及び柔軟性に優れていることから、使い捨てオムツや生理用ナプキンのトップ及びセカンドシート等、吸収性物品として利用できる。
は、本発明に係る不織布層(A)の一実施例の形態を示す全体平面図である。 は、「図1」のX−X面における切り欠き断面図である。 は、「図2」のA部を詳細に表した拡大図である。 は、a.本発明に係る不織布層(A)と不織布層(B)を構成するウェブを積層した積層不織布、およびb.従来技術の比較例に係る高収縮性繊維ウェブの第I繊維層と他の繊維ウェブの第2繊維層を積層した積層不織布を比較した断面図である。 は、a.「図4a」の本発明に係る積層不織布、およびb.「図4b」の比較例に係る積層不織布に、ウォーターニードル加工を施した後の模式断面図である。本発明の積層不織布においては、ウォーターニードル加工は不織布層(A)側から行われる。 は「図5a」の本発明に係る積層不織布のB部を詳細に示した拡大図である。 は、本発明に係る積層不織布、および比較例に係る積層不織布をそれぞれウォーターニードル加工した後、熱処理を行ったときの状態を比較した模式拡大図である。本発明を示す「図7a」においては、「図5a」のB部について熱処理後の状態を示している。 は、不織布層(A)を作製するために用いるパンチングプレート図である。 は、パンチングプレートの開口部の拡大図である。
符号の説明
1 不織布層(A)
2 熱接合領域(I)
3 非熱接合領域(II)
4 熱接合領域(I)と非熱接合領域(II)が混在した中間領域部分
5 不織布層(B)を構成するウェブ
6 強い相互交絡部分
7 弱い交絡部分
8 嵩の低い平野部
9 屋根状の嵩高丘部
10 空隙層
11 高収縮繊維ウェブの第一繊維層
12 他の繊維ウェブの第二繊維層

Claims (10)

  1. 10℃以上の融点差を持った低融点成分と高融点成分からなる熱接着性複合繊維を主体とする不織布層(A)および前記不織布層(A)を構成する熱接着性複合繊維より熱収縮率が高い繊維を主体とする不織布層(B)が積層されて構成され、不織布層(A)は熱接合領域(I)と非接合領域(II)を有する不織布層であり、前記不織布層(A)及び不織布層(B)の一部は繊維相互が交絡され、かつ不織布層(B)の熱収縮により積層不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部が混在分散していることを特長とする嵩高柔軟性不織布。
  2. 10℃以上の融点差を持った低融点成分と高融点成分からなる熱接着性複合繊維を主体とする不織布層(A)および前記不織布層(A)を構成する熱接着性複合繊維より熱収縮率が高い繊維を主体とする不織布層(B)が積層されて構成され、不織布層(A)は熱接合領域(I)と非接合領域(II)を有する不織布層であり、その熱接合領域(I)は繊維ウェブに熱風を通して熱接着された部分であり、前記不織布層(A)及び不織布層(B)の一部は繊維相互が交絡され、かつ不織布層(B)の熱収縮により積層不織布表面に嵩高な丘部と嵩の低い平野部が混在分散していることを特長とする嵩高柔軟性不織布。
  3. 不織布層(A)の熱接合領域(I)は、不織布層(B)との交絡が弱く、不織布層(B)の熱収縮により該不織布層(B)から離脱隆起して積層不織布表面に屋根状の嵩高な丘部を形成している請求項1または2に記載の嵩高柔軟性不織布。
  4. 積層不織布表面の屋根状の嵩高な丘部は、下層部の不織布層(B)との間に、繊維が存在しないか、又は存在しても極く少量の空隙層を形成している請求項3記載の嵩高柔軟性不織布。
  5. 高収縮性の熱可塑性繊維が、低融点成分と高融点成分からなる熱接着性複合繊維である請求項1〜4のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布。
  6. 不織布層(A)及び不織布層(B)の繊維相互交絡が、高圧水流により成されたものである請求項1〜5のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布。
  7. 不織布層(A)及び、または不織布層(B)が、ステープルファイバー(短繊維)で構成されている請求項1〜6のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布に、前記嵩柔軟性不織布以外の不織布、ウェブ、織物、編み物、紙状物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層してなる積層体。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布または請求項8記載の積層体を用いたワイピングクロス。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項記載の嵩高柔軟性不織布または請求項8記載の積層体を用いた繊維製品。
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