本発明は、ピンホールイメージングを用いて患者の目の焦点深さを改善するマスク、及びその製造方法と製造装置に関する。マスクは、如何なる方法で目の如何なる位置に適用されてもよく、例えば、角膜内インプラント(“角膜内インレイ(corneal inlay)”とも称される)として適用される。後述のように、このようなマスクの製造方法では、或る材料の薄膜を堆積させる方法が採用されることもある。マスクを製造するのに用いられる材料は、長期間または永久に埋め込まれるように選択または構成された金属とすることができる。例えば腐食といった作用を受ける金属もあり、時間をかけてマスクが劣化する可能性がある。後述のように、マスクは安定な材料から形成可能であり、例えば、このような作用を受けなかったり、このような作用に実質的に耐性があったりする。実施例によっては、マスクは不活性であるように選択または構成された材料から形成可能であり、例えば、ガルバニック反応等によって誘起される腐食といった化学的または物理的作用よって劣化しない。他の実施例では、腐食され易い材料を、例えばガルバニック反応によって生じる腐食等を減じるまたはなくす材料と組み合わせて、マスクを形成することができる。こうしたマスクは、気相蒸着、薄膜スパッタリング、電着、バッチ処理可能な他の方法によって製造可能である。
《1. ピンホール視力矯正の概要》
ピンホール状開口部を有するマスクを用いて、人間の目の焦点深さを改善することができる。上述のように、老眼は、年配の成人にとって一般的に生じる目の問題であって、焦点を合わせる能力が不適切な範囲に限定される。図1〜6は、どのようにして老眼が人間の目の正常な機能に干渉するか、及び、どのようにしてピンホールを備えたマスクがこの問題を緩和するかを示す。
図1は人間の目を示し、図2はその目10の側面図である。目10は角膜12を含み、また角膜12の後方に水晶体14を含む。角膜12は目10の第一の焦点合わせ用構成要素である。水晶体は目10の第二の焦点合わせ用構成要素である。また、目10は、目10の後方表面の内側に並ぶ網膜16を含む。網膜16は、視力感覚を主に司るレセプタ細胞を含む。網膜16は、黄斑部として知られる高感度領域を有し、信号が受信されて視神経18を介して脳の視覚中枢に伝えられる。また、網膜16は、中心窩として知られる特に高感度の点20を含む。図43に関して詳述されるように、中心窩20は、目10の対称軸より僅かにずれている。
また、目10は、虹彩22として知られる色の付いた組織のリングを含む。虹彩22は、瞳孔として知られる虹彩22の開口部24のサイズを制御管理するための平滑筋を含む。入射瞳26は、角膜12を介して見られる虹彩22の像として見られる(図43を参照)。入射瞳の中心点28は図43に示してあり、後述する。
目10は、頭蓋骨の眼窩内に存在しており、回転中心30周りに回転可能である。
図3は、老眼の患者の目10を介する光の伝達を示す。角膜12または水晶体14の異常または筋肉制御の損失によって、目10に入射して角膜12及び水晶体14を通過する光線32は、網膜16で単一の焦点に収束しないように屈折される。図3は、老眼の患者に対しては、光線32が網膜16の後ろの点で収束することがよくあることを示す。結果として、患者の視界がぼやける。
図4には、マスク34が適用された目10を介した光の伝達が示されている。マスク34は、何らかの適切な装置または方法によって製造可能である。有利な方法においては、部分的に不透明で、マスク34が配置される一般的な環境において極めて安定なマスク34を一種類の材料から製造可能である。例えば、マスク34が紫外線(UV)に長年晒されても大丈夫であることが望ましい。従って、実施例によっては、マスクはUVに対して安定な材料から製造される。UVに対して安定な多種多様な材料を用いて、マスク34を形成することができる。方法によってはマスク34が目10の中に埋め込まれることもあるので、UVに対して安定な材料は、高い生体適合性を有することが好ましい。マスク34の製造方法の特定の例については、図67A〜67Dおよびその変形例に関連して、後述する。
図4では、マスク34は角膜12内に埋め込まれたものとして示されている。しかしながら、後述のように、マスク34を、角膜内に埋め込む(図示されているように)、角膜12上に配置されるコンタクトレンズとして用いる、眼内レンズ14(患者自身の水晶体または埋め込まれたレンズを含む)に組み込む、目10の他の位置に配置する等の多種多様な方法が可能であることは理解されたい。図示された実施例においては、光線32はマスク34、角膜12、レンズ14を通過して、網膜16上の単一の焦点で収束している。網膜16上で単一の点に収束しない光線32は、マスクによってブロックされる。後述のように、マスクを通過する光線32が中心窩20で収束するように、目10の上にマスク34を配置することが望ましい。
図6には、マスク34の一実施例が示されている。図示されているように、実質的にマスク34の中心に配置されたピンホール状開口部または孔38を取り囲む環状領域36を、マスクが含むことが好ましい。一般的に、ピンホール状開口部38は中心軸39周りに配置される。ここで、中心軸39をマスク34の光軸と称することにする。ピンホール状開口部38は円形であることが好ましい。開口部38のような円形の開口部は、一部の患者に対して、見られる対象の周りにちらついた像を患者が知覚する所謂“後光効果”を生じさせる可能性があることが報告されている。従って、所謂“後光効果”を減少または完全になくすような形状に開口部38をすることが望ましい。
《2. ピンホール矯正を採用したマスク》
図7〜42は、老眼の患者の視力を改善可能なマスクの多様な実施例を示す。図7から42に関連して説明されるマスクは、下記の点を除いてはマスク34と同じものである。従って、図7〜42に関して説明されるマスクを、マスク34と同じ方法で患者の目10に用いて適用することが可能である。また、マスク34、マスク7〜42を、図67A〜67D及びその変形例に関連して開示されるプロセスによって形成することもできる。
図7は、六角形に形成された開口部38aを含むマスク34aの実施例を示す。図8は、八角形に形成された開口部38bを含むマスク34bの他の実施例を示す。図9は、楕円形に形成された開口部38cを含むマスク34cの他の実施例を示す。図10は、とがった楕円形に形成された開口部38dを含むマスク34dの他の実施例を示す。図11は、開口部38eが星型または放射型に形成されたマスク34eの他の実施例を示す。
図12〜14は、ティアドロップ型の開口部を有する更なる実施例を示す。図12は、マスク34fの中心より上方に位置するティアドロップ型の開口部38fを有するマスク34fを示す。図13は、実質的にマスク34gの中心に位置するティアドロップ型の開口部38gを有するマスク34gを示す。図14は、マスク34hの中心より下方に位置するティアドロップ型の開口部38hを有するマスク34hを示す。図12〜14は、例えば中心にまたは中心からずれるように開口部の位置を調節して、異なる効果を生じさせることが可能であることを示す。例えば、マスクの中心より下方に位置する開口部によって一般的に、より多くの光が目に入射するようになる。何故ならば、開口部34の上方部分が患者の瞼によって覆われないからである。反対に、開口部がマスクの中心より上方に位置している場合には、開口部が部分的に瞼に覆われる。従って、中心が上方の開口部は、より少ない光しか目に入射させない。
図15は、正方形に形成された開口部38iを含むマスク34iの実施例を示す。図16は、腎臓型の開口部38jを有するマスク34jの実施例を示す。図7〜16に示された開口部は単に非円形の開口部を例示するものであることは認識されたい。他の形状や配置も可能であり、それらは本発明の範囲内に属する。
後述のように、マスク34は一定の厚さを有することが好ましい。しかしながら、実施例によっては、内縁(開口部38周辺)と外縁との間の厚さが異なってもよい。図17は、内縁から外縁に向かって厚さが徐々に減少するマスク34kを示す。図18は、内縁から外縁に向かって厚さが徐々に増大するマスク34lを示す。また、他の断面プロファイルも可能である。
環状領域36は少なくとも部分的に不透明であるが、完全に不透明であることが好ましい。環状領域36の不透明性により、光がマスク32を介して透過しないようになる(一般的な場合を図4に示す)。環状領域36の不透明性は、いくつかの異なる方法の内のどれかによって達成可能である。
例えば、一実施例においては、マスク34を作成するのに用いられる物質は、元々不透明であってもよい。代わりに、マスク34を作成するのに用いられる物質は実質的に透明であるが、染料や他の着色剤で処理して、領域36を実質的または完全に不透明にしてもよい。更に他の例においては、マスク34の表面を物理的または化学的に処理して(例えばエッチング)、マスク34の屈折及び透過特性を変更して、光に対する透過性を落としてもよい。
更に他の例においては、マスク34の表面上に微粒子を堆積させて処理してもよい。例えば、マスク34の表面に、チタン、金または炭素の微粒子を堆積させて、マスク34の表面を不透明にしてもよい。他の実施例においては、微粒子はマスク34内部に封入されてもよく、その一般的な例が図19に示される。最後に、マスクをパターニングして、光の透過性の異なる領域を生じされてもよい。これについては図24〜33に一般的な例が示されており、下記で詳述する。
図20には、例えばポリエステルファイバのメッシュ等の編まれた構造で形成されたマスク34mが示されている。メッシュは、クロスハッチングされたファイバのメッシュであってもよい。マスク34mは、開口部38mを取り囲む環状領域36mを有する。環状領域36mは、光の一部分がマスク34mを通過するようにする略規則的に配置された複数の開口部36mを、編まれた構造内に備える。例えば、所望の間隔にファイバ同士を近づけるか遠ざけるかして、透過する光量を変更または制御可能である。密に分布するファイバにより、環状領域36mを通過する光量は少なくなる。代わりに、ファイバの厚さを変更して、メッシュの開口部を介する光量を増減されることが可能である。ファイバの束を太くすることによって開口部が小さくなる。
図22は、不透明度の異なるサブ領域を有する環状領域36nを備えたマスク34nの実施例を示す。環状領域36nの不透明度は、要望に応じて、徐々に増加または減少させることができる。図22は、開口部38nに最近接する第一領域が略60%の不透明度を有する一実施例を示す。本実施例において、第一領域42の外側の第二領域44は、例えば70%というより大きな不透明度を有する。本実施例において、第二領域44の外側の第三領域46は、85から100%の不透明度を有する。例えば一実施例において、マスク34nの領域42、44及び46に対する着色の度合いを異なるようにすることによって、上述した図22に示すような徐々に変化する不透明度が得られる。他の実施例においては、上述の遮光性物質を異なる度合いで、マスクの表面に選択的に堆積させて、徐々に変化する不透明度が得られる。
他の実施例においては、マスクが、光の透過性の異なる物質から作成され一体として押し出されたロッドから形成されてもよい。一体して押し出されたロッドはスライスされて、ここで説明したような複数のマスク用のディスクになる。
図24〜33は、不透明度の異なる領域を与えるように変形されたマスクの実施例を示す。例えば、図24は、開口部38oと、開口部38o近傍からマスク34oの外縁50に向かって延伸する放射状スポークパターンの複数のカットアウト48を備えたマスク34oを示す。図24においては、開口部38o近傍のマスクの円周周りに対して、外縁50近傍のマスクの円周周りよりもカットアウト48が密に分布している。従って、外縁50近傍よりも開口部38o近傍において、より多くの光がマスク34oを通過する。マスク34oを介する光の透過度は徐々に変化する。
図26及び27は、他の実施例のマスク34pを示す。マスク34pは、開口部38pと、複数の円形カットアウト52pと、複数のカットアウト54pとを有する。円形カットアウト52pは開口部38p近傍に位置する。カットアウト54pは、円形カットアウト52pと外縁50pとの間に位置する。開口部近傍38pから外縁50pに向かうにつれて、円形カットアウト52pの密度は一般的に減少する。マスク34pの外縁50pは、外縁50pから内側へと延伸するカットアウト54の存在によって、ホタテ貝状になっていて、外周50pにおいて、光の一部がマスクを通過するようになる。
図28及び29は、図26及び27に似た他の実施例を示し、マスク34qは、複数の円形カットアウト52qと複数のカットアウト54qとを有する。カットアウト54qは、マスク34qの外縁50qに沿って配置されているが、ホタテ貝状の外縁とはされていない。
図30及び31は、パターニングされた環状領域36rと非円形の開口部38rとを有するマスク34rの実施例を例示する。図30に示すように、開口部38rは放射状である。開口部38rは、開口部38rに向かうにつれてより密な間隔になる一続きのカットアウト54rによって、取り囲まれている。マスク34rは、外縁50rにおいて追加的な光を透過させるようにホタテ貝状にされた外縁50rを有する。
図32及び33は、環状領域36sと開口部38sとを有する他の実施例のマスク34sを示す。環状領域36sは、マスク34sの外縁50sと開口部38sとの間に位置する。環状領域36sはパターニングされている。特に、複数の円形開口部56sが、マスク34sの環状領域36sに亘って分布している。マスク34sの外縁50s近傍よりも開口部38s近傍において、開口部56sの密度が密であることは認識されたい。上述の実施例のように、これにより、開口部38sから外縁50sに向かって不透明度が徐々に増加することになる。
図34〜36は更なる実施例を示す。特に、図34は、第一マスク部分58t及び第二マスク部分60tを有するマスク34tを示す。マスク部分58t、60tは、略“C字型”である。図34に示すように、マスク部分58t、60tは、ピンホールまたは開口部38tを画定するように埋め込まれるか、挿入される。
図35は、マスク34uが二つのマスク部分58u、60uを有する他の実施例を示す。それぞれのマスク部分58u、60uは半月型であり、光を通過させるようにする中心のギャップまたは開口部62uを画定するように設計され埋め込まれるか、挿入される。開口部62uは円形のピンホールではないが、マスク部分58u、60uは、患者の瞼(破線64で示す)と組み合わせられて、同程度のピンホール効果を与える。
図36は、開口部38vを有し半月型である他の実施例のマスク34vを示す。下記で詳述するように、マスク34vは、角膜12の下側部分に埋め込まれるか、挿入されてもよい。また、上述のように、マスク34vと瞼62を組み合わせることにより、ピンホール効果が生じる。
他の実施例においては、マスクを介する光の透過率を制御する異なった方法が採用される。例えば、図19に示すように、マスクがゲルを充填したディスクであってもよい。ゲルは、ヒドロゲルや、コラーゲンや、マスクの物質と共に生体適用性のある他の適切な物質であってもよく、マスクの内側に導入可能である。マスク内部のゲルは、ゲル内に保持された微粒子66を有していてもよい。適切な微粒子の例として、金、チタン、または炭素の微粒子が挙げられる。代わりに、上述のように、これらの微粒子をマスク表面上に堆積させてもよい。
マスク34の物質は、生体適合性のあるポリマー物質であればどのようなものであってもよい。ゲルが用いられる場合には、ゲルを保持するのに適した物質とする。マスク34用の適切な物質の例としては、ポリメタクリル酸メチルが好ましく、例えばポリカーボネート等の他の適切なポリマーを用いてもよい。当然のことながら、上述のように、ゲルが充填されていない物質に対しては、例えばダクロンメッシュ等の繊維状物質が好ましい物質となり得る。更なる方法については後述するが、その方法においては、ここで説明されるマスクを、金属層を堆積させるプロセスによって形成することができる。
また、患者の目の中にマスク34を適用、挿入または埋め込んだ後に選択的に放出させることが可能な抗生物質等の薬用流体を含むように、マスク34を作成してもよい。適用、挿入または埋め込んだ後に抗生物質を放出することによって、切開痕の治癒が早まる。また、マスク34は、他の所望の薬品や抗生物質でコーティングされてもよい。例えば、目の上にコレステロールが堆積する可能性があることが知られている。従って、放出可能なコレステロール抑止薬品を、マスク34に提供してもよい。薬品をマスク表面にコーティングしてもよい。また、他の実施例においては、マスク34が形成されるポリマー材料(例えばPMMA等)内部に組み込んでもよい。
図37及び38は、マスク34wが複数のナナイト(nanite)68を有する実施例を例示する。“ナナイト”とは、患者の目に入射する光を選択的に透過またはブロックするように適用された微粒子構造である。粒子は、ナノテクノロジーの応用分野において一般的に用いられる非常に小さなサイズの粒子からなるものであってもよい。図37及び38に一般的に示されるように、ナナイト68はマスク34wの内部に挿入されるか、ゲルの中に保持される。異なる光の環境に反応するように、ナナイト68を予めプログラムすることが可能である。
従って、図38に示すように、光の多い環境においては、光の一部が目に入射することを実質的及び選択的にブロックするように、ナナイト68が回転して自己の位置を決める。しかしながら、より多くの光が目に入射することが望ましい光の少ない環境においては、図37に示すように、より多くの光が目に入射するようにナナイトが反応して、回転することまたは自己の位置を決めることができる。
ナノデバイスまたはナナイトは、研究所で成長させた結晶構造体である。光等の異なる刺激を受容するように、ナナイトを処理することができる。本発明の一側面によると、ナナイトにエネルギーを与えることが可能であり、図38に一般的に示した上述の方法で、光の少ない及び多い環境に反応して、ナナイトが回転する。
ナノスケールデバイス及びシステムと、その製造方法については、本願でその全文が参照される非特許文献1及び非特許文献2に開示されている。光学応用のためのサイズの小さな粒子の性質の調整については、本願でその全文が参照される非特許文献3に開示されている。
本発明により作成されたマスク34は、他の特性を有するように更に変形可能である。図39は、バーコード66または他の印刷された証印を有する一実施例のマスク34xを示す。
ここで説明したマスクは、様々な方法で患者の目に組み込むことができる。例えば、図52に関連して下記で詳述するように、マスク34を、眼球10の表面に配置されたコンタクトレンズとしてもよい。代わりに、マスク34は、患者の元々の水晶体14と交換するように設計された人工水晶体に組み込まれてもよい。しかしながら、マスク34は、角膜内インプラントまたはインレイとされるのが好ましく、角膜層12の間に物理的に挿入される。
角膜内インプラントとして用いられる際には、角膜層12がはがされて、マスク34が挿入可能となる。典型的には、眼科医が、(レーザを用いて)角膜上皮の弁を切り取ってはがす。その後、マスク34が挿入されて、弁が元の位置に戻されて、時間をかけて再び成長して眼球を覆う。実施例によっては、図40に示され、本願でその全文が参照される特許文献1に一般的な例が記載されているように、マスク34は、支持糸60及び62によって目10に取り付けまたは固定される。
特定の状況においては、マスク34を適応させるため、外科医が追加的な角膜組織を除去する必要が生じる場合がある。従って、一実施例においては、外科医がレーザを用いて角膜12の追加的な層をはがして、マスク34を適応させるポケットを設ける。患者の目10の角膜12へのマスク34の適用については、図53A〜54Cに関連して下記で詳述する。
マスク34の除去は、単純に再び角膜12を切開して、弁を持ち上げてマスク34を除去することによって、行うことができる。代わりに、アブレーション法を用いて、マスク34を完全に除去してもよい。
図41及び42は他の実施例を示し、マスク34yは、繊維状物質または他の物質のコイル状の糸80を有する。糸80がそれ自体の上にコイル状に巻かれてマスク34yが形成されるので、螺旋状マスクと説明されることもある。これによって、マスク34yの実質的な中心にピンホールまたは開口部38yが設けられる。マスク34yは、技官または外科医によって除去可能であり、角膜12の弁に設けられた開口部を介して、ピンセット82を用いて糸80をつかむ。図42は、この除去方法を示す。
マスクの更なる詳細については、本願でその全文が参照される特許文献1(1990年12月11日発行)及び特許文献2(2003年5月28日出願)に開示されている。
《3. ピンホール状開口部装置の適用方法》
ここで説明する多様なマスクを用いて、老眼の患者並びに他の視力問題を抱える患者の視力を改善することが可能である。ここで説明するマスクを、レーシック(LASIK)手術と組み合わせて用いることが可能であり、角膜のくぼみや異常や剥離が生じないようにする。また、ここで開示されるマスクを用いて、黄斑変性に苦しむ患者を処置することが可能であると考えられ、例えば光線を網膜の影響の受けていない部分に向けることによって、患者の視力が改善される。如何なる処置を考えるにしても、ピンホール状開口部を有するマスクの中心領域を患者の視線または視軸に更に正確に合わせることによって、患者に更に大きな臨床効果がもたらされるものと考えられる。
〈A. ピンホール状開口部と患者の視軸の位置合わせ〉
マスク34のピンホール状開口部の中心領域、特に光軸39を目10の視軸に合わせることは、多様な方法で達成可能である。下記で詳述するように、このような調整は、二つの参照用ターゲットを異なる距離に映して、患者の目が見た時に第1及び第2参照用ターゲットの像が揃って見える場所へと、患者の目が動くようにすることによって、達成可能である。患者がターゲットが揃っていると見る時に、患者の視軸が決められる。
図43は、目10の断面図であり、図2に示されたものと同様のものであり、第一軸1000及び第二軸1004を示している。第一軸1000は患者の視軸または視線を表し、第二軸1004は、目10の対称軸を表す。視軸1000は、中心窩20及びターゲット1008に接触する軸である。また、視軸1000は、入射瞳26の中心点28を介して延伸する。ここで、ターゲット1008は、“固視点”と称されることもある。また、視軸1000は、ターゲットから放射して瞳22を通過して中心窩20に達する光線の束の主光線に対応する。対称軸1004は、入射瞳26の中心点28及び目10の回転中心30を通過する軸である。上述のように、角膜12は目10の前方に虹彩22に沿って存在していて、目10の内部へ光を通す。目10に入射する光は、角膜12及び水晶体14の像を結ぶ性質の組み合わせによって焦点が合わせられる(図2及び3を参照)。
正常な目において、ターゲット1008の像は網膜16に形成される。中心窩20(網膜16の特に高解像度の領域)は目10の対称軸1004からわずかにずれている。典型的には、虹彩が中心にある目に対して、この視軸1000は、目10の対称軸1004から略6度の角度θ傾いている。
図44A及び44Bは、目を機器の光軸に合わせるための単一のターゲットを用いた固視法を示す。ここで、機器の光軸は“機器軸”とも称される。図44Aにおいて、目10はプロジェクションレンズ1012の開口内を見ているものとして示されている。レンズの開口はレンズ全体1012であるとして示されている。プロジェクションレンズ1012は無限遠で参照用ターゲット1012を再結像し、視準されたビーム1020が生じる。
図44Aの参照用ターゲット1016は無限遠で再結像するものとして示されているが、これは、ターゲットをレンズ1012の焦点距離に等しい距離1024に配置することによって、つまり参照用ターゲット1016がレンズの焦点距離にあることによって達成される。一次近似において、焦点距離fのレンズに対する対象と像の距離の関係は、ガウスの式 (1/A)=(1/f)+(1/B)に従う。ここで、BとAはそれぞれ、レンズの中心から測定された対象と像の距離である。照射されたターゲットが、目10で見られると無限遠に見えるので、個々の光線1020aから1020gは互いに平行になる。
図44Aは光線1020cに沿って参照用ターゲット1016を固視する目10を示し、光線1020cは、プロジェクションレンズ1012によって結像されると、参照用ターゲット1016から来たものとして見える。ここで、目10は、レンズ1012の中心軸である機器の光軸1032、つまり機器軸から距離1028だけ中心からずれている。この機器の光軸1032に関しての目の中心からのずれは、無限遠の像への固視に影響を与えない。何故ならば、レンズ1012によって投影される光線は全て平行だからである。こうして、無限遠で結像される単一のターゲットに対する固視に基づく機器において、目が機器の光軸の中心からずれているままで、ターゲットを固視することが可能となる。
図44Bは図44Aと同様であるが、参照用ターゲット1016’は、参照用ターゲット1016よりもプロジェクションレンズ1012の幾分近くに配置されており、参照用ターゲット1016’の像1036は、レンズ1012の後方の長いが有限の距離1040に現れる。図44Aの場合のように、図44Bの目10は、光線1020c’に沿って参照用ターゲット1016’を固視する。光線1020c’は、機器の光軸1032から距離1028だけ中心からずれている。しかしながら、図44Bに示されるように、レンズ1012によって投影された光線1020a’から1020g’は、あたかも参照用ターゲット1016’の像1036から生じたものとして発散するように見える。ここで、像1036は、レンズ1012の光軸1032上に、レンズ1012から有限の距離1040離れて位置する。目の中心からのずれ(距離1028に対応)が変化すると、像1036を固視するために、目10は回転中心30の周りに幾分回転しなければならない。図44Bの目10は、或る角度で回転したものとして示されており、視軸1000を光線1020c’の伝播方向に合わせるようになっている。従って、一般的に、或る有限の距離だけ離れたターゲットを固視する中心からずれた目は、単に中心からずれているだけではなくて、機器の光軸から角度的にもずれている。
図45Aは、図44Aに概略的に示されるような無限遠に光学像を形成するために用いられるプロジェクションレンズ1012の一実施例を示す。参照用ターゲット1016は典型的に、透明なガラスのレティクル1044上の後方から照らされたパターンである。参照用ターゲット1016は、レンズの光軸1032上の距離1024、つまりレンズの焦点に位置する。つまり、参照用ターゲット1016は、距離1024が距離fに等しくなるように配置される。拡散プレート1048及び集光レンズ1052を用いることにより、プロジェクションレンズ1012の開口全体に亘って参照用ターゲット1016が完全に照射されることが確実になる。プロジェクションレンズ1012によって投影された光線は、光学システムによって得られる結像の完全性の度合いに依存するが、実質的には平行である。収差の小さいよく補正されたレンズを仮定すると、プロジェクションレンズ1012の開口を介して見られる像は、無限遠に見えることになる。
図45Bは、図44Bに概略的に示されるように、ターゲット1016’が投影されると、像1036がレンズの後方の長いが有限の距離1040に見えるような幾分異なる光学システムを示す。ここでもまた、拡散プレート1048及び集光レンズ1052を用いることにより、プロジェクションレンズ1012の開口全体に亘って参照用ターゲット1016’が完全に照射されることが確実になる。図45Bのシステムにおいては、参照用ターゲット1016’は、上述のガウスの式に従う焦点の内側に存在する物体距離1024’に位置する。従って、物体距離1024’は、レンズ1012の焦点距離よりも短い距離である。参照用ターゲット1016’の中心からの典型的な光線1056の経路が示されている。目10がこの光線1056に合わせられていると、参照用ターゲット1016’は、あたかも像1036の位置つまり有限の距離にあるかのように観察される。そうして、光線1056は図44Bの光線1020c’と同様のものになり、光軸1032から所定の角度中心からずれた場合に対して適切になるように、目10の固視を確立することが可能となる。
図46は、図44A及び44Bに示される単一のターゲットの固視法を両方同時に使用して、二つのターゲットを用いた固視システムとした固視法を例示する。異なる距離に二つの固視用ターゲット1016及び1016’があることによって、目が中心からずれていると、目10はターゲットの像の間の角度の不均一(視差)を見ることになる(つまり、ターゲットの像は重ね合わさっているようには見えない)。無限遠のターゲット1016の光線1020aから1020gは互いに平行である一方、有限長のターゲット1016’の光線1020a’から1020g’は発散する。一致する光線は、装置の光軸1032に沿って同一直線上にある光線1020dおよび1020d’だけである。従って、目10の第一軸1000によって表される視軸が装置の光軸の中心にある、つまり光線1020d(光線1020d’と同一)に沿っているのであれば、目10が同時に両方のターゲットを固視することが可能となる。従って、目10の視軸が装置の光軸1032上に存在している場合には、両方の像が固視される。
図47は、同一のプロジェクションレンズによって二つのレティクルのパターンが同時に投影されて、固視用ターゲット1016及び1016’を長距離1024(例えば無限遠)とそれよりも短い距離(有限長)1024’に設ける装置を概略的に示す。固視用ターゲットはどちらも、比較的長い距離にあることが好ましく、目10のわずかな焦点の調節だけで、これらの異なる距離が相殺されるようになる。例えば、像の間の角度的な不一致(視差)が最小になる等の視覚的な現象が生じるまで、機器軸を横切るように患者に目を動かさせることによって、目10を装置の光軸1032と合わせることが、容易に行われる。二つの固視用ターゲットを異なる距離に設けることによって、ここで開示される外科手術及び他の同様の外科手術において、目を眼用装置に正確に合わせることが単純化される。
図48は、二つの固視用ターゲット1016及び1016’を異なる軸に同時に投影するようにこれらを組み合わせるための装置の他の実施例を示す。ビームスプリッタプレートまたはキューブ1060が、パターンとプロジェクションレンズ1012の間に挿入されて、それぞれのパターンが独立に照射されるようになっている。図46及び47の実施例においては、ターゲット1016、1016’を、光のバックグラウンドに対して見える不透明な線とすることも、暗いバックグラウンドに対して見える明るい線とすることもできて、これらを組み合わせることもできる。
図49Aは、パターンが揃った時に、つまり患者の目が装置の光軸に合わさった時に患者が見る典型的な二つのパターンの例を示す。この実施例の二つパターンのセットは、幅広の明るい十字1068に対して見える不透明な細い線の十字1064を有する。図49Bは、図49Aに示されるのと同じ二つパターンのセットを示すが、パターンがずれており、目10が、対応する光学装置機器の光軸の中心からずれていることを示している。
図50Aは、パターンが揃った時に、つまり患者の目が眼用機器の光軸に合わさった時に患者が見る二つのパターンの他の例を示す。この実施例の二つのパターンのセットは、明るい円1076に対して見える不透明な円1072を有する。円1072の直径は、円1076の直径よりも大きい。図50Bは、図50Aに示されるのと同じ二つのパターンのセットを示すが、パターンがずれており、目10が、対応する光学機器の光軸の中心からずれていることを示している。ターゲットを十字や円とする必要な無く、例えばドットや正方形や他の形状のパターンでも事足りる。
他の実施例においては、患者の目が装置の光軸と合っていることを、色を用いて示す。例えば、二つの色のセットを用いることができる。この二つの色のセットは、第一色の第一領域と第二色の第二領域とを有する。上述の二つのパターンのセットの場合のように、第一色及び第二色が互いに或る特定の位置関係になるときに、患者の視軸が決められる。これにより、患者の目に所望の視覚的効果が生じることになる。つまり、第一色の第一領域が第二色の第二領域と揃うと、患者は第三色の領域を観察することになる。例えば、第一領域が青色とされ、第二領域が黄色とされると、患者は緑色の領域を見ることになる。患者の視軸または視線の位置決めについての更なる詳細は、本願でその全文が参照される特許文献3(1995年12月12日発行)に開示されている。
図51は、患者の視軸を決定するための本願で開示される様々な方法において用いることができる眼用機器1200の一実施例を示す。機器1200は、光学ハウジング1202と、該光学ハウジング1202に結合されている患者の位置決め用固定具1204とを有する。光学ハウジング1202は光学システム1206を有し、光学システム1206は、二つのレティクルのパターンを同時に投影して、固視用ターゲットを長距離、例えば無限遠やそれより短い有限の距離に設けるように設計されている。
図の実施例において、機器の光学システム1206は、第一参照用ターゲット1208と、第二参照用ターゲット1210と、プロジェクションレンズ1212とを有する。第一及び第二参照用ターゲット1208、1210は、眼用機器1200の機器軸1213に沿って、プロジェクションレンズによって結像される。一実施例においては、第一参照用ターゲット1208は、レンズ1212から第一距離1216に配置された第一ガラスレティクル1214上に形成され、第二参照用ターゲット1210は、レンズ1212から第二距離1220に配置された第二ガラスレティクル1218上に形成される。図44Aに関連して説明したように、第二距離1220がレンズ1212の焦点距離に等しいことが好ましい。上述のように、第二ターゲット1210をレンズ1212の焦点距離に配置することによって、第二ターゲット1210が、レンズから無限遠に結像されることになる。第一距離1216は第二距離1220よりも短いことが好ましい。従って、上述のように、第一参照用ターゲット1208は、レンズから長距離ではあるが有限の距離で結像されることになる。このように第一及び第二参照用ターゲット1208、1210を配置することによって、眼用機器1200を用いて患者の目を合わせるための上述の方法が実施可能になる。
また、光学システム1206は、上述の方法で患者の視軸が決まった後にこの視軸をマーキングする光源1222も有することが好ましい。図の実施例において、光源1222は、第一及び第二参照用ターゲット1208、1210から離隔して配置されている。一実施例においては、光源1222が、機器軸1213に対して九十度の角度で配置され、また、光を軸1213に向けるように設計されている。図の実施例では、ビームスプリッタプレートまたはキューブ1224が、第一及び第二参照用ターゲット1208、1210と患者の間に設けられて、光源1222から放出された光線を患者の目に向けるようになっている。ビームスプリッタ1224は、光源1222の方向からの光線を反射するが、機器軸1213に沿っては光線がビームスプリッタを通過するようにする光学素子である。従って、第一及び第二参照用ターゲット1208、1210からと光源1222からの光線が患者の目に向かって伝播する。また、他の実施例も可能である。例えば、ビームスプリッタ1224を、機器軸の内外へ移動可能な鏡に置き換えることが可能であり、交互に、光源1222からの光を反射するか、第一及び第二参照用ターゲットからの光を目に到達させる。
患者の位置決め用固定具1204は、延長スペーサ1232と、輪郭に合わせて形成された位置決め用パッド1234とを有する。この輪郭に合わせて形成された位置決め用パッド1234は、患者が機器軸1213に沿って見ることになる開口部を画定する。スペーサ1232は、光学ハウジング1202と結合されて、ハウジング1202から輪郭に合わせて形成された位置決め用パッド1234までの距離1236だけ延伸する。一実施例において、スペーサ1232は、輪郭に合わせて形成された位置決め用パッド1234から光学ハウジング1202まで延伸するルーメン1238を決める。実施例によっては、距離1236の大きさは、患者の視軸の位置の確実性を上昇させるように選ばれる。実施例によっては、距離1236が相対的に固定された距離であっても事足りる。
位置合わせ装置1200を用いる際には、患者の頭部を、輪郭に合わせて形成された位置決め用パッド1234に接触させて、患者の目10を、装置内の第一及び第二参照用ターゲット1208、1210からの固定された距離に位置づける。一旦患者の頭部が輪郭に合わせて形成された位置決め用パッド1234に配置されると、患者が上述のように目を動かして、視軸が決められる。視軸が決まった後に、光源1222を用いて、例えば、ビームスプリッタ1224で反射させて目10に向けて光を放出する。
図の実施例において、光源1222から放出された光の少なくとも一部が、ビームスプリッタ1224によって反射されて、機器軸1213に沿って患者の目10に向かう。目10の視軸が事前に機器軸1213に合わせられているので、ビームスプリッタ1224によって反射された光源1222からの光もまた、目10の視軸に合わせられる。
反射された光は、患者の視軸の位置の目に見えるマーカーとなる。光源1222のマーキング機能は、下記のマスクを適用するための方法に関して特に有益なものである。この方法を具現化する眼用装置の更なる実施例について、図55〜59に関して下記で説明する。
〈B. マスクの適用方法〉
ここまで、患者の目の視軸を適切に位置決めするための、またこの視軸を可視的にマーキングする方法についていくつか説明してきた。次に、マスクを目に適用するための様々な方法について説明する。
図52は、焦点深さを増大させたい患者を検査するプロセスを例示する。このプロセスは、患者にソフトコンタクトレンズを装着する、例えば、患者の目のそれぞれにソフトコンタクトレンズを配置するステップ1300から始まる。必要であれば、ソフトコンタクトレンズが視力矯正を含んでいてもよい。次にステップ1310において、患者の目のそれぞれの視軸が、上述のように位置決めされる。ステップ1320において、上述のようなマスクをソフトコンタクトレンズ上に配置して、マスクの開口部の光軸を目の視軸に合わせる。通常この位置では、マスクは患者の瞳の同心上に位置する。これに加えて、マスクの曲がり具合が患者の角膜の曲がり具合に平行であることが望ましい。ステップ1330では、患者に第二セットのコンタクトレンズを装着する、つまり患者の目のそれぞれのマスク上に第二コンタクトレンズを配置する。第二コンタクトレンズは、実質的に一定の位置にマスクを保持する。最後にステップ1340で、患者の視力をテストする。テストの際には、マスクの位置をチェックして、マスクの開口部の光軸が目の視軸と実質的に同一直線上にあることを確実にすることが望ましい。テストの更なる詳細については、本願においてその全文が参照される特許文献4(2003年4月29日発行)に開示されている。
本発明の更なる実施例によると、マスクは外科手術によって、焦点深さを増大させたい患者の目に埋め込まれる。例えば、上述のように、患者は老眼に苦しんでいる。このマスクは、本発明で開示されるようなマスク、従来技術において説明されるマスクと同じもの、または、それらの特性を一つ以上組み合わせたマスクであってもよい。更に、マスクが、視力異常を矯正するように設計されていてもよい。外科医が、手術によって患者の眼内にマスクを埋め込むことを容易にするために、マスクが、予め巻かれているか、またはたたまれていてもよい。
マスクは複数の場所に埋め込むことが可能である。例えば、角膜上皮の下や、角膜のボーマン膜の下、角膜支質の最上層内、角膜支質内にマスクを埋め込むことができる。マスクが角膜上皮の下に配置される場合には、マスクの除去は角膜上皮の除去と大差無いものとなる。
図53Aから53Cは、上皮1410の下に挿入されるマスク1400を示す。この実施例では、外科医は最初に、上皮1410を取り除く。例えば、図53Aに示すように、上皮1410が巻かれてもよい。その後、図53Bに示すように、外科医は、目の視軸に対応するボーマン膜1420内のくぼみ1415を形成する。目の視軸は上述のようにして位置決めされてもよく、また、位置合わせ用装置1200等を用いてマーキングされてもよい。くぼみ1415は、支質1440の最上層1430を露出させ、マスク1400を適合させるのに十分な深さと幅を有することが望ましい。その後、マスク1400がくぼみ1415内に配置される。くぼみ1415は、患者の目の視軸に対応する位置にあるので、マスク1400のピンホール状開口部の中心軸は、目の視軸と実質的に同一直線上にある。これにより、マスク1400を用いて可能となる視力の改善が最大になる。最後に、上皮1410が、マスク1400の上に配置される。図53Cに示すように、時間が経つと、上皮1410が成長して支質1440の最上層1430並びにマスク1400に癒合する。勿論、この癒合はマスク1400の成分に依存する。必要に応じて、マスクを保護するために切開された角膜の上にコンタクトレンズを配置してもよい。
図54Aから54Cは、目のボーマン膜1520の下に挿入されたマスク1500を示す。この実施例では、図54Aに示すように、外科医は最初に、ボーマン膜1520をヒンジ状に開く。その後、図54Bに示すように、外科医は、目の視軸に対応する支質1540の最上層1530内のくぼみ1515を形成する。目の視軸は上述のようにして位置決めされてもよく、また、位置合わせ用装置1200等を用いてマーキングされてもよい。くぼみ1515は、マスク1500を適合させるのに十分な深さと幅を有することが望ましい。その後、マスク1500がくぼみ1515内に配置される。くぼみ1515は、患者の目の視軸に対応する位置にあるので、マスク1500のピンホール状開口部の中心軸は、目の視軸と実質的に同一直線上にある。これにより、マスク1500を用いて可能となる視力の改善が最大になる。最後に、ボーマン膜1520が、マスク1500の上に配置される。図54Cに示すように、時間が経つと、上皮1510が、ボーマン膜1520の切開された部分の上に成長する。必要に応じて、マスクを保護するために切開された角膜の上にコンタクトレンズを配置してもよい。
他の実施例では、略20マイクロメートル未満という十分な薄さのマスクが、上皮1410の下に配置される。他の実施例では、支質の最上層にくぼみを形成せずに、略20マイクロメートル未満の厚さを有する光学マスクが、ボーマン膜1520の下に配置される。
外科手術によって患者の目にマスクを埋め込むための代わりの方法では、支質の最上層に形成されたチャネル内にマスクを縫い込む。この方法では、曲がったチャネル形成用器具を用いて、支質の最上層にチャネルを形成する。チャネルは角膜表面に平行な平面内にある。チャネルは、目の視軸に対応する場所に形成される。チャネル形成用器具は、角膜表面を貫通するか、または、表面の半径方向の小さな切り口を介して挿入される。代わりに、切除用ビームを焦点に集めるレーザによって、支質の最上層にチャネルが形成されてもよい。この実施例では、マスクは割れ目を有する単一のセグメントであってもよく、二つ以上のセグメントであってもよい。どの場合でも、この実施例のマスクはチャネル内に位置し、マスクによって形成されたピンホール状開口部の中心軸が患者の視軸と同一直線上にあるように位置決めされているので、患者の焦点深さが最大限に改善される。
外科手術によって患者の目にマスクを埋め込むための更に他の方法では、支質の最上層内にマスクが挿入される。この実施例では、止め具を有する注入器具が、角膜表面の特定に深さまで貫通する。例えば、挿入器具は、一回の注入でマスクを形成することが可能な針のリングである。代わりに、最初に、支質の最上層内の患者の視軸に対応する位置にチャネルを形成してもよい。その後、注入器具がチャネル内にマスクを注入する。この実施例では、マスクは顔料であってもよく、生体適合性のある媒体内に保持された顔料物質の小片であってもよい。顔料物質は、ポリマーから作成されてもよく、代わりに縫合物質から作成されてもよい。どの場合でも、チャネル内に注入されたマスクは、顔料物質によって形成されたピンホール状開口部の中心軸が患者の視軸と実質的に同一直線上にあるように位置付けられる。
外科手術によって患者の目にマスクを埋め込むための他の方法では、角膜切除術の間に形成される角膜の弁の下にマスクが配置される。この場合、角膜の外側の20%がヒンジ状に開かれる。上述の埋め込み方法と同じ様に、角膜切除術の間に形成される角膜の弁の下に配置されるマスクは、その効果を最大にするため、上述のように患者の視軸に実質的に合わせられることが望ましい。
外科手術によって患者の目にマスクを埋め込むための他の方法では、マスクは患者の視軸に合わせられて、角膜支質に形成されたポケット内に配置される。
位置合わせ用装置の更なる詳細については、本願でその全文が参照される特許文献5(2003年6月17日出願)に開示されている。
《4・ ピンホール状開口部を患者の目に位置合わせするための更なる外科用システム》
図55は、図43〜51に関連して説明したのと同じような方法で、二つのターゲットを用いた固視法を採用する外科用システム2000を示す。外科用システム2000は、外科手術に関係する患者の目の固有の特徴部を識別することを可能にする。外科用システム2000は、患者の目の軸、例えば患者の視線(“視軸”と称されることもある)をシステム2000の軸に合わせるように設計されている。システム2000の軸は、患者がその目を向ける目に見える軸であってもよい。上述のように、このような位置合わせは多くの外科手術において特に有益であり、そうした外科手術には、施術される目の構造または特徴部の一つ以上の位置について正確な情報を得ることが有益である外科手術が含まれる。
一実施例では、外科用システム2000は、外科用視覚装置2004と位置合わせ装置2008とを含む。一実施例では、外科用視覚装置2004は外科用顕微鏡を含む。外科用視覚装置2004は、外科医が手術部位を十分明確に視認できるようにする装置または、外科医の手術部位の視覚化を増強する装置であればどのようなものでもよく、またこれらを組み合わせてもよい。また、外科医は、視覚装置を用いずに位置合わせ装置2004を用いることを選択することもできる。図56の外科用システムの他の実施例に関連して以下で詳述するように、外科用視覚装置2004の構成要素を容易に固定するように設計された固定具を、外科用システム2000が有することが好ましい。
一実施例では、位置合わせ装置2008は、位置合わせモジュール2020と、マーキングモジュール2024と、イメージキャプチャモジュール2028とを有する。下記で説明するように、他の実施例では、マーキングモジュール2024が省略される。マーキングモジュール2024が省略される場合、その機能の一つ以上を、イメージキャプチャモジュール2028が行う。他の実施例では、イメージキャプチャモジュール2028が省略される。また、位置合わせ装置は、位置合わせ装置の一つ以上の構成要素の向きを決める制御装置2032を有することが好ましい。下記で詳述するように、一実施例では、制御装置2032は、コンピュータ2036と、信号線2040a、2040bと、トリガー2042とを有する。
位置合わせモジュール2020は、患者の目、視力または視覚に関連した特徴部を、機器軸つまり位置合わせ装置の軸と合わせることを可能にする構成要素を有する。一実施例では、位置合わせモジュール2020は、機器軸上に位置する複数のターゲット(例えば二つのターゲット)を有する。図の例においては、位置合わせモジュール2020は、第一ターゲット2056と第二ターゲット2060とを有する。位置合わせモジュール2020は、ターゲット2056、2060の面に垂直に延伸する軸2052に、患者の視線を合わせるようにされていてもよい。
位置合わせ装置2008は、患者の目が軸2052に沿うように患者の位置を相対的に位置決めするように設計可能であるが、患者の目2064が軸2052上に存在しないように患者を配置すると更に便利である。例えば、図55に示すように、患者は軸2052から或る距離2224の位置に配置される。図55は、患者の目2064が患者の視軸2072におおよそ沿って向けられている様子を示す。
本配置において、位置合わせ装置2008は、患者の視軸2072が機器軸2052に関して略90度の角度をなす。本実施例において、ターゲット2056、2060を患者の目2064に光学的に接続する経路2076は、部分的には軸2052に沿って延伸し、部分的には患者の視軸2072に沿って延伸する。患者の目2064が軸2052上に存在しないように位置合わせ装置2008が設計されている場合、光学経路2076は、ターゲット2056、2060の像が投影される経路を定める。
軸2052に沿ってまたは平行に伝わる光を方向転換させる一つ以上の構成要素によって、患者を軸2052からずらして配置することが容易になる。一実施例では、位置合わせ装置2008は、軸2052上に位置するビームスプリッタ2080を有し、ビームスプリッタ2080は、患者の視軸に沿って、ターゲット2056、2060の方向からビームスプリッタ2080に向かってやって来る光線を、患者の視軸に沿うように方向付ける。本実施例では、光学経路2076の少なくとも一部分が、患者の目2064からビームスプリッタまでによって、また、ビームスプリッタ2080から第一及び第二ターゲット2056、2060までによって定められる。位置合わせ装置2008は、患者の視軸2072が軸2052に対して略90度を成すように構成可能であるが、他の角度も可能であり、所望の角度を用い得る。図55の配置が便利であるのは、患者がその背中を手術台に載せている場合に、外科医を患者の直上の比較的近い位置に配置することが可能となるからである。
一実施例では、第一ターゲット2056は、軸2052上にあり、また、第二ターゲット2060と患者の目2064との間の光学経路2076上にある。より詳細には、第二ターゲット2060から向けられた光線は第一ターゲット2056と交差し、その後ビームスプリッタ2080に向けられる。下記で詳述するように、第一及び第二ターゲット2056、2060は、患者の目2064に対して適切なパターンを投影するように設計されている。患者が、第一及び第二ターゲット2056、2060の投影された像に影響を受け、患者の視覚または患者の目2064の視線(または他の特有の解剖学的な特徴)を、例えば軸2052等の機器軸、視軸2072または光学経路2076と合わせる。
第一及び第二ターゲット2056、2060は、適切なものであればどのような形状でもあり得る。ターゲット2056、2060は、上述のものと同様であってもよい。ターゲット2056、2060は別々のレティクル上に形成されてもよく、単一の位置合わせターゲットの一部として形成されてもよい。一実施例では、第一及び第二ターゲット2056、2060の少なくとも一つは、パターンが形成されたガラスのレティクルを含む。第一ターゲット2056上のパターン及び第二ターゲット2060上のパターンは線形パターンであってもよく、患者の視軸が軸2052または光学経路2076と揃った時に、第三の線形パターンが形成されるように組み合わせられる。
第一及び第二ターゲット2056、2060は別々の素子として示されているが、一つの位置合わせターゲット上に形成することもできる。図55A〜55Cは、単一の位置合わせターゲット2081の一実施例を示す。位置合わせターゲット2081は、ガラスまたは他の適切な透明媒体から形成可能である。位置合わせターゲット2081は、第一表面2082及び第二表面2083を有する。第一及び第二表面2082、2083は距離2084だけ離れている。距離2084は、本願の方法のいずれかによって患者が位置合わせを行うことを容易にするような十分な間隔を、第一及び第二表面2082、2083に生じさせるように選択される。一実施例では、位置合わせターゲット2082は、第一表面2082上に形成された線形パターンを備えた第一パターン2085と、第二表面2083上に形成された線形パターンを備えた第二パターン2086とを有する。第一及び第二パターン2085、2086は、患者の視線が位置合わせ装置2008の軸に適切に揃った時には第一及び第二パターン2085、2086が選択されたパターンを形成するが(図55Bを参照)、そうでない時には、選択されたパターンを形成しない(図55Cを参照)ように選ばれる。図の例において、第一及び第二パターン2085、2086はそれぞれ略L字型である。揃った際には、第一及び第二パターン2085、2086は十字を形成する。揃っていない場合には、パターンとパターンの間にギャップが生じ、それぞれLとLを反転させたものに見える。この配置の有利な点は、配置された線のずれを敏感に検出する目の能力である副尺視力を利用する点にある。上述のように、非線形または線形パターン(例えば、副尺視力を利用する他の線形パターン)の他の組み合わせを用いることも可能である。
第一及び第二ターゲット2056、2060(または第一及び第二パターン2085、2086)は、何らかの適切な方法で、患者の目2064に見えるようにされる。例えば、ターゲット照明器2090を与えて、ターゲット2056、2060が目2064に見えるようにする。一実施例では、ターゲット照明器2090は、例えば光源等の放射エネルギー源である。光源は適切なものであればどのような光源でもよく、例えば、白熱光源、蛍光光源、一つ以上の発光ダイオード、またはターゲット2056、2060を照らす他の光源が挙げられる。
下記で詳述するように、位置合わせモジュール2020はまた、第一及び第二ターゲット2056、2060から投影された像の焦点を比較的鮮明に合わせて患者の目2064に鮮明な像を与える例えばレンズ等の光学素子を一つ以上有する。このような場合において、光学素子の焦点距離または光学素子のシステムは、例えば、第一または第二ターゲット2056、2060上、第一及び第二ターゲットの間、第一ターゲット2056の前面、第二ターゲット2060の後方等の適切な位置に位置決めされる。焦点深さは、或る位置(例えば、光学素子の位置)から、第一及び第二ターゲット2056、2060から投影されたターゲットの像の焦点を光学素子が結ぶ平面までの距離である。
図55には、第一及び第二ターゲット2056、2060の像の患者の目2064への投影を示す一組の矢印が示されている。特に矢印2094は、ターゲット照明器2090によって放たれた光が軸2052に沿って第一及び第二ターゲット2056、2060に向かう方向を示す。光は第一及び第二ターゲット2056、2060に当たり、ターゲットにより吸収されるか、ターゲットを通り抜けて、軸2052に沿って矢印2098で示された方向にターゲット2056、2060の像を投影する。図55の実施例では、第一及び第二ターゲット2056、200の像は、マーキングモジュール2024及びイメージキャプチャモジュール2028の一部を構成するビームスプリッタ2102と交差する。矢印2106で示すように、ビームスプリッタ2102は、第一及び第二ターゲット2056、2060の像を伝える光の大部分をビームスプリッタ2080に向けて透過させるように設計されている。ビームスプリッタ2102については下記で詳述する。その後、光はビームスプリッタ2080によって反射され、患者の視軸2072に沿って患者の目2064に向かう。下記で詳述するように、実施例によっては、ビームスプリッタ2080は、入射光の一部をビームスプリッタ2080を越えて軸2052に沿って透過させる。一実施例では、ビームスプリッタ2080上に入射する光の70パーセントが患者の目2064に向けて反射され、30パーセントが透過される。適切な割合で透過及び反射させるようにビームスプリッタ2080を設計可能であることを当業者は認識されたい。
ターゲット照明器2090と第一及び第二ターゲット2056、2060が、患者の目2064にターゲットの像を投影する一方で、患者はそれらの像に影響を受け、位置合わせ装置2008の軸に目2064の特徴部を合わせる。図55に示された実施例では、患者は、位置合わせ装置2008の患者の視軸2072に目2064の視線を合わせる。
機器軸に患者の目2064の視線を合わせる方法については、上述した。図55の実施例の場合、光学経路2076が患者の目2064と交差するように患者が配置されている。一方法では、患者は第一ターゲット2056上に焦点を合わせるように指示される。患者の目2064と光学経路2074の間に動きが生じる(従って、患者の目2064とターゲット2056、2060の間に動きが生じる)。患者が、自分の視軸2072に対して頭を動かすことによって、患者の目2064とターゲット2056、2060との間の相対運動が生じる。代わりに、患者が静止したままで、外科用システム2000の全てまたは一部を動かすことも可能である。上述のように、第一及び第二ターゲット2056、2060が揃って見える時に(例えば、L字型パターン2085、2086が十字を形成するように合う時に)、患者の視線は、患者の視軸2072、光学経路2076、位置合わせモジュール2020の軸2052に合う。
目の位置合わせは、本願のマスクを比較的精密な配置するのに十分なものであるが、マーキングモジュール2024とイメージキャプチャモジュール2028の一つまたは両方を用いて、目2064が合わせられた後に外科医がマスクを配置するのを容易にすることが可能である。マーキングモジュール2024とイメージキャプチャモジュール2028の少なくとも一つを用いて、患者の目2064の視線を、目に見える手掛かりと相関させることができる。そうしなければ、視線は可視化されない。目に見える手掛かりとしては、例えば、患者の目の可視可能な物理的な特徴部、目または目の像上に投影されたマーカー、外科医が見ることができるマーカーの仮想的な像などが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。下記で詳述するように、仮想的な像とは、予め選ばれた位置で、外科医の視点が目2064の上にあることによって見えてくる外科医の目に向けられた像である。
一実施例では、外科医が見ることができ、目2064の視線が位置決めされた後に外科医がマスクを配置したり他の手術を行ったりするのを容易にする像、“マーキング像”とも称される、を生じさせるように、マーキングモジュール2024は設計されている。示されている位置合わせ装置2008のマーキングモジュール2024は、マーキングターゲット2120と、マーキングターゲット照明器2124とを有する。マーキングターゲット照明器2124は、例えば上述のターゲット照明器2090に関連して説明した光源のような光源であることが好ましい。
図55には、一実施例として、マーキングターゲット2120が、光がマーキングターゲット2120上に投影された時にマーキング像が生じるように設計された構造である場合が示されている。マーキングターゲット2120は、ターゲット2056、2060と同様であってもよい。実施例によっては、マーキングターゲット2120が適切な幾何学パターンが形成されたガラスのレティクルである場合もある。マーキングターゲット2120上に形成されたパターンは、一つ以上の不透明な領域に囲まれた透明な二次元形状であってもよい。例えば、不透明な領域に囲まれた選択された幅の透明な環状領域を形成することができる。他の実施例では、マーキングターゲット2120は、実質的に透明な領域に囲まれた不透明な二次元形状を備えたガラスのレティクルである。下記で説明するように、他の実施例では、マーキングターゲット2120がガラスから成る必要は無く、固定パターンを有する必要も無い。下記で説明するように、マーキングターゲット2120を、ビームスプリッタ2080または位置合わせ装置2008に関して適切であれば、どこに配置してもよい。
図55では、一実施例として、第一及び第二ターゲット2056、2060の像を発生させるのと同様の方法で、マーキング像が発生している。特に、マーキングターゲット2120とマーキングターゲット照明器2124とが共になって、マーキング像の軸2128に沿ってマーキング像を生成、発生または投影している。マーキング像は軸2128に沿った光によって伝えられる。マーキングターゲット照明器2124は、マーキングターゲット2120に向けて、矢印2132で示される方向に光を放つ。マーキングターゲットは、マーキングターゲット照明器2124によって放たれた光と作用して、例えば、光の少なくとも一部が透過、吸収、フィルタリング、減衰される。矢印2136は、マーキングターゲット照明器2124とマーキングターゲット2120の作用によって発生したマーキング像が伝えられる方向を示す。マーキング像は、マーキング軸2128に沿って伝えられることが好ましい。図の実施例では、マーキングターゲット2120は軸2052からずらして配置されていて、マーキングターゲットの像はまず軸2052に略垂直な方向に放たれる。
図55の実施例では、ビームスプリッタ2140がマーキング軸2128上に配置されているが、これについてはイメージキャプチャモジュール2028に関連して下記で説明する。しかしながら、ビームスプリッタ2140は、マーキングターゲット2120の方向からマーキング軸2128に沿って透過してきた光に対しては実質的に透明であるように設計されている。従って、矢印2144で示されるように、マーキング像を伝える光は実質的に全てビームスプリッタ2140を透過して、マーキング軸2128に沿って軸2052に向かう。従って、一般的に、ビームスプリッタ2140はマーキング像に影響を与えない。マーキングターゲット2120に向かい合うビームスプリッタ2102の表面は光に対して反射性である。従って、マーキング像を伝える光は反射され、その後、矢印2106によって示されるように、軸2052に沿って伝えられる。また、ビームスプリッタ2102に向かい合うビームスプリッタ2080の面も、少なくとも一部の光(例えば、上述のように入射光の70パーセント)に対して反射性である。従って、マーキング像を伝える光は反射され、その後、矢印2148によって示されるように、患者の視軸2072に沿って患者の目に向けて伝えられる。従って、マーキングターゲット2120から投影されたマーキング像は、患者の目2064の上に投影される。
下記で詳述するように、マーキング像を患者の目に投影することによって、外科医がマスクを正確に配置することが容易になる。例えば、患者の目の視線の位置(または他の一般的には見ることができない目2064の特徴)を、例えば虹彩や他の解剖学的な特徴部等の目に見える特徴部と相関させることによって、外科医が助けられる。一方法では、マーキング像は、手術条件(例えば、影響する光や患者の目2064の拡大具合)下の虹彩の内周サイズよりも大きな直径を有する略円形のリングである。他の方法では、マーキング像は、手術条件(例えば、光や目2064の拡大)下の虹彩の外周サイズよりも小さな直径を有する略円形のリングである。他の方法では、マーキング像は、例えば、目の縁等の他の特徴部に相関するサイズを有する略円形のリングである。
システム2000の一実施例では、マーキングモジュールが副マーキングモジュールを有するようにする。副マーキングモジュールは、位置合わせ装置2008に関連した光学系を介するように経路が定められていない。と言うよりも、副マーキングモジュールはむしろ位置合わせ装置2008に結合されている。一実施例では、副マーキングモジュールは、例えば、本願で説明される光源のいずれかと同様のレーザや光源等の放射エネルギー源を有する。放射エネルギー源は、複数のスポット(例えば、二つ、三つ、四つまたは四つ以上のスポット)を患者の目の上に向けるように設計されている。スポットは小型で明るいスポットであることが好ましい。マスクが目2064の視線に対して正しい位置に配置された際に、スポットは、例えばマスクのエッジ等のマスクの特徴部と相関する目の上の位置を示す。スポットを投影されたマーキングターゲットに合わせることが可能であり、スポットが、投影されたマーキングターゲット上の選択された位置(例えば、内側のエッジ上、外側のエッジ上、または内側及び外側の両方のエッジ上の半径方向に間隔を空けた位置)に当たる。従って、マーキングモジュールにより、位置合わせ装置の光学系を介さずに、視線の位置に相関するマスクを適切に配置するような目に見える手掛かりが与えられる。実施例によっては、副マーキングモジュールの目に見える手掛かりが、マーキングモジュール2024のマーキング像と共に適切に配置される。
方法によっては、外科医のために目2064の上に発生させた目に見える手掛かりの視認性(例えば、マーキングターゲット2120の像の反射)を増大させることが有益である。こうすることの理由が、角膜からずれたマーキング像の反射性が一般的に良くないからという場合もある。角膜からずれたマーキング像の反射性が良くない場合、像の反射はぼやけてしまう。これに加えて、角膜は中心のずれた非球面構造であるので、角膜の反射(プルキンエ像)は、外科医が見る角膜表面と視軸の交差する位置からずれることもある。
目に見える手がかりの視認性を増大させるための方法の一つには、マーキングターゲット2120の投影された像と反応可能な物質を目に加えることが含まれる。例えば、フルオレセイン染料等の染料を目の表面に加えることができる。その後、上述のように、マーキングターゲット照明器2124を始動させて、マーキングターゲット2120の像を生じさせ、目の上に投影させる。一実施例では、マーキングターゲット照明器2124は、例えば青色光に対応する波長などの電磁放射エネルギーの可視スペクトルの離散的な一部または全てからの光を投影して、目2064の上にマーキングターゲット2120の像を投影するように設計されている。投影された像は染料に作用して、角膜表面上に照らされるマーキングターゲット2120の像を生じさせる。染料の存在により、マーキングターゲットの像の視認性が大幅に増大する。例えば、マーキングターゲット2120がリングの場合、光が染料を蛍光発光させるので、外科医は明るいリングを見ることができる。この方法により、プルキンエ像の存在によるマスク配置におけるエラーが実質的に無くなり、一般的にはマーキングターゲット2120の像の明るさが増大可能である。
目の上の目に見える手掛かりの視認性を増大させるための他の方法には、目2064の前方表面の少なくとも一部に、目に見える手掛かり増強装置を適用することが含まれる。例えば、一方法では、角膜上にドレープが配置される。ドレープは適切な構成のものであれば、どのようなものでもよい。例えば、ドレープは比較的薄い構造であり、目の前方表面に対して実質的にコンフォーマルである。ドレープは、従来のコンタクトレンズの製法と同様の方法で形成可能である。一つの方法として、ドレープはコンタクトレンズである。視覚的手掛かり増強装置は、適切な反射特性を有することが好ましい。一実施例では、角膜上にマーキングターゲット2120の像を投影する光を拡散反射させる。一実施例では、例えば青色光に対応する波長などの電磁放射エネルギーの可視スペクトルの離散的な一部に作用するように、目に見える手掛かり増強装置は設計されている。
上述のように、図55に示す位置合わせ装置2008はイメージキャプチャモジュール2028も有する。変形例によっては、イメージキャプチャモジュール2028を有さない場合もある。外科用システム2000のイメージキャプチャモジュール2028は、患者の目2064の像を一つ以上キャプチャして、外科医が目2064を手術することを容易にする。イメージキャプチャモジュール2028は、例えばカメラ2200等の像をキャプチャする装置と、像を表示するための表示装置2204を有することが好ましい。表示装置2204は液晶ディスプレイとすることができる。イメージキャプチャモジュール2028は、外科用システム2000の制御装置2032によって部分的に制御可能である。例えば、コンピュータ2036を採用して、カメラ2200によってキャプチャされた像を処理して、外科医が見ることができる表示装置2204に像を伝える。また、コンピュータ2036は、カメラ2200、表示装置2204、トリガー2042またはイメージキャプチャモジュール2028の他の構成要素の少なくとも一つの動作を決めるか、またはそれらに応答する。
カメラ2000は適切なカメラであればどのようなものでもよい。使用可能なカメラの種類として電荷結合素子(charge−coupled device,CCD)カメラが挙げられる。CCDカメラには、シリコンチップが組み込まれていて、その表面は感光型画素を有する。例えば光子つまり光の粒子といった光が画素に当たると、電荷が画素に記録されて、検出可能になる。感光型画素の大きなアレイを用いて、十分な解像度の像を発生させることが可能である。下記で詳述するように、有利な実施例では、選択された画素(例えば、表示装置2204の幾何学的な中心にある画素)が軸2052に正確に合わせられる。このような位置合わせが行われる場合には、マーキングモジュールを用いて、目2064の視線をマスクに合わせる必要が無くなり得る。
上述のように、カメラ2200によってキャプチャされた像によって、本願で説明されるマスクのいずれかのようなマスクを外科医が位置合わせすることが容易になる。一実施例では、イメージキャプチャモジュール2028は、目2064の物理的特徴部の一つ以上の像をキャプチャするように設計されていて、その位置は、目2064の視線に適切に相関している。例えば、患者の虹彩の像は、矢印2148で示されるように、患者の視軸2072に沿ってビームスプリッタ2080に向けられる。上述のように、ビームスプリッタ2080の面は、目2064から伝わる光に対して反射性である。従って、目2064の虹彩の像を伝える光の少なくとも実質的な部分は、ビームスプリッタ2080によって反射されて、矢印2106で示されるように、軸2052に沿ってビームスプリッタ2102に向けて伝えられる。上述のように、ビームスプリッタ2102のビームスプリッタ2080と向かい合う表面は光に対して反射性である。従って、虹彩の像を伝える光の実質的には全てが、ビームスプリッタ2102によって反射されて、矢印2144で示されるように、マーキング軸2128に沿ってビームスプリッタ2140に向けて伝えられる。ビームスプリッタ2102及びカメラ2200と向かい合うビームスプリッタ2140の表面は、光に対して反射性である。従って、虹彩の像を伝える光の実質的には全てが、ビームスプリッタ2140とカメラ2200の間に延伸するイメージキャプチャ軸2212に沿って反射される。矢印2216で示されるように、光はイメージキャプチャ軸2214に沿って伝えられる。
カメラ2200によってキャプチャされた像は、信号線2040aを用いて、コンピュータ2036に伝えられる。コンピュータ2036は、信号を適切な方法で処理して、信号線2040bに沿って表示装置2204に伝えられる信号を発生する。適切な信号線及びコンピュータまたは他の信号処理装置を用いて、カメラ2200からの信号を表示装置2204に伝えることが可能である。信号線2040a、2040bは物理的な線である必要はない。例えば、適切な無線技術を、物理的な線と共に用いたり、物理的な線の代わりに用いたりすることでできる。
何らかの適切な方法で、カメラ2000による像のキャプチャが引き起こされる。例えば、トリガー2042が手動で作動するように設計されていてもよい。一実施例では、患者の目2064が合わせられた時(例えば、上述のようにターゲット2056、2060が揃った時)に、患者がトリガー2042を作動させるように設計される。イメージキャプチャモジュール2028による目2064の像のキャプチャを、患者が引き起こせるようにすることによって、像がキャプチャされる前に目2064が動いてしまう可能性が大幅に減る。他の実施例では、手術に立ち会う他の人間が、例えば目の手掛かり上の像のキャプチャを引き起こすようにしてもよい。他の実施例では、制御装置が、所定の基準に基づいて患者の目2064の像の自動的にキャプチャするように設計されている。
表示装置2204は、矢印2208で示されるように、像を軸2052に沿ってビームスプリッタ2080に向けるように照射される。表示装置2204と向かい合うビームスプリッタ2080の表面は、ビームスプリッタ2080の位置から向けられた光に対して反射性であることが好ましい。従って、ディスプレイ上の像はビームスプリッタ2080によって反射されて、矢印2216で示されるように、外科医の目2212に向かう。ビームスプリッタ2080は、外科医の目2212の視野に対しては透明であることが好ましい。従って、一実施例では、外科医は、患者の目2064と表示装置上の像とを同時に見ることができる。マーキングモジュール2024とイメージキャプチャモジュール2028が両方とも存在する一実施例においては、像が表示装置2204に表示されると同時に、マーキング像が投影される。マーキング像及びディスプレイ上の像は、両方とも患者の目の上にあるように見える。一実施例では、これらは同じ構成(例えば、サイズと形状)を有するので、重なる。これにより、外科医の視野からの像が強められ、更には、マーキング像によって与えられる目に見える手掛かりの視認性が増大する。
表示装置2204は、ビームスプリッタ2080から距離2220に位置にする。患者は軸2052から距離2224に位置する。距離2220と距離2224が略等しいことが好ましい。従って、表示装置2204と患者の目2064は両方とも、外科用視覚装置2204の焦点距離にある。これによって、表示装置2204によって発生させた像の焦点が合っているのと同時に患者の目の焦点が合っていることが確実になる。
一実施例では、システム2000は、手術中に患者の目2064の動きを追跡できるように設計されている。一構成では、目2064が位置合わせ装置2008の軸に合うと、患者がトリガー2042を作動させる。その直後にマスクが埋め込まれるが、患者の目は束縛されていないので、ある程度は動く可能性がある。このような動きを修正するため、イメージキャプチャモジュール2028はこのような動きに対応するように設計されており、表示装置2204上に形成された像を動かす。例えば、マーキングターゲット2120に関して上述したのと同じようなリングが表示装置2204上に形成される。ビームスプリッタ2080によって、外科医が患者の目2064の上に視覚的に重ねられたリングを見ることが可能になる。イメージキャプチャモジュール2028は、患者の目2064の実時間の位置を、トリガー2042を作動させた時の目の像と比較する。実時間の場所とカメラ2200によってキャプチャされた位置との差が測定される。リングの位置が、この位置の差に対応した分だけ動かされる。結果として、外科医の視野からは、リングと目の動きが一致して、マスクを配置する正確な位置を示し続ける。
上述のように、システム2000の複数の変形例が考えられる。第一変形例は、実質的には図55に示される実施例と同じであるが、下記の点が異なる。第一変形例では、ビデオキャプチャモジュール2028が省略されている。この実施例は、図51に関連して上述した実施例と同様のものである。図55の実施例では、マーキングモジュール55は、患者の目の表面上にマーキングターゲットを投影するように設計されている。この変形例の利点は、構成が比較的単純であるという点である。また、この変形例では、施術される場所に最も近い角膜表面上にマーキング像が投影される。
第一変形例の一実施例では、マーキングモジュール2024は、マーキング像が外科医の目2212には表示されるが患者の目2064には表示されないように設計されている。マーキングターゲット2120をおおよそ表示装置2204の位置に配置することによって、このようにすることが可能である。適切な方法で、マーキング像を発生させて、外科医にとって見えるようにする。例えば、マーキングターゲット2120及びマーキングターゲット照明器2124を再配置して、矢印2208、2216によって示されるように、マーキングターゲット2120の像を投影するようにすることができる。マーキングターゲット2120及びマーキングターゲット照明器2124を、例えばLCDディスプレイ等の単一の装置に置き換えることもできる。第一変形例のこの実施例の利点は、マーキング像が外科医には見えるが、患者には見えないという点である。患者は、マーキング像に応答したり晒されたりすることから解放される。これによって、患者の快適性が増大し注意散漫が減少して、患者が手術中にじっとしていることが可能になるので、位置合わせの能率が増大する。
第一変形例の他の実施例では、二つのマーキング像が外科医の目2212に見える。一形態では、この実施例は、図55に示されまた上述したものと同様のマーキングモジュール2024を有するが、下記の点が異なる。外科医の目2212には仮想的な像が見える。一形態では、仮想的な像の発生表面は、表示装置2204が配置される位置と略同じ位置に配置される。表面は、鏡、他の反射性表面、または非反射性表面である。一実施例では、表示装置2204は白色のカードである。マーキング像を伝える光の第一部分は、ビームスプリッタ2080によって反射されて患者の目2064に向かう。従って、マーキング像が患者の目の上に形成される。マーキング像を伝える光の第二部分は、仮想的な像の発生表面へと透過される。マーキング像は、仮想的な像の発生表面上に形成されるか、仮想的な像の発生表面によって反射される。従って、マーキングターゲットは、ターゲットの仮想的な像としても、外科医の目2212に見える。患者の目の上に形成されたマーキング像と仮想的な像は両方とも外科医に見える。第一変形例のこの実施例の利点は、マーキングターゲットのマーキング像と仮想的な像が外科医の目2212には見えて、互いに強められ、マーキング像が外科医に対して高い視認性で見えるようになる。
第二変形例では、マーキングモジュール2024が省略される。この実施例では、イメージキャプチャモジュール2028によって、外科医に対する目に見える手掛かりが与えられ、マスクの配置が容易になる。特に、上述のように、像を表示装置2204に表示することが可能である。患者がトリガー2042を作動させるのに応答して、像が発生するようにすることが可能である。一方法では、上述のように、ターゲット2056、2060が揃った時に患者がトリガーを作動させる。この変形例では、表示装置2204上に形成された像が、患者の視線の位置を示す目に見える手掛かりを外科医に与えることになるので、位置合わせ装置内の表示装置2204の位置を決定することに注意を払わなければならない。一実施例では、表示装置2204は、位置合わせモジュールに注意深く結合されて、軸2052が、所定の位置(例えば、所定の画素)まで延伸する。表示装置2204上の軸2052の正確な位置がわかっているので、形成された像と患者の視線の関係もわかる。
図56は、上述の外科用システム2000と同様の外科用システム2400の一部を示すが、下記の点が異なる。外科用システム2400は、上述の変形例や実施例のいずれかに従って、変形されている。
図56において、外科用システム2400の一部は、外科医の視点から示されている。外科用システム2400は位置合わせ装置2404と固定具2408とを有する。位置合わせ装置2404は、上述の位置合わせ装置2008と同様のものであるが、下記の点が異なる。外科用システム2400は、外科用顕微鏡または他の視覚装置が示されていないが、固定具2408を用いてこれらの一つに結合されるように設計されている。
固定具2408は何らかの適切な形状を取り得る。図の実施例では、固定具2408は、締め具2412と、高さ調節メカニズム2416と、締め具2412及びメカニズム2416を相互接続する適切な構成要素とを有する。図56の実施例では、締め具2412は、第一側面部2420と、第二側面部2424と、第一及び第二側面部を互いに作動させる締め具メカニズム2426とを有するリング状の締め具である。第一側面部2420は、第一円弧状内側表面2428を有し、第二側面部2424は、第一円弧状内側表面2428に向かい合う第二円弧状内側表面2432を有する。締め具メカニズム2426は、第一及び第二側面部2420、2424のそれぞれに結合されていて、第一及び第二円弧状内側表面2428、2432が、互いに近づけたり遠ざけたりする。第一及び第二円弧状内側表面2428、2432が互いに近づくと、第一及び第二円弧状内側表面2428、2432の間に配置された例えば外科用顕微鏡の一部等の構造に力が加えられる。一実施例では、第一及び第二円弧状内側表面によって加えられる力は、外科用視覚補助具に関して位置合わせ装置2404を締めるのに十分なものである。一実施例では、締め具2412は、現在市場に流通している外科用顕微鏡のいずれか一つ(または一つ以上)に結合するように設計されている。
また、固定具2408は、位置合わせ装置2404を締め具2412の下の或る高さに吊り下げるように設計されていることが好ましい。図の実施例では、ブラケット2440が締め具2412に結合されている。図の実施例では、ブラケット2440は、L字の一部が締め具2412から下方に向かって延伸するL字型のブラケットである。図56では、L字型のブラケットは、スペーサ2444によって締め具2412から横方向に離隔されている。一実施例では、ブラケット2440はスペーサ2444に回動可能に結合されていて、表面2428、2432の間に画定された空間を介して見ることができる外科用顕微鏡または視覚補助具の視野の外へと、位置合わせ装置2040が容易に回転可能なようになっている。
また、固定具2408は、位置合わせ装置2404を、締め具2412の下の或る高さ範囲内の選択された高さに配置することが可能なように設計されていることが好ましい。位置合わせ装置2404の高さは、適切なメカニズムを操作することによって、容易かつ迅速に調節可能である。例えば、ラックピニオンギア結合2464で結合されたつまみ2460を採用することによって、手動で作動させる。ラックピニオンギア結合2464を、フットペダルやトリガー等のより離れた位置にある他の手動装置によって作動させることもできるし、自動装置によって作動させることもできる。
図57〜59は、位置合わせ装置2404の更なる詳細を示す。位置合わせ装置2404は、照明器制御装置2500と作用するように結合され、位置合わせモジュール2504と、マーキングモジュール2508と、イメージルーティングモジュール2512とを有する。下記で説明するように、照明器制御装置2500は、位置合わせ制御装置2404に関連した光源またはエネルギー源を制御する。実施例によっては、照明器制御装置2500は、上述のコンピュータ2036と同様のコンピュータまたは他の信号処理装置の一部を形成する。
位置合わせモジュール2504は、位置合わせモジュール2020と同様のものであるが、下記の点が異なる。位置合わせモジュール2504は、第一端部2524と第二端部2528との間に延伸するハウジング2520を有する。ハウジング2520の第一端部2524は、イメージルーティングモジュール2512に結合されていて、下記の様にイメージルーティングモジュール2512と作用する。ハウジング2520は、中空であることが好ましいリジッドボディ2532を有する。第一及び第二端部2524、2528の間のハウジング2520の中空部分内には、軸2536が延伸する。図の実施例では、ハウジング2520の第二端部2538は、エンドプレート2540によって密閉されている。
ハウジング2520は、その内部に画定された中空空間内に配置された様々な構成要素を保護するように設計されている。一実施例では、ターゲット照明器2560は、第二端部2528近傍のハウジング内部に配置されている。エンドプレート2540から延伸する電力ケーブル(または他の電気伝達機関)はターゲット照明器2560を電源に電気的に接続する。また、ターゲット照明器を、無線接続で作動させてもよい。一実施例では、電源は、電力ケーブル2564が接続される照明器制御装置2500の一部を形成する。例えば、適切な電圧のコンセントやバッテリー等の適切な電源から、電力を得る。
上述のように、照明器制御装置2500によって、外科医(または手術を補佐する他の人)が、位置合わせモジュール2504内のターゲット照明器2560に供給されるエネルギー量を制御することが可能になる。一実施例では、照明器制御装置2500には輝度制御部があり、ターゲット照明器2560の輝度を調節することが可能である。輝度制御部を、例えば輝度制御つまみ2568による等の適切な方法で作動させる。輝度制御部は、ターゲット照明器2560に加えられるエネルギー量を手動でアナログに(連続的に)調節する、または、ターゲット照明器2560に加えられるエネルギー量を手動でデジタルに(離散的に)調節することができる他の適切な形状でもよい。実施例によっては、輝度制御部は、例えばコンピュータ制御で自動的に調節される。また、照明器制御装置2500は、ターゲット照明器2560に選択的に電力を加えたり切ったりするように設計されたオンオフスイッチ2572を有してもよい。オンオフスイッチ2572は、手動で、自動で、または一部手動一部自動で作動される。他の実施例では、輝度制御部及びオンオフスイッチを無線で制御可能である。
ハウジング2520内にはまた、第一ターゲット2592と第二ターゲット2596とレンズ2600とが配置されている。上述のように、第一及び第二ターゲット2592、2596は、患者の目に合成像を与えて、患者が目の視線を位置合わせモジュール2504の軸(例えば軸2536)に合わせるように設計されている。第一及び第二ターゲット2592、2596は、上述のターゲットと同様のものである。特に、単一の構成要素内の両端に二つのターゲットを有する位置合わせターゲット2081が、ハウジング2520内部に配置され得る。
レンズ2600は適切なレンズであればどのようなものでもよい。上述のターゲット2056、2060の焦点と同じような方法で、第一及び第二ターゲット2592、2596の像のどちらか一つまたは両方の焦点が鮮明に合わせられるようにレンズ2600が設計されていることが好ましい。
一実施例では、位置合わせモジュール2504は、ハウジング2520内部の第一及び第二ターゲット2592、2596の位置を調節できるように設計されている。適切な方法を用いて、第一及び第二ターゲット2592、2596が調節可能になる。図57、58は、ハウジング2520内部のターゲット2592、2596の位置の大体の調節は迅速に行い、また、細かな調節も行うことができるターゲット調節装置2612を有する位置合わせモジュール2504の一実施例を示す。
一実施例では、ターゲット調節装置2612は、第一端部2524と第二端部2528との間のハウジング2520の少なくとも一部に沿って延伸する支持構成要素2616を有する。一実施例では、支持構成要素2616は、エンドプレート2540と、イメージルーティングモジュール2512とに結合されている。一実施例では、ターゲット調節装置2612は、レンズ2600に結合されたレンズ固定具2620と、第一及び第二ターゲット2592、2596に結合されたターゲット固定具2624とを有する。他の実施例では、第一及び第二ターゲット2592、2596のそれぞれが、別々のターゲット固定具に固定されて、ターゲットが独立的に配置及び調節される。レンズ2600は図示されているように調節可能であってもよく、固定された位置にあってもよい。レンズ及びターゲット2592、2596が動くことによって、ターゲット2592、2596上のパターンが、患者の視点からの焦点へと伝えられる。
一実施例では、支持構成要素2616は、ねじ込み式のロッドであり、第一及び第二ターゲット固定具2620、2624のそれぞれは、ねじ込み式の支持構成要素2616を受け止めるための対応するねじ貫通孔を有する。つまみ2628等の調節装置が、ねじ込み式の支持構成要素2616に結合されていることが好ましく、支持構成要素2616が回転可能になる。つまみ2628は刻み付けられていて、つまんで、回転させることが容易になっている。支持構成要素2616の回転によって、第一及び第二ターゲット固定具が、支持構成要素2616上をハウジング2520の外側に沿って並進移動する。第一及び第二ターゲット固定具2620、2624の動きによって、ハウジング2520内部の第一及び第二ターゲット2592、2596の対応する動きが生じる。
一実施例では、クイック解除メカニズム2640が提供されて、第一及び第二ターゲット固定具2620、2624が選択的に、支持構成要素2616を解除したり、締めたりすることを可能にする。クイック解除メカニズム2640は、スプリングの実装された締め具であってもよく、第一及び第二ターゲット固定具2620、2624に形成された貫通孔が開き、支持構成要素2416が通過可能なギャップが形成される。第一及び第二ターゲット固定具2620、2624が支持構成要素2616から取り外されると、それらを、支持構成要素2216上の他の位置へと迅速に移動させることが可能になる。迅速に再配置された後で、支持構成要素2616を調節することによって、第一及び第二ターゲット固定具2620、2624の細かな位置決めが行われる。
上述のように、位置合わせ装置2404は、上述のマーキングモジュール2024と同様のマーキングモジュール2508も有するが、下記の点が異なる。マーキングモジュールは、略リジッドなハウジング2642を有し、ハウジング内部には中空空間が画定される。ハウジング2642は、イメージルーティングモジュール2512に結合された第一端部2644と、エンドプレート2652によって閉じられた第二端部2648とを有する。一実施例では、ハウジング2642は、第一部分2656と第二部分2660とを有する。第一及び第二部分2656、2660は、互いに外れるように設計されていることが好ましく、ハウジング2642内部に画定された中空空間内に存在する構成要素にアクセス可能となる。このように迅速にアクセスできることによって、ハウジング2642内に存在する構成要素の修理及び構造変更が容易になる。第一部分2656は、第一端部2644とハウジング2642の中点との間を延伸する。第二部分2660は、第一部分2656とハウジング2642の第二端部2648との間を延伸する。一実施例では、第一部分2656は雄ねじを有する雄型の構成要素を有し、第二部分は雌ねじを有する雌型の構成要素を有し、第一及び第二部分2656、2660が、ねじによって脱着可能になる。
上述のように、ハウジング2642は、一つ以上の構成要素が配置される空間を提供する。図の例では、ハウジング2642は、ターゲット照明器2680とマーキングターゲット2684とを取り囲む。
マーキングターゲット照明器2680は、適切なエネルギー放射源であってもよく、例えば、白熱光源、蛍光光源、発光ダイオード等の光源が挙げられる。上述のターゲット照明器のように、例えば、光源から放出された光エネルギースペクトルの一部(例えば、一つ以上の電磁スペクトルのバンド)がマーキングターゲット2684に向けて透過されるようにするといったように、光を変調するためのフィルタを一つ以上設けたりする等の有益な方法で光を処理するための適切な光学素子を、マーキングターゲット照明器2680は、有するか、または、そのような光学素子に結合されている。
図の実施例では、マーキングターゲット照明器2680は、エンドプレート2652近傍に配置されている。エンドプレート2652から延伸する電力ケーブル2688(または他の電気伝達機関)は、マーキングターゲット照明器2680を電源に電気的に接続する。一実施例では、電源は、電力ケーブル2688が接続される照明器制御装置2500の一部を形成する。例えば、適切な電圧のコンセントやバッテリー等の適切な電源から、電力を得る。
上述のように、照明器制御装置2500によって、外科医(または手術を補佐する他の人)が、マーキングモジュール2508内のターゲット照明器2680に供給されるエネルギー量を制御することが可能になる。照明器制御装置2500には輝度制御部があり、マーキングターゲット照明器2680の輝度を調節することが可能である。輝度制御部を、例えば輝度制御つまみ2692による等の適切な方法で作動させる。輝度制御部は、上述のターゲット照明器2560の輝度制御部に関連して説明したのと同様のものであってもよい。また、照明器制御装置2500は、マーキングターゲット照明器2680に選択的に電力を加えたり切ったりするように設計されたオンオフスイッチ2696を有してもよい。オンオフスイッチ2696は、手動で、自動で、または一部手動一部自動で作動される。様々な他の実施例においては、電力供給部、輝度制御部、オンオフスイッチのいずれかが、無線で実施される。
一実施例では、マーキングターゲット2684は、例えばガラス製のレティクルであって、その上に環状形状部が形成されている。例えば、マーキングターゲット上に形成された環状形状部は、不透明な領域によって囲まれた実質的に透明な環状部である。この構成では、マーキングターゲット2684に向けられた光は、マーキングターゲット2684と作用し、環状の像が生じる。他の実施例では、マーキングターゲット2684は、例えば不透明な環状形状部等の不透明な形状部を有する実質的に透明なレティクルである。下記で説明するように、環状の像は、イメージルーティング装置2684に向けられる。例えば、ハウジング2642の第一部分2656及び第二部分2660が分離された時に、取り外し可能な固定具2718内に、マーキングターゲット2684は収容される。
図59は、イメージルーティングモジュール2512をより詳細に示す。イメージルーティングモジュール2512は、ターゲット及びマーキング像を患者の目に伝える光をルーティングするのに主に役立つ。イメージルーティングモジュール2512によって、位置合わせ装置2404の様々な構成要素を配置することに柔軟性が与えられる。例えば、イメージルーティングモジュール2512によって、ハウジング2520及びハウジング2556を略同一平面上に配置して、また互いに平行に配置することが可能になる。これによって、位置合わせ装置2404の設備が比較的小型になり、手術のセッティングにおいて有利になる。何故ならば、上述のように、外科医が施術される位置の可能な限り近くにいることが望ましいからである。これに加えて、位置合わせ装置の設備が小型になることによって、外科医または外科医を補佐する人の自由な移動が妨げられる度合いが、最小化されるか、少なくとも減じられる。
図58及び59には、ハウジング2520の第一端部2524とハウジング2642の第一端部2644とに結合されたハウジング2720を有するイメージルーティングモジュール2512が示されている。ハウジング2720内部に画定された空間には、第一光学装置2728と第二光学装置2732とが収容される。第一光学装置2728は、マーキングターゲット2684に向かい合う反射性表面を有し、マーキングターゲット2684の像を伝える光を反射して第二光学装置2732に向けるように設計されている。第一光学装置2728はミラーであってもよい。第二光学装置2732は第一光学装置に向かい合う表面2736を有し、第一光学装置2728からの光に対して反射性である。従って、第二光学装置2732は、第一光学装置2728によって第二光学装置に向けられた光を反射する。
また、イメージルーティングモジュール2512が、第三光学装置2740と、ハウジング2720に結合されたフレーム2744とを有してもよい。フレーム2744は、ハウジング2720に対する第三光学装置2740の位置を決めるように設計されている。一実施例では、第三光学装置2740はビームスプリッタであり、フレーム2744は、軸2536に対して略四十五度の角度で第三光学装置2740を保持する。この配置では、第三光学装置2740は、第二光学装置2732の第一表面2736によって反射された光と作用する。第三光学装置2740は、図55のビームスプリッタ2080と同じ様な方法で作動する。
第二光学装置2732は、軸2536に沿って像を伝える光の実質的に全てに対して透過性であるように設計されており、図55に関連して上述したように、軸2536に沿って伝えられる像は第三光学装置2740に向けられ、その後、外科医の目に向かう。
イメージルーティング装置は、特定の方法で像を伝える光をルーティングする第一、第二、第三光学装置2728、2732、2740を有するものとして示されている。しかしながら、当業者であれば、位置合わせ装置の所望の幾何学構造及び小型さに応じて、イメージルーティング装置2512の像をルーティングする光学装置の数を多くしたり少なくしたりできることを認識されたい。
位置合わせ装置2404の変形例においては、位置合わせ装置2404の光学系を介するように経路が定められていない副マーキングモジュールを有するマーキングモジュールが与えられる。一実施例では、副マーキングモジュールは、例えばレーザや他の光源等の放射エネルギー源を有する。放射エネルギー源は、複数のスポット(例えば、三つ、四つまたは四つ以上のスポット)を患者の目の上に向けるように設計されている。マスクが目2064の視線に対して正しい位置に配置された際に、スポットは、マスクのエッジと相関する目の上の位置を示す。スポットを投影されたマーキングターゲットに合わせることが可能であり、スポットが、投影されたマーキングターゲット上の選択された位置(例えば、内側のエッジ上、外側のエッジ上、または内側及び外側の両方のエッジ上の半径方向に間隔を空けた位置)に当たる。一実施例では、副マーキングモジュールの少なくとも一部は、フレーム2744に結合されている。副マーキングモジュールのレーザは、フレーム2744に付与されて、そこから下げられて、患者の目へと下方に向けられる。上述のように、これによって、患者の視線が識別された後に、視線に対するマスクの適切な位置をマーキングするための副次装置が提供される。
マスクの適用に関連して、患者の視線を機器の軸に合わせるための装置及び方法の実施例について説明してきた。しかしながら、本発明の真の範囲から逸脱せずに本発明の利点の少なくともいくつかを達成する様々な変形や修正が可能であるということは、当業者にとって明らかである。これらのまたは他の明白な修正は、本願の特許請求の範囲に含まれるものである。
《5. 回折パターンの視認性を減じるように設計されたマスク》
前述のマスクの多くは、患者の焦点深さを改善するために用いられる。様々なマスクの追加例を、下記に説明する。下記の実施例のいくつかは、栄養輸送構造を有しており、マスクを横切る栄養の輸送を容易にすることによって、近接する組織間の栄養の流れを増強または維持するように設計されている。下記で説明される実施例のいくつかの栄養輸送構造は、近接する組織内の栄養の減少を少なくとも実質的には妨げるように設計されている。マスクが角膜内に埋め込まれたときに近接する角膜層内にマスクが存在することによる負の効果を、栄養輸送構造は減じることができ、マスクの寿命が増加する。本発明者は、特定の栄養輸送構造においては、本願で開示されるマスクの視力改善効果を妨げる回折パターンが発生することを発見した。従って、回折パターンを発生させない栄養輸送構造を有する特定のマスクについて、ここで説明する。そうでなければ、このマスクの実施例の視力増強効果は妨げられてしまう。
図60〜61は、老眼に苦しむ患者の目の焦点深さを増大させるように設計された一実施例のマスク3000を示す。マスク3000は上述のマスクと同様であるが、下記の点が異なる。また、マスク3000は、図67A〜67D及びその変形例に関連して後述されるような適切なプロセスによって、作成可能である。マスク3000は、例えば、患者の角膜内に埋め込まれることによって、患者の目に適用されるように設計されている。マスク3000は、例えば図53A〜54Cに関連して説明したような適切な方法で角膜内部に埋め込まれる。
一実施例では、マスク3000は、前方表面3008及び後方表面3012を有するボディ3004を含む。一実施例では、ボディ3004は、第一角膜層と第二角膜層との間の元々の栄養の流れを実質的に維持することが可能である。一実施例では、第一角膜層(例えば層1410)と第二角膜層(例えば1430)との間の少なくとも一つの栄養(例えばグルコース)の自然な流れの少なくとも略九十六パーセントを維持するように、物質が選択される。ボディ3004は、適切な物質から選択されてもよく、連続気泡発泡体、発泡性固体材料、実質的に不透明な材料の少なくとも一つを含む。一実施例では、ボディ3004を形成するために用いられる物質は比較的含水率が高い。
一実施例では、マスク3000は栄養輸送構造3016を有する。栄養輸送構造3016は、複数のホール3020を有し得る。ホール3020は、マスク3000の一部のみの上に示されているが、一実施例においては、ホール3020がボディ3004全体に亘って配置されていることが好ましい。一実施例では、ホール3020は、六角形のパターンに配置されており、その様子が図62Aの複数の位置3020’に示されている。下記で説明するように、複数の位置が決められて、その後でマスク3000上の複数のホール3020を形成するために用いられる。マスク3000は、ボディ3004の外側のエッジを画定する外縁3024を有する。実施例によっては、マスク3000は開口部3028を有し、開口部3028は、外縁3024と、外縁部3024及び開口部3028の間に位置する非透過部3032とによって少なくとも部分的に囲まれている。
マスク3000は対称であることが好ましく、例えば、マスク軸3036周りに対称である。一実施例では、マスク3000の外縁3024は円形である。一般的に、マスクは略3mmから略8mmの範囲内の直径を有し、略3.5mmから略6mmまでの範囲内であることが多く、一実施例においては、6mm未満である。他の実施例では、マスクは円形であり、4から6mmの範囲内の直径を有する。他の実施例では、外縁3024は略3.8mmの直径を有する。実施例によっては、マスクは非対称であったり、マスク軸周りに対称でなかったりして、例えば、目の解剖に関して選択された位置にマスクを配置するか維持することが可能になる等の利点が生じる。
マスク3000のボディ3004は、目の特定の組織領域に結合されるように設計されていてもよい。マスク3000のボディ3004は、マスクが適用される目の元々の組織領域に一致するように設計されていてもよい。例えば、マスク3000が曲率を有する目の構造に結合される場合、ボディ3004には、組織の曲率に対応するマスク軸3036に沿った或る曲率が与えられる。例えば、マスク3000が配置される環境の一つは、患者の目の角膜内部である。角膜は、例えば成人等の識別可能なグループ内部での略一定の平均値の周りで、人によって異なる曲率を有する。マスク3000を角膜内部適用する際には、マスク3000の前方及び後方表面3008、3012の少なくとも一つに、マスク3000が適用される角膜の層の曲率に対応する曲率が与えられる。
実施例によっては、マスク3000は、所望の量の光パワーを有する。前方及び後方表面3008、3012の少なくとも一方に曲率を与えることによって、光出力が与えられる。一実施例では、前方及び後方表面3008、3012に異なる量の曲率が与えられる。この実施例では、マスク3000の厚さは、外縁3024から開口部3028までで変化する。
一実施例では、ボディ3004の前方表面3008及び後方表面3012の一つが略平面状である。平面状の実施例の一つにおいては、平面状の表面に亘って非常に小さな一様な曲率が測定されるか、曲率は測定されない。他の実施例では、前方及び後方表面3008、3012の両方が略平面状である。一般的に、インレイの厚さは、略1マイクロメートルから略40マイクロメートルの範囲内であり、略5マイクロメートルから略20マイクロメートルの範囲内であることが多い。一実施例では、マスク3000のボディ3004は、略5マイクロメートルと略10マイクロメートルとの間の厚さ3038を有する。一実施例では、マスク3000の厚さ3038は略5マイクロメートルである。他の実施例では、マスク3000の厚さ3038は略8マイクロメートルである。他の実施例では、マスク3000の厚さ3038は10マイクロメートルである。
角膜の比較的浅い場所(例えば角膜の前方表面近傍)にマスク3000が埋め込まれる応用においては、一般的に、マスクが薄くなるほど、より適切なものとなる。より薄いマスクにおいては、ボディ3004は十分にフレキシブルであり、マスク3000の光学性能に悪影響を及ぼさずに、マスクが結合される構造の曲率を取ることができる。一実施例では、マスク3000は、角膜の前方表面の下略5μmに埋め込まれるように設計されている。他の実施例では、マスク3000は、角膜の前方表面の下略65μmに埋め込まれるように設計されている。他の実施例では、マスク3000は、角膜の前方表面の下略125μmに埋め込まれるように設計されている。角膜にマスク3000を埋め込むことに関する更なる詳細は、図53A〜54Cに関連して上述してある。
略平面状のマスクは、非平面状のマスクに対して複数の利点を有する。例えば、特定の曲率に形成されるマスクよりも、略平面状のマスクはより簡単に製造可能である。特に、マスク3000に曲率を導入する際の工程段階が省略される。また、略平面状のマスクは、幅広い患者人口分布(または、広い患者人口の様々な部分集合)において用いることができる。何故ならば、略平面状のマスクは、患者自身の角膜の曲率を用いて、ボディ3004に適切な量の曲率を導入するからである。
実施例によっては、目に結合される方法及び位置に対して、マスク3000が具体的に設計されている。特に、マスク3000は、コンタクトレンズとして目の上に適用される場合にはより大きくなり、目の角膜の後方内部、例えば目の水晶体表面の近傍に適用される場合にはより小さなものになる。上述のように、マスク3000のボディ3004の厚さ3038は、何処にマスク3000が埋め込まれるのかに基づいて、異なる。角膜のより深層に埋め込まれる場合には、より厚いマスクが利点を有する。厚いマスクはいくつかの応用において利点を有する。例えば、一般的に扱い易く、製造及び埋め込みが容易である。厚いマスクは、薄いマスクよりも、予め形成された曲率を有することから受ける利益が大きい。適用された時に元々の組織の曲率と一致するように設計されているのであれば、埋め込まれる前には、ほとんど曲率を有さないか曲率を有さないように、厚いマスクを設計することも可能である。
開口部3028は、マスク軸3036に沿って入射する実質的に全ての光を透過するように設計されている。非透過部3032は、開口部3028の少なくとも一部を取り囲み、そこに入射する光の透過を実質的に妨げる。上述のマスクに関連して説明したように、開口部3028は、ボディ3004内の貫通孔であってもよいし、実質的に光を透過する(例えば、透明な)部分であってもよい。一般的に、マスク3000の開口部3028は、マスク3000の外縁3024内部に画定される。開口部3028は、例えば、上述の図6〜42に関連して説明したような、適切な構造であれば、どのような構造をも取ることができる。
一実施例では、開口部3028は、略円形であり、マスク3000の略中央に位置する。開口部3028のサイズは、老眼に苦しむ患者の目の焦点深さを増大させる有効なサイズであれば、どのようなサイズでもよい。例えば、開口部3028は円形であって、略2.2mm未満の直径を有する。他の実施例では、開口部の直径は略1.8mmと略2.2mmとの間である。他の実施例では、開口部3028は円形であり、略1.8mm以下の直径を有する。大抵の場合、開口部は略1.0mmから略2.5mmの範囲内の直径を有し、略1.3mmから略1.9mmの範囲内であることが多い。
非透過部3032は、マスク3000を介する放射エネルギーの透過を妨げるように設計されている。例えば、非透過部3032は、少なくとも一部のスペクトルの入射する放射エネルギーの透過を、実質的に全て妨げる。一実施例では、非透過部3032は、例えば人間の目に見える電磁スペクトル内の放射エネルギーといった実質的に全ての可視光の透過を妨げるように設計されている。実施例によっては、非透過部3032は、人間にとって見える範囲外の放射エネルギーの透過を実質的に妨げる。
図3に関連して上述したように、非透過部3032を介する光の透過を妨げることによって、網膜と中心窩に達する光であって、網膜及び中心窩で収束して鮮明な像を形成しない光の量が減少する。上述の図4に関連して説明したように、開口部3028のサイズは、そこを介して透過した光が網膜または中心窩で略収束するようなサイズになっている。従って、マスク3000がない場合よりも、より鮮明な像が目に与えられる。
一実施例では、非透過部3032は、入射光の略90パーセントの透過を妨げる。他の実施例では、非透過部3032は、全入射光の略92パーセントの透過を妨げる。マスク3000の非透過部3032は、光の透過を妨げるように不透明となるように設計されていてもよい。ここで、“不透明”とは、広範な意味を持つ用語のことであり、例えば光エネルギー等の放射エネルギーを妨げることができるという広範な意味を持つ用語のことであり、光の全てまたは少なくとも実質的な部分を吸収するかブロックする構造及び配置も含まれる。一実施例では、ボディ3004の少なくとも一部が、入射光の99パーセント超に対して不透明であるように設計されている。
上述のように、非透過部3032は、入射光を吸収せずに、光の透過を妨げるように設計されていてもよい。例えば、マスク3000を反射性であるように形成したり、本願でその全文が参照される特許文献4(2003年4月29日発光)に開示されているようなより複雑な方法で光に作用するように形成したりすることもできる。
上述のように、実施例によっては、マスク3000は、複数のホール3020を備えた栄養輸送構造も有している。複数のホール3020(または他の輸送構造)が存在することによって、より多くの光がマスク3000を介する可能性があり、非透過部3032を介する光の透過が影響を受ける。一実施例では、非透過部3032は、ホール3020が存在しない場合、マスク3000を介する入射光の略99パーセント以上を吸収するように設計されている。複数のホール3020が存在することによって、より多くの光が非透過部3032を通過するようになって、非透過部3032に入射する光の略92パーセントだけが、非透過部3032を通過しないようになる。ホール3020は、より多くの光が非透過部を介して網膜に向かうようにするので、目の焦点深さにおける開口部3028の利点を減じ得る。
開口部3028の焦点深さの利点がホール3020によって減じることは、ホール3020の栄養輸送の利点とバランスが取られている。一実施例では、輸送構造3016(例えばホール3020)は、第一角膜層(つまり、マスク3000の前方表面3008に近接する角膜層)から第二角膜層(つまり、マスク3000の後方表面3012に近接する角膜層)への元々の栄養の流れを実質的に維持することが可能である。複数のホール3020は、前方表面3008と後方表面3012の間のマスク3000を栄養が通過できるように設計されている。上述のように、図60に示されるマスク3000のホール3020は、マスク3000のどの位置にも配置することができる。下記で説明される他のマスクの実施例では、栄養輸送構造の実質的に全てが、マスクの一つ以上の領域に配置される。
図60のホール3020は、マスク3000の前方表面3008及び後方表面3012の間に少なくとも部分的に延伸する。一実施例では、ホール3020のそれぞれは、ホール入口3060とホール出口3064を有する。ホール入口3060は、マスク3000の前方表面3008に近接して配置されている。ホール出口3064は、マスク3000の後方表面3012に近接して配置されている。一実施例では、ホール3020のそれぞれは、マスク3000の前方表面3008と後方表面3012の間の全距離に延伸している。
輸送構造3016は、マスク3000を横切る一つ以上の栄養の輸送を維持する。マスク3000の輸送構造3016は、マスク3000を横切る一つ以上の栄養の十分な流れを提供し、第一及び第二角膜層(例えば、層1410及び層1430)の少なくとも一つにおいて栄養が不足することを防止する。近接する角膜層の生存能力に対して特に重要な栄養の一つはグルコースである。マスク3000の輸送構造3016によって、マスク3000を横切る第一及び第二角膜層の間の十分なグルコースの流れが提供され、近接する角膜組織に害を及ぼすグルコースの不足が防止される。従って、マスク3000は、近接する角膜層の間の栄養の流れ(例えば、グルコースの流れ)を実質的に維持することができる。一実施例では、栄養輸送構造3016は、第一角膜層及び第二角膜層の少なくとも一つの近接する組織内のグルコース(または他の生体物質)が略4パーセント以上不足することを防止する。
ホール3020は、マスク3000を横切る栄養の輸送を維持するように設計されていてもよい。一実施例では、ホール3020は略0.015mm以上の直径を有するように形成される。他の実施例では、ホールは略0.020mmの直径を有する。他の実施例では、ホールは略0.025mmの直径を有する。他の実施例では、ホール3020は略0.020mmから略0.029mmの範囲内の直径を有する。複数のホール3020におけるホールの数は、全てのホール3020のホール入口3060の表面積の和が、マスク3000の前方表面3008の表面積の略5パーセント以上となるように選択される。他の実施例では、ホール3020の数は、全てのホール3020のホール出口3064の表面積の和が、マスク3000の後方表面3012の表面積の略5パーセント以上となるように選択される。他の実施例では、ホール3020の数は、全てのホール3020のホール出口3064の表面積の和が、マスク3000の後方表面3012の表面積の略5パーセント以上となり、全てのホール3020のホール入口3060の表面積の和が、マスク3000の前方表面3008の表面積の略5パーセント以上となるように選択される。
ホール3020のそれぞれは、比較的一定の断面積を有してもよい。一実施例では、ホール3020のそれぞれの断面の形状は略円形である。ホール3020のそれぞれは、前方表面3008と後方表面3012との間を延伸する円筒形状を有してもよい。
実施例によっては、ホール3020の相対的な位置が重要である。上述のように、マスク3000のホール3020は、例えば六角形パターンに配置されるように六角形に詰め込まれる。特に、この実施例では、ホール3020のそれぞれは、略一定の距離(ホールピッチ3072とも称す)だけ近接するホール3020から離隔されている。一実施例では、ホールピッチ3072は略0.062mmである。
六角形パターンにおいては、対称中心線間の角度は略60度である。ホールのいずれかの線に沿ったホールの間隔は、一般的に略30マイクロメートルから略100マイクロメートルの範囲内であり、一実施例では、略60マイクロメートルである。ホールの直径は、一般的に略10マイクロメートルから略100マイクロメートルの範囲内であり、一実施例では、略20マイクロメートルである。ホールの間隔及び直径は、通り抜ける光の量を制御したい場合に関係してくる。当業者にとって自明であるように、光の透過率はホールの表面積の和の関数である。
図60の実施例の有利な点は、栄養が第一角膜層から第二角膜層へと流れることを可能にするという点である。本発明者は、輸送構造3016が存在することによって、不の視覚効果が生じる可能性があることを発見した。例えば、ホール3020の六角形に詰め込まれた配置によって、患者に見える回折パターンが発生する場合がある。例えば、六角形のパターンを有するホール3020と共に中心線を取り囲む複数のスポット(例えば6つのスポット)を患者が観察する可能性がある。
輸送構造の有利な配置を生じさせて、回折パターン及び他の有害な視覚効果がマスクの他の視覚的な利点を実質的に妨げないようにする様々な方法を、本発明者は発見した。回折効果が観察される一実施例では、栄養輸送構造は、像全体に亘って一様に回折光を拡散させることによって、観察されるスポットを除去するように配置される。他の実施例では、栄養輸送構造は、回折パターンを実質的に除去するまたはパターンを像の周縁に押しやるパターンを採用する。
図62B、62Cはマスク3000に適用されるホール4020のパターンの二つの実施例を示す。マスクはこのパターンが適用されていなければ、マスク3000と同様のものである。図62B、62Cのホールパターンのホール4020は、ランダムなホール間隔またはホールピッチで互いに間隔を空けて配置されている。下記の他の実施例では、ホールは、例えばランダムな量ではない非一様な量で、互いに間隔を空けて配置されている。一実施例では、ホール4020は実質的に一様な形状(実質的に一定の断面積を有する円筒状のシャフト)を有する。図62Cには、ランダムな間隔で配置された複数のホール4020が示されており、ホール密度は図62Bのホール密度よりも高い。一般的に、ホールを有するマスクボディの割合が高いほど、元々の組織と同じ様な方法で、マスクがより多くの栄養を輸送する。ホール面積の割合を高める一つの方法は、ホール密度を増大させることである。また、ホール密度が増大すると、より小さなホールによって、密度が低くより大きなホールによって達成されるとの同程度の栄養輸送が達成される。
図63Aは、実質的にはマスク3000と同様の他のマスク4000aの一部を示すが、下記の点が異なる。マスク4000aは、図67A〜67D及びその変形例に関連して後述するような適切な方法によって、形成可能である。マスク4000aは複数のホール4020aを有する。ほとんどの数のホール4020aは、サイズが一様ではない。ホール4020aは、断面の形状が一様であってもよい。一実施例では、ホール4020aの断面の形状は略円形である。ホール4020aは、形状が円形で、ホール入口からホール出口まで同一の直径を有してもよく、そうでなければ、例えばサイズ等の少なくとも一側面が非一様である。相当の数のホールのサイズをランダムに異ならせることが好ましいこともある。他の実施例では、ホール4020aは、サイズが非一様(例えばランダム)であり、非一様(例えばランダム)な間隔で配置されている。
図63Bは、実質的にはマスク3000と同様の他のマスク4000bの他の実施例を示すが、下記の点が異なる。マスク4000bもまた、図67A〜67D及びその変形例に関連して後述するような適切な方法によって、形成可能である。マスク4000bはボディ4004bを有する。マスク4000bは、ファセットの向きが非一様の複数のホール4020bを有する。特に、ホール4020bのそれぞれは、マスク4000bの前方表面4008bに配置されたホール入口を有する。ホール入口のファセットは、ホール入口を取り囲むマスク4000bのボディ4004bの一部を画定する。ファセットは、前方表面4008bではホール入口の形状である。一実施例では、ファセットの大部分または全ては、例えば矩形などの細長い形状を有し、長軸と、長軸に垂直な短軸を有する。ファセットは、形状が実質的に一様であってもよい。一実施例では、ファセットの向きは一様ではない。例えば、ファセットの相当の数の向きがランダムである。実施例によっては、ファセットは形状が非一様(例えばランダム)であり、向きも非一様(例えばランダム)である。
他の実施例では、上述のいずれかのような開口部を有するマスクによって供される視力改善性を減少させるパターンや、目に見える回折パターンを生じさせてしまうホールの傾向を減じるように、複数のホールの少なくとも一つの側面(上述の側面の一つ以上を含む)を変化させる。例えば、少なくとも大部分の数のホールのサイズ、形状及び向きをランダムに変化させるか、そうでなければ非一様に変化させる。
図64は、実質的には上述のマスクのいずれかと同様のマスク4200の他の実施例を示すが、下記の点が異なる。マスク4200もまた、図67A〜67D及びその変形例に関連して後述するような適切な方法によって、形成可能である。マスク4200はボディ4204を有する。ボディ4204は外縁領域4205と、内縁領域4206と、ホール領域4207とを有する。ホール領域4207は、外縁領域4205と内縁領域4206との間に位置する。また、ボディ4204は開口部領域も有するが、開口部(下記で説明する)は貫通孔ではない。また、マスク4200は栄養輸送構造4216も有する。一実施例では、栄養輸送構造は、複数のホール4220を有する。ホール4220の少なくとも大部分(例えば、ホールの全て)は、ホール領域4207に配置されている。上述のように、栄養輸送構造4216の一部のみが、簡単のため示されている。しかしながら、ホール4220がホール領域4207全体に亘って配置されてもよいことは理解されたい。
外縁領域4205は、マスク4200の外縁4224から、マスク4200の選択された外周4225まで延伸してもよい。マスク4200の選択された外周4225は、マスク4200の外縁4224から選択された半径方向の距離に位置する。一実施例では、マスク4200の選択された外周は、マスク4200の外縁4224から略0.05mmに位置する。
内縁領域4206は、例えばマスク4200の開口部4228に近接する内周4226等の内側の位置から、マスク4200の選択された内周4227まで延伸してもよい。マスク4200の選択された内周4227は、マスク4200の内縁4226から選択された半径方向の距離に位置する。一実施例では、マスク4200の選択された内周4227は、内縁4226から略0.05mmに位置する。
マスク4200は、複数の位置をランダムに選択して、その位置に対応してマスク4200上にホールを形成するプロセスによって製造されたものであってもよい。また、下記で詳述するように、本方法には、選択された位置が一つ以上の基準を満たすかどうかを決定することが含まれてもよい。例えば、一つの基準によって、ホールの全て、少なくとも大多数または少なくとも実質的な部分が、内縁または外縁領域4205、4206に対応する位置に形成されることが禁止される。他の基準によって、ホール4220の全て、少なくとも大多数または少なくとも実質的な部分が、互いに近づき過ぎて形成されることが禁止される。このような基準を用いて、例えば近接するホール間の最短距離等の壁の厚さが所定の値未満にならないように保証される。一実施例では、壁の厚さは、略20マイクロメートル未満にならないようにされる。
図64の実施例の変形例では、外縁領域4205が省略されて、ホール領域4207が、内縁領域4206から外縁4224まで延伸する。図64の実施例の他の変形例では、内縁領域4206が省略されて、ホール領域4207が、外縁領域4205から内縁4226まで延伸する。
図61Bは、マスク3000と同様のマスク4300を示すが、下記の点が異なる。マスク4300は、図67A〜67D及びその変形例に関連して後述するような適切な方法によって、形成可能である。マスク4300は、前方表面4308及び後方表面4312を有するボディ4304を有する。また、一実施例では、マスク4300は、複数のホール4320を有する栄養輸送構造4316を有する。ホール4320は、栄養の輸送は提供されるが、ホールを介した中心窩に近接した網膜の位置への放射エネルギー(例えば光)の透過を実質的に妨げるように、ボディ4304に形成される。特に、マスク4300の結合されている目が見ようとする対象物の方を向いた時に、ホール4320に入ってくるその対象物の像を伝える光が、中心窩近傍で終わる経路に沿ってホールから出ることができないように、ホール4320は形成される。
一実施例では、ホール4320はそれぞれ、ホール入口4360とホール出口4364とを有する。ホール4320のそれぞれは、輸送軸4366に沿って延伸する。輸送軸4366は、ホール4320を介する前方表面4308から後方表面4312への光の伝播を実質的に妨げるように形成される。一実施例では、少なくとも実質的な数のホール4320は、マスク4300の厚さよりも小さな輸送軸4366に対するサイズを有する。他の実施例では、少なくとも実質的な数のホール4320は、マスク4300の厚さよりも小さな前方表面または後方表面4308、4312(例えばファセット)の少なくとも一つの周囲の長さが最も長くなる。実施例によっては、輸送軸4366は、マスク軸4336と或る角度を成すように形成され、ホール4320を介した前方表面4308から後方表面4312への光の伝播を実質的に妨げる。他の実施例では、ホール入口4360の射影の多くがホール出口4364と重ならないように、一つ以上のホール4320の輸送軸4366が、マスク軸4336と十分大きな角度を成すように形成される。
一実施例では、ホール4320は、断面が円形であり、略0.5マイクロメートルから略8マイクロメートルの間の直径を有し、輸送軸は5から85度の角度である。ホール4320のそれぞれの長さ(例えば、前方表面4308と後方表面4312との間の距離)は、略8から略92マイクロメートルである。他の実施例では、ホール4320の直径は略5マイクロメートルであり、輸送角度は略40度以上である。ホール4320の長さが増大するので、追加ホール4320を有することが望ましい。場合によっては、ホールが長くなりマスク4300を介する栄養の流量が減少するという傾向が、追加ホール4320によって、相殺される。
図61Cは、マスク3000と同様のマスク4400の他の実施例を示すが、下記の点が異なる。マスク4400は、図67A〜67D及びその変形例に関連して後述するような適切な方法によって、形成可能である。マスク4400は、前方表面4408と、前方表面4408に近接する第一マスク層4410と、後方表面4412と、後方表面4412に近接する第二マスク層4414と、第一マスク層4410と第二マスク層4414との間に位置する第三層4415とを有するボディ4404を有する。また、マスク4400は、一実施例では複数のホール4420を有する栄養輸送構造4416も有する。ホール4420は、上述のようにマスクを横切って栄養が輸送されるが、ホール4420を介した中心窩に近接した網膜の位置への放射エネルギー(例えば光)の透過を実質的に妨げるように、ボディ4404に形成される。特に、マスク4400の結合されている目が見ようとする対象物の方を向いた時に、ホール4420に入ってくるその対象物の像を伝える光が、中心窩近傍で終わる経路に沿ってホールから出ることができないように、ホール4420は形成される。
一実施例では、ホール4420の少なくとも一つは、その少なくとも一つのホールを介する前方表面から後方表面への光の伝播を実質的に妨げるような非線形な経路に沿って延伸する。一実施例では、マスク4400は第一輸送軸4466aに沿って延伸する第一ホール部4420aを有し、第二マスク層4414は第二輸送軸4466bに沿って延伸する第二ホール部4420bを有し、第三マスク層4415は第三輸送軸4466cに沿って延伸する第三ホール部4420cを有する。第一、第二及び第三輸送軸4466a、4466b、4466cは同一直線上にないことが好ましい。一実施例では、第一及び第二輸送軸4466a、4466bは平行であるが、第一選択量の分だけずらされている。一実施例では、第二及び第三輸送軸4466b、4466cは平行であるが、第二選択量の分だけずらされている。図の例では、輸送軸4466a、4466b、4466cのそれぞれは、ホール部4420a、4420b、4420cの幅の半分だけずらされている。従って、ホール部4420aの最も内側のエッジは、軸4336からホール部4420bの最も外側のエッジまでの距離よりも等しいかそれよりも長い距離の分だけ、軸4436から間隔が空けられている。この間隔によって、光が、ホール4420を介して前方表面4408から後方表面4412へと通過することが実質的に妨げられる。
一実施例では、第一及び第二量は、そこを介する光の透過を実質的に妨げるように選択される。ずらされる第一及び第二量は、適切な方法で達成される。所望のずれを有するようにホール部4420a、4420b、4420cを形成するために一つの方法は、積層構造とすることである。上述のように、マスク4400は、第一層4410と第二層4420と第三層4415とを有する。図61Cでは、マスク4400は三層で形成可能であるものとして示されている。他の実施例では、マスク4400は、三層よりも多層に形成される。より多層にすることによる有利な点は、ホール4420を介して網膜上に光が透過する傾向が更に減少するという点である。こうすることは、マスク4400の視力に対する利点を減じるパターンを観察するか知覚する傾向を減少させるという利点を有する。更なる利点は、マスク4400を介する光が少なくなるので、ピンホールサイズの開口部が形成されることによって、焦点深さの増強効果が増大する点である。
前述のマスクの実施例のいずれかにおいては、上述のように、マスクのボディは、十分な栄養輸送を提供し、例えば回折等の負の光学効果を実質的に防止するように選択された材料から形成可能である。様々な実施例において、マスクは連続気泡発泡体から形成される。他の実施例では、マスクは発泡性固体材料から形成される。
図62B及び62Cに関連して上述したように、栄養輸送のために、ホールの多様なランダムパターンが有利に提供され得る。実施例によっては、或る側面において非一様である定型的なパターンで十分である。ホールの非一様な側面は、何らかの適切な方法で提供される。
一方法の第一段階においては、複数の位置4020’を発生させる。位置4020’は、非一様なパターンまたは定型的なパターンを有する一組の座標である。位置4020’をランダムに発生させてもよいし、数学的な関係(例えば、固定間隔で配置したり、数学的に定義可能な量だけ間隔を空けて配置する等)によるものであってもよい。一実施例では、一定のピッチまたは間隔を空けて配置されて、六角形に詰め込まれるように位置が選択される。
第二段階では、複数の位置4020’の中の一部の組の位置が、マスクの性能特性を維持するように変更される。性能特性は、マスクの何らかの性能特性である。例えば、性能特性は、マスクの構造の完全性に関する。複数の位置4020’がランダムに選択される場合、一部の組の位置を変更するプロセスによって、結果として生じるマスク内のホールのパターンは、“擬ランダム”パターンになる。
第一段階で六角形に詰め込まれたパターン(例えば図62Aの位置3020’)が選択された場合、一部の組の位置を、第一段階で選択された初期位置から移動させる。一実施例では、一部の組内のそれぞれの位置を、ホール間隔の一部に等しい量だけ移動させる。例えば、一部の組内のそれぞれの位置を、ホール間隔の四分の一に等しい量だけ移動させる。一部の組の位置を一定量移動させる場合、移動される位置は、ランダムまたは擬ランダムに選択されることが好ましい。他の実施例では、一部の組の位置を、ランダムまたは擬ランダムな量の分だけ移動させる。
一方法では、マスクの外周と外周から略0.05mmの選択された円周方向の距離との間に延伸する外縁領域が画定される。他の実施例では、マスクの開口部と開口部から略0.05mmの選択された円周方向の距離との間に延伸する内縁領域が画定される。他の実施例では、マスクの外周と選択された円周方向の距離との間に延伸する外縁領域が画定され、マスクの開口部と開口部から選択された円周方向の距離との間に延伸する内縁領域が画定される。一方法では、一部の組の位置は、内縁領域または外縁領域にホールが形成されることになる位置から排除されるように変更される。外縁領域及び内縁領域の少なくとも一つの内部の位置を排除することによって、これらの領域におけるマスクの強度が上昇する。内縁領域及び外縁領域を強化することによって、複数の利点が得られる。例えば、製造時または患者に適用される時に、マスクに損傷を与えずに、より容易にマスクを扱えるようになる。
他の実施例では、一部の組の位置を、ホール間隔の最大限界値または最小限界値と比較することによって、変更する。例えば、二つの位置のいずれの間隔も最小値よりも近づかないように保証されていることが望ましい。実施例によっては、こうすることが、近接するホール間の間隔に対応する壁の厚さが最小値よりも小さくならないように保証するために重要である。上述のように、一実施例では、間隔の最小値は略20マイクロメートルであり、従って、壁の厚さは略20マイクロメートル未満にはならない。
他の実施例では、一部の組の位置が変形され、及び/又は、位置のパターンが、マスクの光学特性を維持するために増強される。例えば、光学特性は不透明度であり、一部の組の位置を、マスクの非透過部の不透明度を維持するために変更する。他の実施例では、一部の組の位置を変更して、ボディの第一領域内のホール密度とボディの第二領域内のホール密度を比較して等しくする。例えば、マスクの非透明部の第一及び第二領域に対応する位置は識別可能である。一実施例では、第一領域及び第二領域は、略等しい面積の円弧状領域(例えばウェッジ)である。第一領域に対応する位置に対して、位置の第一面密度(例えば平方インチ当たりの位置の数)が計算されて、第二領域に対応する位置に対して、位置の第二面密度が計算される。一実施例では、第一及び第二面密度の比較に基づいて、第一または第二領域のいずれかに少なくとも一つの位置が追加される。他の実施例では、第一及び第二面密度の比較に基づいて、少なくとも一つの位置が除去される。
マスクの栄養輸送を維持するために、一部の組の位置が変更され得る。一実施例では、一部の組の位置が、グルコースの輸送を維持するために変更される。
第三段階では、変更、増強、または、変更及び増強された位置のパターンに対応するマスクのボディの位置に、ホールが形成される。ホールは、目に見える回折パターンを発生させずに、第一層から第二層までの元々の栄養の流れを実質的に維持するように設計されている。
《6. 患者を処置する更なる方法》
上述のように、本願で開示されるように目にマスクを適用して患者を処置することに対しては、様々な方法が特に適切である。例えば、実施例によっては、図55の外科用システム2000は、マスクを適用する手術中に、外科医に対して投影された像の形状で目に見える手掛かりを与えるマーキングモジュール2024を採用する。これに加えて、患者を処置するいくつかの方法においては、マーキングされた参照点の助けを借りて、インプラントの位置決めを行うことが含まれる。こうした方法が、図65〜66Aに例示されている。
一方法では、角膜5004にインプラント5000を配置することによって、患者を処置する。角膜の弁5008が持ち上げられて、角膜の5004内の表面(例えば、角膜内表面)が露出される。適切な器具または方法を用いて、角膜の弁5008を持ち上げて、角膜5004内の表面を露出することが可能である。例えば、ブレード(マイクロ角膜切開刀)、レーザ、または電気外科器具を用いて、角膜の弁を形成する。角膜5004上の参照点5012が識別される。その後、参照点は、下記で説明される方法の一つで、マーキングされる。インプラント5000は、角膜内表面上に配置される。一実施例では、その後、弁5008は閉じられて、インプラント5000の少なくとも一部を覆う。
一方法では、露出される角膜の表面は、支質表面である。支質表面は、角膜の弁5008の上にあってもよく、そこから角膜の弁5008が取り外された露出された表面の上にあってもよい。
参照点5012は、何らかの適切な方法で識別可能である。例えば、上述の位置合わせ装置及び方法を用いて、参照点5012が識別可能である。一方法では、参照点5012を識別することには、光点を照らすことが含まれる(例えば、赤色光等の可視光に対応する放射エネルギーの全てまたは離散的な部分によって形成される光のスポット)。上述のように、参照点を識別することには、角膜内表面上に液体(例えば蛍光染料や他の染料)を配置することが更に含まれてもよい。参照点5012を識別することには、本願で開示される方法のいずれかを用いた位置合わせが含まれることが好ましい。
上述のように、様々な方法を用いて、識別された参照点をマーキングすることができる。一方法では、角膜に染料を加えることによって、または角膜上に既知の反射特性を有する物質を散布することによって、参照点がマーキングされる。上述のように、染料は、放射エネルギーと作用して、マーキングターゲットまたは他の目に見える手掛かりの視認性を増大させる物質であってもよい。参照点は、適切な器具を用いて染料によってマーキングされる。一実施例では、器具は、例えば上皮の前方層等の角膜層内に食い込んで、角膜層内部に細いインクの線を供給するように設計されている。器具は、上皮内部に食い込む鋭い形状であってもよい。一応用では、器具は、上述の染料が目に対して軽く押されるように供給されるように設計されている。こうすることの利点は、目の中の印を大きくしない点である。他の方法では、参照点は、染料を追加的に供給するかまたは供給せずに、角膜表面上に印(例えば、物理的なくぼみ)を付けることによって、マーキングされる。他の方法では、参照点は、例えばマーキングターゲット照明器等の光源または他の放射エネルギー源で照らして、光を角膜上に投影する(例えばマーキングターゲットを投影する)ことによって、参照点がマーキングされる。
参照点をマーキングするための上述の方法のいずれかを、例えば、目の視線や視軸等の目の軸の位置を示すマークを形成する方法と組み合わせてもよい。一方法では、マークは、視軸と角膜表面との交点の近傍を示す。他の方法では、マークは、視軸と角膜表面との交点周りに放射状に対称に配置されるように形成される。
上述のように、方法によっては、角膜内表面上にマークを形成することが含まれる。マークは、如何なる適切な方法で形成されてもよい。一方法では、マークは、角膜内表面に対してインプラントを押すことによって形成される。インプラントによって、マスクの配置を容易にするサイズと形状のくぼみが形成される。例えば、一形態として、インプラントは、埋め込まれるマスクの外側の直径よりも僅かに大きな直径を有する円形のリング(例えば、細い染料の線、または、物理的なへこみ、または、その両方)が形成されるように設計されている。円形のリングは、略4mmから略5mmの間の直径を有するように形成可能である。一方法では、角膜内表面は、角膜の弁5008の上に存在する。他の方法では、角膜内表面は、そこから弁が取り除かれる角膜の露出された表面上に存在する。この露出された表面は、組織床と称されることもある。
他の方法では、角膜の弁5008が持ち上げられて、その後、角膜5004の近接する表面5016上に置かれる。他の方法では、角膜の弁5008は、例えばスポンジ等の取り外し可能な支持体5020の上に置かれる。一方法では、取り外し可能な支持体は、角膜の弁5008が負の曲率を維持するように設計されている表面5024を有する。
図65は、マーキングされた参照点5012が、角膜内表面上にインプラントを配置することにおいて役立つことを示す。特に、マーキングされた参照点5012によって、インプラントを、目の視軸に対して配置することが可能になる。図の実施例では、インプラント5000は、インプラントの中心線(CenterLine)(MCLで示される)がマーキングされた参照点5012を通って延伸するように配置されている。
図65Aは、参照体5012’がリングまたは他の二次元的なマークである他の方法を例示する。このような場合、例えばリングとインプラント5000が同一の中心または略同一の中心を共有する等のように、インプラントの外側のエッジとリングが対応するように、インプラント5000を配置することができる。リング及びインプラント5000は、上述のようにインプラントの中心線MCLが目の視線上に存在するように揃えられることが好ましい。図の方法ではリングが破線で示してあるが、これは、リングが角膜の弁5008の前方表面上に形成されているからである。
一方法では、角膜の弁5008の上にインプラント5000が存在するままで角膜の弁5008を角膜5004に戻すことによって、角膜の弁5008が閉じられる。他の方法では、予め組織床(露出された角膜内表面)の上に配置されていたインプラント5000の上で角膜の弁5008を角膜5004に戻すことによって、角膜の弁5008が閉じられる。
角膜内表面が支質表面である場合、インプラント5000は、支質表面上に配置される。インプラント5000の少なくとも一部が覆われる。方法によっては、支質表面上のインプラント5000を有する弁を、角膜5004に戻して支質表面を覆うことによって、インプラント5000が覆われる。一方法では、上皮層を持ち上げて支質を露出させることによって、支質表面が露出される。他の方法では、上皮層を取り除いて支質を露出させることによって、支質表面が露出される。方法によっては、上皮層を戻して少なくとも部分的にインプラント5000を覆う追加的な段階が実施される。
応用によっては、弁5008を閉じて、インプラント5000の少なくとも一部を覆った後で、インプラント5000がある程度再配置される。一方法では、インプラント5000に圧力が加えられて、参照点5012に合うようにインプラントを移動させる。圧力は、インプラント5000のエッジ近傍の角膜の前方表面に加えることができる(例えば、インプラント5000の真上に、インプラント5000の外縁の隆起部の上と外側に、または、インプラント5000の外縁の隆起部の上と内側に加えることができる)。これによって、インプラントが、圧力が加えられるエッジ近傍から僅かに移動する。他の方法では、圧力がインプラントに直接加えられる。参照点5012が弁5008の上にマーキングされている場合、または、参照点5012が組織床上にマーキングされている場合には、このようにして、インプラント5000を再配置することができる。細い器具を弁の下またはポケットに挿入して、インレイを直接移動させることによって、押されることが好ましい。
図66は、角膜5104内、例えば角膜のポケット5108内にインプラント5100を配置する方法によって、患者が処置される様子を示す。適切な器具または方法を用いて、角膜のポケット5108が形成される。例えば、ブレード(マイクロ角膜切開刀)、レーザ、または電気外科器具を用いて、角膜5104内にポケットが形成される。参照点5112は、角膜5104上で識別される。参照点は、例えば本願で開示されるような適切な方法によって、識別可能である。参照点5112は、例えば本願で開示されるような適切な方法によって、マーキングされる。角膜のポケット5108が形成されて、角膜内表面5116が露出される。例えば、角膜5104の前方表面から略50マイクロメートルないし略300マイクロメートルの範囲内の深さ等の適切な深さに、角膜のポケット5108が形成される。インプラント5100は、角膜内表面5116上に配置される。マーキングされた参照点5112は、角膜内表面5116上にインプラント5100を配置するのに役立つ。マーキングされた参照点5112によって、インプラント5100を、上述のように、目の視軸に対して配置することが可能になる。図の実施例では、インプラント5100の中心線MCLがマーキングされた参照点5112の上または近傍を通って延伸するように、インプラント5100が配置されている。
図66Aは、参照体5112’がリングまたは他の二次元的なマークである他の方法を例示する。このような場合、例えばリングとインプラント5100が同一の中心または略同一の中心を共有する等のように、インプラントの外側のエッジとリングが対応するように、インプラント5100を配置することができる。リング及びインプラント5100は、上述のようにインプラントの中心線MCLが目の視線上に存在するように揃えられることが好ましい。図の方法ではリングが破線で示してあるが、これは、リングがポケット5108上の角膜5104の前方表面上に形成されているからである。
応用によっては、ポケット5108内にインプラント5100が配置された後で、インプラント5100がある程度再配置される。一方法では、インプラント5100に圧力が加えられて、参照点5112に合うようにインプラントを移動させる。一方法では、インプラント5100に圧力が加えられて、参照点5112に合うようにインプラントを移動させる。圧力は、インプラント5100のエッジ近傍の角膜の前方表面に加えることができる(例えば、インプラント5100の真上に、インプラント5100の外縁の隆起部の上と外側に、または、インプラント5100の外縁の隆起部の上と内側に加えることができる)。これによって、インプラント5100が、圧力が加えられるエッジ近傍から僅かに移動する。他の方法では、圧力がインプラント5100に直接加えられる。
《7. 眼用インプラントの製造方法》
所望の性能を有し、患者の老眼または他の視力欠陥を矯正可能なマスクを、様々な方法を用いて作成することができる。上述のように、実施例によっては、マスクが、可視光に対して少なくとも部分的に不透明でありUVに対して安定であることが望ましいこともある。また、マスクは十分に生体適合性があり、目の組織を傷つけずに目の組織の内部または近傍に配置可能であることが望ましい。また、マスクは比較的薄く、例えば角膜等の目の薄い構造部に埋め込むことができることが望ましい。また、マスクを近接する目の組織に大体調和させて、目の中にマスクが存在することが他人に見えないようにしてもよい。例えば、非反射表面を有するように、マスクを構成することができる。実施例の多くにおいて、マスクは耐腐食性である。実施例によっては、マスクは柔軟で弾力性があり、配置時には圧縮されていて、配置後に非圧縮形状へと膨張するようになっていてもよい。
これに加えて、本発明者は、これらのプロセスまたは方法を本願の他の方法及び構造と組み合わせて、高性能のマスクまたはインプラントを製造可能であることを発見した。例えば、下記の方法を、栄養輸送構造を形成するための上述の方法等と組み合わせることが可能である。一方法では、形成されるマスクは、薄く、微細に孔が穿たれ、人間の目の内部で生体適合性があり、耐腐食性である。一方法では、マスクは、マスクの第一表面(例えば凸状)と第二表面(例えば凹状)との間に延伸する略1000から3000の微細な孔が穿たれている。微細に穿たれた孔は、その横方向の寸法の平均値を略10マイクロメートルから略25マイクロメートルの間にすることができる。
マスクの物理的な寸法は、臨床上の応用と個々の患者に応じて、変更可能である。マスクはワッシャーに似た形状をしており、例えば、内縁と外縁との間に環状部分が画定される。マスクを、略1.5mmの内径、略4mmの外径を有し、略8mmの曲率半径の球形の表面部分と一致するようにすることができる。マスクの曲率は変更可能ではあるが、例えば成人の目の角膜等の解剖学的特徴部の曲率に一致するように選択されることが一般的である。実施例によっては、マスクの曲率半径の範囲を略7.8mmから略8.2mmの範囲内とすることができる。他の実施例においては、マスクの曲率半径の範囲を略7.6mmから略8.4mmの範囲内とすることができる。他の実施例においては、マスクの曲率半径の範囲を略7.4mmから略8.6mmの範囲内とすることができる。他の実施例においては、マスクの曲率半径の範囲を略7.2mmから略8.8mmの範囲内とすることができる。他の実施例においては、マスクの曲率半径の範囲を略7mmから略9mmの範囲内とすることができる。実施例によっては、マスクの曲率半径を、7mm未満にすることができる。他の実施例においては、マスクの曲率半径を、9mm超にすることができる。凸状表面と凹状表面との間のマスクの厚さを略10マイクロメートル以下、または略7マイクロメートル以下とすることができる。この段落で羅列した寸法は例示的なものである。この段落で説明した寸法を、本願のいずれかの箇所で説明される他の寸法や特徴と置き換えてもよい。また、この段落で説明した寸法に、本願のいずれかの箇所で説明される他の寸法や特徴を付け加えてもよい。
一実施例においては、マスクの色は、人間の角膜内に埋め込まれた際に美容学的に許容できるものであり、例えば、環状部分の少なくとも前方側(凸側)の見た目が黒色または暗色である。
上述の特徴や性能は、マスクを形成するのに用いられる物質、マスクのデザイン、用いられる製造方法によるところが大きい。本発明者は、こうした特徴の多くを示すように構成可能な物質の中からいくつかの金属を発見し、また、このような眼用インプラントを作成するのに非常に適した薄膜(例えば金属薄膜)形成プロセスを発見した。特に、本願で説明する物理気相蒸着、スパッタリング、電着または他の同様のプロセスは、金属薄膜の眼用インプラントを作成するのに非常に適している。本願で説明する一層以上の金属層から成るマスクの形成方法は、マスクの視認性を減少するように調節可能であり、また、例えば耐腐食性等の寿命に関する特性を増強可能である。
〈A. 物理気相蒸着を用いたマスクの形成〉
図67A〜67Dは、本願で説明するマスク及びインプラントと同じように老眼を処置するためのマスクまたはインプラントの形成に使用可能な方法を例示する。この方法には、物質の複数の層を形成することが含まれ、その少なくとも一つは、人間の目に適用されるように構成されている。後述のように、物質の複数の層は、リリース層、マスク層、犠牲層の一層以上の組み合わせを含むことができる。実施例によっては、多重マスク層が形成される。下記で詳述するように、一層以上の層を、“美容層”として構成することが可能であるが、この用語は、患者または他人にとって望ましい見た目を与える層または表面を含む広範な意味の用語である。美容層は、患者の目の中でのマスクの視認性を減少させることができる。また、美容層は、マスクから反射する光の量を減少させる“非反射”層として機能することもできる。美容層はマスク層とすることも可能である。後述のように、(例えば少なくとも一つの美容層において)多重マスク層が提供される場合には、一つ以上のマスク層を、マスクの腐食(例えばガルバニック腐食)を減じるまたは防止するように構成することが可能である。また、(例えば少なくとも一つの美容層において)多重マスク層が提供される場合には、一つ以上のマスク層を、ガルバニック腐食や、マスクの寿命を損ね得る他の形態の劣化に対する耐性を実質的に増強するように構成することが可能である。ここで、“犠牲層”という用語は、その一般的な意味で用いられる広範な意味の用語であり、マスクの製造方法において形成される層であって、主にまたは専ら、製造方法の他の側面を容易にするための層を含み、また、プロセスの間に完全にまたは実質的の除去される層を含み、また、マスクの一部とならないこともある。“リリース層”とは、一つの構造部を他の構造部から分離することを容易にすることを目的とした一種の犠牲層であり、例えば、後述のように、基板からマスクを分離する。物質層を形成するために適切であるならば、どのような方法でも利用可能である。まず、薄膜スパッタリングを用いた層の形成方法について説明する。また、薄膜スパッタリングに関連して説明するマスク層を形成するための物質は、マスク層を形成するための他の方法においても使用可能である。使用可能な他の方法については、後で説明する。
(1. 薄膜スパッタリング)
本発明者は、薄膜スパッタリングが、老眼を処置するために人間の目に埋め込まれるマスクを作成するのに都合の良い方法であることを発見した。特に、薄膜スパッタリングは、角膜内インレイを作成するのに適している。薄膜スパッタリング法の多くには、以下の三ステップが含まれる。即ち、1)金属または合金物質を含むターゲットから原子種またはイオン種を発生させる段階、2)その種をガスまたはプラズマ媒体を介してターゲットから基板へと運ぶ段階、3)その種を基板表面上に凝集して固体薄膜を形成する段階である。後述のように、アルゴンガスを用いて、こうしたプロセスを可能にするプラズマを発生させることができる。ターゲットは、どのような金属や金属合金をから成ってもよく、また、基板は、研磨されたシリコンやガラスウェーハや他の適切な物質のウェーハから成ってもよい。他の実施例においては、平坦な基板が層形成のために用いられる。
図67は、マスクまたは他の薄い眼用インプラントを形成するスパッタリングプロセスにおいて使用可能な基板6000の一部の断面図である。基板6000は、マスク形成用特徴部6008を含む上部表面6004を備えている。一実施例では、基板6000は、マスク形成用特徴部6008を少なくとも部分的に取り囲む平坦部分6012も含む。平坦部分6012は、基板6000内の、近接するマスク形成用特徴部の間に位置する領域である。近接するマスク形成用特徴部は示されていないが、このような特徴部は、基板6000に規則的または不規則的に配置可能である。基板6000上に設計されるマスク形成用特徴部の数は、基板6000に適合しているのであれば、いくつでもよい。例えば、方法によっては、基板上に一つまたは二つのマスク形成用特徴部6008を形成することが利点を有する。基板のサイズ及び用いられる方法に応じて、四つ以上のマスク形成用特徴部6008を基板上に形成してもよい。他の方法においては、十六、三十二、六十四またはそれ以上のマスク形成用特徴部6008を基板上に形成することができる。四インチ平方の基板では、百四十四以上のものマスク形成用特徴部6008を基板上に形成可能である。近接するマスク形成用特徴部の配置については、例えば、結晶を効率的に充填する配置のような、充填方法を用いることができる。
マスク形成用特徴部6008は、後続プロセス段階において、マスクが埋め込まれる眼球組織部に適合するような形状のマスクが製造されるように設計可能である。例えば、マスク形成用特徴部6008は、角膜や他の眼の特徴部の曲率に一致するような曲面状プロファイル6016を有する。一実施例では、マスク形成用特徴部6008は、中心軸6024を取り囲む環状表面6020を含む。図67A〜67Dに示した方法では、環状表面は実質的に滑らかであり、結果として平滑層が形成される。例えば、環状表面6020の境界の内側には、開口部や孔や不連続部がない。他の実施例では、環状表面6020は、本願で説明する栄養輸送構造の少なくとも一部を形成するホールや孔や微細穿孔を生じさせるように設計されている。他の実施例では、環状表面6020は、その上に形成されるマスクの所望の表面状態を与えるように設計されていて、所望の調和特性となるように作用する。また、一実施例では、マスク形成用特徴部6008は、その中心軸6024に中心を有する中心領域6028を含む。
図67Aは、マスク形成用特徴部6008の中心を通って延伸しまたその中心軸6024を含む断面における、環状表面6020のプロファイルを示す。環状領域6020のプロファイルには、第一曲面状プロファイル6016a及び第二曲面状プロファイル6016bが含まれる。一実施例では、第一及び第二曲面状プロファイル6016a、6016bは略同じ長さの円弧と略同じ曲率を有する。環状表面6020は、栄養輸送構造の少なくとも一部を形成する孔または微細穿孔を形成するように設計可能である。例えば、プロファイル6016a、6016bは、一つ以上の不連続部やくぼみやホールやウェル等の栄養輸送部形成用特徴部を含むことができ、それらは、プロファイル上に形成される層内の栄養輸送部形成用特徴部での架橋を防止または実質的に防止するように設計されている。ここで、“実質的に防止”とは、栄養輸送部形成用特徴部で生じる架橋が、特徴部近傍の層を傷付けずに後続プロセスによって、除去可能であるという意味である。
一方法では、マスク内の栄養輸送特徴部に対して適切なアスペクト比を与えるように選択された直径を有するホールを設ける。例えば、ホールの直径は、ホールサイズ(例えば直径)を層の厚さで割ったときの比が一より大きくなるような直径とすることができる。他の方法では、ホールの直径は、ホールサイズ(例えば直径)を層の厚さで割ったときの比が略一となるように選択される。栄養輸送構造は、例えば後述するフォトリソグラフィ等の他の方法でも、形成可能である。
環状表面6020を、選択された表面状態を有する前方表面を備えたマスクを形成するように設計することができる。例えば、一方法では、所望の調和特性を与える表面の粗さを備えたマスクが製造される。調和特性は、患者以外の他人に対して部分的または完全にマスクが見えないようにする特性である。一つ以上の金属薄膜層からマスクを形成するために後述の方法において使用可能な物質は、マスクが埋め込まれた時に目に見える表面(例えば、前方表面)の粗さを増大することによって、暗く見えるようにすることができる。方法によっては、マスク表面を粗くすることに加えて、美容層が適用可能であり、例えばマスクの視認性を更に減少させる等の所望の見た目が提供される。後述のように、美容層は、耐腐食性の付与または増強等の追加的な効果を有することができる。マスクの前方表面の粗さは、環状表面6020の粗さを増大させることによって、増大可能である。
マスク形成用特徴部6008は、後続プロセスにおいて環状表面6020上に形成されるマスクのエッジを一つ以上画定するように設計可能である。一実施例では、環状表面6020は、内縁6032及び外縁6036を有する。環状表面6020の内縁及び外縁6032、6036は、後続プロセスで環状表面6020上に形成されるマスクの内縁及び外縁に対応する。方法によっては、内縁及び外縁6032、6036の一方または両方を省くことが可能である。例えば、基板6000上にマスクを形成する段階を、マスクの内縁、マスクの外縁、マスクの外縁及び内縁の両方を画定するプロセスと組み合わせることが可能である。一方法では、内縁6032が省かれる。マスクを形成した後で、例えば、機械加工や切断加工やレーザドリル加工やレーザ切断加工等の適切な方法を用いて、マスクに内縁を設けることが可能である。一方法では、複数のマスク形成用特徴部6008上に形成されたマスクのシートを固定具に固定して、レーザがマスクに次々と当てられて、中心部分を切り出して、内縁を画定する。他の方法では、外縁6036が省かれるが、この場合には、マスクの外縁から延伸するマスクの位置を示す構造部を形成することが望ましい。この方法によって一つ以上のマスクが形成された後に、レーザや他の機械加工器具をマスクに作用させて、マスクの外縁及び/又は位置を示す構造部を画定することが可能である。また、外縁6036を、基板上にマスクを形成している間に位置を示す構造部が画定されるように、修正することができる。例えば、外縁6036は、略円形の部分と、該略円形の部分から外側に向かって延伸する延長部とを含む。本方法や同様の方法を用いて形成可能な位置を示す構造部を備えたマスクの更なる詳細については、“Ocular Inlay With Locator”というタイトルの出願(2005年4月14日出願)において説明されている(代理人整理番号 ACUFO.024A)。
一実施例では、内縁6032は略円形の縁である。一実施例では、外縁6036は略円形の縁である。一実施例では、内縁と外縁6032、6036の両方が略円形であり、中心軸6024上に中心がある。実施例によっては、内縁6032と外縁6036とは異なる形状を有し、例えば、内縁が円形で外縁が非円形、内縁が非円形で外縁が円形といった具合である。他の実施例では、内縁及び外縁6032、6036の少なくとも一つは、中心軸6024上に中心がない。例えば、一実施例では、内縁及び外縁は円形であるが、内縁及び外縁の少なくとも一つは、中心軸6024上に中心がない。結果として、実施例によっては、環状表面6020(及び後続段階でその上に形成されるマスク)は、中心軸6024まわりに非対称になる。内縁及び外縁6032、6036は、他の配置とすることも可能であり、環状表面6020(及び後続段階でその上に形成されるマスク)は、他の形状を有するようになる。本願で説明したマスクのデザインに対応する環状表面6020の他の形状とすることもできる。
基板6000は、シリコンウェーハやガラスやパイレックス(登録商標)のスライドやセラミック物質のウェーハや他の適切な物質や配置を有することができる。基板6000のサイズは重要ではなく、スパッタリング処理チャンバで処理するのに実用的なサイズであればよい。典型的な円形基板ウェーハのサイズは直径が4インチであるが、他のサイズを用いることも可能である。
一実施例では、マスク形成用特徴部6008は、基板6000に形成された環状内側凹部6040及び環状外側凹部6044を含む。一実施例では、内側凹部6040は、U字型のウェルまたはチャネルであり、その横断寸法は、中心軸6024の近くの環状表面6020の内縁6032から延伸する。一実施例では、外側凹部6044は、U字型のウェルまたはチャネルであり、その横断寸法は、中心軸6024から離れた環状表面6020の外縁6036から延伸する。内側凹部6040及び外側凹部6044は、例えば機械研磨や化学エッチング等の多様な方法で形成可能である。
内側及び外側凹部6040、6044の幅及び深さは、後続段階で形成される物質層が、凹部6040、6044間で架橋したり延伸したりしないように十分大きく選択される。架橋を防止する一方法は、凹部6040、6044の幅を、基板6000上に形成される一層の厚さと略等しくすることである。架橋を防止する他の方法は、凹部6040、6044の幅を、基板6000上に形成される一層の厚さよりも大きくすることである。内側及び外側凹部6040、6044によって、物質層を、所望の形状で基板6000上に堆積させることが可能になり、例えば、後続段階におけるマスクの内縁及び外縁を画定する。これによって、マスクを、埋め込まれるのとほぼ同じ形状で堆積(形成)することが可能になる。これによって、マスクの内縁及び外縁を画定する後続プロセスを省けるという利点がある。後述の他のプロセスにおいては、例えば内縁や外縁や曲率等のマスクの側面の少なくとも一つを決める追加的な段階が採用される。
内縁及び外縁6032、6036の寸法と、第一及び第二曲面状プロファイル6016a、6016bの曲率は、それぞれマスクの内縁及び外縁の寸法とマスクの曲率に一致していることが好ましい。これらの寸法については、本願の様々なマスクに関連して上述した。一実施例では、マスク形成用特徴部6008の内縁及び外縁6032、6036は、その上に形成されるマスクの寸法と同じであり、第一及び第二曲面状プロファイル6016a、6016bの曲率は、その上に形成されるマスクの所望の曲率と同じである。
一実施例では、マスク形成用特徴部6008は、基板6000の上部表面6004から突出する。この場合、マスク形成用特徴部6008は、凸状表面を示し、その上に物質層が形成される。後述のように、リリース層、マスク層、犠牲層、または他の物質層を、マスク形成用特徴部6008の凸状表面の上に、または凸状表面の上に形成される物質層の上に形成することができる。図67Aは、一実施例において、第一及び第二曲面状プロファイル6016a、6016bが凸状プロファイルである様子を示す。
一変形例では、マスクは最初、基板6000と同様に平坦な基板の上部表面上に平らな配置で形成される。この変形例では、マスクは十分に柔軟であり、例えば角膜層等の目の構造部に適用された際にその構造部に一致する。従って、予め成形された形状とする必要がない。方法によっては、マスクが平坦な上部表面の上に形成された後で、更に一つ以上の段階が実施され(マスクの物質に応じて、例えば熱成形や圧縮等)、マスクの形状が目の構造部に一致するようにされる。
マスク形成用特徴部6008の一変形例では、内側凹部6040を省くことによって、
連続的で無孔の曲面状プロファイルが与えられる。後述のように、こうすることは、スパッタリングの後にマスクの内縁が画定される場合に使用可能である。マスクの内縁は、マスクの中心領域を切り出すことによって、画定可能である。中心領域を切り出すのに適切な方法であれば、どのような方法でも使用可能である。例えば、中心領域は、レーザ切断処理によって切り出すことができる。レーザ切断は、更にマスクを画定するのに用いることができ、例えば、隣接するマスクから一つのマスクを分離したり、マスクの一部に栄養輸送用開口部を設けたりすることによって、マスクが画定される。
他の変形例では、マスク形成用特徴部6008は、その上にマスクを形成することが可能な凹状表面を含む。この場合、マスク形成用特徴部6008は、基板6000の上部表面6004に凹部を含む。後述のように、マスクを基板6000上に、マスクの一表面が露出されているように形成することが可能であり、例えば、マスクの一表面が基板6000に接触していなかったり、基板6000とマスクの間の層に接触していなかったりする。
基板6000を、その上への薄膜層の形成を促進する方法によって、下準備することが可能である。例えば、上部表面6004を洗浄及び研磨して、後述のスパッタリングプロセスや他のマスク形成プロセスを容易にすることができる。一方法では、基板6000を一定期間の間、洗浄溶液または洗浄剤を用いて、温度を上昇させて洗浄する。例えば、基板6000を、RCA洗浄溶液(例えば、水酸化アンモニウム、過酸化水素、DI水を1:1:5の比率で混合したもの)内にて摂氏80度で30分間洗浄して、油脂や塵の粒子等の不純物を取り除く。代わりに、Micro‐90(ナトリウム塩、アンモニウム、酸の市販の混合物)等の他の洗浄溶液を用いることもできる。他の方法では、上述のように、基板6000を、所望の調和特性を与えるように選択された粗さへと下準備する。
上述のように、スパッタリングは、眼用インプラント形成のために基板上に物質層を形成することにおいて利点を有する方法である。スパッタリングは通常、真空または超低圧で実施され、プロセスチャンバは通常、基板6000を固定するようにされる。一方法では、プロセス中に回転するテーブル上に、基板6000は固定される。例えば、基板の回転によって、物質の堆積が更に一様になり、厚さがより一様になる。また、プロセスチャンバは、ターゲット物質を有するターゲットを収容できるように設計されていることが好ましい。実施例によって必要であるならば、プロセスチャンバは、多数のターゲットを収容可能であり、異なる物質をスパッタリングすることが可能である。プロセスチャンバは、多数のスパッタリングモードが可能であることが好ましく、例えば、無線周波数(RF)スパッタリングモードと直流(DC)スパッタリングモードのどちらかまたは両方で、一つまたは全てのターゲットからのスパッタリングを可能にする。
一スパッタリング法では、一つ以上の真空ポンプによって、10−7Torrの範囲の低さへと、真空が引かれる。ここで、真空ポンプは、機械式ポンプ、低温ポンプまたはターボ分子ポンプであってもよい。アルゴンガス(または他の不活性ガス)が低圧(数ミリトール程度)でチャンバ内に導入される。その後、DCまたはRF電力供給部から高電圧がターゲット物質に印加されて、グロー放電が生成される。グロー放電によって、アルゴン原子を、プラズマと呼ばれるイオンの雲へと解離させる。プラズマ中のイオンを、ターゲット材料に向けて加速させることができる。イオンとターゲットの衝突によって、ターゲット物質の原子がターゲット表面から飛び出す。その後、飛び出した原子は、基板6000の露出表面上で凝集する。基板6000上で凝集する原子の量が増加するにつれて、物質の薄膜が、基板6000上に形成される。
図67Bは、マスクの製造方法の後続段階を示し、リリース層6080が、基板6000のマスク形成用特徴部6008の上に形成されている。上述のように、リリース層は、犠牲層の一種であり、基板6000からのマスクの分離を容易にする。リリース層6080は、上述のスパッタリングプロセスまたはその適切な変形例を用いて形成可能である。一方法では、リリース層6080は、例えばエッチング等の、マスクの一部を形成するまたはマスクに結合している他の層を傷付けることの無い他のプロセスによって除去可能な物質から成るターゲットを用いて形成される。リリース層6080を形成するのに用いられる物質は金属であってもよく、例えば、クロム、アルミニウム、銅、TiCuAg、90%タングステン10%チタン(過酸化水素によって放出される)、または他の金属や合金が挙げられる。リリース層が、非侵食的なプロセスによって基板6000からマスク層を分離可能なものであるならば、他の物質を用いることもできる。
一実施例では、リリース層6080を、スパッタリングによって、略500Å以上の厚さで基板6000上に堆積させる。リリース層6080は、略2ミリトールのアルゴン圧力下でのRFスパッタリングを用いてスパッタリング堆積可能である。リリース層の厚さは変更可能である。例えば、リリース層の厚さは、数百オングストローム、500Å未満、略500Å超、千オングストローム以上とすることができる。
図67Bは、マスク形成用特徴部6008の配置によって、リリース層が、平坦部分6012と環状表面6020との間で、また、環状表面6020と中心領域6028との間で架橋しないようになっている様子を示す。マスク形成用特徴部6008のこの側面によって、後続段階で形成されるマスクを基板6000から分離することが容易になる。何故ならば、マスク形成用特徴部6008の外縁及び内縁から、マスクをリリースする事ができるからである。方法によっては、平坦部分6012、環状表面6020、中心領域6028は、互いに完全には隔離されてはおらず、マスク形成用特徴部6008からマスクを分離するためのプロセスは主に、外縁6036と内縁6032の一つから行われる。
図67Cは、リリース層6080を基板6000上に形成した後に、マスク層6100をリリース層6080の上に形成可能であることを示す。図67Cは、リリース層6080及びマスク層6100の形成の間に、他のプロセスが実施されないということを示すものではない。例えば、方法によっては、マスク層6100の形成に先立って、リリース層を修正する。所望の厚さを有するようにリリース層を修正することが望ましく、例えば、リリース層の一部を除去する等して修正される。例えば、リリース層6080の平均の厚さを、マスク形成用特徴部6008の全体に亘って減少させることが可能である。他の例では、リリース層6080の厚さを、マスク形成用特徴部の選択された箇所のみ減少させることが可能である。マスク層6100は、何らかの適切な方法によって形成可能であり、例えば、上述のスパッタリングプロセスやその変形例が挙げられる。
一方法では、スパッタリングや他の蒸着プロセスによって、例えば老眼や収差等の目の病気を処置するためのマスクを、完全にまたは実質的に完全に形成する。ここで、“実質的に完全に形成する”との意味は、このプロセスによってマスクの厚さは完全なものとなり、マスクの厚さを増大させるための更なる段階は追加されないが、厚さを減少させたり、マスクにカットアウトを形成したり、マスクを成形したりすることはあるという意味である。後述のように、一変形例では、マスク層6100は、本願で説明されるプロセスによって形成されるマスクの取り扱いを容易にするように構成された層であり、または、患者の目にこのようなマスクを適用することを容易にするように構成された層である。
一方法では、このプロセスによってマスクが実質的に完全に形成されて、例えば、マスク層6100によって、マスクに形が与えられる。この方法では、マスク層6100は、患者の視力を実質的に改善可能であることが好ましい。マスク層6100を、少なくとも部分的に不透明にすることが好ましい。マスク層6100は、例えばUV放射等の環境条件に対して十分に安定であることが好ましい。マスク層6100は十分に生体適合性があり、人間の目に埋め込むことが可能であることが好ましい。こうした性質は多様な金属が有しており、例えば角膜内インレイとして目に適用可能な薄型構造へと形成可能である。例えば、ニチノールつまりTiNi、TiNi合金から派生した他の合金、金、タンタル、プラチナ、チタン(例えば、チタン6アルミニウム4バナジウム)やステンレス鋼がこうした性質を有しており、目への応用において良く機能するとされている。マスク層6100は、こうした物質や、他の生体適合性のある適切な物質から形成可能である。
また、生体適合性のある物質は、マスク6200の寿命まで劣化や腐食することのない種類の物質から選択可能である。このような物質を選択してマスク層6100を形成することこそが、マスク表面を腐食させないための方法の一つである。後述のように、このような物質には、一般的に貴金属が含まれ、特に本願で説明する貴金属が含まれる。後述のように、マスク表面を腐食させないための他の方法には、第二層(美容層であってもよい)をマスク層6100の上に形成することが含まれ、ここで、第二層は、腐食を防止するように、または、患者にマスクが適用された際に腐食したり劣化したりするといったことを実質的に減じるように選択された物質から形成される。
上述のように、プロセスチャンバには多数のターゲットを備え付けることが可能であり、例えば、一つはマスク層用であり、もう一つがリリース層用である。三つ以上のターゲットを備え付けることも可能であり、例えば、一つはリリース層用ターゲット、一つは第一マスク層用ターゲット、一つは第二マスク層用ターゲットとなる。一実施例では、後述のように、第一マスク層が、マスクの大半を構成し、第二マスク層が、比較的薄いこともある美容層を構成する。他の方法では、リリース層6080及びマスク層6100は、チャンバを異なるモードで用いて形成される。例えば、マスク層6100は、DCスパッタリングを用いてスパッタリングされ、リリース層6080は、RFスパッタリング用いてスパッタリングされるようにすることができる。合金物質を有するマスク層を、単一の合金ターゲットを用いてスパッタリングすることができ、また、複数のターゲットから同時にスパッタリングすることもできる。他の方法では、マスク層6100及びリリース層6080は、別々のチャンバ内でスパッタリングされる。
一方法では、基板6000がプロセスチャンバにローディングされ、チャンバ内が10−7Torrの範囲の低さへと、真空に引かれる。リリース層6080が基板6000上に形成された後で、略2ミリトールのアルゴン圧力下でDCスパッタリングを用いて、マスク層6100をリリース層6080の上部表面にスパッタリングして堆積させる。マスク層6100は、所望の厚さへとスパッタリング可能であり、例えば、上述のマスク3000のいずれかの厚さにすることができる。
スパッタリング法の更なる詳細については、本願でその全文が参照される特許文献6(1991年10月29日発行)、特許文献7(2001年9月14日発行)、特許文献8(2003年3月18日発行)、特許文献9(2003年3月27日公開)に開示されている。
マスク層、リリース層、または犠牲層を形成するために用いられる他の堆積方法には、気相蒸着法、真空蒸着法、分子線エピタキシー法、蒸着法、パルスレーザ堆積法、イオンプレーティング法、イオン注入法、レーザ表面合金化法が含まれる。層を形成するための他の種類の蒸着法や他の方法については、後述する。
図67Dは、図67A〜67Cに関連して説明したプロセスによって形成されたマスク6200を基板6000から分離する方法を示す。上述のように、リリース層6080は犠牲層であり、例えば、マスク6200の形成を容易にし、マスク6200の製造プロセス中にマスク6200から実質的にまたは完全に除去される層である。マスク6200は、何らかの適切な方法によって、基板6000から分離される。一方法では、リリース層6080が侵食されて、環状表面6020とマスク6200との間にギャップが形成される。リリース層6080が完全に侵食されると、マスク6200が基板6000から完全に分離される。上述のように、内側及び外側凹部6040、6044によって、リリース層6080の侵食プロセスを、環状表面6020の両側から進行させることが可能になる。これによって、基板6000からマスク6200を分離するためのプロセス時間が顕著に短くなる。
一方法では、その上にリリース層6080及びマスク層6100が形成されている基板6000を、上述のようにリリース層6080を侵食可能な薬品を収容した槽に浸漬させる。薬品は、リリース層6080を選択的にエッチングするが、マスク層6100には悪影響を及ぼさない化学薬品であってもよい。基板6000から層6100をリリースするのに用いられるエッチング剤、他の化学薬品、または他の薬品は、層6100に強力に作用しないことが好ましい。一方法では、リリース層6080はクロムから形成されて、リリース層6080にクロム用エッチング剤を接触させることによって、マスクが基板から分離される。例えば、クロムのリリース層を、クロム用エッチング槽に沈めることができる。ここでは、クロムと他のリリース層の物質について説明してきたが、当業者であれば、多種多様な物質が、基板からデバイス層を分離するための薬品、リリース層として使用可能であることを認識されたい。
図67Dは、基板6000からマスク6200を分離することによって、一片以上のスクラップ物質6204が生じる様子を示す。このスクラップ物質は、マスク層6100と同時に堆積された物質である。スクラップ物質6204はマスク6200から分離され、廃棄される。
図68は、マスクが腐食しないように構成された方法で形成可能なマスク6300を示す。また、図68は、マスクが不活性であるように構成された方法で形成可能なマスクを示す。一変形例では、マスク6300は、二つ以上の別々の層を備えるように形成されて、所望の特性が付与される。例えば、後述のように、第一層は、最低侵襲性の埋め込みに対して有利な特性を有する物質から形成され、第二層は美容層として形成可能であり、適切な見た目を提供する。マスク6300の形成方法は、図67A〜67Dに示す方法と同様のものではあるが、下記の点が異なる。
マスク6300は、第一マスク層6304と第二マスク層6308とを含む。第一マスク層6304は、本願で説明するような適切な方法を用いて形成可能である。例えば、第一マスク層6304は、図67A〜67Dの基板6000またはその適切な変形例と同様の基板上に形成可能である。上述のマスク同様に、マスク6300は、前方表面6312と後方表面とを有する。後方表面は図示されていないが、それは、マスク3000の前方表面6312からの反対側に存在する。多層装置においては、前方表面は、何らかの表面、または一般的に前方を向く層の間の界面であり、または適用された際に目の外側にある。前方表面は、マスク6300が適用された際に、角膜層に接触する表面であってもよい。一実施例では、前方表面6312は、マスク6300の内側に位置する表面である。例えば、前方表面6312は、第一層及び第二層6304、6308の間の界面に位置する。前方表面は、マスク6300の外部表面であってもよい。
第一及び第二マスク層6304、6308は、何らかの適切な形状を取り得る。第一及び第二マスク層6304、6308は、同一の物質からも異なる物質からも形成可能である。一実施例では、第一マスク層6304は、上述のような有利なマスクの特性をいずれかを有するように選択された第一物質から形成される。第二マスク層6308は、上述のような美容的または視覚的に有利な特性のいずれかを有するように選択または構成された第二物質からなる。
第一及び第二物質が異なる物質から成る場合、第一及び第二マスク層6304、6308に用いられる物質の組み合わせは、慎重に選択する必要がある。物質の選択によって、不安定化反応が生じてしまう可能性がある場合には、特にそうしなければならない。例えば、第一層6304と第二層6308との間に十分なガルバニックポテンシャルが存在すると、界面に沿って腐食が生じるおそれがある。
こうした種類のマスクの劣化を防止するため、マスク6300の表面は、第一マスク層6304用の第一物質及び第二マスク槽6308用の第二物質の選択によって、腐食が生じないように構成可能であり、第一及び第二物質が同じ様なガルバニックポテンシャルを有するようにする。他の方法では、第一マスク層6304の物質が、第二マスク層6308に化学的に作用等しないように構成された第三層(図示せず)を、第一マスク層6304と第二マスク層6308との間に形成してもよい。例えば、第三層は第一マスク層6304と第二マスク層6308との間の電気的なやりとりを少なくとも実質的に防止する界面の物質から形成されてもよい。界面の物質は、適切なポリマーまたは他の絶縁体であってもよい。第三層は、第一マスク層6304と第二マスク層6308とを機械的に結合させる等といった追加機能を提供することが可能である。従って、第三層は、接着剤の層であってもよい。腐食しないマスクを構成するためのこれらの方法また他の方法について、以下で詳述する。
一実施例では、第一マスク層6304は、本願で説明するような生体適合性のある金属から形成可能である。上述のように、貴金属は、複数の有利な特性を有する。例えば、貴金属は、ガルバニック反応等のマスク6300を劣化させ得るプロセスに対して耐性がある。こうした反応によって、第一バスク層6304上に追加的な物質層が形成され、ガルバニック反応を起こすのに十分なガルバニックポテンシャルが層の間に発生する可能性がある。また、貴金属は一般的に反応が遅く、少なくともこの意味においては、一般的に不活性である。特に、後述のように、或る貴金属の第一層と炭素の第二層を組み合わせることによって、ガルバニック反応による腐食に対して実質的に耐性のあるマスクの構成が得られる。
いくつかの応用において利点を有する他の種類の物質としては、超弾性つまり形状記憶特性を有する物質が挙げられる。このような物質として、ニチノールや、ニッケルとチタンから成る他の合金が挙げられる。このような物質は、例えばポケット内に埋め込む等の低侵襲性の方法を用いて埋め込むのに特に適している。これらの物質の利点は、マスクを、折り畳んだり、丸めたり、低プロファイルに圧縮したりして、比較的小さな切開部を介してマスクを適用することが可能になるという点である。ここで、“比較的小さな切開部”とは、マスクの直径よりも実質的に小さな切開部のことである。例えば、方法によっては、マスクの直径の略三分の二以下の切開部が、比較的小さな切開部となる。他の方法では、マスクの直径の略二分の一以下の切開部が、比較的小さな切開部となる。他の方法では、マスクの直径の略三分の一以下の切開部が、“比較的小さな切開部”となる。マスクが挿入される切開部のサイズを小さくすることによって、患者の回復時間を短縮可能である。
図68には、マスク6300の第二マスク層6308が示されており、方法によっては、第一マスク層6304を形成した後に形成可能である。第二マスク層6308は、第一層6304の表面上に形成可能である。上述のように、第二層6308は、患者以外の他人に対する所望の見た目を提供するように形成可能である。第二層6308は、非反射層として構成可能である。非反射層は、第一層6304を形成する物質が例えば光沢のある金属等の光沢のある物質である場合に、役に立つ。非反射性第二マスク層を形成することによって、マスク6300の見た目を暗くすることが可能である。マスク6300の見た目を暗くすることによって、患者の目の中のマスク6300の存在が、他人に目立たないようになる。
実施例によっては、第二層6308を、美容層として、マスク6300の前方表面6312上に形成することが可能である。上述のように、美容層を形成して、患者の目の内部のインプラントの視認性を減少させることができる。美容層は、患者によって調節可能である。一実施例では、第二層6308は、その見た目が瞳と同じである美容層として形成される。他の実施例では、その色が、マスクの外縁近傍では虹彩の色と同じであり、マスクの内縁近傍では瞳の色と同じであるように形成可能である。
上述のように、マスク6300を美容面で変更する他の方法は、マスクが適用された際に目に見える表面(例えば、前方表面6312)を粗くすることである。表面を粗くすることによって、表面の反射性が低くなり、これによって患者の目の中にあることが、他人の目にはあまり見えなくなる。他の方法では、前方表面6312を粗くすることと、美容層を提供すること(例えば第一層の前方表面6312の上に)との両方によって、マスクをあまり目に見えないようにすることが可能である。
第二層6308は、本願で説明するような堆積法やコーティング法等の適切な方法によって形成可能である。
上述のように、貴金属は、第一マスク層6304を形成するのに適している。こうした物質が適しているのは、比較的不活性で生体適合性があるからである。また、こうした物質は、第二層6308の形成のために使用可能な物質の一つである炭素が存在する場合に生じ得る腐食の可能性を、実質的に減少させる。炭素が第二層に適しているのは、瞳に調和し、所望の美容的な見た目を提供するからである。何らかの適切な方法によって、炭素に第二層6308としての形を与える。炭素層は、所望の美容的な結果を提供するように十分に厚いことが望ましく、例えば、マスク6300を目立たないように、つまり患者の目に埋め込まれた際に他人の目に見えないようにする。応用によっては、第二層6308の厚さを調節して、美容的な効果を提供するのに必要とされる厚さよりは厚くならないようにする。このことは、マスク6300の低プロファイルという本質を維持するという利点を有する。低プロファイルの構成においては、埋め込む際に、容易にマスク6300を折り畳んだり、取り扱ったりすることができる。また、低プロファイルの構成においては、マスク6300が、角膜の前方表面の曲率に影響を与える可能性が低く、マスク6300が適用される角膜の屈折特性に影響を与えない。他の応用では、第二マスク層6308またはマスク6300を厚くすることが可能ではあるが、マスク6300の埋込性や装着性を損なわないことが望ましい。マスクの厚さは変更可能であり、本願で説明するいずれかの厚さに変更可能である。第二層6308の厚さは、マスク6300全体の厚さの一部であり、例えば、マスク6300の厚さの一パーセント以下、マスク6300の厚さの十から二十パーセント、マスク6300の厚さの二十から三十パーセント、マスクの厚さの三十パーセント超である。
例えば、スパッタリングプロセスや電着プロセスにおいて、炭素を貴金属と一緒に堆積させることが可能である。炭素層は貴金属層の上に形成されることが好ましく、炭素が貴金属層に接着するようになる。貴金属を、例えば炭化ケイ素等の適切な美容面の見た目を提供する他の適切な物質と組み合わせることが可能である。
上述のように、これらのプロセスまたは他の同様のプロセスにおいては、層6304、6308の形成時に互いに繋がっていない一つ以上のマスクを形成するための、例えば基板6000のような、適切な基板が採用可能である。他の方法では、これらのプロセスによって、或る適切な基板上に相互に繋がったマスクのシートを形成することが可能であり、後続処理段階において、マスクが互いに分離される。例えば、本願で説明するプロセスによって、複数の相互に繋がったマスクを形成することが可能であり、その後で、例えば、機械加工、レーザ切断加工、化学エッチング加工等の適切なプロセスによって、互いに分離される。
上述のように、マスクは、最初は平坦に形成されたマスク層からも製造可能であるし、選択した曲率を有したマスク層からも製造可能である。最初は平坦に形成されたマスク層からマスクを製造する一方法では、後続処理段階においてマスクに曲率をもたせることが可能である。例えば、平坦な構成で一層以上の層が形成された後で、マスクをカップ形状にすることが可能である。カップ形状にするプロセスの一つでは、部分的に球形の輪郭を有する造形用表面に押し付ける。多様な実施例において、その造形用表面は、モールドの表面である。一方法では、凸状表面及び凹状表面を含むモールドが提供される。上述の方法によって形成されたマスクは、モールドの凸状表面と凹状表面の間に、平坦または非成形状態で、挿入可能である。その後、凸状表面と凹状表面とを密接させて、マスクに所望の形状を与える。
マスクを造形用表面に押し付けた後で、マスクを更に処理して、マスクが造形用表面の曲率を維持するようにすることが可能である。例えば、マスクが一面以上の造形用表面に押し付けられている間に、熱処理することが可能である。熱処理法の一つでは、温度を上昇させた環境下に、マスクが十分な時間置かれて、マスク物質内の応力が緩和される。これによって、モールド形状時のマスクが緩和状態になる。一方法では、マスクは、略華氏500度以上に上昇させた温度を有する環境下に置かれる。他の方法では、マスクは、略摂氏500度以上に上昇させた温度を有する環境下に置かれる。一方法では、マスクは、略華氏300度以上に上昇させた温度を有する環境下に置かれる。他の方法では、マスクは、略摂氏300度以上に上昇させた温度を有する環境下に置かれる。一方法では、マスクは、略華氏250度以上に上昇させた温度を有する環境下に置かれる。他の方法では、マスクは、略摂氏250度以上に上昇させた温度を有する環境下に置かれる。加熱処理後では、過度の力がかかることなく、マスクが造形用表面の形状を維持する。
上述のように、応用によっては、多層のマスクを形成して、少なくとも一層が孔を有することが望ましい。孔は、上述のマスクの栄養輸送を提供するためのものと同様のものであってもよい。上述のように、基板は、応用に応じて、多孔質の層または平滑な層を製造するように設計可能である。例えば、多孔質の層は、突起部パターンを備えた基板を用いることによって製造可能である。他の方法では、プロセスにおける一つ以上の可変的な要素を変更して、多孔質等のマスク層の特性を生じさせることが可能である。例えば、層の形成速度(例えば、電着速度)を、より多孔質の層を製造するように選択可能である。一方法では、比較的高速の電着速度によって、より多孔質のマスク層またはマスクが製造される。
上述のように、ニチノールまたはこれと同様の物質は、複数の応用において利点を有する。方法によっては、第一マスク層6304がニチノールで形成される場合、第二物質は、ガルバニック腐食等の化学または生体反応によって劣化しない第二マスク層6308を形成するように選択される。第二物質は、第一マスク層6304と第二マスク層6308との間にガルバニックポテンシャルが存在しないまたは僅かしか存在しないように選択可能である。第二物質として使用可能な物質の一つは、酸化チタンである。例えば酸素が存在するような或る環境下においては、酸化チタンが、チタンまたはチタン合金の露出された表面上にできる。従って、第二層6308は、酸素に晒すことによっても形成可能である。十分な厚さの酸化チタン層をチタンまたはチタン合金表面上に形成することによって、チタンまたはチタン合金表面を不動態化して、例えば、表面が腐食しないまたはほとんど腐食しないようにマスクを構成する。第二物質として使用可能な他の物質は、炭化ケイ素である。ガルバニック腐食を生じさせることなくニチノールやこれと同様の合金と組み合わせることができる他の同じ様な物質も、第二物質として選択可能である。
他の実施例では、マスクの前方表面をコーティングして、患者に適用された際のマスク6300の視認性を減少させることができる。例えば、前方表面6312を、第二マスク層6308に関連して上述した物質のいずれか、有機染料、無機顔料、または他の化合物の少なくとも一つを用いてコーティングすることが可能であり、例えば、黒色酸化鉄が挙げられる。他の変形例では、第二マスク層6308を適切なポリマー物質から形成することができ、例えば、第一マスク層6304の反射率を減少させるポリマー物質が挙げられる。ポリマー物質はガルバニック反応の影響を受けない。他の変形例では、第二マスク層6308は、ポリマー物質及び適切な染料の混合物から形成され、本願で説明するような所望の美容効果を生じさせる。
方法によっては、マスク6200の前方表面及び後方表面の両方を暗くした方が望ましいこともある。
図67A〜67Dのプロセスによって、患者の目に埋め込まれるとの実質的に同一の形状にマスクを形成することが可能になる。上述のように、このことが達成できるのは、一部には、マスクが適用された際に目の領域内の眼球の解剖学的組織の形状に対応するような形状にされたマスク形成用特徴部を備えた基板を提供することによる。このことは、角膜内のマスクが埋め込まれる場所である角膜組織層の形状と同じ様な形状を備えたマスク形成用特徴部を備えることによって達成可能である。また、このプロセスでは、綿密に制御された特定の寸法を有するマスクが製造可能であることによって、人間の目にマスクを適用することが容易になる。例えば、このプロセスでは、近接する角膜組織に悪影響を及ぼすことなく、角膜内に埋め込める十分に薄いマスクが形成可能である。
上述のように、マスク製造方法の一変形例では、基板6000と同様ではあるが、成形されているというよりもむしろ略平坦な基板が採用される。このプロセスでは、マスク6200と同様のマスクが形成されるが、その形状もまた最初は略平坦である。応用によっては、略平坦なマスク6200は十分に薄く、目に適用されて、その本来の解剖学的組織に一致するようになっていてもよく、例えば角膜の曲率に一致する。他の応用では、最初平坦な構造であったマスクに、永久的な形状をもたせる。ここで、“永久的な形状をもたせる”という表現は、広範な意味を持つ表現であり、その一般的な意味において用いられ、また、重力以外の力がかかっていない状態でその形状を保持するマスクを形成するということを含む。この形状は、目に適用された際に、または眼球構造部の影響を受けた際にマスクがある程度曲がることを妨げるものではない。
何らかの適切なプロセスを用いて、マスクに或る形状をもたせることが可能である。このようなプロセスの一つとして、マスクをマンドレル上またはマンドレル内に配置して、マスクをメンバにかけて、所望の形状をとらせ、マスクを加熱処理して、その形状を維持させることが挙げられる。このプロセスの詳細については、本願においてその全文が参照される特許文献10に開示されている。
上述のように、マスクによっては、近接する組織によるマスクの許容性を増大させる栄養輸送構造を備えるように設計される。例えば、マスク4400は、前方表面から後方表面に延伸するホールを備えるように形成される。このようなホールは、ホールが形成された複数の層を堆積させることによっても形成可能である。近接する層におけるホールの位置は、上述のように、重要である。例えば、ホールの位置によって、回折パターンの発生を減少させることが可能である。ホールの構成、位置および向きは、本願でその全文が参照される特許文献10で説明されているように、犠牲層及びフォトリソグラフィを用いることによって、適宜制御可能である。また、ホール(“微細穿孔”または“穿孔”と称することもある)は、上述のように、栄養輸送部形成用特徴部を備えた基板を提供するプロセスにおいて、形成可能である。
上述のように、このようなプロセスの一変形例においては、例えば、加工したり、輸送したり、外科医によって患者の目に適用されたりといった取り扱いを可能にする構造がマスクに与えられる。上述のように、実施例によっては、目に適用されるように構成されたマスクは非常に薄い。言い換えると、表面積対厚さの比が比較的高い構造である。このようになるのは特に、マスクを患者の目の角膜内に埋め込もうとする場合である。結果として、薄いマスクは、これを取り扱う人間のスキルによっては、損傷され得るということになる。マスクの損傷には、マスク表面の汚染、マスクに形成されたしわ等が含まれる。このような損傷は、少なくとも処理時間を増加させ(例えば、追加的な洗浄段階が必要になることによって)、また、損傷したマスクを廃棄する必要が生じる場合すらある。マスクを廃棄する可能性を減らすために、例えば、容易に損傷しない層や損傷してもマスクの性能を悪化させない層等の、取り扱い用構造部を設けることが望ましい。
一方法では、取り扱い用構造部は、除去可能なマスク支持層として形成される。何らかのプロセスによって、取り扱い用構造部を形成可能である。例えば、上述のスパッタリングプロセスのいずれかを用いて、取り扱い用構造部を形成することが可能である。一実施例では、取り扱い用構造部は犠牲層として形成される。上述のように、犠牲層は、マスクの寿命の間の或る時点で、マスクから除去または分離可能な層である。取り扱い用犠牲層は、リリース層6080と同一の物質、マスク層6100と同一の物質、または他の適切な物質から作成可能である。取り扱い用構造部は、例えば、層の侵食またはエッチング、またはマスクから取り扱い用構造部を分離する等のプロセスによって、除去可能である。取り扱い用構造部は、何らかの適切な構成を取り得る。取り扱い用構造部は、マスクまたはその一部に一時的に結合することが好ましい。例えば、取り扱い用構造部は、マスクの外縁に結合可能である。一実施例では、取り扱い用構造部は、マスクまたはマスクの一部を取り囲むまたは部分的に取り囲む環状の構成要素である。取り扱い用構造部は、適切な構成のバーまたはフランジであり得る。一実施例では、取り扱い用構造部は、処理装置またはプロセスチャンバに固定されるように構成されている。一実施例では、取り扱い用構造部は、一つ以上のプロセス段階の間、マスクをしっかりと保持することが可能である。一実施例では、取り扱い用構造部は、マスク製造プロセスが完了または一部完了した段階で、除去可能である。
〈B. 他の層形成法を用いたマスクの形成〉
マスク層を形成するためのスパッタリングを含まない他の方法を採用することも可能であるし、物理気相蒸着を含む方法と組み合わせることも可能である。
(1. 化学気相蒸着)
化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition,CVD)も、マスクまたはマスクの一部の形成に使用可能である。CVD法としては、大気圧化学気相蒸着法、低圧化学気相蒸着法、プラズマ増強化学気相蒸着法、光化学気相蒸着法、レーザ化学気相蒸着法、有機金属化学気相蒸着法、化学ビームエピタキシー法が挙げられる。
(2. 溶液からの析出)
マスク層、リリース層、犠牲層等の層は、溶液から物質を析出させることによって形成可能である。この方法は、図67A〜67Dに関連して上述した方法に類似しているが、下記の点が異なる。
マスク層、リリース層、犠牲層、または他の層は、溶液からの析出物によって形成される。例えば、金属イオンを含む溶液を準備して、基板と接触させることが可能である。基板は、基板6000と同様のものであってもよい。一方法では、タンクを提供して、基板をタンクの底に配置する。その後、金属または合金イオンまたは分子を含む溶液をタンクに入れて、基板と接触させる。その後、溶液に影響を与えて、金属または合金イオンまたは分子が溶液中に最早溶解できないようにする。例えば、所望の金属イオンを十分な量溶液に加えて、溶液内のイオンの溶解度を超過するようにする。これによって、金属イオンが溶液から析出して、基板6000上に凝集する。他の例では、溶媒を溶液から蒸発させて、その溶解度を超過するまで所望の金属イオンの濃度を増加させる。これによって、イオンが溶液から析出し、基板6000上に凝集する。例えば、溶液のpHを変更する等の他の方法を採用して、溶質を溶液から析出させることもできる。
十分な溶質が基板上に形成されたら、この溶液をタンクから排水して、同一のまたは異なる物質または金属イオンの溶質を含む他の溶液をタンク内に入れることができる。方法によっては、一つ以上の方法を組み合わせることが可能であり、例えば、或る一つの層に対しては、溶液からの析出を用い、他の層に対しては、気相蒸着を用いる。
(3. 電気メッキ及び電着)
マスクを形成するために用いられる層を形成するための他の適切な方法として、電気メッキ法、電着法、電鋳法が挙げられる。一実施例では、電着によるマスクの形成は、上述の方法と類似したものではあるが、下記の点が異なる。
電着は、層またはコーティング(金属であり得る)を、電流の作用によって、対象物の表面上に生じさせるプロセスである。対象物上への金属コーティングの堆積は、コーティングされる対象物を負に帯電させ、堆積させる金属の塩を含む溶液中に対象物を浸漬させることによって達成可能である。この場合、メッキされる対象物は、電解槽の陰極であり得る。一方法では、メッキされる対象物は、基板6000と同様のものである。
一方法では、塩の金属イオンが正の電荷を運び、基板つまり対象物に接触する。金属イオンが、負に帯電した対象物(例えば基板)に達すると、基板は電子を提供して、正に帯電したイオンを減らして、金属形態にする。電着及び電鋳において、基板は、例えば銅等の適切な物質から作成可能である。メッキされる物質は、上述のように侵食可能でマスクを基板から分離できる物質、またはマスク層である。メッキされる物質がマスク層であるような場合には、その物質は、長期間の埋め込みに対して、生体適合性があり、上述のような安定性を有するように選択される(例えば、不透明である、不活性である、UV放射によって劣化しない等)。
一方法では、導線が基板または他の対象物とバッテリ(または他の電源)の陰極とに結合される。他の導線は、バッテリ(または他の電源)の陽極と電解槽の陽極に結合される。陽極は、上述のスパッタリングにおけるターゲットのようなものである。その後、槽をメッキされる金属塩の溶液で満たす。槽はプロセスチャンバであってもよい。溶融塩を用いることが可能である(例えば、タングステンまたはこれと同様の物質をメッキする場合)。方法によっては、塩を水に溶かす。
メッキされる基板または他の対象物を負に帯電させると、溶液から正に帯電した陽イオンを引き寄せて、電子が、基板または他の対象物から陽イオンへと流れて、陽イオンを中性にして(陽イオンを減らして)、金属形態にする。一方、溶液中の負に帯電した陰イオンは、正に帯電した陽極に引き寄せられる。陽極の電子が陽極の物質から取り除かれると、酸化して、陽極の陽イオンになる。従って、陽極(上述のようにターゲットに類似)は、溶液中にイオンとして溶ける。これが、陽極/ターゲット物質の置換陽イオンが、メッキされた分が無くなった溶液に提供されて、槽内の溶液が適切な構成に保たれる仕組みである。
この方法の利点の一つは、上述のようなマスクを介する栄養輸送を少なくとも部分的に提供する多孔質構造部を、更なる段階を踏まずに作成可能であるという点である。更なる栄養輸送は、上述の方法のいずれかを用いて、マスクに追加的な栄養輸送構造を設けることによって、提供可能である。
特定の好ましい実施例に関して本発明を開示してきたが、本発明は、特定の開示された実施例を超えて、他の代替例にまで及び、および/または、本発明の使用と、明らかな変形例と、本発明と等価なものとにまで及ぶことを当業者は理解されたい。これに加えて、多数の本発明の変形例について詳細に示して説明してきたが、本発明の範囲内に含まれる他の変形例は、本開示に基づいて、当業者によって容易に想到可能である。また、実施例の特定の特徴及び側面を多様に組み合わせることまたは部分的に組み合わせることができ、それらもまた、本発明の範囲内に落とし込まれるものと考えられる。従って、開示された実施例の多様な特徴及び側面を組み合わせたり取り替えたりして、開示された発明の異なる形態が形成されるということを理解されたい。従って、本願で開示される本発明の範囲は、上述の特定の開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲を公平に解釈することのみによって決定されるものである。