JP4744766B2 - 鍛造スクロール部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
技術分野
本発明は、主としてエアコン用として用いられるスクロール圧縮機用のアルミニウム合金製鍛造スクロール部品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
背景技術
近年、エアコン用コンプレッサーとして、その部品点数の少なさ、回転時の静寂性等からスクロールコンプレッサーが脚光をあびている。このスクロールコンプレッサは第2図に示すように、フランジ12の上に渦巻き型の羽根部11を設けた一個の固定スクロールと、その固定スクロールの羽根部11に対面し嵌合して遥動する同様の形状の渦巻き型の羽根部を持つ遥動スクロールとによって構成されている。
これらの固定および遥動スクロール(以下単にスクロールと略す。)は、軽量化のためアルミニウム合金で製造されることが多い。その製法としては、鋳物、鍛造等があるが、強度と信頼性の面から鍛造が有利であり、またその形状の複雑さから熱間鍛造に頼らざるをえない状況となっている。
【0003】
従来の鍛造法によるアルミニウム合金スクロールの製造工程を第3図に示す。
先ず、合金成分を調整した後溶解し、溶解したアルミニウム合金は、連続鋳造法により押出用の径200mm以上のビレット(BL)に鋳造される。このBLは、熱処理により内部の均質化が行われた後、所定の押出材の長さになるように切断され、切断されたビレットは、所定の径の丸棒(押出丸棒)に押出成形される。
押出丸棒の径は、ほぼ鍛造品の外径にあわせたものが普通であり、この丸棒が切断され鍛造用の素材となる。後述するように、この切断素材は鍛造前に必要に応じて、形状が出易いように鍛造加工或いは、切削加工にて簡単な類似形状に予備成形され素材として提供されることもある。
【0004】
この素材は、通常熱間鍛造によりスクロール形状に鍛造される。鍛造品は、鍛造後強度を出すために溶体化処理(焼入れ)及び、時効処理が行われるのが普通である。
その後、必要に応じ寸法精度を出すために素材の一部表面を切削加工して部品とする。
第4図は、従来の一般的なスクロールの鍛造方法の概略断面図である。ダイス2内に挿入された被加工材4が上方からのパンチ1により押圧され、下方に羽根部11を形成していく。通常はパンチ1の稼動距離は、スクロールのフランジ部12の厚さを一定にすべく、一定に設定される。
【0005】
アルミニウム合金製のスクロールの鍛造工法としては、日本特開昭54−159712号公報、特開昭59−61542号公報、特開昭62−89545号公報に見られるように、スクロール羽根の精度を良く鍛造するため、あらかじめ被加工材に鍛造又は切削加工にて予備形状を付加する加工を施した後に鍛造する方法が提案されている。このように予備形状に加工するのは、羽根部11が旋回渦巻き形状で、その高さが高く、そこにフランジ部12が付いた形状であるため、第4図に示すように直接鍛造成形を行うと、羽根部の高さ全体を揃えた成形が難いため、予め中間形状を作っておこうとするものである。この方法では、ある程度の形状精度を出せるが、最終形状とのバランスを決めるための中間形状の設計、中間加工用の鍛造ダイスの準備を必要とし、又、工程が複雑なため経済的でなく実用化が難しい。
【0006】
鍛造前の被加工材に上述の如く予備加工を施すことなく、丸棒材を切断しただけの被加工材を用いて、スクロールの羽根部の高さのばらつきを抑制し、精度良く仕上げるために、鍛造時に羽根部の先端にあたる部分に鍛造方向と反対の荷重を負荷して、羽根部への材料メタルの流動が均一になるように制御するいわゆる背圧鍛造工法が、例えば特開昭60−102243号公報、特開平06−23474号公報等にて開示されている。この工法によれば、丸棒を切断しただけの被加工材を用いて羽根部の高さのばらつきの少ないスクロールを経済的に生産性よく製造することができるとされている。
【0007】
更に詳細に説明すると、第5図、第6図はスクロールの背圧鍛造工法の概略断面図であって、ダイス2の羽根形成部分の空間2aにはノックピン7とノックアウト6によってパンチ圧よりも小さい逆向きの荷重を下方から背圧として負荷し(図5)、パンチ1で被加工材4を押し込み、ダイス2の羽根形成部分のダイス空間2aにパンチ押し方向へ被加工材を流動させ、ノックアウトを後退させながら羽根部11を成形する工法である。その結果、第7図に示すように、所定の厚さL1のフランジ12により高さL2の均一の長さの羽根部11を垂設したスクロール部品5が成形する。
この背圧鍛造方法では、1個のスクロール鍛造品の渦巻き状の羽根全体の高さを均一に揃えることに或る程度効果が出ている。
【0008】
しかし、この背圧工法による鍛造工法によって、1個のスクロール部品の羽根高さのばらつきはある程度制御できても、丸棒を切断する際に、切断する材料の厚さを均一にしないと、即ち被加工材重量を厳密に管理しないと個々のスクロール間での羽根部の高さのばらつきが出てくることになり、後工程で羽根部先端の切削代を鍛造品1個ごとに管理していくか、或るいは、ばらつきを考慮し、やや大きめに鍛造し後工程の切削代を大きくとっておく必要があり、歩留まりが悪いこととなる。
この背圧鍛造法においては、フランジ部12の厚みL1をパンチ1のストロークで制御し、残りの被加工材メタルがすべて羽根部分に流動する結果、鍛造前の被加工材の体積のばらつきが全て羽根高さL2のばらつきへ反映されることとなる。
【0009】
従来技術では、その被加工材は、鍛造の流動を円滑にして欠損なく成形する必要性から、鍛造品スクロールの最大外径となるフランジ外径に近い直径の丸棒材を切断した状態で使用している。従って,切断厚みの精度がそのまま被加工材の体積に、即ち羽根高さに影響する。
また、羽根部分の水平断面積は被加工材の断面積の1/3〜1/5程度であるので、被加工材としての切断厚みのばらつき変動がその3〜5倍の羽根高さのばらつき変動となる。後工程の羽根先端の切削加工において、この高さのばらつきを含む切削加工代が必要となるため、切削加工代を下げることができない。そのために、複数回の切削加工が必要となり切削加工工数の低減,材料歩留まり向上の阻害要因となっていた。
【0010】
スクロール用アルミニウム合金材料については、その使用条件からアルミニウム合金の中でも強度、耐磨耗性を上げるため、高珪素合金が使用されており、材料が硬く、また鋸刃が摩耗しやすい。このため通常合金より切断精度のばらつきが大きくなり、これが一因となり個々のスクロール鍛造品間の羽根高さのばらつきへの影響が大きいものとなっていた。
【0011】
また、最近、羽根高さに限らずスクロール部品形状をより製品形状に近い形状に鍛造加工される鍛造工法が望まれている。第8図に示すようなフランジの羽根についた表面側への凹形状の成形は、特に、背圧がない条件での鍛造では、羽根方向のメタルの流れと干渉を起こし、巻き込み等の鍛造欠陥となるため、一工程では鍛造できず数工程の鍛造を採用することが一般的とされている。現実的には、むしろその手間とコストの観点から、切削加工にてこの凹形状に仕上げる工程が選択され、加工コストが掛かる工程になっている。
【0012】
また、一方スクロール材質に関しては、先に述べたように軽量化の観点からアルミニウム合金が選定され、その強度、耐磨耗性に優れ、加工性とのバランスがとれた材料としてAl−Si系合金をベースに開発が進められてきた。その材質の制御には、部品の耐磨耗性を持たせるためにSi粒子をアルミニウム生地に微細均一に分散させるものである。これに換る他の合金については現在まで開発が難しく、実用化されているものはほとんど無く、いずれもAl−Si系を基本とした合金の変形である。
【0013】
このAl−Si系合金において、Si粒子の晶出は耐磨耗性を上げるために不可欠であるが、数10μm以上の粗大な初晶Siの晶出は、切削加工時の刃具の欠けによる切削仕上がりの不良品発生となるだけでなく、粗大な初晶Siの発生がスクロールの応力集中の高い部分に偏析した場合、使用時の疲労破壊の起点となるため、その信頼性を大きく低下させる問題が生じる。また、更に先に述べたように、素材の切断にあたって、鋸刃の磨耗を加速させ、この結果切断時の素材厚さばらつきを加速させることとなる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
このアルミニウム合金材料は、先に述べたように素材の製造方法として従来から一般に押出材の丸棒が切断され使用される。その押出材の製造のための鋳造ビレットは、比較的大きな径(200mmφ以上)にて連続鋳造されるのが普通である。このため、鋳造時の凝固速度が遅く、初晶として100μm以上の粗大なSi粒子が晶出しやすく、また断面内でのそのSi粒子の分布の制御が難しかった。更に、前述のような素材に粗大なSi粒子が晶出していると、切断時の厚さばらつきも発生しやすかった。また、初晶Si粒子は、硬く大きな異物として鍛造後の製品に持ち越されるため、スクロールとして成形された後の切削加工の問題や強度の低下が起こりやすかった。
【0015】
この発明は、一個のスクロール部品の羽根部の高さのバラツキだけでなく、鍛造したスクロール部分について羽根部の高さのバラツキを制御したアルミニウム合金鍛造スクロール部品及びその製造法を提供することを目的としている。
またこの発明は、後加工の切削代を少なくすると共に、切削時の刃具の欠損等による品質の低下、製品の強度の低下等の問題の起因となる粗大な初晶Siの発生を抑制したアルミニウム合金鍛造スクロール部分及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
発明の開示
この発明に依るアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法により製造された部品は、Si:8.0〜12.5質量%、Cu:1.0〜5.0質量%、Mg:0.2〜1.3質量%を含み残部がAlと不可避的不純物であるアルミニウム合金で、Si粒子径が15μm未満で平均Si粒子径が3μm以下である。上記Si粒子径とは、初晶Si及び共晶Siの粒径を含むものである。
【0017】
また、本発明に依るアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法は、Si:8.0〜12.5質量%、Cu:1.0〜5.0質量%、Mg:0.2〜1.3質量%を含み残部がAlと不可避的不純物であるアルミニウム合金を直径130mm以下、好ましくは、直径85mm以下丸棒に鋳造する工程と、
上記アルミニウム合金丸棒を切断し鍛造用素材とする工程と、
上記鍛造用素材を20〜70%の加工率で据込み加工した予備成形品を被加工材とする工程と、
上該被加工材を300〜450℃の材料温度でパンチにて加圧し、パンチ加圧方向にスクロール羽根を成形するための鍛造工程と、から成り、
上記鍛造工程は成形されるスクロール羽根部分の先端に該パンチ加圧より小さい反対方向から背圧を負荷する工程を含むことから成ることを特徴とする。
【0018】
上記アルミニウム合金は、更に、Ni:2.0質量%以下、及び/又は、Sr,Ca,Na,Sbから選ばれる1種以上を、計0.5質量%以下を含むアルミニウム合金であることを含む。
【0019】
また、上記背圧は、80〜240N/mm2の一定圧力で負荷すること、又は、初期は80〜240N/mm2であり、羽根部が成長開始した時点より徐々に低下させ、終期は40〜120N/mm2であることを含む。
【0020】
また、据込み加工する鍛造用素材は、予め480〜520℃の温度で0.5〜4時間の均質化熱処理及び/又はその表面にピーリング加工処理することを含む。
【0021】
更に、鍛造加工する被加工材は、その表面を潤滑皮膜で被覆したものを含む。
【0022】
また、鍛造した鍛造品は、更に溶体化処理(焼入れ)及び時効処理(焼入時効硬化処理)することを含む。
【0023】
従来は、アルミニウム合金は、通常の押出し用ビレットとして鋳造する場合は、通常200mm以上の太い径であるため、冷却速度が遅く、凝固速度が緩やかなためSiが10%を超えると初晶として100μm程度の粗大なSi粒子が晶出しやすく、これを押し出した細径棒でもこれが残存する傾向にある。この初晶Siは、特に冷却速度の遅くなるビレット中心部に偏析しやすいが、Siが12%近くなると横断面全体にランダムに発生する。
【0024】
【発明の効果】
しかるに、本発明では、上記の如く、上記アルミニウム合金の丸棒鋳造する際に、その直径を130mm以下とする。その結果、200mm径ビレットと比較して冷却速度が著しく速く、従って凝固速度が速いため共晶Siはより微細化され、粗大な初晶Siの発生が抑制される。
【0025】
上述の如く丸棒の径を細くしたため、粗大な初晶Siの発生が抑制され、切削時の刃具の欠損による品質の低下及び製品の強度低下の問題は解消する。また、丸棒の径が細いため、後加工の切削代が少なくて済み、経済的である。
【0026】
また本発明は2つの特徴を有しており、一つはフランジ部分の優先的形成を進めるために背圧を一般的な条件に比べ2〜4倍の圧力で鍛造している点である。他の一つは、より好ましい形態として、背圧鍛造では鍛造時に一定の圧力を負荷するのが一般的であるのに対し、鍛造過程に応じてこの背圧力を段階的に変化させることで成形過程を制御している点である。これらの特徴により、羽根部の高さが一個のスクロール部品内はもちろん、鍛造するスクロール部品毎の羽根部の高さバラツキを抑制することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
発明を実施するための最良の形態
アルミニウム合金スクロールの材料としては、耐摩耗性を持たせるためSi添加アルミニウム合金が一般的で、添加されたSiが微軸な粒子として晶出しこれが相手材との耐摩耗性を高める。
本発明のスクロール部分の鍛造に用いるアルミニウム合金は、Siが8.0〜12.5質量%、Cuが1.0〜5.0質量%、Mgが0.2〜1.3質量の範囲で含む。
Si含量が約11質量%までは、Siの添加量に比例して、微細な数μmの共晶Si粒子がAl生地中に分散晶出し、これがこの合金の耐摩耗性を高める。このため、Si含量は高めが良く、8.0%質量未満ではスクロール等摺動部品としての耐摩耗効果が十分発揮できない。
Si含量が12.5質量%を超えると、Siは初晶として晶出し、この初晶は粗大化しやすく、数10μmに達する。このため、切断時の鋸刃の磨耗や、後加工での切削時にバイトの刃先がこの初晶に当たり刃先を欠き、仕上げに問題を生じたり、鍛造品の外面に近い部分で応力集中の起こり易い部分に偏在すると、破壊基点となり機械的強度を欠くこととなる。従って、Siは、12.5質量%を上限とする。
【0028】
Cuは、数%質量の添加で後の熱処理によりAl基地の強度を向上させるとともに、耐摩耗性にも寄与する。Cuが1.0質量%未満では、強度向上に寄与せず、5.0質量%を超えても強度向上の効果は飽和してしまう。従って、Cuは1.0〜5.0質量%とする。
【0029】
Mgは、Siと結びつき、熱処理後にMg2Siの微細な析出物となり、製品の硬化に寄与する。また、MgSiCu系の化合物として同様に熱処理後に析出物となり製品の硬化に寄与し、いずれも強度を高める。Mgが0.2%質量未満では、この効果が薄く、1.3%質量を超えて添加しても効果は向上しない。また、鋳造において酸化物の発生、混入等で欠陥となる。従ってMgは、0.2〜1.3質量%とする。
【0030】
なお、本発明においては、アルミニウム合金は、耐熱強度を上げるため、必要に応じて、Niを2.0質量%以下添加することもできる。添加量としては、0.1質量%以下ではあまり効果がなく、2.0質量%を超えると粗大晶出物ができ、逆に強度を低める結果となる。従ってNiの添加量は、0.1〜2.0質量%の範囲が好ましい。
【0031】
本アルミニウム合金は、いわゆる共晶Siを耐摩耗性の1因子として利用するものであるが、この共晶をより均一に微細に分散させるため、また、粗大な初晶の発生を抑えるために、Sr,Ca,Na、Sb等の中から選ばれる1種以上の元素を計0.5質量%以下添加することもできる。好ましくは、Sbが、0.05〜0.5質量%、Srが0.005〜0.05質量%であり、特にSrは、微量添加で効果が得られ、またSrは溶解時の酸化等による減量が少なく望ましい。
【0032】
第1図は、本発明の鍛造法によるアルミニウム合金スクロール部品の製造工程を示す。
前述の如く、成分を調整したアルミニウム合金は、溶解し、連続鋳造により丸棒に形成されるが、本発明では、粗大なSi初晶の発生を抑制するため、径130mm以下の連続鋳造棒に鋳造する。
【0033】
鋳造棒径が130mm以下の連続鋳造では、通常の200mm径以上の押出し用ビレットと比較して、冷却速度が格段に速く、従って凝固速度が速い。そのため共晶Siはより微細化され、また通常のビレットに見られる粗大な初晶SiがSiの量が10質量%を超えてもみられず、さらに先に述べたSr,Ca,Na,Sb等の添加元素の添加により、12.5質量%まで実質的に初晶Siの発生が見られず粒径が15μmを超えるSi粒子が含まれることなく、前述した問題が回避される。
【0034】
また、共晶Si粒径は、本合金組成により本発明の製造法によれば、15μm以上のものは実質的に見られず、通常最大で10μm程度である。また平均粒径では、3μm以下とすることが出きる。ここでいう実質的に見られずとは、顕微鏡の一視野内に発見されない確率が99%以上あるということである。このような状態を15μm以上の粒径Si粒子を実質的に含まないことを意味する。
【0035】
ここで、粒径は顕微鏡写真から粒子の大きさを直接計測することもできるが、ルーゼックス等の名称で呼ばれる顕微鏡画像解析装置により、画像処理を行い求めることが正確であり好ましい。本発明では、1個ごとの粒子の面積を同一面積の円相当に換算した時の直径を粒径と定義する。
【0036】
鋳造棒の径は、好ましくは細いほうが凝固速度が速いため、共晶Siも微細となりやすく、初晶Siの発生の抑制効果が高い。このため、径85mm以下が、後述する据込み効果も高いこと等をも勘案し、鍛造用素材としてより好ましい。
【0037】
本発明の鍛造用素材は、スクロール製品の外径より小さく鋳造し、スクロール鍛造品の重量に合せた長さに切断し、その後据込み加工を行い必要径に広げることに特徴がある。据込み後の径は、スクロール製品のフランジ部分の外径に合わせ決定する。この細径連続鋳造棒の切断と据込み加工により、材料特性としても、Si粒子の均一分散のため、伸びや疲労特性の改良がみられる。
【0038】
次に据込み加工とは、丸棒切断材を両切断面から上下パンチでプレスし径を広げるだけのいわゆる自由鍛造でも可能であるが、金型で外径を拘束する型鍛造を採用したほうが直径と厚みの寸法精度が良くなり、次工程のスクロール鍛造を生産性良く実施する上で好ましい。
【0039】
据込み加工の加工率は20〜70%が適当である。
ここでいう加工率とは、以下の式に基く。
【0040】
【数1】
【0041】
通常据込み加工は、加工率が低い場合は室温でも可能であるが、材料を加熱した状態で熱間で行った場合の方が加工率を大きく取れるので望ましい。しかし、熱間でも加工率が大きすぎる場合は、加工限界から外周面に割れがでること、据込み加工用素材の外径に対する高さの比が高くなり成形過程で座屈して健全な据込み材が得られない可能性があり、本材料では70%以下が適当である。好ましくは60%以下である。20%未満では、伸びや疲労特性の改良効果があまり期待できないだけでなく、後述する鍛造用素材のばらつきの低減効果が小さい。
【0042】
なお、この据込み加工は上述の如く通常、材料を加熱して行なわれる。この据込み加工の前に材料は、そのまま加熱して据込み用に使用できないことはないが、事前に均質化熱処理をしておくことが後述するピーリング面削時の表面状況を良くし、また据込み時の変形能を上げる意味で好ましい。この時の温度は、480〜520℃で30分〜4時間が適当で、480℃未満では素材の均質化が十分に行なわれ難く、520℃を超えると結晶の粒界での共晶融解等が起こる。好ましくは495〜510℃である。30分未満では均質化の効果が少なく、4時間を超えると、共晶Siが大きくなりやすくなる。
更に必要に応じ、事前に材料表面をピーリングして面削しておいても良い。これにより、素材径精度が上がる利点と、据込み後の被加工材の外周の表面状況が良くなる。
【0043】
鋳造棒の径を小さくし、切断後、据込み加工を行って素材とすることの利点は、次の3点による。
【0044】
一つは、先に述べたような冷却速度の大きい鋳造材としているため内部の組織、特に初晶Siの抑制、共晶Siの微細化等が達成されるためである。また鋳造材に若干塑性加工を加えることにより、伸びや疲労特性が良くなる効果もある。
【0045】
二つ目の利点は、以下の理由による。
切断時の切断長さのばらつきが、鍛造用素材の体積(重量)のばらつきとなり、ひいては個々のスクロール鍛造品の羽根高さのばらつきとなる。切断においては、通常丸鋸切断機が使用される。切断時の長さ(厚さ)のばらつきは、径の小さいほうが切断材料の厚さ設定のための移動が的確に行なわれやすく、さらに切断時の切断長さのばらつきが小さい傾向にある。更に、細い材料で切断したほうが、断面積が小さい分、太いものと同じ長さ(厚さ)のばらつきが生じたとしても、素材体積(重量)ばらつきとしては小さくなる。従って、鍛造用の素材の体積(重量)バラツキを小さくして、スクロール鍛造品の羽根高さのバラツキを小さくできる。
【0046】
三つ目の利点は、材料の歩留が向上することである。
ある定尺の丸棒材から鍛造用素材を切断する場合、先端と後端の端材と、切断切粉等の屑が発生する。この切粉によるロスの量は、切断の鋸歯の厚み切断代と丸棒の直径によって決まる。つまり、太径と小径の丸棒から同じ体積の素材を切出す場合、切出される素材1個当たり発生する切粉の量は、太径の丸棒を用いた場合の方が当然多くなる。細い直径からの切断の方が切断による材料ロスを少なく、歩留まり高い鍛造用素材を得ることができ、経済的である。
【0047】
以上の利点を考えると、加工率が小さいと上記利点が小さくなるため、加工率は20%以上、好ましくは40%以上がよい。
【0048】
上記据込み加工を行った予備成形品を素材として熱間鍛造を行う。成形素材の径は、スクロール製品のフランジ外径に合わせて決定される。
【0049】
熱間鍛造温度は、この種の合金の熱間鍛造温度としては、300〜450℃、好ましくは350〜450℃で行う。温度が低すぎると形状がでないか限界割れが発生する。温度が高すぎると膨れ、挫屈等が生じる可能性がある。
【0050】
通常、熱間鍛造では、鍛造の金型への材料の焼き付きを防止するために、被加工材及び金型に潤滑剤を塗布する。一般にアルミニウム合金の熱間鍛造では、黒鉛を水又は鉱物油に混合した液状潤滑剤が多く使用されている。通常、簡単な形状の鍛造品では、鍛造金型に直接スプレーにより潤滑剤を吹き付けるだけで十分な潤滑及び離型効果が得られるが、形状の複雑な鍛造では、更に十分な潤滑を行わないと潤滑切れが起こり、鍛造形状が不良であったり、金型に焼き付いて鍛造が不可能になる。この場合、解決策として被加工材を潤滑剤の液中に浸漬して潤滑皮膜を被加工材に予め塗布することが行われる。特にスクロールのような形状では、羽根が高いため、深く羽根形状に彫りこんだ金型にメタルを流動させるため、スプレー方式では彫りこまれた金型の羽根形状の内壁に潤滑が完全に行き渡らないため、成型と離型が不完全で、鍛造が難しかった。そこで被加工材に予備浸漬による素材潤滑を併用することで、潤滑・離型効果を高め、生産性の高い鍛造が実現できる。
【0051】
被加工材の表面に潤滑皮膜を形成する方法は、溶剤に黒鉛潤滑を混合した液を調合し、それを被加工材に塗布する方法が考えられる。生産性の高い工程を考えた場合、速乾性の溶剤に希釈した潤滑剤を塗布もしくは吹き付ける方法がある。しかし最も経済的な方法としては、溶媒を水として、黒鉛粉末を混合・分散させた潤滑液を調合し、被加工材を加熱し浸漬後乾燥する方法がある。この場合の被加工材の加熱温度は、溶剤である水が十分短時間で蒸発・乾燥する温度が必要で、水の沸点以上でないと、潤滑液が浸漬後も表面に乾かず残るため速乾性は得られない。従って、100℃以上は必須であり、130℃以上がその生産性の点で望ましい。また、上限温度は、被加工材が溶解等の材質劣化を起こさない温度以下にすればよく、500℃以下、望ましくは450℃以下となる。被加工材の加熱には通常、加熱炉が用いられるが、熱間の据込み加工後の被加工材の余熱をそのまま利用し、据込み加工直後に潤滑液中に浸漬することも可能である。この方法では、据え込み成型後に潤滑剤の皮膜を形成し、そのまま取りだし乾燥させることができる。
【0052】
この被加工材の余熱を利用する方法を採用すれば、切断、加熱、据込み、潤滑、鍛造を連続して実施することも可能であり、効率的な生産ができる。
また、据え込み加工と鍛造を1台のプレス桟で同時に行うことも可能であり、その場合には、切断、加熱、潤滑、据込み、鍛造の工程で連続生産が可能となる。
【0053】
据込み加工と、潤滑加工された材料を被加工材としたスクロール鍛造は、次のように実施する。必要に応じ追加加熱された被加工材4を、ダイス空間2aに上方からのパンチ1により押込み、ダイス空間2a内に下方にむかって羽根部分を形成する(第6図)。このパンチ1による被加工材の押込みが始まる前に、羽根形成部のダイス空間2a内には、ノックピン7を通して背圧装置と連結したノックアウト6をあらかじめダイス空間2a上端付近まで挿入しておく(第5図)。被加工材の押込みが始まるとともに被加工材がダイス空間2aに流動して羽根として成長しようとする過程で、背圧装置からの反対方向の圧力が、背圧板3、ノックピン7、ノックアウト6を通じて、羽根の先端に負荷され、羽根を均一成長させる。
【0054】
鍛造時にダイス羽成形部へのメタルフロー量は背圧を負荷しない場合、不均一となりやすい。背圧をかける目的は、羽根部へのメタルフロー量をより均一にすることである。背圧力の大きさは、羽根部へのメタルフロー状態が均一になるように決めることができる。よって、適切に背圧力を負荷することにより、ダイスの羽根成形部へのメタルフロー量が均一となり、製品の羽根の高さは均一となる。この背圧力が高過ぎると、形成過程で羽根が座屈するため健全な製品が得られない。これらの条件から、スクロールのような羽根部とフランジ部の水平断面積比が、1/3〜1/5程度の形状で、羽根部の高さが、羽根部の厚みの4〜10倍の鍛造品を、前述の加熱温度で成形する場合、羽根部の先端への面圧として、第9図に示すように、一定背圧で、40〜120N/mm2の範囲が適当であり、望ましくは、60〜100N/mm2である。
【0055】
また、第8図に示すように、フランジを成形する金型に凹部13がある場合には初期背圧(Pfull)から背圧を変化させるのが好ましい。特に、凹部を羽根部から20mm以内(好ましくは10mm以内)の位置にある金型を用いる場合、上述の背圧を変化させるのが好ましい。羽根部へのメタルの流入に引っぱられて凹部の充満率が悪くなることを、背圧の変化により抑えることができるからである。この場合の背圧負荷パターンを第10図、第11図に示す。
【0056】
初期に高い背圧(Pfull)を負荷した状態で、金型内に被加工材4を入れパンチ1でプレスする。この状態では、被加工材の金型の羽根形成部への被加工材の流動が抑制されているためフランジ部が優先的に形成される。
この時の背圧条件は、被加工材の羽根部への流動を抑制できる荷重を負荷してやればよく、検討の結果、従来の背圧の2倍の圧力以上は必要である。背圧が高すぎるとフランジ形状に被加工材が充填後、羽根部への被加工材の流動が抑制されるので、2〜4倍の80〜240N/mm2の範囲が適当であり、望ましくは、120〜200N/mm2である。
【0057】
次に、被加工材がフランジ形状に充填すると、被加工材は背圧でバックアップされているノックアウトを押し下げ、金型の羽根形成部に流動し、背圧を受けながら羽根部を成長させる。この羽根部がある程度成長した段階で、背圧を低下するのであるが、このタイミングは、羽根部が均一な高さに成長を開始した時点が適当である。成長を開始する以前では羽根部が十分揃わずに成長を開始してしまうからである。具体的なタイミングは、スクロール鍛造品の形状に依存するが、コンプレッサ用スクロール羽根厚みが5.0〜6.0mmで高さが30〜45mmである場合を考慮し、羽根部の長さが、羽根部の厚み(D)に対して1.0〜2.0Dとすることが適切で、5〜10mm高さに成長した段階とすることが望ましい。
【0058】
尚、成長の終了過程での終了圧を、被加工材の変形応力以下とする。変形応力は羽根形成部方向への応力で、背圧が変形応力以下であれば羽根形成部に流動した被加工部材が背圧によって変形することはなくその結果、羽根部の成型精度を高くすることになる。具体的には40〜120N/mm2が適当であり、望ましくは60〜100N/mm2である。
また、圧力低下方法は、第10図の羽根部成長常化(1)から終了背圧(2)を通ることが条件となる。第11図のような急激に変化する方法よりも徐々に低下させる方法が羽根部の成型精度をより安定させるので好ましい。望ましくは第10図に示したように比例的に低下させることが良い。
【0059】
この背圧制御によって、初期にフランジ部の形成を優先的に先行させることができ、フランジ部に吸入口の凹みに欠陥を発生させず形成できる。さらに、羽根部の成長が定常的になる段階から背圧を下げることで、局部的な羽根部の膨らみや形状偏差を抑制でき、高い背圧により羽根部が座屈等を起こす現象も回避できる。そのため従来型抜きのための羽根形成部へ抜き勾配をつけて行っていたが、抜き勾配の必要もなくなる。
【0060】
上述の如く、所定の高さの有する羽根部が成型された鍛造されたスクロールは、強度及び耐摩耗性を付与するため、溶体化処理及び時効処理することが好ましい。溶体化処理及び時効処理とは、所定の温度に加熱処理した後、焼入れをし、再度別の所定の温度にて、所定時間保持する処理のことである。たとえば溶体化処理の温度は、490〜500℃が好ましく、水中焼入れ後、160〜210℃(好ましくは、170〜190℃)で1〜8時間(好ましくは、3〜6時間)の適当な条件を選ぶことにより時効硬化させることができ、HRB70〜85程度の十分な硬度の鍛造品が得られる。
【0061】
更に、熱処理後の鍛造品は、必要に応じ、主として羽根部の高さ、形状等を精密切削加工することによりスクロール部品としてコンプレッサー等へ組み込むことができる。
【0062】
以下、本発明を実施例に従って説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0063】
【実施例】
(本発明の鍛造用被加工材の製造)
表1に示すように、合金A〜Fの組成の合金を実施例1〜8として、合金G,HのSiの含有率が本発明の範囲外である組成の合金を比較例5,6として、それぞれ82mmφ×5000mm長の連続鋳造棒として鋳造速度約300mm/分の条件にて鋳造した、得られた鋳造棒を500℃、1時間の条件で均質化熱処理後、ピーリングマシンにより78mmφに面削した。
次に丸鋸切断機にて、2.5mm厚さの鋸刃でそれぞれ鋳造棒を厚さ65mmに切断し素材とした。
この素材を加熱炉にて約400℃に加熱した状態で、630トンのプレス機を用い、切断材を型鍛造にて据込み、外径が114mmの円盤状の据え込み品(被加工材)が得られた。このときの加工率は、下記に計算式を示す通り、53%であった。
【0064】
【数2】
【0065】
この時、切断で被加工材1個当たり発生した屑は約45gであった。
【0066】
【表1】
【0067】
(従来の方法による鍛造用被加工材の製造)
表1に示す合金B,Cの組成の合金、つまり実施例4,5とそれぞれ同一組成の合金を比較例3,4として、鋳造速度を約150mm/分で200mmφの連続鋳造棒に鋳造し、押出し用ビレットとした。これを500℃1時間の条件で、均質化熱処理を行った後、前述した据込み加工した材料と同じ外径114mmφを有する丸棒材に押出した。得られた丸棒材は丸鋸切断機にて、2.5mm厚みの鋸刃で、前述した据込み加工材料と同様な体積になるように厚さ30.4mmに切断した。
この切断による被加工材1個あたり発生した屑は約80gで、実施例1〜8の連続鋳造棒から素材を切り出した場合に比べて2倍近い材料のロスがみられた。
【0068】
(鍛造用被加工材の内部組織観察)
次に前記被加工材について、内部組織の観察、寸法重量測定用として各10個の据込加工材あるいは切断材をサンプルとして抜き出した。
これら10個の寸法及び重量測定を実施後、丸形切断材の中心部から約20mm角のサンプルを切り出し、面内のミクロ組織観察、即ち、初晶Siの有無、大きさ、個数、共晶Siの大きさを測定した。重量は上皿天秤にて測定した。また厚さはマイクロメーターにより2箇所/個測定した。その結果を表2に示す。なお、重量、厚さの数字は、10個のサンプルの最大値と最小値を示す。
【0069】
【表2】
【0070】
据込み加工材料を被加工用素材とした場合、材料中に粗大な初晶Siが発生せず、素材の寸法精度も厚み及び重量精度が高く、切断によるロスも少なく切断歩留も向上して、寸法精度と材質としての信頼性の高い被加工用素材が経済的に製造できることを示している。
【0071】
(スクロール鍛造)
次に、上記方法で製造された据込みした被加工材及び押出・切断した被加工材を加熱炉で、200℃の加熱後、黒鉛系の水溶性潤滑剤に数秒間浸漬後取出し、潤滑被膜を形成した。被加工材の温度を400℃に上げた状態でパンチ圧450トン、背圧の面圧40〜120N/mm2にて鍛造を行い、フランジ部径約115mmφ、フランジ部厚さ約23.0mm、羽根部高さ39.6mm羽根部厚み5.7mmで、フランジと羽根の水平面の面積比が約4.0であるスクロール部品を製造した。
また比較例1,2として合金Aの据込み加工材を、背圧条件それぞれ30、130N/mm2にて鍛造した。
【0072】
上記条件にて各材料について連続50個の鍛造を行い、1個の鍛造品内でのスクロール羽根部高さの最大値と最小値との差(最大値−最小値)を測定し、その50個のばらつきを調べた。同時に鍛造品の3ヶ所の羽根部の高さ(第1図の渦巻き開始点11a、渦巻き終了点11c、及び点11aと11cを結ぶ線上の11cに隣接する羽根上の点11b)の平均の50個のバラツキも測定した。また、羽根部の形状の仕上り状態についても観察した。
上記測定の結果を表3にまとめて示す。背圧が30N/mm2では鍛造品1個内の羽根部高さの差が1mmを超える寸法となり、背圧不足により羽根部の形状が揃わないことがわかる。また、130N/mm2では羽根部が背圧で挫屈してしまい健全な鍛造品が得られなかった。
【0073】
【表3】
【0074】
従来の押出し、切断による方法で得られた被加工用素材を用いた鍛造品は、50個の平均羽根部の高さが、1.0mm以上変動していた。つまり、表2で示したとおり被加工材の体積バラツキが鍛造品の個々の羽根部の高さのバラツキに影響していることを示している。
しかるに、本発明によれば、1個内の羽根部の高さのばらつきは0.5mm以内の公差で、また個々の平均羽根部高さのばらつきも0.5mm以内におさまり、正確な形状で製造できていた。
【0075】
次に、第12図に示すような二段の段部13,14の下段の段部にR2.0mmの丸味を施した金型を用い、背圧負荷パターンを変えて鍛造を行い、転写される鍛造品の形状を測定した。羽根部は、羽根高さを5点取り、最大値と最小値の差をバラツキとして評価した。被加工用素材は、実施例1と同じ物を用いた。
【0076】
背圧負荷パターンとしては、第9図に示すように成型終了まで一定負荷のパターン、第10図に示すように、初期に高い背圧を負荷した後、徐々に終了背圧を下げるパターン(A)、及び第11図に示すように、初期に高い背圧を負荷し、所定時間経過後、終了背圧に急激に下げるパターン(B)とした。金型への充満率が良好であると、製品の凹部形状のRが、金型の形状と同じになるが、充満率が不充分であると金型壁面とすき間ができるために製品のRは大きくなる。
結果は、表4に示す通りであって、背圧負荷パターン(A)では凹部の成形が従来の背圧負荷パターンに比べより精度良く転写されており、羽根部の高さも良好である。背圧負荷パターン(B)では凹形状の成形は良好であるが、羽根部の高さのバラツキがやや大きくなった。
【0077】
【表4】
【0078】
次に、実施例4,5、比較例3〜6の鍛造品を各10個、500℃にて加熱後水中焼入れ後、180℃6時間の時効処理を行なった。その後、この鍛造品から引張試験片を採取、引張特性を評価するとともに、この鍛造品の羽根側壁をエンドミルにて約0.5mm切削加工を行い、切削面の仕上がり状態を観察した。更に、鍛造用の被加工材に同様の熱処理を施し、疲労試験片を採取して、小野式回転曲げ疲労試験機にて107サイクル時の破断応力から疲労特性を評価した。その結果を表5に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
据込み材を被加工材とした場合、材料の破断伸びが改善されており、その結果、疲労強度も高く、切削時の加工仕上がりも良好な製品が得られている。粗大な初晶Siの発生を抑制することで、これらの効果が得られることがわかる。
【0081】
なお、内部組織の確認のため、各実施例1〜8についての時効処理後の鍛造品から中心部を切り出し、ミクロ組織観察を行った。この結果では、いずれの試料から中心部を切り出し、ミクロ組織観察を行った。この結果では、いずれの試料でも初晶Siは見られず、共晶Siの粒径の鍛造、熱処理による変化は見られなかった。
また、この合金組成から外れた比較例5、6では、初晶Siの発生に伴う切削面の傷の発生や、強度の低下がありスクロールとして不適であった。
【0082】
【産業上の利用可能性】
本発明の合金、鍛造製法により、アルミニウム合金製鍛造スクロールの1個内の羽根部の高さばらつきだけでなく、全鍛造品間の平均羽根部の高さのばらつきを少なくできるとともに、強度低下の原因となる、或いは後の切削加工時に有害な初晶Siの発生を抑制した鍛造スクロール部品が量産できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1図は、本発明による鍛造スクロール部品の製造工程図である。
【図2】 第2図は、スクロール鍛造品の一例を示す斜視図である。
【図3】 第3図は、従来の鍛造スクロール部品の製造工程図である。
【図4】 第4図は、従来のスクロール部品の鍛造方法の一例を示す断面図である。
【図5】 第5図は、本発明に依るスクロール部品の鍛造方法の鍛造開始前の断面図である。
【図6】 第6図は、本発明に依るスクロール部品の鍛造方法の鍛造中の断面図である。
【図7】 第7図は、鍛造されたスクロール部品の断面図である。
【図8】 第8図は、スクロール部品のフランジに凹部を形成するための金型の断面図である。
【図9】 第9図は、羽根部先端への背圧負荷が一定であるパターン図である。
【図10】 第10図は、羽根部先端への背圧負荷が所定時間経過後、徐々に減圧するパターン図である。
【図11】 第11図は、羽根部先端への背圧負荷が所定時間経過後、急激に減圧するパターン図である。
【図12】 第12図は、スクロール部品のフランジに二段の段部を形成するための金型の断面図である。
【符号の説明】
1 パンチ
2 ダイス
2a ダイス空間
3 背圧板
4 被加工材
5 スクロール部品
6 ノックアウト
7 ノックピン
11 羽根部
11a 渦巻き開始点
11b 羽根上の点
11c 渦巻き終了点
12 フランジ部
13 凹部
14 段部
L1 フランジ部の厚み
L2 羽根高さ
Claims (10)
- Si:8.0〜12.5質量%、Cu:1.0〜5.0質量%、Mg:0.2〜1.3質量%を含み、残部がAlと不可避的不純物であるアルミニウム合金を直径130mm以下の丸棒に鋳造する工程と、
該アルミニウム合金丸棒を切断し鍛造用素材とする工程と、
該鍛造用素材を20〜70%の加工率で据込み加工して被加工材とする工程と、
該据込み加工した被加工材を300〜450℃の材料温度でパンチにて加圧し、パンチ加圧方向にスクロール羽根を成形するための鍛造工程と、から成り、
該鍛造工程は成形されるスクロール羽根部分の先端に該パンチ加圧より小さい反対方向から背圧を負加する工程を含むことを特徴とするアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法。 - 該アルミニウム合金を丸棒に鍛造する工程は、アルミニウム合金を直径85mm以下の丸棒に鍛造する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法。
- 該アルミニウム合金は、更に、Ni:2.0質量%以下、及び/又は、Sr,Ca,Na,Sbから選ばれる1種以上を、計0.5質量%以下を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法。
- 該背圧は、80〜240N/mm 2 の一定圧力を負荷することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法。
- 該背圧は、初期は80〜240N/mm 2 であり、羽根部が成長開始した時点より徐々に低下させ、終期は40〜120N/mm 2 であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法。
- 該据込み加工する鍛造用素材は、予め480〜520℃の温度で0.5〜4時間の均質化熱処理することを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法。
- 該据込み加工する鍛造用素材は、予め表面ピーリング加工処理することを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法。
- 該据込み加工した被加工材は、その表面を潤滑皮膜で被覆したものを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法。
- 該被加工材を100〜500℃に加熱し、黒鉛を水に分散させた潤滑液に該加熱加工材を浸漬して加工材表面を潤滑皮膜で被覆することを特徴とする請求項8に記載のアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法。
- 該鍛造工程で鍛造した鍛造品は、更に、溶体化処理及び時効処理をすることを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金製鍛造スクロール部品の製造方法。
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2001
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