JP4743888B2 - 酸性土壌の中和工法 - Google Patents
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そして中和剤のpHが8以下では中和剤の投入量が多くなり均一とならないことがあり、またpHが11以上では中和剤では周囲の環境破壊のおそれがある。したがって中和剤のpH濃度はこの範囲となる。
図10は、従来から行われてきた工法を簡略な実験装置に置き換えて示した模式図であり、水道水W0を、円筒状ガラス容器に充填した砂礫(酸性土壌より採取)C2に通水し、砂礫C2を通過させた後、再度砂礫C2に水道水W0を通水させて、砂礫C2の間隙水を入れ替える様態を示している。
実験では、通水後の水道水W0が中性になるのに要した入れ替わり回数を求め、通水前及び水道水W0が中性になった時の、砂礫C2及び水道水W0のpH濃度及び鉛濃度の変化を求めている。
通水前の砂礫C2は、炭酸カルシウムを含まず、pH3.2で、鉛の溶出濃度が0.077mg/Lである。又、通水する前の水道水はpH7.6である。
実験結果のその他の詳細については、従来技術1(第1比較例)として後述する。
そして、このサイクルを、所定回数以上繰り返し、通水液W2が中性になるのに要した入れ替わり回数を求め、通水前及び通水液W2が中性になった時の、砂礫C3及び通水液(炭酸ナトリウム水溶液)W2の、pH濃度及び鉛濃度の変化を求めている。
通水前の砂礫C3は、炭酸カルシウムを含まず、pH3.2で、鉛濃度が0.077mg/Lである。また、砂礫C3に添加する前の炭酸ナトリウム水溶液W2は、一旦地下から回収した排水処理水に炭酸ナトリウムを溶解させて作成し、pH10に調整している。
この理由として、水のpHを上げるために必要な炭酸ナトリウム量と、緩衝作用の強い酸性土壌のpHを上げるために必要な炭酸ナトリウムの量は、酸性土壌の方が約100倍も多く必要である結果が得られている。即ち、水に炭酸ナトリウムを添加してpHを上げたもので中和しようとしても、酸性土壌への影響は極めて小さく、このためほとんど酸性土壌と接触した後の水のpHは低い状態が維持されるものと考えられる。
実験結果のその他の詳細については、従来技術2(第2比較例)として後述する。
図9の装置における実験では、土壌に炭酸カルシウムを添加した砂礫C1をガラス容器V内に充填し、そのガラス容器Vの一方の開口部側から現場の地下水W1を通水し、ガラス容器Vの他方の開口部から充填した地下水を回収している。同様の通水行為を地下水が中性になるまで繰り返し、中性になるまでの通水回数をカウントしている。
なお、図9では、砂礫C1に加え、更に炭酸カルシウムを混合してない土壌(土壌のpH値が3.2、鉛濃度が0.077mg/L)だけの砂礫Cを接続して実験している。後述の図16の実験結果「通水液が中性になるのに要した入れ替わり回数(26)」は、砂礫Cの入れ替わり回数である。
先ず、図1〜図3を参照して第1実施形態を説明する。
先ず、図示しないボーリングロッドによって、予め酸性土壌4を含む領域に削孔されたボーリング孔へ噴射管5を挿入する。噴射管5の先端は、地下水層2における施工領域の下端、即ち、酸性土壌4の底部まで下ろされる。
図1では明示していないが、噴射管5の先端近傍には、1個以上のスラリー噴射ノズルがスラリージェットJsの向きが水平となるように形成されている。
スラリータンク6は高圧ポンプ7を介装したスラリー供給管8によって噴射管5の図示しないスイベルジョイントと接続されている。
地下水層2の地下水の流れは矢印Wで示すように、図示の例では左から右方向へと流れている。図1においても地下水の流れを矢印Wで示している。
そして弱アルカリ性固体の対土壌混合量は、地盤1m3に対して、3〜140kg、即ち、土壌の乾燥密度に対して0.2〜10%とすることが好ましい。
図12は、土壌中和実験の実験結果を示すもので、縦軸に土壌のpHを、横軸に土壌に対する弱アルカリ固体の添加量(重量%)をとっている。詳細にはpH3.8の酸性土壌に対して、乾燥土壌当たりの所定重量%となるように弱アルカリ固体(炭酸カルシウム)を添加し、所定時間経過後の土壌のpHを求めている。
図12の結果によれば、地盤環境に影響が小さいとされる水質汚濁防止法の排水基準であるpH5.8以上となるのは0.2%以上の添加が必要である結果を得た。
詳細にはpH3.8の酸性地下水に対して、地下水当たりの所定重量%となるように弱アルカリ固体(炭酸カルシウム)を添加し、所定時間経過後の地下水のpHを求めている。
図13の結果によれば、0.02%以上添加すれば中性となることを確認した。しかし、更に過剰に添加してもpHは強アルカリとはならず、pH8程度以下に留まるとの結果を得た。
土壌の乾燥密度は1.4〜2.0t/m3である。図12の結果から土壌1m3に対して弱アルカリ性固体の最低添加量は0.2%であるから、1.4×1000×0.002=2.8kg、これを概数でみれば3kgとなる。
また、過剰な添加は地盤の透水性を低下させるので、添加量は1割以下、つまり、1400×0.1=140kg以下とすればよい。
図14の実験装置では、pH3.6、鉛濃度2.2mg/Lの現場地下水W1を、混合前pH3.2の土壌に20kg/m3の炭酸カルシウムを添加した砂礫C4に通水して、砂礫C4及び通水後の水のpH濃度及び鉛の漏出濃度を確認している。
図15によれば、通水直後からpH6〜pH8の範囲であり、「3〜140kg」の妥当性を確認した。また、砂礫C3への通水を50回入れ替えても、継続的に炭酸カルシウムによる中和作用によって、地下水は中和され続けることが分かった。
更に、通水前は通水に用いる現場地下水W1の鉛濃度が2.2mg/Lであったが、中和によって鉛は析出して土壌に保持されるため、通水後の地下水中の鉛濃度は検出限界未満(0.005mg/L未満)以下となる結果を得ている。
図3において、施工領域の上方の汚染源を有する上層部を掘削除去する(ステップS1)。なお、施工領域の上方に汚染源が存在しない場合には、ステップS1は省略される。
次のステップS2では所定の数のボーリング孔を削孔する。ボーリング孔は例えば、縦・横の孔と孔との間隔が等ピッチに削孔されており、その複数のボーリング孔の数箇所において施工領域のpHを測定する(ステップS3)。
そのように、施工コストの削減及び工期短縮のためにも係るpHの事前測定(ステップS3)を行うのが望ましい。
本実施形態では、地下水のpH値の範囲は、例えば、pH5(弱酸性)以下を不合格(NG)としている。
また、重金属が鉛であれば、例えば鉛濃度が環境基準値である0.01mg/L以上を不合格(NG)としている。
ステップS4〜ステップS8を1サイクル(中和剤の注入サイクル或いは補充サイクル)とすれば、ステップS3でpHを測定しており、そのpHに即した中和剤を添加することで、中和剤の補充サイクルの回数を減らすことが出来、その結果、施工コストを削減させ、工期の短縮が可能となる。
図1〜図3の第1実施形態は、スラリー状の弱アルカリ性固体(中和剤)を高圧ジェットによって酸性土壌に噴射する実施形態であった。
これに対して図4の第2実施形態は、撹拌翼によって酸性土壌を撹拌しながら、スラリー状又は粉体の弱アルカリ性中和剤を酸性土壌に添加・混合する実施形態である。
すなわち、第1実施形態におけるステップS4の内容が、スラリーの高圧ジェットによる撹拌混合体9の造成であるのに対して、第2実施形態におけるステップS4の内容は、注入管52で施工領域に注入したスラリーFsを撹拌翼54によって原地盤と撹拌して撹拌混合体90を形成している。
上記以外に関しては、概略第1実施形態と同様である。
図5における符号90は、弱アルカリ性固体を含むスラリーが地盤中に浸透した領域を示す。
図6の第4実施形態は、弱アルカリ性固体(中和剤)を地盤に混合するに際して、予め透水性の高い土質材料と弱アルカリ性固体とを混合した混合材を地下水面下に水平方向に敷き詰める実施形態である。
(7−2)の工程では、ケーシング57の先端57bが施工領域4の下端に届いた後、ケーシング57の地上側端部57aから礫などの透水性材料と弱アルカリ性固体との混合材料Mをケーシング57内に投入する。
(7−3)の工程では、混合材量Mがケーシング57の内部全体にいきわたった後、ケーシング57を地上側に引き抜く。ケーシング57が引き抜かれたあとには、透水性材料と弱アルカリ性固体との混合パイルMpが造成される。
図8において、混合パイルを造成していない位置には、酸性土壌のpHを測定できるように、図示の例では6箇所のpH検査孔12が形成されている。
また、従来技術における酸性土壌の中和効果を同時に行った4つの比較試験(従来技術1〜従来技術4)で確認している。
以下、従来技術と比較することによって、本発明の実施形態の効果を説明する。
なお、図16における従来技術Aと従来技術Bは、土壌pHの低くない砂を用いていたため、当初予定の結果が得られ難いと判断して、従来技術1、従来技術2で再度やり直している。したがって、従来技術A、従来技術Bに対しては実験モデルの図示を省略した。
また、図17は、実施形態(図9)と、比較対象の従来技術1、従来技術2における、pH7〜pH10の通水液の入れ替わり回数とpHとの関係を示している。
又、従来技術2(図11の実験)に対しても4回の減少となっている。
このことは、施工領域に注水する場合は、実施形態(図9の実験)が、従来方式の従来技術1(図10の実験)、従来技術2(図11の実験)に対して、中性化(酸性の中和)に要する水の量を大幅に削減して、直接的なコストを削減すると共に、工期の大幅な短縮にも繋がることを意味している。
従来技術1(図10の実験)は、38回程度の間隙水の通水によって、pHが7を上回っている。
従来技術2(図11の実験)は、間隙水の通水回数が30回を超えたところでpH7となった。
従来技術2(図11の実験)では、30回を超えて通水流量20〜90cm3/日で行ってもpHは殆ど変化しない。しかしながら3日間通水を止めた後に間隙水の通水回数33回目においてはpHの急激な低下(リバウンド;図17のR点)を生じた。
即ち、地下水の入れ替えのみによる地下水の中和は、土壌の中和を十分にすることができないためリバウンドの危険性を示唆している。
2・・・地下水層
4・・・酸性土壌
5・・・噴射管
6・・・スラリータンク
7・・・高圧ポンプ
8・・・スラリー供給管
9・・・撹拌混合体
10・・・注水孔
11・・・揚水孔
12・・・pH検査孔
50・・・スラリー注入装置
52・・・注入管
54・・・撹拌翼
G・・・地中
Js・・・スラリージェット
S・・・スラリー
W・・・地下水の流れ
Claims (2)
- 表面層(1)の下の地下水層(2)に含まれた酸性土壌(4)に弱アルカリ性の中和剤を添加する酸性土壌の中和工法において、予め酸性土壌(4)を含む施工領域に削孔されたボーリング孔に噴射管(5)を施工領域の下端の酸性土壌(4)の底部まで挿入し、中和剤としてpH濃度がpH8〜pH11の弱アルカリ性固体と水とを混合したスラリー(S)をその噴射管(5)のノズルに供給し、その噴射管(5)を回転させながらスラリージェット(Js)を噴射させて地上側に引き上げて所定の直径の弱アルカリ性固体と原地盤との撹拌混合体(9)を形成し、施工領域の地下水の流れの上流側に注水孔(10)を設け、その施工領域の下流側に揚水孔(11)を設け、その施工領域にpH検査孔(12)を設け、注水孔(10)から注水して揚水孔(11)から地下水を汲み上げ、またpH検査孔(12)の位置での土壌のpHをpH5以上pH9以下とすることを特徴とする酸性土壌の中和工法。
- 表面層(1)の下の地下水層(2)に含まれた酸性土壌(4)に弱アルカリ性の中和剤を添加する酸性土壌の中和工法において、注入管(52)とその注入管(52)と平行で先端に複数の撹拌翼(54)を設けた撹拌ロッド(53)とを備えそしてその撹拌ロッド(53)を回転させる油圧モータ(51)を有するスラリー注入装置(50)を準備し、中和剤としてpH濃度がpH8〜pH11の弱アルカリ性固体と水とを混合したスラリー(S)をその注入管(52)に供給し、その撹拌ロッド(53)を回転させながら施工領域の下端の酸性土壌(4)の底部まで下降させて撹拌翼(54)によって弱アルカリ性固体と原地盤との撹拌混合体(90)を形成し、施工領域の地下水の流れの上流側に注水孔(10)を設け、その施工領域の下流側に揚水孔(11)を設け、その施工領域にpH検査孔(12)を設け、注水孔(10)から注水して揚水孔(11)から地下水を汲み上げ、またpH検査孔(12)の位置での土壌のpHをpH5以上pH9以下とすることを特徴とする酸性土壌の中和工法。
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