本発明は、泥水シールド工法、地中連続壁工法といった泥水工法で使用される掘削用泥水の作泥システムに関する。
泥水シールド工法、地中連続壁工法といった泥水工法では、いわゆる掘削用泥水が使用されるが、かかる掘削用泥水には、切羽や溝壁を安定させるべく、良好な造壁性を有していることが基本的に要求されるとともに、スラリー輸送等の関係上、逸液が防止される範囲内で低粘性が保持されることが望ましい。また、地中連続壁工法では、耐セメント性を有していることも要求される。
かかる機能を満たすべく、従来、ベントナイト、CMC、分散剤、ポリマー剤等を作泥材料とした掘削用泥水が広く使用されてきた。このような掘削用泥水は、ベントナイト等が泥水中で良好に分散するため、低粘性が維持されるとともに、分散されたベントナイト等が切羽や溝壁に良好なマッドケーキを形成し、かかるマッドケーキによって止水性ひいては切羽や溝壁の安定を確保することが可能となる。
特開平4−136398号公報
特開平11−62472号公報
特開平2−202578号公報
特開2000−256661号公報
特開2000−87023号公報
しかしながら、ベントナイト、CMC、ポリマー剤といった作泥材料はいずれも粉体であるため、これらを貯蔵しておくためのストックヤードが必要になるほか、これらを溶解させるための混練ミキサーが不可欠となって作泥プラントの規模が大きくなるとともに、プラント敷地に十分なスペースを確保できなかった場合には、プラント構成が複雑となり、敷地内の車両通行に支障をきたすという問題を生じていた。
また、このような問題に加えて、上述した作泥材料が本来的に水に溶解しにくいため、混練ミキサーを用いたとしても溶解作業に手間と時間を要し、その結果、掘削用泥水の作製にもおのずと時間がかかるという問題も生じていた。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、ストックヤードや混練ミキサーを不要にして作泥プラントの規模を縮小するとともに、掘削用泥水を簡単かつ容易に作製することが可能な掘削用泥水の作泥システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムは請求項1に記載したように、掘削泥水用泥膜形成剤が貯留された第1の薬剤タンクを備えるとともに該第1の薬剤タンクに接続された薬剤吐出管を介して前記掘削泥水用泥膜形成剤を吐出するように構成するとともに、前記掘削泥水用泥膜形成剤を、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)のみを構成単位とする重量平均分子量Mwが20万〜300万の(共)重合体(x′)のみで構成することで、ベントナイト及びCMCを作泥材料として不要に構成したものである。
また、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムは請求項2に記載したように、掘削泥水用泥膜形成剤が貯留された第1の薬剤タンクと、清水が貯留された清水槽と、前記第1の薬剤タンク及び前記清水槽に連通接続された混合槽とからなり、該混合槽を、前記掘削泥水用泥膜形成剤と前記清水とを混合して泥水に添加される混合液を作製するとともに該混合槽に接続された混合液吐出管を介して前記混合液を吐出するように構成し、前記掘削泥水用泥膜形成剤を、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)のみを構成単位とする重量平均分子量Mwが20万〜300万の(共)重合体(x′)のみで構成することで、ベントナイト及びCMCを作泥材料として不要に構成したものである。
また、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムは請求項3に記載したように、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤が貯留された第1の薬剤タンクを備えるとともに該第1の薬剤タンクに接続された薬剤吐出管を介して前記掘削泥水用泥膜形成剤及び前記掘削泥水用分散剤を吐出するように構成するとともに、前記掘削泥水用泥膜形成剤を、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)のみを構成単位とする重量平均分子量Mwが20万〜300万の(共)重合体(x′)のみで構成することで、ベントナイト及びCMCを作泥材料として不要に構成し、前記掘削泥水用分散剤を、重量平均分子量Mwが10000乃至14000のポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩若しくはそれらの共重合体又は炭酸ナトリウムの少なくともいずれかで構成したものである。
また、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムは請求項4に記載したように、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤が貯留された第1の薬剤タンクと、清水が貯留された清水槽と、前記第1の薬剤タンク及び前記清水槽に連通接続された混合槽とからなり、該混合槽を、前記掘削泥水用泥膜形成剤及び前記掘削泥水用分散剤と前記清水とを混合して泥水に添加される混合液を作製するとともに該混合槽に接続された混合液吐出管を介して前記混合液を吐出するように構成し、前記掘削泥水用泥膜形成剤を、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)のみを構成単位とする重量平均分子量Mwが20万〜300万の(共)重合体(x′)のみで構成することで、ベントナイト及びCMCを作泥材料として不要に構成するとともに、前記掘削泥水用分散剤を、重量平均分子量Mwが10000乃至14000のポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩若しくはそれらの共重合体又は炭酸ナトリウムの少なくともいずれかで構成したものである。
また、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムは、前記薬剤吐出管又は前記混合液吐出管を地中連続壁構築用の掘削溝内に連通接続したものである。
地中連続壁工法や泥水シールド工法といった泥水掘削工法においては、溝壁や切羽の安定を図るべく、溝壁等に濾水量の少ない良質な泥膜(マッドケーキ)を形成し、泥水圧を溝壁等に有効に作用させる必要があり、そのためには、ベントナイト、CMC、ポリマー剤といった造壁性を有する作泥材料が従来、必要不可欠であった。
しかしながら、これらの作泥材料を使用しなければならないことに上述したような問題点があることに鑑み、本出願人は、これらの作泥材料を使用することなく、掘削土と水だけで掘削用泥水を作製することができないか、特に地中連続壁に適した掘削用泥水を作成することができないかという点に着眼し、さまざまな実験を重ねた結果、掘削土と水だけで溝壁や切羽での造壁性を確保し、その安定性を確保することができる掘削泥水用分散剤や新規な掘削泥水用泥膜形成剤を開発した。
さらに、本出願人は、かかる掘削泥水用分散剤のみならず、新規に開発した掘削泥水用泥膜形成剤も液状であることに着眼し、従来の作泥プラントとは全く異なる新規なプラントの開発に成功したものである。
請求項1に係る掘削用泥水の作泥システムにおいては、第1の薬剤タンクに貯留された掘削泥水用泥膜形成剤を薬剤吐出管を介して吐出させ、これを泥水に添加して掘削用泥水を作製する。
また、請求項2に係る掘削用泥水の作泥システムにおいては、清水槽に貯留された清水を混合槽に入れるとともに、第1の薬剤タンクに貯留された掘削泥水用泥膜形成剤を所定量混合槽に添加して適宜希釈混合し、混合液を作製する。
次に、混合槽内の混合液を混合液吐出管を介して吐出させ、これを泥水に添加して掘削用泥水を作製する。
また、請求項3に係る掘削用泥水の作泥システムにおいては、第1の薬剤タンクに貯留された掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を薬剤吐出管を介して吐出させ、これを泥水に添加して掘削用泥水を作製する。
また、請求項4に係る掘削用泥水の作泥システムにおいては、清水槽に貯留された清水を混合槽に入れるとともに、第1の薬剤タンクに貯留された掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を所定量混合槽に添加して適宜希釈混合し、混合液を作製する。
次に、混合槽内の混合液を混合液吐出管を介して吐出させ、これを泥水に添加して掘削用泥水を作製する。
このように、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムによれば、掘削泥水用泥膜形成剤を、又は掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤をそのまま泥水に添加し、又は混合槽で清水で希釈混合させた混合液を泥水に添加するだけで掘削用泥水を迅速かつ容易に作製することができる。
泥水は、工事開始時においては、他の現場から入手した掘削用泥水や新規購入した掘削用泥水を使用できることはもちろん、本発明で用いる掘削泥水用泥膜形成剤は、劣化泥水の分散性や造壁性を改善して新たな掘削用泥水に再生する機能を有しているため、他の現場で劣化した廃泥水を使用することも可能である。
一方、本発明で使用する掘削泥水用泥膜形成剤や掘削泥水用分散剤は、掘削土と水だけで溝壁や切羽での造壁性を確保し、その安定性を確保することができる機能を有しているため、いったん掘削工事が開始された後は、従来不可欠であったベントナイト、CMC、ポリマー剤といった作泥材料を何ら必要とすることなく、上述した掘削泥水用泥膜形成剤を、又は掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤をそのまま、又は混合槽で清水で希釈混合させた混合液を泥水に添加するだけで、掘削用泥水を迅速かつ容易に作製し、これを随時補給することができる。
本発明に係る掘削泥水用泥膜形成剤と掘削泥水用分散剤については、いずれも一定の分散性と造壁性を兼ね備えるので、掘削泥水用泥膜形成剤だけを単独使用するようにしてもかまわないが、これらを併用した場合においては、掘削泥水用泥膜形成剤の優れた造壁性に掘削泥水用分散剤の優れた耐セメント性とが相まって、地中連続壁工法で使用する場合に特に顕著な作用効果を奏する。
すなわち、地中連続壁工法においては、掘削用泥水の循環使用に伴ってコンクリートからカルシウムイオンが溶出し、泥水中のカルシウムイオン濃度が上昇して分散性及び造壁性が低下するが、本発明に係る掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を併用するようにすれば、カルシウムイオンによる分散性低下が掘削泥水用分散剤で抑制されるため、本発明で得られた掘削用泥水であれば、これを地中連続壁工法で循環使用しても、造壁性や低粘性は良好に維持される。
なお、掘削泥水用泥膜形成剤を単独使用する場合にしろ、掘削泥水用分散剤を併用する場合にしろ、炭酸ナトリウムでカルシウムイオンによる分散性の低下を抑制することも考えられるが、炭酸ナトリウムの添加量が多くなると、逆に塩類凝集を引き起こして分散性が低下するため、炭酸ナトリウムはあくまで補助的に使用するのが望ましい。
ここで、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムは、地中連続壁工法に限らず、泥水シールド工法等も含めた泥水工法一般に広く適用することが可能であるが、地中連続壁工法に用いる場合には、前記薬剤吐出管又は前記混合液吐出管を地中連続壁構築用の掘削溝内に連通接続するようにすればよい。
ここで、説明の便宜上、以下の発明、すなわち、
「不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)と、不飽和カルボン酸(b1)及び下記一般式(1)
R(OA)nOH (1)
R; 水素又は炭素数1〜12の炭化水素基
A; 炭素数2〜4のアルキレン基
n; 1〜100の整数
で表されるヒドロキシル基含有化合物(b2)のモノエステル(b)とを構成単位とする共重合体(x)を必須成分とする掘削泥水用泥膜形成剤又はポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩若しくはそれらの共重合体であってその重量平均分子量Mwを10000乃至14000とした掘削泥水用分散剤の少なくともいずれかが貯留された第1の薬剤タンクを備えるとともに該第1の薬剤タンクに接続された薬剤吐出管を介して前記掘削泥水用泥膜形成剤又は前記掘削泥水用分散剤の少なくともいずれかを吐出するようになっていることを特徴とする掘削用泥水の作泥システム」
を第1の参考発明とする。
同様に、以下の発明、すなわち、
「不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)と、不飽和カルボン酸(b1)及び下記一般式(1)
R(OA)nOH (1)
R; 水素又は炭素数1〜12の炭化水素基
A; 炭素数2〜4のアルキレン基
n; 1〜100の整数
で表されるヒドロキシル基含有化合物(b2)のモノエステル(b)とを構成単位とする共重合体(x)を必須成分とする掘削泥水用泥膜形成剤又はポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩若しくはそれらの共重合体であってその重量平均分子量Mwを10000乃至14000とした掘削泥水用分散剤の少なくともいずれかが貯留された第1の薬剤タンクと、清水が貯留された清水槽と、前記第1の薬剤タンク及び前記清水槽に連通接続された混合槽とからなり、該混合槽は、前記掘削泥水用泥膜形成剤又は前記掘削泥水用分散剤の少なくともいずれかと前記清水とを混合して泥水に添加される混合液を作製するとともに該混合槽に接続された混合液吐出管を介して前記混合液を吐出するようになっていることを特徴とする掘削用泥水の作泥システム」
を第2の参考発明とする。
第1の参考発明及び第2の参考発明で使用する掘削泥水用泥膜形成剤を製造するにあたっては、公知の製法、例えば、溶液重合法で行えばよい。すなわち、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)と、モノエステル(b)とを二種類の単量体として所定の溶剤に添加し、次いで、これを50〜150゜Cで常圧又は加圧下で重合するようにすればよい。
溶剤としては、例えば水、イソプロピルアルコール、トルエン、エチレンジクロライド、メチルエチルケトン又はこれらの混合物を用いることができる。
重合させるにあたっては、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)及びモノエステル(b)の合計質量に対し、0.1〜15質量%のラジカル重合開始剤を使用するとともに、連鎖移動剤を必要に応じて使用するのがよい。
ここで、ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化物を用いることが可能であり、連鎖移動剤としては、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸、メルカプトエタノールなどの含硫黄化合物を用いることが可能である。
なお、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)の一部又は全部が不飽和カルボン酸塩である場合には、その前駆体である不飽和カルボン酸又はその無水物や炭素数1〜4の低級アルキルエステルを重合前に予め中和してもよいし、重合後に共重合体を中和してもよい。中和剤としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物をはじめ、水酸化アンモニウム、アンモニア等を用いることができる。
また、共重合体(x)は、必ずしも、不飽和カルボン酸(b1)とヒドロキシル基含有化合物(b2)とのモノエステル(b)を単量体として不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)との共重合に用いることに限定されるのではなく、モノエステル(b)の前駆体、すなわち、不飽和カルボン酸(b1)又はその無水物や炭素数1〜4の低級アルキルエステルを単量体として不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)と共重合させ、しかる後、ヒドロキシル基含有化合物(b2)と反応させて共重合体(x)を生成するようにしてもよい。
不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)をどのような物質で構成するかは任意であるが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸並びにこれらのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩からなる群から適宜選択することができる。また、不飽和カルボン酸(b1)についても任意であるが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群から適宜選択することが可能である。
モノエステル(b)は、一般式(1)においてRは水素もしくはアルキレン基であるが良好な造壁性を確保するためには通常、水素もしくは炭素数1〜12、さらには炭素数1〜6のアルキレン基であることが好ましい。上記Rは、アルキル基(メチル基、オクチル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基など)、アリール基(フェニル基など)、アルキルアリール基(エチルフェニル基など)、アラルキル基(ベンジル基など)のいずれであってもよい。
また、一般式(1)においてnについても、良好な造壁性を確保するために通常平均が1〜100、さらには平均が2〜90となる整数が好ましい。
(b2)としては、炭素数2〜4の脂肪族2価アルコール、またはROHで表される炭素数1〜12の脂肪族アルコール、フェノール類または芳香脂肪族アルコールに、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加して得られるものが好ましい。
炭素数2〜4の脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。
炭素数1〜12脂肪族アルコールとしては、天然アルコールでも合成アルコール(チーグラーアルコール、オキソアルコールなど)でもよい。具体例としては、メチルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールなどの直鎖もしくは分岐の飽和脂肪族アルコール、シクロヘキシルアルコール、エチルシクロヘキシルアルコールなどの環状脂肪族アルコールが挙げられる。
フェノール類としては、フェノール、エチルフェノールなどが挙げられる。芳香脂肪族アルコールとしては、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
上記の炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしてはエチレンオキサイド(以下、EOと略記)単独;EOと他のアルキレンオキサイド[プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−ブチレンキサイド、テトラヒドロフラン、アルキレンオキサイド置換体(エピクロロヒドリン)等]の併用;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。例示したもののうち特に好ましいものは、EOおよびEO/POの併用である。EOとともに他のアルキレンオキサイドを用いる場合の付加様式は、ランダム付加でもブロック付加でもよく、特に限定はされるものではない。
共重合体(x)を構成するモノエステル(b)の質量割合や共重合体(x)の数平均分子量については任意であるが、かかる共重合体(x)を構成する前記モノエステル(b)の質量%が1〜40%であり、かつ前記共重合体(x)の数平均分子量が5000〜100000である場合には、高い造壁性と低粘性を得ることが可能となる。
なお、共重合体(x)は、(a)、(b)以外にも他の単量体(c)を構成単位とすることができる。(c)としては、共重合できるものであれば特に限定されないが、例えば次の(c1)〜(c5)が挙げられる。
(c1) アミド基含有エチレン性不飽和単量体:(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなど
(c2) (メタ)アクリル酸アルキルエステル類(アルキル基の炭素数が1〜12):メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなど
(c3) ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和単量体:ヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)(メタ)アクリレート〔例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど〕
(c4) (b)以外のポリアルキレングリコール鎖を有するエチレン性不飽和単量体:ポリエチレングリコール(数平均分子量120〜600)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(数平均分子量150〜450)モノ(メタ)アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド1〜4モル付加物(メタ)アクリレートなど
(c5) 4級アンモニウム基含有エチレン性不飽和単量体:(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなど
これらの(c1)〜(c5)のうち好ましいものは、(c2)〜(c4)である。
また、共重合体(X)を構成する他の単量体(c)単位の質量%は通常30%以下、好ましくは20%以下である。
請求項1乃至請求項5に係る発明で使用する掘削泥水用泥膜形成剤の(共)重合体(x′)を製造するにあたっても重合体(x)と同様、公知の製法、例えば、溶液重合法で行えばよい。すなわち、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)を単量体として所定の溶剤に添加し、次いで、これを50〜150゜Cで常圧又は加圧下で重合し、又は、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)と他の単量体とを所定の溶剤に添加し、次いで、これを50〜150゜Cで常圧又は加圧下で共重合すればよい。すなわち、本発明に係る(共)重合体(x′)は、単一重合体及び共重合体の2つの概念を包摂するものである。但し、単一重合体で構成する方が望ましい。
溶剤の種類、単一重合又は共重合の方法、ラジカル重合開始剤及び中和プロセスに関しては、第1の参考発明及び第2の参考発明に係る掘削泥水用泥膜形成剤と同様であるのでここではその説明を省略する。
不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)をどのような物質で構成するかは任意であるが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸並びにこれらのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩からなる群から適宜選択することができる。ここで、アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩等が含まれる。
なお、(共)重合体(x′)は、上述したように(a)だけを単量体とした単一重合体でもよいし、(a)を主構成単位(70質量%以上)とし、(a)以外の他の単量体、例えば第1の参考発明及び第2の参考発明の単量体であるモノエステル(b)をはじめ、他の単量体(c)を構成単位とした共重合体とすることもできる。(c)としては、共重合できるものであれば特に限定されないが、例えば前記の(c1)〜(c5)が挙げられる。
(c1)〜(c5)のうち好ましいものは、(c2)〜(c4)である。
また、(共)重合体(x′)を構成する他の単量体(b)単位の質量%は通常1%未満、好ましくは0.9%以下であり、(c)単位の質量%は通常30%以下、好ましくは20%以下である。
なお、請求項1乃至請求項4に係る掘削泥水用泥膜形成剤は、第1の参考発明及び第2の参考発明に係る掘削泥水用泥膜形成剤と任意の割合(例えば質量比が99:1〜1:99)で併用することが可能である。
以下、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システムを示した全体図である。同図でわかるように、本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システム1は、第1の薬剤タンク2、第2の薬剤タンク3、清水槽4及び混合槽5から概ね構成してある。
第1の薬剤タンク2内には、本実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を貯留してあり、該タンクに接続されたポンプ6を駆動することによって、掘削泥水用分散剤及び掘削泥水用泥膜形成剤を配管7を介して混合槽5に圧送できるようになっている。
第2の薬剤タンク3内には、炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)水溶液を貯留してあり、該タンクに接続されたポンプ8を駆動することによって、炭酸ナトリウム水溶液を配管9を介して混合槽5に圧送できるようになっている。
清水槽4には清水を貯留してあり、該タンクに接続されたポンプ10を駆動することによって、清水を配管11を介して混合槽5に圧送できるようになっている。
混合槽5は、上述した掘削泥水用泥膜形成剤、掘削泥水用分散剤及び清水を混合し、泥水に添加される混合液を作製するようになっている。混合槽5には、必要に応じて図示しない攪拌機構を設けておけばよい。
ここで、混合槽5は、配管12を介して中間貯留槽13に接続してあるとともに、該中間貯留槽に接続された混合液吐出管14を介して地中連続壁構築用の掘削溝15内に連通接続してあり、混合槽5内で作製された混合液をいったん中間貯留槽13に貯留した後、混合液吐出管14を介して地中連続壁構築用の掘削溝15内の泥水に投入し、該掘削溝内で掘削用泥水を作製することができるようになっている。
本実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤は、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)と、不飽和カルボン酸(b1)及び下記一般式(1)
R(OA)nOH (1)
R; 水素又は炭素数1〜12の炭化水素基
A; 炭素数2〜4のアルキレン基
n; 1〜100の整数
で表されるヒドロキシル基含有化合物(b2)のモノエステル(b)とから共重合体(x)で構成してある。
共重合体(x)に対するモノエステル(b)の質量割合は、1%〜40%とするのがよい。これは、共重合体(x)に対するモノエステル(b)の質量%が1%を下回ると、掘削泥水用泥膜形成剤の添加量に関係なく造壁性が低下し、40%を超えると、掘削泥水用泥膜形成剤の添加量が低い場合に凝集が発生して造壁性が低下する可能性があるからである。
また、共重合体(x)の数平均分子量は、5000〜100000とするのがよい。これは、数平均分子量が5000を下回ると、掘削泥水用泥膜形成剤の添加量に関係なく造壁性が低下し、100000を超えると、掘削泥水用泥膜形成剤の添加量が低い場合に凝集が発生して造壁性が低下する可能性があるからである。
なお、数平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより測定するものとする。
図2は、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)をメタクリル酸ナトリウム塩22で、モノエステル(b)をメトキシポリエチレングリコールメタクリレート23で構成してなる掘削泥水用泥膜形成剤21を一例として示した化学構造式(化学式)である。
一方、本実施形態で用いる掘削泥水用分散剤は、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩若しくはそれらの共重合体であってその重量平均分子量Mwを10000乃至14000としたものであれば、その組成等は任意であり、例えば、重量平均分子量Mwが10000乃至14000であるポリアクリル酸のナトリウム塩から構成することが可能である。具体的には、SUPER SLRRY B(三洋化成工業株式会社製)の商品名で市販されているポリカルボン酸系安定液用分散剤(以下、単にSS―Bと呼ぶ)を使用することができる。
本実施形態に係る掘削用泥水の昨泥システム1で泥水に添加する混合液を作製するには、清水槽4に貯留された清水を混合槽5に入れるとともに、第1の薬剤タンク2に貯留された掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を所定量混合槽5に添加して適宜希釈混合し、混合液を作製する。
次に、混合槽5内の混合液をいったん中間貯留槽13に貯留した後、混合液吐出管14を介して地中連続壁構築用の掘削溝15内の泥水に投入し、該掘削溝内で掘削用泥水を作製する。なお、炭酸ナトリウム水溶液については、添加量が多くなると、逆に塩類凝集を引き起こして分散性が低下するため、あくまで補助的に添加するのが望ましい。
泥水は、工事開始時においては、他の現場から入手した掘削用泥水や新規購入した掘削用泥水を使用できることはもちろん、本実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤が、劣化泥水の分散性や造壁性を改善して新たな掘削用泥水に再生する機能を有しているため、他の現場で劣化した廃泥水を使用することも可能である。
一方、本実施形態で使用する掘削泥水用泥膜形成剤や掘削泥水用分散剤は、掘削土と水だけで溝壁や切羽での造壁性を確保し、その安定性を確保することができる機能を有しているため、いったん掘削工事が開始された後は、従来不可欠であったベントナイト、CMC、ポリマー剤といった作泥材料を何ら必要とすることなく、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤と清水との混合液に掘削土だけを適宜混合させるだけで、掘削用泥水を迅速かつ容易に作製し、これを随時、地中連続壁構築用の掘削溝15内に補給することができる。
掘削土としては、粘土やシルトを主成分とする75μm以下の細粒分、特に粘土を主成分とする10μm以下の細粒分を用いることにより、造壁性により優れた掘削用泥水を作製することができる。
かかる細粒分を含んだ水としては、具体的にはシールド工法や地中連続壁工法といった泥水工法の土砂分離工程で使用されるデカンタ等の遠心分離機のオーバー泥水を必要に応じて比重調整して使用することができる。
このようにして作製された掘削用泥水を地中連続壁工法の安定液として使用すると、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤は、従来のベントナイト等に代わって、例えば粘土を主成分とする10μm以下の細粒分とともに泥水中に分散して低粘性を維持するとともに、掘削泥水用泥膜形成剤による優れた造壁作用により、ろ水量(透水係数)の小さな良質のマッドケーキを切羽や溝壁に形成し、溝壁等を安定させる。
また、掘削用泥水の循環使用に伴ってコンクリートからカルシウムイオンが溶出し、泥水中のカルシウムイオン濃度が上昇するが、本実施形態で用いる掘削泥水用分散剤がカルシウムイオンによる分散性低下を抑制する。
以上説明したように、本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システムによれば、掘削泥水用泥膜形成剤、掘削泥水用分散剤及び清水がいずれも液状であるため、従来のように粉体材料を溶解させるには必要不可欠であった混練ミキサーを使ってなおかつ時間と手間をかけてベントナイト等の作泥材料を溶解させる必要がなくなる。
すなわち、液状である掘削泥水用泥膜形成剤、掘削泥水用分散剤及び清水を混合槽5で単に混合させるだけでよいので、泥水に添加すべき混合液、ひいては掘削用泥水を迅速かつ容易に作製することができる。
また、ベントナイト、CMC、ポリマー剤といった粉体の作泥材料を貯蔵する場合に比べて、貯蔵スペースがはるかに少なくて済み、従来のようなストックヤードが不要になり、混練ミキサーが不要になることと相まって、作泥プラントの規模を縮小化することが可能となる。
一方、第1の薬剤タンク2、第2の薬剤タンク3及び清水槽4への材料補給は、すべて輸送管を介した液体輸送が可能であるので、プラント自体をコンパクトにしても何ら支障は生じず、従来のようにプラント敷地内で運搬車が交錯するといった懸念もなくなる。
本実施形態では、第2の薬剤タンク3を設けて該タンク内に炭酸ナトリウム水溶液を貯留するようにしたが、本実施形態で用いる掘削泥水用分散剤によってセメント混入時の分散性の低下を十分抑制することができるのであれば、かかる第2の薬剤タンク3を省略してもよい。
また、本実施形態では、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を併用することを前提とし、これらを第1の薬剤タンク2内に貯留するようにしたが、これらの薬剤はいずれも一定の分散性と造壁性を有しているため、場合によっては、いずれかを単独で使用するようにしてもかまわない。一方、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を併用する場合、これらを混合した状態で第1の薬剤タンク2内に貯留してもかまわないが、それぞれ専用のタンク内に貯留するようにしてもかまわない。この場合、第1の薬剤タンク2は、計2つ備えることとなる。
また、本実施形態では、混合槽5で作製された混合液をいったん中間貯留槽13に貯留するようにしたが、かかる中間貯留槽13を省略して直接、掘削溝15内に投入するようにしてもよいことは言うまでもない。かかる場合には、混合液吐出管14は、混合槽5に直接接続すればよい。
また、本実施形態では、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を希釈することを前提として、清水槽4や混合槽5を備えるようにしたが、これらを泥水に直接添加しても添加量に関する品質の確保を行うことができるのであれば、清水槽4や混合槽5を省略し、図3に示すように、第1の薬剤タンク2に薬剤吐出管31を接続するとともに、該薬剤吐出管31を地中連続壁構築用の掘削溝15内に連通接続するようにしてもよい。
また、本実施形態では、地中連続壁工法に適用することを前提としたが、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムは、かかる工法への適用に限定されるものではなく、泥水シールド工法をはじめ、さまざまな泥水工法に適用することが可能である。
本実施形態では、顕著な作用効果を実験によって確認できたため、共重合体(x)を構成するモノエステル(b)の質量%を1〜40%、共重合体(x)の数平均分子量を5000〜100000としたが、本発明で用いる掘削泥水用泥膜形成剤は、かかる範囲に限定されるものではなく、実施形態で述べた範囲外についても、一定の作用効果を得ることは可能である。
また、本実施形態では、掘削泥水用分散剤としてSS−Bを例に挙げたが、これに代えて炭酸ナトリウムを使用してもよい。
次に、本実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤を具体的に説明する。なお、特記なき限り、部及び%はそれぞれ質量部及び質量%を示すものとする。
まず、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)としては、メタクリル酸ナトリウム(以下、a-1)とアクリル酸ナトリウム(以下、a-2)の二種類を実験に用いた。また、不飽和カルボン酸エステル(b)としては、10種類の不飽和カルボン酸エステルを使用し、これら10種類の不飽和カルボン酸エステル(以下、b-1〜b-10)を構成する不飽和カルボン酸(b1)とヒドロキシル基含有化合物(b2)との組成を表1に示す。表中、EO、POはそれぞれエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドであることを示す。
次に、上述したメタクリル酸ナトリウム(a-1)及びアクリル酸ナトリウム(a-2)と、10種類の不飽和カルボン酸エステル(b-1〜b-10)とを組み合わせて共重合体(x)(以下、実施例1〜16)を作製したときの組成比率、モノエステルの含有割合(%)及び数平均分子量を表2に示す。なお、数平均分子量の測定条件を以下に示す。
測定機器;Waters社製 GPCシステム
(ポンプ;model510,検出器;waters410)
溶離液 ;種類 水/メタノール(70/30)+CH
3COONa(0.5%)
流速 1.0(ml/min)
カラム ;TSKgel G3000PWXL + TSKgel G5000PWXL 7.8ml I.D×30 cm
上述した実施例1〜16の掘削泥水用泥膜形成剤を製造するにあたっては、まず、反応容器に、水363部、イソプロピルアルコール196部を仕込み、窒素置換した後、80゜Cまで昇温し、攪拌下、メタクリル酸151部(1.757モル)、メトキシポリエチレングリコール(エチレンオキサイド付加モル数28)メタクリレート48部(0.036モル)を混合したものと、過硫酸ナトリウム5%水溶液39.8部(過硫酸ナトリウム0.008モル)を同時に3時間かけて滴下し反応させた。さらに、同温度で2時間熟成した後、イソプロピルアルコールを蒸留により除き、水酸化ナトリウム48%水溶液146部(水酸化ナトリウム1.757モル)で中和した後、固形分30%になる量の水を加えて数平均分子量42800の共重合体(実施例1)を得た。さらに、表2に示した構成単位となるように単量体組成を代え、実施例1と同様にして実施例2〜16を得た。
このようにして製造した実施例1〜16の掘削泥水用泥膜形成剤を泥水に添加し、その造壁性及び泥水粘度を調べた(表3)。
ここで、掘削泥水用泥膜形成剤を添加する前の泥水については、細粒分75μm以下、比重が1.05となるように濃度調整して作製した。ちなみに、そのときの粘度は11.1 mPa・sであった。泥水粘度はB型粘度計にて測定した。
また、同表における造壁性は、API規格でいうところの指標とは若干異なり、濾水プロセスを促進させて実験時間を短縮させるべく、濾紙の下側を減圧状態とした場合の濾水量として計測したものであり、5ml以下が良好な造壁性の目安とされる。なお、従来技術と比較すべく、CMCを用いた場合を比較例1として併せて示した。
同表でわかるように、実施例1〜6、11〜16は、添加量にかかわらず、造壁性が5ml以下といずれも良好であるとともに、泥水粘度についても低粘性を維持している、言い換えれば良好な分散性が維持されているのに対し、実施例7〜10では、添加量が少ないときに造壁性が低下していることがわかる。
ちなみに、CMCを使った比較例1では、造壁性は確保できるものの、粘度が高くなってしまうという問題点を裏付ける結果となった。
次に、上述した実施例11に係る掘削泥水用泥膜形成剤を掘削泥水用分散剤とともに泥水に加えて本実施形態に係る掘削用泥水を作製し、その耐セメント性について実験した。なお、掘削泥水用分散剤としては、上述したSS―B及び炭酸ナトリウムの二種類を使用し、それぞれを単独に掘削泥水用泥膜形成剤と併用した場合と、両方を掘削泥水用泥膜形成剤と併用した場合について調べた。
実験結果を図4及び図5に示す。
まず、上述した掘削用泥水にセメントを添加しない場合の実験結果を図4に示す。同図に示すように、掘削泥水用泥膜形成剤の添加量が0.25%程度以上になると、掘削泥水用泥膜形成剤を単独で使用した場合(黒丸で示したケース)と掘削泥水用泥膜形成剤に掘削泥水用分散剤を併用した場合(黒丸以外の3ケース)との間で造壁性にほとんど差がないことがわかる。
次に、上述した掘削用泥水にセメントを1%添加した場合と5%添加した場合の実験結果を図5(a)、(b)に示す。これらの図に示すように、掘削泥水用泥膜形成剤に掘削泥水用分散剤を併用した場合(黒丸以外の3ケース)では、掘削泥水用泥膜形成剤を0.1〜0.2%添加すれば所要の造壁性が得られるのに対し、掘削泥水用泥膜形成剤を単独で使用した場合(黒丸で示したケース)では、掘削泥水用泥膜形成剤をセメント1%の場合には0.3%弱、セメント5%の場合には0.5%添加しなければ所要の造壁性が得られないことがわかる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システムも第1実施形態に係る掘削用泥水の作泥システム1と同様、第1の薬剤タンク2、第2の薬剤タンク3、清水槽4及び混合槽5から概ね構成してある。
第1の薬剤タンク2内には、本実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を貯留してあり、該タンクに接続されたポンプ6を駆動することによって、掘削泥水用分散剤及び掘削泥水用泥膜形成剤を配管7を介して混合槽5に圧送できるようになっている。
第2の薬剤タンク3内には、炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)水溶液を貯留してあり、該タンクに接続されたポンプ8を駆動することによって、炭酸ナトリウム水溶液を配管9を介して混合槽5に圧送できるようになっている。
清水槽4には清水を貯留してあり、該タンクに接続されたポンプ10を駆動することによって、清水を配管11を介して混合槽5に圧送できるようになっている。
混合槽5は、上述した掘削泥水用泥膜形成剤、掘削泥水用分散剤及び清水を混合し、泥水に添加される混合液を作製するようになっている。混合槽5には、必要に応じて図示しない攪拌機構を設けておけばよい。
ここで、混合槽5は、配管12を介して中間貯留槽13に接続してあるとともに、該中間貯留槽に接続された混合液吐出管14を介して地中連続壁構築用の掘削溝15内に連通接続してあり、混合槽5内で作製された混合液をいったん中間貯留槽13に貯留した後、混合液吐出管14を介して地中連続壁構築用の掘削溝15内の泥水に投入し、該掘削溝内で掘削用泥水を作製することができるようになっている。
本実施形態に係る掘削泥水用泥膜形成剤は、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)を主構成単位とする(共)重合体(x′)としての単一重合体からなり、該単一重合体の重量平均分子量Mwを20万〜300万としてある。
ここで、単一重合体の重量平均分子量Mwを20万〜300万としたのは、重量平均分子量Mwが20万を下回ると、造壁性の指標である濾水量が5mlをやや上回り、300万を超えると、濾水量が5mlを大幅に上回るからである。
なお、濾水量は、API規格でいうところの指標とは若干異なり、濾水プロセスを促進させて実験時間を短縮させるべく、濾紙の下側を減圧状態にして計測したものであり、5ml以下が良好な造壁性の目安とされる。
図6は、本実施形態に係る掘削泥水用泥膜形成剤の一例を示した化学構造式(化学式)であり、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)をアクリル酸ナトリウム42で構成してなる掘削泥水用泥膜形成剤41を示してある。
重量平均分子量Mwの下限値及び上限値は、後述する実験で得られた結果をプロットし、次いでこれらの結果を近似する曲線を作成し、該曲線と濾水量が5mlであるラインとの交点としてそれぞれ20万、300万と定めたが、実験誤差等を勘案した経験的な安全率を見込んだ上での重量平均分子量Mwの範囲は、50万乃至250万とするのが望ましい。
一方、掘削泥水用泥膜形成剤41は、濃度が20乃至30質量%のものを泥水に添加して使用するのが好ましいが、かかる濃度範囲では、重量平均分子量Mwが100万を超えると、水飴程度の高粘度(100万mPa・s)となり、泥水に添加するにあたって必ずしも作業性に優れるとは言い難い。
したがって、かかる添加作業性の観点で掘削泥水用泥膜形成剤41の重量平均分子量Mwを50万乃至100万とするのが望ましい。さらには、濾水量上限を余裕をもってクリアするとともに泥水への添加作業を確実に高めるべく、掘削泥水用泥膜形成剤41の重量平均分子量Mwを60万乃至80万とするのが最適である。
次に、本実施形態で用いる掘削泥水用分散剤は、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩若しくはそれらの共重合体であってその重量平均分子量Mwを10000乃至14000としたものであれば、その組成等は任意であり、例えば、重量平均分子量Mwが10000乃至14000であるポリアクリル酸のナトリウム塩から構成することが可能である。具体的には、SUPER SLRRY B(三洋化成工業株式会社製)の商品名で市販されているポリカルボン酸系安定液用分散剤(以下、単にSS―Bと呼ぶ)を使用することができる。また、かかるSS−Bに代えて、又はそれに加えて炭酸ナトリウムを用いることもできる。あるいは、炭酸ナトリウムを単独で用いることもできる。
本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システムで泥水に添加する混合液を作製するには、清水槽4に貯留された清水を混合槽5に入れるとともに、第1の薬剤タンク2に貯留された掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を所定量混合槽5に添加して適宜希釈混合し、混合液を作製する。
次に、混合槽5内の混合液をいったん中間貯留槽13に貯留した後、混合液吐出管14を介して地中連続壁構築用の掘削溝15内の泥水に投入し、該掘削溝内で掘削用泥水を作製する。なお、炭酸ナトリウム水溶液については、添加量が多くなると、逆に塩類凝集を引き起こして分散性が低下するため、あくまで補助的に添加するのが望ましい。
泥水は、工事開始時においては、他の現場から入手した掘削用泥水や新規購入した掘削用泥水を使用できることはもちろん、本実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤が、劣化泥水の分散性や造壁性を改善して新たな掘削用泥水に再生する機能を有しているため、他の現場で劣化した廃泥水を使用することも可能である。
一方、本実施形態で使用する掘削泥水用泥膜形成剤や掘削泥水用分散剤は、掘削土と水だけで溝壁や切羽での造壁性を確保し、その安定性を確保することができる機能を有しているため、いったん掘削工事が開始された後は、従来不可欠であったベントナイト、CMC、ポリマー剤といった作泥材料を何ら必要とすることなく、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤と清水との混合液に掘削土だけを適宜混合させるだけで、掘削用泥水を迅速かつ容易に作製し、これを随時、地中連続壁構築用の掘削溝15内に補給することができる。
掘削土としては、粘土やシルトを主成分とする75μm以下の細粒分、特に粘土を主成分とする10μm以下の細粒分を用いることにより、造壁性により優れた掘削用泥水を作製することができる。
かかる細粒分を含んだ水としては、具体的にはシールド工法や地中連続壁工法といった泥水工法の土砂分離工程で使用されるデカンタ等の遠心分離機のオーバー泥水を必要に応じて比重調整して使用することができる。
このようにして作製された掘削用泥水を地中連続壁工法の安定液として使用すると、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤は、従来のベントナイト等に代わって、例えば粘土を主成分とする10μm以下の細粒分とともに泥水中に分散して低粘性を維持するとともに、掘削泥水用泥膜形成剤による優れた造壁作用により、ろ水量(透水係数)の小さな良質のマッドケーキを切羽や溝壁に形成し、溝壁等を安定させる。
また、掘削用泥水の循環使用に伴ってコンクリートからカルシウムイオンが溶出し、泥水中のカルシウムイオン濃度が上昇するが、本実施形態で用いる掘削泥水用分散剤がカルシウムイオンによる分散性低下を抑制する。
以上説明したように、本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システムによれば、掘削泥水用泥膜形成剤、掘削泥水用分散剤及び清水がいずれも液状であるため、従来のように粉体材料を溶解させるには必要不可欠であった混練ミキサーを使ってなおかつ時間と手間をかけてベントナイト等の作泥材料を溶解させる必要がなくなる。
すなわち、液状である掘削泥水用泥膜形成剤、掘削泥水用分散剤及び清水を混合槽5で単に混合させるだけでよいので、泥水に添加すべき混合液、ひいては掘削用泥水を迅速かつ容易に作製することができる。
また、ベントナイト、CMC、ポリマー剤といった粉体の作泥材料を貯蔵する場合に比べて、貯蔵スペースがはるかに少なくて済み、従来のようなストックヤードが不要になり、混練ミキサーが不要になることと相まって、作泥プラントの規模を縮小化することが可能となる。
一方、第1の薬剤タンク2、第2の薬剤タンク3及び清水槽4への材料補給は、すべて輸送管を介した液体輸送が可能であるので、プラント自体をコンパクトにしても何ら支障は生じず、従来のようにプラント敷地内で運搬車が交錯するといった懸念もなくなる。
本実施形態では、第2の薬剤タンク3を設けて該タンク内に炭酸ナトリウム水溶液を貯留するようにしたが、本実施形態で用いる掘削泥水用分散剤によってセメント混入時の分散性の低下を十分抑制することができるのであれば、かかる第2の薬剤タンク3を省略してもよい。
また、本実施形態では、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を併用することを前提とし、これらを第1の薬剤タンク2内に貯留するようにしたが、これらの薬剤はいずれも一定の分散性と造壁性を有しているため、場合によっては、いずれかを単独で使用するようにしてもかまわない。一方、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を併用する場合、これらを混合した状態で第1の薬剤タンク2内に貯留してもかまわないが、それぞれ専用のタンク内に貯留するようにしてもかまわない。この場合、第1の薬剤タンク2は、計2種類備えることとなる。また、掘削泥水用分散剤としてSS−B及び炭酸ナトリウムの二種類を使用する場合には、これらを混合した状態で使用してもよいが、それぞれ専用のタンク内に個別に貯留してもかまわない。かかる場合、第1の薬剤タンク2は、掘削泥水用分散剤専用、掘削泥水用分散剤(SS−B)専用及び掘削泥水用分散剤(炭酸ナトリウム専用)の計3種類となる。
また、本実施形態では、混合槽5で作製された混合液をいったん中間貯留槽13に貯留するようにしたが、かかる中間貯留槽13を省略して直接、掘削溝15内に投入するようにしてもよいことは言うまでもない。かかる場合には、混合液吐出管14は、混合槽5に直接接続すればよい。
また、本実施形態では、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を希釈することを前提として、清水槽4や混合槽5を備えるようにしたが、これらを泥水に直接添加しても添加量に関する品質の確保を行うことができるのであれば、清水槽4や混合槽5を省略し、第1実施形態で説明した図3と同様、第1の薬剤タンク2に薬剤吐出管31を接続するとともに、該薬剤吐出管31を地中連続壁構築用の掘削溝15内に連通接続するようにしてもよい。
また、本実施形態では、地中連続壁工法に適用することを前提としたが、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムは、かかる工法への適用に限定されるものではなく、泥水シールド工法をはじめ、さまざまな泥水工法に適用することが可能である。
本実施形態では特に言及しなかったが、掘削泥水用泥膜形成剤41は、第1実施形態の掘削泥水用泥膜形成剤21と任意の割合(例えば質量比が99:1〜1:99)で併用することが可能である。
次に、本実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤41を具体的に説明する。なお、特記なき限り、部及び%はそれぞれ質量部及び質量%を示すものとする。
まず、不飽和カルボン酸及び/又はその塩(a)としては、上述した実施形態でも述べたようにアクリル酸ナトリウムとし、これを重合させて単一重合体41を製造した。
表4は、重量平均分子量Mwを変化させたときの単一重合体41の造壁性(ml)、粘度(濃度;25質量%)及び泥水と混合したときの泥水粘度(mPa・s)を示したものである。
ここで、重量平均分子量Mwは、第1実施形態における数平均分子量と同様の測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフにより測定したものである。
但し、カラムは下記のものを用いる。
カラム ;TSKgel α-3000 + TSKgel α-6000
なお、標準物質は、ポリオキシエチレングリコール(東ソー株式会社製;TSK STANDARD POLYETHYLENE OXIDE)とし、第1実施形態でも同じものを標準物質とした。
また、単一重合体41を添加する前の泥水については、細粒分75μm以下、比重が1.05となるように濃度調整して作製した。ちなみに、そのときの粘度は1.7 mPa・sであった。泥水粘度はB型粘度計にて測定した。また、泥水への添加量はすべて5kg/m3とした。
同表中、ブランクと記したものは、泥水のみのケース、実施例1′乃至実施例9′と記したものは、単一重合体41のうち、造壁性の指標である濾水量が5ml以下になったケース、比較例1′乃至比較例3′と記したものは、単一重合体41のうち、濾水量が5mlを上回ったケースである。なお、従来技術と比較すべく、CMCを用いた場合を比較例4′として併せて示した。
また、図7は、これらの結果を横軸(対数軸)に重量平均分子量Mwを、縦軸に造壁性(ml)をとってプロットしたグラフであり、黒丸で表示したものは、比較例1′,2′に相当し、白丸で表示したものは、実施例1′乃至9′に相当する。比較例3′は、造壁性が著しく悪いため、同グラフにはプロットしていない。
これらの図表でわかるように、造壁性の指標である濾水量が5ml以下になった実施例1′乃至実施例9′の重量平均分子量Mwは、20万乃至300万の範囲に入っており、比較例1′乃至比較例3′は、該濾水量を上回っていることがわかる。また、比較例4′は、濾水量はクリアしていても、泥水粘度が実施例1′乃至実施例9′よりもはるかに高く、掘削用泥水としては粘性が高すぎることがわかる。
単一重合体41の製造プロセスを上述した実施例1′の場合について具体的に説明すると、まず、反応容器に水440.7部を仕込み、窒素置換した後、80℃迄昇温し、撹拌下、アクリル酸238.5部と、過硫酸ナトリウム2.0%水溶液100部を同時に3時間かけて滴下し反応した。さらに同温度で2時間熟成した後、イソプロピルアルコールを蒸留により除き、水酸化ナトリウム48%水溶液220.8部で中和した。
次に、上述した実施例5′に係る単一重合体41を掘削泥水用分散剤とともに泥水に加えて本実施形態に係る掘削用泥水を作製するとともに、該掘削用泥水にセメントを5%添加し、その耐アルカリ性について実験した。なお、掘削泥水用分散剤としては、上述したSS―B及び炭酸ナトリウムの二種類をその合計添加量が1kg/m3となるように使用し、それぞれを単独に単一重合体41と併用した場合と、両方を単一重合体41と併用した場合について調べた。
実験結果を表5及び図8に示す。
これらの図表でわかるように、単一重合体41に掘削泥水用分散剤を併用した場合(黒丸以外の3ケース)では、掘削泥水用泥膜形成剤を3kg/m3添加すれば所要の造壁性が得られるのに対し、単一重合体41を単独で使用した場合(黒丸で示したケース)では、掘削泥水用泥膜形成剤を5kg/m3以上添加しなければ所要の造壁性が得られないことがわかる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システムも第1実施形態に係る掘削用泥水の作泥システム1と同様、第1の薬剤タンク2、第2の薬剤タンク3、清水槽4及び混合槽5から概ね構成してある。
第1の薬剤タンク2内には、本実施形態で用いる液状の掘削泥水用泥膜形成剤及び液状の掘削泥水用分散剤を貯留してあり、該タンクに接続されたポンプ6を駆動することによって、かかる液状の掘削泥水用分散剤及び液状の掘削泥水用泥膜形成剤を配管7を介して混合槽5に圧送できるようになっている。
第2の薬剤タンク3内には、炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)水溶液を貯留してあり、該タンクに接続されたポンプ8を駆動することによって、炭酸ナトリウム水溶液を配管9を介して混合槽5に圧送できるようになっている。
清水槽4には清水を貯留してあり、該タンクに接続されたポンプ10を駆動することによって、清水を配管11を介して混合槽5に圧送できるようになっている。
混合槽5は、上述した液状の掘削泥水用泥膜形成剤、液状の掘削泥水用分散剤及び清水を混合し、泥水に添加される混合液を作製するようになっている。混合槽5には、必要に応じて図示しない攪拌機構を設けておけばよい。
ここで、混合槽5は、配管12を介して中間貯留槽13に接続してあるとともに、該中間貯留槽に接続された混合液吐出管14を介して地中連続壁構築用の掘削溝15内に連通接続してあり、混合槽5内で作製された混合液をいったん中間貯留槽13に貯留した後、混合液吐出管14を介して地中連続壁構築用の掘削溝15内の泥水に投入し、該掘削溝内で掘削用泥水を作製することができるようになっている。
本実施形態で使用する掘削泥水用泥膜形成剤や掘削泥水用分散剤は、掘削土と水だけで溝壁や切羽での造壁性を確保し、その安定性を確保するとともに、特に、掘削泥水用泥膜形成剤は、劣化泥水の分散性や造壁性を改善して新たな掘削用泥水に再生する機能を有している。
本実施形態に係る掘削用泥水の昨泥システムで泥水に添加する混合液を作製するには、清水槽4に貯留された清水を混合槽5に入れるとともに、第1の薬剤タンク2に貯留された液状の掘削泥水用泥膜形成剤及び液状の掘削泥水用分散剤を所定量混合槽5に添加して適宜希釈混合し、混合液を作製する。
次に、混合槽5内の混合液をいったん中間貯留槽13に貯留した後、混合液吐出管14を介して地中連続壁構築用の掘削溝15内の泥水に投入し、該掘削溝内で掘削用泥水を作製する。なお、炭酸ナトリウム水溶液については、添加量が多くなると、逆に塩類凝集を引き起こして分散性が低下するため、あくまで補助的に添加するのが望ましい。
泥水は、工事開始時においては、他の現場から入手した掘削用泥水や新規購入した掘削用泥水を使用できることはもちろん、本実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤が、劣化泥水の分散性や造壁性を改善して新たな掘削用泥水に再生する機能を有しているため、他の現場で劣化した廃泥水を使用することも可能である。
一方、本実施形態で使用する掘削泥水用泥膜形成剤や掘削泥水用分散剤は、掘削土と水だけで溝壁や切羽での造壁性を確保し、その安定性を確保することができる機能を有しているため、いったん掘削工事が開始された後は、従来不可欠であったベントナイト、CMC、ポリマー剤といった作泥材料を何ら必要とすることなく、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤と清水との混合液に掘削土だけを適宜混合させるだけで、掘削用泥水を迅速かつ容易に作製し、これを随時、地中連続壁構築用の掘削溝15内に補給することができる。
掘削土としては、粘土やシルトを主成分とする75μm以下の細粒分、特に粘土を主成分とする10μm以下の細粒分を用いることにより、造壁性により優れた掘削用泥水を作製することができる。
かかる細粒分を含んだ水としては、具体的にはシールド工法や地中連続壁工法といった泥水工法の土砂分離工程で使用されるデカンタ等の遠心分離機のオーバー泥水を必要に応じて比重調整して使用することができる。
このようにして作製された掘削用泥水を地中連続壁工法の安定液として使用すると、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤は、従来のベントナイト等に代わって、例えば粘土を主成分とする10μm以下の細粒分とともに泥水中に分散して低粘性を維持するとともに、掘削泥水用泥膜形成剤による優れた造壁作用により、ろ水量(透水係数)の小さな良質のマッドケーキを切羽や溝壁に形成し、溝壁等を安定させる。
以上説明したように、本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システムによれば、掘削泥水用泥膜形成剤、掘削泥水用分散剤及び清水がいずれも液状であるため、従来のように粉体材料を溶解させるには必要不可欠であった混練ミキサーを使ってなおかつ時間と手間をかけてベントナイト等の作泥材料を溶解させる必要がなくなる。
すなわち、液状である掘削泥水用泥膜形成剤、掘削泥水用分散剤及び清水を混合槽5で単に混合させるだけでよいので、泥水に添加すべき混合液、ひいては掘削用泥水を迅速かつ容易に作製することができる。
また、ベントナイト、CMC、ポリマー剤といった粉体の作泥材料を貯蔵する場合に比べて、貯蔵スペースがはるかに少なくて済み、従来のようなストックヤードが不要になり、混練ミキサーが不要になることと相まって、作泥プラントの規模を縮小化することが可能となる。
一方、第1の薬剤タンク2、第2の薬剤タンク3及び清水槽4への材料補給は、すべて輸送管を介した液体輸送が可能であるので、プラント自体をコンパクトにしても何ら支障は生じず、従来のようにプラント敷地内で運搬車が交錯するといった懸念もなくなる。
本実施形態では、第2の薬剤タンク3を設けて該タンク内に炭酸ナトリウム水溶液を貯留するようにしたが、本実施形態で用いる掘削泥水用分散剤によってセメント混入時の分散性の低下を十分抑制することができるのであれば、かかる第2の薬剤タンク3を省略してもよい。
また、本実施形態では、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を併用することを前提とし、これらを第1の薬剤タンク2内に貯留するようにしたが、これらの薬剤はいずれも一定の分散性と造壁性を有しているため、場合によっては、いずれかを単独で使用するようにしてもかまわない。一方、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を併用する場合、これらを混合した状態で第1の薬剤タンク2内に貯留してもかまわないが、それぞれ専用のタンク内に貯留するようにしてもかまわない。この場合、第1の薬剤タンク2は、計2種類備えることとなる。また、掘削泥水用分散剤としてSS−B及び炭酸ナトリウムの二種類を使用する場合には、これらを混合した状態で使用してもよいが、それぞれ専用のタンク内に個別に貯留してもかまわない。かかる場合、第1の薬剤タンク2は、掘削泥水用分散剤専用、掘削泥水用分散剤(SS−B)専用及び掘削泥水用分散剤(炭酸ナトリウム専用)の計3種類となる。
また、本実施形態では、混合槽5で作製された混合液をいったん中間貯留槽13に貯留するようにしたが、かかる中間貯留槽13を省略して直接、掘削溝15内に投入するようにしてもよいことは言うまでもない。かかる場合には、混合液吐出管14は、混合槽5に直接接続すればよい。
また、本実施形態では、掘削泥水用泥膜形成剤及び掘削泥水用分散剤を希釈することを前提として、清水槽4や混合槽5を備えるようにしたが、これらを泥水に直接添加しても添加量に関する品質の確保を行うことができるのであれば、清水槽4や混合槽5を省略し、第1実施形態で説明した図3と同様、第1の薬剤タンク2に薬剤吐出管31を接続するとともに、該薬剤吐出管31を地中連続壁構築用の掘削溝15内に連通接続するようにしてもよい。
また、本実施形態では、地中連続壁工法に適用することを前提としたが、本発明に係る掘削用泥水の作泥システムは、かかる工法への適用に限定されるものではなく、泥水シールド工法をはじめ、さまざまな泥水工法に適用することが可能である。
本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システムを示した全体図。
本実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤を示した化学構造式。
変形例に係る掘削用泥水の作泥システムを示した全体図。
本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システムに関する実験結果を示したグラフ。
同じく本実施形態に係る掘削用泥水の作泥システムに関する実験結果を示したグラフ。
第2実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤を示した化学構造式。
第2実施形態で用いる掘削泥水用泥膜形成剤における造壁性と重量平均分子量との関係を示したグラフ。
第2実施形態で用いる掘削泥水用分散剤の耐アルカリ性を示したグラフ。
符号の説明
1 掘削用泥水の作泥システム
2 第1の薬剤タンク
3 第2の薬剤タンク
4 清水槽
5 混合槽
14 混合液吐出管
15 掘削溝
21 掘削泥水用泥膜形成剤
22 メタクリル酸ナトリウム塩(不飽和カルボン酸塩(a))
23 メトキシポリエチレングリコールメタクリレート
(モノエステル(b))
31 薬剤吐出管
41 単一重合体((共)重合体(x′))
42 アクリル酸ナトリウム(不飽和カルボン酸塩(a))