この種の画像形成装置による画像の形成は、一般に次のように行われる。すなわち、感光体等の像担持体に電子写真方式等による作像プロセスを経てトナーからなるトナー像を形成した後、そのトナー像を転写装置により記録用紙等のシート材に直接または中間転写体を介して転写する。続いて、このトナー像が形成されたシート材を所定の距離だけ離れた定着装置にむけて搬送し、その定着装置において圧接した状態で回転する加熱回転体および加圧回転体等の間に形成される定着ニップに導入して通過させることにより、そのトナー像をシート材に定着させる。このようにしてシート材にトナーからなる画像が形成される。
ところが、このような画像形成装置においては、トナー像が転写されたシート材がその定着装置の定着ニップに突入する際に、そのシート材の搬送方向後方部が転写装置の転写位置を通過中でトナー像の転写も行われている状態にあると、そのシート材の先端部が定着ニップに突入するときに生じる衝撃の影響を受けることによりシート材に転写されるトナー像が乱れてしまうことがある。
このトナー像の乱れは、シート材先端部の定着ニップへの突入時に発生する衝撃がそのシート材の後端部側に伝わることで、その突入時に転写部で転写中のトナー像や転写された直後等のトナー像を構成するトナーが近傍に飛び散り(移動し)、そのトナー像本来のシート材上における担持状態が崩れることにより発生しているものと考えられる。また、この像乱れは、特にハーフトーン画像のような中間的な濃度の画像を形成する場合において目立つという傾向にある。
従来、このような要因で発生するトナー像の乱れ等を防止するための技術的手段としては、次のようなものが知られている。
たとえば、複写機等の画像形成装置において、その転写部を通過したシート材を定着装置のニップ部に案内する搬送ガイドを所定の3つの動作位置に変位させるように構成し、これにより定着ニップへのシート材先端部の確実な導入、その導入時の突入ショックの解消、およびシート材のループ空間の確保を可能にするものである(特許文献1)。
また、複写機等の画像形成装置において、その転写部を通過したシート材を圧接状態で対向する加熱ロールと加圧ロールからなる定着ニップに案内するガイド手段を特定の状態で配置するように構成し、これにより厚紙等のシート材の突入ショックによる画像乱れとしわの防止等を可能にするものである(特許文献2)。
特開平10−48982号公報
特開2001−5316号公報
しかしながら、この従来の技術的手段をそれぞれ採用した画像形成装置にあっては、以下のような課題がある。
まず、上記いずれの画像形成装置においても、その搬送ガイドまたはガイド手段によりシート材を定着ニップ部に予定する搬送状態でそれぞれ正確に案内することが難しく、その予定した搬送状態で案内されないときにはシート材の突入ショックによる画像乱れの発生を防止することができなくなる。
また、変位させる搬送ガイドを採用する場合は、その搬送ガイドを変位させるための機構(構造物)などを新たに追加する必要があり、このため装置の複雑化や、新たな設置スペースの確保による装置の大型化や、コストアップなどを招くことにもなる。一方、特定の状態で配置するガイド手段を採用する場合は、そのガイド手段によるシート材の案内搬送状態が経時的に変化してしまうおそれがある。
本発明は、上述したような各課題に鑑みてなされたものであり、転写部を通過して定着部の定着ニップにシート材の先端部が導入されるときにそのシート材の搬送方向後方側で転写部を通過する領域で発生するトナー像の乱れをより簡便にかつ安定して低減することができる画像形成装置を提供するものである。
本発明の画像形成装置は、所望の画像情報に基づいて潜像を形成するとともにその潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する作像部と、この作像部で形成されるトナー像をシート材に転写する転写部と、この転写部でトナー像が転写されたシート材を搬送して導入通過させることでそのトナー像をシート材に定着させる定着ニップを有する定着部とを備え、前記転写部の転写位置と前記定着ニップの導入側端部位置との間におけるシート材の搬送路の長さを距離Lとした場合、前記作像部において、シート材の搬送方向先端からその後端側に上記距離Lだけ離れた位置を基準として特定される特定画像域に形成すべきトナー像を、その標準のサイズよりも小さいサイズの画素で形成するように制御する制御手段を有することを特徴とするものである。
この画像形成装置における上記特定画像域は、距離Lだけ離れた位置を基準として、前述したトナー像の乱れが発生しやすい領域を少なくとも含む領域となるように設定されるものである。このような特定画像域としては、たとえば、その距離Lだけ離れた位置を含む領域となる場合があるほか、その距離Lだけ離れた位置を含まない領域となる場合であって構わない。なお、この特定画像域への上記特定のトナー像形成は、シート材の搬送方向のサイズが上記距離Lよりも短いシート材を使用した画像形成を行う場合には適用する必要はない。また、上記標準のサイズとは、特定画像域を除く他の画像域に形成されるトナー像に適用される画素サイズである。上記シート材は、画像形成装置内での取り扱い(トナー像の転写および定着をはじめ、その収容や搬送などの扱い)が可能であれば、その種類(材質、サイズなど)等については特に限定されるものではない。
上記特定画像域に形成するトナー像の画素については、たとえば、少なくともシート材の搬送方向に沿うサイズを縮小した画素とすることができる。
また、上記特定画像域に形成するトナー像の画素については、そのトナー像の画像濃度値に1未満の補正係数を乗じて得られる値を有するものとすることもできる。この場合、その補正係数としては、たとえば問題視している前述の像乱れはハーフトーン画像のような中間的な濃度からなる画像を形成するときに目立つ傾向にあることから、その中間的な濃度の画像を形成する際には上記画素サイズを小さくする必要性が高くなることを考慮し、相対的に小さめの値になるように設定するとよい。また、上記補正係数としては、その画像濃度が濃くなるほどおよび薄くなるほど像乱れが(たとえ発生していても)見立たなくなる傾向にあることから、そのような画像濃度の画像を形成する際には上記画素サイズを小さくする必要性が低くなることを考慮し、「1」に近い値または「1」そのものの値となるように設定するとよい。
さらに、上記特定画像域は、シート材の搬送方向に沿う領域幅が一定の帯状領域であって、その一定の領域幅が前記定着ニップへのシート材の導入時に発生する速度変動分に応じて設定されるものである。速度変動分とは、シート材の先端部が定着ニップに導入した際のそのシート材の移動速度が本来の搬送速度から減速する分の割合(速度変動率)のことである。そして、この変動分が大きい場合は特定画像域の領域幅を広めに設定し、反対にその変動分が小さい場合はその領域幅を小さめに設定するとよい。このような特定画像域の設定は、あらかじめ使用対象となる各種シート材に対して速度変動分を測定し、その得られた情報に基づいて行っておくことができる。この他、その速度変動分の値によっては、必要に応じて(たとえば速度変動分がきわめて小さい場合など)、制御対象となる特定画像域がないとする設定を行ってもよい。
また、上記特定画像域は、シート材の搬送方向に沿う幅が一定の帯状の領域であって、その一定の領域幅が前記定着ニップに導入するシート材の種類に応じて設定されるものである。シート材の種類とは、特にシート材が定着ニップに導入する時における衝撃の発生の有無やその衝撃の大小の違いとして現れる要因となり得るものであり、たとえば、シート材の厚さ、材質、構造(普通紙、塗工紙などの違い)等の違いである。このような特定画像域の設定についても、あらかじめ使用対象となる各種シート材に対して衝撃の発生の有無やその大小の違いを調べ、その得られた情報に基づいて行っておくことができる。また、この場合、シートの種類によっては、必要に応じて(たとえば衝撃が発生しない場合や衝撃がきわめて小さい場合など)特定画像域がないとする設定を行ってもよい。
本発明によれば、シート材の特定画像域に形成されるトナー像はその標準のサイズよりも小さいサイズの画素で形成される。これにより、転写部を通過して定着部の定着ニップにシート材の先端部が導入されるときに、その突入に伴う衝撃がシート材に発生し、その衝撃の影響を受けてシート材の搬送方向後方側であって転写部を通過中または通過直後となる上記特定画像域に転写されたトナー像のトナーが少し飛び散るようになるが、そのトナー像の画素はこのトナーの飛び散りが発生する分だけその形成時おける画素サイズよりも大きめのサイズとなり、見かけ上は少なくとも標準の画素サイズに近づいた状態となる。この結果、定着後に得られたシート材上の画像は、その特定画像域内で発生し得る像乱れが視認されにくいものとなり、他の画像域(特定画像域以外の領域)との画質上の差異もほとんどなく均質なものとなる。この効果は、ハーフトーンの画像を形成した場合でも良好に得られる。
また、特定画像域に形成するトナー像の画素を少なくともシート材の搬送方向に沿うサイズを縮小した画素とした場合は、その特定画像域にはシート搬送方向に沿うサイズが標準の画素サイズよりも縮小された画素からなるトナー像が転写されるようになる。そして、シート材の先端部が定着部の定着ニップに導入したときに発生する衝撃によりその特定画像域におけるトナー像のトナーはシート搬送方向の前後に飛び散りやすいという傾向があるが、そのようなトナーの飛び散りの方向性に関する性質をそのまま利用することで、特定画像域内におけるトナー像のシート搬送方向に対する画素サイズが最終的に見かけ上標準の画素サイズに効率よく近づいたものになりやすい。この結果、その特定画像域内で発生し得る像乱れが効果的に視認されにくいものとなる。
また、上記特定画像域に形成するトナー像の画素をそのトナー像の画像濃度値に1未満の補正係数を乗じて得られる値を有するものとした場合は、その特定画像域には一般的に本来の画像濃度値よりも小さめの濃度値からなる画素サイズのトナー像が形成される。これにより、特定画像域におけるトナー像は画像濃度の補正値に相応した画素サイズで形成されることになる。この場合は、たとえば、ハーフトーン画像のように特に像乱れの発生が目立つ中間的な画像濃度からなる画像に対してその画素サイズを他の濃度からなる画像の場合よりも当該濃度がより小さくなるような補正係数に設定し、特定画像域において発生し得る像乱れがより的確に視認しにくくなるような対応が可能になる。
さらに、特定画像域について、一定の領域幅からなる帯状領域とし、その領域幅を定着ニップへのシート材の導入時に発生する速度変動分に応じて設定する場合や、同じく、一定の領域幅からなる帯状領域とし、その領域幅をニップに導入するシート材の種類に応じて設定する場合にあっては、像乱れの発生状況などに適切に対応した特定画像域を生成することができるようになり、その結果、的確で無駄のない像乱れに対する対策を講じることが可能になる。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像形成装置1を示す説明図である。図2は、この画像形成装置1における制御系の一部を示すブロック図である。
画像形成装置1は、図1に示すように、トナー像を形成する作像部2、作像部2で形成されるトナー像をシート材としての記録用紙Pに転写する転写部3、転写部3でトナー像が形成された記録用紙Pを導入して通過させることでそのトナー像を記録用紙Pに定着させる定着部4等を少なくとも備えたものである。図中の矢印は、主な回転部品の回転方向を示す。
上記作像部2は、潜像が形成される感光層を有し、一定の方向に回転するドラム形態等からなる感光体21、感光体21の周面を一様に帯電させるロール形態等からなる帯電器22、帯電された感光体21の周面に画像情報に応じてレーザビーム光を走査露光して静電潜像を形成する露光装置23、感光体21の周面に現像剤を供給して静電潜像を現像してトナー像とする現像装置24、転写後の感光体21の周面を清掃する不図示のクリーニング装置等にて構成されている。露光装置23は、図示しない画像読み取り装置、外部接続機器等の画像情報源からの画像情報を画像処理装置25で必要な画像処理をした後に得られる画情報が入力され、その画情報に基づく露光を行う。
この作像部2では、画像形成動作の開始指示を受けると、矢印方向に回転する感光体21に対して帯電器22による帯電と、露光装置23による露光と、現像装置24による現像とがこの順に実行され、その結果、感光体21の周面に画像情報に応じたトナー像が形成される。
また、上記転写部3は、導電性を付与したゴム材料等からなる無端状の転写搬送ベルト31、転写搬送ベルト31を回転可能に張架して支持する第一支持ロール32および第二支持ロール33、第一支持ロール32に転写バイアス電圧を印加する不図示の給電装置等で構成されている。支持ロール32,33の一方は転写搬送ベルト31を実際に回転させるための駆動ロールである。特にこの転写部3は、その第一支持ロール32を作像部2の感光体21と対向する位置に配置し、第二支持ロール33を定着部4に接近する側に配置している。また、その転写が実行される時には、あらかじめ所定の記録用紙Pが、図示しない給紙部から転写部3にむけて搬送され、最終的にその転写部3の手前に配置されるレジロール対35によって、作像部2の感光体21と転写部3の転写搬送ベルト31とが接して対向する転写位置TNに所定のタイミングで送り込まれる。
この転写部3では、画像形成動作における転写実行期になると、感光体21上のトナー像が給紙部から転写位置TNに導入される記録用紙Pに対して静電的な作用を受けて転写される。また、そのトナー像が転写された後の記録用紙Pは、転写搬送ベルト31に保持された状態でその搬送力によって定着部4にむけて搬送される。
さらに、上記定着部4は、加熱源を有し、一定の方向に回転する加熱ロール41と、この加熱ロール41との間で定着ニップFNを形成するようにそのロール41に圧接して回転する加圧ロール42と、これら加熱ロール41及び加圧ロール42の周囲をそれぞれ囲い、その定着ニップFNの記録用紙の導入側となる部位および排出側となる部位が少なくとも開口されたハウジング43等で構成されている。加熱ロール41は、図示しない駆動装置の回転動力により矢印方向に回転駆動する。図中の符号45は、転写搬送ベルト31にて搬送される定着対象の記録用紙Pを定着ニップFNに搬送案内するためのガイド部材である。
この定着部4では、前記転写部3を通過してトナー像が転写された後の記録用紙Pが、圧接状態で回転する加熱ロール41及び加圧ロール42の間に形成される定着ニップFNにむけてガイド部材45に案内されながら搬送導入される。これにより、その記録用紙Pは定着ニップFNを通過するように搬送され、その通過の際に加熱ロール41及び加圧ロール42によって加熱加圧されることでトナー像が記録用紙Pに定着される。
この画像形成装置1においては、以上のような各工程を経ることにより基本的な画像形成が終了する。なお、この定着が終了して定着部4から排出された後の記録用紙Pは、必要に応じて他の後工程に搬送される場合を除けば、画像形成装置1の図示しない排紙部に搬送される。
また、画像形成装置1は、図1に示すように、転写部3の転写位置TNと定着部4の定着ニップFNの導入側端部位置との間で記録用紙Pの搬送路となる部位の長さ(搬送所要距離)が「距離L」に設定されている。
さらに、画像形成装置1は、図2に示すように、その装置全体の各動作を総合的に制御するためのシステム制御部(制御装置)を備えている。システム制御部5は、演算処理装置、各種の記憶装置などによって構成されている。
このシステム制御部5には、画像形成装置1の設定内容、動作条件等についての表示および入力が行われる操作表示パネル6や、画像形成装置1に所定の通信形態により接続されるパーソナルコンピュータ(PC)等の外部接続機器との接続および通信が行われる通信接続部7などが接続されており、これにより画像形成時における各種設定条件などの情報が入力される。また、システム制御部5は、前記した作像部2、転写部3および定着部3などの各動作を制御するための図示しない制御部とそれぞれ接続されており、これによりその各部の状態に関する情報が入手しつつ、その各部に必要な制御情報を出力する。
また、このシステム制御部5では、作像部2における画像処理装置25の動作を制御するための画像処理制御部55などが接続されており、これにより画像処理に関する必要な制御を行うようになっている。特にその制御のうちの1つとしては、図3、4に示すように、前記転写位置TNと定着ニップTNの間の搬送路長さである距離L以上の(搬送方向)長さからなる記録用紙Pに対して画像形成を行う場合、原則として、その該当する記録用紙Pの搬送方向先端Paからその後端側Pbに上記距離Lだけ離れた位置を基準に設定される特定画像域Eに形成すべきトナー像を、その標準のサイズよりも小さいサイズの画素で形成するための制御がある。
特定画像域Eへの特殊なトナー像形成のための制御を行うに当っては、システム制御部5では、画像形成時に実際に使用される記録用紙Pのサイズ(送り方向のサイズなど)や種類、形成される画像の濃度等の制御に必要な情報を操作表示パネル6または通信接続部7から入手する。これにより、後述するように、上記特殊なトナー像形成のための制御の要否などを判断して決定するようになっている。
また、上記特殊なトナー像形成時における画素サイズに関する制御を行うに当っては、システム制御部5では、画像処理装置25において特定画像域Eに形成することになる潜像(情報)の画素(ドット)サイズを標準のものよりも小さいサイズに一時的に変更する処理を実行させるための制御命令を画像処理制御部55に出力する。ここで、画素サイズを小さいサイズに変更(縮小)するための手段としては、たとえば、解像度(dpi)を変更する手段(露光装置22が感光体21に露光して書き込むピクセルの数を規則的に減ずることでドット形状を所望の形状に補正する手段)が採用される。この実施形態1では、図5に示すように、特定画像域Eに形成する画像の画素サイズについて記録用紙Pの搬送方向Cに沿うサイズのみを標準サイズに対して25〜45%の割合となるように縮小するようにしている。また、特定画像域Eについては、あらかじめ使用対象となる記録用紙Pのサイズや種類等に応じて、前記距離Lの位置を中心とした所定の領域幅Wからなる帯状の領域として設定される。このような情報は、前記所定の記録装置に記憶される。
次に、このような特定画像域Eへの特殊なトナー像形成のための制御動作について説明する。
システム制御部5においては、画像形成動作の開始指示を受けると、前述したような実際の画像形成工程が実施されるに先立って、その画像形成に使用する記録用紙Pおよび画像などに関する情報を入手し、少なくとも図4に示すように、その記録用紙Pの搬送方向長さSが前記距離Lよりも長いものであるか否かの判断がなされる(S10)。
この際、記録用紙Pの長さSが距離Lよりも長い場合には、画像処理制御部55から画像処理装置25に制御命令が送られ、その画像処理装置25においてその長さSに記録用紙Pの特定画像域E内に形成すべき画像の画素サイズを標準のものよりも縮小させる処理が実行される(S15)。具体的には、画像処理装置25において当該記録用紙Pの特定画像域E内に形成すべき潜像のドットサイズの設定条件のうち用紙搬送方向Cに沿うサイズのみを前記した割合に縮小する設定変更の処理が行われる。
そして、この場合は、実際の画像形成工程が開始されると、画像処理装置25で処理された後の画像情報に基づいて前記したような露光装置22による露光工程が行われ、しかる後に現像装置23による現像工程、転写部3における転写工程および定着部4における定着工程が順次実行される。この結果、当該記録用紙Pの特定画像域Eには、図5に示すように、その用紙搬送方向Cに沿うドットサイズが特定画像域E以外の領域に形成されるトナー像Taのドットサイズよりも縮小されたトナー像Tbが形成される。なお、図5に例示する画像はハーフトーンの画像の場合である。また、この際、当該用紙Pの特定画像域E以外の領域には、標準のドットサイズからなるトナー像Taが形成される。
そしてまた、このような特定画像域Eに対する画素サイズの縮小処理がなされた画像形成が行われた場合は、図6に示すように、当該記録用紙Pの先端部Paが定着部4の定着ニップFNに突入した際にその用紙後方部の転写ニップTNを通過する特定画像域Eに転写されるトナー像Tbにトナーの飛び散りが発生する。図6中のTxは飛び散ったトナー部分(範囲)を示す。しかし、このトナーの飛び散りにより、特定画像域Eにおけるトナー像Tbのドットサイズは、見かけ上は大きくなり、他の画像域におけるトナー像Taのドットサイズに近づいた状態となる。この結果、当該記録用紙Pに形成されるトナー像は、その特定画像域E内で発生し得る像乱れが視認されにくいものとなり、他の画像域との画質上の差異もほとんどなく均質なものとして得られる。上記特定画像域Eに対する画素サイズの縮小処理の内容は、用紙Pとして同じものを複数枚使用して画像形成する間は有効とすることができるが、使用する用紙P1枚ごとにその処理内容を一度キャンセルし、再処理するように構成してもよい。
一方、前記ステップS10において記録用紙Pの長さSが距離Lよりも短いと判断された場合には、特定画像域に対する画素サイズの縮小処理は行われない(図4)。この場合は、当該記録用紙Pにおいては、その用紙先端部が定着ニップFNへ突入する際にはその用紙後方部がすでに転写ニップTNを通過し終わっているため、かかる突入に起因した像乱れが発生することがない。
[他の実施の形態]
実施形態1においては、特定画像域に対する画素サイズの縮小処理を行うか否かについて、画像形成に使用する記録用紙Pの長さSが距離Lよりも長いかどうかを判断し(図4のS10)、その判断結果によって決定する場合について例示したが、必要に応じて、図4に示すように形成すべき画像の濃度Dが所定の画像濃度Dn(%)よりも低いか否かを判断する工程(S11)を付加し、その結果が低いという場合にのみ特定画像域Eに対する画素サイズの縮小処理を行うように構成してもよい。この場合は、たとえば、定着ニップへの突入に起因した像乱れが視認されやすいような画像濃度の画像を形成する場合に上記縮小処理を行うようにすることができ、無駄のない適切な対応が可能となる。
また同様に、実施形態1においては、図4に示すように画像形成に使用する記録用紙の種類が所定の種類(たとえば厚紙)か否かを判断する工程(S12)を付加し、その結果が所定の種類である場合にのみ特定画像域に対する画素サイズの縮小処理を行うように構成してもよい。この場合は、たとえば、像乱れが視認されやすいような種類(たとえば厚紙)の記録用紙Pを使用して画像を形成する場合に上記縮小処理を行うようにすることができ、無駄のない適切な対応が可能となる。
さらに、実施形態1では、特定画像域に対する画素サイズの縮小処理(図4のS15)としてドットサイズの用紙搬送方向に沿うサイズのみを標準サイズよりも縮小する場合について例示したが、この他にも、たとえば、図7に示すように特定画像域Eに形成することになるトナー像Tbの本来の画像濃度値(%)に補正係数k(0.6<k≦1)を乗じて得られる値とする処理をすることで対応することもできる。図7に示す補正係数kは、画像濃度が0%、100%であるときは「1」として設定し、それ以外の濃度域では特に中間的な濃度域である40〜60%程度であるときには小さめの値(0.6<k<0.7)として設定している。
この場合には、特定画像域Eに形成されるトナー像の画像濃度が特に像乱れが視認されやすいような中間的な濃度であるときに、その画像濃度が本来よりも低めに設定されて形成される。しかし、記録用紙Pが定着ニップに突入したことに起因した特定画像域Eにおけるトナーの飛び散りが発生することで、そのトナー像Tbのドットサイズが見かけ上は大きくなり、他の画像域におけるトナー像Taのドットサイズに近づいた状態となる。反対に、そのトナー像Tbの画像濃度が0%、100%に近い値になるほど補正係数kが「1」に近づいた値となり本来の濃度値とほぼ同じ関係になるが、このような濃度のトナー像Tbにおいては定着ニップへの突入に起因した像乱れは発生しても視認されにくいものとなり、上記縮小処理は特に必要にならない。
また、特定画像域Eに対する画素サイズの縮小処理(図4のS15)としては、その特定画像域Eに形成されるトナー像TbをED画像に変換する処理を行うように構成してもよい。ED画像に変換する処理とは、誤差拡散を施した画像処理をすることである。
さらに、実施形態1では、特定画像域Eの領域幅Wを記録用紙Pのサイズや種類に応じて設定した場合について例示したが、その特定画像域Eの領域幅Wについては記録用紙Pの定着ニップFNへの導入時に発生する速度変動分に応じて設定してもよい。この場合、速度変動分は、使用対象となる記録用紙Pが定着ニップFNに突入したときの加熱ロール41を回転駆動させている駆動装置(のドライブモータ)の回転状況についてエンコーダ等の回転検知手段からの検知情報を入手し、その検知結果(回転速度値)の通常のドライブモータの回転速度との差分から求められる。そして、この変動分が大きい場合は領域幅Wを広めに設定し、反対にその変動分が小さい場合はその領域幅を小さめに設定すればよい。
1…画像形成装置、2…作像部、3…転写部、4…定着部、5…システム制御部(制御手段の一部)、55…画像処理制御部(制御手段の一部)、P…記録用紙(シート材)、FN…定着ニップ、TN…転写位置、E…特定画像域、W…領域幅、C…搬送方向。