JP4742042B2 - ウィルス不活化ヘモグロビンおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
ウィルスの不活化には種々の方法があり、主に、エネルギーによるウィルス不活化、物理的処理、化学的処理に大別される。エネルギーによるウィルス不活化は、加熱処理(特許文献2参照)、マイクロウエーブ照射による超短時間熱処理(特許文献3参照)、紫外線照射処理(特許文献4参照)ジメチルメチレンブルー(DMMB)などの光増感物質を利用する光増感作用(特許文献5参照)などが知られている。たとえばアルブミン製剤のウィルス不活化は、60℃で10時間加熱処理される。しかしながらエネルギーによるウィルス不活化は、ヘモグロビン変質のおそれから、ヘモグロビン含有製剤の処理には、適用が制限される。つまり、ヘモグロビンの不活化に際しては、ウィルスは不活化するが、ヘモグロビンたんぱく質を実質上変性させない方法が求められる。
化学的処理は、低pH処理、核酸Intercalatorなどを用いる化学的処理なども知られているが、典型的には生物学的適合性の溶媒(solvent)および界面活性剤(detergent)を用いるウィルス不活化方法であり、ソルベントデタージェント法(以下、SD処理法とも表記する)とも称される(特許文献7および非特許文献1参照)。SD処理によるウィルス不活化の原理は、界面活性剤によりエンベロープウィルスの鞘を壊し、溶剤中に溶解することによる(非特許文献1参照)。SD処理法では、溶媒および界面活性剤の併用により、両者のウィルスの脂質エンベロープに対する効果は相乗的に促進される。SD処理法は、脂質エンベロープを有するウィルスの不活化に有効であり、血液凝固第VIII因子製剤のウィルス不活化処理に適用されている。
上記赤血球は、通常、全血の遠心分離により得られる。したがってその被SD処理液は、ヘモグロビンとともに、溶媒、界面活性剤、ストローマおよび血液型物質などの血液由来の不要物質を含む。
上記で使用される溶媒がトリ-(n-ブチル)ホスフェートであり、界面活性剤が非イオン性の界面活性剤である態様は好ましい。
好ましい実施態様において、合成吸着剤は、具体的にスチレンおよび/またはアクリルと、ジビニルベンゼンとの共重合体からなる。
上記限外ろ過は、約100,000の分画分子量を有する孔径の限外ろ過膜を用いて行うことが好ましい。この限外ろ過膜の材質は、通常、再生セルロースおよび/またはポリエーテルスルホンからなる。
このナノろ過によりウィルスが除去され、このナノろ過と上記SD処理とにより、ウィルスの高不活化が達成される。具体的に、ナノろ過は、孔径約15〜70nmの、再生セルロースおよび/またはPVDFからなる膜を用いて実施することができる。
ろ過滅菌では滅菌用フィルター(滅菌膜)が使用される。具体的に、ろ過滅菌は、再生セルロース、ポリエーテルスルホンおよびPVDFから選ばれる少なくとも1種の材質からなり、孔径0.2μmの滅菌膜を用いて実施することができる。
なお、ウイルス高不活化とは、エンベロープの有無に拘らず、ウィルスが不活化もしくは除去されていることを意味する。
さらにこの精製工程を、吸着剤、特に合成吸着剤の利用および限外ろ過操作の順序で組み合わせて実施すれば、この精製工程を効率的に実施できるだけでなく、本発明の好ましい態様として、この後に付加されるナノろ過処理の効率の向上、すなわち処理時間の減少、収率の向上も可能となる。またこの好ましい態様では、エンベロープの有/無に拘らず、いずれのウィルスも不活化が保証されたウィルス高不活化かつ無菌性のヘモグロビンを得ることができる。
このような本発明では、ストローマを有する赤血球から、ウィルス不活化されたSFHヘモグロビンを製造するに際し、該赤血球に、まず工程(1)のSD処理を施す。
このSD処理液との接触により、ヘモグロビンの変質を生じさせずに、溶血処理とウィルス不活化処理とを同時に行うことができる。なお、次工程の合成吸着剤処理および限外ろ過操作により除去可能なものであれば、この工程で使用されるSD混合液、接触条件は特に制限されない。
具体的に例示すると、溶媒としては、有機溶媒、特に炭素数1〜10のアルキル基を有するジアルキルまたはトリアルキルホスフェートが挙げられ、なかでも炭素数2〜10のアルキル基を有するトリアルキルホスフェートが好ましく挙げられる。具体的には、トリ-(n-ブチル)ホスフェート(以下、TNBPと表記することもある)、トリ-(t-ブチル)ホスフェート、トリ-(n-ヘキシル)ホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリ-(n-デシル)ホスフェート、エチル-ジ(n-ブチル)ホスフェートなどが挙げられる。とりわけ、トリアルキルホスフェート例えばトリ-(n-ブチル)ホスフェート(以下、TNBPと表記することもある)が好ましく使用される。
とりわけ、Tween80、Triton X-100、ナトリウムコーレートなどの非イオン性オイル可溶性水性洗剤が好ましく使用される。
SD混合液は、上記のような溶媒(S)および界面活性剤(D)を、S/D(w/w比)が1〜20となる量で含有することが好ましい。
赤血球のSD処理により、全ての赤血球が溶血したことは、目視でも充分に識別可能であるが、赤血球の被SD処理液を遠心分離し、上清のヘモグロビン濃度を分析することによって確認することができる。また本発明者らは、このSD処理により、ヘモグロビンの物理・化学的特性に影響することはなく、ヘモグロビンたんぱく質は実質的に変性しないことおよび還元酵素系たんぱく質が高度に維持されていることを確認している。
本発明では、この溶血効果およびウィルス不活化を確実にするため、SD混合液の使用量(重量単位)は、接触系中の赤血球量100に対し、溶媒が0.3〜1、界面活性剤が0.05〜1となる量であることが望ましい。
SD処理は、0〜40℃、好ましくは4〜25℃、さらに好ましくは7〜12℃の温度下で、赤血球溶液と、SD処理液とを接触させることにより行われる。この接触は、通常数分の接触で効果があらわれ、好ましくは10分以上2時間以内、典型的に30〜60分程度である。なお、2時間より長い時間処理しても効果の上昇は期待できないため、2時間以内にすることが好ましい。
SD処理による溶血およびウィルス不活化の効率は、温度の影響をほとんど受けないので、ヘモグロビンの安定性、特にメト化を抑制する観点から上述の温度に設定される。
精製工程は、被SD処理液から、SFHヘモグロビンを分離・回収する工程である。実施例として後述する具体的な検討から、本発明では、この精製工程として、合成吸着剤による吸着処理(2)および限外ろ過(3)を、この順序で行うことが好ましい。
工程(2)の好ましい実施態様において、上記合成吸着剤は、官能基のない合成ポリマー、たとえばスチレンおよび/またはアクリルと、ジビニルベンゼンとの共重合体からなる粒子が挙げられる。このような合成吸着剤は、ダイアイオンHPシリーズ、ダイアイオンSP200シリーズ、ダイアイオンHPM1GおよびHP2MG(以上、三菱化学社)、アンバーライトXAD(登録商標)シリーズ(Rohm & Haas社)の製品名の市販品を利用することができる。これらのうちでも、スチレンまたはアクリルとジビニルベンゼンの共重合体であるアンバーライトXADシリーズ(XAD-16HP、XAD-1180、XAD-2000)が好ましい。
また合成吸着剤はアルカリおよび熱に対する耐性が強く、使用前におけるアルカリ水溶液浸漬による121℃条件での滅菌操作が可能であり、調製物のパイロジェンフリーおよび無菌性を保証することが可能となる。また、アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムが好んで用いられる。
この合成吸着剤による吸着処理(2)によって、被SD処理液中に含まれる除去対象物のうちでも、添加した溶媒、界面活性剤の大部分が除去される。さらには、血液由来のストローマおよび血液型物質の除去も可能となる。
また、クロスフローろ過システムにおいてはろ過装置に装着するろ過膜カセットの有効ろ過面積を制御することにより処理液量に応じた膜面積での運転が可能である。すなわち、処理液量に応じろ過装置に重ねて装着するろ過膜カセットの枚数を制御することにより小容量から大容量までのスケールへの対応が可能となる。
クロスフローろ過では、クロスフローろ過装置内を循環する必要物質の液量を制御せずろ過を行い、一定量となった段階で分散媒にて循環液量を規定量まで戻すという過程を繰り返すバッチ方式、および透過する液量に合わせて循環液に供給する分散媒量を制御し循環液の液量を規定量に保つダイアろ過方式があるが、本発明ではどちらの方式を用いてもよい。分散媒については必要物質を安定的に分散、溶解させうる溶媒であれば限定されることはない。また分散媒中、浸透圧調整剤、pH調整剤などの成分の有無についてはクロスフロー膜を劣化、破壊させる作用がない限り何ら限定されるものではない。
限外ろ過(3)で除去する溶媒、界面活性剤、あるいはストローマおよび血液型物質の量は、前工程(2)で使用する合成吸着剤量、処理時間など合成吸着剤処理条件との兼ね合いで決定される。
ところで前述したように、被SD処理液に対する精製方法は、いくつかあり、従来のSFHヘモグロビンに対するSD処理では、製造プロセスの効率面から特に制限を受けることはない。しかしながら、赤血球を直接SD処理する本発明においては、本発明者らの詳細な検討の結果、製造効率の観点から、上記工程(2)次いで工程(3)の順序で組合わせて行うことが、特に好ましい態様である。
また被SD処理液をそのまま限外ろ過(3)することは、溶媒、界面活性剤およびストローマなどがフィルターの目詰まりを生じさせ、その結果、ろ過時間の増加、高価なフィルターの膜面積の増加、フィルターの高頻度の交換を必要とし、さらに収率の低下を導くことになる。
(4)ナノろ過に用いるフィルターは、一般的に再生セルロースで形成された中空糸微多孔膜またはPVDF膜などが用いられる。
ナノろ過によるウィルス除去は、主としてマルチシーブ効果によるメカニズム、つまりウィルス粒子の物理的な除去によりなされるため、孔径は、最終調製物中に維持すべき物質、およびサイズ排除によって除去すべきウィルスのサイズに応じて適切に決定されるべきである。本発明の具体的例においては、Pall社製のUltipor VF DV20およびMillipore社製のViresolve NFPを有効的に利用することができる。
この限外ろ過(5)は、基本的に、上記精製工程における限外ろ過(3)と同様のシステム、すなわちクロスフローろ過、タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて行うことができる。ここで使用されるろ過膜は、濃縮に応じたサイズのものを用いるが、かつ最終調製物中に維持すべき物質、および除去されるべき物質のサイズに応じた分画分子量および孔径が適切に決定されるべきである。ヘモグロビンを濃縮する場合には、約10,000〜30,000の分画分子量を有する孔径が適している。
本発明において、この限外ろ過工程(5)により、ヘモグロビン濃度45w/w%以上の濃縮が可能である。
このろ過滅菌工程(6)は、無菌性ヘモグロビン製品を得るために必要とされる通常の工程である。本発明では、このろ過滅菌工程(6)に、ヘモグロビン濃度45w/w%に濃縮した高粘度の濃縮液を供しても、良好なろ過特性でのろ過が可能である。
なお、以下の実施例において、赤血球のSD処理により、全ての赤血球が溶血したことは目視でも充分に識別可能であるが、赤血球の被SD処理液を遠心分離(条件:18000G×30分)し、上清のヘモグロビン濃度を分析することによって確認した。
またSD処理によりヘモグロビンおよびメトヘモグロビン還元酵素系が物理的にも化学的にも変性していないことは、生化学分析により確認した。
以下の実施例は、赤血球のSD処理によるウィルス不活化効果およびヘモグロビンの変性有無を調べるために行った。
<SD混合液の調製>
ウィルススパイク試験時の10倍濃度のSD混合液を以下のように調製した。まず、メイロン84(大塚製薬)25mLを注射用蒸留水で各100mLに希釈し、25mM重炭酸ナトリウム溶液を調製した。
界面活性剤;ポリオキシエチレン(10) オクチルフェニルエーテル(Triton X-100;ICN Biomedicals Inc.)または デオキシコール酸ナトリウム(和光純薬)をトリn-ブチルホスフェート(TNBP; 和光純薬)と所定量混合し、これら濃度が表1に示すSD処理時の10倍濃度となる25mM重炭酸ナトリウム溶液または注射用蒸留水溶液を調製した。
以下の2種のスパイク試験用サンプルを調製した。
ヒト天然血液全血から血小板、白血球、血漿成分を除去した濃厚赤血球製剤に、生理食塩水を適量加え、撹拌し、遠心分離後、下相を回収して洗浄赤血球を得た。この洗浄赤血球65.23g(60mL)に、20mM重炭酸ナトリウム溶液240gを加え、溶血した後、遠心分離(10,000rpm×30min)し、ストローマ含有ヘモグロビン溶液とした。その後さらに0.45μmシリンジフィルターにてろ過処理し、ストローマ不含ヘモグロビン溶液を得た。
上記で得られたストローマ含有または不含の各試験用サンプル0.9mLに、ウィルス(Human herpesvirus 1)液0.1mLを添加し、充分混合した後、上記で調製したSD混合液を0.1mL添加して、試験溶液全量を1.1mLとし、目的とするSD処理最終濃度の試験溶液を調製した。試験溶液を調製後は、直ちに7〜10℃で表1に記載の各時間混和し、ウィルス不活化処理した。処理後、凍結保存(−80℃)し、ウィルス感染価の測定に供した。
ウィルス感染価(TCID50)は、Reed-Munch(レード・ミュンヒ)法を使用した。
RF(Virus reduction factor:ウィルスクリアランス指数)は、未処理試料の感染価の常用対数から溶媒/界面活性剤(S/D)処理試料の感染価の常用対数を減じることにより求めた値である。
なお使用したウィルスHuman herpesvirus 1は、物理・化学的抵抗性が中程度である。
結果を表1に示す。
上記試験において、SD処理時、ストローマの存在の有無はウィルス不活化効果に影響を及ぼすことはなかった。Human herpesvirus 1を使用したスパイク試験では、測定系の陽性対照のウィルス感染価が8.0の時、その時のSD処理条件(Triton X-100:0.2%/TNBP:0.3%混合液、8.5℃/12時間)で、ストローマ存在の有無にかかわらず、ウィルス感染価≦3.0(log10TCID50/1mL試験液)、ウィルスクリアランス指数(リダクションファクター)≧5.0が示された。
また使用する界面活性剤は、いずれもRFが5.0以上であった。使用した界面活性剤は、SD処理時の濃度がTriton X-100では0.2%、デオキシコール酸ナトリウムでは0.05%と低濃度側でも良好な結果が得られた。
以下の実施例2は、本発明における好ましい精製工程を確立するために行った。
<赤血球のSD処理>
ヒト天然血液全血から血小板、白血球、血漿成分を除去した濃厚赤血球製剤に、生理食塩水を適量加え、撹拌し、遠心分離後、下相を回収し、洗浄赤血球を得た。
サンプル1:得られた洗浄赤血球200gに、予め調製したSD混合液(0.6%TNBP-2.0%Triton X-100および適量の重炭酸ナトリウムを含む水溶液)を200g添加し、処理液全量中の溶媒および界面活性剤濃度が0.3%TNBP-1.0%Triton X-100の条件下で、SD処理(4〜10℃で2時間以上撹拌)し、400gのウィルス不活化溶血サンプル1を得た。
サンプル2:処理液全量中の溶媒および界面活性剤濃度が0.3%TNBP-0.2%Triton X-100に変えた以外は、サンプル1と同様にしてウィルス不活化溶血サンプル2を得た。
合成吸着剤処理:上記で得た各ウィルス不活化溶血サンプルのうち200gを、アンバーライト(登録商標)XAD-16HP(Rohm & Haas社)40mLを充填したカラム内を流速3.2L/minで2時間循環させた。
油抽出処理:上記とは別に、上記ウィルス不活化溶血サンプル50gおよび70gに対し、大豆油50gおよび30gを各々添加して、大豆油50%、30%の混合液を調製した後、遠心分離(2.63kG, 12min,4℃)し、下相を回収した。
上記で処理した各サンプルについて、溶媒(TNBP)および界面活性剤(Triton X-100N)の残存量を、TNBPはガスクロマトグラフィーにより、Triton X-100Nは高速液体クロマトグラフィーによりそれぞれ定量分析した。結果を表2に示す。
実施例2の結果に基づき、精製工程として、合成吸着剤による吸着処理後に限外ろ過を行い、溶媒、界面活性剤およびストローマの除去効果を調べた。
(1)赤血球のSD処理
実施例2のサンプル2と同様にSD処理したウィルス不活化溶血サンプル(0.3%TNBP-0.2%Triton X-100)2.0kgを得た。
<精製>
(2)合成吸着剤処理:上記サンプル全量2.0kgを、合成吸着剤アンバーライトXAD-16HPを500mL充填したカラム内を、流速3.2L/minの速度で2時間循環させた。
(3)限外ろ過:次いで、ろ過膜(材質:ポリエーテルスルホン、孔径:分画分子量100,000、有効ろ過面積:0.3m2、ザルトリウス製)を装着したクロスフローろ過装置(ザルトコンスライスろ過装置、ザルトリウス製)を用い、循環液入口側圧力0.1MPa、循環液出口側圧力0.025MPa、透過液側圧力0MPaの条件で、限外ろ過を行い、透過液1.6kgを得た。
得られた透過液について、TNBPおよびTriton X-100の残存量を実施例2と同様にして定量分析した。さらに、ストローマ分析としてホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンの残存量を、高速液体クロマトグラフィーにより定量分析した。分析結果を表3に示す。
またストローマ分析としてのホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンについて、合成吸着剤処理(2)および限外ろ過(3)を行うことにより検出限界以下(N.D.)に除去された。
上記のように限外ろ過(3)の前に合成吸着剤処理(2)を行うことにより、限外ろ過(3)に要する時間および収率の観点で安定な処理が可能であった。
浸透圧法により溶血した赤血球を、SD処理してウィルス不活化する従来の方法を実施し、限外ろ過による溶媒除去効果を調べた。
<溶血>
実施例2と同様の操作により調製した洗浄赤血球10kgを、20mM重炭酸ナトリウム溶液50L中に加え、赤血球を溶血した。溶血後、ろ過膜(材質:ハイドロザルト、孔径:0.45μm、有効ろ過面積:1.2m2、ザルトリウス製)を装着したクロスフローろ過装置(ザルトコン2プラス、ザルトリウス製)を用い、限外ろ過(循環液入口側圧力0.1MPa、循環液出口側圧力0.02MPa、透過液側圧力0.01MPa)を行い、さらに回収率を上げるために20mM重炭酸ナトリウム溶液による加水ろ過を繰り返し、透過液90Lを得た。
<SD処理>
上記で得られた透過液に、予め調製したSD混合液(3.0%TNBP-2.0%デオキシコール酸ナトリウムおよび適量の重炭酸ナトリウムを含む水溶液)を、処理液全量中の溶媒および界面活性剤濃度が0.3%TNBP-0.2%デオキシコール酸ナトリウムとなるように添加した。その後、先と同じ限外ろ過を再び行った後、得られた透過液について、ろ過膜(材質:ポリエーテルスルホン、孔径:分画分子量100,000、有効ろ過面積:1.4m2、ザルトリウス製)を装着したクロスフローろ過装置(ザルトコン2プラス、ザルトリウス製)を用いて、限外ろ過(循環液入口側圧力0.1MPa、循環液出口側圧力0.04MPa、透過液側圧力0.01MPa)を行い、さらに回収率を上げるために20mM重炭酸ナトリウム溶液による加水ろ過を繰り返し、透過液118Lを得た。
得られた透析液について、溶媒TNBPの残存量を定量分析した。結果を表4に示す。
ウィルス不活化処理後における孔径0.45μmでの限外ろ過でのヘモグロビン回収率は約85%であるのに対し、孔径分画分子量100,000での限外ろ過でのヘモグロビン回収率は約45%となり、回収率の著しい低下を示した。
(1)赤血球のSD処理
実施例2のサンプル2と同様にSD処理したウィルス不活化溶血サンプル(0.3%TNBP-0.2%Triton X-100)50kgを得た。
<精製>
(2)合成吸着剤処理:上記サンプル全量50kgを含むタンク内に、合成吸着剤アンバーライトXAD-16HPを12L添加し、クレアミックス撹拌機(エムテクニック社)を用いて、回転数300Hz、約7〜10℃の条件で24時間撹拌した。
(3)限外ろ過:次いで、ろ過膜(材質:ポリエーテルスルホン、孔径:分画分子量100,000、有効ろ過面積:4.2m2、ザルトリウス製)を装着したクロスフローろ過装置(ザルトコン2プラス、ザルトリウス製)を用い、限外ろ過(循環液入口側圧力0.09MPa、循環液出口側圧力0.04MPa、透過液側圧力0.02MPa)し、さらに回収率を上げるために20mM重炭酸ナトリウム溶液による加水ろ過を繰り返し、透過液147Lを得た。
得られた透過液を、ウィルス除去フィルターViresolve NFP Opticap Capsule(Millipore製)を用いて、0.15MPa条件でナノろ過した。
(5)濃縮
ナノろ過液全量を、ろ過膜(材質:ポリエーテルスルホン、孔径:分画分子量30,000、有効ろ過面積:1.2m2、ザルトリウス製)を装着したクロスフローろ過装置(ザルトコン2プラス、ザルトリウス製)にて限外ろ過し、ヘモグロビン濃度45w/w%の濃縮液約7.5kgを得た。
(6)ろ過滅菌
上記濃縮液を、滅菌を目的とした孔径0.2μmの滅菌フィルターsartopore2(材質:ポリエーテルスルホン、有効ろ過面積0.45m2)によりろ過滅菌し、ウィルス不活化とともに無菌性を保証したヘモグロビンを得た。
TNBPおよびTriton X-100の残存量を実施例2と同様にして定量分析した。さらに、ストローマ分析としてホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンの残存量を、高速液体クロマトグラフィーにより定量分析した。
また、上記のように合成吸着剤処理(2)、限外ろ過(3)、ナノろ過(4)の順で操作することにより、限外ろ過(3)およびナノろ過(4)に要する時間および収率の観点で安定な処理が可能であった。
Claims (10)
- 赤血球と、溶媒および界面活性剤の混合液とを接触させ、赤血球の溶血処理とウィルス不活化処理とを同時に行うSD処理工程、および
上記で得られた被SD処理液中のウィルス不活化されたヘモグロビンを回収する精製工程を含む、ウィルス不活化ヘモグロビンの製造方法。 - 前記被SD処理液がヘモグロビンとともに、溶媒、界面活性剤、赤血球由来のストローマおよび血液型物質を含む、請求項1に記載のウィルス不活化ヘモグロビンの製造方法。
- 前記精製工程として、吸着剤による吸着処理および限外ろ過をこの順序で行う請求項1または2に記載のウィルス不活化ヘモグロビンの製造方法。
- 前記精製工程に引き続き、ナノろ過およびろ過滅菌をこの順序で行うろ過工程を、さらに含む請求項3に記載のウィルス不活化ヘモグロビンの製造方法。
- 前記溶媒がトリ-(n-ブチル)ホスフェートであり、前記界面活性剤が非イオン性の界面活性剤である請求項3または4に記載のウィルス不活化ヘモグロビンの製造方法。
- 前記吸着剤が、スチレンおよび/またはアクリルと、ジビニルベンゼンとの共重合体からなる合成吸着剤である請求項3に記載のウィルス不活化ヘモグロビンの製造方法。
- 前記限外ろ過が、再生セルロースおよび/またはポリエーテルスルホンからなる限外ろ過膜を用いて実施される請求項3に記載のウィルス不活化ヘモグロビンの製造方法。
- 前記ナノろ過が、孔径約15〜70nmの、再生セルロースおよび/またはPVDFからなる膜を用いて実施される請求項4に記載のウィルス不活化ヘモグロビンの製造方法。
- 前記ろ過滅菌が、再生セルロース、ポリエーテルスルホンおよびPVDFから選ばれる少なくとも1種の材質からなり、孔径0.2μmの滅菌膜を用いて実施される請求項4に記載のウィルス不活化ヘモグロビンの製造方法。
- 前記ろ過滅菌の前に、ナノろ過液を限外ろ過して濃縮する請求項4に記載のウィルス不活化ヘモグロビンの製造方法。
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