JP4737794B2 - アンカー定着工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、切土、盛土を含めた法面を補強するために、アンカーボルト、ロックボルト等を定着するアンカー定着工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、法面補強に用いられるアンカー(ロックボルトを含む)を定着するためのグラウト材は、水/セメント比が40〜50重量%のセメントミルクに一般減水剤、例えばメラミンスルホン酸塩系の縮合物を配合し、流動性を調整して使用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般減水剤を使用して流動性のみを調整したグラウト材はセメントミルクの流動性保持時間が非常に短く、短時間に注入作業を完了しなければならず、注入作業に困難が発生した場合には注入できない不都合があった。また、材料分離、すなわちブリーディング率も高い現状であった。
例えば、アンカーやロックボルト定着材の使用量は1本当たり20リットル程度と少ない。しかし、施工時間は、二重管削孔の場合なら1本当たり30分以上の施工時間を要する。この場合、グラウト材の流動性保持時間の関係から1回の練混ぜで注入できる本数が限定される。そこで、1回の練混ぜで注入できる本数を増加すべく、品質を無視して孔口にホースを差し込んで垂れ流し方式でグラウト材が注入されることがあった。アンカーを確実に施工するには、注入ホースを孔底まで挿入して孔口に向けて注入しなければならない。
【0004】
このため、現状のグラウト材を用いて施工規格に適合する高品質の施工を行うためには、1回のグラウト練混ぜ量を減らし、1日に何回もグラウト材の練混ぜを行う必要があった。この方法は作業効率が悪く、施工単価が高くつくため、安易な孔口からの垂れ流しが行われがちな現状であった。
そこで、流動性のみでなく、流動性保持時間が延長されたグラウト材を用いてアンカーを定着させる工法が求められていた。更には、ブリーディング率を低下させ、粘性を付与されたグラウト材を用いて細かな岩盤亀裂からの流出を抑えた工法が求められていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決することを目的とし、その構成は、減水剤及び遅延剤の2種以上の混和剤を配合し、水/セメント比が40〜50重量%で混練されたセメントミルクの物性が、凝結開始時間が10時間以上、流動性が練混ぜ3時間後のPロート流下時間が10〜30秒、練混ぜ3時間後のブリーディング率が3%以下に調整したグラウト材を用いて、アンカーを地山に定着することを特徴とし、必要な場合には増粘剤をグラウト材に添加する。
【0006】
すなわち、本発明はグラウト材練混ぜ時に減水剤の他に遅延剤を配合することにより、流動性が長時間維持できるばかりでなく、練混ぜ3時間後のブリーディング率も3%以下に低下する。更にグラウト材は、岩盤等の亀裂があった場合に無限に亀裂に注入されないために、亀裂を閉塞する粘性が必要で、一定以上の粘度を有することが好ましい。本発明は、従来の減水剤の添加量を減らしても遅延剤を添加することにより、流動性が長時間維持されるグラウトの流動性までも適正な範囲に調整される効果を見出して完成したものである。すなわち、3時間後の流動性を示す、ロート流下時間が10〜30秒、好ましくは10〜25秒になるように調整したグラウト材を用いてアンカーを定着する工法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるセメントとは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等を挙げることができる。中でも、セメントミルク凝結後の強度が大きく四季を通じて安定に使用可能な早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0008】
減水剤としてはセメント用減水剤はすべて使用できる。中でも、リグニンスルホン酸及びその塩、メラミンスルホン酸及びその塩のホルムアルデヒド縮合物、ナフタリンホルムアルデヒド縮合物及びその塩、ポリカルボン酸及びその塩を主成分としたものを挙げることができる。その使用量は減水剤の種類により異なるが、一般にセメントに対し、固形分換算で通常の減水剤で0.1〜3.0重量%、好ましくは0.05〜2.5重量%であり、高性能減水剤の場合は0.01〜1.5%、好ましくは0.03〜1.0重量%である。
【0009】
遅延剤としては、セメントに用いられる遅延剤はすべて使用できる。中でも、オキシカルボン酸及びその塩、ジカルボン酸及びその塩、ケトカルボン酸及びその塩、糖類、脂肪酸及びその塩、糖アルコール、珪フッ化物、トリポリリン酸、トリポリリン酸塩等を挙げることができる。その使用量は遅延剤の種類により異なるが、一般に、セメントに対し固形分換算で0.01〜1.0重量%、好ましくは0.005〜0.3重量%である。
【0010】
増粘剤は必須の成分ではないが、少量添加することにより本発明のグラウト材の特性を充足することができる場合には使用する。セメントに用いられる増粘剤はすべて使用でき、セルローズ系増粘剤、アクリル酸系増粘剤、多糖類ポリマー、メラミンスルホン酸塩のホルムアルデヒド高縮合物、グリコール類、ポリエーテル類等を挙げることができる。中でも、メラミンスルホン酸塩のホルムアルデヒド高縮合物は高縮合のために減水作用を消失し、増粘作用を有するに至ったものであり、セメントに対し固形分換算で0.01〜0.5重量%使用される。またポリエーテル化合物、多糖類ポリマー、セルローズ系増粘剤等はその粘性が高いため、増粘剤の使用量は極端に少なく、セメントに対し固形分換算で0.002〜0.08重量%である。
【0011】
本発明は減水剤を配合する従来のグラウト材に、更に遅延剤を添加したものである。その結果、流動性保持時間を延長できることは勿論であるが、ブリーディング率の低減が顕著である。グラウト材はPロート流下時間が10〜30秒、好ましくは13〜25秒、より好ましくは15〜22秒である。10秒未満であると削孔に亀裂があった場合に大量のグラウト材が消費され、グラウト材と作業時間のロスが著しく、30秒を越えると注入が困難になる。本発明は流動性保持時間を単に延長するばかりでなく、延長された保持時間全体にわたって好ましいPロート流下時間を保持することができる。増粘剤は必須の成分ではないが、減水剤と遅延剤の組合わせでなお、不十分な場合に少量添加してグラウト材の物性を改良できる場合がある。
【0012】
【実施例】
実施例1
1)使用材料
セメント:早強ポルトランドセメント
減水剤A:メラミンスルホン酸系化合物(商品名 FT−3S、グレースケミカルズ(株)製、33%水溶液)
遅延剤A:グルコン酸の25%水溶液
増粘剤A:メラミンスルホン酸塩の超高分子化合物(商品名SMF L−23H日産化学工業(株)製、固形分23%水溶液)
【0013】
2)グラウト材の配合
試験に用いたグラウト材の練混ぜ配合率を表1に示した。
【表1】
Figure 0004737794
【0014】
3)グラウト材の物性
表1の配合の練混ぜはペール缶に水と規定量の各種混和剤を計量し、回転数1000rpmのハンドミキサーを用い、セメント投入も含め90秒間とした。10℃、20℃及び30℃で一定時間経過後のPロート流下時間を測定した。一定時間経過後のPロート流下時間は測定前に15秒間練り混ぜた後測定し、その結果を表2に示した。なお、Pロート流下時間は土木学会の基準に準拠して行った。
【0015】
【表2】
Figure 0004737794
【0016】
グラウト材の練り混ぜ3時間後及び24時間後のブリーディング率を測定し、表3に示した。更に、練混ぜ直後のグラウト材を径5cm、深さ10cmの枠体に詰めて各試験温度の養生を行い、材齢1日、3日及び7日後の圧縮強度(N/mm)を測定し、表3に併記した。
表3から明らかな通り、配合No.2〜3においては比較例である配合No.1と比較して、流動性保持時間が長く、作業時間を長くとれる。また、材料分離を示すブリーディング率も小さく、圧縮強度は流動性保持時間を長くとるため、凝結開始時間を遅らせた影響で材齢1日が若干低いが、材齢3日でほぼ同等の強度に回復している。本実施例においては増粘剤は必ずしも必要ではない。
【0017】
【表3】
Figure 0004737794
【0018】
実施例2
1)使用材料
セメント:普通ポルトランドセメント
減水剤A、遅延剤A及び増粘剤Aは、実施例1と同じ
減水剤B:ポリカルボン酸系化合物(商品名 スーパー200、グレースケミカルズ(株)製、18%水溶液)
増粘剤B:分子量2万のポリエチレンオキサイド(試薬品)の20%水溶液
増粘剤C:多糖類ポリマー(商品名 ビオポリー 武田薬品工業(株)製の2重量%アルカリ水溶液)
【0019】
2)グラウト材の配合
試験に用いたグラウト材の練混ぜ配合率を表4に示した。
【表4】
Figure 0004737794
【0020】
3)グラウト材の物性
試験温度を20℃として、実施例1と同様にしてグラウト材の物性を測定した。Pロート流下時間を表5にブリーディング率、凝結開始時間及び圧縮強度を表6に示した。
【0021】
【表5】
Figure 0004737794
【0022】
【表6】
Figure 0004737794
【0023】
【発明の効果】
本発明により、充分な流動性を有する上に、流動性保持時間が長く、増粘剤を添加しなくともブリーディング率を低下させてアンカー定着工事を作業効率よく行うことができるアンカー定着工法を提供することができる。更に岩盤の亀裂に浸入し難い適正な粘性を維持することができる。

Claims (2)

  1. 減水剤及び遅延剤の2種以上の混和剤を配合し、水/セメント比が40〜50重量%で混練されたセメントミルクの物性が、凝結開始時間が10時間以上、流動性が練混ぜ3時間後のPロート流下時間が10〜30秒、練混ぜ3時間後のブリーディング率が3%以下に調整したグラウト材を用いて、アンカーを地山に定着することを特徴とするアンカー定着工法。
  2. グラウト材に増粘剤が配合されていることを特徴とする請求項1記載のアンカー定着工法。
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