JP3810201B2 - 急結材、急結性モルタル又はコンクリート、及びそれを用いた吹付工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、急結材、急結性モルタル又はコンクリート、及びそれを用いた吹付工法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、吹付施工において、モルタル又はコンクリートの凝結を遅延させ、長時間、練置く必要性がある場合、モルタル又はコンクリートに、リン酸塩、クエン酸、及びポリカルボン酸塩系混和材を添加して、長時間流動性を保持する方法が提案されている(特開平 2−248351号公報、特開平 3−153550号公報)。
しかしながら、混練り後6〜12時間以上遅延させた後、急結材を混合すると硬化性状が低下し、吹付けたモルタル又はコンクリートが水に流されたり、天端部分より剥離するなどの課題があった。特に、冬場などの低温時には、硬化性状はさらに悪化しやすいという課題があった。
【0003】
本発明者は、前記課題を解決すべく種々検討した結果、特定の急結材を使用することにより、良好な急結・硬化性状が得られるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、セメント系急結材である急結成分と、セルロース類からなる増粘剤とを含有してなる、凝結遅延剤含有モルタル又はコンクリート用の急結材であり、凝結遅延剤が、有機酸を有効成分とするものと、ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤と消石灰含有物質を含有してなる助剤からなる該急結材であり、該モルタル又はコンクリートと該急結材とを含有してなる急結性モルタル又はコンクリートであり、該急結性モルタル又はコンクリートを用いた吹付工法であり、セメント系急結材である急結成分と、セルロース類からなる増粘剤とを混合し、該モルタル又はコンクリートに配合することを特徴とする吹付工法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
本発明で使用する凝結遅延剤は、有機酸を有効成分とするものとナフタレンスルホン酸系高性能減水剤と消石灰含有物質を含有する助剤からなる。
有機酸としては、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、及びリンゴ酸等の各種カルボン酸又はその塩が挙げられ、そのうちの一種又は二種以上が使用可能である。特に、使用量と正比例して凝結時間が長くなり、コントロールしやすい面からクエン酸の使用が好ましい。
有機酸の使用量は、必要とされる練置時間を確保できる量であれば特に限定されるものではなく、モルタル又はコンクリート中のセメント 100重量部に対して、 0.5〜12重量部が好ましい。 0.5重量部未満では凝結遅延の効果が得にくく、12重量部を越えると急結性が低下する場合がある。
【0007】
本発明で使用する助剤とは、ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤と消石灰含有物質とを主成分とするものである。
【0008】
ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤は、モルタル又はコンクリートの混練直後の流動性を高める機能があり、その使用量はモルタル又はコンクリート中のセメント 100重量部に対して、固形分として0.01〜5重量部が好ましい。0.01重量部未満では本発明の効果が得にくく、5重量部を越えるとモルタル又はコンクリートの流動性が上がりすぎ、分離等を起こす場合がある。
ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤は、粉末状で凝結遅延剤に含有する方法や液状としてコンクリートに添加する方法などが適用可能である。
【0009】
消石灰含有物質は、有機酸を併用しモルタル又はコンクリートの凝結を遅延させた場合、予定した硬化時間よりも短い時間でも急結材添加による急結性能を補助する機能を有するもので、具体的には、消石灰や、カルシウムカーバイトからアセチレンを発生させる際に副生するカーバイド滓などが挙げられる。
消石灰含有物質の使用量は、モルタル又はコンクリート中のセメント 100重量部に対して、3〜15重量部が好ましい。この範囲外では急結性能を補助する効果が得にくい場合がある。
【0010】
ここで、セメントとしては、通常市販されている普通、早強、及び超早強等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントにフライアッシュ又は高炉スラグなどを混合した各種混合セメント等が挙げられる。
セメントの単位量は特に限定されるものではなく、一般的に使用している範囲の量で使用できる。
【0011】
本発明のモルタル又はコンクリートの配合は特に限定されるものではなく、一般的に使用される配合が適用可能である。
コンクリートであれば、単位セメント量360kg/m3程度、水/セメント比60%前後、細骨材率60%前後の配合が適用可能である。
【0012】
本発明で使用する急結材は、凝結遅延剤で遅延されたモルタル又はコンクリートを良好に急結硬化させるために急結成分と増粘剤を混合したものである。
ここで急結成分としては、セメント吹付工法に使用されるものであれば特に限定されるものではないが、凝結性状が優れ、かつ、強度発現性も良い面から、セメント系急結材の使用が好ましく、具体的には、カルシウムアルミネートを主成分とするものが挙げられる。
急結成分の使用量は、モルタル又はコンクリート中のセメント 100重量部に対して、1〜15重量部が好ましい。1重量部未満では適正な急結性状が得にくく、15重量部を越えて使用すると粉塵の発生や材料の跳ね返り(リバウンド)が多くなる場合がある。
【0013】
本発明で使用する増粘剤は、急結材添加後の急結性モルタル又はコンクリートに急激な粘度上昇を与え、吹付直後のダレを防止し、リバウンド率や粉塵量を少なくするものであり、凝結遅延剤で遅延されたモルタル又はコンクリートに単独で添加すると混練が困難となる。
増粘剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシエチルエチルセルロース等のセルロース類が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することが可能である。
増粘剤の使用量は、モルタル又はコンクリート中のセメント 100重量部に対して、 0.005〜1重量部が好ましい。 0.005重量部未満では本発明の効果が少なく、吹付けたときにダレが生じやすく、1重量部を越えると粘性が大きくなり、モルタル又はコンクリートの圧送性に支障が生じたり、強度発現性を阻害したりする場合がある。
増粘剤の混合方法としては、あらかじめ急結成分と混合しておく方法や、凝結遅延剤含有モルタル又はコンクリート、急結成分、及び増粘剤を同時に混合する方法があるが、本発明では、凝結性能が向上し、良好な付着性が確保できる面から、あらかじめ急結成分と増粘剤とを混合しておく。
【0014】
本発明の吹付工法としては、モルタル又はコンクリートと急結材とを別々に圧送し、合流混合し吹付ける吹付工法が好ましい。
具体的には、セメント、骨材、水、及び凝結遅延剤を混合して混練し、空気圧送し、途中で、例えば、Y字管の一方から増粘剤を含有した急結材を添加して吹付ける方法等が挙げられる。
【0015】
本発明の吹付工法においては、従来使用の吹付設備等が使用できる。通常、吹付圧力は2〜5kg/cm2、吹付速度は4〜20m3/hである。
吹付設備は吹付けが十分に行なわれれば特に限定されるものではなく、例えば、セメントモルタルの圧送にはアリバー社商品名「アリバー280」等が、急結材の圧送には急結剤圧送装置「ナトムクリート」等が使用できる。
【0016】
吹付け施工の時期は、凝結遅延剤によりモルタル又はコンクリートを遅延させ、流動性が確保された時間内であれば良く、本発明の急結材を用いることにより、長時間用に設定したコンクリートを、短時間に吹付施工を実施しても良好な硬化性状が得られる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0018】
実施例1
水セメント比55%、セメント/細骨材比1/3に配合したモルタルに、助剤a 100重量部と有機酸12重量部の混合物を、モルタル中のセメント 100重量部に対して5重量部、さらに、モルタル中のセメント 100重量部に対して、助剤b0.15重量部配合してモルタルを調製した。
調製したモルタルに表1に示す急結材を混合し、そのプロクター値を5℃で測定した。結果を表1に併記する。
【0019】
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品
細骨材 :新潟県姫川産川砂
水 :飲料水
有機酸 :クエン酸、市販品
助剤a :青海産消石灰
助剤b :ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤、市販品
急結成分:カルシウムアルミネート系急結材、市販品
増粘剤 :メチルセルロース、市販品
【0020】
<測定方法>
プロクター値:型枠のモルタルを型詰し、急結材混合後、所定時間ごとのプロクター針を貫入した時の抵抗値
【0021】
【表1】
【0022】
表から明らかなように、本発明の実施例は良好な硬化性状が得られた。
【0023】
実施例2
表2に示す急結成分と増粘剤を使用して表2に示す温度条件で、練置時間0時間でプロクター値を測定したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0024】
【表2】
【0025】
表から明らかなように、温度条件が変化しても、本発明の実施例は良好な硬化性状が得られた。
【0026】
実施例3
表3に示す急結成分と増粘剤を使用し、5℃の温度条件で、練置時間0時間でプロクター値を測定したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0027】
【表3】
【0028】
表から明らかなように、本発明の実施例は良好な硬化性状が得られた。
【0029】
実施例4
水セメント比60%、細骨材率60%、単位セメント量360kg/m3の配合のコンクリートに、助剤a 100重量部と有機酸12重量部の混合物を、コンクリート中のセメント 100重量部に対して5重量部、さらに、コンクリート中のセメント 100重量部に対して、助剤b0.15重量部を配合して吹付コンクリートを調製した。
調製した吹付コンクリートに表4に示す急結成分と増粘剤とを配合して、練置時間5時間後吹付施工を行い、リバウンド率を測定し付着性を確認した。結果を表4に併記する。
施工方法は、圧送機「アリバ−280」で圧送したコンクリートと、急結剤圧送機「デンカナトムクリ−ト」で圧送した急結材を、途中に設けたY字管で混合合流させ吹付けを実施した。
【0030】
<使用材料>
粗骨材 :新潟県糸魚川産6号砕石、Gmax 15mm
【0031】
<測定方法>
リバウンド率:(吹付時付着せずに落下した重量/吹付コンクリート重量)×100
【0032】
【表4】
【0033】
表から明らかなように、本発明の急結材を用いた吹付けは、従来の吹付けより良好な凝結性を示し、リバウンド率は半分以下となった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の急結材を用いることにより、使用時間を遅延させたモルタル又はコンクリートを用いた吹付施工において、良好な付着性が確保できるため、安全性に優れ、経済性の高い吹付けが可能となる。
特に低温においての凝結性能が向上し、かつ急結材の使用量の低下等の効果を発揮した。
本発明により、吹付け用コンクリート設備を必ずしも現場に設置することなく、生コンプラントからコンクリートを予め入手して待機することも可能となり、合理的に施工することが可能となった。
Claims (8)
- セメント系急結材である急結成分と、セルロース類からなる増粘剤とを含有してなる、凝結遅延剤含有モルタル又はコンクリート用の急結材。
- 凝結遅延剤が、有機酸を有効成分とするものと、ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤と消石灰含有物質を含有してなる助剤からなる請求項1記載の急結材。
- 凝結遅延剤含有モルタル又はコンクリートと、請求項1又は2記載の急結材とを含有してなる急結性モルタル又はコンクリート。
- 急結成分が、該モルタル又はコンクリート中のセメント100重量部に対して、1〜15重量部であることを特徴とする請求項3記載の急結性モルタル又はコンクリート。
- 増粘剤が、該モルタル又はコンクリート中のセメント100重量部に対して、0.005〜1重量部であることを特徴とする請求項3又は4記載の急結性モルタル又はコンクリート。
- 凝結遅延剤が、有機酸を有効成分とするものと、ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤と消石灰含有物質を含有してなる助剤からなるものであって、該有機酸が、該モルタル又はコンクリート中のセメント100重量部に対して、0.5〜12重量部であることを特徴とする請求項3〜5のうちのいずれか1項記載の急結性モルタル又はコンクリート。
- 請求項3〜6のうちのいずれか1項記載の急結性モルタル又はコンクリートを用いてなることを特徴とする吹付工法。
- セメント系急結材である急結成分と、セルロース類からなる増粘剤とを混合し、凝結遅延剤含有モルタル又はコンクリートに配合することを特徴とする吹付工法。
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1998
- 1998-02-27 JP JP04763798A patent/JP3810201B2/ja not_active Expired - Lifetime
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