JP4736223B2 - 溶融金属めっき鋼帯の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属めっき鋼帯の製造方法に関するもので、詳細には鋼帯を溶融金属でめっきした後、合金化加熱処理した直後の冷却方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、溶融金属めっき鋼帯の製造設備では、図4に示すように、鋼帯1を溶融金属めっき浴2を通してめっきした後、ワイピングガスノズル4から吐出されるワイピングガスにより所定のめっき付着量に調整し、電気誘導またはガスによる合金化加熱装置5においてほぼ均一に加熱し、その後保熱帯6により鋼帯とめっき皮膜間に合金層を生成し、冷却帯7で急速冷却し合金層の過剰な成長を抑制している。図4において、10は焼鈍炉9から導入される還元雰囲気中の鋼帯1を大気から遮断するためのスナウト、3は溶融金属めっき浴中のシンクロール、8はトップロールである。
【0003】
前記冷却帯7における冷却は、鋼帯とめっき皮膜間に生成される合金層の過剰な成長を抑制するために冷却が必要とされ、通常気体のみまたは、気体と液体を混合したミスト冷却が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記冷却帯7において、気体冷却を用いた場合は、ミスト冷却ほどの急速冷却ができないため冷却長を大きくとる必要があり、高ラインスピード操業に対応させるためにはスペース制約上設置が困難である。またミスト冷却を用いた場合は、急速冷却のように大きな熱伝達係数を必要とする冷却前半では十分な能力を発揮するが、十分に冷却がなされた後には過冷却となる恐れがあり、鋼帯表面に水濡れを発生させ、過剰な液体が下部の溶融金属めっき浴2や合金化加熱装置5に落下し、蒸気爆発や加熱装置の故障を引き起こす。
【0005】
また鋼帯表面に発生した液体濡れは、後段のトップロール8における鋼帯のスリップを誘発させ通板性能を著しく低下させる。また鋼帯がロールに接触する部分を局部的に過冷却し、熱膨張量差により蛇行抑制効果のあるロール中央近辺の外径をロール端部に比して僅かに大きくするロールクラウンに変化を与え、鋼帯幅方向張力に影響を及ぼして形状が著しく悪化する等の問題があった。
【0006】
また、特開平11−43758号には溶融金属でめっきされた金属材を、合金化処理過程の冷却帯で冷却するに際して、冷却負荷が大きいときはミスト冷却を行い、冷却負荷が小さいときは空気冷却を行う合金化処理過程の冷却方法が示されている。
【0007】
しかし、特開平11−43758号の方法では、常にミスト冷却か空気冷却かのどちらが好適かを判断して、あるしきい値をもってミスト冷却と空気冷却を切り替えて冷却するので、ミスト冷却がなされたときは鋼帯表面に水濡れが発生し、トップロールにおける鋼帯のスリップを誘発させ通板性能を著しく低下させる恐れがあった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、溶融めっき後、合金化処理されためっき鋼帯をライン速度や板厚に拘わり無く適切に冷却することができ、鋼帯表面の液体濡れによる蛇行や形状悪化を抑制しつつ、優れた表面外観と適切な合金化度を有する溶融金属めっき鋼帯を安定して製造することができる方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、溶融金属めっきおよび合金化加熱処理された直後のめっき鋼帯を冷却する際に、高い冷却能力を求められる前段ではミスト冷却を用い、低い冷却能力で足りる後段では鋼帯表面の液体分を乾燥させる働きのある気体冷却を用いることにより、前記課題を解決するものである。
【0010】
また1回だけのミスト冷却では鋼帯に液体が付着しやすいので、前段ミスト冷却と後段気体冷却からなる工程を複数回行って、鋼帯表面の液体分を乾燥させ易くすることにより、前記課題を解決するものである。
【0011】
すなわち、本発明の溶融金属めっき鋼帯の製造方法は以下のような特徴を有する。
【0012】
(1)溶融金属がめっきされた後、合金化加熱処理された直後のめっき鋼帯を冷却するに際し、最初にミスト冷却を行い、引き続き気体冷却を行う工程を、トップロールまでの間に1回もしくは複数回行うことを特徴とする溶融金属めっき鋼帯の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の溶融金属めっき鋼帯の製造方法の実施に供される冷却装置の一実施形態を示す正面図であり、最初にミスト冷却を行い、引き続き気体冷却を行う工程を1回行う溶融金属めっき鋼帯の製造方法を示している。
【0014】
本実施形態の冷却装置は、ミスト冷却ゾーン11、気体冷却ゾーン12より構成される。
【0015】
前記ミスト冷却ゾーン11はミストノズル13が設置され、液体と気体により作り出されたミスト14が吐出され鋼帯1を冷却する。なお、ミスト冷却ゾーン11は、発生蒸気を逃がすため排気用のフード17、ダクト18、ブロア19を有し、そのブロア容量は、最大空気使用量および発生蒸気量の総和で決定されるものである。
【0016】
前記気体冷却ゾーン12は気体冷却ノズル15が設置され、吐出気体16により鋼帯1を冷却する。本実施形態の冷却装置は必ず冷却帯最後段に気体冷却ゾーン12が設置される。
【0017】
ここで、使用する気体としては空気が一般的であるが、窒素等適切に冷却できる気体であればその種類は問わない。また液体も、水が一般的であるが、適切に冷却できる液体であればその種類は問わない。
【0018】
本発明法では、前段では高い冷却能力により冷却するミスト冷却を用いて目標200℃の水濡れ開始温度(水が鋼帯表面に付着し始める鋼帯表面の平均温度)に急速に近づけ、後段では鋼帯表面温度が水濡れ開始温度近くになるため、水濡れの危険が高まり冷却能力を微小に制御することが求められ、鋼帯表面の液体分を乾燥させる働きのある気体冷却を用いている。
【0019】
優れた鋼帯表面外観と適切な量の合金層の生成は、冷却帯出口すなわちトップロール直前における鋼帯温度を制御することにより行っている。そこで吐出する気体の量と液体の量を適切に制御することにより、冷却装置の冷却能力を変化させている。
【0020】
図2は本発明の溶融金属めっき鋼帯の製造方法の実施に供される冷却装置の他の実施形態を示す正面図であり、最初にミスト冷却を行い、引き続き気体冷却を行う工程を複数回行う溶融金属めっき鋼帯の製造方法を示している。
【0021】
本実施形態の冷却工程は、ミスト冷却ゾーン11と気体冷却ゾーン12による冷却工程が通常3〜4回繰り返されるのが特徴で、各冷却ゾーンの冷却装置の構成は図1に示す第1の実施形態と同様である。最初にミスト冷却を行い、引き続き気体冷却を行う工程を複数回行うのに、ミスト冷却を第1回目が最も強冷却で、次第に冷却を弱めていくことにより、目標200℃の水濡れ開始温度に急速に近づけ、水濡れ開始温度近くでは冷却能力を微小に制御して、鋼帯に冷却用液体が付着するのを防いでいる。またミスト冷却を第1回目が最も強冷却で、次第に冷却を弱めていくことにより、気体冷却での鋼帯の乾燥が効率的に行われる。
【0022】
最初にミスト冷却を行い、引き続き気体冷却を行う工程の中で冷却装置内の気体の量と液体の量を適切に制御して冷却能力を変更できるが、そのほかに最初にミスト冷却を行い、引き続き気体冷却を行う工程を複数回行う中で冷却装置をオンオフ制御することにより、さらに冷却能力を変化させることが可能となる。
【0023】
【実施例】
(実施例1)
図1に示す冷却装置を用いて本発明法を実施した。また装置使用条件を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1に示すように、本実施例1では水を最大で35m3/hrおよび空気を最大で110Nm3/minとからミストを作り出してミスト冷却ゾーンとし、空気を最大で15Nm3/min吐出して気体冷却ゾーンとしている。ミスト冷却ゾーンは有効長11mで長手方向冷却ピッチ200mm、幅方向冷却ピッチ140mmのスプレーノズルを用い、気体冷却ゾーンは有効長4mで長手方向冷却ピッチ200mmのスリットノズルを用いた。
【0026】
本実施例1の場合、図3に示すように鋼帯表面の水濡れ開始温度を300℃から200℃以下に下げることができることから、水−空気のミスト冷却のみの冷却で発生していた局部的過冷却が解消され、合金化処理冷却過程で200℃まで鋼帯温度を低下させても、従来法では鋼帯形状の悪化比率が70%あったものが、本発明法では10%にまで下がって鋼帯形状は正常なものとなった。その結果、合金化処理冷却過程で200℃まで鋼帯温度を低下させても、従来法での100mm以上の顕著な蛇行の発生を1.0としたときに、本発明法では0.2にまで下がって鋼帯の顕著な蛇行ははかなり発生しなくなった。
【0027】
(実施例2)
図2に示す冷却装置を用いて本発明法を実施した。また装置使用条件を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表2に示すように、本実施例2では第1冷却ゾーンでは水を最大で18m3/hrおよび空気を最大で35Nm3/minとからミストを作り出してミスト冷却ゾーンとし、空気を最大で5Nm3/min吐出して気体冷却ゾーンとしている。また、第2冷却ゾーンでは水を最大で10m3/hrおよび空気を最大で35Nm3/minとからミストを作り出してミスト冷却ゾーンとし、空気を最大で5Nm3/min吐出して気体冷却ゾーンとしている。さらに、第3冷却ゾーンでは水を最大で6m3/hrおよび空気を最大で35Nm3/minとからミストを作り出してミスト冷却ゾーンとし、空気を最大で5Nm3/min吐出して気体冷却ゾーンとしている。
【0030】
第1〜3冷却ゾーンになるにつれて、ミスト冷却での水の吐出量を徐々に減じてミスト冷却が強冷却から弱冷却になるようにした。
【0031】
第1〜3冷却ゾーンともにミスト冷却ゾーンは有効長3.5mで長手方向冷却ピッチ200mm、幅方向冷却ピッチ140mmのスプレーノズルを用い、気体冷却ゾーンは有効長1.5mで長手方向冷却ピッチ200mmのスリットノズルを用いた。本実施例2の場合は、実施例1よりもさらによい効果が得られた。
【0032】
すなわち、鋼帯表面の水濡れ開始温度を実施例1と同様に300℃から200℃以下に下げることができることから、水−空気のミスト冷却のみの冷却で発生していた局部的過冷却が解消され、合金化処理冷却過程で200℃まで鋼帯温度を低下させても、従来法では鋼帯形状の悪化比率が70%あったものが、本発明法では7%にまで下がって鋼帯形状はさらに正常なものとなった。その結果、合金化処理冷却過程で200℃まで鋼帯温度を低下させても、従来法での100mm以上の顕著な蛇行の発生を1.0としたときに、本発明法では0.1にまで下がって鋼帯の顕著な蛇行ははほとんど発生しなくなった。
【0033】
また第1から第3冷却ゾーンで、冷却ゾーン単位で冷却媒体のオンオフ制御をすることによっても、板サイズ、ラインスピードに応じて冷却能力を自由に変化させることができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、溶融金属がめっきされた後、合金化加熱処理された直後のめっき鋼帯を冷却するに際し、鋼帯表面液体濡れの可能性が減少し冷却能力の最大値を超えない範囲で、あらゆる板サイズ、ラインスピードでも冷却帯出口板温を適性に保ちつつ均一温度に鋼帯を冷却することが可能となるとともに、鋼帯の蛇行や形状悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶融金属めっき鋼帯の製造方法の実施に供される冷却装置の一実施形態を示す正面図
【図2】本発明の溶融金属めっき鋼帯の製造方法の実施に供される冷却装置の他の実施形態を示す正面図
【図3】本発明の溶融金属めっき鋼帯の製造方法における鋼帯の水濡れ開始温度を示す説明図
【図4】本発明の適用対象の一例である溶融亜鉛めっき鋼帯の製造設備の構成を示す説明図。
【符号の説明】
1 鋼帯
2 溶融金属めっき浴
3 シンクロール
4 ワイピングガスノズル
5 合金化加熱装置
6 保熱帯
7 冷却帯
8 トップロール
9 焼鈍炉
10 スナウト
11 ミスト冷却ゾーン
12 気体冷却ゾーン
13 ミストノズル
14 冷却用ミスト
15 気体ノズル
16 冷却用気体
17 排気フード
18 排気ダクト
19 排気ブロア
Claims (1)
- 溶融金属がめっきされた後、合金化加熱処理された直後のめっき鋼帯を冷却するに際し、最初にミスト冷却を行い、引き続き気体冷却を行う工程を、トップロールまでの間に1回もしくは複数回行うことを特徴とする溶融金属めっき鋼帯の製造方法。
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JP2001113390A JP4736223B2 (ja) | 2001-04-12 | 2001-04-12 | 溶融金属めっき鋼帯の製造方法 |
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JP2001113390A JP4736223B2 (ja) | 2001-04-12 | 2001-04-12 | 溶融金属めっき鋼帯の製造方法 |
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- 2001-04-12 JP JP2001113390A patent/JP4736223B2/ja not_active Expired - Fee Related
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