JP4735967B2 - 椅子 - Google Patents

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Description

本発明は、オフィス等において好適に適用される椅子に係り、ワーカーの挙動に適合したバックアップ機能を外観を損ねることなく実現した椅子に関するものである。
オフィス等で使用される椅子は、長時間のデスクワーク等を考慮して、体を適切にバックアップすべく、執務中の体に負担が掛からないための背座の形状や角度、リフレッシュや安息のためのチルト機能やロッキング機能など、様々な工夫が凝らされている。
しかしながら、オフィス等においては、片肘にもたれ足を組む等して休息したり、着座したまま側方ないし斜め後方のワーカーと簡単なやりとりをしたり、書類その他の物品を周辺に移動させるケース等が少なくない。このような場合、前後方向の動作に重点をおいて作られている従来の椅子では、背が動作の妨げになることが多々あり得る。
オフィスで使用される椅子ではないが、従来とは異なる体の動きに配慮したものとして、特許文献1に示すように、自動車において後方確認等のために必要な体の動きをバックアップし得るようにした自動車用座席の機能が提案されている。この座席は、幅方向中心を縦断する位置に回転軸を設け、下半部と独立に設けた背の上半部をこの回転軸回りに回転させることで、体のひねり動作に対応するようにしたものである。
実公平4−34111号公報
しかしながら、かかる座席機能は、確かにハンドルを握ったままで振り向く動作をバックアップするものとしては適しているかも知れないが、オフィス等で行なわれる動作をバックアップする機能としては必ずしも妥当しない。オフィス等において、上述した着座時に安息姿勢をとり或いは周辺へのアクセス動作を行なう際には、体の向きを変える程度の挙動をバックアップできれば足り、それ以上の動作は回転椅子の機能で十分だからである。
したがって、着座者が体の向きを変える動作を妨げない方向に背凭れを可動にできれば便利である。その際、この種の椅子は背凭れを構成する背凭れインナーシェルを背支桿に取り付け、その取付部分を隠蔽すべく、背支桿をサンドイッチする状態でアウターカバーを当該背凭れインナーシェルの背面に固定するのが通例であるが、このような構造をそのまま採用すると、着座者が体の向きを変えるたびにアウターカバーが動き回って見苦しくなり、見た目の安定感も損ねる上に、アウターカバーにハンガー機能を付与した場合等には、ハンガーに吊るした衣類が振り回されるという不具合が生じることとなる。
本発明は、このような不具合を伴うことなく、オフィスにおける着座者の動作により良く適合し得る新規有用な椅子を提供しようとするものである。
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
すなわち、本発明の椅子は、背凭れインナーシェルの背後にアウターカバーを配置したものであって、背凭れインナーシェルを、その上部が拘束を受けない状態で下部を背支桿に固定することで、背凭れインナーシェルの弾性を利用して背凭れインナーシェル上部の下部に対するねじり変形を許容して背凭れインナーシェル上部の向きを左右に変更可能にし、背凭れインナーシェルの向き変更に伴い背凭れインナーシェルの左右両側縁アウターカバーの対応する側縁に対して近接又は離反する相対動作を許容する動作空間を、背凭れインナーシェルとアウターカバーとの間に間隙をあけて確保する一方、アウターカバーは、背凭れインナーシェルと接触しないように背支桿に取り付けられて、背凭れインナーシェルの向き変更に対して静止状態を保持するように構成していることを特徴とする。
このように構成すると、着座者が体の向きを変える動作を行った場合に、背凭れインナーシェルの側縁がアウターカバー側に接近する方向に逃げることができるので、背凭れが着座者の動作の妨げとなることを有効に回避することができる。しかも、かかる背凭れインナーシェルの相対動作はアウターカバーとの間に間隙をあけて確保した動作空間内で行なわれ、アウターカバーと干渉せず、アウターカバーも背凭れインナーシェルの動きに追従しないので、当該背凭れインナーシェルの作動を円滑に行なわせることができると同時に、アウターカバー側にも安定感のある本来のカバー機能を有効に担保しておくことができる。
背凭れインナーシェルとアウターカバーとの間が大きくなって椅子の側方からの見え掛かりが損なわれることを有効に防止するためには、背凭れインナーシェルの左右両側縁とアウターカバーの対応する側縁との間に、背凭れインナーシェルの動作を妨げることなく前記動作空間の側方を遮蔽する遮蔽機構を構成しておくことが望ましい。
上記構成に加えて、前記遮蔽機構、背凭れインナーシェルの背面より後方に突出させて設けたリブ状カバーと、アウターカバー又は背支桿の前面若しくは側縁より前方に突出させて設けたリブ状カバーとを具備し、これらのリブ状カバー同士を側面視重なり合うように配置しているものとする
アウターカバーを左右に対をなす背支桿に固定して取り付けた椅子を構成する場合に、リブ状カバーが必要以上に大掛かりとなることを回避するためには、リブ状カバーを左右の背支桿の内側に位置づけておくことが望ましい。
支桿にランバーサポートを取り付けている場合には、ランバーサポートを前記動作空間内に配置すればよい。
本発明は、以上説明した構成であるから、着座者が着座したまま向きを変える動作に背凭れインナーシェルを好適に追従させることができ、しかも背凭れインナーシェルのみを動作させアウターカバーを静止させることによって、アウターカバーによる安定感のある外観を有効に維持できるようにした新規有用な椅子を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示す本実施形態の椅子は、背支桿1に背支持装置2を介して背凭れ3を支持するものであり、その背支持装置2は、座8に着座した着座者の側方ないし斜め後方へのねじり動作や側方への倒れ動作に適合すべく、背凭れ3を同方向に可動に支持する機能を備えている。また、この椅子はランバーサポート4を備え、そのランバーサポート4を簡単な構造及び操作を通じて所望の突出量、高さ位置にダイレクトに調節できるようにしている。
具体的に説明すると、背支桿1は対をなして後上方に突設され、その突出端にブラケット11を介してバックアップ部材12を横架してなるもので、このバックアップ部材12は図3等に示すように前面をバックアップ面12aとする金属板状をなし、中央の平坦部12xに隣接させて、左右の端部に至る領域に塑性変形加工によって所定曲率の湾曲部12yを形成している。また、背支桿1の腰椎対応付近には、ブラケット13を介して図2及び図4等に示す軸受部材14が取り付けてある。この軸受部材14は、略上下方向に延びる長孔141aを開口させた立壁141を有し、この立壁141を背凭れ3の下方側縁に対向する部位に位置づけている。
一方、背凭れ3は、図1及び図2等に示すように、弾性を有する比較的硬質な樹脂製の背凭れインナーシェル31の前面側に図示しないクッション材を貼着し、その上より張地33を背面に亘る部位まで被覆したもので、背凭れインナーシェル31の成形時に、バックアップ部材12の対応部位に図3及び図5等に示す可動部材34を一体成形している。この可動部材34は後面を可動面34aとする板状をなし、中央の平坦部34xに隣接させて、左右の端部に至る領域に前記バックアップ面12aよりも大きい所定曲率の湾曲部34yを形成している。そして、この可動面34aを前記バックアップ面12aに対面する位置に配置している。すなわち、バックアップ面12aと可動面34aとの対向距離dは、湾曲部12y、34yにおいて中心から幅方向へ変位するにつれて漸次広がる関係をなすように設定してあり、両面12a、34aが添接した状態で可動面34aがバックアップ面12aに対して例えば図3→図5のように接触位置を変えつつ転動し、背凭れ3が図5において矢印で示すように向きを変え得るようにしている。
また、本実施形態は、図2、図3、図6及び図7等に示すように、背凭れインナーシェル31の成形時に可動部材34に連続する位置に断面アングル状の補助部材35を一体成形している。この補助部材35は、可動面34aとの間に所定の空隙P(図7参照)を形成する位置に規制面35aを設けたもので、規制面35aは幅方向中央から端部に至る領域に後方に凸となる緩やかな曲面を2つ連接した形態をなし、前記空隙Pは下方に解放されている。そして、これら可動部材34及び補助部材35をバックアップ部材12に上方から被せることによって、可動面34aと規制面35aとの空隙P内にバックアップ面12aを相対揺動可能に収容している。すなわち、可動面34aが揺動していない図3の状態では、バックアップ面12aと規制面35aとの間の少なくとも幅方向中央以外の部分にクリアランスCを確保し、図5に示す揺動端で規制面35aをバックアップ面12aに当接させてそれ以上の可動面34aの揺動を規制するようにしている。図においては規制面35aの端縁35axがバックアップ面12aに局所的に当接しているが、湾曲に沿って幅広く当接させるようにしてもよい。また、バックアップ面12aと規制面35aとの間における前記幅方向中央部に、ウレタン等の圧縮性素材やバネ素材等からなる付勢手段36を介在させており、これにより補助部材35を後方に付勢して、可動面34aをバックアップ面12aに押し付けるようにしている。
さらに、この背凭れ3には、図2及び図4等に示すように、下端近傍の右側縁部及び左側縁部に回動支点となり得る基点たる軸部37を、前記背支桿1側に設けた軸受部材14の略上下方向に延びる長孔141aに貫通させた上で固定しており、長孔141aの下端を軸受部14xとして利用して、背反的に左右の軸部37の何れか一方を回動支点、他方を遊動点とすることによって、図4に想像線で示すように背凭れ3に左右への回動動作を行わせ得るようにしている。そして、遊動点となる軸部37を軸受部14xから解離し、長孔141aに沿って当該長孔141aの上端まで遊動させ得るようにしている。また、本実施形態では前記軸部37をボルト状のものにして止着具としての役割を兼ねさせており、立壁141に向かって締め着けることによって背凭れ3を選択的に軸受部材14に傾動不能に固定し得るようにしている。
このように構成される背凭れ3は、傾動可能な状態下にあっても下方を背支桿1側に前記軸部37及び軸受部材14を介して少なくとも前後方向に固定されるが、上方は前記可動面34aが少なくともバックアップ面12aに前後方向に添接する以外に基本的に拘束を受けない。このため、着座者から背凭れ3に対して中心から幅方向へ変位した位置に図5に矢印Wで示すような偏った荷重が作用した場合に、主として背凭れ3を構成する背凭れインナーシェル31の弾性を利用して当該背凭れ3の上方を下方に対してねじり変形させつつ、可動面34aをバックアップ面12aに対して接触部分を移動させながら転動させ、バックアップ面12aとともに背凭れ3の上部の向きを左右に変更することとなる。
また、着座者が右肩上がりの挙動若しくは右肩下がりの挙動を行い、背凭れ3に背面視右回り又は左回りに旋回する方向の付勢力(例えば図4における矢印T)が作用した場合には、軸部35及び軸受部材14を介して背凭れ3が回動し、その幅方向中央を縦断する中心線mを図4に想像線で示すように着座者の右肩上がりの挙動若しくは右肩下がりの挙動に追従させて傾倒させ得るようにしている。適宜の部位に樹脂バネ等を配置して傾倒した背凭れ3を通常位置に復帰させるようにしてもよい。
このような構成に加えて、背支桿1の腰椎対応部分には、図2等に示すように、前記ブラケット13を利用してランバーサポート4を位置決めし且つ上下方向にガイドするための本発明に係るガイド部たるガイド部材5が取り付けてある。このガイド部材5は樹脂製のもので、図8に示すように前後に対をなす対向壁51、52の間に形成した長孔5aにランバーサポート軸着用の金属製の支軸6を挿通して上下移動させ得るものであり、その一部が支軸6と協働してランバーサポート4に対する上下位置決め機構Aを構成している。
この上下位置決め機構Aは、前記支軸6と、この支軸6を係合させるべく前記ガイド部材5の対向壁52の前向き面に上下方向に沿って間欠位置に設けた部分円筒状の凹所53とからなるもので、この凹所53において対向壁51,52間を前後方向に拡開させている。
そして、ガイド部材5の一部、具体的には前方の対向壁51の幅方向中間位置に設けた板状の弾性体54を、支軸6の挿通方向から見た場合に長孔5aを狭める位置に配しており、これにより支軸6が何れの凹所53に係合した状態にあっても図9(a)に示すように当該支軸6を凹所53に向けて弾性付勢するとともに、同図(b)に示すように弾性体54に抗して凹所53、53間を支軸6が移動し得るようにしている。かかる上下位置決め機構Aの弾性体54は、支軸6を凹所53に押し付けることで支軸6に回転抵抗を付与し、回り難くして、ランバーサポート4の上下位置のみならず回転角度をも仮保持する作用をなしている。
一方、背凭れ3側は、図1及び図2等に示すように、前記背凭れインナーシェル31のうちランバー領域31aにU字形のスリット31bを設けて弾性変形可能としており、前記ガイド部材5の外壁をそのランバー領域31aの側方に対応させて背支桿1に固定し、ランバー領域31aに対応させてランバーサポート4を位置づけている。すなわち、ランバーサポート4はこのランバー領域31aを弾性変形させながらクッション材32を前方に押圧する位置に配される。勿論、背凭れインナーシェル31の一部を切除して弾性変形可能な樹脂板を配置することで対応する構造を妨げるものではない。
このような構成により、支軸6が上下移動すれば、凹所53ごとに支軸6が係合してその高さ方向の位置決めがなされることになる。凹所53は弾性体54より付勢される方向に存するため、着座者から背凭れ3に荷重を掛ければ、支軸6はより強く凹所53に押し付けられて係合する。
そして、かかる支軸6の左右両端に、背凭れ3の左右の縁部近傍に図1及び図10に示すグリップ状の操作部7を設け、着座者が着座した状態で腕を後方に回して左右の操作部7を把持し、これにより支軸6の上下移動操作をなし得るようにしている。
このとき、支軸6が上下方向に移動するにつれて間欠的に左右の凹所53に係合し、係合する度に支軸6がクリックストップしてクリック感が支軸6を介して体感されるため、上記支軸6と凹所53との係合は位置決め機能と別の見方をすれば支軸6の水平を保ちながら移動させるための手掛かりとなるものである。また、前述した凹所53は水平に延びる部分円筒面をなしているため、この凹所53の形状も支軸6を水平に誘導する手掛かりを与え得る。
他方、この実施形態におけるランバーサポート4は、図2等に示すように、角柱状のブロック部41と、このブロック部41の柱軸nから変位した部位に形成した支軸取付部42とを樹脂一体成形してなるもので、この支軸取付部42に支軸6を軸着するためのねじ等による回り止め部43を設け、各ブロック部41の略平坦な面を図12(a)〜(d)に示すようなサポート面S(S(1)、S(2)、S(3)、S(4))となすとともに、隣接するサポート面S、S間に角丸部Rを設けている。そして、その支軸取付部42に前記支軸6を取り付け、回り止め部43で両者を一体回転可能に固定している。
すなわち、各サポート面Sは、所定回転位置で図11(a)に示すように仮に均等に荷重Fを受ける受圧面となっている状態で、同図(b)に矢印Vで示すようにランバーサポート4が回転変位しようとすると、その回転により前方に移動する領域(図ではサポート面Sの下半部)が背凭れ3に接近して、回転により後方に移動する領域(サポート面Sの上半部)よりも優先して荷重Fの受圧を負担する。換言すれば、各サポート面Sが受圧面となるとき、支軸6からの距離が最も小さい部位を受圧の中心位置とする姿勢でランバーサポート4は安定し、そこからランバーサポート4が支軸6からの距離を増大させる方向に回転しようとすると、着座者からランバーサポート4に対してその距離を小さくする方向の押圧力が発生するため、ランバーサポート4は安定方向に戻ろうとし、結果的にランバーサポート4を前記所定回転位置に安定保持する作用が営まれる。そして、図12に示すようにサポート面Sの支軸6からの距離L(L(1)、L(2)、L(3)、L(4))が基本的に異なるため、何れのサポート面S(S(1)、S(2)、S(3)、S(4))が受圧面になるかによって、サポート面Sの突出量(すなわちL)を変化させ得るようにしている。
そして、前述した操作部7を着座したまま両手で把持して回転操作を加えた場合には、支軸6とともにランバーサポート4が回転して、所望のサポート面Sが選択可能となる。
なお、着座者から背凭れ3に荷重が掛からない状態で、最も突出量の小さいサポート面S(3)が受圧面となったときでも背凭れ3の背面の樹脂板31aが押圧されてクッション材32がやや圧縮された状態にあるように、支軸6の位置を規定している。また、サポート面S(2)とS(4)とは支軸6の設定上、そこからの距離L(2)、L(4)が本実施形態では同距離となっているが(図12における(b)、(d)参照)、これらが受圧面となるときの支軸6を基準とした高さ位置が異なるため、回転を利用した簡便な高さ位置変更機能を有するものということができる。
そして、以上のように構成される背凭れ3の背面や背支桿1に付帯する機構部品を隠蔽する位置に、図13、図14(a)及び図15(a)に示すアウターカバー9を配置している。
このアウターカバー9は、背凭れインナーシェル31とは縁が切れていて、当該背凭れインナーシェル31と接触しないように背支桿1に取り付けられる。すなわち、前述したごとく背凭れインナーシェル31が可動であるのに対して、アウターシェル9の方は静止状態に保持するものであり、背凭れインナーシェル31の左右両側縁31xがアウターカバー9の対応する側縁9xに対して近接又は離反する相対動作を行うことになる。このため、背凭れインナーシェル31とアウターカバー9との干渉、或いは背凭れインナーシェル31の背面に設けられた背支持装置2やランバーサポート4等の機構部品とアウターカバー9との干渉が起こらない範囲で、当該背凭れインナーシェル31の相対動作を許容する動作空間Zを背凭れインナーシェル31とアウターカバー9との間に間隔をあけて確保している。
但し、単に間隔をあけるだけであると、動作空間Z全体が側方に開放されて種々の機構部品が側面から視認されて見苦しくなる。そこで、この椅子は、背凭れインナーシェル31の側縁31x近傍の背面より後方に向けてリブ状カバー31zを突出させ、背支桿1の前面及びアウターカバー9の側縁9xより前方(斜め前方を含む)に向けてリブ状カバー1z、9zを突出させており、これらのリブ状カバー31z、1z同士、リブ状カバー31z、9z同士をそれぞれ図14(a)のように側面視重なり合うように配置することによって遮蔽機構SLを構成している。そして、この遮蔽機構SLにより、背凭れインナーシェル31の動作を妨げることなく前記動作空間Zの側方を遮蔽するようにしている。
背凭れインナーシェル31の左右のリブ状カバー31zは、図16及び図17に示すように上端間が背支持装置2の上方に略水平に突出させたリブ状カバー31z´によって接続され、全体が下向きコ字形のリブ状カバーを構成しているもので、これらは背凭れインナーシェル31に一体成形されている。
背支桿1のリブ状カバー1zは、前述したランバーサポート4の支軸6をガイドするガイド部材5(図18参照)の外縁側に一体成形したもので、上下所定領域から前方に突出する板状をなし、図14(a)及び図15(a)に示すように背凭れインナーシェル31のリブ状カバー31zの内側に所定距離を隔てて差し込まれるようにしている。
また、アウターカバー9のリブ状カバー9zは、図13及び図14(a)に示すように、当該アウターカバー9の上方近傍の左右の側縁9xより斜め前方にコブ状に突出させたもので、このリブ状カバー9zはアウターカバー9側の背支持装置対応部位に幅方向に沿って膨出させたリブ9rに連続する位置にあり、背凭れインナーシェル31のリブ状カバー31zの外側に配置されるようにしている。
そして、背凭れインナーシェル31がねじり動作を行い、これに伴いその側縁31xが図15(b)の左側縁に示すようにアウターカバー9の対応する側縁9xに接近した際に、当該背凭れインナーシェル31のリブ状カバー31zが背支桿1のリブ状カバー1zと干渉せずに側面視における重なり合いを深めるように、且つ、同図右側縁に示すように背凭れインナーシェル31の側縁31xがアウターカバー9の対応する側縁9xから離反しても、当該背凭れインナーシェル31のリブ状カバー31zが背支桿1のリブ状カバーzと側面視における重なり合いを残すように、それらのリブ状カバー31z、1zの突出量及び位置関係を規定している。同様に、背凭れインナーシェル31がねじり動作を行い、これに伴いその側縁31xが図14(b)に示すようにアウターカバー9の対応する側縁9xに接近した際に、当該背凭れインナーシェル31のリブ状カバー31zがアウターカバー9のリブ状カバー9zと干渉せずに側面視における重なり合いを深めるように、且つ、同図(c)に示すように背凭れインナーシェル31の側縁31xがアウターカバー9の対応する側縁9xから離反しても、当該背凭れインナーシェル31のリブ状カバー31zがアウターカバー9のリブ状カバー9zと側面視における重なり合いを残すように、それらのリブ状カバー31z、9zの突出量及び位置関係を規定している。勿論、実質的に遮蔽機能が損なわれなければ、離反した際のリブ状カバー同士の重なりは殆どなくなる程度であっても構わない。
なお、先に示した図1、図2及び図8では、リブ状カバー1z、31z、31z´は図示省略してある。
また、図1及び図2で示した張り地33の背凭れ背面への巻き込みは、背凭れインナーシェル31のリブ状カバー31z、31z´の付け根あたりまで巻き込んで当該リブ状カバー31z、31z´を包囲する状態で止着するようにする。これにより、張り地33のエンドを視認し難くでき、同時に張り地33が動作空間Zに進入して機構部品に巻き付く等の不具合も回避することができる。
さらに、図13に示されるように、この椅子のアウターカバー31には背面にハンガーHが取り付けてあり、平素は少なくとも背凭れインナーシェル31の上端より低い収納位置に保持されるが、必要なときに上方に引き出して使用するようにしている。
以上のように、本実施形態の椅子は、背凭れインナーシェル31の背後にアウターカバー9を配置して、背凭れインナーシェル31を、その上部が拘束を受けない状態で下部を背支桿1に固定することで、背凭れインナーシェル31の弾性を利用して背凭れインナーシェル31上部の下部に対するねじり変形を許容して背凭れインナーシェル31上部の向きを左右に変更可能に構成したものである。背凭れインナーシェル31の向き変更に伴い背凭れインナーシェル31の左右両側縁31xアウターカバー9の対応する側縁9xに対して近接又は離反する相対動作を許容する動作空間Zを、背凭れインナーシェル31とアウターカバー9との間に間隙をあけて確保している。アウターカバー9は、背凭れインナーシェル31と接触しないように背支桿1に取り付けられて、背凭れインナーシェル31の向き変更に対して静止状態を保持するように構成している。
したがって、着座者が体の向きを変える動作を行った場合に、背凭れインナーシェル31の側縁31xがアウターカバー9側に接近する方向に逃げることができるので、背凭れ3が着座者の動作の妨げとなることを有効に回避することができる。このような作用は既に背支持装置2について説明した通りである。しかも、かかる背凭れインナーシェル31の相対動作はアウターカバー9との間に間隙をあけて確保した動作空間Z内で行なわれ、アウターカバー9と干渉することがなく、アウターカバー9も背凭れインナーシェル31の動きに追従しないので、当該背凭れインナーシェル31の作動を円滑に行なわせることができると同時に、アウターカバー9側にも安定感のある本来のカバー機能を有効に担保しておくことができる。
また、背凭れインナーシェル31の左右両側縁31xとアウターカバー9の対応する側縁9xとの間に、背凭れインナーシェル31の動作を妨げることなく前記動作空間Zの側方を遮蔽する遮蔽機構SLを構成しているので、背凭れインナーシェル31とアウターカバー9との間隙を大きくとっても、椅子の側方からの見え掛かりが損なわれることを有効に防止することができる。
具体的には、遮蔽機構SLが、背凭れインナーシェル31の背面より後方に突出させて設けたリブ状カバー31zと、背支桿1の前面及びアウターカバー9の側縁9xより前方に突出させて設けたリブ状カバー1z、9zとを具備し、これらのリブ状カバー31z、1z同士、リブ状カバー31z、9z同士を側面視重なり合うように配置しているだけであるため、構造が簡素であり、しかもリブ状カバー31z、9zはそれぞれ背凭れインナーシェル31やアウターカバー9に一体成形し、リブ状カバー1zはガイド部材5に一体成形するようにしているため、別途に部品を導入したり取り付け工数が増えること等も回避することができる。
また、図15(a)に示すリブ状カバー1z、31zは少なくとも左右の背支桿1の外縁よりも内側に位置づけてあり、背凭れ3の幅方向中心に近い位置ほど背凭れインナーシェル31が背凭れ3の向きを変える方向に動作した際のリブ状カバー31zの振れが小さくなることに鑑みれば、このものはリブ状カバー1z、31zが必要以上に大掛かりとなることを有効に回避し得ているものと言うことができる。
特に、この実施形態は前述したように背支持装置2やランバーサポート4を背凭れインナーシェル31の背後に構成しており、何れも可動部分を有するものであることから、動作空間Zを確保して背凭れインナーシェル31のアウターカバー9に対する相対動作を許容することは、同時にこれらの可動部分にも適正な動作空間Zを与え得るものとなる。
その背支持装置2は、背凭れインナーシェル上方の、下方に対するねじり変形動作を許容し、且つその左右両側縁31xがアウターカバー9の対応する側縁9xに近接又は離反する動作を許容すべく、背凭れインナーシェル31の下方を背支桿1側に少なくとも前後方向に固定し、上方を解放した状態で背支桿1側に支持させるものであり、背凭れインナーシェル31の左右両側縁の一方と他方に同時にアウターカバー9に対する接近動作と離反動作が表れるものであることから、上記動作空間Zを設けておくことの意義は大きいものである。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態ではリブ状カバー1zを背支桿1に設けているが、アウターカバー9側に設けるようにしても構わない。同様に、リブ状カバー9zを背支桿1側に設けることも可能である。
また、アウターカバーの他の形態として、背凭れに向かって周回状に突出する壁部を有し、その壁部の左右外側に背支桿を、後方から隠蔽可能なように配置するとともに、壁部の内側に前述した機構部品を収容する構造が考えられる。このようにしても、壁部の内側を動作空間として利用することができ、壁部をリブ状カバーとして活用することが可能となる。この場合、前述した張地33の背凭れ背面への巻き込みは、その壁部の周囲に密接させてこれを包囲するような状態で取り付けることが好適である。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明の一実施形態に係る椅子の斜視図。 同分解斜視図。 同一部破断した平面図。 同背面図。 同作用説明図。 同一部破断した側面図。 図6の要部拡大図。 同実施形態におけるガイド部材の拡大斜視図。 同実施形態における上下位置決め機構の作用説明図。 同実施形態における操作部の取り扱い説明図。 同実施形態におけるランバーサポートの作用説明図。 同実施形態におけるランバーサポートの作用説明図。 アウターカバーを取り付けた椅子の斜視図。 同側面図。 図14におけるX−X線断面図。 アウターカバーを外してリブ状カバーを明示した椅子の背面図。 同分解図。 ガイド部材とリブ状カバーとの関係を示す図。
符号の説明
1…背支桿
1z…リブ状カバー
2…背支持装置
3…背凭れ
4…ランバーサポート
9…アウターカバー
9x…側縁(アウターカバー)
9z…リブ状カバー
31…背凭れインナーシェル
31x…側縁(背凭れインナーシェル)
31z…リブ状カバー
Z…動作空間
SL…遮蔽機構

Claims (4)

  1. 背凭れインナーシェルの背後にアウターカバーを配置してなるものであって、背凭れインナーシェルを、その上部が拘束を受けない状態で下部を背支桿に固定することで、背凭れインナーシェルの弾性を利用して背凭れインナーシェル上部の下部に対するねじり変形を許容して背凭れインナーシェル上部の向きを左右に変更可能にし、背凭れインナーシェルの向き変更に伴い背凭れインナーシェルの左右両側縁アウターカバーの対応する側縁に対して近接又は離反する相対動作を許容する動作空間を、背凭れインナーシェルとアウターカバーとの間に間隙をあけて確保する一方、アウターカバーは、背凭れインナーシェルと接触しないように背支桿に取り付けられて、背凭れインナーシェルの向き変更に対して静止状態を保持するように構成していることを特徴とする椅子。
  2. 背凭れインナーシェルの左右両側縁とアウターカバーの対応する側縁との間に、背凭れインナーシェルの動作を妨げることなく前記動作空間の側方を遮蔽する遮蔽機構を構成し、前記遮蔽機構が、背凭れインナーシェルの背面より後方に突出させて設けたリブ状カバーと、アウターカバー又は背支桿の前面若しくは側縁より前方に突出させて設けたリブ状カバーとを具備し、これらのリブ状カバー同士を側面視重なり合うように配置して構成されたものである請求項1に記載の椅子。
  3. アウターカバーを左右に対をなして設けた背支桿に固定して取り付けたものであって、リブ状カバーを左右の背支桿の内側に位置づけている請求項2に記載の椅子。
  4. 背支桿にランバーサポートを取り付けてなるものであって、ランバーサポートを前記動作空間内に配置している請求項1〜3のいずれかに記載の椅子。
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