JP4734632B2 - 高抵抗フェライト膜及びノイズ抑制体 - Google Patents

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Description

本発明はフェライト膜およびそれを用いたノイズ抑制体に関し、特に抵抗率が高くノイズ抑制体としてノイズを発生する部位に近接させて用いても回路のインピーダンス特性に与える影響が小さいフェライト膜に関する。
フェライトめっき法は、2価FeイオンFe2+を必須成分として含みフェライトを構成する金属元素をイオンとして有する水溶液、例えばこれら金属の塩化物の水溶液を反応液とし、この液と基板とを接触させて基板面にこれらの金属イオンを吸着させ、吸着した2価Feイオンの一部を酸化剤によって酸化し、さらに水和することを繰り返し、緩衝液を用いてpH値を成膜に適した範囲に保つことにより、基板面にフェライトの結晶構造を持つ膜を成膜するものである。
このフェライトめっき法は、水中で基板上にフェライト膜を形成する手段であって、室温近傍の温度で成膜でき、成膜後に熱処理を行なうことなく良質のフェライト膜が得られるという優れた特徴がある。非特許文献1には、フェライトめっきの発明者の一人によってなされたフェライトめっき法に関する幅広い解説が記載されている。この解説に述べられているように、フェライトめっき法には、フェライト膜を形成する基板に耐熱性が要求されないという実用上きわめて大きな利点がある。
フェライトめっきによって形成されたNi−Znフェライト膜の詳細については、本発明者らによる非特許文献2および非特許文献3の報告がある。これらの報告により、フェライトめっきによって形成されたNi−Znフェライト膜は、バルク状のフェライトにおける透磁率の周波数限界であるSnoekの限界を超えることができ、GHzまで高い透磁率を示すことが明らかにされた。また透磁率の損失成分はGHz領域まで高い値を示すことがわかった。この結果、フェライトめっきによって形成されるフェライト膜は、GHz帯域の電磁ノイズをも抑制することができるノイズ抑制体として注目されるようになった。
最近のディジタル機器の高速化によって、動作周波数がGHz帯に達するようになり、この周波数帯域で発生する電磁ノイズにより機器や素子が相互に干渉したり妨害したりするのを防止するための電磁ノイズ抑制体が強く求められるようになった。これらの電磁ノイズは、元の信号の高調波成分として重畳される電流が線路を伝導する間に、GHz帯域のノイズ電磁波として回路網から放出されるので伝導ノイズと呼ばれる。この伝導ノイズを抑制する手段としては電磁ノイズの発生源や干渉や妨害を保護する対象の近く、即ち電磁波の波長に対する距離の比が小さい位置に磁性体を接近させ、その磁気損失によってGHzのノイズ電流を減衰させる方法が有効である。
フェライトめっきによって形成されるフェライト膜をこうした伝導ノイズ抑制体として効果的に動作させるには、その透磁率の損失成分がGHz帯域まで高い値を有し、且つこれらフェライト膜がノイズ発生源のできるだけ近傍に配置できることが要求される。ところが、これらフェライト膜の抵抗率や表面抵抗が小さい場合には、フェライト膜をノイズ発生源の近傍に配置することにより、回路の特性インピーダンスが変化するので、これを考慮した回路設計が必要になる。しかしながら、GHz帯域では回路上の素子が波長と同程度の大きさとなるため、どこにどの程度のノイズが発生するかを設計段階から予測するよりも、実際の回路上のノイズ発生に対し、電磁ノイズ抑制体を用いて対処をする方が好都合である。ノイズ抑制体を近接させても回路のインピーダンスにあまり影響を与えないようにするためには、ノイズ抑制体が大きな抵抗率や大きな表面抵抗を有することが望ましい。
フェライトめっきによるNiZnフェライト膜の抵抗率や表面抵抗を高めるには、NiZnフェライト膜中の2価の金属イオンであるNiイオンやZnイオンを増すことにより、2価のFeイオンを減少させることが有効であると考えられる。しかしながら、フェライトめっきによるフェライト膜の形成においては、反応液中の2価のNiイオンは膜中に取り込まれにくく、pHを高くしてもその固溶量には限界がある。反応液中のNiイオン濃度が限界量を超えると、Niイオンを含む水酸化物が形成され、これらが成膜中に取り込まれることにより、飽和磁化が大幅に減少するとともに、膜の平滑性が劣化するなどの問題があった。他方、2価のZnイオンは反応液中の濃度が低くても膜中に取り込まれやすいものの、適量以上を置換すると膜の飽和磁化が大幅に減少するとともに共鳴周波数の低下をもたらすため、GHz帯域用のノイズ抑制体には適さなくなる。
フェライトめっき法の成膜プロセスによって作製される軟磁性フェライトは、上記した2価のNiイオンと2価のZnイオンを含む反応液を用いて作製されるNi−Znフェライトが中心であり、バルクの軟磁性のフェライトにおいて重要な役割を果たしているMn−Znフェライトについては、成膜があまりなされていない。この理由として、例えば非特許文献4に示されているように、Mnイオンを膜中にほとんど取り込むことができなかったことが挙げられる。例えば文献4のFe3−xMnの成膜においては、そのFig.4およびTable IIに示されているように、xの最大値としてx=0.12程度が得られているに留まっている。
フェライト膜へのMnイオンの取り込みが困難な理由として、通常のフェライトめっきの反応液のpHのもとでは、Mnイオンの固体表面への吸着率が小さいことが考えられる。Mnイオンの固体表面への吸着率は、反応液のpHを高めることにより、高められることが非特許文献5に示されている。しかしながら、反応液のpHを高め過ぎると各イオンが吸着する前に水酸化物等の微粒子を形成し、フェライト膜の生成が得られなくなるという問題がある。そこでFeイオンをロッシェル塩などでキレート化して2価Niイオンの沈殿を防ぎ、高い反応液のpHのもとでフェライト膜を生成させるキレート化フェライトめっき法を開発することにより、MnZnフェライト膜の成膜を可能にしたことが非特許文献6に報告されている。この方法ではMnイオンの取り込み量が増す一方で、Znイオンの取り込み量が著しく小さくなってしまい、またZnの取り込み量を増す条件を選ぶとFeイオンの量が不足するという結果を得ている。
このほか、フェライトめっき法以外の成膜方法によるMnZnフェライト膜として、CVD法による方法が特許文献1に記載されており、またスプレー熱分解法による方法が特許文献2に記載されている。これらの方法では、基板の温度を高温に加熱することを必要とし、しかも高温からの冷却過程でスピネル相を保つために低酸素圧の雰囲気制御を必要としている。こうして得られたMnZnフェライトでは、組成式MnZnFe3−x−zにおいて、3−x−zが2より大きいと、その抵抗率は低い値を示し、高い周波数では使用することができなかった。例えば特許文献1の図5に示されているように、その透磁率の周波数特性において、透磁率の低下が1MHzに達しない周波数で生じている。これらのフェライト膜はより低い周波数域で比較的高い透磁率が得られるとしても、100MHz以上の高周波領域において高透磁率を得ることができるものではなかった。
特開平5−144657号公報 特開2002−359137号公報 科学と工業 第75巻 第8号、第342〜349頁 (2001年) ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス 第91巻 第10号、第7376〜7378頁 アイトリプルイー・トランスアクションズ・オン・マグネティックス、第38巻、第5号、第3156〜3158頁 ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス 第69(2)巻 第18号、第5911〜5914頁 東京工業大学 大学院理工学研究科 学位論文 水溶液プロセスによるフェライト薄膜・微粒子の室温合成とその応用 西村一寛 (平成10年3月) 日本応用磁気学会誌 第20巻 第2号、第485〜487頁
上記した通り、フェライトめっき法により作製された軟磁性のNi−Znフェライト膜は、2価のNiがフェライト膜中に取り込まれる量に限界があり、また2価のZnイオンについては一定量以上の置換は、飽和磁化や共鳴周波数を低下させ、目的とする高周波領域における複素透磁率を低下させるので好ましくない。2価のNiイオンと2価のZnイオンの合計量が少ないと、膜中の2価イオンとしてFeイオンの割合が多くなり、これらの2価のFeイオンと3価のFeイオンとの間で電子の授受が容易に行われるようになるため、フェライト膜の抵抗率およひ膜の表面抵抗が低くなると考えられる。実際に2価のNiイオンと2価のZnイオンの合計量が少なく、フェライト膜の抵抗率がバルクのNiZnフェライトの抵抗率に比べて低い。フェライト膜をノイズ源上に直接堆積した場合には、回路のインピーダンス特性に与える影響が大きい。このように電磁ノイズ抑制効果を得るために必要な飽和磁化や共鳴周波数を下げずに、フェライト膜の抵抗率を増加させることは、高周波領域における電磁波抑制などに用いるフェライト膜の特性を向上させるために解決すべき重要な課題の一つであった。
本発明は、このような課題を解決し、高い表面抵抗を有し、大きな飽和磁化と高い共鳴周波数とを有するフェライト膜、およびその製造方法、並びにフェライト膜を用いた高周波電磁ノイズ抑制体を提供するものである。
本発明の高抵抗フェライト膜は、組成式MFe3−xにおけるMがMnおよびZnを含み平均の価数が2価のFe以外の金属であり、xが0.4以上0.8以下であるスピネル構造の金属酸化物であって、抵抗率が10Ω・cm以上であることを特徴とする。
上記高抵抗フェライト膜において、金属MにはNiを含有させることにより、フェライト膜の磁気特性を調整することができる。また上記高抵抗フェライト膜において、金属MにCoを含有させることにより、フェライト膜の磁気特性を調整することができる。
本発明の高抵抗フェライト膜の成膜の方法は特に限定されないが、下記に示すフェライトめっき法によって成膜したものが特に好ましい。フェライトめっき法によって成膜することにより、組成式MFe3−xにおけるFeの量3−xが2を超え、2.2〜2.6と比較的大きい値の組成範囲にて、高い抵抗率を有するフェライト膜を得ることができる。
本発明の高抵抗フェライト膜の製造方法は、2価のFeイオンを必須成分として含み、フェライトを構成する金属のイオンを含有した水溶液である反応液と、2価のFeイオンの少なくとも一部を酸化させる酸化剤を含有した水溶液である酸化液と、pH値の変化に対し緩衝作用を有する緩衝液とを、それぞれ基板に供給して得られるフェライト膜の製造方法において、上記反応液が濃度20mmol/l以上のMnイオンを含有することを特徴とする。この反応液にはMnを含むFe以外の2価金属イオンを合計で40mmol/l以上含有させることが、高抵抗のフェライト膜を成膜する上で好ましい。
本発明の高抵抗フェライト膜の製造方法において、反応液には2価のZn、NiまたはCoイオンを含有させることによってフェライト膜の磁気特性をさまざまに調整することができる。
本発明の電磁ノイズ抑制体は、上記の高抵抗フェライト膜を基板上に形成したことを特徴とする。本発明の電磁ノイズ抑制体は、電子配線基板上に形成して用いることができる。また半導体集積ウエハーを基板とし、半導体集積ウエハー上に形成して用いることができる。
本発明は、フェライトめっき法によって形成される軟磁性フェライト膜において、飽和磁化を減少させることなくフェライト膜の抵抗率ならびに表面抵抗を高めることを課題として広範な探索を行ない、フェライトめっき法における反応液中のMnイオンの濃度を、通常の濃度範囲を超えて大幅に高めることを試みた結果、Mnをフェライト膜中に取り込むことができ、これによってフェライト膜の抵抗率ならびに表面抵抗を高めることができることを見出し、課題の解決を得て本発明としてまとめることができたものである。
本発明によれば、フェライト膜の飽和磁化をあまり減少させずに抵抗率を大幅に高めることができ、GHzまでの高周波領域で大きな複素透磁率を有する高抵抗フェライト膜を得ることができる。このため、本発明の高抵抗フェライト膜は、例えば電磁ノイズ抑制体として用いることができ、抵抗率が高いため電磁ノイズを発生する電子回路に近接させて用いても電子回路に与える影響が小さく、使いやすいという特徴が得られる。
次に、本発明の実施の形態について、図面を用い具体例を示すことにより、本発明についてさらに詳細に述べる。
図1は本発明の一実施形態の高抵抗フェライト膜を形成するためのフェライトめっき装置の模式的断面図である。
図1において、基板1の面には、ノズル2から雰囲気調整用の窒素ガスとともに吹き出す反応液3と、ノズル4から雰囲気調整用の窒素ガスとともに吹き出す酸化液5が吹きつけられる。この酸化液5にはフェライト膜の成膜反応時のpHの変化を抑制する緩衝液6が加えられている。
基板1は回転円板7に固定され、この回転円板7は中心軸8のまわりに回転する。基板1の面に吹きつけられた液は遠心力によって基板面上を回転円板7の外周に向って流れることにより、基板1の面には液が均一に供給される。回転円板4は発熱体9によって加熱されるとともに温度制御され、回転円板4上の基板1を所定の温度に保つ役割を果たしている。これらの系全体はチャンバー10内に収容されており、反応後の液や吹きつけによって残った液はドレイン11から流出され、回収される。また気体流出口12からこれを排出するようにしてチャンバー10内の雰囲気を整えている。
本発明の高抵抗フェライト膜は、例えばこのようなフェライトめっき法を用いて成膜することにより、得ることができる。
上記反応液3は、2価のFeイオンとMnイオンとを含有した水溶液であって、これら金属の塩化物水溶液のほか、硝酸塩や硫酸塩の水溶液を用いることができる。上記反応液5には、Niイオン、Coイオンあるいは平均の価数が2のこのほかの金属イオンを加えて、これらの金属イオンをフェライト膜に取り込むようにすることができる。
上記酸化液5は、基板面に吸着した2価のFeイオンの少なくとも一部を酸化させてフェライトめっきによる成膜反応を行なわせるものであって、亜硝酸ナトリウムのほか、各種の酸化剤を用いることができる。
上記緩衝液6は、2価のFeイオンの少なくとも一部が酸化してフェライト膜が成膜する反応に伴うpH値の変化を打ち消し成膜条件を維持するものであって、例えば酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウムなどの各種の緩衝液を用いることができる。
本発明において、高抵抗のフェライト膜を成膜するために、上記反応液3のMnイオン濃度は、20mmol/l以上とすることが好ましい。反応液3のMnイオン濃度を20mmol/l以上とすることによって、フェライトめっき反応によって、3価のFeイオンを有し、2価の金属イオンとしてFeイオンのほかにMnイオンを有する組成式MFe3−xの金属酸化物におけるMnイオンの量として上記xの値のうちの0.1以上を占めることができる。この反応液には、Mnを含むFe以外の2価金属イオンを合計で40mmol/l以上含有させることにより、安定した高抵抗のフェライト膜を成膜することができる。
このようなMnイオン量にすることにより、3価のFeイオンを有し、2価の金属イオンとしてFeイオンのほかにMnイオンを有しさらにZnイオンまたはNiイオンを有するフェライト膜の組成式MxFe3−xOにおけるFeイオンの含有量3−xが2.6以下のフェライト膜を容易に得ることができることがわかった。
このようにして反応液のMnイオンの濃度を大幅に高めることにより、成膜したフェライト膜にMnを含有させることができ、これによってフェライト膜のFeイオンの含有量3−xを2.6以下にすることができ、その結果、フェライト膜の抵抗率が10Ω・cm以上と、これまで成膜されてきたNi−Znフェライト膜よりも抵抗率が2桁以上高いフェライト膜を得ることができた。またMnイオンを含有させて抵抗率を高めた場合には、飽和磁化の値をあまり低下させることなく、高い値を保つことができることがわかった。なお、Mnイオンは反応液中に含有させるほか、酸化液や緩衝液中含有させてフェライト膜を成膜することによっても、同様にして高抵抗率や高表面抵抗を得ることができる。
(実施例1)
図1に示したフェライトめっき装置を用い、塩化第一鉄(FeCl・4HO)の濃度を20.0 mmol/l一定、塩化亜鉛(ZnCl)の濃度を0.2 mmol/l一定、塩化マンガン(MnCl・6HO)の濃度を20〜100 mmol/lと変えた反応液3をノズル2から基板1の面に吹きつけ、また亜硝酸ナトリウム(NaNO)5.0 mmol/lの水溶液の酸化液に酢酸カリウム (CHCOOK)100 mmol/lとの混合水溶液の緩衝液を添加したものをノズル3から同じ基板1の面に吹きつけた。この基板1は円板4に固定し円板4と共に回転軸5により回転させ、基板に吹きつけられた液が遠心力によって基板の表面を外周に向って流れるようにした。すなわちスピンスプレーを行なった。
ここで基板1は発熱体6により加熱し温度制御を行なって90℃に保った。この条件にて30分間の成膜を行って得られためっき膜を洗浄し乾燥し、膜の抵抗率を測定し、次の結果を得た。
1−1)反応液の塩化Mn濃度を20mmol/lとした水溶液を用いて作製した膜の組成はMn0.10Zn0.14Fe2.76であった。この結果、膜の抵抗率は120 Ω・cmであった。
1−2)反応液の塩化Mn濃度を60mmol/lと増加した水溶液を用いて作製した場合には、Mn0.23Zn0.14Fe2.63であった。この結果、膜の抵抗率は9000 Ω・cmと増加した。
1−3)さらに反応液の塩化Mn濃度を100mmol/lとさらに増加した水溶液を用いて作製した場合には、Mn0.26Zn0.2Fe2.56であった。この結果、膜の抵抗率は97000 Ω・cmまで増加した。
こうして作製されたフェライト膜について、X線回折の回折パターンを測定したところ、フェライトのスピネル構造を確認した。また上記1−2)および1−3)で成膜したフェライト膜について、走査型電子顕微鏡を用いて膜の構造を観察した結果、1−2)の膜では、膜の断面に柱状に一様に成長した構造がみられ、膜の表面は平坦であった。また1−3)の膜についても、膜の断面に柱状に成長した構造がみられ、膜の表面はほぼ平坦であった。なお、この実施例では、膜厚が約1μmのフェライト膜を成膜し、これらの膜について各種の測定を行っている。電磁ノイズ抑制により適した膜厚を有するフェライト膜は、成膜速度や成膜時間の条件をより適正化することによって得ることができる。
上記1−3)で作製しためっき膜について、磁化曲線測定装置を用いて測定した結果、飽和磁化Mは450 emu/cc、保磁力Hは20 Oeであった。また高周波用パーミアンスメーターを用いて、この膜の複素透磁率の周波数変化を求めた結果、図2に示す結果を得た。透磁率の虚数成分μ”と周波数fの積(μ”×f)で求められるインピーダンス特性からも、この膜が1000MHz以上(1GHz以上)にわたって電磁ノイズを抑制する特性を有し、電磁ノイズ抑制体として使用できることが確認された。
(実施例2)
実施例1で用いた装置と同じ装置を用い、塩化第一鉄(FeCl・4HO)の濃度を20.0 mmol/l、塩化マンガン(MnCl・6HO)の濃度を100 mmol/lとし、塩化亜鉛(ZnCl)の濃度を0〜0.4 mmol/lの範囲で変えた反応液をノズル2から基板1の面に吹きつけ、また亜硝酸ナトリウム(NaNO)5.0 mmol/lの水溶液の酸化液に酢酸カリウム (CHCOOK)100 mmol/lとの混合水溶液の緩衝液を添加したものをノズル3から吹きつけた。基板1は円板4に固定し円板4と共に回転軸5により回転させておくことにより、遠心力で基板に吹きつけられた余分の液を振り切った。
この膜の成膜条件は実施例1に合わせた。すなわち反応液および酸化液に緩衝液を加えた液および基板1を90℃に保って成膜を行なった。この条件にて30分間の成膜を行ない、得られためっき膜を洗浄し乾燥して膜組成と膜の抵抗率を測定し、次の結果を得た。
2−1)反応液の塩化亜鉛濃度が0mmol/l、すなわち含まれていない水溶液を用いて作製した膜の組成はMn0.3Fe2.7であった。この結果、膜の抵抗率は200 Ω・cmであった。
2−2)反応液中の塩化亜鉛濃度を0.3mmol/lと増加した水溶液を用いて作製した膜の組成はMn0.26Zn0.33Fe2.41であった。この結果、膜の抵抗率は測定限界の1,000,000Ω・cmを超える高い値であった。
得られためっき膜について、実施例1と同様の評価を行なった。すなわちX線回折の回折パターンからフェライトのスピネル構造を確認し、また回折線の強度比から{111}面が基板面に平行に配列する配向傾向を見出した。走査型電子顕微鏡を用いた観察の結果、膜の断面は柱状に一様に成長した様子がみられること、および膜の表面の平坦性を確認した。なお、この実施例でも、膜厚が約1μmのフェライト膜を成膜し、これらの膜について各種の測定を行っている。電磁ノイズ抑制により適した膜厚を有するフェライト膜は、成膜速度や成膜時間の条件をより適正化することによって得ることができる。
また、上記2−2)の膜の飽和磁化Mが430 emu/cc、保磁力Hが15 Oeであった。また高周波用のパーミアンスメーターを用いて、この膜の複素透磁率の周波数変化を求めた結果、図3に示す結果を得た。透磁率の虚数成分μ”と周波数fの積(μ”×f)で求められるインピーダンス特性からも分かるように、この膜はGHz帯域において大きな損失をもち、ノイズ抑制体として適した特性を持っている。
この膜をマイクロストリップライン上に直接堆積し、そのSパラメータ測定からノイズ抑制効果を評価し、市販のノイズ抑制体とのノイズ抑制効果ΔPlossを比較したところ、単位厚さ当たりのΔPloss/tは、図4に示したように、本発明の高抵抗フェライト膜は市販のノイズ抑制体と比べて10倍以上のノイズ抑制効果が得られた。
この結果から、本発明のMn―Znフェライト膜は飽和磁化を減少させることなく、高抵抗ならびにGHz帯における透磁率の損失成分が大きくできるために、大きなノイズ抑制効果があることがわかった。そしてノイズ源に直接堆積しても回路に影響を与えにくい直接堆積型のGHz帯域用電磁ノイズ抑制体として使用可能であることが確認できた。
(実施例3)
実施例1および実施例2と同様にして、MnNiZnFe3−x−y−z組成において、x≧0.1のもとで、yおよびzをさまざまに変えたフェライト膜を成膜し、得られた膜の抵抗率と表面抵抗とを測定し、図5に示す結果を得た。図5に示されているように、MnxNiyZnzFe3−x−y−z組成のフェライト膜において、x≧0.1であって3−x−y−z≦2.6である場合に、抵抗率が従来作製されていたNi−Znフェライトめっき膜よりも約2桁高いフェライトめっき膜が得られた。このように本発明の高抵抗フェライト膜においては、2価のMnイオンに加えてNiイオンやZnイオンなどの他の2価の金属イオンを含む反応液を用いて作製した場合にも、抵抗率や表面抵抗の高いフェライト膜を得ることができた。特に2価の金属イオンとしてCoイオンを少量導入することにより、透磁率の虚数成分(損失成分)が最大値を取る周波数の顕著な増加を得ることができた。
また、こうして得た膜について、飽和磁化と保磁力を測定し、図6に示す結果を得た。図5から、これらの高抵抗率を示すフェライト膜は、大きな飽和磁化と小さな保磁力を示すことがわかった。例えば図6で10Ω・cm以上の高抵抗率を示したフェライト膜において、飽和磁化が450emu/ccと大きく、保磁力が15Oeと低く、良好な軟磁性を示していることがわかった。
本発明の高抵抗フェライト膜は、上述した実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明によれば、飽和磁化をあまり減少させずに抵抗率を大幅に高めることができ、GHzまでの高周波領域で大きな複素透磁率を有する高抵抗フェライト膜を得ることができる。このため、本発明の高抵抗フェライト膜は、例えば電磁ノイズ抑制体として用いることができ、抵抗率が高いため、電磁ノイズを発生する電子回路に近接させて用いても電子回路に与える影響が小さく、使いやすいという特徴が得られる。従って本発明の高抵抗フェライト膜は、例えばノイズ源の近傍に形成して用いるGHz帯域対応の電磁ノイズ抑制体への応用など、さまざまな応用が可能である。
本発明の一実施形態に用いる成膜装置の模式的断面図である。 本発明の実施例1の1−3)により成膜されたフェライト膜の複素透磁率の周波数変化を示す図である。 本発明の実施例2の2−2)により成膜されたフェライト膜の複素透磁率の周波数変化を示す図である。 本発明の実施例2の2−2)により成膜されたフェライト膜をマイクロストリップライン上に堆積して得られる単位厚さあたりのノイズ抑制効果を示す図である。 本発明にて提供される高抵抗フェライト膜の抵抗率ならびに表面抵抗のFe組成依存性を示す図である。 本発明にて提供される高抵抗フェライト膜の飽和磁化ならびに保磁力のFe組成依存性を示す図である。
符号の説明
1……基板、 2……ノズル、 3……反応液、 4……ノズル、 5……酸化液、 6……緩衝液、 7……回転円板、 8……中心軸、 9……発熱体、 10……チャンバー、 11……ドレイン、 12……気体流出口。

Claims (8)

  1. Fe3−xで示される組成式におけるFe以外の金属MがMnを含み平均の価数が2価の金属であり、xが0.4以上0.8以下(ただし、Mnの含有量はxのうちの0.1以上を占める。)であるスピネル構造の金属酸化物を有し、抵抗率が10Ω・cm以上であることを特徴とする高抵抗フェライト膜。
  2. 前記Mnの含有量が、前記xの値のうちの0.2以上を占めることを特徴とする請求項1記載の高抵抗フェライト膜。
  3. 前記金属MがNiを含むことを特徴とする請求項1または2記載の高抵抗フェライト膜。
  4. 前記金属MがCoを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の高抵抗フェライト膜。
  5. 2価のFeイオンとMnイオンとを含有する水溶液である反応液と、2価のFeイオンの少なくとも一部を酸化させる酸化剤を含有した水溶液である酸化液とをそれぞれ基板に供給して成膜するフェライトめっき法によって形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の高抵抗フェライト膜。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の高抵抗フェライト膜を基板上に形成したことを特徴とする電磁ノイズ抑制体。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項記載の高抵抗フェライト膜を電子配線基板上に形成したことを特徴とする電磁ノイズ抑制体。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項記載の高抵抗フェライト膜を半導体集積ウエハーに形成したことを特徴とする電磁ノイズ抑制体。
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