JP4734619B2 - 新規ストレスバイオマーカー及びその用途 - Google Patents
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[水浸拘束試験]
1週間の予備飼育を行った7週齢のSD(Sprague-Dawley)雄性ラット(体重150g〜180g)を用い、1日1回7日間連続で飼料を経口投与した。24時間の絶食後、ストレスケージに動物を入れ、剣状突起の高さまで水に浸し、10時間の水浸拘束を行った。
水浸拘束前後に採血を行った。得られた血液は室温で1時間静置した後、遠心分離(3,000rpm、15分)し、その上清を血清として−40℃で保管した。なお、ストレス負荷前血清は、24時間の絶食をする前にエーテル麻酔し、負荷のかからない尾静脈より採取した。また、胃潰瘍発症後のストレス負荷後血清は、10時間の水浸拘束後にエーテル麻酔し、血液をなるべく全量採取できる心臓より採取し、二次元電気泳動に供試した。
[2次元ディファレンスゲル電気泳動解析(2D DIGE)]
二次元電気泳動は、「Ettan DIGE 簡易マニュアル(GE Healthcare社)」記載の方法に準じて、解析用とピック(Pick)用をそれぞれ別個に行った。水浸拘束試験によって得られた血清をMontage Albumin Deplete Kit(Millipore Corporation社製)、及び2-D Clean-Up Kit(GE Healthcare社製)で処理し、風乾したものを溶解液(7M 尿素、2M チオ尿素、4% CHAPS、0.03M Tris)で5mg/mlに調製した。(解析用は、水浸拘束によるストレス負荷前、水浸拘束によるストレス負荷後、およびこれらの等量混合物をそれぞれCy3、Cy5、Cy2(GE Healthcare社製)で標識し、サンプルとした。)サンプルに2×サンプルバッファー(7M 尿素、2M チオ尿素、4% CHAPS、2% DTT)を等量混合したのち、膨潤バッファー(7M 尿素、2M チオ尿素、2% CHAPS、1% DTT、0.002% BPB)に溶解し、IPGバッファー(pH3−10)(GE Healthcare社製)を終濃度1%となるように添加して1次元目の電気泳動に供した。一次元目にはpH3〜10の範囲のImmobilineドライストリップを用い、ゲル1枚あたり解析用は150μg、ピック用は600μgのタンパク質量に相当するサンプルをアプライした。Immobilineドライストリップは乾燥防止のためにミネラルオイルを重層し、Ettan IPGphor(GE Healthcare社製)により等電点電気泳動を行った。等電点電気泳動が完了したImmobilineドライストリップは還元アルキル化した後、ゲル濃度10%で調製したポリアクリルアミドゲルにアプライし、二次元目の電気泳動を行った。電気泳動が完了した解析用ゲルは、Tyhoon 9400 (GE Healthcare社製)により画像を読み込んだ。また、ピック用ゲルは、Deep Purple(GE Healthcare社製)で染色したのちTyphoon9400にて画像を読み込んだ。
水浸拘束によるストレス負荷前後の泳動像をDecyder(GE Healthcare)ソフトウェアで解析し、解析用ゲルを用いて変化のあるスポットを見出し、ピック用ゲルとマッチングさせた。なお、ストレス負荷後のタンパク質の検出量が増加したものは赤色で、減少したものは緑色で表示されている(図1参照)。
変化が見られたスポットをピック用ゲルから切り出し、トリプシンでゲル内消化後、ペプチド混合物を抽出した。MALDI-TOF/TOF MS Ultraflex (Bruker Daltonics)を用い、MALDI-TOF/MS(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization-Time of Flight/MassSpectrometry;マトリックス支援レーザ脱離イオン化−飛行時間型質量分析法)により分解成分の分子量を測定し得られたピークを解析後、Mascot検索で、Database1:NCBInr、Peptide Mass Tolerance:±0.1〜1.0Da、Fragment Mass Tolerance:±0.5〜1.5Da、Max Missed Clevages:1の検索条件によりコンビネーションサーチを行い、ゲノム及びタンパク質データベースから検索したところ、表1に示すように、アポリポタンパク質E(等電点:5.23、分子量:35,798)、アポリポタンパク質A-IV(等電点:5.12、分子量:44,429)、ハプトグロビン(等電点:6.1、分子量:39,052)、及びビタミンD結合タンパク質プリカーサー(等電点:5.76、分子量55,079)であることがわかった。また上記画像解析結果と上記同定結果から、これらのタンパク質のうち、水浸拘束によるストレス負荷後に増加したタンパク質は、アポリポタンパク質Eであり、減少したタンパク質は、アポリポタンパク質A-IV、ハプトグロビン、及びビタミンD結合タンパク質プリカーサーであることがわかった。
1.走行試験
被験者(A、B、C)3名で2km、約20分間のジョギング試験を実施した。普段運動をしていないA及びCにとってジョギングはストレスとなり、普段から筋肉トレーニングで体を動かしているBにとってジョギングはストレスとならないとのことであった。
ジョギング前後に上腕静脈より採血を行った。得られた血液を4℃で、一晩静置した後、遠心分離(3000rpm、15分)し、その上清を血清として−40℃で保管した。
固相化抗体にAnti-Apolipoprotein E(E-7C8)BML010(フナコシ)を、ビオチン標識抗体にAnti-Apolipoprotein E(E-3D2)BML012(フナコシ)を用いたサンドイッチELISAにより、ジョギング前後のA、B、Cの血清中のアポリポタンパク質Eを測定した。その結果、3名の被験者の内、A、C2名でアポリポタンパク質Eが増加し、Bで減少した(図2)。これは、普段運動をしていないA及びCにとってジョギングが大きなストレスとなり、実施例1に示したラットの水浸拘束試験と同様、ジョギング(ストレス負荷)後にアポリポタンパク質Eが増加したものと考えられた。一方、筋肉トレーニングで普段から体を動かしているBにはジョギングがストレスとはならず、アポリポタンパク質Eが増加しなかったと考えられた。以上のことから、アポリポタンパク質Eのストレスマーカーとしての有効性が明らかとなった。また、抗アポリポタンパク質E抗体を用いたELISAや、さらに簡易なイムノクロマト法などにより、ストレス負荷個体の血清から容易にアポリポタンパク質Eが測定可能であり、その増減によりストレス負荷の判定できると考えられた。
1.水浸拘束試験
1週間の予備飼育を行った7週齢のSprague-Dawley(SD)雄性ラット(体重150g〜180g)を用い、1日1回7日間連続で生理食塩水を経口投与した。24時間の絶食後、ストレスケージに動物を入れ、剣状突起の高さまで水に浸した。1時間、5時間、及び10時間の水浸拘束後、動物をエーテル致死させた。また、絶食後に水浸拘束せずケージに入れ、水浸拘束と同じ時間を経過させたものを対照とした。
ストレス負荷前は24時間の絶食前にエーテル麻酔し尾静脈より、また、ストレス負荷後は各時間の水浸拘束後にエーテル麻酔し心臓より、それぞれ採血を行った。得られた血液を室温で1時間静置した後、遠心分離(3000rpm、15分)し、その上清を血清として−40℃で保管した。
固相化抗体にAnti-Apolipoprotein A-IV(A4-18A3)BML001(フナコシ)を、ビオチン標識抗体にAnti-Apolipoprotein A-IV(A4-11G12)BML003(フナコシ)を用いたサンドイッチELISAにより、各血清中のアポリポタンパク質A−IVの相対量を測定した。そして、絶食開始時の吸光値を100%としたときの、ストレス負荷後あるいは対照のアポリポタンパク質A−IVを算出した。その結果、対照およびストレス負荷で、経過時間が長くなるとともにアポリポタンパク質A−IVの残存率は低下した(図3)。図中、1時間、5時間、10時間の経過時間を絶食時間に換算すると、それぞれ25時間、29時間、34時間となるが、アポリポタンパク質A−IVは絶食時間に従い、急激に減少することから、絶食マーカーとして有効と考えられた。さらに、ストレス負荷個体では、絶食のみの対照個体よりもアポリポタンパク質A−IVの低下が激しいことが明らかとなった。以上の結果から、アポリポタンパク質A−IVはストレスマーカーとしてだけではなく、絶食マーカーとしても有効であることを示すことができた。抗アポリポタンパク質A−IV抗体を用いたELISAなどの免疫学的な検出方法により、容易に栄養状態、ストレス状態を容易に判定することが可能となった。
Claims (5)
- 非ヒト哺乳動物に、ストレスを負荷する前後又は同時に、被験物質を投与し、該被験物質を投与した非ヒト哺乳動物の血清を二次元電気泳動に供試して、等電点5.0〜6.2、分子量30kDa〜60kDaのタンパク質の中で、ストレスを負荷する前後にその発現量が増減するタンパク質であるアポリポタンパク質E、アポリポタンパク質A-IV、及びビタミンD結合タンパク質プリカーサーのうちのいずれか1種以上を検出し、被験物質を投与しない場合と比較・評価することを特徴とするストレス抑制物質又はストレス増強物質のスクリーニング方法。
- 非ヒト哺乳動物に、ストレスを負荷する前後又は同時に、被験物質を投与し、該被験物質を投与した非ヒト哺乳動物の血清からアポリポタンパク質E、アポリポタンパク質A-IV、及びビタミンD結合タンパク質プリカーサーのいずれか1種以上のタンパク質、又はこれらのいずれかに特異的に結合する抗体を検出し、被験物質を投与しない場合と比較・評価することを特徴とするストレス抑制物質又はストレス増強物質のスクリーニング方法。
- 哺乳動物から採取した血清を二次元電気泳動に供試し、等電点5.0〜6.2、分子量30kDa〜60kDaのタンパク質の中で、ストレスを負荷する前後にその発現量が増減するタンパク質であるアポリポタンパク質E、アポリポタンパク質A-IV、及びビタミンD結合タンパク質プリカーサーのうちのいずれか1種以上を検出し、健常な哺乳動物から採取した血清の場合と比較・評価することを特徴とするストレスの判定方法。
- 哺乳動物から採取した血清中のアポリポタンパク質E、アポリポタンパク質A-IV、及びビタミンD結合タンパク質プリカーサーのいずれか1種以上のタンパク質、又はこれらのいずれかに特異的に結合する抗体を検出し、健常な哺乳動物から採取した血清の場合と比較・評価することを特徴とするストレスの判定方法。
- ストレスを負荷させた哺乳動物から採取した血清を二次元電気泳動法に供試したとき、等電点5.0〜6.2、分子量30kDa〜60kDaのタンパク質の中で、ストレスを負荷する前後にその発現量が増減するタンパク質であるアポリポタンパク質E、アポリポタンパク質A-IV、及びビタミンD結合タンパク質プリカーサーのうちのいずれか1種以上のタンパク質、若しくはこれらのいずれかに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とするストレス診断用キット。
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