JP6112510B2 - 脂質酸化生成物の測定によるストレス、疲労の客観的評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ストレスや疲労のマーカー及び評価方法に関し、詳しくは肉体的あるいは精神的なストレス、疲労のマーカー及び評価方法に関する。
ストレスは、生体に作用する外からの刺激(ストレッサー)に対して生じる生体の非特異的反応の総称であるといわれている。
一方、疲労は、過度の肉体的、精神的活動によって生じた心身の活動能力・能率の減退状態 であるといわれている。
厚生労働省の疫学調査によると疲労感を自覚している成人の割合は59%と高率であり、また疲労による作業効率の低下やうつ病、過労死へのリスクといった大きな社会問題となっている。
しかし、これらストレスや疲労は質問紙法などの主観的な評価方法が主でヒトを含む哺乳動物が社会生活で感じる様々な精神的・肉体的なストレス、疲労を客観的に評価できるような指標は確立されていない。
リノール酸の過酸化生成物であるHETE(ヒドロキシエイコサテトラエノイックアシッド)、HODE(ヒドロキシオクタデカジエノイックアシッド)は、酸化ストレスを反映する指標として注目されており、HODEはC型肝炎、糖尿病、動脈硬化、アルツハイマー病、腎症関連疾患との関連が知られている(特許文献1〜4)。
特開2009-085647 特開2007-024871 特開2006-349452 特開2006-349451
本発明は、ストレスや疲労の程度を客観的に評価するためのマーカー及び評価方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下のストレスマーカー及びストレスの評価方法を提供するものである。
項1. 12-HETE(12-ヒドロキシ-5,8,10,14-エイコサテトラエノイックアシッド)、15-HETE(15-ヒドロキシ-5,8,11,13-エイコサテトラエノイックアシッド)及び13-(Z,E)-HODE(13-ヒドロキシ-9(Z),11(E)-オクタデカジエノイックアシッド)からなる群から選ばれるストレス及び/又は疲労マーカー。
項2. 12-HETE及び15-HETEからなる群から選ばれる項1に記載のストレス及び/又は疲労マーカー。
項3. 12-HETEである、項1又は2に記載のストレス及び/又は疲労マーカー。
項4. サンプル中の12-HETE、15-HETE及び13-(Z,E)-HODEからなる群から選ばれる少なくとも1種の量を測定することを特徴とする、ストレス及び/又は疲労の評価方法
項5. サンプル中の12-HETE及び15-HETEからなる群から選ばれる少なくとも1種の量を測定することを特徴とする、項4に記載のストレス及び/又は疲労の評価方法
項6. サンプル中の12-HETEの量を測定することを特徴とする、項4又は5に記載のストレス及び/又は疲労の評価方法。
項7. サンプルが血液、血清、血漿もしくは尿、唾液である項4〜6のいずれかに記載のストレス及び/又は疲労の評価方法。
項8. サンプルがヒト由来である、項4〜7のいずれかに記載のストレス及び/又は疲労の評価方法。
本発明によれば、サンプル中の12-HETE(12-ヒドロキシ-5,8,10,14-エイコサテトラエノイックアシッド)、15-HETE(15-ヒドロキシ-5,8,11,13-エイコサテトラエノイックアシッド)及び13-(Z,E)-HODE(13-ヒドロキシ-9(Z),11(E)-オクタデカジエノイックアシッド)からなる群から選ばれる少なくとも1種を測定することでストレス、疲労の程度を評価することができる。
ストレス、疲労の程度にはストレス、疲労の強さとストレスを受けた或いは疲労を蓄積した時間の2つの因子が関与する。
ヒトを含む哺乳動物は様々なストレスを受けて生活しており、ストレス、疲労は疾患を誘発することもあり、身体の状態に様々な影響を及ぼす。
本発明によりストレス、疲労の程度を正確に客観的に測定できるため、疾患の予防や身体の健康状態の維持を容易に行うことができる。
水浸拘束負荷による血漿中脂質酸化生成物の変動 水浸拘束負荷後の血漿中12-HETEの経時的変化12-HETEは、水浸拘束負荷2時間で3倍、3時間で7倍に上昇。 12-HETEの生成起源 12-HETEと胃潰瘍の関係 各種リポキシゲナーゼの局在と生成物 白血球型12-リポキシゲナーゼ(12/15-リポキシゲナーゼ)欠損マウスへの水浸拘束負荷 12/15-リポキシゲナーゼの活性化機序
ストレスとは、生体に作用する外からの刺激(ストレッサー)に対して生じる生体の非特異的反応の総称を意味する。ストレスは疲労に陥る原因であり、ストレスと疲労は密接に関連している。
生活環境のおけるストレスには、人間関係の軋轢などの精神的ストレスだけでなく、過労や重労働などの肉体的ストレス、紫外線や温熱環境、騒音などの物理的ストレス、ホルムアルデヒドなどの化学物質ストレス、感染などの生物学的ストレスなどが複合的に関与しているとされている。 (ストレスの科学と健康 P129 二木鋭雄編著 共立出版)
本発明においてストレスは肉体的ストレスと精神的ストレスの総和 を意味する。
疲労は日本疲労学会の定義では、過度の肉体的、精神的活動によって生じた心身の活動能力・能率の減退状態を意味する。疲労は独特の不快感、休養の願望、活動意欲の低下を伴うことが多く、これを疲労感と呼び、全身倦怠感やだるさ、脱力感も同義である。
ストレスの程度に応じて疲労を感じることが通常であり、極度のストレスは疲労の慢性化を引き起こす。ストレスと疲労は密接に関係しているので、本発明のストレスマーカーは疲労マーカーとしても機能する。また、ストレスを評価することで同時に疲労を評価することができる 。
長時間労働や激しい運動などによる肉体的なストレス・疲労は自覚しやすいが、精神的なストレス・疲労は自覚していないことも多い。本発明によれば、精神的なストレス・疲労を適切に評価できる。
本発明でストレス・疲労のマーカーとして使用されるのは12-HETE、15-HETE及び13-(Z,E)-HODEであり、これらはアラキドン酸若しくはリノール酸の酸化による生成物である。
アラキドン酸由来酸化生成物とリノール酸由来酸化生成物を以下に示す。
アラキドン酸由来酸化生成物に12-HETE、15-HETEが含まれ、リノール酸由来酸化生成物に13-(Z,E)-HODEが含まれる。
本発明において、サンプルは、ストレスを評価する対象である動物由来である。このような動物としては、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ニワトリ、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターなどが挙げられ、好ましくはヒトを含む哺乳動物であり、特にヒトが挙げられる。
サンプルとしては、血液(血漿、血清、血球(赤血球、白血球)を含む)、尿、涙液、精液、唾液、リンパ液などが挙げられ、好ましくは血液(血漿、血清、血球を含む)、尿、特に血漿、血清が挙げられる。
12-HETE、15-HETE、13-(Z,E)-HODEの量は、液体クロマトグラフ(HPLC)、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)、液体クロマトグラフタンデム型質量分析計(LC-MS/MS)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)、あるいは酵素免疫測定法(ELISA)などの免疫学的手法により測定可能である。これらの測定条件は公知であり、常法に従い容易に定量できる。
ストレスもしくは疲労の評価は多数の母集団で12-HETE、15-HETE、13-(Z,E)-HODEの量を測定し、統計学的に処理をして少なくとも1つのカットオフ値を定め、その値よりも数値が高いまたは低いことでストレス、疲労の程度を評価することができる。
本発明では、12-HETE、15-HETE、13-(Z,E)-HODEを全て測定し、その結果でストレス、疲労を評価してもよく、12-HETEと15-HETEの組み合わせ、13-(Z,E) -HODEと12-HETEの組み合わせ、15-HETEと13-(Z,E)-HODEの組み合わせで評価してもよく、12-HETEのみ、15-HETEのみ、あるいは、13-(Z,E)-HODEのみでストレス、疲労の程度を評価してもよい。
また、活性酸素によって生成される他の脂質酸化物と比較することで評価してもよい。
本発明のストレスマーカーである12-HETE、15-HETE、13-(Z,E)-HODEは、活性酸素による非特異的な反応で増加するのではなく、ストレスの程度に応じて脂質酸化酵素であるリポキシゲナーゼに触媒されて生成する。
これらのストレスマーカーを生成する酵素は、哺乳動物で以下のように分布する。
*ヒトでは12/15-リポキシゲナーゼは存在しない
12-リポキシゲナーゼ
・血小板型12-リポキシゲナーゼ
アラキドン酸→ 12-HETE (ヒトは血小板型のみ)
・白血球型12-リポキシゲナーゼ
アラキドン酸→ 12-HETE, 15-HETE
(ブタ、ウマ、マウスの白血球の12-リポキシゲナーゼは15-リポキシゲナーゼとの相同性が高く12/15-リポキシゲナーゼ と言われている。)
15-リポキシゲナーゼ 様々な組織にある。 ヒトとウサギに存在
・15-リポキシゲナーゼ-1 : リノール酸 → 13-(Z,E)-HODE
・15-リポキシゲナーゼ-2 : アラキドン酸 → 15-HETE
酵素的酸化の観点から考えて、ヒトの場合のストレスマーカーは12-HETE、15-HETE 13-(Z,E)-HODEの3種が挙げられる。
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
*脂質酸化物の解析方法
(i) 血漿(もしくは組織ホモジネート) 200μLに生理食塩水300μLを加え、合計500μLにする。
(ii) 内部標準と1mM トリフェニルフォスフィンおよび100μM 2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール含有メタノール溶液を515μL加える。
(内部標準としては1mg/L 13-(Z,E)-HODE-d4、1mg/L 8-イソプロスタン-d4、3.6mg/L 7α-ヒドロキシコレステロール-d7)
(iii) 窒素置換後、ふたを閉めて撹拌しながら室温で30分間静置(還元処理)。
(iv) 500μL 1M 水酸化カリウム含有メタノール溶液を加えて、もう一度窒素置換し、40℃、30分間処理(けん化処理)。
(v) 10%酢酸水溶液を2ml 加える。
(vi) クロロホルム/酢酸エチル(4/1)を5ml 加えて1分間激しく撹拌。
(vii) 4℃ 3,000Gで 10分間遠心。
(viii) 上層および蛋白の層を吸引にて除去。
(ix) 下層(約5ml)を窒素ガスで約2mlまで濃縮 (30℃まで加温可能)
(x) サンプルチューブにガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)用と液体クロマトグラフタンデム型質量分析計(LC-MS/MS)用に2等分する。
(xi) 窒素ガスで完全に乾固する。(測定まで-30℃以下で保存可能)
(xii) 液体クロマトグラフタンデム型質量分析計(LC-MS/MS)解析用: 70%メタノール水溶液を200μl加えて激しく撹拌。フィルターにて夾雑物を除去。
ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)析用:N、O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド 30μLを加えて60℃で1時間加温処理した後氷冷。アセトン50μLを加えてサンプルとする。
液体クロマトグラフタンデム型質量分析計(LC-MS/MS)では、9-(E,Z)-HODE(9-ヒドロキシ-10(E),12(Z)-オクタデカジエノイックアシッド)、9-(E,E)-HODE(9-ヒドロキシ-10(E),12(E)-オクタデカジエノイックアシッド)、13-(Z,E)-HODE(13-ヒドロキシ-9(Z),11(E)-オクタデカジエノイックアシッド)、13-(E,E)-HODE(13-ヒドロキシ-9(E),11(E)-オクタデカジエノイックアシッド)、5-HETE(5-ヒドロキシ-6,8,11,14-エイコサテトラエノイックアシッド)、12-HETE(12-ヒドロキシ-5,8,10,14-エイコサテトラエノイックアシッド)、15-HETE(15-ヒドロキシ-5,8,11,13-エイコサテトラエノイックアシッド)が同時に測定できる。
ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)では、コレステロール、7α-ヒドロキシコレステロール、リノール酸を測定できる。
実施例1 本実験ではマウスに対するストレス負荷として、ストレス性胃潰瘍のモデルとして使用されている水浸拘束負荷実験にて検証した。
<水浸拘束負荷方法>
10週令雄のC57BL6/Jマウスを柔らかいステンレス製金網に入れ拘束する。拘束は呼吸ができなくなる程には圧迫は行わず、回転できるほどの自由度がある状態で行う。
常温の水を1.5cmの深さにはった水槽に、マウスを拘束状態にした金網を横にして入れる。
水深はマウスの腹部、脚部のみが水に接する程度に設定し、その状態で3時間の水浸拘束を負荷する。
<脂質酸化生成物の測定>
負荷終了後に、血液(血漿)もしくは各組織を採取し、上述のサンプル処理後に液体クロマトグラフタンデム型質量分析計(LC-MS/MS)にて脂質酸化生成物を測定。
ストレス非負荷(対照)と3時間の水浸拘束負荷および1日3時間の拘束負荷(水浸は負荷せず拘束のみ)を5日間連続で負荷したマウスから血漿を採取し、脂質酸化物を測定した結果を図1に示す。
血漿中12-HETEは3時間の水浸拘束負荷で12倍と顕著に増加していた。また、5日間連続の拘束負荷でも2倍以上に増加しており、ストレスのマーカーとして最も優れている。
5-HETEと15-HETEは水浸拘束負荷、5日間の拘束負荷では有意な変化はなかった。
HODEはサンプルをけん化、還元処理し4種類のHODE(9-(E,Z)-HODE、9-(E,E)-HODE、13-(Z,E)-HODE、13-(E,E)-HODE)を合計したものをtHODE(トータルヒドロキシオクタデカジエノイックアシッド)として解析をしたが、水浸拘束負荷によって血漿中で約2倍に増加したが、拘束のみの負荷では増加が認められなかった。4種類のHODEのうち特に13-(Z,E)-HODEは水浸拘束負荷によって有意に増加が認められた。
実施例2:水浸拘束負荷後の血漿中12-HETE濃度の経時的変化
水浸拘束を負荷する時間を変えることによる血漿中の脂質酸化生成物の経時的変動を観察した。
<実験方法>
水浸拘束負荷開始0、1、2、3時間後に採血し、血漿中の脂質酸化生成物測定をおこなった。結果を図2に示す。12-HETEは、水浸拘束負荷開始2時間後で3倍、3時間後で7倍に上昇しており、ストレス負荷時間に比例して経時的に測定値が高くなることが明らかになった。
実施例3:12-HETEの生成起源
マウスを水浸拘束3時間負荷後、血漿及び組織を採取し、脳、胃、肝臓、腸管、脾臓、精巣の各組織の脂質酸化生成物を測定した。結果を図3に示す。図3から明らかなように、今回調べた組織/臓器の範囲では脂質酸化物が顕著に増加している組織/臓器はなく、血漿でのみ顕著に増加が認められた。
実施例4:
(1)12-HETEと胃潰瘍の関係
参考文献(Fukuhara et al. Laboratory Investigation 2010;90:556-565、 Kushima et al. J. Ethnopharmacology 2009;123:430-438)の記載に従い、0.3M塩酸含有60%エタノール溶液経口投与モデルによる胃潰瘍形成時の12-HETEの変化を測定し、他の胃潰瘍モデルで12-HETEの特異的な変動は認められるのかを試験した。
マウスを5時間絶食(飲水は無制限)し、0.3M塩酸含有60%エタノール溶液を10mL/kgで経口投与した。3時間後に血漿及び胃を採取し、脂質酸化生成物測定を行った。結果を図4(1)に示す。水浸拘束負荷と0.3M塩酸含有60%エタノール溶液投与による胃潰瘍形成モデルでは脂質酸化物の生成機序が異なることが明らかになった。
(2)胃潰瘍治療薬の併用
水浸拘束負荷によってマウスには精神的なストレスが負荷され胃潰瘍が生じる。
12-HETE生成に精神的ストレスか胃潰瘍のどちらが誘因となっているかを見極めるために、胃潰瘍治療薬(プロトンポンプ阻害剤)を使用した。
<方法>
参考文献(Kushima et al. J. Ethnopharmacology 2009;123:430-438)の記載に従い、潰瘍治療薬として10% ジメチルスルホキシド、90% ポリエチレングリコール400 に溶解したランソプラゾール(プロトンポンプ阻害剤 )をマウス体重(k g)当たり30mgの投与量で経口投与し、投与30分後から3時間の水浸拘束を負荷を行った。水浸拘束負荷開始3時間後に血漿及び胃を採取し、胃潰瘍の観察と12-HETEを測定した。胃潰瘍の形成はランソプラゾールの前投与により完全に抑制されていた。血漿中12-HETEの結果を図4(2)に示す。ランソプラゾールの前投与によって胃潰瘍が完全に抑制されていても、血漿中の12-HETEはランソプラゾール非投与して水浸拘束負荷群と同様の増加を認めた。
図4の結果から、水浸拘束負荷によって12-HETEが増加する機序には胃潰瘍の形成は関与せず、精神的なストレスの負荷が原因であることが明らかになった。
実施例5:白血球型12-リポキシゲナーゼ(12/15-リポキシゲナーゼ)欠損マウスへの水浸拘束負荷
図1の結果から、水浸拘束負荷による12-HETEの生成に活性酸素による脂質酸化反応だけでなく、リポキシゲナーゼに触媒される酵素的酸化の関与が示唆された。
図5は、各種リポキシゲナーゼの局在と生成物を示す。
12-HETEの生成に対するリポキシゲナーゼに触媒される酵素的酸化反応の関与を調べるため、マウスの持つ12-リポキシゲナーゼのうち白血球型の12-リポキシゲナーゼ(12/15-リポキシゲナーゼ)が欠損した12/15-リポキシゲナーゼ欠損マウス及び野生型マウスに水浸拘束を3時間負荷した後、採血を行い、血漿中のHETE、HODE等の変化を調べた。
12/15-リポキシゲナーゼ欠損マウスは米国ジャクソン研究所より購入した。
系統名: B6.129S2-Alox15tm1Fun/J
ストックナンバー: 00278
結果を図6に示す。図6の結果から、血液中の12-HETEの増加には、白血球型の白血球型12-リポキシゲナーゼ(12/15-リポキシゲナーゼ)が関与していることが示唆された。
実施例6:12/15-リポキシゲナーゼの活性化機序
12/15-リポキシゲナーゼは細胞質に存在する蛋白であるが、細胞膜へ移行することで活性化することが知られている(The Journal of BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol.278, No.44, pp. 43508-43515, 2003)。
腹腔マクロファージの細胞質に12/15-リポキシゲナーゼは存在することが知られている。
水浸拘束負荷をしたマウスと非負荷のマウスより、腹腔マクロファージを採取し、細胞質、細胞膜分画を超遠心分離法によって分取し、ウエスタンブロッティング法にて12/15-リポキシゲナーゼの蛋白量を比較した。
<腹腔マクロファージの抽出>
生理食塩水5mlを腹腔内に注入し、3分間腹部を優しくマッサージする。
皮膚を切開し腹膜を露出した後、注射器を用いて4ml採取する。
3500rpmで 5分間遠心分離したのち、上清を除去し100μlの低張溶液で溶解し15分間氷冷する。低張溶液の組成として1.5mM 塩化マグネシウム、10mM塩化カリウムおよび1mMジチオトレイトールを含有したpH7.9に調整された10mM へぺス溶液を 用いた。
マクロファージを低張溶液にて膨潤させた後、ダウンスホモジナイザーを用いて氷上で20回から30回ストロークし、細胞膜を破壊する。4℃、1000g で10分間遠心分離した。得られた上清を4℃ 、265000gで2時間超遠心分離した。
得られた上清を細胞質分画、沈殿は細胞膜分画として用いた。
<12/15-リポキシゲナーゼの検出>
ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜へ転写後、4%ブロックエース溶液(大日本住友ファーマ製)にて90分間室温にてブロッキングを行った。
1000倍に希釈した抗12/15-リポキシゲナーゼ抗体(ケイマン・ケミカル社製 製品番号160304)を用い、4℃で一昼夜反応させた後、二次抗体として5000倍希釈した抗ウサギ免疫グロブリン抗体(ジャクソン・イムノリサーチ社製 製品番号711-035-152)で4℃1時間反応させた後、化学発光法によって蛋白の検出を行った。
結果を図7に示す。水浸拘束負荷によって腹腔マクロファージの12/15-リポキシゲナーゼは細胞内局在が細胞質から細胞膜へ移行し活性化していることが示唆された。
また、肝臓、腎臓、脾臓、胃、腸管、精巣、脳、胸部大動脈、腹部大動脈では水浸拘束負荷による12/15-リポキシゲナーゼの蛋白量に変動は見られなかった。
以上の結果から、本発明のストレスマーカーは活性酸素による非特異的な酸化反応によって生じるだけではなく、12/15-リポキシゲナーゼに触媒される酵素的酸化反応によって特異的に生成され増加することが明らかになった。
12/15-リポキシゲナーゼはマウスにのみ発現しており、ヒトでは図5で示されるように血小板型12-リポキシゲナーゼもしくは15-リポキシゲナーゼ-1、15-リポキシゲナーゼ-2が12/15-リポキシゲナーゼと相同性を有する。
ヒトではストレス負荷によって、血小板型の12-リポキシゲナーゼが活性亢進した場合は12-HETEが増加し、15-リポキシゲナーゼ-1が活性亢進した場合には13-(Z,E)-HODE、15-リポキシゲナーゼ-2が活性亢進した場合には15-HETEが増加する可能性が示唆される。

Claims (8)

12-HETE(12-ヒドロキシ-5,8,10,14-エイコサテトラエノイックアシッド )、15-HETE(15-ヒドロキシ-5,8,11,13-エイコサテトラエノイックアシッド)及び13-(Z,E)-HODE(13-ヒドロキシ-9(Z),11(E)-オクタデカジエノイックアシッド)からなる群から選ばれる精神的ストレス及び/又は精神的ストレスにより生じた疲労マーカー。
15-HETEである請求項1に記載のマーカー。
精神的ストレスにより生じた疲労マーカーである、請求項1又は2に記載のマーカー。
サンプル中の12-HETE、15-HETE及び13-(Z,E)-HODEからなる群から選ばれる少なくとも1種の量を測定することを特徴とする、精神的ストレス及び/又は精神的ストレスにより生じた疲労の評価方法。
サンプル中の15-HETEの量を測定することを特徴とする、請求項4に記載の評価方法。
評価対象が精神的ストレスにより生じた疲労である、請求項4又は5に記載の評価方法。
サンプルが血液、血清、血漿もしくは尿、唾液 である請求項4〜6のいずれかに記載の評価方法。
サンプルがヒト由来である、請求項4〜7のいずれかに記載の評価方法。
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