JP4733378B2 - 細胞表層に提示された酵素の活性を高める方法 - Google Patents

細胞表層に提示された酵素の活性を高める方法 Download PDF

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本発明は、細胞表層に提示された酵素に関する。より詳細には、細胞表層に提示された酵素の活性を高める方法に関する。
近年、酵母や細菌の細胞表層に有用なタンパク質を発現させる、細胞表層ディスプレイ技術が注目されている。例えば、酵母表層には、細胞表層局在タンパク質のGPIアンカーを利用して、リパーゼ、アミラーゼ類、セルラーゼ類などの種々の酵素が提示されている(特許文献1および2)。また、酵母においては、糖鎖結合タンパク質ドメインを利用した、細胞表層ディスプレイ技術も開発されている(特許文献3)。細菌の表層へのタンパク質の発現については、Bacillus sp.由来のポリ−γ−グルタミン酸生合成酵素の遺伝子を含む発現プラスミドを利用して、グラム陽性菌である乳酸菌やグラム陰性菌である大腸菌の表層に種々のタンパク質を提示できることが知られている(特許文献4)。
このようにして酵素を細胞表層に提示する微生物は、微生物そのものが酵素として種々利用されている。例えば、リパーゼを表層に提示させた組換え酵母を、光学活性なエステル化合物の製造にそのまま酵素として利用したことが報告されている(特許文献5)。この特許文献5には、この組換え酵母を培養直後に蒸留水に懸濁して、室温で4〜8日間放置することによって、酵素活性が高められたことも開示されている。
特開平11−290078号公報 国際公開第01/79483号パンフレット 国際公開第02/085935号パンフレット 国際公開第03/014360号パンフレット 特開2004−194559号公報 植田ら,蛋白質・核酸・酵素,2001年,46巻,11号,1480-1487頁 Matumoto, T.ら,Applied and Environmental Microbiology,2002年,4517-4522頁 植田ら,Appl. Environ. Microbiol.,1997年,63巻,1362-1366頁 藤田ら,Appl. Environ. Microbiol.,2004年,70巻,1207-1212頁
本発明は、細胞表層に提示された酵素(以下、細胞表層提示酵素という場合がある)において、さらに酵素活性を高めるための方法を提供することを目的とする。
本発明は、細胞表層に提示された酵素の活性を高める方法を提供し、この方法は、細胞表層に酵素を提示する組換え微生物を凍結乾燥する工程、および該凍結乾燥した微生物を水に懸濁して室温にて少なくとも4日間保存する工程を含む。
好適な実施態様では、上記微生物は酵母である。
より好適な実施態様では、上記酵素はリパーゼであり、より好適には該リパーゼは、リゾプス・オリゼ由来である。
本発明はまた、上記の方法によって酵素活性が高められた、細胞表層に提示された酵素を提供する。
本発明の方法によれば、組換え微生物自体を酵素として利用し得る細胞表層に提示された酵素の活性を非常に簡単に高めることができる。すなわち、凍結乾燥後の組換え微生物を水に懸濁して室温保存するという非常に簡単な操作によって、凍結乾燥後に水に懸濁した直後と比較して、数十倍もの酵素活性を示す微生物が得られる。
本発明において、細胞表層提示酵素とは、例えば、GPIアンカー、糖鎖結合タンパク質ドメイン、外膜局在タンパク質の一部などによって、組換え微生物の表層に固定されている酵素をいう。好適には、酵素とGPIアンカーまたは糖鎖結合タンパク質ドメインとの融合タンパク質であり得る。本発明において、細胞表層提示酵素を有する組換え微生物とは、その表層に酵素が固定されている組換え微生物をいう。このような組換え微生物は、それ自体を酵素として利用し得る。
(組換え微生物)
本発明において細胞表層に酵素が提示されている組換え微生物は、細胞表層に酵素を提示するように遺伝子操作された組換え体であれば、特に限定されない。例えば、細菌、真菌、植物細胞などが挙げられる。好適には、細胞壁を有する細胞であり、より好適には酵母である。
(酵素)
本発明において、細胞表層に提示され得る酵素は、特に限定されない。天然に存在する微生物の細胞表層に局在しない酵素であって、微生物の細胞表層に固定することを目的として配置される酵素が好ましい。例えば、分泌性酵素、外来酵素などが挙げられる。分泌性酵素としては、リパーゼ、アミラーゼ類、セルラーゼ類などが挙げられる。
本発明において、リパーゼとは、油脂から脂肪酸を遊離し得る活性を有する酵素をいう。ここで、油脂とは、グリセロールに脂肪酸が結合したものをいう。このような活性を有していれば、リパーゼの起源は特に限定されず、一般に、微生物、植物、および動物(例えば、豚膵臓)由来のリパーゼが用いられる。また、リパーゼは、1,3−特異的であってもよいし、非特異的であってもよい。このようなリパーゼとしては、例えば、セラチア属、シュードモナス属、スタフィロコッカス属、リゾプス属、ムコール属、アスペルギルス属、キャンディダ属、バシラス属に属する微生物に由来するリパーゼが挙げられる。より具体的には、Candida antarctica CBS6678株由来のリパーゼB、リゾプス・オリゼ(Rhisopus oryzae)由来のリパーゼなどが挙げられる。リパーゼは、工業的には、エステル交換反応にも利用されている。あるいは、リパーゼを凝集性酵母の細胞表層に発現させることにより、廃油などからバイオディーゼル燃料を製造できる。
本発明において、アミラーゼ類とは、デンプンを加水分解する酵素をいう。代表的には、グルコアミラーゼおよびα−アミラーゼが挙げられ、他にβ−アミラーゼ、イソアミラーゼなどが挙げられる。
本発明において、グルコアミラーゼとは、デンプンの非還元末端からグルコース単位を切り離していくエキソ型の加水分解酵素をいう。このような活性を有していれば、その起源は限定されないが、リゾプス属およびアスペルギルス属などのカビ由来のグルコアミラーゼが好ましい。例えば、非特許文献3に記載のように、Rhizopus oryzae由来のグルコアミラーゼが好適に用いられる。
本発明において、α−アミラーゼとは、デンプンのα1,4−グルコシド結合を加水分解するエンド型の酵素をいう。この活性を有していればその起源は限定されず、例えば、動物(唾液、膵臓など)、植物(麦芽など)、および微生物由来のα−アミラーゼが用いられる。微生物由来のα−アミラーゼとしては、Bacillus stearothermophilus、Streptococcus bovisなどに由来するものが挙げられる。例えば、無蒸煮デンプンを炭素源とする場合には、Streptococcus bovis由来のα−アミラーゼが好ましい。例えば、α−アミラーゼを酵母表層に発現させることにより、デンプン存在下で効率よくエタノールを製造することができる。上記グルコアミラーゼと組合せて発現させると、アルコール発酵が効率よく行われ得る。
本発明において、セルラーゼ類とは、セルロースを加水分解する酵素をいう。代表的には、エンドグルカナーゼおよびエキソセロビオヒドロラーゼが挙げられ、さらに他にβ−グルコシダーゼなどが挙げられる。
本発明において、エンドグルカナーゼとは、セルロースのβ1,4−グルコシド結合を加水分解するエンド型の酵素をいう。この活性を有していればその起源は限定されず、昆虫(シロアリなど)、カビ由来および微生物由来のエンドグルカナーゼが用いられる。微生物由来のエンドグルカナーゼとしては、Clostridium cellulovorans、Clostridium thermocellumなどに由来するもの、ならびにカビ由来のエンドグルカナーゼとしては、Trichoderma reeseiなどに由来するものが挙げられる。
本発明において、エキソセロビオヒドロラーゼとは、セルロースの非還元末端からセロビオース単位を切り離していくエキソ型の加水分解酵素をいう。このような活性を有していれば、その起源は限定されず、カビ由来および微生物由来のエキソセロビオヒドロラーゼが用いられるが、カビ由来のエキソセロビオヒドロラーゼが好ましい。例えば、非特許文献4に記載のように、Trichoderma reesei由来のエキソセロビオヒドロラーゼが好適に用いられる。
本発明において、β−グルコシダーゼとは、セルロースのβ1,4−グルコシド結合の加水分解によって生じたセロオリゴ糖をグルコース単位に加水分解する酵素をいう。この活性を有していればその起源は限定されないが、昆虫(シロアリなど)由来、植物(アーモンドなど)由来およびカビ由来のβ−グルコシダーゼが用いられる。カビ由来のβ−グルコシダーゼとしては、Aspergillus aculeatusなどに由来するものが挙げられる。
上記のセルラーゼ類を単独または組合せて酵母表層で発現させることにより、木質材料、例えば、紙、パルプまたはこれらの廃材から、アルコール発酵が効率よく行われ得る。
(細胞表層への固定)
本発明において、細胞表層に酵素を固定する手段は、固定すべき微生物に応じて適宜決定され得る。例えば、酵母の場合は、GPIアンカーや糖鎖結合タンパク質ドメインを利用し、細菌の場合は、外膜局在タンパク質の一部を利用することができる。
外膜局在タンパク質としては、例えば、ポリ−γ−グルタミン酸生合成酵素が挙げられる。このタンパク質を利用することにより、グラム陽性菌である乳酸菌やグラム陰性菌である大腸菌の表層に酵素を固定することができる(特許文献4)。
以下、酵素を酵母の細胞表層に提示する場合を例に挙げて、より詳細に説明する。
この場合、(a)細胞表層局在タンパク質のGPIアンカーを利用する方法(特許文献1および2ならびに非特許文献1参照)、および(b)細胞表層局在タンパク質の糖鎖結合タンパク質ドメインを利用する方法がある(特許文献3および非特許文献2参照)。これらの(a)および(b)の両方の方法に用いられる細胞表層局在タンパク質としては、酵母の性凝集タンパク質であるα−またはa−アグルチニン、FLOタンパク質(例えば、FLO1、FLO2、FLO4、FLO5、FLO9、FLO10、およびFLO11)、アルカリホスファターゼなどが挙げられる。
(a)GPIアンカーを利用する方法(特許文献1および2ならびに非特許文献1参照)
GPIアンカーによって、異種遺伝子を発現する方法は、分泌シグナル配列をコードするDNA−細胞表層局在タンパク質をコードする構造遺伝子−GPIアンカー付着認識シグナルをコードするDNA配列から発現され、細胞膜外に分泌された細胞表層局在タンパク質がGPIアンカー付着認識シグナルを介して細胞膜のGPIアンカーと結合することを利用する。すなわち、この細胞表層局在タンパク質をコードする構造遺伝子の全部または一部の配列を、酵素の構造遺伝子の配列に置換することにより、酵素が細胞表層に提示される。GPIアンカー付着認識シグナル配列としては、例えば、酵母のα−アグルチニンのC末端から数えて320アミノ酸の配列中に存在するGPIアンカー付着認識シグナル配列が利用される。
(b)糖鎖結合タンパク質ドメインを利用する方法(特許文献3および非特許文献2参照)
細胞表層局在タンパク質が糖鎖結合タンパク質である場合、その糖鎖結合タンパク質ドメインは、複数の糖鎖を有し、この糖鎖が細胞壁中の糖鎖と相互作用を行う、または絡み合うことによって、細胞表層に留まることが可能である。例えば、レクチン、レクチン様タンパク質などの糖鎖結合部位などが挙げられる。代表的には、GPIアンカータンパク質の凝集機能ドメインが挙げられる。GPIアンカータンパク質の凝集機能ドメインとは、GPIアンカリングドメインよりもN末端側にあり、複数の糖鎖を有し、凝集に関与していると考えられているドメインをいう。
この細胞表層局在タンパク質(凝集機能ドメイン)と酵素との融合タンパク質を発現させることにより、細胞表層に酵素が提示される。酵素を、細胞表層局在タンパク質(凝集機能ドメイン)の(1)N末端側に結合させる、(2)C末端側に結合させる、および(3)N末端側およびC末端側の両方に結合させることができる。例えば、酵素がリパーゼである場合、高いリパーゼ活性を維持する観点からは、(2)の糖鎖結合タンパク質ドメインのC末端側とリパーゼのN末端側とが連結された融合タンパク質として細胞表層に提示されることが望ましい。
したがって、例えば、
(1)分泌シグナル配列をコードするDNA−酵素の構造遺伝子−細胞表層局在タンパク質(凝集機能ドメイン)をコードする構造遺伝子、
(2)分泌シグナル配列をコードするDNA−細胞表層局在タンパク質(凝集機能ドメイン)をコードする構造遺伝子−酵素の構造遺伝子、
(3)分泌シグナル配列をコードするDNA−酵素の構造遺伝子−細胞表層局在タンパク質(凝集機能ドメイン)をコードする構造遺伝子−酵素の構造遺伝子、などのDNA配列を作成し、酵母に導入することにより、細胞表層に酵素を提示する酵母が得られる。上記のように、(2)のDNA配列が、最も好ましく利用できる。
上記(a)および(b)の方法において、組換えDNAに用いられる分泌シグナル配列は、細胞表層局在タンパク質の分泌シグナル配列でもよいし、発現した酵素を細胞外へ導くことができる他の分泌シグナル配列でもよい。例えば、グルコアミラーゼの分泌シグナル配列、酵母のα−またはa−アグルチニンの分泌シグナル配列、リパーゼの分泌シグナル配列が好適に用いられる。酵素活性に影響を及ぼさなければ、細胞表層提示後に分泌シグナル配列およびプロ配列の一部または全部がN末端に残ってもよい。
上記の各種配列を含むDNAの合成および結合は、当業者が通常用い得る技術で行われ得る。
上記DNAはプラスミドの形態であることが望ましい。このDNAの出発材料は、例えば、酵母の2μmプラスミドの複製起点(Ori)とColE1の複製起点とを有しており、また、酵母選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子、TRP、LEU2など)および大腸菌の選択マーカー(薬剤耐性遺伝子など)を有することが好ましい。また、酵素の構造遺伝子を発現させるために、この遺伝子の発現を調節するオペレーター、プロモーター、ターミネーター、エンハンサーなどのいわゆる調節配列をも含んでいることが望ましい。例えば、GAPDH(グリセルアルデヒド3’-リン酸デヒドロゲナーゼ)プロモーターおよびGAPDHターミネーターが挙げられる。このような出発材料のプラスミドの例としては、GAPDHプロモーター配列およびGAPDHターミネーター配列を含むプラスミドpYGA2270またはpYE22m、あるいはUPR-ICL(イソクエン酸リアーゼ上流領域)配列とTerm-ICL(イソクエン酸リアーゼのターミネーター領域)配列とを含むプラスミドpWI3などが挙げられる。
好適には、プラスミドpYGA2270またはpYE22mのGAPDHプロモーター配列とGAPDHターミネーター配列との間、あるいはプラスミドpWI3のUPR-ICLの配列とTerm-ICLの配列との間に、酵素を細胞表層に提示するためのDNAを挿入すれば、目的のプラスミドが製造される。
導入されるDNAは、前述のようなプラスミドの形態であってもよく、あるいは宿主の遺伝子に挿入して、または宿主の遺伝子と相同組換えを起こして染色体に取り込まれてもよい。
DNAが導入された細胞は、選択マーカー(例えば、TRP)で選択され、発現された酵素の活性を測定することにより選択される。酵素が細胞表層に固定されていることは、酵素に対する抗タンパク質抗体とFITC標識抗IgG抗体とを用いる免疫抗体法によって確認できる。
上記のようにして、酵素を細胞表層に提示する組換え微生物が得られる。
(細胞表層に提示された酵素の活性を高める方法)
本発明の細胞表層に提示された酵素の活性を高める方法において、まず、得られた細胞表層提示酵素を有する組換え微生物を、当業者が通常行うように凍結乾燥して保存する。次いで、この凍結乾燥した微生物を水に懸濁し、得られた懸濁液を室温にて少なくとも4日間保存する。
微生物を懸濁するための水としては、通常、蒸留水が用いられる。水の量は、凍結乾燥微生物の質量に対して、通常は約50〜60倍質量である。懸濁液の保存温度は、通常、室温であり、15〜25℃が好ましく、約20℃がより好ましい。懸濁液の保存期間は、少なくとも4日間であり、好ましくは7〜21日間である。この保存期間中、通常、懸濁液は、直接光を受けない場所に、好ましくは暗所に、静置される。
この処理により、酵素活性は処理前の活性に比べて高められ、好ましくは10倍以上、より好ましくは20倍以上、さらに好ましくは30倍以上、よりさらに好ましくは50倍以上に高められ得る。酵素活性が高められた微生物は、再度凍結乾燥して、さらに長期保存することができる。この微生物を再度の凍結乾燥後に使用する場合は、蒸留水または反応用の緩衝液に懸濁した後すぐに使用することができる。
[調製例]リパーゼを細胞表層に提示する酵母FS株(S. cerevisiae MT8-1/pWIFSproROL)の調製
A:FLO1の5’領域(シグナル配列および凝集機能ドメイン)の遺伝子の取得
次のようにしてFLO1の遺伝子を取得した。まず、S. cerevisiae ATCC60715から染色体DNAを抽出した。次いでこれをテンプレートとし、プライマーとして配列番号1および配列番号2に記載のヌクレオチド配列を用いてPCR増幅し、BamHIおよびBglIIで切断して、約3300bpの長さのBamHI-BglII断片(BamHI-BglII FLO1 3300bp断片)を得た。この3300bp断片は、FLO1の5’側の配列(分泌シグナル配列およびFLO1凝集機能ドメイン)を有していると思われる。
B:リパーゼ遺伝子の取得
次のようにして、Rhizopus oryzaeのリパーゼの遺伝子を取得した。簡単に述べると、まず、R. oryzae IFO4697から染色体DNAを抽出した。次いで、これをテンプレートとし、プライマーとして配列番号3および配列番号4に記載のヌクレオチド配列を用いてPCR増幅を行い、BamHIおよびSalIで切断して、約1100bpの長さのBamHI-SalI断片(BamHI-SalIリパーゼ断片)を得た。このリパーゼ断片は、リパーゼのプロ配列および成熟タンパク質配列を有しており、Beerらの報告(Biochim Biophys Acta, 1399: 173-180, 1998)に記載の配列とほぼ一致するものであった。
C:FLO1の5’領域およびプロリパーゼの構造遺伝子をこの順で有するプラスミドの作成
目的のDNAを有するプラスミドは、上記Aで得られたFLO1の5’領域遺伝子と上記Bで得られたプロリパーゼ遺伝子とを接続することにより得られる。FLO1誘導体とリパーゼとの融合タンパク質を作成するために、以下の操作を行った。
まず、マルチコピー型プラスミドpWI3を、BglIIで切断し、脱リン酸化後、上記Aで得られたBamHI-BglII FLO1 3300bp断片を挿入して、プラスミドpWIFSを得た。次いで、このプラスミドpWIFSを、BglIIおよびXhoIで切断し、上記Bで得られたBamHI-SalIリパーゼ断片を挿入して、pWIFSpmROLを得た。
D:形質転換酵母の調製
得られたプラスミドpWIFSpmROLを、Yeast Maker(Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, CA)を用いた酢酸リチウム法によって非凝集性酵母S. cerevisiae MT8-1(MATa ade his3 leu2 trp1 ura3)(Tajimaら、Yeast, 1:67-77, 1985)に導入した。これを、L-トリプトファンを含まない適切なアミノ酸および塩基を補充したSD−W寒天選択培地(6.7% Yeast nitrogen base w/o amino acids (Difco Laboratories製)、2%グルコース、2%寒天末)を用いて培養した。生育した酵母を選択し、S. cerevisiae MT8-1/pWIFSproROLと命名した。以下、この株をFS株という。
[実施例]リパーゼを細胞表層に提示する組換え酵母のリパーゼ活性を高める処理
上記調製例で得られたFS株を以下のように培養した。なお、培養に用いた培地は、SDC液体培地(pH6.0)(Yeast nitrogen base w/o amino acids:6.7g/L、D−グルコース:20.0g/L、カザミノ酸:20.0g/L、L−ロイシン:100mg/L、ヒスチジン:20mg/L、ウラシル:20mg/L、アデニン:20mg/L)であった。プレート上のFS株のコロニーを、1白金耳ずつ試験管中の培地(5ml×2)に植菌し、30℃、100opmにて24時間培養した。次いで、培養物を三角フラスコ中の培地(100ml×2)に移し、30℃、100opmにて73時間培養した。さらに、消泡剤PE−M(和光純薬工業製):300〜1,500μl/Lを含む500mLのSDC液体培地を入れた1Lジャーファーメンター中で、30℃、600rpm、および1.5VVMにて167時間培養した。培養後、卓上遠心分離機を使用して菌体を収集した。収集した湿潤菌体収量は18.4gであった。収集した菌体の一部を凍結乾燥し、1.7gの菌体を蒸留水100mLに懸濁し、室温にて9日間放置した。放置後、一旦凍結乾燥して保存した後、市販リパーゼ活性測定キット(大日本製薬 リパーゼキットS)を用いて、酵素の力価を測定した。なお、比較のために、培養後の収集した菌体の一部を、凍結乾燥せずに直接蒸留水に懸濁して(54.9g/mL)、9日間室温で放置した後、凍結乾燥して、酵素の力価を測定した。結果を図1に示す。
培養終了時の酵素力価は10.5IU/g(乾燥菌体)であったが、凍結乾燥+9日間懸濁保存後の酵素力価(平均値)は、550.1IU/g(乾燥菌体)に上昇した。一方、凍結乾燥なしの9日間懸濁保存後の酵素力価(平均値)は、370.5IU/g(乾燥菌体)に上昇した。このことから、一旦凍結乾燥した後に懸濁保存した方が、より酵素活性が上昇することがわかった。
本発明の方法によれば、非常に簡単な操作によって、凍結乾燥後に水に懸濁した直後と比較して、数十倍もの酵素活性を示す微生物(菌体)が得られる。酵素を単離するなどの処理を必要とせず、そのまま活性の高い酵素として使用でき、しかも大量に生産可能である。そのため、細胞表層に提示された酵素の用途に応じて、工業的に利用され得る。例えば、タンパク質がリパーゼである場合は、医薬品原料化合物の製造における光学分割の触媒として、非常に有効に利用され得る。
菌体の保存時間と酵素活性との関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 細胞表層にリパーゼを提示する組換え酵母を凍結乾燥する工程、および
    該凍結乾燥した酵母を水に懸濁して室温にて少なくとも4日間保存する工程、
    を含む、酵母細胞表層に提示されたリパーゼの活性を高める方法。
  2. 請求項1に記載の方法によって活性が高められた、酵母細胞表層に提示されたリパーゼ
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