JP2021090384A - セルラーゼを細胞表層発現する形質転換酵母 - Google Patents

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誠久 蓮沼
Yoshihisa Hasunuma
誠久 蓮沼
健太郎 猪熊
Kentaro Inokuma
健太郎 猪熊
洋一郎 伊藤
Yoichiro Ito
洋一郎 伊藤
近藤 昭彦
Akihiko Kondo
昭彦 近藤
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Abstract

【課題】セルロースから効率的に糖を生産するために有用であるセルラーゼ表層提示酵母を提供すること。【解決手段】セルラーゼを細胞表層発現する形質転換酵母を開示する。この形質転換酵母は、ピキア・パストリスの細胞に、該セルラーゼをコードするDNAおよびアンカーリング領域をコードするDNAを含むポリヌクレオチドを導入して得られ、該アンカーリング領域が、GCW5、GCW12、SPI1(GCW14)、GCW19、GCW21、GCW28、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW49、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、セルラーゼを細胞表層発現する形質転換酵母に関する。
例えば、リグノセルロース系バイオマスからのエタノールの生産のために、セルロース分解酵素(セルラーゼ)を酵母に発現させ、それをその細胞の表層に効率良く提示する表層提示技術が用いられてきた。リグノセルロース系バイオマスからのエタノールの生産には、セルラーゼを細胞表層発現してこれを表層提示する酵母(以下、「セルラーゼ表層提示酵母」ともいう)によって、提示したセルラーゼによるリグノセルロース系バイオマス由来のセルロースの加水分解からの糖グルコースの生産(糖化)と、当該グルコースの資化によるエタノールの生産(発酵)とを同時に行う、いわゆる同時糖化発酵が利用され得る。このような同時糖化発酵を利用するエタノール生産のため、例えば、宿主細胞としてサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いたセルラーゼ表層提示酵母が知られている(例えば、特許文献1)。
他方で、リグノセルロース系バイオマスからの燃料や化学品の製造において、当該バイオマスのセルロースから効率的に糖を生産することが望まれる。したがって、セルロースから効率的に糖を生産することができる新たな技術開発が所望されている。
国際公開第2014/157141号
本発明は、セルロースから効率的に糖を生産するために有用であるセルラーゼ表層提示酵母を提供することを目的とする。
本発明は、セルラーゼを細胞表層発現する形質転換酵母を提供し、この形質転換酵母は、
ピキア・パストリスの細胞に、該セルラーゼをコードするDNAおよびアンカーリング領域をコードするDNAを含むポリヌクレオチドを導入して得られ、
該アンカーリング領域は、GCW5、GCW12、SPI1(GCW14)、GCW19、GCW21、GCW28、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW49、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む。
1つの実施形態では、上記セルラーゼはエンドグルカナーゼ、β−グルコシダーゼまたはセロビオヒドロラーゼである。
1つの実施形態では、上記セルラーゼはエンドグルカナーゼであり、かつ上記アンカーリング領域が、GCW5、GCW12、GCW19、GCW21、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む。
1つの実施形態では、上記セルラーゼはエンドグルカナーゼであり、かつ上記アンカーリング領域が、GCW30およびGCW34からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む。
1つの実施形態では、上記セルラーゼはβ−グルコシダーゼであり、かつ上記アンカーリング領域が、GCW30、GCW34、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む。
1つの実施形態では、上記セルラーゼはセロビオヒドロラーゼであり、かつ上記アンカーリング領域が、GCW30、GCW34、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む。
本発明はさらに、セルラーゼを細胞表層発現する形質転換酵母の製造方法を提供し、この方法は、
ピキア・パストリスの細胞に、該セルラーゼをコードするDNAおよびアンカーリング領域をコードするDNAを含むポリヌクレオチドを導入する工程を含み、
該アンカーリング領域が、GCW5、GCW12、SPI1(GCW14)、GCW19、GCW21、GCW28、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW49、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む。
本発明はまた、上記形質転換酵母を含む、セルラーゼ剤を提供する。
本発明によれば、セルラーゼを高活性で表層提示する酵母を提供することができる。また、本発明によれば、セルラーゼを細胞表層に提示する酵母を大量に確保することができる。
ピキア・パストリスを宿主細胞として発現カセットX1〜X14のいずれかを含むプラスミドを導入して得られた各種細胞表層提示形質転換酵母の細胞表層のエンドグルカナーゼ(EG)活性を示すグラフである。 ピキア・パストリスを宿主細胞として、GCW34をGPIアンカーリング領域として使用した発現カセットX9またはX17を含むプラスミドを導入して得られた各種細胞表層提示形質転換酵母の細胞表層のエンドグルカナーゼ(EG)活性を示すグラフである。 ピキア・パストリスを宿主細胞として発現カセットX20〜X24のいずれかを含むプラスミドを導入して得られた各種細胞表層提示形質転換酵母の細胞表層のβ−グルコシダーゼ(BGL)活性を示すグラフである。 ピキア・パストリスを宿主細胞として発現カセットX25〜X29のいずれかを含むプラスミドを導入して得られた各種細胞表層提示形質転換酵母の細胞表層のセロビオヒドロラーゼ(CBH)活性を示すグラフである。
本発明について、以下、詳細に説明する。
(形質転換酵母)
本発明は、セルラーゼを細胞表層発現する形質転換酵母を提供する。この形質転換酵母は、ピキア・パストリスの細胞に、該セルラーゼをコードするDNAおよびアンカーリング領域をコードするDNAを含むポリヌクレオチドを導入して得られる。アンカーリング領域は、GCW5、GCW12、SPI1(GCW14)、GCW19、GCW21、GCW28、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW49、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む。
(細胞表層提示方法)
本発明のセルラーゼを細胞表層発現する形質転換酵母は、細胞表層提示方法を用いて製造することができる。
細胞表層提示方法は、細胞表層に提示する目的のタンパク質とアンカーリング領域が連結された融合タンパク質を宿主細胞に発現させることに基づく。よって、目的のタンパク質をコードするDNAおよびアンカーリング領域をコードするDNAを含むポリヌクレオチドが宿主細胞に導入される。本発明においては、宿主細胞がピキア・パストリスであり、目的のタンパク質がセルラーゼであり、かつアンカーリング領域が所定のピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質である。
(宿主細胞)
本発明のセルラーゼを細胞表層発現する形質転換酵母の製造には、宿主細胞として、ピキア・パストリスが用いられる。ピキア・パストリス(Pichia pastoris)は、メタノール資化性酵母であり、分類学上の正式名称として、Komagataella phaffiiとも呼ばれている。ピキア・パストリスは、グルコースだけでなく、キシロースに対しても資化能力を有する。ピキア・パストリスは、溶存酸素濃度を上げることにより、エタノール生産を抑制することができる(Crabtree-negative)。ピキア・パストリスは、高いタンパク質生産能力および菌体増殖能力を有する。ピキア・パストリスは、例えばATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション)から入手可能である。
(セルラーゼをコードするDNA)
本明細書において「セルラーゼ」とは、β1,4−グリコシド結合を切断し得る任意の酵素を包含していう。セルラーゼは、任意のセルロース加水分解酵素生産菌に由来し得る。セルラーゼ生産菌としては、代表的には、アスペルギルス属(例えば、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、およびアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae))、トリコデルマ属(例えば、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei))、クロストリディウム属(例えば、クロストリディウム・テルモセラム(Clostridium thermocellum)、セルロモナス属(例えば、セルロモナス・フィミ(Cellulomonas fimi)およびセルロモナス・ウダ(Cellulomonas uda))、シュードモナス属(例えば、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescence))、タラロマイセス属(例えば、タラロマイセス・エメルソニ(Talaromyces emersonii)などに属する微生物が挙げられるが、これらに限定されない。
以下、代表的なセルラーゼとして、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼについて説明するが、セルラーゼはこれらに限定されない。
エンドグルカナーゼは、セルロースを分子内部から切断し、グルコース、セロビオース、およびセロオリゴ糖を生じる(「セルロース分子内切断」)。エンドグルカナーゼは、狭義で「セルラーゼ」と呼ばれることもある。エンドグルカナーゼには多数の種類があり、これらの区別は、アミノ酸配列の差異であるが、セルロース分子内切断作用を有する点では共通する。例えば、トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼ(例えば、エンドグルカナーゼII:TrEGII)が用いられ得るが、これに限定されない。例えば、トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼII(TrEGII)のコーディング領域の塩基配列およびコードされるタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号1および2に示す。
セロビオヒドロラーゼは、セルロースの還元末端または非還元末端のいずれかから分解してセロビオースを遊離する(「セルロース分子末端切断」)。セロビオヒドロラーゼには大きく分けて2種類あり、それぞれセロビオヒドロラーゼ1およびセロビオヒドロラーゼ2と称される。これらの区別は、アミノ酸配列の差異および分解を開始するセルロース末端の種類の差異(セロビオヒドロラーゼ1は還元末端から、セロビオヒドロラーゼ2は非還元末端から)であるが、セルロース分子末端切断作用を有する点では共通する。例えば、タラロマイセス・エメルソニ(Talaromyces emersonii)由来セロビオヒドロラーゼ(例えば、セロビオヒドロラーゼ1:TeCBH1)が用いられ得るが、これに限定されない。例えば、タラロマイセス・エメルソニ由来セロビオヒドロラーゼ1(TeCBH1)のコーディング領域の塩基配列およびコードされるタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号3および4に示す。
β−グルコシダーゼは、セルロースの非還元末端からグルコース単位を切り離していくエキソ型の加水分解酵素である(「グルコース単位切断」)。β−グルコシダーゼは、アグリコンまたは糖鎖とβ−D−グルコースとのβ1,4−グリコシド結合を切断し得、セロビオースまたはセロオリゴ糖を加水分解してグルコースを生成し得る。β−グルコシダーゼは、セロビオースまたはセロオリゴ糖を加水分解し得る酵素の代表例である。β−グルコシダーゼは多数の種類が知られており、例えば、アスペルギルス・アクレアタス由来β−グルコシダーゼ(特に、β−グルコシダーゼ1:AaBGL1)が用いられ得るが、これに限定されない。例えば、アスペルギルス・アクレアタス由来β−グルコシダーゼ1(AaBGL1)のコーディング領域の塩基配列およびコードされるタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号5および6に示す。
セルラーゼをコードするDNAとしては、イントロンを除いたcDNA配列が好ましい。
セルラーゼをコードするDNAは、その全長をコードする配列であってもよく、セルラーゼの活性を示すものであればセルラーゼの一部領域をコードする配列であってもよい。また、上記のように、セルラーゼの活性を示す限り、天然型タンパク質をコードする塩基配列において、1または2以上(例えば数個)のヌクレオチドが欠失、付加または置換などの変異を含む塩基配列であってもよく、あるいは1または2以上(例えば数個)アミノ酸が欠失、付加または置換などの変異を含むアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列であってもよい。セルラーゼをコードするDNAの塩基配列およびコードするタンパク質のアミノ酸配列に関して、以下に説明する配列の同一性およびハイブリダイズ条件等が適用される。
セルラーゼをコードするDNA(遺伝子)は、セルラーゼを有するまたは産生する微生物から抽出したDNA、各種cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに由来する核酸を鋳型として、既知の配列情報に基づいて設計したプライマーを用いてPCRによって核酸断片として取得し得る。このようなポリヌクレオチドは、既知の配列情報に基づいて設計したプローブを用いて、上記ライブラリー由来の核酸に対してハイブリダイゼーションを行うことによって、DNA断片として取得し得る。また、セルラーゼをコードするDNAを含む既存のベクターから、DNA断片(発現カセットの形態であってもよい)として切り出して利用することもできる。このような遺伝子は、必要に応じて宿主のコドン頻度を考慮して最適化した配列に基づいて、人工的に合成して得ることもできる。
セルロースの良好な加水分解のために、セルロース加水分解様式の異なる酵素を組み合わせてもよい。セルロース分子内切断、セルロース分子末端切断、およびグルコース単位切断などの種々の異なるセルロース加水分解様式で作用する酵素が適宜、組み合わされ得る。それぞれの加水分解様式を有する酵素の例として、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼが挙げられるがこれらに限定されない。セルロース加水分解様式の異なる酵素の組合せは、例えば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼからなる群から選択され得る。セルロースの構成糖であるグルコースを最終的に生産できることが望ましいので、グルコースを生成し得る酵素を少なくとも1つ含むことが好ましい。グルコースを生成し得る酵素としては、グルコース単位切断酵素(例えば、β−グルコシダーゼ)に加え、エンドグルカナーゼもグルコースを生成し得る。例えば、酵母において、β−グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ、およびセロビオヒドロラーゼを表層提示させ得る。
(ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質をコードするDNA)
本発明においては、ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質をアンカーリング領域として用いる。「アンカーリング領域」とは、目的タンパク質(本発明においては、セルラーゼ)を酵母の細胞表層に固定化するアンカー活性を有する領域をいう。「アンカーリング領域」としては、例えば、細胞表層局在タンパク質が用いられ得る。「細胞表層局在タンパク質」は、細胞表層に固定化または付着もしくは接着し、そこに局在するタンパク質をいう。細胞表層局在タンパク質としては、脂質で修飾されたタンパク質が知られており、この脂質が膜成分と共有結合することにより細胞膜に固定される。
細胞表層局在タンパク質の代表例として、GPI(glycosyl phosphatidyl inositol(グリコシルホスファチジルイノシトール):エタノールアミンリン酸−6マンノースα−1,2マンノースα−1,6マンノースα−1,4グルコサミンα−1,6イノシトールリン脂質を基本構造とする糖脂質)アンカータンパク質を挙げることができる。GPIアンカータンパク質は、そのC末端に糖脂質であるGPIを有しており、このGPIが細胞膜中のPI(phosphatidyl inositol(ホスファチジルイノシトール))と共有結合することによって細胞膜表面に結合する。
GPIアンカータンパク質のC末端へのGPIの結合は、例えば以下のようにして行われる。GPIアンカータンパク質は、転写および翻訳の後、N末端側に存在する分泌シグナルの作用により小胞体内腔に分泌される。GPIアンカータンパク質のC末端またはその近傍の領域に、GPIアンカーがGPIアンカータンパク質と結合する際に認識されるGPIアンカー付着シグナルと呼ばれる領域が存在する。小胞体内腔およびゴルジ体において、このGPIアンカー付着シグナル領域が切断され、新たに生じるC末端にGPIが結合する。
GPIが結合したタンパク質は、分泌小胞により細胞膜まで運ばれ、GPIが細胞膜のPIに共有結合することにより、細胞膜に固定される。さらに、ホスファチジルイノシトール依存性ホスホリパーゼC(PI−PLC)によりGPIアンカーが切断され、細胞壁に組み込まれることにより細胞壁に固定された状態で、細胞表面に提示される。
細胞表層提示の方法としては、例えば、GPIアンカーリング領域を用いる方法が挙げられる。この方法では、「GPIアンカーリング領域」として、細胞表層局在タンパク質であるGPIアンカータンパク質の全体、またはその細胞壁結合領域であるGPIアンカー付着シグナル領域を含む領域をコードするDNAを用いることができる。この方法では、「アンカーリング領域」として、GPIアンカータンパク質の全体、またはその細胞壁結合領域であるGPIアンカー付着シグナル領域を含む領域が用いられる。GPIアンカーリング領域を用いる方法では、GPIアンカー付着シグナルを細胞表層提示に利用する。細胞壁結合領域(GPIアンカー付着シグナル領域)は、通常、細胞表層局在タンパク質のC末端側の領域である。細胞壁結合領域は、GPIアンカー付着シグナル領域を含んでいればよく、融合タンパク質の酵素活性を阻害しない限り、GPIアンカータンパク質のその他の任意の部分を含んでいてもよい。
本発明においては、「アンカーリング領域」のためのGPIアンカータンパク質として、ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を用いる。このピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質は、GCW5、GCW12、SPI1(GCW14)、GCW19、GCW21、GCW28、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW49、GCW51またはGCW61である。「ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質」とは、以下に説明するような、本発明において「ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質」の所望の機能または効果を実質的に有するタンパク質を包含し、そしてピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質をコードするDNAは、そのような所望の機能または効果を実質的に有するタンパク質をコードするDNAを包含する。アンカーリング領域として、上に列挙したピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質の1つを用いてもよく、または2つ以上の組み合わせであってもよく、あるいは上に列挙したピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質の1つまたは2つ以上を、上記のピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質以外のアンカータンパク質と組み合わせて用いてもよい。
ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質は、用いるセルラーゼの種類に応じて採用し得る。セルラーゼは、例えば、エンドグルカナーゼ(例えば、エンドグルカナーゼII)、β−グルコシダーゼ(例えば、β−グルコシダーゼ1)、またはセロビオヒドロラーゼ(例えば、セロビオヒドロラーゼ1)であり、そしてアンカーリング領域は、GCW5、GCW12、SPI1(GCW14)、GCW19、GCW21、GCW28、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW49、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む。セルラーゼがエンドグルカナーゼ(例えば、エンドグルカナーゼII)である実施形態では、アンカーリング領域は、例えば、GCW5、GCW12、GCW19、GCW21、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含み、好ましくは、GCW19、GCW21、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45およびGCW51からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含み、より好ましくは、GCW30およびGCW34からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含むことができる。セルラーゼがβ−グルコシダーゼ(例えば、β−グルコシダーゼ1)である実施形態では、アンカーリング領域は、例えば、GCW30、GCW34、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含み、好ましくは、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含むことができる。セルラーゼがセロビオヒドロラーゼ(例えば、セロビオヒドロラーゼ1)である実施形態では、アンカーリング領域は、例えば、GCW30、GCW34、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含むことができる。
ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質の遺伝子は、公に入手可能な遺伝子配列情報に基づき、当業者が通常用いる方法を用いて入手することができる。GCW5、GCW12、SPI1(GCW14)、GCW19、GCW21、GCW28、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW49、GCW51およびGCW61は、例えば、GenBank等に以下の登録番号で登録されている。GCW5:XM_002489759.1;GCW12:XM_002490597.1;SPI1(GCW14):XM_002490678.1;GCW19:XM_002491053.1;GCW21:XM_002491407.1;GCW28:XM_002492194.1;GCW30:XM_002492304.1;GCW34:XM_002492478.1;GCW42:XM_002493171.1;GCW45:XM_002493510.1;GCW49:XM_002493735.1;GCW51:XM_002493737.1;およびGCW61:XM_002494287.1。GCW5、GCW12、SPI1(GCW14)、GCW19、GCW21、GCW28、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW49、GCW51およびGCW61のそれぞれのタンパク質コーディング領域の塩基配列およびコードされるタンパク質のアミノ酸配列を、以下のように示す(前者には塩基配列が示され、後者にはアミノ酸配列が示される):GCW5、配列番号7および8;GCW12、配列番号9および10;SPI1(GCW14)、配列番号11および12;GCW19、配列番号13および14;GCW21、配列番号15および16;GCW28、配列番号17および18;GCW30、配列番号19および20;GCW34、配列番号21および22;GCW42、配列番号23および24;GCW45、配列番号25および26;GCW49、配列番号27および28;GCW51、配列番号29および30;ならびにGCW61、配列番号31および32。
ここで、本明細書において記載されるタンパク質またはペプチドは、開示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、本発明において所望の機能または効果を実質的に有するタンパク質またはペプチドであってもよく、DNAまたはポリヌクレオチドは、そのようなタンパク質またはペプチドをコードするものを含んでもよい。開示されるアミノ酸配列に対するアミノ酸の変異(例えば、欠失、置換もしくは付加)は、いずれか1種類であってもよいし、2種類以上が組み合わされていてもよい。また、これらの変異の総数は、1または数個であるが、その所望の機能または効果を実質的に有する限り特に限定されず、タンパク質またはペプチドの大きさにも依存し得る。変異の総数としては、例えば、1個以上10個以下、1個以上5個以下、1個以上4個以下、1個以上3個以下、または1個以上2個以下が挙げられるが、これらに限定されない。また、変異の総数は、例えば、以下に説明する配列同一性を満たす範囲内であり得る。アミノ酸置換の例としては、各機能または効果を実質的に保持する限りにおいていずれの置換であってもよい。例えば、保存的置換が挙げられる。保存的置換としては、具体的には以下のグループ内(すなわち、括弧内に示すアミノ酸の間)での置換が挙げられる:(グリシン、アラニン)、(バリン、イソロイシン、ロイシン)、(アスパラギン酸、グルタミン酸)、(アスパラギン、グルタミン)、(セリン、トレオニン)、(リジン、アルギニン)、(フェニルアラニン、チロシン)。
他の実施形態としては、本明細書において記載されるタンパク質またはペプチドは、開示されるアミノ酸配列に対して、例えば、70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ本発明において所望の機能または効果を実質的に有するタンパク質またはペプチドであってもよく、ポリヌクレオチドは、そのようなタンパク質またはペプチドをコードするものであってもよい。アミノ酸配列における配列同一性はまた、開示されるアミノ酸配列に対して、例えば、70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ本発明において所望の機能または効果を実質的に有するタンパク質またはペプチドをコードするものであってもよい。アミノ酸配列における配列同一性はまた、74%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上であり得る。
本明細書において配列の同一性または類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。配列の「同一性」とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一連の、部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、「類似性」とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一連の、部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸または配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarityと称される。同一性および類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性および類似性を決定するための方法は、公衆に利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)プログラム(例えば、Altschulら, J. Mol. Biol.,1990,215:403-410;Altschylら,Nucleic Acids Res., 1997,25:3389-3402)を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。
さらに他の実施形態として、本明細書に記載されるタンパク質またはペプチドは、開示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとハイブリダイズしたDNAによりコードされたものであってもよく、そしてポリヌクレオチドは、そのようなハイブリダイズしたDNAを含むものでもよい。開示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとのハイブリダイズについては、好ましくは、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする。
ストリンジェントな条件とは、例えば、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、塩基配列の同一性が高い核酸、すなわち開示される塩基配列と例えば、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が例えば、15mM〜750mM、50mM〜750mM、または300mM〜750mM、温度が例えば、25℃〜70℃、50℃〜70℃、または55℃〜65℃、そしてホルムアミド濃度が例えば、0%〜50%、20%〜50%、または35%〜45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件が、ナトリウム塩濃度が例えば、15mM〜600mM、50mM〜600mM、または300mM〜600mM、そして温度が例えば50℃〜70℃、55℃〜70℃、または60℃〜65℃である。また、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、例えば、DNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaClの存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM NaCl、15mM クエン酸ナトリウムである)の中、65℃でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAが挙げられる。ハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd Ed,, Cold Spring Harbor Laboratory(2001)に記載されている方法などの周知の方法で行うことができる。温度が高いほど、または塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり、より相同性(配列同一性)の高いポリヌクレオチドを単離できる。
さらなる他の実施形態として、DNAまたはポリヌクレオチドは、開示される塩基配列と例えば、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有する塩基配列を有し、かつその所望の機能または効果を実質的に有するポリヌクレオチドが挙げられる。
所定のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、遺伝暗号の縮重に基づく置換によって、タンパク質のアミノ酸配列を変えることなく、所定のアミノ酸配列をコードする塩基配列の少なくとも1つの塩基を他の塩基に置換することもできる。
ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質をコードするDNAは、これらを有する微生物から抽出したDNA、各種cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに由来する核酸を鋳型として、既知の配列情報に基づいて設計したプライマーを用いてPCRによってDNA断片として取得し得る。ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質をコードするDNAは、既知の配列情報に基づいて設計したプローブを用いて、上記ライブラリー由来の核酸に対してハイブリダイゼーションを行うことによって、DNA断片として取得してもよい。ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質をコードするDNAを含む既存のベクターから、DNA断片として切り出して利用することもできる。ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質をコードするDNAは、化学合成法等の当該技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、DNA断片として合成してもよい。
(発現カセットの構築)
本発明においては、セルラーゼをコードするDNAおよびピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質をコードするDNAを含むポリヌクレオチドが宿主細胞に導入される。このポリヌクレオチドは、例えば、発現カセットの形態をとり得る。
本発明において、「発現カセット」とは、目的タンパク質が発現し得るように、該目的タンパク質をコードするDNAと、その発現を調節するための種々の調節エレメントとが、宿主の微生物または細胞中で機能し得る状態で連結されているDNAまたはポリヌクレオチドをいう。ここで「機能し得る状態で連結されている」とは、目的タンパク質をコードするDNAが、プロモーターの制御下で、そして場合により他の調節エレメントの制御下で、発現されるように、発現カセットまたは発現ベクターに含まれる各構成要素が連結されていることを意味する。各構成要素は、目的タンパク質が発現し得る限りにおいて、それらの要素間に検出用のタグやリンカーなどの配列をさらに含んで連結されていてもよい。
細胞表層提示技術に用いられる発現カセット(「細胞表層発現用カセット」ともいう)では、分泌シグナル配列、目的タンパク質をコードするDNA、およびアンカーリング領域をコードするDNAを含む。分泌シグナル配列、目的タンパク質をコードするDNA、およびアンカーリング領域をコードするDNAは、宿主微生物または宿主細胞中で機能し得る状態で連結され得る。分泌シグナル配列は、目的タンパク質をコードするDNAの上流に位置する。細胞表層発現用カセットは、例えば、5’末端から3’末端に向かって、分泌シグナル配列、目的タンパク質をコードするDNAおよびアンカーリング領域をコードするDNAを記載の順に含むように構築される。細胞表層発現用カセットは、プロモーターおよびターミネーターをさらに含むことができる。プロモーターは、分泌シグナル配列の上流に位置し、そしてターミネーターは、目的タンパク質をコードするDNAおよびアンカーリング領域をコードするDNAの下流に位置する。
(分泌シグナル配列)
「分泌シグナル配列」は、分泌シグナルペプチドをコードするDNAである。分泌シグナルペプチドは、ペリプラズムを含む細胞外に分泌される分泌性タンパク質のN末端に通常結合しているペプチドである。このペプチドは、生物間で類似した構造を有しており、例えば20個程度のアミノ酸からなり、N末端付近に塩基性アミノ酸配列を有し、その後に疎水性アミノ酸を多く含んでいる。分泌シグナルは、通常、分泌性タンパク質が細胞内から細胞膜を通過して細胞外へ分泌される際にシグナルペプチダーゼにより分解されることにより除去される。
本発明においては、目的タンパク質を酵母の細胞外に分泌させることができる分泌シグナルペプチドをコードするDNAであれば、どのようなものでも用いることができ、その起源は問わない。目的タンパク質が本来有する分泌シグナルペプチドをコードするDNAを利用することもできる。分泌シグナルの活性を示す限り、天然型タンパク質をコードする塩基配列において、1または2以上(例えば数個)のヌクレオチドが欠失、付加または置換などの変異を含む塩基配列であってもよく、あるいは1または2以上(例えば数個)アミノ酸が欠失、付加または置換などの変異を含むアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列であってもよい。分泌シグナルペプチドをコードするDNAの塩基配列およびコードするタンパク質のアミノ酸配列に関して、上記で説明した配列の同一性およびハイブリダイズ条件等が適用される。
例えば、分泌シグナルとしては、サッカロマイセス・セレビシエ由来のα因子のプレプロ配列(MFα)、ピキア・パストリス由来SPI1(GCW14)(PpSPI1)の分泌シグナルペプチド、サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1の分泌シグナルペプチド、リゾパス・オリゼー由来のグルコアミラーゼの分泌シグナルペプチドなどが挙げられる。
分泌シグナルペプチドをコードするDNAは、例えば、既知の配列情報に基づいて設計したプライマーを用いて、保有する酵母から抽出したDNA、各種cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに由来する核酸を鋳型としてPCRを行うことによって、DNA断片として取得し得る。分泌シグナルペプチドをコードするDNAは、既知の配列情報に基づいて設計したプローブを用いて、上記ライブラリー由来の核酸に対してハイブリダイゼーションを行うことによって、DNA断片として取得し得る。分泌シグナルペプチドをコードするDNAは、化学合成法等の当技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、DNA断片として合成してもよい。また、分泌シグナルペプチドをコードするDNAを含む既存のベクターから、DNA断片(発現カセットの形態であってもよい)として切り出して利用することもできる。
(プロモーター)
プロモーターは、プロモーター活性を有するDNAであり、「プロモーター活性」とは、プロモーター領域に転写因子が結合し、転写を惹起する活性をいう。プロモーターは、例えば、所望のプロモーター領域を保有する菌体、ファージなどから、制限酵素を用いて切り出し得る。必要に応じて制限酵素認識部位またはクローニングベクターとの重複部位を設けたプライマーを用い、PCRで所望のプロモーター領域を増幅することによりプロモーター領域のDNA断片を得ることができる。また、既に判明しているプロモーター領域の塩基配列情報をもとにして、所望のプロモーターを化学合成してもよい。目的の機能を果たすものであれば、プロモーターは、上記のように、1または2以上(例えば数個)のヌクレオチドが欠失、付加または置換などの変異された塩基配列を有するものであってもよい。このプロモーターを構成する塩基配列には、上記で説明した配列の同一性およびハイブリダイズ条件等が適用される。
プロモーターは、酵母においてプロモーター活性を有する限り、任意のプロモーターであり得る。プロモーターは、発現を目的とする遺伝子自身のものであっても、他の遺伝子由来のものを利用してもよい。プロモーターは、誘導性プロモーターおよび構成的発現プロモーターのいずれでもよく、また、アンカーリング領域として用いられるピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターであってもよい。誘導性プロモーターとしては、AOX1プロモーター(アルコールオキシダーゼ(AOX)をコードする遺伝子のプロモーター)、FLD1プロモーター(ホルムアルデヒド脱水素酵素(FLD)をコードする遺伝子のプロモーター)およびPEX8プロモーター(ペルオキシン(PEX)の1つをコードする遺伝子のプロモーター)が挙げられ、そして構成的発現プロモーターとしては、例えば、GAPプロモーター(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のプロモーター)およびYPT1プロモーターが挙げられる(これらのプロモーターはいずれもピキア・パストリス由来であり得る)。また、ピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターとしては、例えば、SPI1(GCW14)のプロモーターが挙げられる。
(ターミネーター)
ターミネーターは、ターミネーター活性を有するDNAであり、「ターミネーター活性」とは、ターミネーター領域において転写を終結させる活性をいう。ターミネーターは、例えば、所望のターミネーター領域を保有する菌体、ファージなどから、制限酵素を用いて切り出し得る。必要に応じて制限酵素認識部位またはクローニングベクターの挿入部位を設けたプライマーを用い、PCRで所望のターミネーター領域を増幅することによりターミネーター領域のDNA断片を得ることができる。また、既に判明しているターミネーター領域の塩基配列情報をもとにして、所望のターミネーターを化学合成してもよい。目的の機能を果たすものであれば、ターミネーターは、上記のように、1または2以上(例えば数個)のヌクレオチドが欠失、付加または置換などの変異された塩基配列を有するものであってもよい。このターミネーターを構成する塩基配列には、上記で説明した配列の同一性およびハイブリダイズ条件等が適用される。
ターミネーターとしては、例えば、AOX1ターミネーター(アルコールオキシダーゼ(AOX)をコードする遺伝子のターミネーター)(例えばピキア・パストリス由来)が挙げられる。
(発現ベクターの構築)
本明細書において「発現ベクター」とは、目的タンパク質をコードするDNAの発現のためのユニット(発現カセット)が挿入されたベクターをいい、目的タンパク質をコードするDNAが挿入されたものを含む。発現ベクターは、プラスミドベクターであってもよく、あるいは人工染色体であってもよい。酵母を宿主とする場合、ベクターの調製が容易であり、また酵母細胞の形質転換が容易である点で、プラスミドの形態が好ましい。DNAの取得の簡易化の点からは、酵母と大腸菌とのシャトルベクターであることが好ましい。必要に応じて、ベクターは、調節配列(オペレーター、エンハンサーなど)を含み得る。このようなベクターは、例えば、酵母の2μmプラスミドの複製開始点(Ori)とColE1の複製開始点とを有しており、酵母選択マーカー(以下に説明)および大腸菌の選択マーカー(薬剤耐性遺伝子など)を有する。
酵母選択マーカーとしては、公知の任意のマーカーが利用され得る。例えば、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性マーカー遺伝子(例えば、イミダゾールグリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ(HIS3)をコードする遺伝子、リンゴ酸ベータ−イソプロピルデヒドロゲナーゼ(LEU2)をコードする遺伝子、O−アセチルホモセリンO−アセチルセリンスルフィドリラーゼ(MET15)をコードする遺伝子、トリプトファンシンターゼ(TRP5)をコードする遺伝子、アルギニノコハク酸リアーゼ(ARG4)をコードする遺伝子、N−(5'−ホスホリボシル)アントラニル酸イソメラーゼ(TRP1)をコードする遺伝子、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(HIS4)をコードする遺伝子、オロチジン−5−リン酸デカルボキシラーゼ(URA3)をコードする遺伝子、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(URA1)をコードする遺伝子、ガラクトキナーゼ(GAL1)をコードする遺伝子、およびアルファ−アミノアジピン酸レダクターゼ(LYS2)をコードする遺伝子など)が挙げられる。
各種配列を含むDNAの合成および結合は、当業者が通常用い得る方法で行われ得る。各構成要素の結合については、例えば、PCR法により適当な制限酵素の認識配列を付与された各構成要素のDNAをその制限酵素で切断し、リガーゼなどを用いて連結すること、One-step isothermal assembly(Nature Methods,2009,6:343-345)を用いて行うこと、あるいはIn-Fusion法(Biotechniques,2007,43:354-359)を用いて行うことができる。
セルラーゼ(例えば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼまたはβ−グルコシダーゼ)をコードする領域(構造遺伝子)、およびプロモーターおよびターミネーターなどの発現調節配列を含むプラスミドから、適宜、ベクターの調製に適した形態で切り出して、インサートを調製することによって利用することもできる。
(形質転換酵母の調製)
本発明の形質転換酵母は、上記で説明した細胞表層提示方法を宿主細胞ピキア・パストリスに適用することにより作製される。本発明の形質転換酵母は、目的のタンパク質を細胞表層にて発現して、その細胞表層に提示するため、「細胞表層発現酵母」または「細胞表層提示酵母」とも称することができる。
ポリヌクレオチドの宿主酵母への「導入」とは、ポリヌクレオチドまたは発現カセットまたは発現ベクター中の発現を目的とする遺伝子(目的タンパク質をコードするDNA)が宿主細胞に導入されるだけでなく、宿主細胞で発現されることも含む。導入方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。代表的には、上記説明した本発明の発現ベクターを用いて酵母を形質転換する方法が挙げられる。形質転換方法は、特に限定されず、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、酢酸リチウム法、プロトプラスト法などのトランスフェクション法やマイクロインジェクション法のような公知の方法を制限なく使用できる。導入された遺伝子は、プラスミドの形態で存在してもよく、または酵母の染色体に挿入された形態あるいは酵母の染色体に相同組換えにより組み込まれた形態で存在してもよい。
ポリヌクレオチドが導入された酵母は、常法に従い、酵母選択マーカーによる形質または目的タンパク質の活性などを指標として選択することができる。
また、得られた酵母の細胞表層に目的タンパク質が固定(細胞表層提示)されていることは、常法により確認することができる。例えば、被験酵母に、このタンパク質に対する抗体と、FITCのような蛍光標識2次抗体またはアルカリフォスファターゼのような酵素標識2次抗体などとを作用させる方法、このタンパク質に対する抗体とビオチン標識2次抗体とを反応させた後さらに蛍光標識ストレプトアビジンを作用させる方法などが挙げられる。
複数種のタンパク質を細胞表層提示発現するように、酵母を形質転換することもできる。この場合、複数種のタンパク質のそれぞれをコードする配列の遺伝子発現カセットを含むそれぞれの発現ベクターを構築してもよく、複数の遺伝子発現カセットを1つの発現ベクターに入れることもできる。
本発明の形質転換酵母は、一般的に酵母に適用可能な培養条件下で培養し得る。形質転換酵母の培養は、当業者に周知の方法により適宜実施できる。培地組成、培養pHおよび培養温度は、その酵母の性質および目的タンパク質に応じて、適宜設定し得る。培養の際の菌体密度および培養時間もまた、その酵母の性質および目的タンパク質に応じて適宜設定し得る。
培養中の溶存酸素濃度を増加させることにより、形質転換酵母のエタノール生産反応を抑制することができる。形質転換酵母のエタノール生産反応を抑制することにより、形質転換酵母の菌体数の生育を促進することができ、より大量の形質転換酵母を確保することができる。
本発明の形質転換酵母は、種々の用途に用いられる。例えば、本発明の形質転換酵母を含むセルラーゼ剤がさらに提供される。このようなセルラーゼ剤としては、例えば、表層提示酵母および当該表層提示酵母を維持し得る培地を含む懸濁液、または凍結乾燥した表層提示酵母の形態が挙げられる。セルラーゼ剤は、微生物を固定化可能な担体をさらに含むことができる。表層提示酵母または凍結乾燥した表層提示酵母は、微生物を固定化可能な担体に固定化されていてもよい。担体は、例えば、水に対して不溶性の物質であり、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリアクリルアミド、ポリビニルフォルマール樹脂多孔質体、シリコンフォーム、セルロース多孔質体などの発泡体あるいは樹脂から製造され、例えば、多孔質である。このようなセルラーゼ剤は、生体触媒として用いることができる。「生体触媒」は、セルラーゼの酵素活性を利用する用途に用いることができる。
本発明の形質転換酵母またはセルラーゼ剤は、例えば、必要に応じて前処理したセルロース系バイオマス(例えば、稲わら、サトウキビバガス)と共に用いることにより、セルロースを加水分解して糖を生産することができる。
本発明によれば、セルラーゼを高活性で表層提示する酵母を提供することができる。また、本発明によれば、セルラーゼを細胞表層に提示する酵母を大量に確保することができる。セルラーゼを高活性で表層提示する酵母を利用すること、および/またはセルラーゼを細胞表層に提示する酵母を大量に確保することができることにより、セルロース系バイオマスからの糖の生産、そしてセルロース系バイオマスからの有用物質(例えば、燃料または化学品)の生産をより効率的に行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
本実施例で用いた酵母ピキア・パストリスを、ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション)より入手した。
本実施例に示す全てのPCR法には、KOD−Plus−Neo−DNAポリメラーゼ(東洋紡績株式会社製)を用いて実施した。
本実施例に示す全ての酵母への遺伝子導入は、酢酸リチウム法によって実施した。
(試験例1:エンドグルカナーゼ(EG)活性の検討)
酵母菌体の表層上のエンドグルカナーゼ(EG)活性(乾燥菌体重量当たりの活性量)の検討を以下の手順に従って行った。
菌体を抗生物質G418(500μg/mL)を含むYPD培地5mLに移植し、30℃、180rpmにて18時間培養し(前培養)、次いで1×YPD培地50mLに移植し(初発OD600=0.05)、30℃、150rpmにて培養した(本培養)。本培養開始からの48時間後に培養液をそれぞれ回収し、1,000g、5分間の遠心分離にて菌体と培地とを分離した。
菌体のエンドグルカナーゼ活性の測定を、以下の(1)〜(3)の順序に従って行った。
(1)菌体を蒸留水で2回洗浄。
(2)反応液2500μL(組成:セラザイムCタブレット(Megazyme社製)1錠;500mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0) 250μL(最終濃度50mM);蒸留水1750μL;および酵母懸濁液500μL(最終菌体濃度2〜5g湿潤菌体/L))を調製し、静置、38℃にて3時間反応。
(3)反応終了後、10,000gで5分間遠心後、上清の590nmの吸光度ABS590を測定。
(試験例2:β−グルコシダーゼ(BGL)活性の検討)
酵母菌体の表層上のβ−グルコシダーゼ(BGL)活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(U)の検討を以下の手順に従って行った。
菌体を抗生物質G418(500μg/mL)を含むYPD培地5mLに移植し、30℃、180rpmにて18時間培養し(前培養)、次いで1×YPD培地50mLに移植し(初発OD600=0.05)、30℃、150rpmにて培養した(本培養)。本培養開始からの48時間後に培養液をそれぞれ回収し、1,000g、5分間の遠心分離にて菌体と培地とを分離した。
菌体のβ−グルコシダーゼ活性の測定を、以下の(1)〜(4)の順序に従って行った。
(1)菌体を蒸留水で2回洗浄。
(2)反応液500μL(組成:10mM pNPG(p−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド)100μL(最終濃度2mM);500mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0) 50μL(最終濃度50mM);蒸留水250μL;および酵母懸濁液100μL)(最終菌体濃度0.04g湿潤菌体/L))を調製し、500rpm、30℃にて10分間反応。
(3)反応終了後、3M NaCO 500μLを加え反応を停止。
(4)10,000gで5分間遠心後、上清の400nmにおける吸光度ABS400を測定。1分間で1μmolのpNP(p−ニトロフェノール)を遊離する酵素量を1Uとする。
(試験例3:セロビオヒドロラーゼ(CBH)活性の検討)
酵母菌体の表層上のセロビオヒドロラーゼ(CBH)活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(U)の検討を以下の手順に従って行った。
菌体を抗生物質G418(500μg/mL)を含むYPD培地5mLに移植し、30℃、180rpmにて18時間培養し(前培養)、次いで1×YPD培地50mLに移植し(初発OD600=0.05)、30℃、150rpmにて培養した(本培養)。本培養開始からの48時間後に培養液をそれぞれ回収し、1,000g、5分間の遠心分離にて菌体と培地とを分離した。
菌体のセロビオヒドロラーゼ活性の測定を、以下のように行った。
(1)菌体を蒸留水で2回洗浄。
(2)反応液500μL(組成:10mM pNPL(p−ニトロフェニル−β−D−ラクトピラノシド)100μL(最終濃度2mM);500mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0) 50μL(最終濃度50mM);蒸留水250μL;および酵母懸濁液100μL)(最終菌体濃度0.2g湿潤菌体/L))を調製し、500rpm、50℃にて60分間反応。
(3)反応終了後、3M NaCO 500μLを加え反応を停止。
(4)10,000gで5分間遠心後、上清の400nmにおける吸光度ABS400を測定。1分間で1μmolのpNP(p−ニトロフェノール)を遊離する酵素量を1Uとする。
(調製例1:セルラーゼ表層提示酵母の製造)
(1−1:発現カセットの構築)
下記発現カセットX1〜X29をそれぞれ含むプラスミドを調製した:
X1:PpGAP1プロモーター(配列番号33)+MFα分泌シグナル(配列番号34;コードされるアミノ酸配列を配列番号35に示す)+TrEGII(配列番号1;コードされるアミノ酸配列を配列番号2に示す)+ScSED1アンカーリング領域(配列番号36;コードされるアミノ酸配列を配列番号37に示す)+PpAOX1ターミネーター(配列番号38);
X2:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW5アンカーリング領域(配列番号7;コードされるアミノ酸配列を配列番号8に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X3:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW12アンカーリング領域(配列番号9;コードされるアミノ酸配列を配列番号10に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X4:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+SPI1(GCW14)アンカーリング領域(配列番号11;コードされるアミノ酸配列を配列番号12に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X5:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW19アンカーリング領域(配列番号13;コードされるアミノ酸配列を配列番号14に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X6:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW21アンカーリング領域(配列番号15;コードされるアミノ酸配列を配列番号16に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X7:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW28アンカーリング領域(配列番号17;コードされるアミノ酸配列を配列番号18に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X8:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW30アンカーリング領域(配列番号19;コードされるアミノ酸配列を配列番号20に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X9:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW34アンカーリング領域(配列番号21;コードされるアミノ酸配列を配列番号22に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X10:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW42アンカーリング領域(配列番号23;コードされるアミノ酸配列を配列番号24に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X11:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW45アンカーリング領域(配列番号25;コードされるアミノ酸配列を配列番号26に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X12:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW49アンカーリング領域(配列番号27;コードされるアミノ酸配列を配列番号28に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X13:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW51アンカーリング領域(配列番号29;コードされるアミノ酸配列を配列番号30に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X14:PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナル+TrEGII+GCW61アンカーリング領域(配列番号31;コードされるアミノ酸配列を配列番号32に示す)+PpAOX1ターミネーター;
X15:PpSPI1プロモーター(配列番号39)+PpSPI1分泌シグナル(配列番号40;コードされるアミノ酸配列を配列番号41に示す)+TrEGII+ScSED1アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X16:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+TrEGII+GCW30アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X17:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+TrEGII+GCW34アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X18:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+TrEGII+GCW51アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X19:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+TrEGII+GCW61アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X20:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+AaBGL1(配列番号5;コードされるアミノ酸配列を配列番号6に示す)+ScSED1アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X21:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+AaBGL1+GCW30アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X22:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+AaBGL1+GCW34アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X23:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+AaBGL1+GCW51アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X24:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+AaBGL1+GCW61アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X25:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+TeCBH1(配列番号3;コードされるアミノ酸配列を配列番号4に示す)+ScSED1アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X26:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+TeCBH1+GCW30アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X27:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+TeCBH1+GCW34アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X28:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+TeCBH1+GCW51アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター;
X29:PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナル+TeCBH1+GCW61アンカーリング領域+PpAOX1ターミネーター。
(1−1:トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼII(TrEGII)発現カセットを含有するベクタープラスミドの調製)
サッカロマイセス・セレビシエ由来のMFα prepro leader配列を含むDNA断片を遺伝子合成により調製した。次に、ベクタープラスミドpIEG-SS(サッカロマイセス・セレビシエ由来SED1プロモーター、リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼの分泌シグナルペプチド配列、トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼII(TrEGII)遺伝子のコーディング領域、サッカロマイセス・セレビシエ由来SED1遺伝子のコーディング領域(ScSED1アンカーリング領域)、およびα−アグルチニン遺伝子のコーディング領域下流445bpのターミネーター領域がこの順に配置されているカセットを有する表層発現用ベクター:Biotechnology for Biofuels, Vol.7, 2014, 8)を鋳型とし、プライマー対EGII-Flag-MFa-F(配列番号42)およびScSED1a-MluI-R(配列番号43)を用いてPCR法により増幅し、TrEGIIおよびScSED1アンカーリング領域を含むDNA断片を調製した。これらの断片を、ベクタープラスミドpPGP_EGFP(ピキア・パストリス由来GAP遺伝子のプロモーター領域、緑色蛍光タンパク質(GFP)コーディング領域、およびピキア・パストリス由来のAOX1遺伝子のターミネーター領域がこの順に配置されている遺伝子カセット、および抗生物質G418耐性遺伝子を有するピキア・パストリス発現用ベクター:FEMS Yeast Research, Vol.18, No.7, 2018, foy074)を鋳型とし、プライマー対AOX1t-F(配列番号44)およびGAPp-MFa-R(配列番号45)を用いて増幅した断片と、In-Fusion法により連結した。得られた発現カセットX1を含むプラスミドをpIEG-PpGMSed1と命名した。
PCR法により、ピキア・パストリスCBS7435株ゲノムを鋳型とし、プライマー対GCW5-F(配列番号46)およびGCW5-R(配列番号47)を用いてGCW5アンカーリング領域、プライマー対GCW12-F(配列番号48)およびGCW12-R(配列番号49)を用いてGCW12アンカーリング領域、プライマー対GCW14-F(配列番号50)およびGCW14-R(配列番号51)を用いてSPI1(GCW14)アンカーリング領域、プライマー対GCW19-F(配列番号52)およびGCW19-R(配列番号53)を用いてGCW19アンカーリング領域、プライマー対GCW21-F(配列番号54)およびGCW21-R(配列番号55)を用いてGCW21アンカーリング領域、プライマー対GCW28-F(配列番号56)およびGCW28-R(配列番号57)を用いてGCW28アンカーリング領域、プライマー対GCW30-F(配列番号58)およびGCW30-R(配列番号59)を用いてGCW30アンカーリング領域、プライマー対GCW34-F(配列番号60)およびGCW34-R(配列番号61)を用いてGCW34アンカーリング領域、プライマー対GCW42-F(配列番号62)およびGCW42-R(配列番号63)を用いてGCW42アンカーリング領域、プライマー対GCW45-F(配列番号64)およびGCW45-R(配列番号65)を用いてGCW45アンカーリング領域、プライマー対GCW49-F(配列番号66)およびGCW49-R(配列番号67)を用いてGCW49アンカーリング領域、プライマー対GCW51-F(配列番号68)およびGCW51-R(配列番号69)を用いてGCW51アンカーリング領域、プライマー対GCW61-F(配列番号70)およびGCW61-R(配列番号71)を用いてGCW61アンカーリング領域を含むDNA断片を増幅し、それぞれ調製した。これらのDNA断片をXhoIおよびMluIで処理したプラスミドpIEG-PpGMSed1にIn-Fusion法によりそれぞれ連結し、得られた発現カセットX2〜X14を含むプラスミドをそれぞれpIEG-PpGMG5、pIEG-PpGMG12、pIEG-PpGMG14、pIEG-PpGMG19、pIEG-PpGMG21、pIEG-PpGMG28、pIEG-PpGMG30、pIEG-PpGMG34、pIEG-PpGMG42、 pIEG-PpGMG45、pIEG-PpGMG49、pIEG-PpGMG51、およびpIEG-PpGMG61と命名した。
ピキア・パストリス由来のSPI1(GCW14)プロモーターおよびSPI1(GCW14)分泌シグナルを含むDNA断片を、PCR法により、ピキア・パストリスCBS7435株ゲノムを鋳型とし、プライマー対SPI1p-F(配列番号72)およびSPI1s-R(配列番号73)を用いて増幅することにより調製した。次に、pIEG-PpGMSed1を鋳型とし、プライマー対EGII-NheI-SPI1s-F(配列番号74)およびScSED1a-AOX1t-R(配列番号75)を用いて増幅し、TrEGIIおよびScSED1アンカーリング領域を含むDNA断片を調製した。これらの断片を、ベクタープラスミドpPGP_EGFPを鋳型とし、プライマー対AOX1t-F(配列番号44)およびVector-SPI1p-R(配列番号76)を用いて増幅した断片と、In-Fusion法により連結した。得られた発現カセットX15を含むプラスミドをpIEG-PpSSSed1と命名した。
PCR法により、ピキア・パストリスCBS7435株ゲノムを鋳型とし、プライマー対GCW30-F2(配列番号77)およびGCW30-R2(配列番号78)を用いてGCW30アンカーリング領域、プライマー対GCW34-F2(配列番号79)およびGCW34-R2(配列番号80)を用いてGCW34アンカーリング領域、プライマー対GCW51-F2(配列番号81)およびGCW51-R2(配列番号82)を用いてGCW51アンカーリング領域、プライマー対GCW61-F2(配列番号83)およびGCW61-R2(配列番号84)を用いてGCW61アンカーリング領域を含むDNA断片を増幅し、それぞれ調製した。これらのDNA断片をXhoIおよびMluIで処理したプラスミドpIEG-PpSSSed1を鋳型とし、プライマー対AOX1t-F(配列番号44)およびEGII-XhoI-R(配列番号85)を用いて増幅した断片と、In-Fusion法により連結した。得られた発現カセットX16〜X19を含むプラスミドをそれぞれpIEG-PpSSG30、pIEG-PpSSG34、pIEG-PpSSG51、およびpIEG-PpSSG61と命名した。
(1−2:アスペルギルス・アクレアタス由来β−グルコシダーゼ1(AaBGL1)発現カセットを含有するベクタープラスミドの調製)
プラスミドpIBG-SS(サッカロマイセス・セレビシエ由来SED1プロモーター、リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼの分泌シグナルペプチド配列、アスペルギルス・アクレアタス由来β−グルコシダーゼ1(AaBGL1)遺伝子のコーディング領域、サッカロマイセス・セレビシエ由来SED1遺伝子のコーディング領域(ScSED1アンカーリング領域)、およびα−アグルチニン遺伝子のコーディング領域下流445bpのターミネーター領域がこの順に配置されているカセットを有する表層発現用ベクター:Biotechnology for Biofuels, Vol.7, 2014, 8)を鋳型とし、プライマー対BGL1-NheI-F(配列番号86)およびBGL1-XhoI-R(配列番号87)を用いてPCR法により増幅し、AaBGL1のコーディング領域を含むDNA断片を調製した。この断片をNheIおよびXhoIで処理し、同様にNheIおよびXhoIで処理したプラスミドpIEG-PpSSSed1、pIEG-PpSSG30、pIEG-PpSSG34、pIEG-PpSSG51、およびpIEG-PpSSG61にライゲーション法によりそれぞれ連結した。得られた発現カセットX20〜X24を含むプラスミドをそれぞれpIBG-PpSSSed1、pIBG-PpSSG30、pIBG-PpSSG34、pIBG-PpSSG51、およびpIBG-PpSSG61と命名した。
(1−3:タラロマイセス・エメルソニ由来セロビオヒドロラーゼ1(TeCBH1)発現カセットを含有するベクタープラスミドの調製)
プラスミドpIU5-CBH1D(サッカロマイセス・セレビシエ由来SED1プロモーター、タラロマイセス・エメルソニ由来セロビオヒドロラーゼ1(TeCBH1)遺伝子のコーディング領域、サッカロマイセス・セレビシエ由来SED1遺伝子のコーディング領域(ScSED1アンカーリング領域)、およびα−アグルチニン遺伝子のコーディング領域下流445bpのターミネーター領域がこの順に配置されているカセットを有する表層発現用ベクター:Biotechnology for Biofuels, Vol.8, 2015, 162)を鋳型とし、プライマー対CBH1-NheI-F(配列番号88)およびCBH1-XhoI-R(配列番号89)を用いてPCR法により増幅し、TeCBH1遺伝子のコーディング領域を含むDNA断片を調製した。この断片をNheIおよびXhoIで処理し、同様にNheIおよびXhoIで処理したプラスミドpIEG-PpSSSed1、pIEG-PpSSG30、pIEG-PpSSG34、pIEG-PpSSG51、およびpIEG-PpSSG61にライゲーション法によりそれぞれ連結した。得られた発現カセットX25〜X29を含むプラスミドをそれぞれpICBH1-PpSSSed1、pICBH1-PpSSG30、pICBH1-PpSSG34、pICBH1-PpSSG51、およびpICBH1-PpSSG61と命名した。
(調製例2:細胞表層発現酵母の調製)
以下、各種細胞表層発現酵母の調製手順について説明する。
(2−1:ピキア・パストリスを宿主とするトリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼII(TrEGII)表層提示株)
上記の1−1で調製したプラスミドpIEG-PpGMSed1、pIEG-PpGMG5、pIEG-PpGMG12、pIEG-PpGMG14、pIEG-PpGMG19、pIEG-PpGMG21、pIEG-PpGMG28、pIEG-PpGMG30、pIEG-PpGMG34、pIEG-PpGMG42、pIEG-PpGMG45、pIEG-PpGMG49、pIEG-PpGMG51、pIEG-PpGMG61、およびpIEG-PpSSG34をEcoRVで処理し、それぞれ酵母ピキア・パストリスCBS7435株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、抗生物質G418(500μg/mL)を含むYPD培地にて選択を行うことで、形質転換株を獲得した。これらの形質転換株をそれぞれEG-PpGMSed1株、EG-PpGMG5株、EG-PpGMG12株、EG-PpGMG14株、EG-PpGMG19株、EG-PpGMG21株、EG-PpGMG28株、EG-PpGMG30株、EG-PpGMG34株、EG-PpGMG42株、EG-PpGMG45株、EG-PpGMG49株、EG-PpGMG51株、EG-PpGMG61株、およびEG-PpSSG34株と称する。
(2−2:ピキア・パストリスを宿主とするアスペルギルス・アクレアタス由来β−グルコシダーゼ1(AaBGL1)表層提示株)
上記の1−2で調製したプラスミドpIBG-PpSSSed1、pIBG-PpSSG30、pIBG-PpSSG34、pIBG-PpSSG51、およびpIBG-PpSSG61をEcoRVで処理し、それぞれ酵母ピキア・パストリスCBS7435株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、抗生物質G418(500μg/mL)を含むYPD培地にて選択を行うことで、形質転換株を獲得した。これらの形質転換株をそれぞれBG-PpSSSed1株、BG-PpSSG30株、BG-PpSSG34株、BG-PpSSG51株、およびBG-PpSSG61株と称する。
(4−3:ピキア・パストリスを宿主とするタラロマイセス・エメルソニ由来セロビオヒドロラーゼ1(TeCBH1)表層提示株)
上記の1−3で調製したプラスミドpICBH1-PpSSSed1、pICBH1-PpSSG30、pICBH1-PpSSG34、pICBH1-PpSSG51、およびpICBH1-PpSSG61をEcoRVで処理し、それぞれ酵母ピキア・パストリスCBS7435株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、抗生物質G418(500μg/mL)を含むYPD培地にて選択を行うことで、形質転換株を獲得した。これらの形質転換株をそれぞれCBH1-PpSSSed1株、CBH1-PpSSG30株、CBH1-PpSSG34株、CBH1-PpSSG51株、およびCBH1-PpSSG61株と称する。
(実施例2:エンドグルカナーゼ(EG)細胞表層提示)
本実施例では、ピキア・パストリスを宿主として発現カセットX1〜X14のいずれかを含むプラスミドを導入して得られた各種細胞表層提示形質転換酵母について、細胞表層のエンドグルカナーゼ(EG)活性を測定した。
この結果を図1に示す。図1の縦軸は、EG比活性であり、発現カセットX1(ScSED1をGPIアンカーリング領域として使用)を含むプラスミドを導入して得られた細胞表層提示形質転換酵母のEG活性の平均値を1.0とした場合の相対値として示す。図1の横軸には発現カセットに用いたGPIアンカーリング領域を示す。
図1に示されるように、X1〜X14のいずれの発現カセットの場合でも細胞表層EG活性を示すことが観察された。ピキア・パストリス由来GPIアンカーリング領域(GCW)の細胞表層EG活性は、GPIアンカーリング領域として従来用いられたScSED1より高いかまたはほぼ同等の活性であった。GCW5、12、19、21、30、34、42、45、51および61では、1.0を超えるEG比活性が観察された。GCW30またはGCW34をGPIアンカーリング領域として用いた場合に、特に高い細胞表層EG活性が観察された。
(実施例3:細胞表層のエンドグルカナーゼ(EG)活性に対するプロモーター、分泌シグナルの影響)
本実施例では、ピキア・パストリスを宿主として、GCW34をGPIアンカーリング領域として使用した発現カセットX9またはX17を含むプラスミドを導入して得られた各種細胞表層提示形質転換酵母について、細胞表層のエンドグルカナーゼ(EG)活性を測定した。
この結果を図2に示す。図2の縦軸は、EG比活性であり、発現カセットX9(PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナルを使用)を含むプラスミドを導入して得られた細胞表層提示形質転換酵母のEG活性の平均値を1.0とした場合の相対値として示す。図2の横軸には発現カセットに用いたプロモーターと分泌シグナルを示す。
図2に示されるように、X9(PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナルを使用)またはX17(PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナルを使用)のいずれの発現カセットの場合でも細胞表層EG活性を示すことが観察された。また、PpSPI1プロモーター+PpSPI1分泌シグナルを用いた場合には、PpGAP1プロモーター+MFα分泌シグナルを用いた場合に比べて2倍以上の細胞表層EG活性が観察された。
(実施例4:β−グルコシダーゼ(BGL)細胞表層提示)
本実施例では、ピキア・パストリスを宿主として発現カセットX20〜X24のいずれかを含むプラスミドを導入して得られた各種細胞表層提示形質転換酵母について、細胞表層のβ−グルコシダーゼ(BGL)活性を測定した。
この結果を図3に示す。図3の縦軸は、BGL活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(「U/g乾燥菌体重量」)を示す。図3の横軸には発現カセットに用いたGPIアンカーリング領域を示す。
図3に示されるように、X20〜X24のいずれの発現カセットの場合でも細胞表層BGL活性を示すことが観察された。また、ピキア・パストリス由来GPIアンカーリング領域(GCW30、34、51および61)の細胞表層BGL活性は、GPIアンカーリング領域として従来用いられたScSED1より高い活性であり、GCW61をGPIアンカーリング領域として用いた場合に、最も高い細胞表層BGL活性が観察された。
(実施例5:セロビオヒドロラーゼ1(CBH1)細胞表層提示)
本実施例では、ピキア・パストリスを宿主として発現カセットX25〜X29のいずれかを含むプラスミドを導入して得られた各種細胞表層提示形質転換酵母について、細胞表層のセロビオヒドロラーゼ1(CBH1)活性を測定した。
この結果を図4に示す。図4の縦軸は、CBH1活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(「U/g乾燥菌体重量」)を示す。図4の横軸には発現カセットに用いたGPIアンカーリング領域を示す。
図4に示されるように、X25〜X29のいずれの発現カセットの場合でも細胞表層CBH1活性を示すことが観察された。また、ピキア・パストリス由来GPIアンカーリング領域(GCW30、34、51および61)の細胞表層CBH1活性は、GPIアンカーリング領域として従来用いられたScSED1より高い活性であった。一方で、GCW30、GCW34、GCW51およびGCW61の間で、細胞表層CBH1活性に有意な差は見られなかった。
本発明は、セルロース系バイオマスからの燃料または化学品の製造に有用である。

Claims (8)

  1. セルラーゼを細胞表層発現する形質転換酵母であって、
    ピキア・パストリスの細胞に、該セルラーゼをコードするDNAおよびアンカーリング領域をコードするDNAを含むポリヌクレオチドを導入して得られ、
    該アンカーリング領域が、GCW5、GCW12、SPI1(GCW14)、GCW19、GCW21、GCW28、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW49、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む、
    形質転換酵母。
  2. 前記セルラーゼがエンドグルカナーゼ、β−グルコシダーゼまたはセロビオヒドロラーゼである、請求項1に記載の形質転換酵母。
  3. 前記セルラーゼがエンドグルカナーゼであり、かつ前記アンカーリング領域が、GCW5、GCW12、GCW19、GCW21、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む、請求項2に記載の形質転換酵母。
  4. 上記セルラーゼがエンドグルカナーゼであり、かつ前記アンカーリング領域が、GCW30およびGCW34からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む、請求項3に記載の形質転換酵母。
  5. 前記セルラーゼがβ−グルコシダーゼであり、かつ前記アンカーリング領域が、GCW30、GCW34、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む、請求項2に記載の形質転換酵母。
  6. 前記セルラーゼがセロビオヒドロラーゼであり、かつ前記アンカーリング領域が、GCW30、GCW34、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む、請求項2に記載の形質転換酵母。
  7. セルラーゼを細胞表層発現する形質転換酵母の製造方法であって、
    ピキア・パストリスの細胞に、該セルラーゼをコードするDNAおよびアンカーリング領域をコードするDNAを含むポリヌクレオチドを導入する工程を含み、
    該アンカーリング領域が、GCW5、GCW12、SPI1(GCW14)、GCW19、GCW21、GCW28、GCW30、GCW34、GCW42、GCW45、GCW49、GCW51およびGCW61からなる群から選択される少なくとも1つのピキア・パストリス由来細胞壁タンパク質を含む、
    方法。
  8. 請求項1から6のいずれかに記載の形質転換酵母を含む、セルラーゼ剤。
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