JP4731091B2 - 放射線画像変換パネル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネル及びその製造方法に関し、詳しくは蒸着法により形成された輝尽性蛍光体層と支持体との接着性の向上した放射線画像変換パネル及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線画像のような放射線画像は、病気診断用等の分野で多く用いられている。このX線画像を得る方法としては、被写体を通過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせた後、この可視光を通常の写真を撮るときと同様にして、ハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)に照射し、次いで現像処理を施して可視銀画像を得る、いわゆる放射線写真方式が広く利用されている。
【0003】
しかしながら、近年では、ハロゲン化銀塩を有する感光材料による画像形成方法に代わり、蛍光体層から直接画像を取り出す新たな方法が提案されている。
【0004】
この方法としては被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体を例えば光または熱エネルギーで励起することによりこの蛍光体が上記吸収により蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出し画像化する方法がある。
【0005】
具体的には、例えば、米国特許第3,859,527号及び特開昭55−12144号等に記載されているような輝尽性蛍光体を用いる放射線画像変換方法が知られている。
【0006】
この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線画像変換パネルを使用するもので、この放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線を当てて、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを蓄積させて、その後、輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線等の電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号を、例えば、光電変換して、電気信号を得て、この信号をハロゲン化銀写真感光材料等の記録材料、CRT等の表示装置上に可視像として再生するものである。
【0007】
上記の放射線画像の再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せによる放射線写真法と比較して、はるかに少ない被曝線量で、かつ情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点を有している。
【0008】
このように輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用的には、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。
【0009】
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ、繰り返し使用が可能である。つまり従来の放射線写真法では、一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法では放射線画像変換パネルを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0010】
放射線画像変換パネルを使用した放射線画像変換方式の優劣は、放射線画像変換パネルの輝尽性発光輝度及びパネルの発光均一性に大きく左右され、特に、これらの特性は用いる輝尽性蛍光体の特性が大きく支配されていることが知られている。
【0011】
また、さまざま条件下で用いられる放射線画像変換パネルにおいて、支持体と蛍光体層との接着性が重要な特性の1つであり、特公平4−44959号では支持体と蛍光体層間に架橋剤を含有する下引き層を設ける方法が開示されているが、単に下引き層を設けるだけでは、その上に塗設される蛍光体層の乾燥過程で、蛍光体層に含まれる溶剤の拡散により、下引き層が溶解したり、あるいは変形により蛍光体層の面質が不均一となり、画像ムラを招く結果となる。
【0012】
また、蛍光体シートの製造過程において、支持体上に下引き層を形成後、一旦ロール状に積層した状態で巻き取ったり、あるいは規定のサイズのシート状とし、それらを積層して保存させる場合、積層された状態で一定期間保存されると下引き層と上部の支持体裏面とでブロッキング現象を起こし、接着してしまう故障がしばしば発生する。
【0013】
このように、放射線画像変換パネルにおいては、支持体との接着性が改良された放射線画像変換パネルの開発が切望されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の問題を解消するためになされたものであり、蒸着法により形成された輝尽性蛍光体層と支持体との接着性の向上した放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、下記の構成により解決することができる。
【0016】
1.支持体上に膜厚50μm以上の輝尽性蛍光体層を蒸着法により形成する放射線画像変換パネルの製造方法において、該輝尽性蛍光体層が母体と賦活剤を、該支持体と蒸着源の距離を10〜60cmとして蒸着することにより形成され、調圧ガスの流量を0.001〜1000sccm:sccm:standard cc/min(1×10 −6 m 3 /min))とすることで、排気装置、調圧ガス導入装置及び調圧ガス流量調節装置を有し、蒸着装置内の真空度を1.33×10 −2 〜1.33Paとすることができる蒸着装置を用い、真空ポンプを用いて排気しながら、調圧ガスを調圧ガス流量調節装置を経てガス導入部から導入し、調圧ガスの流量を0.001〜1000sccm:sccm:standard cc/min(1×10 −6 m 3 /min))の範囲で調整して、該蒸着装置内の真空度を1.33×10 −2 〜1.33Paに調圧して蒸着し、かつ該輝尽性蛍光体層に含まれる蛍光体が下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を含有する柱状結晶を有することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
一般式(2)
CsX:yA
〔式中、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、TbまたはCeを表す。yは1×10 −7 〜1×10 −2 までの数値を表す。〕
【0017】
2.調圧ガスが窒素またはアルゴンであることを特徴とする上記1記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0018】
3.輝尽性蛍光体層が、前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする上記1または2記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0019】
4.前記一般式(1)におけるM1がK、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であることを特徴とする上記3記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0020】
5.前記一般式(1)におけるXがBr及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲンであることを特徴とする上記3または4記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0021】
6.前記一般式(1)におけるM2がBe、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種の2価金属であることを特徴とする上記3〜5のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0022】
7.前記一般式(1)におけるM3がY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属であることを特徴とする上記3〜6のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0023】
8.前記一般式(1)におけるbが0≦b≦10-2であることを特徴とする上記3〜7のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0024】
9.前記一般式(1)におけるAが、Eu、Ce、Sm、Tl及びNaからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする上記3〜8のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0025】
10.輝尽性蛍光体層に含まれる輝尽性蛍光体が柱状結晶を含有することを特徴とする上記1〜9のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0026】
11.柱状結晶が前記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする上記10記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0027】
12.上記1〜11のいずれか1項に記載の製造方法で製造されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0028】
本発明者は、支持体上に膜厚50μm以上の輝尽性蛍光体層を蒸着法により形成する放射線画像変換パネルの製造方法において、該輝尽性蛍光体層が母体と賦活剤を、該支持体と蒸着源の距離を10〜60cmとして蒸着することにより形成され、調圧ガスの流量を0.001〜1000sccm:sccm:standard cc/min(1×10 −6 m 3 /min))とすることで、排気装置、調圧ガス導入装置及び調圧ガス流量調節装置を有し、蒸着装置内の真空度を1.33×10 −2 〜1.33Paとすることができる蒸着装置を用い、真空ポンプを用いて排気しながら、調圧ガスを調圧ガス流量調節装置を経てガス導入部から導入し、調圧ガスの流量を0.001〜1000sccm:sccm:standard cc/min(1×10 −6 m 3 /min))の範囲で調整して、該蒸着装置内の真空度を1.33×10 −2 〜1.33Paに調圧して蒸着し、かつ該輝尽性蛍光体層に含まれる蛍光体が上記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を含有する柱状結晶を有することにより、感度及び鮮鋭性の劣化をほとんど引き起こすことなく、輝尽性蛍光体と支持体との接着性が改良されることを見出した。
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
はじめに、気相堆積法による輝尽性蛍光体層の形成について説明する。
【0030】
輝尽性蛍光体を気相堆積させる方法としては蒸着法、スパッタ法及びCVD法等がある。
【0031】
蒸着法は、支持体を蒸着装置内に設置し、装置内を排気して一旦1.33×10−4Pa程度の真空とした後、調圧ガスを導入して蒸着装置内の真空度を1.33×10−2〜1.33Pa程度の真空とし、次いで、輝尽性蛍光体の母体と賦活剤を抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて支持体表面に輝尽性蛍光体層を所望の厚みに堆積させる。この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成される。
【0032】
スパッタ法は、前記蒸着法と同様に支持体をスパッタ装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.33×10-4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタ用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスを装置内に導入して1.33×10-1Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより支持体表面に輝尽性蛍光体層を所望の厚さに堆積させる。
【0033】
スパッタ法では、複数の輝尽性蛍光体原料をターゲットとして用い、これを同時または順次スパッタリングして、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体層を形成するものであり、必要に応じてO2、H2等のガスを導入して反応性スパッタを行ってもよい。更に、スパッタ法においては、スパッタ時必要に応じて被蒸着物を冷却または加熱してもよい。また、スパッタ終了後に輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0034】
CVD法は、目的とする輝尽性蛍光体または輝尽性蛍光体原料を含有する有機金属化合物を熱、高周波電力等のエネルギーで分解することにより、支持体上に結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層を得るものであり、いずれも輝尽性蛍光体層を支持体の法線方向に対して特定の傾きをもって独立した細長い結晶に気相成長させることが可能である。
【0035】
本発明においては、蒸着法により輝尽性蛍光体層を形成するが、複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することもできる。
【0036】
本発明においては、蒸着法が用いられる。以下、蒸着法による輝尽性蛍光体層の形成について詳しく説明する。なお、以下においては柱状結晶を成長させる場合について説明する。
【0037】
蒸着法によって輝尽性蛍光体層を形成する方法としては、該輝尽性蛍光体層が母体と賦活剤を、該支持体と蒸着源の距離を10〜60cmとして蒸着することにより形成され、調圧ガスの流量を0.001〜1000sccm:sccm:standard cc/min(1×10 −6 m 3 /min))とすることで、排気装置、調圧ガス導入装置及び調圧ガス流量調節装置を有し、蒸着装置内の真空度を1.33×10 −2 〜1.33Paとすることができる蒸着装置を用い、真空ポンプを用いて排気しながら、調圧ガスを調圧ガス流量調節装置を経てガス導入部から導入し、調圧ガスの流量を0.001〜1000sccm:sccm:standard cc/min(1×10 −6 m 3 /min))の範囲で調整して、該蒸着装置内の真空度を1.33×10 −2 〜1.33Paに調圧して、支持体上にある入射角で輝尽性蛍光体及び賦活剤の蒸気または原料を供給し、結晶を気相成長させる方法によって独立した細長い柱状結晶構造を有する輝尽性蛍光体層を得ることができる。
【0038】
真空度を1.33×10-2〜1.33Paになるようにする調圧ガスの流量は0.001〜1000sccmであることが必要である。調圧ガスの流量が1000sccmを越えると、ガスの流れにより蒸気流が乱れ蛍光体の成長に悪影響を与える。また、調圧ガスの流量が0.001sccm未満では付着性低下が発生する。
【0039】
真空度の調整に用いる調圧ガスは窒素またはアルゴンが好ましい。
輝尽性蛍光体または輝尽性蛍光体原料の蒸気流を支持体面に対しある入射角をつけて供給する方法には、支持体を蒸発源を仕込んだ坩堝に対し互いに傾斜させる配置を取る、または、支持体と坩堝を互いに平行に設置し、蒸発源を仕込んだ坩堝の蒸発面からスリット等により斜め成分のみ支持体上に蒸着させるよう規制する等の方法を採ることができる。
【0040】
これらの場合において、支持体と坩堝との最短部の間隔は輝尽性蛍光体の平均飛程に合わせて概ね10〜60cmに設置するのが好ましい。
【0041】
これらの柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層において変調伝達関数(MTF)をよくするためには、柱状結晶の大きさ(柱状結晶を支持体と平行な面から観察したときの各柱状結晶の断面積の円換算した直径の平均値であり、少なくとも100個以上の柱状結晶を視野中に含む顕微鏡写真から計算する)は1〜50μm程度がよく、更に好ましくは1〜30μmである。即ち、柱状結晶が1μmより細い場合は、柱状結晶により輝尽励起光が散乱されるためにMTFが低下するし、柱状結晶が50μmを越える場合も輝尽励起光の指向性が低下し、MTFは低下する。
【0042】
また各柱状結晶間の間隙の大きさは30μm以下がよく、更に好ましくは5μm以下がよい。即ち、間隙が30μmを越える場合は蛍光体層中の蛍光体の充填率が低くなり、感度が低下してしまう。
【0043】
上記方法により形成した輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線画像変換パネルの放射線に対する感度、輝尽性蛍光体の種類等によって異なるが、10〜1000μmが好ましく、更に好ましくは20〜800μmである。
【0044】
また、上記蒸着法を用いて輝尽性蛍光体層の作製時、蒸発源となる輝尽性蛍光体の母体と賦活剤は、均一に溶解させるか、プレス、ホットプレスによって成形して坩堝に仕込まれる。この際、脱ガス処理を行うことが好ましい。蒸発源から輝尽性蛍光体の母体と賦活剤を蒸発させる方法は電子銃により発した電子ビームの走査により行われるが、これ以外の方法で蒸発させることもできる。
【0045】
また、蒸発源は必ずしも輝尽性蛍光体である必要はなく、輝尽性蛍光体原料を混和したものであってもよい。
【0046】
また、賦活剤は母体(basic substance)に対して賦活剤(actibator)を混合したものを蒸着してもよい。
【0048】
また、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となる。また高光吸収率の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい。これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散をほぼ完全に防止できる。
【0049】
高光反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高いものをいい、例えばアルミニウム、マグネシウム、銀、インジウムその他の金属等、白色顔料及び緑色から赤色領域の色材を用いることができる。
【0050】
白色顔料は輝尽発光も反射することができる。白色顔料として、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al2O3、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの中の少なくとも1種であり、XはCl、及びBrのうちの少なくとも1種である。)、CaCO3、ZnO、Sb2O3、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸鉛、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウム等が挙げられる。これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させ得る。
【0051】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボン、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄等及び青の色材が用いられる。このうちカーボンは輝尽発光も吸収する。
【0052】
また、色材は、有機または無機系色材のいずれでもよい。有機系色材としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。またカラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材も挙げられる。無機系色材としては群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系顔料が挙げられる。
【0053】
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体としては、各種のガラス、高分子材料、金属等が用いられるが、例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラス等の板ガラス、また、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シートまたは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。これら支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0054】
また、本発明においては、支持体と輝尽性蛍光体層の接着性を向上させるために、必要に応じて支持体の表面に予め接着層を設けてもよい。これら支持体の厚みは用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜2000μmであり、取り扱い上の観点から更に好ましいのは80〜1000μmである。
【0055】
本発明に係る放射線画像変換パネルは輝尽性蛍光体層の上に保護層を有していてもよい。
【0056】
保護層は、保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、あらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。あるいは別途形成した保護層上に輝尽性蛍光体層を形成する手順を取ってもよい。保護層の材料としては酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の通常の保護層用材料が用いられる。他に透明なガラス基板を保護層として用いることもできる。また、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2、SiN、Al2O3等の無機物質を積層して形成してもよい。これらの保護層の層厚は一般的には0.1〜2000μm程度が好ましい。
【0057】
蒸着法に用いることのできる輝尽性蛍光体としては、例えば、特開昭48−80487号に記載されているBaSO4:Axで表される蛍光体、特開昭48−80488号記載のMgSO4:Axで表される蛍光体、特開昭48−80489号に記載されているSrSO4:Axで表される蛍光体、特開昭51−29889号に記載されているNa2SO4、CaSO4及びBaSO4等にMn、Dy及びTbの中少なくとも1種を添加した蛍光体、特開昭52−30487号に記載されているBeO、LiF、MgSO4及びCaF2等の蛍光体、特開昭53−39277号に記載されているLi2B4O7:Cu,Ag等の蛍光体、特開昭54−47883号に記載されているLi2O・(Be2O2)x:Cu,Ag等の蛍光体、米国特許第3,859,527号に記載されているSrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、La2O2S:Eu,Sm及び(Zn,Cd)S:Mnxで表される蛍光体が挙げられる。また、特開昭55−12142号に記載されているZnS:Cu,Pb蛍光体、一般式がBaO・xAl2O3:Euで挙げられるアルミン酸バリウム蛍光体、及び、一般式がM(II)O・xSiO2:Aで表されるアルカリ土類金属珪酸塩系蛍光体が挙げられる。
【0058】
また、特開昭55−12143号に記載されている一般式が(Ba1-xーyMgxCay)Fx:Eu2+で表されるアルカリ土類フッ化ハロゲン化物蛍光体、特開昭55−12144号に記載されている一般式がLnOX:xAで表される蛍光体、特開昭55−12145号に記載されている一般式が(Ba1-xM(II)x)Fx:yAで表される蛍光体、特開昭55−84389号に記載されている一般式がBaFX:xCe,yAで表される蛍光体、特開昭55−160078号に記載されている一般式がM(II)FX・xA:yLnで表される希土類元素賦活2価金属フルオロハライド蛍光体、一般式ZnS:A、CdS:A、(Zn,Cd)S:A,Xで表される蛍光体、特開昭59−38278号に記載されている下記いずれかの一般式
xM3(PO4)2・NX2:yA
xM3(PO4)2:yA
で表される蛍光体、特開昭59−155487号に記載されている下記いずれかの一般式
nReX3・mAX′2:xEu
nReX3・mAX′2:xEu,ySm
で表される蛍光体、特開昭61−72087号に記載されている下記一般式
M(I)X・aM(II)X′2・bM(III)X″3:cA
で表されるアルカリハライド蛍光体、及び特開昭61−228400号に記載されている一般式M(I)X:xBiで表されるビスマス賦活アルカリハライド蛍光体等が挙げられる。特に、アルカリハライド蛍光体は、蒸着、スパッタリング等の方法で柱状の輝尽性蛍光体層を形成させやすく好ましい。
【0061】
また、本発明においては、輝尽性蛍光体が柱状結晶を有することが好ましく、柱状結晶が、主成分として下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を有することが好ましい。
【0062】
一般式(2)
CsX:yA
一般式(2)において、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、TbまたはCeを表す。yは1×10-7〜1×10-2までの数値を表す。
【0063】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図をもって説明する。
【0064】
図1は輝尽性蛍光体プレートの断面図である。10は支持体、11は輝尽性蛍光体層であり、柱状結晶を示している。なお、12は柱状結晶間に形成された間隙を示している。
【0065】
図2は支持体上に輝尽性蛍光体層を蒸着により形成する様子を示す図である。輝尽性蛍光体蒸気流Vを支持体面の法線方向に入射すると、支持体面の法線方向に垂直な柱状結晶が形成される。輝尽性蛍光体蒸気流Vの支持体面の法線方向に対する入射角度をθ2とすると、形成される柱状結晶の支持体面の法線方向に対する角度はθ1で表され、この角度で柱状結晶が形成される。本発明においては0≦θ1、θ2≦20の垂直な柱状結晶が好ましい。
【0066】
図3は、本発明の放射線画像変換パネルの使用例を示す概略図である。
図3において21は放射線発生装置、22は被写体、23は輝尽性蛍光体を含有する可視光ないし赤外光輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネル、24は放射線画像変換パネル23の放射線潜像を輝尽発光として放出させるための輝尽励起光源、25は放射線画像変換パネル23より放出された輝尽発光を検出する光電変換装置、26は光電変換装置25で検出された光電変換信号を画像として再生する装置、27は再生された画像を表示する装置、28は光源24からの反射光をカットし、放射線画像変換パネル23より放出された光のみを透過させるためのフィルタである。なお、図3は被写体の放射線透過像を得る場合の例であるが、被写体22自体が放射線を放射する場合には、放射線発生装置21は特に必要ない。また、光電変換装置25以降は放射線画像変換パネル23からの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、前記に限定されない。
【0067】
輝尽励起光源24としては、放射線画像変換パネル23に使用される輝尽性蛍光体の輝尽励起波長を含む光源が使用される。特にレーザ光を用いると光学系が簡単になり、また、輝尽励起光強度を大きくすることができるために輝尽発光効率を上げることができ、より好ましい結果が得られる。
【0068】
レーザとしては、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe−NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることもできる。また、フィルタ28を用いずに特開昭59−22046号に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法によるときは、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。
【0069】
上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0071】
実施例1
以下の方法に従って、蒸着型蛍光体層を有する蛍光体プレートを作製した。
【0072】
(支持体の作製)
500μm厚の透明結晶化ガラスの表面に、酸化チタン(フルウチ化学社製)と酸化ジルコニウム(フルウチ化学社製)を用い、400nmでの反射率が85%、660nmでの反射率が20%となるように、蒸着装置を用いて膜形成を行い、光反射層を有するガラス支持体を作製した。
【0073】
(蛍光体プレート11の作製)
図4は蒸着装置の概略図である。上記支持体を図4に示す蒸着装置の真空チャンバ中に設置し、加熱ランプ(図示せず)を用いて120℃に加熱した。その後、真空ポンプを用いて排気しながら、窒素ガスを調圧ガス流量調節装置(図示せず)を経てガス導入部から1000sccmの流量で導入して真空度を1.33Paとし、支持体の一方の面に、CsBr:0.0001Euからなるアルカリハライド蛍光体を支持体表面の法線方向から、アルミニウム製のスリットを用いて、支持体と蒸発源の距離を60cmとして、支持体と平行な方向に支持体を搬送しながら蒸着を行ない、400μm厚の柱状結晶構造を有する蛍光体層を形成し、蛍光体プレート11を作製した。
【0074】
(蛍光体プレート12〜18の作製)
真空度及び調圧用の窒素ガス流量を表1のように変えた以外は蛍光体プレート11と同様にして蛍光体プレート12〜18を作製した。
【0075】
得られた各蛍光体プレートの蛍光体層と支持体ガラスとの接着性を下記の方法で評価した。
【0076】
(接着性の評価)
上記作製した各蛍光体プレート11〜18の蛍光体層塗設面に接着テープを張り付け、テープをはがしたときに蛍光体層が支持体に付着した面積%を測定し、以下に示す基準により接着性の評価を行った。評価の結果を表1に示す。
【0077】
5:蛍光体層が支持体に付着した面積が100%
4:蛍光体層が支持体に付着した面積が80%以上100%未満
3:蛍光体層が支持体に付着した面積が60%以上80%未満
2:蛍光体層が支持体に付着した面積が40%以上60%未満
1:蛍光体層が支持体に付着した面積が20%以上40%未満
0:蛍光体層が支持体に付着した面積が20%未満
【0078】
【表1】
【0079】
表1から、真空度及び真空度調整用ガス流量が本発明の範囲内にある蛍光体プレートは接着性が良好であることが分かる。
【0080】
実施例2
以下の方法に従って、蒸着型蛍光体層を有する蛍光体プレート及び放射線画像変換パネルを作製した。
【0081】
(支持体の作製)
実施例1と同じガラス支持体を作製した。
【0082】
(蛍光体プレート21の作製)
上記支持体を図4に示す蒸着装置の真空チャンバ中に設置し、加熱ランプを用いて240℃に加熱した。その後、真空ポンプを用いて排気装置(図示せず)から排気しながら、窒素ガスを調圧ガス流量調節装置(図示せず)を経て調圧ガス導入装置(図示せず)から1sccmの流量で導入して真空度を0.133Paとし、支持体の一方の面に、CsBr:0.0001Euからなるアルカリハライド蛍光体を支持体表面の法線方向から、アルミニウム製のスリットを用いて、支持体と蒸発源の距離を60cmとして、支持体と平行な方向に支持体を搬送しながら蒸着を行ない、400μm厚の柱状構造を有する蛍光体層を形成し、蛍光体プレート21を作製した。
【0083】
(蛍光体プレート22、23の作製)
真空度調整用のガスの種類を表2のように変えた以外は蛍光体プレート21と同様にして蛍光体プレート22、23を作製した。
【0084】
得られた蛍光体プレートの蛍光体層と支持体ガラスとの接着性を実施例1と同様にして評価した。評価の結果を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
(放射線画像変換パネル21〜23の作製)
下記のようにして、上記作製した各蛍光体プレート21〜23を用い、それぞれ放射線画像変換パネル21〜23を作製した。
【0087】
上記蛍光体プレートの作製に用いたガラス支持体(光反射層を有しない)をガラス保護層として用い、上記作製した蛍光体プレートの側縁部にスペーサを介して、堆積した輝尽性蛍光体層の表面と保護層ガラス板との間に、低屈折率層として空気層が100μmの厚みになるように、ガラス製の保護層を設けた。なお、スペーサとしてはガラスセラミックス製で、ガラス支持体及び保護層ガラスの間に輝尽性蛍光体層及び低屈折率層(空気層)が所定の厚みとなるように厚みを調整したものを用い、ガラス支持体及びガラス製の保護層の側縁部は、エポキシ系接着剤を用いて接着し、各放射線画像変換パネルを作製した。
【0088】
上記作製した放射線画像変換パネルの感度について、下記のようにして評価した。評価の結果を表3に示す。
【0089】
(感度の評価)
各放射線画像変換パネルについて、管電圧80kVpのX線を蛍光体プレート支持体の裏面側から照射した後、パネルをHe−Neレーザー光(633nm)で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して、その強度を測定して、これを感度と定義し、放射線画像変換パネル23の感度を1.00とした相対値で表示した。
【0090】
【表3】
【0091】
【発明の効果】
本発明により、蒸着法により形成された輝尽性蛍光体層と支持体との接着性の向上した放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 輝尽性蛍光体プレートの断面図である。
【図2】 支持体上に輝尽性蛍光体層を蒸着により形成する様子を示す図である。
【図3】 本発明の放射線画像変換パネルの使用例を示す概略図である。
【図4】 蒸着装置の概略図である。
【符号の説明】
10 支持体
11 輝尽性蛍光体層
12 柱状結晶間に形成された間隙
21 放射線発生装置
22 被写体
23 放射線画像変換パネル
24 輝尽励起光源
25 光電変換装置
26 画像再生装置
27 画像表示装置
28 フィルタ
Claims (3)
- 支持体上に膜厚50μm以上の輝尽性蛍光体層を蒸着法により形成する放射線画像変換パネルの製造方法において、該輝尽性蛍光体層が母体と賦活剤を、該支持体と蒸着源の距離を10〜60cmとして蒸着することにより形成され、調圧ガスの流量を0.001〜1000sccm:sccm:standard cc/min(1×10 −6 m 3 /min))とすることで、排気装置、調圧ガス導入装置及び調圧ガス流量調節装置を有し、蒸着装置内の真空度を1.33×10 −2 〜1.33Paとすることができる蒸着装置を用い、真空ポンプを用いて排気しながら、調圧ガスを調圧ガス流量調節装置を経てガス導入部から導入し、調圧ガスの流量を0.001〜1000sccm:sccm:standard cc/min(1×10 −6 m 3 /min))の範囲で調整して、該蒸着装置内の真空度を1.33×10 −2 〜1.33Paに調圧して蒸着し、かつ該輝尽性蛍光体層に含まれる蛍光体が下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体を含有する柱状結晶を有することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
一般式(2)
CsX:yA
〔式中、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、TbまたはCeを表す。yは1×10 −7 〜1×10 −2 までの数値を表す。〕 - 調圧ガスが窒素またはアルゴンであることを特徴とする請求項1記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
- 請求項1または2記載の製造方法で製造されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
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