JP2004340913A - 放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】蛍光体層中の賦活剤の均一性に優れ、且つ、高輝度、高鮮鋭性である放射線像変換パネル及び放射線像変換パネルの製造方法の提供。
【解決手段】支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が気相法により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該輝尽性蛍光体層が高分子材料から形成される支持体上に蒸着されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が気相法により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該輝尽性蛍光体層が高分子材料から形成される支持体上に蒸着されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は放射線画像(以下、単に放射線像ともいう)変換パネル及び前記放射線画像変換パネルの製造方法(以下、単に製造方法ともいう)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、放射線画像を得るために銀塩を使用した、いわゆる放射線写真法が利用されているが、銀塩を使用しないで放射線像を画像化する方法が開発されている。即ち、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体をある種のエネルギーで励起してこの蛍光体が蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出して画像化する方法が開示されている。
【0003】
具体的な方法としては、支持体上に輝尽性蛍光体層を設けたパネルを用い、励起エネルギーとして可視光線及び赤外線の一方又は両方を用いる放射線像変換方法が知られている(米国特許第3,859,527号参照)。
【0004】
より高輝度、高感度の輝尽性蛍光体を用いた放射線像変換方法として、例えば特開昭59−75200号等に記載されているBaFX:Eu2+系(X:Cl、Br、I)蛍光体を用いた放射線像変換方法、同61−72087号等に記載されているようなアルカリハライド蛍光体を用いた放射線像変換方法、同61−73786号、同61−73787号等に記載のように、共賦活剤としてTl+及びCe3+、Sm3+、Eu3+、Y3+、Ag+、Mg2+、Pb2+、In3+の金属を含有するアルカリハライド蛍光体が開発されている。
【0005】
更に、近年診断画像の解析においてより高鮮鋭性の放射線像変換パネルが要求されている。鮮鋭性改善の為の手段として、例えば形成される輝尽性蛍光体の形状そのものをコントロールし感度及び鮮鋭性の改良を図る試みがされている。
【0006】
これらの試みの1つの方法として、例えば特開昭61−142497号等に記載されている微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0007】
また、特開昭61−142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して更に発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−39737号に記載されている支持体上に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−110200号に記載に記載されているように、支持体上に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている。
【0008】
更に、特開平2−58000号には、気相堆積法によって支持体上に、支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルが記載されている。
【0009】
これらの輝尽性蛍光体層の形状をコントロールする方法は、いずれも輝尽性蛍光体層を柱状とすることで、輝尽励起光又は輝尽発光の横方向への拡散を抑える(クラック(柱状結晶)界面において反射を繰り返しながら支持体面まで到達する)ことができるため、輝尽発光による画像の鮮鋭性を著しく増大させることができるという特徴がある。
【0010】
最近ではCsBrなどのハロゲン化アルカリを母体にEuを賦活した輝尽性蛍光体を用いた放射線像変換パネルが提案され、特にEuを賦活剤とすることで従来不可能であったX線変換効率を向上させることが可能となった。
【0011】
しかしながら、Euは熱による拡散が顕著であり、真空下における蒸気圧も高いために離散するなどにより母体中のEuの存在を遍在させる問題があり、目的とした高いX線変換効率を得ることが難しいため市場での実用化に至っていない。
【0012】
また、Eu等の希土類元素を用いて賦活させる技術においては真空下における蒸着膜形成に関して蒸気圧特性を制御するだけでは、良好な賦活剤の均一化を達成することは困難であった。(例えば、特許文献1、2、3を参照)
特にこれらの気相法(堆積)により形成した輝尽性蛍光体層を作製する際には、原料加熱、真空蒸着時の支持体の加熱、膜形成後のアニール(基板歪み緩和)処理等の加熱処理を多く施すため賦活剤の存在状態を不均一とする原因となっている。
【0013】
しかしながら、これらの加熱処理はいずれも輝尽性蛍光体層に耐久性を付与する上で必要不可欠なものであった。
【0014】
このため放射線像変換パネルとして市場から要求される輝度、鮮鋭性の改善、賦活剤の均一性についての改良が求められていた。
【0015】
【特許文献1】
特開2002−72381号公報
【0016】
【特許文献2】
特開2002−20742号公報
【0017】
【特許文献3】
特開2002−6092号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、蛍光体層中の賦活剤の均一性に優れ、且つ、高輝度、高鮮鋭性である放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0020】
1.支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該輝尽性蛍光体層が高分子材料から形成される支持体上に蒸着されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0021】
2.前記少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が、前記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする前記1に記載の放射線画像変換パネル。
【0022】
3.前記高分子材料から形成される支持体のTgが150〜350℃であることを特徴とする前記1又は2に記載の放射線画像変換パネル。
【0023】
4.前記支持体がポリイミド層、炭素繊維板層、ポリイミド層の順に構成されていることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0024】
5.前記1〜4の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が気相法により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成し、且つ、支持体を扇状(ドーム状)に配置し蒸着することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【0025】
以下、本発明を更に詳細に述べる。
高分子材料支持体
本発明は高分子材料を支持体に用いることで、支持体(基板)上の柱状結晶形成時における熱分布と放熱特性が均一化し、結果、先端径が細かく、柱状として大きくならない結晶を得ることができた。
【0026】
耐熱性の観点から支持体を張力維持したまま蒸着するには、高分子材料のTgは好ましくは150〜350℃である。
【0027】
ドーム状の高分子材料支持体(以下、基板ともいう)
熱影響を避け、熱分布を均一化するために蒸着源に対し、出射方向として20°以上に形成されたドーム状に基板(以下、支持体ともいう)ホルダーをもうけることで蛍光体層中の賦活剤を均一に蒸着することができ、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0028】
蛍光体層中の賦活剤を均一に蒸着することができるとは、蛍光体層中の支持体側と蛍光体表面側で賦活剤存在量が同じであることをいう。
【0029】
具体的には蛍光体層の支持体側と表面側での賦活剤存在量が±10%以内で一致することであり、確認方法としては、蛍光体層の賦活剤存在量は蛍光体層として約500ミクロン形成した蛍光体層の表面側を約100ミクロン削りとった試料と支持体側の蛍光体層を100ミクロンにした試料をそれぞれを純水にて溶解し、水溶液とする。この水溶液をICPにて分析して賦活剤量を算出し確認することができる。
【0030】
また、本発明の放射線画像変換パネルは2種以上の複数層を有する支持体から構成されることが好ましく、3種の複数層を有する支持体がより好ましい。
【0031】
即ち、本発明においては、X線吸収量の低い支持体で、且つ、平面性に優れた支持体を得るために、支持体を複数層にすることが好ましく、80kVpにてX線吸収量が10%未満となる薄膜シートを複数層形成させることがより好ましい。
【0032】
本発明に好ましく用いられる炭素繊維板を有する複数層の支持体は、剛性の高い炭素繊維板を蒸着時の面精度の高い薄膜シートを張り合わせる。
【0033】
薄膜シートとしては、例えばCu、Al、ステンレス等の金属の他、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのプラスチック材料も利用できる。
【0034】
本願の請求項4の発明は、ポリイミド/炭素繊維板/ポリイミドの順に構成した支持体であり、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0035】
ポリイミドは、例えば東レ−デュポン株式会社製ミクトロンフィルム、カプトンフィルムを利用でき、炭素繊維板に張り合わせ成形して基板を作製する。
【0036】
ポリイミドを基板表面に張り合わせるには基板上にポリイミド樹脂を接着層として用いミクトロン(ポリイミドシート)を貼り付ける方法、ポリイミドシートでサンドイッチして炭素繊維板をプレス成形する際に同時成形する方法などがある。
【0037】
1.貼り付ける方法
貼り付ける方法はポリイミドシートに接着層を塗布あるいは接着剤シートを貼り付けた後、炭素繊維板にポリイミドに貼り付ける。
【0038】
2.プレス成形方法
ポリイミドシート、目標の厚さとなるなるようにエポキシ樹脂あるいはビスマレイミド樹脂を含浸させた炭素繊維板を複数枚重ねてポリイミドでサンドイッチする。このシートを加圧、加熱成型器で成形温度150〜300℃、圧力9.8×105〜6.9×106Pa70kg/cm2、加圧時間15min〜3hr成形する。
【0039】
本願の実施例のポリイミド/炭素樹脂繊維板/ポリイミドの3層構成の支持体の作製は後者を用いて成形した。
【0040】
ポリイミドシートとしては基板表面の凹凸を
低減するために厚さ50ミクロン以上が好ましく、成形のハンドリングの観点からは200ミクロン以下のものが扱いやすい。
【0041】
炭素繊維板としては剛性の観点から厚さ0.1mm以上の炭素繊維板が好ましく、X線吸収の観点からは5mm以下の炭素繊維板が好ましい。
【0042】
図5は本発明の基板(高分子材料)上に蒸着する一例を示す概略図である。
ドーム状の角度は図5に示す角度(θ1+θ2)であり、本発明においては、20°〜70°が好ましく、角度が20°未満であると、蒸着源との開口部が狭くなり、蒸着効率は落ちるが温度分布は良好となり蛍光体層中に蒸着された賦活剤は均一となる。
【0043】
また角度が70°を超えると基板に対する蒸着源からの開口部が拡がり蒸着効率は高まるが温度分布が悪くなり蛍光体層中に蒸着された賦活剤は不均一となる。
【0044】
即ち、上記角度は、20°≦θ1+θ2≦70°であり、ただし、θ1+θ2中のθ1、θ2は共に0になることはない。
【0045】
図5において、蒸発源2から基板1(支持体)を扇状(ドーム状)に配置し、蒸発源の上部には基板を設置せずに図5に示すよう蒸発源2より基板1を20°(図5においては、θ1=20°、θ2=20°)ズラした左右対象に配置し、蒸着し、賦活剤が均一な蛍光体層を得ることができる。
【0046】
また、蒸発源2上部は熱の籠もりを低減するためにメッシュ状もしくは穴を少なくとも一つ以上開けた構造が好ましい。
【0047】
従って、上述した如く、真空圧1.33〜1.33×10−3Paの条件下では基板角度範囲として20〜70°が好ましく、35〜45°が更に好ましい。
【0048】
本発明の放射線像変換パネルに用いられる支持体の原料としては、例えば、セルロースアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、トリアセテート樹脂、ポリカーボネート樹脂、シンジオタクティックポリスチレン(SPS)等のプラスチック樹脂等が挙げられ、これらの樹脂1種又は2種以上を用いて本発明の支持体を得ることができる。
【0049】
この際、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合しても良い。
次に、得られた水溶液のpH値Cを0<C<7に調整するように所定の酸を加えた後、水分を蒸発気化させる。
【0050】
次に、得られた原料混合物を石英ルツボ或いはアルミナルツボ等の耐熱性容器に充填して電気炉中で焼成を行う。焼成温度は500〜1000℃が好ましい。焼成時間は原料混合物の充填量、焼成温度等によって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
【0051】
焼成雰囲気としては少量の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気、少量の一酸化炭素を含む炭酸ガス雰囲気等の弱還元性雰囲気、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気或いは少量の酸素ガスを含む弱酸化性雰囲気が好ましい。
【0052】
尚、前記の焼成条件で一度焼成した後、焼成物を電気炉から取り出して粉砕し、しかる後、焼成物粉末を再び耐熱性容器に充填して電気炉に入れ、前記と同じ焼成条件で再焼成を行えば蛍光体の発光輝度を更に高めることができ、また、焼成物を焼成温度より室温に冷却する際、焼成物を電気炉から取り出して空気中で放冷することによっても所望の蛍光体を得ることができるが、焼成時と同じ、弱還元性雰囲気もしくは中性雰囲気のままで冷却してもよい。また、焼成物を電気炉内で加熱部より冷却部へ移動させて、弱還元性雰囲気、中性雰囲気もしくは弱酸化性雰囲気で急冷することにより、得られた蛍光体の輝尽による発光輝度をより一層高めることができる。
【0053】
また、本発明の輝尽性蛍光体層は気相成長法によって形成される。
輝尽性蛍光体の気相成長法としては蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、その他を用いることができる。
【0054】
本発明においては、例えば、以下の方法が挙げられる。
第1の方法の蒸着法は、まず、支持体を蒸着装置内に設置した後、装置内を排気して1.333×10−4Pa程度の真空度とする。
【0055】
次いで、前記輝尽性蛍光体の少なくとも一つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて前記支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに成長させる。
【0056】
この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
【0057】
また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
【0058】
蒸着終了後、必要に応じて前記輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対の側に保護層を設けることにより本発明の放射線像変換パネルが製造される。尚、保護層上に輝尽性蛍光体層を形成した後、支持体を設ける手順をとってもよい。
【0059】
さらに、前記蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて被蒸着体(支持体、保護層又は中間層)を冷却あるいは加熱してもよい。
【0060】
また、蒸着終了後輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。また、前記蒸着法においては必要に応じてO2、H2等のガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
【0061】
第2の方法としてのスパッタリング法は、蒸着法と同様、保護層又は中間層を有する支持体をスパッタリング装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.333×10−4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタリング用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスをスパッタリング装置内に導入して1.333×10−1Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより、前記支持体上に輝尽性蛍光体層を所望の厚さに成長させる。
【0062】
前記スパッタリング工程では蒸着法と同様に各種の応用処理を用いることができる。
【0063】
第3の方法としてCVD法があり、又、第4の方法としてイオンプレーティング法がある。
【0064】
また、前記気相成長における輝尽性蛍光体層の成長速度は0.05μm/分〜300μm/分であることが好ましい。成長速度が0.05μm/分未満の場合には本発明の放射線像変換パネルの生産性が悪く好ましくない。また成長速度が300μm/分を越える場合には成長速度のコントロールがむずかしく好ましくない。
【0065】
放射線像変換パネルを、前記の真空蒸着法、スパッタリング法などにより得る場合には、結着剤が存在しないので輝尽性蛍光体の充填密度を増大でき、感度、解像力の上で好ましい放射線像変換パネルが得られ好ましい。
【0066】
前記輝尽性蛍光体層の膜厚は、放射線像変換パネルの使用目的によって、また輝尽性蛍光体の種類により異なるが、本発明の効果を得る観点から50μm〜1mmであり、好ましくは50〜300μmであり、更に好ましくは100〜300μmであり、特に好ましくは、150〜300μmである。
【0067】
上記の気相成長法による輝尽性蛍光体層の作製にあたり、輝尽性蛍光体層が形成される支持体の温度は、100℃以上に設定することが好ましく、更に好ましくは、150℃以上であり、特に好ましくは150〜400℃である。
【0068】
また、高鮮鋭性を示す放射線像変換パネルを得る観点から、本発明の輝尽性蛍光体層の反射率は20%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは40%以上である。尚、上限は100%である。
【0069】
又、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となるほか、高光吸収の物質、高光反射率の物質等を充填してもよく、これにより補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散の低減に有効である。
【0070】
次に、本発明の輝尽性蛍光体層の形成を図1、図2を用いて説明する。
図1は、上記記載の気相成長法を用いて、支持体上に形成した柱状結晶を有する輝尽性蛍光体層の一例を示す概略断面図である。11は支持体、12が輝尽性蛍光体層、13が該輝尽性蛍光体層を構成する柱状結晶を示している。尚、14は柱状結晶間に形成された間隙を示している。
【0071】
図2は、支持体上に輝尽性蛍光体層が蒸着により形成される様子を示す図であるが、輝尽性蛍光体蒸気流16の支持体面の法線方向(R)に対する入射角度をθ2(図では60°で入射している)とすると、形成される柱状結晶の支持体面の法線方向(R)に対する角度はθ1(図では約30°、経験的には大体半分になる)で表され、この角度で柱状結晶が形成される。
【0072】
この様にして支持体上に形成した輝尽性蛍光体層は、結着剤を含有していないので、指向性に優れており、輝尽励起光及び輝尽発光の指向性が高く、輝尽性蛍光体を結着剤中に分散した分散型の輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルより層厚を厚くすることができる。更に輝尽励起光の輝尽性蛍光体層中での散乱が減少することで像の鮮鋭性が向上する。
【0073】
又、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となるほか、高光吸収の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい、これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散の低減に有効である。
【0074】
高反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高い物質のことをいい、例えば、アルミニウム、マグネシウム、銀、インジウム、その他の金属等、白色顔料及び緑色〜赤色領域の色材を用いることができる。白色顔料は輝尽発光も反射することができる。
【0075】
白色顔料としては、例えば、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al2O3、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの各原子から選ばれるの少なくとも一種の原子であり、XはCl原子又はBr原子である。)、CaCO3、ZnO、Sb2O3、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸塩、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどがあげられる。
【0076】
これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線像変換パネルの感度を顕著に向上させることができる。
【0077】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボンブラック、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄など及び青の色材が用いられる。このうちカーボンブラックは輝尽発光も吸収する。
【0078】
また、色材は、有機又は無機系色材のいずれでもよい。
有機系色材としては、例えば、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。
【0079】
また、カラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材もあげられる。
【0080】
無機系色材としては群青、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系等の無機顔料があげられる。
【0081】
また、本発明の輝尽性蛍光体層は保護層を有していても良い。
保護層は保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、あらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。あるいは別途形成した保護層上に輝尽性蛍光体層を形成する手段を取ってもよい。
【0082】
保護層の材料としては、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の通常の保護層用材料が用いられる。他に透明なガラス基板を保護層としてもちいることもできる。
【0083】
また、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2、SiN、Al2O3等の無機物質を積層して形成してもよい。
【0084】
これらの保護層の層厚は0.1〜2000μmが好ましい。
図3は、本発明の放射線像変換パネルの構成の一例を示す概略図である。
【0085】
図3において21は放射線発生装置、22は被写体、23は輝尽性蛍光体を含有する可視光ないし赤外光輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネル、24は放射線像変換パネル23の放射線潜像を輝尽発光として放出させるための輝尽励起光源、25は放射線像変換パネル23より放出された輝尽発光を検出する光電変換装置、26は光電変換装置25で検出された光電変換信号を画像として再生する画像再生装置、27は再生された画像を表示する画像表示装置、28は輝尽励起光源24からの反射光をカットし、放射線像変換パネル23より放出された光のみを透過させるためのフィルタである。
【0086】
尚、図3は被写体の放射線透過像を得る場合の例であるが、被写体22自体が放射線を放射する場合には、前記放射線発生装置21は特に必要ない。
【0087】
また、光電変換装置25以降は放射線像変換パネル23からの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、前記に限定されない。
【0088】
図3に示されるように、被写体22を放射線発生装置21と放射線像変換パネル23の間に配置し放射線Rを照射すると、放射線Rは被写体22の各部の放射線透過率の変化に従って透過し、その透過像RI(即ち、放射線の強弱の像)が放射線像変換パネル23に入射する。
【0089】
この入射した透過像RIは放射線像変換パネル23の輝尽性蛍光体層に吸収され、これによって輝尽性蛍光体層中に吸収された放射線量に比例した数の電子及び/又は正孔が発生し、これが輝尽性蛍光体のトラップレベルに蓄積される。
【0090】
即ち、放射線透過像のエネルギーを蓄積した潜像が形成される。次にこの潜像を光エネルギーで励起して顕在化する。
【0091】
また、可視あるいは赤外領域の光を照射する輝尽励起光源24によって輝尽性蛍光体層に照射してトラップレベルに蓄積された電子及び/又は正孔を追い出し、蓄積されたエネルギーを輝尽発光として放出させる。
【0092】
この放出された輝尽発光の強弱は蓄積された電子及び/又は正孔の数、すなわち放射線像変換パネル23の輝尽性蛍光体層に吸収された放射線エネルギーの強弱に比例しており、この光信号を、例えば、光電子増倍管等の光電変換装置25で電気信号に変換し、画像再生装置26によって画像として再生し、画像表示装置27によってこの画像を表示する。
【0093】
画像再生装置26は単に電気信号を画像信号として再生するのみでなく、いわゆる画像処理や画像の演算、画像の記憶、保存等が出来るものを使用するとより有効である。
【0094】
また、光エネルギーで励起する際、輝尽励起光の反射光と輝尽性蛍光体層から放出される輝尽発光とを分離する必要があることと、輝尽性蛍光体層から放出される発光を受光する光電変換器は一般に600nm以下の短波長の光エネルギーに対して感度が高くなるという理由から、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光はできるだけ短波長領域にスペクトル分布を持ったものが望ましい。
【0095】
本発明の輝尽性蛍光体の発光波長域は300〜500nmであり、一方輝尽励起波長域は500〜900nmであるので前記の条件を同時に満たすが、最近、診断装置のダウンサイジング化が進み、放射線像変換パネルの画像読み取りに用いられる励起波長は高出力で、且つ、コンパクト化が容易な半導体レーザが好まれ、そのレーザ光の波長は680nmであることが好ましく、本発明の放射線像変換パネルに組み込まれた輝尽性蛍光体は、680nmの励起波長を用いた時に、極めて良好な鮮鋭性を示すものである。
【0096】
即ち、本発明の輝尽性蛍光体はいずれも500nm以下に主ピークを有する発光を示し、輝尽励起光の分離が容易でしかも受光器の分光感度とよく一致するため、効率よく受光できる結果、受像系の感度を高めることができる。
【0097】
輝尽励起光源24としては、放射線像変換パネル23に使用される輝尽性蛍光体の輝尽励起波長を含む光源が使用される。特にレーザ光を用いると光学系が簡単になり、また輝尽励起光強度を大きくすることができるために輝尽発光効率をあげることができ、より好ましい結果が得られる。
【0098】
レーザとしては、例えば、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe−NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることもできる。
【0099】
また、フィルタ28を用いずに特開昭59−22046号に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法によるときは、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。
【0100】
上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
【0101】
フィルタ28としては放射線像変換パネル23から放射される輝尽発光を透過し、輝尽励起光をカットするものであるから、これは放射線像変換パネル23に含有する輝尽性蛍光体の輝尽発光波長と輝尽励起光源24の波長の組合わせによって決定される。
【0102】
例えば、輝尽励起波長が500〜900nmで輝尽発光波長が300〜500nmにあるような実用上好ましい組合わせの場合、フィルタとしては例えば東芝社製C−39、C−40、V−40、V−42、V−44、コーニング社製7−54、7−59、スペクトロフィルム社製BG−1、BG−3、BG−25、BG−37、BG−38等の紫〜青色ガラスフィルタを用いることができる。又、干渉フィルタを用いると、ある程度、任意の特性のフィルタを選択して使用できる。光電変換装置25としては、光電管、光電子倍増管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、光導電素子等光量の変化を電子信号の変化に変換し得るものなら何れでもよい。
【0103】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0104】
実施例1
《放射線像変換パネル試料1〜11の作製(表1中では試料1〜11と記載)》
表1に示した条件で、200ミクロン厚の結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)支持体の表面に図4に示した蒸着装置(但し、θ1=5度、θ2=5度に設定する)を用いて輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を有する輝尽性蛍光体層を形成した。
【0105】
尚、蒸着は、アルミニウム製のスリットを用い、支持体とスリットとの距離dを60cmとして、支持体と平行な方向に支持体を搬送しながら行ない、輝尽性蛍光体層の厚みが300μmになるように調整した。
【0106】
また、蒸着にあたっては、前記支持体を蒸着器内に設置し、次いで、蛍光体原料(CsBr:Eu)を蒸着源としてプレス成形し水冷したルツボにいれた。
【0107】
その後、蒸着器内を一旦排気し、N2ガスを導入し、0.133Paに真空度を調整した後、支持体の温度(基板温度ともいう)を約350℃に保持しながら、蒸着した。輝尽性蛍光体層の膜厚が300μmとなったところで蒸着を終了させ、次いで、この蛍光体層を温度400℃で加熱処理した。乾燥空気の雰囲気内で、支持体及び硼珪酸ガラスを有する保護層周縁部を接着剤で封入して、蛍光体層が密閉された構造の放射線像変換パネル試料1を得た。
【0108】
放射線像変換パネル試料1(比較例)の作製において、東レ製ポリイミド(商品名カプトン)及びエポキシ樹脂(日本チバガイギー社製)の配合を変えて支持体を作製し、該支持体(基板)のTg、ドーム状の角度(図5における基板1、角度=θ1+θ2)、(試料9の基板は200ミクロンの硝子(旭硝子製))及び蒸着の状態(下記に示す)を替えた以外は放射線像変換パネル試料4と同様にして、放射線像変換パネル試料2〜9を各々作製した。支持体の厚さは試料2〜9とも200ミクロン。
【0109】
3層にした支持体、即ち、実施例10においては、炭素繊維板(東レ株式会社製 CFRP板)2mm、ポリイミドシートを用い、該炭素繊維板の両面を挟んで、成形温度圧力200℃、20kg/cm2、加圧時間15minで加圧後、100℃になるまで除冷して3層構成の支持体を取り出したものを使用した以外は試料4と同様にして、放射線像変換パネル試料10(試料10)を作製した。
【0110】
また、2層構成の支持体の場合、即ち、実施例11においては、貼り付ける方法を用い、ポリイミドのシート上にポロビニルアルコール(分子量、20,000)を適量用いて、温度150℃で、炭素繊維板(東レ株式会社製 CFRP板)を貼り付けて支持体を作製したものを用いた以外は試料4と同様にして放射線像変換パネル11(試料11)を作製した。
【0111】
炭素繊維板(厚さ2mm)のTgは180℃、ポリイミドシート(東レ−デュポン株式会社製ミクトロンフィルム)の厚さは100μm、Tgは280℃である。
【0112】
尚、試料2〜11は蒸着する基板を図5に示す状態にし、蒸着を行った。得られた放射線像変換パネル試料1〜11について、下記のような評価を行った。
【0113】
《鮮鋭性評価》
各々作製した放射線像変換パネル試料の鮮鋭性は、変調伝達関数(MTF)を求めて評価した。
【0114】
MTFは、放射線像変換パネル試料にCTFチャートを貼付した後、放射線像変換パネル試料に80kVpのX線を10mR(被写体までの距離:1.5m)照射した後、100μmφの直径の半導体レーザ(680nm:パネル上でのパワー40mW)を用いてCTFチャート像を走査読み取りして求めた。表の値は、2.0lp/mmのMTF値を足し合わせた値で示す。得られた結果を表1に示す。
【0115】
《輝度、輝度分布の評価》
輝度はコニカ(株)製Regius350を用いて評価を行った。
【0116】
鮮鋭性評価と同様にX線をタングステン管球にて80kVp、10mAsで爆射線源とプレート間距離2mで照射した後、Regius350にプレートを設置して読みとった。得られたフォトマルからの電気信号を元に評価を行った。
【0117】
撮影された面内のフォトマルからの電気信号分布を相対評価し、標準偏差を求め、それぞれ各試料の輝度分布(S.D.)とした。値が小さい程、賦活剤の均一性に優れている。
【0118】
【表1】
【0119】
表1から明らかなように、本発明の試料が比較の試料に比して優れていることが分かる。
【0120】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明による放射線像変換パネル及び放射線像変換パネルの製造方法は、賦活剤の均一性に優れ、且つ、高輝度、高鮮鋭性であり、優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】支持体上に形成した柱状結晶を有する輝尽性蛍光体層の一例を示す概略断面図である。
【図2】支持体上に輝尽性蛍光体層が蒸着法により形成される様子を示す図である。
【図3】本発明の放射線像変換パネルの構成の一例を示す概略図である。
【図4】蒸着により支持体上に輝尽性蛍光体層を作製する方法の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の基板(高分子材料)上に蒸着する一例を示す概略図である。
【符号の説明】
11 支持体
12 輝尽性蛍光体層
13 柱状結晶
14 柱状結晶間に形成された間隙
15 支持体ホルダ
21 放射線発生装置
22 被写体
23 放射線像変換パネル
24 輝尽励起光源
25 光電変換装置
26 画像再生装置
27 画像表示装置
28 フィルタ
【発明の属する技術分野】
本発明は放射線画像(以下、単に放射線像ともいう)変換パネル及び前記放射線画像変換パネルの製造方法(以下、単に製造方法ともいう)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、放射線画像を得るために銀塩を使用した、いわゆる放射線写真法が利用されているが、銀塩を使用しないで放射線像を画像化する方法が開発されている。即ち、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体をある種のエネルギーで励起してこの蛍光体が蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出して画像化する方法が開示されている。
【0003】
具体的な方法としては、支持体上に輝尽性蛍光体層を設けたパネルを用い、励起エネルギーとして可視光線及び赤外線の一方又は両方を用いる放射線像変換方法が知られている(米国特許第3,859,527号参照)。
【0004】
より高輝度、高感度の輝尽性蛍光体を用いた放射線像変換方法として、例えば特開昭59−75200号等に記載されているBaFX:Eu2+系(X:Cl、Br、I)蛍光体を用いた放射線像変換方法、同61−72087号等に記載されているようなアルカリハライド蛍光体を用いた放射線像変換方法、同61−73786号、同61−73787号等に記載のように、共賦活剤としてTl+及びCe3+、Sm3+、Eu3+、Y3+、Ag+、Mg2+、Pb2+、In3+の金属を含有するアルカリハライド蛍光体が開発されている。
【0005】
更に、近年診断画像の解析においてより高鮮鋭性の放射線像変換パネルが要求されている。鮮鋭性改善の為の手段として、例えば形成される輝尽性蛍光体の形状そのものをコントロールし感度及び鮮鋭性の改良を図る試みがされている。
【0006】
これらの試みの1つの方法として、例えば特開昭61−142497号等に記載されている微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0007】
また、特開昭61−142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施して更に発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−39737号に記載されている支持体上に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線像変換パネルを用いる方法、更には、特開昭62−110200号に記載に記載されているように、支持体上に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている。
【0008】
更に、特開平2−58000号には、気相堆積法によって支持体上に、支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルが記載されている。
【0009】
これらの輝尽性蛍光体層の形状をコントロールする方法は、いずれも輝尽性蛍光体層を柱状とすることで、輝尽励起光又は輝尽発光の横方向への拡散を抑える(クラック(柱状結晶)界面において反射を繰り返しながら支持体面まで到達する)ことができるため、輝尽発光による画像の鮮鋭性を著しく増大させることができるという特徴がある。
【0010】
最近ではCsBrなどのハロゲン化アルカリを母体にEuを賦活した輝尽性蛍光体を用いた放射線像変換パネルが提案され、特にEuを賦活剤とすることで従来不可能であったX線変換効率を向上させることが可能となった。
【0011】
しかしながら、Euは熱による拡散が顕著であり、真空下における蒸気圧も高いために離散するなどにより母体中のEuの存在を遍在させる問題があり、目的とした高いX線変換効率を得ることが難しいため市場での実用化に至っていない。
【0012】
また、Eu等の希土類元素を用いて賦活させる技術においては真空下における蒸着膜形成に関して蒸気圧特性を制御するだけでは、良好な賦活剤の均一化を達成することは困難であった。(例えば、特許文献1、2、3を参照)
特にこれらの気相法(堆積)により形成した輝尽性蛍光体層を作製する際には、原料加熱、真空蒸着時の支持体の加熱、膜形成後のアニール(基板歪み緩和)処理等の加熱処理を多く施すため賦活剤の存在状態を不均一とする原因となっている。
【0013】
しかしながら、これらの加熱処理はいずれも輝尽性蛍光体層に耐久性を付与する上で必要不可欠なものであった。
【0014】
このため放射線像変換パネルとして市場から要求される輝度、鮮鋭性の改善、賦活剤の均一性についての改良が求められていた。
【0015】
【特許文献1】
特開2002−72381号公報
【0016】
【特許文献2】
特開2002−20742号公報
【0017】
【特許文献3】
特開2002−6092号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、蛍光体層中の賦活剤の均一性に優れ、且つ、高輝度、高鮮鋭性である放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0020】
1.支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該輝尽性蛍光体層が高分子材料から形成される支持体上に蒸着されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0021】
2.前記少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が、前記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする前記1に記載の放射線画像変換パネル。
【0022】
3.前記高分子材料から形成される支持体のTgが150〜350℃であることを特徴とする前記1又は2に記載の放射線画像変換パネル。
【0023】
4.前記支持体がポリイミド層、炭素繊維板層、ポリイミド層の順に構成されていることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の放射線画像変換パネル。
【0024】
5.前記1〜4の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が気相法により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成し、且つ、支持体を扇状(ドーム状)に配置し蒸着することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【0025】
以下、本発明を更に詳細に述べる。
高分子材料支持体
本発明は高分子材料を支持体に用いることで、支持体(基板)上の柱状結晶形成時における熱分布と放熱特性が均一化し、結果、先端径が細かく、柱状として大きくならない結晶を得ることができた。
【0026】
耐熱性の観点から支持体を張力維持したまま蒸着するには、高分子材料のTgは好ましくは150〜350℃である。
【0027】
ドーム状の高分子材料支持体(以下、基板ともいう)
熱影響を避け、熱分布を均一化するために蒸着源に対し、出射方向として20°以上に形成されたドーム状に基板(以下、支持体ともいう)ホルダーをもうけることで蛍光体層中の賦活剤を均一に蒸着することができ、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0028】
蛍光体層中の賦活剤を均一に蒸着することができるとは、蛍光体層中の支持体側と蛍光体表面側で賦活剤存在量が同じであることをいう。
【0029】
具体的には蛍光体層の支持体側と表面側での賦活剤存在量が±10%以内で一致することであり、確認方法としては、蛍光体層の賦活剤存在量は蛍光体層として約500ミクロン形成した蛍光体層の表面側を約100ミクロン削りとった試料と支持体側の蛍光体層を100ミクロンにした試料をそれぞれを純水にて溶解し、水溶液とする。この水溶液をICPにて分析して賦活剤量を算出し確認することができる。
【0030】
また、本発明の放射線画像変換パネルは2種以上の複数層を有する支持体から構成されることが好ましく、3種の複数層を有する支持体がより好ましい。
【0031】
即ち、本発明においては、X線吸収量の低い支持体で、且つ、平面性に優れた支持体を得るために、支持体を複数層にすることが好ましく、80kVpにてX線吸収量が10%未満となる薄膜シートを複数層形成させることがより好ましい。
【0032】
本発明に好ましく用いられる炭素繊維板を有する複数層の支持体は、剛性の高い炭素繊維板を蒸着時の面精度の高い薄膜シートを張り合わせる。
【0033】
薄膜シートとしては、例えばCu、Al、ステンレス等の金属の他、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのプラスチック材料も利用できる。
【0034】
本願の請求項4の発明は、ポリイミド/炭素繊維板/ポリイミドの順に構成した支持体であり、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0035】
ポリイミドは、例えば東レ−デュポン株式会社製ミクトロンフィルム、カプトンフィルムを利用でき、炭素繊維板に張り合わせ成形して基板を作製する。
【0036】
ポリイミドを基板表面に張り合わせるには基板上にポリイミド樹脂を接着層として用いミクトロン(ポリイミドシート)を貼り付ける方法、ポリイミドシートでサンドイッチして炭素繊維板をプレス成形する際に同時成形する方法などがある。
【0037】
1.貼り付ける方法
貼り付ける方法はポリイミドシートに接着層を塗布あるいは接着剤シートを貼り付けた後、炭素繊維板にポリイミドに貼り付ける。
【0038】
2.プレス成形方法
ポリイミドシート、目標の厚さとなるなるようにエポキシ樹脂あるいはビスマレイミド樹脂を含浸させた炭素繊維板を複数枚重ねてポリイミドでサンドイッチする。このシートを加圧、加熱成型器で成形温度150〜300℃、圧力9.8×105〜6.9×106Pa70kg/cm2、加圧時間15min〜3hr成形する。
【0039】
本願の実施例のポリイミド/炭素樹脂繊維板/ポリイミドの3層構成の支持体の作製は後者を用いて成形した。
【0040】
ポリイミドシートとしては基板表面の凹凸を
低減するために厚さ50ミクロン以上が好ましく、成形のハンドリングの観点からは200ミクロン以下のものが扱いやすい。
【0041】
炭素繊維板としては剛性の観点から厚さ0.1mm以上の炭素繊維板が好ましく、X線吸収の観点からは5mm以下の炭素繊維板が好ましい。
【0042】
図5は本発明の基板(高分子材料)上に蒸着する一例を示す概略図である。
ドーム状の角度は図5に示す角度(θ1+θ2)であり、本発明においては、20°〜70°が好ましく、角度が20°未満であると、蒸着源との開口部が狭くなり、蒸着効率は落ちるが温度分布は良好となり蛍光体層中に蒸着された賦活剤は均一となる。
【0043】
また角度が70°を超えると基板に対する蒸着源からの開口部が拡がり蒸着効率は高まるが温度分布が悪くなり蛍光体層中に蒸着された賦活剤は不均一となる。
【0044】
即ち、上記角度は、20°≦θ1+θ2≦70°であり、ただし、θ1+θ2中のθ1、θ2は共に0になることはない。
【0045】
図5において、蒸発源2から基板1(支持体)を扇状(ドーム状)に配置し、蒸発源の上部には基板を設置せずに図5に示すよう蒸発源2より基板1を20°(図5においては、θ1=20°、θ2=20°)ズラした左右対象に配置し、蒸着し、賦活剤が均一な蛍光体層を得ることができる。
【0046】
また、蒸発源2上部は熱の籠もりを低減するためにメッシュ状もしくは穴を少なくとも一つ以上開けた構造が好ましい。
【0047】
従って、上述した如く、真空圧1.33〜1.33×10−3Paの条件下では基板角度範囲として20〜70°が好ましく、35〜45°が更に好ましい。
【0048】
本発明の放射線像変換パネルに用いられる支持体の原料としては、例えば、セルロースアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、トリアセテート樹脂、ポリカーボネート樹脂、シンジオタクティックポリスチレン(SPS)等のプラスチック樹脂等が挙げられ、これらの樹脂1種又は2種以上を用いて本発明の支持体を得ることができる。
【0049】
この際、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合しても良い。
次に、得られた水溶液のpH値Cを0<C<7に調整するように所定の酸を加えた後、水分を蒸発気化させる。
【0050】
次に、得られた原料混合物を石英ルツボ或いはアルミナルツボ等の耐熱性容器に充填して電気炉中で焼成を行う。焼成温度は500〜1000℃が好ましい。焼成時間は原料混合物の充填量、焼成温度等によって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
【0051】
焼成雰囲気としては少量の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気、少量の一酸化炭素を含む炭酸ガス雰囲気等の弱還元性雰囲気、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気或いは少量の酸素ガスを含む弱酸化性雰囲気が好ましい。
【0052】
尚、前記の焼成条件で一度焼成した後、焼成物を電気炉から取り出して粉砕し、しかる後、焼成物粉末を再び耐熱性容器に充填して電気炉に入れ、前記と同じ焼成条件で再焼成を行えば蛍光体の発光輝度を更に高めることができ、また、焼成物を焼成温度より室温に冷却する際、焼成物を電気炉から取り出して空気中で放冷することによっても所望の蛍光体を得ることができるが、焼成時と同じ、弱還元性雰囲気もしくは中性雰囲気のままで冷却してもよい。また、焼成物を電気炉内で加熱部より冷却部へ移動させて、弱還元性雰囲気、中性雰囲気もしくは弱酸化性雰囲気で急冷することにより、得られた蛍光体の輝尽による発光輝度をより一層高めることができる。
【0053】
また、本発明の輝尽性蛍光体層は気相成長法によって形成される。
輝尽性蛍光体の気相成長法としては蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、その他を用いることができる。
【0054】
本発明においては、例えば、以下の方法が挙げられる。
第1の方法の蒸着法は、まず、支持体を蒸着装置内に設置した後、装置内を排気して1.333×10−4Pa程度の真空度とする。
【0055】
次いで、前記輝尽性蛍光体の少なくとも一つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて前記支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに成長させる。
【0056】
この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
【0057】
また、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。
【0058】
蒸着終了後、必要に応じて前記輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対の側に保護層を設けることにより本発明の放射線像変換パネルが製造される。尚、保護層上に輝尽性蛍光体層を形成した後、支持体を設ける手順をとってもよい。
【0059】
さらに、前記蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて被蒸着体(支持体、保護層又は中間層)を冷却あるいは加熱してもよい。
【0060】
また、蒸着終了後輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。また、前記蒸着法においては必要に応じてO2、H2等のガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
【0061】
第2の方法としてのスパッタリング法は、蒸着法と同様、保護層又は中間層を有する支持体をスパッタリング装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.333×10−4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタリング用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスをスパッタリング装置内に導入して1.333×10−1Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより、前記支持体上に輝尽性蛍光体層を所望の厚さに成長させる。
【0062】
前記スパッタリング工程では蒸着法と同様に各種の応用処理を用いることができる。
【0063】
第3の方法としてCVD法があり、又、第4の方法としてイオンプレーティング法がある。
【0064】
また、前記気相成長における輝尽性蛍光体層の成長速度は0.05μm/分〜300μm/分であることが好ましい。成長速度が0.05μm/分未満の場合には本発明の放射線像変換パネルの生産性が悪く好ましくない。また成長速度が300μm/分を越える場合には成長速度のコントロールがむずかしく好ましくない。
【0065】
放射線像変換パネルを、前記の真空蒸着法、スパッタリング法などにより得る場合には、結着剤が存在しないので輝尽性蛍光体の充填密度を増大でき、感度、解像力の上で好ましい放射線像変換パネルが得られ好ましい。
【0066】
前記輝尽性蛍光体層の膜厚は、放射線像変換パネルの使用目的によって、また輝尽性蛍光体の種類により異なるが、本発明の効果を得る観点から50μm〜1mmであり、好ましくは50〜300μmであり、更に好ましくは100〜300μmであり、特に好ましくは、150〜300μmである。
【0067】
上記の気相成長法による輝尽性蛍光体層の作製にあたり、輝尽性蛍光体層が形成される支持体の温度は、100℃以上に設定することが好ましく、更に好ましくは、150℃以上であり、特に好ましくは150〜400℃である。
【0068】
また、高鮮鋭性を示す放射線像変換パネルを得る観点から、本発明の輝尽性蛍光体層の反射率は20%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは40%以上である。尚、上限は100%である。
【0069】
又、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となるほか、高光吸収の物質、高光反射率の物質等を充填してもよく、これにより補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散の低減に有効である。
【0070】
次に、本発明の輝尽性蛍光体層の形成を図1、図2を用いて説明する。
図1は、上記記載の気相成長法を用いて、支持体上に形成した柱状結晶を有する輝尽性蛍光体層の一例を示す概略断面図である。11は支持体、12が輝尽性蛍光体層、13が該輝尽性蛍光体層を構成する柱状結晶を示している。尚、14は柱状結晶間に形成された間隙を示している。
【0071】
図2は、支持体上に輝尽性蛍光体層が蒸着により形成される様子を示す図であるが、輝尽性蛍光体蒸気流16の支持体面の法線方向(R)に対する入射角度をθ2(図では60°で入射している)とすると、形成される柱状結晶の支持体面の法線方向(R)に対する角度はθ1(図では約30°、経験的には大体半分になる)で表され、この角度で柱状結晶が形成される。
【0072】
この様にして支持体上に形成した輝尽性蛍光体層は、結着剤を含有していないので、指向性に優れており、輝尽励起光及び輝尽発光の指向性が高く、輝尽性蛍光体を結着剤中に分散した分散型の輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルより層厚を厚くすることができる。更に輝尽励起光の輝尽性蛍光体層中での散乱が減少することで像の鮮鋭性が向上する。
【0073】
又、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となるほか、高光吸収の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい、これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散の低減に有効である。
【0074】
高反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高い物質のことをいい、例えば、アルミニウム、マグネシウム、銀、インジウム、その他の金属等、白色顔料及び緑色〜赤色領域の色材を用いることができる。白色顔料は輝尽発光も反射することができる。
【0075】
白色顔料としては、例えば、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al2O3、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの各原子から選ばれるの少なくとも一種の原子であり、XはCl原子又はBr原子である。)、CaCO3、ZnO、Sb2O3、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸塩、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどがあげられる。
【0076】
これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線像変換パネルの感度を顕著に向上させることができる。
【0077】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボンブラック、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄など及び青の色材が用いられる。このうちカーボンブラックは輝尽発光も吸収する。
【0078】
また、色材は、有機又は無機系色材のいずれでもよい。
有機系色材としては、例えば、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。
【0079】
また、カラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材もあげられる。
【0080】
無機系色材としては群青、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系等の無機顔料があげられる。
【0081】
また、本発明の輝尽性蛍光体層は保護層を有していても良い。
保護層は保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、あらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。あるいは別途形成した保護層上に輝尽性蛍光体層を形成する手段を取ってもよい。
【0082】
保護層の材料としては、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の通常の保護層用材料が用いられる。他に透明なガラス基板を保護層としてもちいることもできる。
【0083】
また、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2、SiN、Al2O3等の無機物質を積層して形成してもよい。
【0084】
これらの保護層の層厚は0.1〜2000μmが好ましい。
図3は、本発明の放射線像変換パネルの構成の一例を示す概略図である。
【0085】
図3において21は放射線発生装置、22は被写体、23は輝尽性蛍光体を含有する可視光ないし赤外光輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネル、24は放射線像変換パネル23の放射線潜像を輝尽発光として放出させるための輝尽励起光源、25は放射線像変換パネル23より放出された輝尽発光を検出する光電変換装置、26は光電変換装置25で検出された光電変換信号を画像として再生する画像再生装置、27は再生された画像を表示する画像表示装置、28は輝尽励起光源24からの反射光をカットし、放射線像変換パネル23より放出された光のみを透過させるためのフィルタである。
【0086】
尚、図3は被写体の放射線透過像を得る場合の例であるが、被写体22自体が放射線を放射する場合には、前記放射線発生装置21は特に必要ない。
【0087】
また、光電変換装置25以降は放射線像変換パネル23からの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、前記に限定されない。
【0088】
図3に示されるように、被写体22を放射線発生装置21と放射線像変換パネル23の間に配置し放射線Rを照射すると、放射線Rは被写体22の各部の放射線透過率の変化に従って透過し、その透過像RI(即ち、放射線の強弱の像)が放射線像変換パネル23に入射する。
【0089】
この入射した透過像RIは放射線像変換パネル23の輝尽性蛍光体層に吸収され、これによって輝尽性蛍光体層中に吸収された放射線量に比例した数の電子及び/又は正孔が発生し、これが輝尽性蛍光体のトラップレベルに蓄積される。
【0090】
即ち、放射線透過像のエネルギーを蓄積した潜像が形成される。次にこの潜像を光エネルギーで励起して顕在化する。
【0091】
また、可視あるいは赤外領域の光を照射する輝尽励起光源24によって輝尽性蛍光体層に照射してトラップレベルに蓄積された電子及び/又は正孔を追い出し、蓄積されたエネルギーを輝尽発光として放出させる。
【0092】
この放出された輝尽発光の強弱は蓄積された電子及び/又は正孔の数、すなわち放射線像変換パネル23の輝尽性蛍光体層に吸収された放射線エネルギーの強弱に比例しており、この光信号を、例えば、光電子増倍管等の光電変換装置25で電気信号に変換し、画像再生装置26によって画像として再生し、画像表示装置27によってこの画像を表示する。
【0093】
画像再生装置26は単に電気信号を画像信号として再生するのみでなく、いわゆる画像処理や画像の演算、画像の記憶、保存等が出来るものを使用するとより有効である。
【0094】
また、光エネルギーで励起する際、輝尽励起光の反射光と輝尽性蛍光体層から放出される輝尽発光とを分離する必要があることと、輝尽性蛍光体層から放出される発光を受光する光電変換器は一般に600nm以下の短波長の光エネルギーに対して感度が高くなるという理由から、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光はできるだけ短波長領域にスペクトル分布を持ったものが望ましい。
【0095】
本発明の輝尽性蛍光体の発光波長域は300〜500nmであり、一方輝尽励起波長域は500〜900nmであるので前記の条件を同時に満たすが、最近、診断装置のダウンサイジング化が進み、放射線像変換パネルの画像読み取りに用いられる励起波長は高出力で、且つ、コンパクト化が容易な半導体レーザが好まれ、そのレーザ光の波長は680nmであることが好ましく、本発明の放射線像変換パネルに組み込まれた輝尽性蛍光体は、680nmの励起波長を用いた時に、極めて良好な鮮鋭性を示すものである。
【0096】
即ち、本発明の輝尽性蛍光体はいずれも500nm以下に主ピークを有する発光を示し、輝尽励起光の分離が容易でしかも受光器の分光感度とよく一致するため、効率よく受光できる結果、受像系の感度を高めることができる。
【0097】
輝尽励起光源24としては、放射線像変換パネル23に使用される輝尽性蛍光体の輝尽励起波長を含む光源が使用される。特にレーザ光を用いると光学系が簡単になり、また輝尽励起光強度を大きくすることができるために輝尽発光効率をあげることができ、より好ましい結果が得られる。
【0098】
レーザとしては、例えば、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe−NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることもできる。
【0099】
また、フィルタ28を用いずに特開昭59−22046号に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法によるときは、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。
【0100】
上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
【0101】
フィルタ28としては放射線像変換パネル23から放射される輝尽発光を透過し、輝尽励起光をカットするものであるから、これは放射線像変換パネル23に含有する輝尽性蛍光体の輝尽発光波長と輝尽励起光源24の波長の組合わせによって決定される。
【0102】
例えば、輝尽励起波長が500〜900nmで輝尽発光波長が300〜500nmにあるような実用上好ましい組合わせの場合、フィルタとしては例えば東芝社製C−39、C−40、V−40、V−42、V−44、コーニング社製7−54、7−59、スペクトロフィルム社製BG−1、BG−3、BG−25、BG−37、BG−38等の紫〜青色ガラスフィルタを用いることができる。又、干渉フィルタを用いると、ある程度、任意の特性のフィルタを選択して使用できる。光電変換装置25としては、光電管、光電子倍増管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、光導電素子等光量の変化を電子信号の変化に変換し得るものなら何れでもよい。
【0103】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0104】
実施例1
《放射線像変換パネル試料1〜11の作製(表1中では試料1〜11と記載)》
表1に示した条件で、200ミクロン厚の結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)支持体の表面に図4に示した蒸着装置(但し、θ1=5度、θ2=5度に設定する)を用いて輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を有する輝尽性蛍光体層を形成した。
【0105】
尚、蒸着は、アルミニウム製のスリットを用い、支持体とスリットとの距離dを60cmとして、支持体と平行な方向に支持体を搬送しながら行ない、輝尽性蛍光体層の厚みが300μmになるように調整した。
【0106】
また、蒸着にあたっては、前記支持体を蒸着器内に設置し、次いで、蛍光体原料(CsBr:Eu)を蒸着源としてプレス成形し水冷したルツボにいれた。
【0107】
その後、蒸着器内を一旦排気し、N2ガスを導入し、0.133Paに真空度を調整した後、支持体の温度(基板温度ともいう)を約350℃に保持しながら、蒸着した。輝尽性蛍光体層の膜厚が300μmとなったところで蒸着を終了させ、次いで、この蛍光体層を温度400℃で加熱処理した。乾燥空気の雰囲気内で、支持体及び硼珪酸ガラスを有する保護層周縁部を接着剤で封入して、蛍光体層が密閉された構造の放射線像変換パネル試料1を得た。
【0108】
放射線像変換パネル試料1(比較例)の作製において、東レ製ポリイミド(商品名カプトン)及びエポキシ樹脂(日本チバガイギー社製)の配合を変えて支持体を作製し、該支持体(基板)のTg、ドーム状の角度(図5における基板1、角度=θ1+θ2)、(試料9の基板は200ミクロンの硝子(旭硝子製))及び蒸着の状態(下記に示す)を替えた以外は放射線像変換パネル試料4と同様にして、放射線像変換パネル試料2〜9を各々作製した。支持体の厚さは試料2〜9とも200ミクロン。
【0109】
3層にした支持体、即ち、実施例10においては、炭素繊維板(東レ株式会社製 CFRP板)2mm、ポリイミドシートを用い、該炭素繊維板の両面を挟んで、成形温度圧力200℃、20kg/cm2、加圧時間15minで加圧後、100℃になるまで除冷して3層構成の支持体を取り出したものを使用した以外は試料4と同様にして、放射線像変換パネル試料10(試料10)を作製した。
【0110】
また、2層構成の支持体の場合、即ち、実施例11においては、貼り付ける方法を用い、ポリイミドのシート上にポロビニルアルコール(分子量、20,000)を適量用いて、温度150℃で、炭素繊維板(東レ株式会社製 CFRP板)を貼り付けて支持体を作製したものを用いた以外は試料4と同様にして放射線像変換パネル11(試料11)を作製した。
【0111】
炭素繊維板(厚さ2mm)のTgは180℃、ポリイミドシート(東レ−デュポン株式会社製ミクトロンフィルム)の厚さは100μm、Tgは280℃である。
【0112】
尚、試料2〜11は蒸着する基板を図5に示す状態にし、蒸着を行った。得られた放射線像変換パネル試料1〜11について、下記のような評価を行った。
【0113】
《鮮鋭性評価》
各々作製した放射線像変換パネル試料の鮮鋭性は、変調伝達関数(MTF)を求めて評価した。
【0114】
MTFは、放射線像変換パネル試料にCTFチャートを貼付した後、放射線像変換パネル試料に80kVpのX線を10mR(被写体までの距離:1.5m)照射した後、100μmφの直径の半導体レーザ(680nm:パネル上でのパワー40mW)を用いてCTFチャート像を走査読み取りして求めた。表の値は、2.0lp/mmのMTF値を足し合わせた値で示す。得られた結果を表1に示す。
【0115】
《輝度、輝度分布の評価》
輝度はコニカ(株)製Regius350を用いて評価を行った。
【0116】
鮮鋭性評価と同様にX線をタングステン管球にて80kVp、10mAsで爆射線源とプレート間距離2mで照射した後、Regius350にプレートを設置して読みとった。得られたフォトマルからの電気信号を元に評価を行った。
【0117】
撮影された面内のフォトマルからの電気信号分布を相対評価し、標準偏差を求め、それぞれ各試料の輝度分布(S.D.)とした。値が小さい程、賦活剤の均一性に優れている。
【0118】
【表1】
【0119】
表1から明らかなように、本発明の試料が比較の試料に比して優れていることが分かる。
【0120】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明による放射線像変換パネル及び放射線像変換パネルの製造方法は、賦活剤の均一性に優れ、且つ、高輝度、高鮮鋭性であり、優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】支持体上に形成した柱状結晶を有する輝尽性蛍光体層の一例を示す概略断面図である。
【図2】支持体上に輝尽性蛍光体層が蒸着法により形成される様子を示す図である。
【図3】本発明の放射線像変換パネルの構成の一例を示す概略図である。
【図4】蒸着により支持体上に輝尽性蛍光体層を作製する方法の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の基板(高分子材料)上に蒸着する一例を示す概略図である。
【符号の説明】
11 支持体
12 輝尽性蛍光体層
13 柱状結晶
14 柱状結晶間に形成された間隙
15 支持体ホルダ
21 放射線発生装置
22 被写体
23 放射線像変換パネル
24 輝尽励起光源
25 光電変換装置
26 画像再生装置
27 画像表示装置
28 フィルタ
Claims (5)
- 支持体上に輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が気相法(気相堆積法ともいう)により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成され、該輝尽性蛍光体層が高分子材料から形成される支持体上に蒸着されることを特徴とする放射線画像変換パネル。
- 前記少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が、下記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
一般式(1)
M1X・aM2X′・bM3X″:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕 - 前記高分子材料から形成される支持体のTgが150〜350℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネル。
- 前記支持体がポリイミド層、炭素繊維板層、ポリイミド層の順に構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の放射線画像変換パネル。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の放射線画像変換パネルの少なくとも1層の輝尽性蛍光体層が気相法により50μm〜20mmの膜厚を有するように形成し、且つ、支持体を扇状(ドーム状)に配置し蒸着することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
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