JP4730062B2 - 縦型工作機械のコラム構造 - Google Patents

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Description

本発明は、縦型の工作機械のコラム構造に関する。
従来の縦型マシニングセンタにおいて、経年変化が少なく形状の変形が少ないことが要求されるコラムの構造は、鋳鉄での鋳物一体構造が一般的であった。なお、重量を無視すればコラム内に空洞部を含まない鋳物も考えられるが、一般的なコラムは、内部に空洞部が形成されて軽量化が図られ、補強のために種々の形状のリブが複数個所に設けられている。なおマシニングセンタは、工具の迅速な交換機能を備えた工作機械であり、以下ではマシニングセンタも含めて「工作機械」と記載する。
縦型の工作機械のコラムには、直立したコラムの鉛直方向の1つの面に、加工工具を取り付ける主軸、主軸を上下に移動させる主軸送り装置、ワークを保持するテーブルが設けられ、更にワークも載置され、当該1つの面に重量物が集中する。このため、コラムの剛性が低いとコラムの変形量が大きくなり、加工精度に影響を及ぼす場合がある。
従来の鋳物一体構造のコラムでは、鋳型(木型、砂型等)の作成が必要であり、製造コストが高く少量生産には不向きである。また、従来の鋳物一体構造のコラムは、ヤング率が比較的小さく(例えば鋼板の約1/2)、コラムの上部に設けた主軸及び主軸送り装置の重量、及びコラムの下部に設けたテーブル(ワークを載置する部材)の重量により、局所変形の変形量が比較的大きい。
そこで特許文献1に記載した従来技術では、図7の平面図(断面図)に示すように、鋳物一体構造のコラム123の空洞部126に、鋼製の角型パイプ124を接合部125にて溶着接合して、剛性を向上させる工作機械のフレームの補強方法が提案されている。
特開平2−131830号公報
従来の鋳物一体構造のコラムでは、強度及びヤング率が比較的小さく、主軸及び主軸送り装置、テーブル等の重量物の荷重による変形にて、比較的大きな加工誤差が発生する場合があった。
また、特許文献1に記載した従来技術のようなパイプ等によるフレーム構造のコラムも、局所的に応力が集中すると、たわみ等が発生し易く、比較的大きな加工誤差が発生する場合があった。
このような背景から、縦型工作機械のコラムには、低コストで高剛性化を実現できるコラム構造が望まれている。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、縦型の工作機械のコラムの剛性をより向上させることができるとともに低コストな、縦型工作機械のコラム構造を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの縦型工作機械のコラム構造である。
請求項1に記載の縦型工作機械のコラム構造は、コラムと、主軸と、前記コラムに固定されて前記主軸を上下に移動する主軸送り装置と、前記コラムに固定されてワークを保持するテーブルと、前記主軸とワイヤにて接続されたカウンタウェイトとを備えた縦型工作機械のコラム構造である。
前記コラムは鋼板を組み合わせて形成されており、基礎となる柱として所定の厚さの鋼板が厚さ方向の1つの面を底面として配置されている。
前記鋼板の厚さ方向の面であり且つ鉛直方向に平行な2つの面の一方を正面として、前記鋼板の正面には前記主軸送り装置と前記テーブルとが上下に配置されて固定されているとともに、前記鋼板の上面には前記ワイヤを掛ける滑車が設けられ、当該鋼板に前記主軸と前記カウンタウェイトと前記主軸送り装置と前記テーブルの荷重が直接かかるように構成されている。
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの縦型工作機械のコラム構造である。
請求項2に記載の縦型工作機械のコラム構造は、請求項1に記載の縦型工作機械のコラム構造であって、前記コラムには、前記基礎となる柱としての複数枚の鋼板が、厚さ方向に垂直な面を対向させて平行に配置されている。
請求項1に記載の縦型工作機械のコラム構造では、例えば数十[mm]程度の比較的厚い一対の鋼板をコラムの基礎となる柱として配置し、当該鋼板の各々の上面には主軸とカウンタウェイトの重量を支える滑車を固定し、両鋼板の側面部には主軸送り装置とテーブルを固定することで、当該鋼板に全ての重量物を固定する。
これにより、縦型の工作機械のコラムの剛性をより向上させることができ、低コストも実現することができる。
また、請求項2に記載の縦型工作機械のコラム構造によれば、基礎となる柱としての鋼板の、平行に配置する鋼板の枚数を種々変更することで、当該工作機械における、主軸及び主軸送り装置、テーブル等の重量物の質量に応じて、適切に、軽量且つ高剛性のコラムを構成することができる。
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。以下、各図面においてX軸とY軸とZ軸は直交しており、Y軸は垂直方向を示し、X軸とZ軸は水平方向を示している。
●[工作機械1の外観(図1、図2)]
図1(A)は、本発明のコラム構造(縦型工作機械のコラム構造)を用いた縦型の工作機械1の一実施の形態の概略外観図(斜視図)の例を示しており、図1(B)は図1(A)から滑車K、カウンタウェイト60等の記載を省略した図である。また、図2(A)は図1(A)における工作機械1の側面図の例を示している。
図1(A)及び(B)、図2(A)に示すように、縦型の工作機械1は、コラム10における鉛直面10f(鉛直方向の面)の1つの面に、ワークWを保持するテーブル50と、主軸30を上下に移動する主軸送り装置40が固定されている。なお、主軸30にはワークWを加工する加工工具32が下方に向けて設けられている。
コラム10の上面には滑車K(滑車ユニット)が設けられ、前記滑車Kには主軸30とカウンタウェイト60とを接続するワイヤCが掛けられており、主軸送り装置40は、主軸30を、より小さな力で容易に上下に移動させることができる。
なお、本実施の形態では、滑車K(滑車ユニット)は、各々2個の滑車を備えているが、各滑車ユニット内の滑車の数は限定しない。また、滑車ユニットの数も特に限定しない。
図2(A)に点線10aで示すように、コラム10の剛性が低いと、主軸送り装置40、テーブル50、ワークW等の重量物が配置された鉛直面10fの側にコラム10が変形する場合がある。また、主軸30及びカウンタウェイト60の重量もコラム10の上面から鉛直下方にかかり、コラム10の変形を助長する。
この場合、加工工具32の先端部32sと、ワークW上の目標加工個所Wsとの位置が、図2(B)に示すようにZ軸方向にずれ、加工精度に影響を及ぼす場合がある(Z軸方向にずれた距離を「相対変位距離L」とする)。また、この場合の加工工具32の軸心と鉛直方向とのなす角度をα[°]、ワークWの軸心と鉛直方向とのなす角度をβ[°]とする。
●[コラムの構成(図3(A)及び(B))]
図3(A)に示すように、本実施の形態にて説明する工作機械1のコラム10は、複数の鋼板を組み合わせて形成されており、基礎となる柱としての鋼板20(図3(A)の例では鋼板20は2枚)が、厚さ方向の1つの面を底面として配置されている。
図3(A)及び(B)に示す例では、コラム10は、基礎となる柱としての鋼板20、リブ用鋼板12A、12B、底面鋼板11B、上面鋼板11U、前面鋼板11F、背面鋼板11H、側面鋼板11R、11Lにて構成されている。
各鋼板は、例えば溶接接合で溶着されている。このため、鋳物一体構造と比較して、鋳型が不要であり、製造コストが安く、少量生産に向いている。
また、基礎となる柱の鋼板20の厚さ方向の面であり且つ鉛直方向に平行2つの面の一方を正面として、前記正面の鉛直面20Fには、主軸送り装置40及びテーブル50が上下に配置されて直接固定される(例えば、鉛直面20Fにボルト等で固定される)。前面鋼板11Fには複数の貫通穴11Fa(又はねじ穴)が設けられており、当該貫通穴11Faは、鋼板20の鉛直面20Fの位置に設けられている。
また、当該鋼板20の上面20Uには、滑車ユニットが直接固定される(例えば、上面20Uにボルト等で固定される)。上面鋼板11Uには複数の貫通穴11Ua(又はねじ穴)が設けられており、当該貫通穴11Uaは、鋼板20の上面20Uの位置に設けられている。このように、主軸30とカウンタウェイト60を支持する滑車ユニットの直下に鋼板20を配置し、荷重を支持する構造とする。
従って、当該鋼板20に、主軸30及びカウンタウェイト60、主軸送り装置40、テーブル50等の重量物の荷重が直接かかるように構成されている。これにより、図3(A)に示す構成の本実施の形態のコラム10は、従来の鋳物一体構造のコラムや、パイプ等のフレーム構造のコラムと比較して、非常に高い剛性を有しており、変形量が小さく、加工精度をより向上させることができる。
基礎となる柱としての鋼板20は、例えば10[mm]程度〜50[mm]程度の所定の厚さであり、鋳物やパイプ等よりも強度、ヤング率ともに大きい。なお、鋼板20の厚さは、工作機械1に応じて適切な厚さを選定する。
●[基礎となる柱の鋼板20の厚さ(図4(A)及び(B))]
次に図4(A)及び(B)を用いて、鋼板20の厚さについて説明する。
図3(A)に示すように、例えば鋼板20の鉛直面20Fには前面鋼板11Fが取り付けられる。この場合、鋼板20の厚さTが約30[mm]以下であれば、鉛直面20Fと前面鋼板11Fとを溶接接合することが好ましい(図4(A))。しかし、厚さTが約30[mm]を超えると溶接部の剥がれが生じる可能性があるため、ボルトBにて固定することが好ましい(図4(B))。
●[鋼板20の枚数と本実施の形態の効果(図5、図6)]
図5(B)〜(E)は、本発明の工作機械のコラム10の構造の例を5つ示しており、図5(A)は従来の鋳物一体構造のコラム100の例を示している。なお、図5(A)〜(E)はコラム10の平面図を示している(上面鋼板は省略している)。また、図5(A)〜(E)では、コラムの剛性に最も寄与している部材をハッチングで示している。
また図6は図5(A)〜(E)の各コラムにおける相対変位距離L(図2(B)参照)の評価結果のグラフを示している。
図5(B)に示すコラム10は基礎となる柱の鋼板20を2枚平行に配置(厚さ方向に垂直な面を対向させて配置)しており、図5(C)に示すコラム10は前記鋼板20を3枚平行に配置しており、図5(D)に示すコラム10は前記鋼板20を4枚平行に配置しており、図5(E)に示すコラム10は前記鋼板20を5枚平行に配置している。
また、図5中に示した点線は、滑車ユニット、主軸送り装置、テーブル50が固定される位置を示しており、本実施の形態の例を示す図5(B)〜(E)では、当該点線は鋼板20を通る。なお、各ユニット(滑車ユニット、主軸送り装置、テーブル等)の固定位置は点線位置に限らず鋼板20のどれを使っても構わない。また、図5中では2位置で固定(点線位置)しているが、1位置、3位置以上でも構わない。
[従来の鋳物一体構造のコラム100(図5(A))]
従来の鋳物一体構造のコラム100では、滑車ユニット、主軸送り装置、テーブル50がコラム100の面(内部が中空状の面)に取り付けられる。鋳物では局所変形量が鋼板よりも大きい。
このため、図6の(A)に示すグラフのように、相対変位距離Lが、(B)〜(E)に示す本発明のコラムよりも大きい。
[鋼板20を2枚平行に配置したコラム10(図5(B))]
2枚の鋼板20を平行に配置したコラム10では、各鋼板20の厚さT2を50[mm]に設定して実験した。この場合、「相対変位距離L」は、(A)に示す従来の鋳物一体構造のコラム100よりも小さく、(B)〜(E)の中でも最も小さかった。
[鋼板20を3枚平行に配置したコラム10(図5(C))]
3枚の鋼板20を平行に配置したコラム10では、各鋼板20の厚さT3を25[mm]に設定して実験した。この場合、「相対変位距離L」は、(A)に示す従来の鋳物一体構造のコラム100よりも小さく、(B)〜(E)の中では4番目に小さかった。
[鋼板20を4枚平行に配置したコラム10(図5(D))]
4枚の鋼板20を平行に配置したコラム10では、各鋼板20の厚さT4を25[mm]に設定して実験した。この場合、「相対変位距離L」は、(A)に示す従来の鋳物一体構造のコラム100よりも小さく、(B)〜(E)の中では2番目に小さかった。
[鋼板20を5枚平行に配置したコラム10(図5(E))]
5枚の鋼板20を平行に配置したコラム10では、5枚の中心に配置した鋼板20の厚さT5bを19[mm]に設定し、他の4枚の鋼板20の厚さT5aを25[mm]に設定して実験した。この場合、「相対変位距離L」は、(A)に示す従来の鋳物一体構造のコラム100よりも小さく、(B)〜(E)の中では3番目に小さかった。
このように、図5(B)〜(E)に示す本発明の工作機械のコラム10の構造の例は、図5(A)に示す従来の鋳物一体構造のコラム100よりも剛性が高いため、図6に示す相対変位距離Lを小さくすることができた。
なお、平行に配置する鋼板20の数、及び各鋼板20の厚さは、適宜変更することができる。
本発明の縦型工作機械のコラム構造は、本実施の形態で説明した外観、構成等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
本発明のコラム構造(縦型工作機械のコラム構造)を用いた縦型の工作機械1の一実施の形態の概略外観図である。 図1(A)における側面図、及び相対変位距離Lを説明する図である。 本発明のコラム10の構造を説明するための概略図である。 厚さTの鋼板20と、他鋼板(この例では前面鋼板11F)との接続(固定方法)を説明する図である。 本発明のコラム10の一実施の形態を説明する図である((B)〜(E)が本発明のコラム10の例であり、(A)は従来の例)。 図5(A)〜(E)に示す各コラムにおける相対変位距離Lを測定した結果を示すグラフである。 従来のコラム構造を説明する平面図(断面図)である。
符号の説明
1 工作機械
10 コラム
10f 鉛直面
11F 前面鋼板
11H 背面鋼板
11R 側面鋼板(右側)
11L 側面鋼板(左側)
12A〜12H リブ用鋼板
20 鋼板(基礎となる柱)
20f 取付面
20U 鋼板20の上面
20F 鋼板20の厚さ方向の鉛直面
30 主軸
32 加工工具
40 主軸送り装置
50 テーブル
60 カウンタウェイト
K 滑車(滑車ユニット)
C ワイヤ
W ワーク

Claims (2)

  1. コラムと、主軸と、前記コラムに固定されて前記主軸を上下に移動する主軸送り装置と、前記コラムに固定されてワークを保持するテーブルと、前記主軸とワイヤにて接続されたカウンタウェイトとを備えた縦型工作機械のコラム構造であって、
    前記コラムは鋼板を組み合わせて形成されており、基礎となる柱として所定の厚さの鋼板が厚さ方向の1つの面を底面として配置されており、
    前記鋼板の厚さ方向の面であり且つ鉛直方向に平行な2つの面の一方を正面として、前記鋼板の正面には前記主軸送り装置と前記テーブルとが上下に配置されて固定されているとともに、前記鋼板の上面には前記ワイヤを掛ける滑車が設けられ、当該鋼板に前記主軸と前記カウンタウェイトと前記主軸送り装置と前記テーブルの荷重が直接かかるように構成されている、
    ことを特徴とする縦型工作機械のコラム構造。
  2. 請求項1に記載の縦型工作機械のコラム構造であって、
    前記コラムには、前記基礎となる柱としての複数枚の鋼板が、厚さ方向に垂直な面を対向させて平行に配置されている、
    ことを特徴とする縦型工作機械のコラム構造。

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