以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致していない。
(クリーニング部材)
図1は本発明のクリーニング部材の好適な一実施形態を示す説明図である。図2は図1に示されるII−II線方向のクリーニング部材の概略断面図である。なお、図1中には、クリーニング部材と共にクリーニング対象物を示した。
図1及び図2に示すように、クリーニング部材1はローラ形状であり、棒状の支持部3と、該支持部3の外周面上に形成された当接部5とを備える。
支持部3は、円柱状の棒状の部材である。支持部3の材質は特に制限されず、例えば金属又は樹脂等の材料が挙げられる。なお、支持部3が樹脂から構成される場合には、目的に応じて導電性物質を含有させるなどして、導電性を付与してもよい。支持部3としては、例えば、シャフトが使用される。
当接部5は、支持部3の外周面上に略均一な膜厚で形成され略円筒状である。当接部5は、長さが5mm以上10mm以下の無機繊維である繊維状物質を含有する樹脂発泡体で構成されている。
繊維状物質としては、長さが5mm以上10mm以下の無機繊維で、細長い形状をしたものであれば特に限定されないが、その直径は5nm〜100μmであることが好ましい。繊維状物質としては、無機物で構成される無機繊維が用いられる。
無機繊維としては、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維、スチール、銅、複合アモルファス金属等から構成される金属繊維等が挙げられる。
繊維状物質は、優れた強度を有することから、無機繊維が用いられ、炭素繊維、ガラス繊維がより好ましい。
当接部5を構成する樹脂発泡体は、上記の繊維状物質に加えて無機粒子を更に含有することが好ましい。無機粒子としては、鉄、亜鉛、ニッケル、銅、真鍮、アルミニウム、チタン等の金属微粒子、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化鉄等の金属酸化物微粒子、ダイヤモンド、コランダム、トパーズ、水晶、正長石、アパタイト、蛍石、方解石、石英ガラス、ざくろ石、ジルコニア、炭化ケイ素、炭化ホウ素等の鉱物微粉末などの研磨剤粒子が挙げられる。これらの中でも、モース硬度で3程度以上の比較的高硬度なものが研磨剤粒子として好適である。
なお、樹脂発泡体がこれらの無機粒子を含有する場合には、保護層を有さない感光体では無機粒子の硬度に起因して感光層にスクラッチ傷が発生するおそれがある。そのため、無機粒子を用いる場合には、後述するように、保護層を有する感光体と組み合わせることが好ましい。これにより、無機粒子を添加した樹脂発泡体を有するクリーニング部材でクリーニングしても感光体表面が大きく傷つくことなく、良好なクリーニング効果が得られる。
樹脂発泡体は、通常良く知られる合成樹脂を原料として構成される。原料となる樹脂として好適なものとしては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ビスコース、アイオノマー等の熱可塑性樹脂、又はポリウレタン、ラバー、エポキシ樹脂、フェノール/ユリア樹脂、メラミン樹脂、ピラニル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
原料となる樹脂としては、その硬度や耐久性の点で熱硬化性樹脂が好ましく、熱硬化性樹脂の中でもウレタン樹脂、メラミン樹脂等がより好ましい。
ここで、原料がウレタン樹脂である場合、ポリオール成分としては疎水性及び親水性のいかなるポリオールでも使用できるが、経済性、取扱性の点で、ポリプロピレングリコール及びエチレンオキサイド付加体のポリエーテル系のポリオール等が好ましく用いられる。
一方、イソシアネート成分としては、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)等を挙げることができる。中でも経済性、取扱性の点からMDI、TDIが好ましく使用される。
樹脂発泡体には、その効果を増進するために、上述した構成材料に加えて、その他各種の添加剤を含有させることが好ましい。例えば、樹脂発泡体の網目構造中に取り込まれた酸化性物質の影響を低減するための酸化防止剤、劣化防止剤、クリーニング部材1とクリーニング対象物7とのすべり性を向上させるための潤滑剤等が挙げられる。
酸化防止剤、劣化防止剤としては、耐酸化性の向上の目的で感光体中に添加されるものと同様の酸化防止剤や劣化防止剤を用いることができる。具体的には、後述する感光体において使用されるものと同様のものが挙げられる。なお、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があるが、フェノール系酸化防止剤が比較的よく使用される。
より具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン等が挙げられる。これらの酸化防止剤、劣化防止剤は、樹脂発泡体の総質量を基準として、0.01〜20wt%の範囲で添加されることが好ましい。
上記潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸銅、パルチミン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛等の固体潤滑剤を利用することができる。
樹脂発泡体を製造する際には、先ず、上述した樹脂、繊維状物質、並びにその他の必要な材料(無機粒子、酸化防止剤など)を混合する。繊維状物質を混合する方法としては、繊維状物質を適当な長さに切断後、樹脂中に分散する等の各種の方法が可能である。また、繊維状物質を樹脂中に分散する場合には、樹脂への分散性や機械的強度を勘案して適当な材料を選択することが好ましい。
そして、得られた混合物を金型に注入し、加熱硬化させて樹脂発泡体は製造する。なお、クリーニング部材1がローラ形状である場合には、シャフトがセットされた金型や円筒状の金型を使用すればよい。このように、樹脂発泡体の製造と共に所定の形状に形成された場合には、そのままの形状で当接部5として使用することが可能である。また、必要に応じて、成形体を研磨するなど加工処理を施してもよい。
また、樹脂発泡体がウレタン樹脂フォームの場合には、ワンショット法やプレポリマー法を用いることができる(例えば、槇書店;ポリウレタン参照)。
例えば、ワンショット法ならば、ポリオール、トリレンジイソシアネート、触媒、界面活性剤及び水、並びに必要に応じて導電性を付与するための導電性材料,その他の添加剤を同時に混合攪拌する。起泡した反応混合物を金型に注入し、50〜90℃程度で数時間加熱硬化を行うことにより、樹脂発泡体は製造される。
また、プレポリマー法では、先ず、ポリオール及びトリレンジイソシアネートからプレポリマーを調製する。次に、得られたプレポリマー、プレポリマー調製時と同じ又は異なるポリオール、触媒、界面活性剤及び水、並びに、必要に応じてその他の添加剤を同時に混合攪拌する。そして、この起泡した反応混合物を用い、以降ワンショット法と同様の方法にて樹脂発泡体を製造する。
また、樹脂発泡体がメラミン樹脂発泡体の場合には、一般的には主原料であるメラミン及びホルムアルデヒド等に、触媒及び乳化剤等を配合し、さらに発泡剤を添加して混合する。その後、電子線を照射する等の方法により製造することができる。
樹脂発泡体としては、さらに特開2003−66807号公報に記載されるように、発泡構造を三次元網目状構造にすることがより好ましい。ここで、「三次元網目状構造」とは、微細なサブミクロンオーダーの繊維状の樹脂がきめ細かく絡み合った状態で三次元的に結びついており、微細なセルが形成された構造をいう。
なお、樹脂発泡体を三次元網目状構造とする場合には、例えば、以下のようにして形成することができる。すなわち、発泡させる樹脂と特定の溶剤に溶解する樹脂とを十分に混練し熱硬化させた後、特定の溶剤に浸漬することで発泡樹脂部分だけが残った三次元網目構造とすることができる。
以上説明したように、樹脂発泡体は発泡構造を有しており、クリーニング対象物7に対する追従性が高い。また、その表面には複数の微小な開口が形成され網目状となっている。したがって、その網目状の表面により、クリーニング対象物7が十分にクリーニングされることで、クリーニング対象物7の付着物が十分に除去される。また、かかる樹脂発泡体中には繊維状物質、あるいは更に無機粒子が含有されており、優れた掻き取り性を有する。なお、繊維状物質を用いる場合、その樹脂発泡体中の含有量は、樹脂発泡体の全体積に対して0.1〜60質量%が好ましい。繊維状物質の含有量がこの範囲の場合には、樹脂発泡体表面に繊維状物質の形状が好適に反映されることから、優れた掻き取り性が発揮される。また、無機粒子を用いる場合、その樹脂発泡体中の含有量は、樹脂発泡体の全体積に対して1〜30質量%が好ましい。
クリーニング部材1は、その当接部5(外周面)が繊維状物質、あるいは更に無機粒子を含有する樹脂発泡体で構成されており、当接部5はクリーニング対象物7に当接可能に設けられている。なお、クリーニング部材1は、例えば、後述する画像形成装置又はクリーニング装置に取り付けられて使用される。ここで、クリーニング対象物7としては、電子写真感光体が好ましく、中間転写体、帯電部材又は転写部材でもよい。
クリーニング部材1は、クリーニング対象物7の表面にクリーニング部材1の当接部5が接離自在(図1中の矢印A1又はA2方向に移動可能)に設置されることが好ましく、またクリーニング対象物7の軸方向(図1中の矢印B1又はB2方向)に往復移動自在に設置されることが好ましい。このように設置することで、クリーニング部材1の使用時におけるクリーニング性をさらに向上させることができる。
また、クリーニング部材1は、ローラ形状であることから、クリーニング対象物7との当接位置が使用に伴い変化する。したがって、クリーニング部材1の局所的な劣化が抑制され、クリーニング部材1を長期間使用することができる。
クリーニング部材1は、絶縁性であっても導電性であってもよい。なお、「導電性」には半導電性をも含むものとする。導電性とした場合には、クリーニングバイアスを印加する場合もある。クリーニングバイアスを印加することで、帯電したトナーをクリーニング部材1に捕集することが容易となる。なお、導電性を付与するためには、樹脂発泡体にカーボンブラック、金属微粒子、金属酸化物微粒子等の各種の導電性微粒子を添加すればよい。
続いて、ローラ形状のクリーニング部材1の好適な他の実施形態について図3を参照して説明する。図3は、ローラ形状のクリーニング部材1の好適な他の実施形態を示す概略断面図である。
図3に示されるローラ形状のクリーニング部材1は、支持部3と、該支持部3の外周面上に形成された接着部4と、該接着部4の外周面上に形成された当接部5とを備える。
図3に示されるローラ形状のクリーニング部材1の支持部3及び当接部5は、図2に示される支持部3及び当接部5と同様の構成とすることができる。また、接着部4は、通常使用される樹脂を用いて構成することができる。かかる接着部4により、支持部3と当接部5との接着性の向上、またクリーニング部材の弾性を調整することが可能となる。なお、接着部4は、複数の層から構成されていてもよい。
ローラ形状のクリーニング部材1としては、上記の実施形態に限定されず、例えば、繊維状物質、あるいは更に無機粒子を含有する樹脂発泡体をシート状に形成し、かかるシート状の樹脂発泡体を、樹脂含有層を形成したシャフト上に巻きつけるなどして構成してもよい。また、シート状の樹脂発泡体を切断した細条を、シャフト上に巻きつけてローラ形状に構成してもよい。
図4は、本発明のクリーニング部材の好適な他の実施形態を示す説明図である。図4に示すように、クリーニング部材2は、板状の支持部3と、該支持部3の一面に形成された、シート状の当接部5とを備える。
クリーニング部材2における支持部3及び当接部5としては、クリーニング部材1の支持部3及び当接部5と形状が異なること以外は、同様の材料を用いて構成できる。クリーニング部材2は、支持部3上に当接部5は直接形成して製造できる。また、繊維状物質、あるいは更に無機粒子を含有する樹脂発泡体をシート状に形成し、その樹脂発泡体を支持部3上に接着剤を使用して貼り付けることで製造することもできる。
また、クリーニング部材2は、クリーニング対象物7の表面にクリーニング部材2の当接部5が接離自在(図1中の矢印A1又はA2方向に移動可能)に設置されることが好ましく、またクリーニング対象物7の軸方向(図1中の矢印B1又はB2方向)に往復移動自在に設置されることが好ましい。このように設置することで、クリーニング部材2の使用時におけるクリーニング性をさらに向上させることができる。
(画像形成装置)
次に、本発明の画像形成装置について説明する。本発明の画像形成装置は、上記本発明のクリーニング部材を備えている。
図5は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。図5に示す画像形成装置100は、電子写真感光体10と、電子写真感光体10を電子写真感光体10を接触方式により帯電させる帯電装置21と、帯電装置21に接続された電源22と、帯電した電子写真感光体10を露光して静電潜像を形成させる露光装置23と、静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像装置24と、現像装置24により電子写真感光体10に現像されたトナー像を被転写媒体に転写する転写装置25と、転写後の電子写真感光体10をクリーニングするクリーニング装置26と、定着装置27とを備える。なお、画像形成装置100において、電子写真感光体10は円筒形状であり、露光装置23、現像装置24、転写装置25及びクリーニング装置26は、電子写真感光体10の周方向に沿って、この順に配置されている。
ここで、クリーニング装置26は、ハウジング26a内に本発明のクリーニング部材26bを備えており、クリーニング部材26bは電子写真感光体10に当接して配置されている。画像形成装置100においては、クリーニング部材26bにより、電子写真感光体10はクリーニングされる。
例えば、クリーニング部材26bとして上記クリーニング部材1を電子写真感光体10のクリーニングに使用すると、感光体10表面の付着物が樹脂発泡体内部に取り込まれ、付着物の除去効果が十分に発揮される。また、微細な繊維状物質、あるいは更に無機粒子が感光体10上の微小な汚れを掻き出し、感光体10の表面を常に汚れのない状態に保つことができる。また、微細な繊維状物質、あるいは更に無機粒子が感光体10に強く押し当てられるため、汚れを固着させることなく、優れたクリーニング機能が発揮される。したがって、一度のクリーニング工程で、樹脂発泡体と繊維状物質、あるいは更に無機粒子との相乗作用により、感光体10表面が十分にクリーニングされる。
また、クリーニング部材26bは、感光体10に押し付けられてクリーニングが行われる。したがって、クリーニング部材26bの摺擦により、電子写真感光体10表面には新生面が形成する。オゾン生成物やフィルム化したトナー等の付着物は従来のクリーニングブレードでは除去が困難であり、吸湿効果により感光体表面の抵抗値を低下させ泳面伝導による画像抜けの原因となるが、画像形成装置100では新生面の形成に伴いこのような付着物が除去され画像抜けや画質流れの発生を抑制することができる。
クリーニング装置26は特に限定されないが、クリーニング部材により掻き取られた付着物を収容するハウジング26aと、クリーニング部材26bと、クリーニング部材26bを保持するホルダー(図示せず)と、ホルダーをハウジング26aに固定するための取り付け部材(図示せず)とを備えることが好ましい。
また、画像形成装置100において、感光体10は略円筒形状のものであり、第1軸を中心として回転自在に設けられる。そして、クリーニング部材26bは感光体10に当接して設置されるが、離接することが可能な構成で設置されることが好ましく、さらに感光体10の軸方向に往復移動自在に備えられることが好ましい。クリーニングの際に、クリーニング部材26bを感光体10の軸方向に往復移動させることで、感光体10表面を均一にクリーニングすることができる。
また、画像形成装置100においてクリーニング部材26bがローラ形状の場合には、画像形成の際にクリーニング部材26bの回転速度と感光体10の回転速度とに速度差を設けることが好ましい。速度差を設けることで、感光体10とクリーニング部材26bとの摩擦が大きくなり、付着物をさらに十分にこすり取ることができる。
画像形成装置100においては、感光体10が上記一般式(I)で示される化合物を含有する層を感光層の導電性支持体から最も遠い側に有する場合でも、感光体10はクリーニング部材26bが強くこすりあてられても、機械的強度に優れ、優れた耐磨耗性を有することから電子写真特性に影響はない。一方、上記特定の層を有さない感光体の場合には、クリーニング部材26bが感光体表面に当接してクリーニングされることで、感光体は比較的磨耗しやすい。したがって、クリーニング部材26bを用いる画像形成装置100においては、長寿命化を達成するために上記特定の層を有する感光体を使用することが好ましい。
また、従来の繊維状物質、あるいは更に無機粒子を含有する樹脂発泡体を使用しないブレードタイプのクリーニング部材では、感光体表面を微小に剥離磨耗させることにより付着物を除去していた。一方、上記一般式(I)で示される化合物を含有する層を感光層の導電性支持体から最も遠い側に有する感光体は耐磨耗性に優れる。そのため、従来のクリーニング部材では感光体を剥離磨耗させることが困難であったが、クリーニング部材26bでは一度のクリーニング工程で感光体10表面を摺擦することが可能であり、また高いクリーニング圧を感光体表面に加えることができる。その結果、感光体に付着したフィルム化したトナーやオゾン生成物等の除去しにくい付着物も十分に除去することが可能となる。
以下、電子写真感光体10について詳述する。図6〜7はそれぞれ電子写真感光体の好適な一例を示す模式断面図である。図6に示す電子写真感光体は、電荷発生物質を含有する層(電荷発生層15)と電荷輸送物質を含有する層(電荷輸送層16)とに機能が分離された感光層13を備えるものである。また、図7は、電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の層(単層型感光層18)に含有するものである。なお、感光層は、基本的には単層構造であっても、電荷発生層15と電荷輸送層16とに機能が分離された積層構造であってもよい。積層構造の場合、電荷発生層15と電荷輸送層16の積層順序はいずれが上層であってもよい。
図6に示す電子写真感光体10は、導電性支持体12上に下引層14、電荷発生層15、電荷輸送層16及び保護層17が順次積層された構造を有するものである。また、図7に示す電子写真感光体10は、導電性支持体12上に下引層14、単層型感光層18、保護層17が順次積層された構造を有するものである。なお、電子写真感光体10としては、下引層14及び/又は保護層17がないものでもよい。
以下、電子写真感光体10の各要素について説明する。
導電性支持体12としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属で構成される金属ドラム又は金属シート;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基体上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着し導電処理したもの;上記基体上に酸化インジウム、酸化錫等の導電性金属化合物を蒸着したもの、金属箔をラミネートし導電処理したもの;上記基体上にカーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散し、塗布することによって導電処理したものが挙げられる。これらの導電性支持体12は、ドラム状、シート状、プレート状等の形状で使用されるが、ドラム状であることが好ましい。
また、導電性支持体12としては、結着樹脂中にカーボンブラック粒子、金属微粉末、金属酸化物微粒子等の導電性微粒子を分散し、遠心成型や押し出し成型等によりパイプ状に形成した導電性プラスチック基材も用いることができる。
導電性支持体12として金属パイプ基材を用いる場合、その表面は素管のままであってもよい。なお、金属パイプ基材に対して、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング等の処理が行われていてもよい。
また、導電性支持体12としては、アルミニウム合金で構成される金属パイプが好ましい。導電性支持体12として用いられるアルミニウム合金には、陽極酸化処理を行うことができる。アルミニウムは、純アルミ系又はアルミニウム合金のいずれも使用可能である。例えば、JIS1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウム又はアルミニウム合金が好適である。陽極酸化被膜は、各種金属、各種合金を電解質溶液中において陽極酸化処理したものである。かかる被膜としては、アルミニウム若しくはアルミニウム合金を電解質溶液中で陽極酸化処理を行った際に形成されるアルマイトと呼ばれる被膜が好適である。アルマイト被膜は、高いキャリアブロッキング性を有し、特に、反転現像(ネガ・ポジ現像)に用いた際に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止する点で優れている。また、接触帯電時に生じやすい接触帯電器からの電流リーク現象を防止することができる点でも優れている。
陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中において行われる。このうち、硫酸浴による処理が最も適している。処理条件の一例を挙げると、硫酸濃度:10〜20%、浴温:5〜25℃、電流密度:1〜4A/dm2、電解電圧:5〜30V、処理時間:5〜60分程度の条件が通常用いられる。このように形成された陽極酸化被膜は、多孔質であり、絶縁性が高く、表面が非常に不安定である。このため、作製後に経時変化し陽極酸化被膜の物性値が変化しやすくなっている。これを回避するために、陽極酸化被膜を更に封孔処理することが通常行われる。封孔処理には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化被膜を浸漬する方法、陽極酸化被膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法等がある。このうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最も一般的に行われる。
封孔処理に引き続き、陽極酸化被膜の洗浄処理が行われる。これは封孔処理により付着した金属塩等の余分なものを除去することが主たる目的である。このような余分の金属塩等が導電性支持体12(陽極酸化被膜)表面に過剰に残存すると、陽極酸化被膜上に形成する塗膜の品質に悪影響を与える。また、一般的に低抵抗成分が残ってしまうため、逆に地汚れの発生原因にもなってしまう。洗浄は純水1回の洗浄でもよいが、通常は多段階の洗浄を行う。この際、最終の洗浄液が可能な限りきれいな(脱イオンされた)ものであることが好ましい。また、多段階の洗浄工程のうち1工程に接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことが望ましい。
以上のようにして形成される陽極酸化被膜の膜厚は、3〜15μm程度が好適である。陽極酸化膜上には多孔質陽極酸化層の下にバリア層といわれる層が存在する。バリア層の膜厚は本システムにおいては100〜10000nmが好適である。陽極酸化被膜の膜厚が、上記の範囲より薄すぎる場合には陽極酸化被膜としてのバリア性の効果が不十分となる傾向があり、上記の範囲より厚すぎる場合には電極としての時定数が大きくなりすぎて、残留電位の発生や繰り返し特性の悪化、感光体の応答が劣化する場合がある。
下引層14は、結着樹脂及び有機金属化合物を含有して構成される。下引層14は、上層塗布時の濡れ性改善や、ブロッキング性の強化等の機能を有する。
下引層14に使用される結着樹脂としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物が挙げられる。下引層14に使用される有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子等を含有する有機金属化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いることができる。
有機金属化合物としては、上記の中でも、ジルコニウム若しくはシリコンを含有する有機金属化合物が好ましい。ジルコニウム若しくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く、環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
有機金属化合物は、単独又は2種以上を混合して、或いは上述した結着樹脂と混合して用いることが可能である。
なお、有機シリコン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
特に好ましく用いられる有機シリコン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
なお、下引層14としては、結着樹脂に適度な抵抗値の金属酸化物を分散して適度に塗膜の抵抗値を調整し、残留電荷の蓄積を防ぎつつ且つ一定の膜厚を持つことで感光体の耐リーク性、特に接触帯電時のリーク防止能力を上げたタイプの下引層(分散型下引層)もある。この場合には、抵抗制御剤を分散することにより、上述の構成より厚膜化が可能となりより厚い膜厚で使用することができる。
この分散型下引層としては、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属粉体、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末等の導電性物質を結着樹脂に分散し、導電性支持体12上に塗布して形成したものが挙げられる。
導電性金属酸化物としては、平均粒径0.5μm以下の微粒子が好ましく用いられる。ここで、粒径とは平均1次粒径を意味する。下引層は、リーク耐性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要であり、そのため金属酸化物微粒子としては102〜1011Ω・cm程度の粉体抵抗が必要である。
金属酸化物粒子の中でも上記抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子を用いることが好ましい。なお、上記範囲の下限値よりも金属酸化物微粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られ難くなる傾向がある。他方、上記範囲の上限値よりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。
また、金属酸化物微粒子は、2種以上混合して用いることもできる。さらに、金属酸化物微粒子へカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体の抵抗を制御することができる。表面処理に使用可能なカップリング剤としては、上述の非分散型下引層の説明に記述したものと同様の材料を用いることができる。
具体的なカップリング剤としては特に限定されないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して用いることもできる。
表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法又は湿式法を用いることができる。乾式法にて表面処理を施す場合には、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒若しくは水に溶解させたカップリング剤を滴下し、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。添加又は噴霧する際には、50℃以上の温度で行われることが好ましい。添加又は噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。
焼き付けは、所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。乾式法においては、金属酸化物微粒子をカップリング剤による表面処理前に加熱乾燥して表面吸着水を除去することができる。この表面吸着水を処理前に除去することによって、金属酸化物微粒子表面に均一にカップリング剤を吸着させることができる。
湿式法としては、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌、又は超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散する。カップリング剤溶液をさらに添加し攪拌又は分散した後、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においても、金属酸化物微粒子をカップリング剤による表面処理前に表面吸着水を除去することができる。この表面吸着水除去方法としては、乾式法と同様の加熱乾燥の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が実施できる。
金属酸化物微粒子に対する表面処理剤の量は、所望の電子写真特性が得られる量であることが必須である。
電子写真特性は、表面処理処理後に金属酸化物微粒子に付着している量によって影響され、シランカップリング剤の場合、その付着量は蛍光X線分析におけるSI強度と該金属酸化物の主たる金属元素強度から求められる。蛍光X線分析における好ましいSI強度は、該金属酸化物の主たる金属元素強度の1.0×10−5〜1.0×10−3の範囲である。この範囲を下回った場合、かぶり等の画質欠陥が発生しやすくなる傾向があり、この範囲を上回った場合には残留電位の上昇による濃度低下が発生しやすくなる傾向がある。
この分散型下引層用の結着樹脂としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物が挙げられる。また、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることもできる。上記の中でも、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特に、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
下引層14は、上述した各構成材料を溶媒に溶解及び/又は分散させた下引層形成用塗布液を導電性支持体12上に塗布して形成される。なお、分散型下引層を形成する際には、分散型下引層形成用塗布液中の金属酸化物微粒子と結着樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
下引層形成用塗布液に使用される溶媒としては、公知の有機溶剤を使用することができる。例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、Iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤が挙げられる。また、これらの溶剤は単独又は2種以上混合して用いることができる。
なお、2種以上を混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かすことができる溶剤であればいかなるものでも使用することが可能である。
下引層形成用塗布液には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。シランカップリング剤は金属酸化物微粒子の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いることもできる。
ここで用いられるシランカップリング剤の具体例として、金属酸化物微粒子の表面処理に用いるカップリング剤の具体例と同様なものを用いることができる。ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。これらの化合物は、単独に又は複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いることができる。
金属酸化物微粒子を塗布液中に分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
下引層14を形成する際の塗布方法としては、浸漬塗布法、リング塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
下引層14の膜厚は、0.1〜3μmが好ましい。下引層14は、上層の濡れ性改善の他に、電気的なブロキング層としての役割も果たすが、膜厚が3μmを超える場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす傾向がある。
また、分散型下引層の膜厚は、3μm以上が好ましく、さらに好ましくは5μm以上30μm以下である。さらに分散型下引層は、リーク耐性向上のためにはビッカース強度が35以上になるような樹脂及びフィラー構成となることが好ましい。
また、下引層の表面粗さはレーザ光源による干渉縞像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n倍(nは上層の屈折率)からλ程度の粗度を有するように調整する場合もある。表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子を添加することもできる。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。また、表面粗さ調整のために下引層を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
電荷発生層15は、電荷発生物質を含んで構成される。電荷発生層15は、電荷発生物質を真空蒸着により、又は電荷発生物質及び結着樹脂を含む電荷発生層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷発生層15に使用される電荷発生物質としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物及びセレン合金、アモルファスシリコン、硫化カドミウム等の無機系光導電体及びこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、銅フタロシアニン、錫フタロシアニン、ガリウムフタロシアニン等の各種フタロシアニン顔料、ナフタロシアニン顔料、スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、トリスアゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料及び染料が用いられる。
また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン顔料ではα型、β型等をはじめとしてさまざまな結晶型が知られている。なお、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることが可能である。
上述した電荷発生物質の中でも、優れた性能が得られる電荷発生物質として以下の化合物が特に好適である。Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°,10.0°,25.2°及び28.0°の位置に回折ピークを有する結晶型に代表されるヒドロキシガリウムフタロシアニン。Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°,16.5°,25.4°及び28.1°の位置に回折ピークを有する結晶型に代表されるクロルガリウムフタロシアニン。Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°,24.2°及び27.3°の位置に回折ピークを有する結晶型に代表されるチタニルフタロシアニン。
なお、結晶の形状や測定方法により、これらのピーク強度の位置が微妙にこれらの値から外れることもあるが、X線回折パターンが基本的に一致しているものであれば同じ結晶型であると判断できる。
電荷発生層15に使用される結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプ又はビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂及びその共重合体、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上混合して用いることが可能である。
電荷発生層15を電荷発生層形成用塗布液を用いて形成する場合、電荷発生物質と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1〜1:10の範囲が望ましい。
電荷発生物質を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、ダイノーミル、サンドミル、コロイドミル等を用いる方法が挙げられる。
電荷発生層15の膜厚は、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2.0μmがより好ましい。
電荷輸送層16は、電荷輸送物質及び結着樹脂を含んで構成される。
電荷輸送層16に用いられる電荷輸送物質としては、下記に示すものが例示できる。2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン、1−ピレンジフェニルヒドラゾン、9−エチル−3−[(2−メチル−1−インドリニルイミノ)メチル]カルバゾール、4−(2−メチル−1−インドリニルイミノメチル)トリフェニルアミン、9−メチル−3−カルバゾールジフェニルヒドラゾン、1,1−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)アクリルアルデヒドジフェニルヒドラゾン、β,β−ビス(メトキシフェニル)ビニルジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質。
クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン、3,5−ジメチル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送物質。また、以上に示した化合物から誘導される基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。これらの電荷輸送物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合せて使用できる。
積層型感光体では電荷輸送物質の電荷輸送極性により感光体の帯電極性が異なる。正孔輸送物質を用いた場合には感光体は負帯電で用いられ、電子輸送物質を用いた場合には正帯電で用いられる。両者を混合した場合には両帯電極性の感光体が可能である。電荷輸送層16に用いられる結着樹脂には任意のものを用いることができるが、特に電荷輸送物質と相溶性を有し適当な強度を有することが望ましい。
結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAやビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールTP等からなる各種のポリカーボネート樹脂やその共重合体、ポリアリレート樹脂やその共重合体、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、アチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
ポリカーボネート樹脂に関しては、上述したものを含めて各種の変性体を用いることが可能である。特に下記一般式(II−1)で示される繰り返し単位を有するものが好ましい。
ここで、上記式(II−1)中、Aは、アルキレン基、−CR39R40−、−O−、−S−、−SO−又は−SO2−を示し、R31〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又は環状炭化水素基を示す。R39とR40とは、互いに結合して環状炭化水素基を形成してもよい。また、nは1以上の整数を示す。上記Aで表されるアルキレン基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
上記R31〜R38で示されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1〜12の直鎖状のアルキル基、及び炭素数3〜12の分岐状のアルキル基が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、2−ノルボルニル基等が挙げられる。
上記R31〜R38で示される環状炭化水素基は、置換基を有していてもよく、炭素数3〜10の環状炭化水素基が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
また、ポリカーボネート樹脂は、上述した繰り返し単位が複数個組み合わさった共重合体構造を有していてもよい。
同様にポリアリレート樹脂も各種の変性体を用いることが可能である。ポリアリレート樹脂としては、下記一般式(II−2)で表される繰り返し単位のものが好ましい。
ここで、上記式(II−2)中のA、R31〜R38及びnは、上記式(II−1)中のA、R31〜R38及びnと同義である。また、ポリアリレート樹脂は、上述した繰り返し単位が複数個組み合わさった共重合体構造を有していてもよい。
結着樹脂として用いられる重合体の分子量は、感光層の膜厚や溶剤等の成膜条件によって適宜選択されるが、通常は粘度平均分子量で3000〜30万が好ましく、2万〜20万がより好ましい。
電荷輸送層16は、上述した電荷輸送物質及び結着樹脂、並びにその他の構成材料を適当な溶媒に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層15上に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。なお、電荷輸送物質と上記重合体との配合比は、10:1〜1:5が好ましい。
電荷輸送層16の形成に使用される溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素系、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或るいは直鎖状エーテル等、又はこれらの混合溶剤を用いることができる。
また、塗布液には塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としては、シリコーンオイルを微量添加することもできる。
電荷輸送層形成用塗布液を塗布する際には、浸漬塗布法、リング塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の塗布法を用いることができる。また、乾燥は、室温での指触乾燥の後に加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥は、30℃〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが望ましい。
電荷輸送層16の膜厚は、5〜50μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。
また、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、又は光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層13中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を含有させることが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としてより具体的には、フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等が挙げられる。
有機硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。有機燐系酸化防止剤としては、トリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスフィート等が挙げられる。
有機硫黄系及び有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われ、フェノール系又はアミン系等の1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系等の光安定剤が挙げられる。
ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系光安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(−2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル−)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル−)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。その他の化合物としては、2,4,ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメート等が挙げられる。
また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。使用可能な電子受容性物質としては、例えば、無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クローラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
保護層17の形態としては、絶縁性の樹脂層、金属酸化物等の抵抗制御剤を分散した抵抗制御型保護層、電荷輸送性を付与した高分子化合物による電荷輸送性保護層等が挙げられる。保護層17は、感光体の耐磨耗性を向上させ感光体寿命を向上させたり、現像剤とのマッチングを向上させたり、電子写真感光体の帯電時の電荷輸送層16の化学的変化を防止する等の機能を有する。そして、保護層17により、画像形成装置の高速化、長寿命化を実現することができる。
以下、抵抗制御型保護層について説明する。抵抗制御剤(抵抗制御用粒子)としては、カーボンブラックや金属、金属酸化物等を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン被覆酸化スズ、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したものが挙げられる。
また、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物等も抵抗制御剤として用いることができる。
これらの金属酸化物には、必要に応じて分散性等の諸特性の改善のためシランカップリング剤やチタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等の有機化合物で表面処理を行うことも可能である。
かかる抵抗制御剤は、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の高分子樹脂化合物(結着樹脂)等に分散して成膜される。
なお、顔料は結着樹脂に分散して成膜されるが、適当な塗膜抵抗を得るために顔料の添加量は調整される。顔料の添加量として固形分中に10〜60体積%、好ましくは20〜50体積%が含有される。
また、外部から感光体に貫入する導電性異物を保護層17で阻止するために、ある程度以上の高い硬度を有する樹脂を用いると、より効果的である。
抵抗制御型保護層は100nm以下の粒径の金属酸化物を用いるために透明性に富み、厚膜を形成しても透過率の低下が少ないために感度の減少が少ない。そのため、耐摩耗強度が高いのに加えて、厚膜化が可能な効果を併せて有しており、感光体寿命の向上が一層可能である。
次に、電荷輸送性保護層について説明する。かかる保護層は、電荷輸送性高分子化合物により形成することができる。この電荷輸送性高分子化合物としては、ポリビニカルバゾール等の電荷輸送能を有する基を側鎖に含む高分子化合物、特開平5−232727号公報等に開示されているような電荷輸送能を有する基を主鎖に含む高分子化合物、及びポリシラン等を挙げることができる。また、かかる保護層は、電荷輸送層としても機能する。
また、電荷輸送性高分子化合物として、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックよりなるブロック共重合体又はグラフト共重合体を使用することもできる。電荷輸送性高分子化合物が、トリアリールアミン構造を繰り返し単位として含有する場合は、高い電荷輸送能と好ましい機械的特性を有しているので好ましく、また、トリアリールアミン構造がペンダント型ではなく、主鎖中に含有している場合は、さらに好ましい。ペンダント型であると、ペンダント同士が会合し、電荷トラップを形成し電荷輸送性を悪化する場合が多いが、主鎖中に含有されていることでこのような問題を回避できる。
さらに、上記トリアリールアミン構造が下記一般式(III−1)又は(III−2)で示される構造の少なくとも1種以上を繰り返し単位として含有する場合は特に好ましい。
ここで、上記式(III−1)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示し、X2及びX3はそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、L1は枝分れ若しくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示し、m及びnは、それぞれ0又は1を示す。
ここで、上記式(III−2)中、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、L2は芳香族環構造を有する3価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示す。
上記一般式(III−1)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基から選ばれ、該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる。具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、メチレンジフェニル基、シクロヘキシリデンジフェニル基、オキシジフェニル基、チオジフェニル基等、及びこれらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ置換体、又はハロゲン置換体等が挙げられ、この中でも特に置換若しくは未置換のビフェニレン基が電荷輸送性の点で、特に好ましい。
X2及びX3はそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリーレン基から選ばれ、具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基等、及びこれらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ置換体、又はハロゲン置換体等が挙げられる。
L1は枝分れ若しくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮するかぎり任意であるが、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、シロキサン結合等から選ばれる結合基を含み、且つ炭素数が20以下であるものが好ましい。その具体例としては、下記(L1−1)〜(L1−8)で示されるものが挙げられる。
上記一般式(III−2)中、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基から選ばれ、該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基、ジアリールアミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
L2は芳香族環構造を有する3価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮するかぎり任意であるが、炭素数が20以下のものが好ましい。その具体例としては、下記(L2−1)〜(L2−5)で示されるものが挙げられる。
また、上記一般式(III−1)中のL1又は一般式(III−2)中のL2がエステル結合を有する場合は、機械的特性に優れ、電荷輸送能に優れるため特に好ましい。
以上説明した電荷輸送性高分子化合物を含有する電荷輸送性保護層は、上述した構成材料を含有する電荷輸送性保護層形成用塗布液を用いて形成される。この保護層を形成するための塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、リングコーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
また、保護層を形成するための塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン、アルコール等の通常の有機溶剤を単独又は2種以上混合して用いることができるが、できるだけこの塗布液が塗布される感光層を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
また、電荷輸送性保護層の膜厚は、0.1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは1〜10μmに設定される。
また、電荷輸送性保護層としては、ポリマー成分中に電荷輸送性機能を織り込んだ高分子電荷輸送物質や、シリコーンハードコート剤等の強靭なコート剤中に低分子の電荷輸送物質を分子分散させる等して電荷輸送機能機能をもたせた樹脂成分を含有して構成されるものもある。ポリマー成分中に電荷輸送機能を織り込んだ保護層としては、シリコーンポリマー中に電荷輸送物質機能基を織り込んだ保護層の例が挙げられる。かかるシリコーンポリマーとしては、下記一般式(I)で示される化合物を含有するものが挙げられる。
F−[D−A]a (I)
ここで、上記式(I)中、Fは電荷輸送性化合物から誘導される有機基を、Dは可撓性サブユニットを、Aは−SI(R1)(3−b)Qbで示される加水分解性基を有する置換ケイ素基(R1は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、bは1〜3の整数を、示す。)を、aは1〜4の整数を示す。
上記一般式(I)におけるSI基の部分は、互いに架橋反応を起こして3次元的なSI−O−SI結合、すなわち無機ガラス質ネットワークを形成するためのものである。SI基の数としては、1以上であれば無機ガラス質ネットワークと結合することは可能であるが、2以上、すなわち一般式(I)においてaが2以上のものが均一な膜を形成しやすく、より強固な硬化膜が得られるため好ましい。
一般式(I)におけるDとは、光機能性を付与するためのFを、3次元的な無機ガラス質ネットワークに直接化学結合で結びつけるためのものである。また、堅さの反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークに適度な可とう性を付与し、膜としての強度を向上させるという働きもある。具体的には、nを1〜15の整数とした場合の−CnH2n−、−CnH(2n−2)−、−CnH(2n−4)−で表わされる2価の炭化水素基、及び−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=CH−、−(C6H4)−(C6H4)−、及びこれらの組み合わせや置換基を導入したもの等が使用できる。
電荷輸送性化合物から誘導される有機基Fとしては、特に下記一般式(IV)で示される有機基が好ましい。
ここで、上記式(IV)中、Ar11〜Ar14はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Ar15は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr11〜Ar15のうち1〜4個は−D−Aで示される結合基と結合可能な結合手を有する。kは0又は1を示す。D及びAは上記式(I)中のD及びAと同義である。
一般式(IV)で表わされる化合物は、特に優れた光電特性と機械特性を示す。化合物(IV)におけるAr11〜Ar14は、それぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、具体的には、表3に示されるものが挙げられる。
上記式(I−7)で示されるアリール基におけるArとしては、下記式(I−8)又は(I−9)で示されるアリーレン基が挙げられる。
また、上記式(I−7)で示されるアリール基におけるZ’としては、下記式(I−10)〜(I−17)で示される2価の有機基が挙げられる。
ここで、R6は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基から選択される。R7〜R13は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、ハロゲン原子から選択される。m及びsは0又は1を、q及びrは1〜10の整数を、tは1〜3の整数を示す。ここで、Xは一般式(I)で既に説明した−D−Aと同義である。
また、上記式(I−16)及び(I−17)中、Wは表6に示される基から選択される。なお、式(I−27)中、uは0〜3の整数を示す。
一般式(IV)におけるAr15の具体的構造としては、k=0の時は上記Ar11〜Ar14のm=1の構造が、k=1の時は上記Ar11〜Ar14のm=0の構造が挙げられる。
一般式(I)で示される化合物と結合可能な基とは、一般式(I)で示される化合物を加水分解した際に生じるシラノール基と結合可能な基を意味し、具体的には、−SI(R1)(3−b)Qbで示される基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、ハロゲン等を意味する。これらのうち、−SI(R1)(3−b)Qbで示される基、エポキシ基、イソシアネート基が有する化合物がより強い機械強度を有するため好ましい。さらに、これらの基を分子内に2つ以上持つものが硬化膜の架橋構造が3次元的になり、より強い機械強度を有するため好ましい。これらの内、最も好ましい化合物例としては、以下に説明する化合物が挙げられる。
最も好ましい化合物としては、−SI(R1)(3−b)Qbで示される加水分解性基を有する置換ケイ素基(上記一般式(I)中のA)を2個以上有している化合物である。かかる置換ケイ素基に含まれるSI基の部分が一般式(I)の化合物又はかかる化合物自身と反応し、SI−O−SI結合となって3次元的な架橋硬化膜を形成して行く。一般式(I)の化合物も同様のSI基部分を有しているので、それのみで硬化膜を形成することも可能であるが、最も好ましい化合物は2個以上の上記置換ケイ素基を有しているので硬化膜の架橋構造が3次元的になり、より強い機械強度を有するようになると考えられる。また、一般式(I)の化合物におけるD部分と同様、架橋硬化膜に適度な可とう性を与える役割もある。最も好ましい化合物としては、より具体的には式(V−1)〜(V−5)で示されるものが挙げられる。なお、式(V−1)〜(V−5)中、T1、T2は枝分かれしていてもよい2価又は3価の炭化水素基、Aは上記一般式(I)中のAと同義である。h、I、jは1〜3の整数であり、且つ、分子内のAの数が2以上となるように選ばれる。
さらに、これらの化合物の具体例としては、下記化合物(VI−1)〜(VI−15)が挙げられる。
一般式(I)で示される化合物は単独で使用してもよいし、膜の成膜性、可とう性を調整する等の目的から、上記の最も好ましい化合物や、他のカップリング剤、フッ素化合物と混合して用いてもよい。このような化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコン系ハードコート剤を用いることができる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等を用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、及びAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の含フッ素化合物を加えてもよい。シランカップリング剤は任意の量で使用できるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25以下とすることが望ましい。これを越えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
上述した保護層の保護層形成用塗布液(コーティング液)の調製は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が使用できるが、好ましくは沸点が100℃以下のものであり、任意に混合しての使用もできる。溶剤量は任意に設定できるが、少なすぎると光機能性有機けい素化合物が析出しやすくなるため、光機能性有機けい素化合物1質量部に対し好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜20部で使用される。
反応温度及び時間は原料の種類によっても異なるが、通常、0〜100℃、好ましくは10〜70℃、特に好ましくは150〜50℃の温度で行うことが好ましい。反応時間に特に制限はないが、反応時間が長くなるとゲル化を生じ易くなるため、10分から100時間の範囲で行うことが好ましい。
ここで、系に不溶な固体触媒とは、触媒成分が上述した化合物や、他のカップリング剤、含フッ素化合物、水、反応生成物及び溶媒のいずれにも不溶であるものであれば、特に限定されない。このような固体触媒の具体例を以下に例示する。
陽イオン交換樹脂:アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)等。
陰イオン交換樹脂:アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)等。
プロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体:Zr(O3PCH2CH2SO3H)2,Th(O3PCH2CH2COOH)2等。
プロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン:スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサン等。
ヘテロポリ酸:コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸等。
イソポリ酸:ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸等。
単元系金属酸化物:シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgO等。
複合系金属酸化物:シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類等。
粘土鉱物:酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイト等。
金属硫酸塩:LISO4,MgSO4等。
金属リン酸塩:リン酸ジルコニア、リン酸ランタン等。
金属硝酸塩:LINO3,Mn(NO3)2等。
アミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体:シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体等。
アミノ基を含有するポリオルガノシロキサン:アミノ変性シリコーン樹脂等。
これらの触媒のうち、少なくとも1種を用いて加水分解縮合反応を行わせる。これらの触媒は、固定床中に設置し反応を流通式に行うこともできるし、バッチ式に行うこともできる。触媒の使用量は、特に限定されないが、加水分解性ケイ素置換基を含有する材料の合計量に対して0.1〜20wt%が好ましい。
加水分解縮合させる際の水の添加量は特に限定されないが、生成物の保存安定性やさらに重合に供する際のゲル化抑制に影響するため、好ましくは加水分解性ケイ素置換基を含有する材料の加水分解性基をすべて加水分解するに必要な理論量に対して30〜500%、さらに好ましくは50〜300モル%の範囲の割合で使用することが好ましい。水の量が500モル%よりも多い場合、生成物の保存安定性が悪くなったり、光機能性有機けい素化合物が析出しやすくなる。一方、水の量が30モル%より少ない場合、未反応の化合物が増大してコーティング液を塗布、硬化時に相分離を起こしたり、強度低下を起こしやすい。
さらに、硬化触媒としては、以下の様なものを挙げることができる。塩酸、酢酸、リン酸、硫酸等のプロトン酸、アンモニア、トリエチルアミン等の塩基、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、オクエ酸第一錫等の有機錫化合物、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン化合物、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリアセチルアセトナート等の有機アルミニウム化合物、有機カルボン酸の鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩等。なお、保存安定性の点で金属化合物が好ましく、さらに、金属のアセチルアセトナート、又は、アセチルアセテートが好ましい。
硬化触媒の使用量は任意に設定できるが、保存安定性、特性、強度等の点で加水分解性ケイ素置換基を含有する材料の合計量に対して0.1〜20wt%が好ましく、0.3〜10wt%がより好ましい。硬化温度は、任意に設定できるが、所望の強度を得るためには60℃以上、より好ましくは80℃以上に設定される。
硬化時間は、必要に応じて任意に設定できるが、10分〜5時間が好ましい。また、硬化反応を行ったのち、高湿度状態に保ち、特性の安定化を図ることも有効である。さらに、用途によっては、ヘキサメチルジシラザンやトリメチルクロロシラン等を用いて表面処理を行い、疎水化することもできる。
塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。また、膜厚は、0.1〜100μm程度とすることが好ましい。
以下、図7に示される単層型感光層18について説明する。単層型感光層18は、電荷発生物質、電荷輸送物質及び結着樹脂を含有して構成される。
電荷発生物質としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物及びセレン合金、アモルファスシリコン、硫化カドミウム等の無機系光導電体及びこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,銅フタロシアニン,錫フタロシアニン,ガリウムフタロシアニン等の各種フタロシアニン顔料、ナフタロシアニン顔料、スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、トリスアゾ系、ントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料及び染料が用いられる。また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン顔料ではα型、β型等をはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることが可能である。
ここで、優れた性能が得られる電荷発生物質として以下の化合物が特に好適である。Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°,10.0°,25.2°及び28.0°の位置に回折ピークを有する結晶型に代表されるヒドロキシガリウムフタロシアニン。Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°の位置に回折ピークを有する結晶型に代表されるクロルガリウムフタロシアニン。Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°,24.2°,27.3°の位置に回折ピークを有する結晶型に代表されるチタニルフタロシアニン。
なお、結晶の形状や測定方法により、これらのピーク強度が位置が微妙にこれらの値から外れることも有るが、X線回折パタンが基本的に一致しているものであれば同じ結晶型であると判断できる。
上記例示の電荷発生物質は、光源のスペクトルにあわせて所望の領域に吸収波長を有するように、単独又は2種以上をブレンドして使用できる。
上記例示の電荷発生物質のうち、特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えばガリウムフタロシアニンやオキシチタニウムフタロシアニン等のフタロシニン系顔料が好適に使用される。また400〜500nm領域の青色領域に発振波長を有するブルーレーザーに対しては、Se系顔料はアゾ顔料、芳香族多環化合物等が好適である。
電荷輸送物質としては、従来公知の電子輸送材料及び正孔(ホール)輸送材料が挙げられる。単層型感光層においては、感光層中に電子輸送材料とホール輸送材料をブレンドして含有させることが好ましいが、電子輸送材料を用いない場合もある。
単層型感光層18に使用可能な電子輸送材料としては、ジフェノキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体のほか、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の、電子受容性を有する種々の化合物が挙げられる。特に、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン、3,5−ジメチル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジフェノキノン等のキノン誘導体が好適に使用される。
電子輸送材料は1種のみを使用する他、2種以上をブレンドして使用してもよい。電子写真感光体に使用可能なホール輸送剤としては、例えばN,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物や、縮合多環式化合物が挙げられる。
また、正孔輸送材料は1種のみならず、2種以上をブレンドして使用してもよい。
結着樹脂としては、ビスフェノールZやビスフェノールA、ビスフェノールC等のビスフェノール類を骨格とする各種ポリカーボネート樹脂やその共重合体、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
また、これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上をブレンド又は共重合して使用できる。以上の結着樹脂の質量平均分子量は、好ましくは5,000〜200,000、より好ましくは15,000〜100,000の質量平均分子量のものが用いられる。
単層型感光層18において、電荷発生物質は全結着樹脂質量に対して0.1〜50wt%、更には0.5〜30wt%含有させることが好ましい。電子輸送剤は全結着樹脂質量に対して5〜100wt%、更には10〜80wt%含有させることが好ましい。ホール輸送材料は全結着樹脂質量に対して5〜500wt%、更には25〜200wt%含有させることが好ましい。電子輸送材料と正孔輸送材料とをブレンドして使用する場合、電子輸送材料とホール輸送材料との総量は、全結着樹脂に対して20〜500wt%、更には30〜200wt%含有させることが好ましい。
単層型感光層18の膜厚は、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。
感光層13には、前述の各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、ラジカル補足剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えば、テルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生物質と併用してもよい。
感光層13を塗布法により形成する場合には、上記例示の電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂等を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えば、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシエーカー、超音波分散機等を用いて分散ブレンドして分散液を調製し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
上記分散液を作製するための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で又は2種以上ブレンドして用いられる。
さらに、電荷発生物質、電荷輸送物質等の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために、界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
このようにして得られる感光体10は、ライトレンズ系複写機、近赤外光若しくは可視光に発光するレーザービームプリンター、デジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリ等の画像形成装置に用いることもできる。また、感光体10は一成分系、二成分系の現像剤とも合わせて用いることができる。また、以上説明した感光体10は帯電ローラや帯電ブラシを用いた接触帯電方式においても利用可能である。
帯電装置21としては特に制限されないが、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器を使用することができる。また、帯電ローラを感光体10近傍で用いる非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用することができる。
これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が用いられる場合が多くなっている。
接触帯電方式は、感光体10表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体10表面を帯電させるものである。導電性部材の形状は、ブラシ状、ブレード状、ピン電極状又はローラ状等の何れでもよいが、特にローラ状部材が好ましい。通常、ローラ状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材とから構成される。さらに必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けてもよい。
これらの導電性部材を用いて感光体10を帯電させるには、導電性部材に電圧を印加すればよい。印加電圧は、直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される感光体帯電電位に応じて正又は負の50〜2000Vが好ましく、特に100〜1500Vが好ましい。交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800V、好ましくは800〜1600V、さらに好ましくは1200〜1600Vである。交流電圧の周波数は50〜20,000Hz、好ましくは100〜5,000Hzである。
露光装置23は特に制限されないが、例えば、感光体10表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400〜450nm近傍に発振波長を有するレーザーも利用できる。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
現像装置24は、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行うことができる。そのような現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体10に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。
現像装置24では、種々の現像剤を使用することができる。重合法により形成された球形トナーは、球状(好ましい球形化度(形状係数):100〜135)で、且つその粒径は非常に均一であるため、被転写媒体への転写効率が高く鮮明な画像を形成することができる。
画像形成装置100においては、トナーとして球形トナーを用いた場合でも、上記本発明のクリーニング部材26bを備えるクリーニング装置26を用いることにより、感光体10を好適にクリーニングすることが可能となる。
以下、トナーについて説明する。現像装置24に用いられるトナーは、上記の形状係数と粒径を満足する範囲のものであれば特に製造方法により限定されるものではない。例えば、結着樹脂、着色剤及び雛型剤、必要に応じて帯電制御剤等を混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び雛型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等が使用できる。
また、上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用することができる。上記の方法の中でも、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。トナー母材は、結着樹脂、着色剤及び雛型剤からなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を用いてもよい。
平均粒径は好ましくは2〜12μm、より好ましくは3〜9μmのトナー母材を用いることができる。また、トナーの平均形状係数が100〜135のものを用いることにより高い現像、転写性、及び高画質の画像を得ることができる。
なお、形状係数SFとは、SF=(ML2π/4A)x100(ML;トナー粒子の最大長、A:トナー粒子投影像の面積)で表される。
使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα一メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロベニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体を例示することができる。
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることができる。
また、トナーの着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレット、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1,C.I.ピグメント・レッド122,C.1.ピグメント・レッド57:1,C.I.ピグメント・イエロー97,C.I.ピグメント・イエロー17,C.I.ピグメント・ブルー15:1,C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルテバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
また、トナーには必要に応じて帯電制御剤が添加されてもよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。本実施形態におけるトナーは、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
本実施形態に用いるトナーは、上記トナー粒子及び上記外添剤をヘンジェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
本実施形態に用いるトナーに添加される滑性粒子としてはグラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。これらは、1種を単独で使用するか、又は併用してもよい。
但し、平均粒径としては0.1〜10μmの範囲で、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は好ましくは0.05〜2.0質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲である。
本実施形態に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機微粒子、該有機微粒子に無機粒子を付着させた複合微粒子等を加えることができるが、研磨性に優れる無機粒子が特に好ましい。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
上記無機粒子にテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンセンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ一メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルシシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理することも好ましく使用される。
有機微粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
粒子径としては、小さすぎると研磨能力に欠け、また、大きすぎると電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなるため、平均粒子径で好ましくは5nm〜1000nm、より好ましくは5nm〜800nm、さらに好ましくは5nm〜700nmのものが使用される。また、滑性粒子の添加量との和が0.6質量%以上であることが好ましい。
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等のため、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用いることが好ましい。さらに、付着力低減や帯電制御のため、それより大径の無機酸化物を添加することが好ましい。これらの無機酸化物微粒子は公知のものを使用できるが、精密な帯電制御を行う為にはシリカと酸化チタンを併用することが好ましい。また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を挙げる効果が大きくなる。
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれらの表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
安定剤としては、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系酸化防止剤が特に好ましく、構造としては広く公知のものが使用できる。有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、等の公知の酸化防止剤を用いてもよい。
感光体表面に外部より安定剤を含有する物質を接触させる方法としては、トナー中に含有させる方法、ステアリン酸亜鉛やワックス等に添加し、トナーに加える方法、キャリア表面に安定剤を所望により樹脂と一緒に塗布、又は、機械的に付着させる方法、等が挙げられる。また、シリカ、酸化チタン等の外添剤表面等に添加してもよい。ゴムブレート中に成型時に混合してもよい。また、ステアリン酸亜鉛やワックス等の潤滑剤中に安定剤を練りこみ、ブラシ、ロール等により供給してもよく、中間転写ベルト、帯電器にブラシ、ロール等を用いて安定剤を供給し、ついで感光体表面に供給してもよい。
トナー中に安定剤を粉体として添加する場合には、安定剤の粒子径は0.01〜1μmが好ましく、0.1〜0.8μmがより好ましい。添加重は0.01〜3質量%で、0.02〜2質量%が帯電の安定性からより好ましい。また、トナーを形成する樹脂中に直接混合してもよい。混合量は、トナー質量に対して0.01〜5質量%で、0.02〜3質量%が帯電の安定性からより好ましい。キャリアや、無機外添剤表面に付着させる方法としては、安定剤を無機粉体1質量部に対し0.01〜0.2質量部、好ましくは0.1〜0.1質量部加え、ボールミルや、ヘンジェルミキサー又はVブレンダー等で機械的に混合する方法、又は、安定剤を必要によっては樹脂とともに適当な溶剤に溶解させ、これに無機粉体を混合し、乾燥させる等のWet法を用いてもよい。
潤滑剤に混合する場合には潤滑剤1質量部に対し、0.01〜1質量部、好ましくは0.02〜0.8質量部を加熱融解して海台し、所望の形に成型する。必要によっては、0.05〜1μmに微粒子化し、トナーに添加してもよい。
この際、トナー1質量部に対し0.0001〜0.05質量部が好ましく、0,005−0,03質量部がより好ましい。感光体表面への供給量としては、画像の安定性が得られる範囲であればいかなる量でもよいが、多すぎると表面層への堆積物が多く、少なすぎると効果が充分に得られないため、実際にマシン内にて画像安定性をテストし、決定される。
転写装置25としては特に制限はなく、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本実施形態においては、上記転写帯電器のほか、剥離帯電器等を併用することもできる。
また、転写の際に、転写装置25から感光体10に付与される転写電流には、通常直流電流が使用されるが、本実施形態においては更に交流電流を重畳させて使用してもよい。転写装置25における設定条件としては、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
定着装置27としては特に限定されず、熱ロール定着器、オーブン定着器等の通常使用される装置を使用できる。定着装置27により、被転写媒体上に転写したトナー像を定着することができる。
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体10に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
上記光除電装置としては、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、該光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍〜30倍程度になるように出力設定される。なお、上記の装置を使用することで、光除電工程等が好適に実施できる。
また、画像形成装置100は、中間転写方式を採用してもよく、その場合には、中間転写体、上記中間転写体をクリーニングする中間転写体クリーナ等を備える。
図8は、本発明の画像形成装置の他の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。画像形成装置110は、クリーニング装置26以外は画像形成装置100と同様の構成を有する。
画像形成装置110においてクリーニング装置26は、ハウジング26a内に第一のクリーニング部材(本発明のクリーニング部材)26b及び第二のクリーニング部材26cを備えており、クリーニング部材26b及び26cは電子写真感光体10に当接して配置されている。
なお、画像形成装置110において、第二のクリーニング部材26cはブレード状のクリーニング部材である。かかる第二のクリーニング部材26cは、繊維状物質、あるいは更に無機粒子を含有する発泡樹脂で構成されている必要はなく、通常の材料により構成されているものが使用される。
画像形成装置110において、感光体10は第1軸を中心として回転自在に設けられた略円筒形状のものである。そして、クリーニング装置26は、その感光体の外周面上に配置されており、第二のクリーニング部材26cが感光体10の外周面の移動方向を基準として第一のクリーニング部材26bよりも上流側に配置されている。
このようにクリーニング部材26b及び26cを使用した場合には、第二のクリーニング部材26cにより、比較的容易に除去される付着物を感光体10からクリーニングすることができ、その後、第一のクリーニング部材26bにより、フィルム化したトナーやオゾン生成物などの比較的除去することが困難な付着物を感光体10からクリーニングすることができる。したがって、このような構成を採用した場合には、第一のクリーニング部材26bが除去する付着物量を低減することができ、第一のクリーニング部材26bの劣化を抑制することができる。そのため、第一のクリーニング部材26bを長期間使用することができ、画像形成装置110の長寿命化を図ることができる。
なお、上記構成を有するクリーニング装置26においても、画像形成装置100におけるクリーニング装置26の好適な構成を採用することができる。
図9は、本発明の画像形成装置の他の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。画像形成装置200は、中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング220内において4つの電子写真感光体201a〜201d(例えば、201aがイエロー、201bがマゼンタ、201cがシアン、201dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト209に沿って相互に並列に配置されている。
電子写真感光体201a〜201dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール202a〜202d、現像装置204a〜204d、1次転写ロール210a〜210d、本発明のクリーニング部材を備えるクリーニング装置215a〜215dが配置されている。現像装置204a〜204dのそれぞれには、トナーカートリッジ205a〜205dに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。
また、1次転写ロール210a〜210dは、それぞれ中間転写ベルト209を介して電子写真感光体201a〜201dに当接している。1次転写ロール210a〜210dは、反転現像により電子写真感光体201a〜201d上に形成したトナー像を中間転写ベルト209に転写する機能を有する。なお、以下において、該トナー像の中間転写ベルト209への転写を「1次転写」と称することがある。この工程は必要に応じ用いられ,場合によっては省略され、感光体から直接紙等の被転写媒体に転写される場合もある。
さらに、ハウジング220内の所定の位置にはレーザー光源(露光装置)203が配置されている。レーザー光源203から出射されたレーザー光は、帯電後の電子写真感光体201a〜201dの表面に照射できるようになっている。これにより、電子写真感光体201a〜201dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト209上に重ねて転写される。
中間転写ベルト209は、駆動ロール206、バックアップロール208及びテンションロール207により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール213は、中間転写ベルト209を介してバックアップロール208と当接するように配置されている。バックアップロール208と2次転写ロール213との間を通った中間転写ベルト209は、例えば駆動ロール206の近傍に配置されたクリーニングブレード216により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
また、ハウジング220内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)211が設けられており、トレイ211内の紙等の被転写媒体230が移送ロール212により中間転写ベルト209と2次転写ロール213との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール214の間に順次移送された後、ハウジング220の外部に排紙される。なお、2次転写ロール213により、中間転写ベルト209上のトナー像は一括して被転写媒体に転写される。上記2次転写工程は、上記2次転写ロール213を用いて好適に行うことができる。なお、以下において、該トナー像の被転写媒体230への転写を「2次転写」と称することがある。
2次転写ロール213としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、例えば、1次転写ロールとして例示した接触型転写帯電器、スコロトロン転写帯電器、コロトロン転写帯電器等が挙げられる。これらの中でも、1次転写手段と同様に接触型転写帯電器が好ましい。また、上記2次転写の際に、上記2次転写ロール213から中間転写ベルト209に付与される転写電流には、通常直流電流が使用されるが、本実施形態においては更に交流電流を重畳させて使用してもよい。
2次転写ロール213における設定条件としては、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、2次転写電流としては+100〜+400μA、1次転写電圧としては+2000〜+5000Vを設定値とすることができる。
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト209を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト209のようにベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。中間転写体として中間転写ベルト209のようなベルトの形状の構成を採用する場合、一般にベルトの厚さは50〜500μmが好ましく、60〜150μmがより好ましい。なお、ベルトの厚さは、材料の硬度に応じて適宜選択することができる。また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層を形成することができる。
中間転写ベルト209の構造としては、単層構造のものと多層構造のものがある。多層構造の場合には例えば導電性支持体上に、ゴム、エラストマー、樹脂等から形成される弾性層と、少なくとも1層の被覆層とを設けてなる構造等がある。
中間転写ベルト209は、画像の重ね合わせ時の色ズレ、繰り返しの使用による耐久性、他サブシステムの配置自由度の取り易さ等の点で特に好ましい。無端ベルト形状の中間転写ベルト209は遠心成形、スプレー被覆法、浸漬成膜法等の方式をとることにより形成することができる。またシート形状の導電性フィルムをシーム形成してベルトを形成することもできる。
中間転写ベルト209の材料としては、従来公知の、例えば、導電剤含有のポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料等の導電化熱可塑性樹脂が挙げられる。この中でも、機械強度に優れる点で、導電剤を分散させたポリイミド樹脂を用いるのが好ましい。
導電剤としては、カーボンブラック、金属粉や酸化錫、酸化インジウム、チタン酸ブラック等の金属酸化物、ポリアニリン等の導電性ポリマーを用いることができる。これらの中でも、ポリイミド系樹脂にカーボン粒子を分散させたものが好適に用いることができる。
導電剤を分散させたポリイミド樹脂ベルトは、特開昭63−311263号公報に記載されているように、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液中に導電剤として5〜20質量%のカーボンブラックを分散させ、分散液を金属ドラム上に流延して乾燥した後、ドラムから剥離したフィルムを高温下に延伸してポリイミドフィルムを形成し、更に適当な大きさに切り出してエンドレスベルトとすることにより製造される。上記フィルム成形は、一般には、導電剤を分散したポリアミド酸溶液の成膜用原液を円筒金型に注入して、例えば、100〜200℃に加熱しつつ500〜2000rpmの回転数で円筒金型を回転させながら、遠心成形法によりフィルム状に成膜し、次いで、得られたフィルムを半硬化した状態で脱型して鉄芯に被せ、300℃以上の高温でポリイミド化反応(ポリアミド酸の閉環反応)を進行させて本硬化させることにより行う。また、成膜原液を金属シート上に均一な膜厚に流延して、上記と同様に100〜200℃に加熱して溶媒の大半を除去し、その後、300℃以上の高温に段階的に昇温してポリイミドフィルムを形成する方法もある。
また、中間転写ベルト209は表面層を有していてもよい。上記中間転写体の表面体積抵抗値としては、例えば、108〜1016Ωcmが好ましい。上記表面体積抵抗値が、108Ωcm未満であると画像に滲みや太りが生じ、1016Ωcmを越えると画像の飛び散りの発生や、中間転写体シートの除電の必要性が発生し、いずれの場合も好ましくない。
なお、本発明でいう被転写媒体とは、電子写真感光体状に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写媒体であり、また、中間転写体を用いる場合には中間転写体が被転写媒体になる。
(プロセスカートリッジ)
次に、本発明の電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジについ説明する。図10は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。
プロセスカートリッジ300は、ケース311内に、電子写真感光体10とともに帯電装置21、露光装置23、現像装置24及びクリーニング装置26を取り付けレール313を用いて組み合わせて一体化したものである。かかるプロセスカートリッジ300は、転写装置25と、定着装置27と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱可能としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。また、プロセスカートリッジ300においても、クリーニング装置26には本発明のクリーニング部材が備えられている。