JP4729470B2 - 模様付けローラ及びこのローラを用いた模様の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建築物の外壁、内壁、天井、床面等に新規な模様を形成したり、あるいはそれらの部位に用いられる建材表面に模様を形成する為のローラ及びそのローラを用いた模様の形成方法に関するものである。
建築物の外壁、内壁、天井、床面等に凹凸のある模様を塗材を用いて直接形成するための方法が、種々提案され、また実施されている。それ等の方法を大別すると、塗装(吹き付けを含む)により模様を形成するもの、ローラを用いて模様を形成するもの、鏝を用いて模様を形成するもの、これらの複合によるものがある。なお、文献によっては、模様形成部分となるローラとその他の部分である取手、ローラの支持軸等を含めて、単にローラと称する場合もある。
これら模様の形成方法のうち、ローラを用いた塗装方法のうち、模様形成に関する発明では、例えば本件出願人による特開2002−317551号公報に示される技術がある。また、模様形成とは別に平滑な塗装を行うため、繊維製品のうち編み物を用いたローラブラシの発明に特開2002−112838号公報に示される技術があった。
特許文献1として示す、特開2002−317551号公報では。先に被塗装面に塗材を塗り付けておき、その塗材が未乾燥状態にある間に、ローラ表面に形成された平行な凸条を押さえつけることにより、押さえつけた部分と押さえ前の表面模様の二つを活かすものであった。
特開2002−317551号公報(特許請求の範囲、図面)
また、特許文献2として示す、特開2002−112838号公報では、超極細繊維とノーマル繊維を利用した編み物によるローラブラシであった。この発明では、塗料を均一に塗布、平滑に仕上げるためのものであり、ローラブラシにより模様を形成するものでは無かった。
特開2002−112838号公報(特許請求の範囲、図面)
この発明では、従来にない優れた意匠を提供するための模様付けローラと意匠の形成方法を提供するものである。
従来において、ローラ表面の全ての凹凸を塗材に馴染ませるものにあっては、ローラ表面の凹凸の形跡を示すものの、塗材の粘性により凹凸の形状をそのまま転写することは困難となったり、また、転写することができたとしても、模様作製途中に徐々に離型性が確保できなくなり模様の連続性が確保できないという課題があった。
ローラ表面の一部だけを転写するものにあっても、ローラと塗材の離型性の観点から、転写模様は単純な形状を選択しなければ実用上の実施が不可能であると言う課題があった。そして、特許文献2に開示される発明では、吹き付けあるいはローラ塗り、鏝により塗り付けられた塗材表面に形成される模様は、ローラの転動方向における平行線あるいは転動方向とは直角な平行線であった。
この発明では、新規ローラとそのローラを利用した模様の形成方法を提供するものである。ローラにあっては、ローラ表面の模様を転写するものにある。
請求項1に記載の発明は、円柱状基面とこの基面表面に密実に巻き付けた密紐巻き層、及びまばらに巻いた粗紐巻き層からなることを要旨としている。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、密紐巻き層の素材と粗紐巻き層の素材が異なることを要旨としている。
請求項3に記載の発明は、被塗装面に対して模様形成用の塗材を塗り付けた後、塗材が未硬化の状態において、請求項1又は請求項2に記載の模様付けローラを転動させて、塗材の表面を押さえることを特徴とする模様の形成方法である。
請求項1に記載の発明によれば、被塗装面に対して、紐の押しつけ模様となる縄文を簡単に形成することができる。また、紐の押しつけ模様を、塗材の塗り付け厚みにより、厚みが薄い場合は粗紐巻き層だけであり、厚みが粗紐巻き層に利用した紐の径以上の場合は、粗紐巻き層および密紐巻き層の両者の押しつけ模様となるものを形成することができる。
請求項に記載の発明によれば、請求項に記載の発明の効果に加え、粗紐巻き層あるいは密紐巻き層のいずれかを強調した押しつけ模様を形成できることとなる。紐の径が異なれば得られる押しつけ模様が変化のあるものとなり、紐の径の大きな部分が強調される。紐の耐水性、耐油性が異なるものであれば軟化の程度の大きな部分が模様として不鮮明となり、軟化の程度の小さい部分が模様として明瞭に表れるものとなる。
請求項に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明のローラを使用して、被塗装面に紐巻きによる縄文を形成することができる。
また、ローラ表面に設けられた紐巻きの層の数と塗材の塗り厚みより、外層にある紐巻きの模様だけとしたり、下層の紐巻き層の両者の模様としたりすることができる。ローラを構成する粗紐巻き層と密紐巻き層の素材が異なる場合、紐の径が異なれば得られる押しつけ模様が変化のあるものとなり、紐の径の大きな部分が強調される。紐の耐水性、耐油性が異なるものであれば軟化の程度の大きな部分が模様として不鮮明となり、軟化の程度の小さい部分が模様として明瞭に表れるものとなる。また、紐巻きを粗に巻いただけのものであっても、紐の押しつけによる模様と多孔質材料による微小凹凸模様の両者がローラを一度転がすだけで形成できる。
以下、この発明を具体化した実施形態を説明する。
この発明では、新規な意匠形成を可能とするローラを提供するものである。ローラの利用に当たっては、前もって模様形成の為の塗材を被塗装面である建築物の外壁、内壁、天井、床面等あるいはこれら表面を構成する建築材料、土木構造物の表面に対して模様形成用の塗材を吹き付け、ローラ塗り、コテ塗りにより塗り付ける。
その後に、この発明のローラに水、塗料用シンナー等の離型性を向上させる液体である離型剤に浸して、塗材が未硬化の状態において表面を転動させ、ローラによる押しつけ模様が生じる部分と押しつけの無い部分を形成させる。離型剤を用いない場合、小面積であれば押しつけ模様の形成が可能ではあるが、纏まった面積の押しつけは不可能であり、通常は離型剤を溜めたバケットに何度もローラを浸して、押しつけ作業が行われる。
この発明のローラでは、概略円柱状の模様形成面を持つものである。模様形成面は、円柱状基面と基面表面に紐巻き層を有したものとなっている。また、ローラを回転可能とするため、ローラの支持軸に直接装着できる略円柱形状とするもの、あるいは、ローラを薄肉のパイプ形状とし、筒状のローラカバーとしてローラを支持できる柄に装着するもの、そのどちらであっても良い。そして、全体を中空とした場合、あるいは発泡体により作製した時には、ローラ全体を軽量なものとすることができる。但し、支持軸に接する部分あるいは筒状のローラカバーがその支持部分と接する部分は形状が保持できることが必要であり、ローラを転がす時の軸に接する部分では、耐摩耗性を有することが必要である。
ローラの形状を概略円柱状と見たとき、手動利器として利用する場合には、その大きさを、模様形成幅となる円柱の長さを5〜40cm、好ましくは20〜30cm、円柱の外径では直径2〜10cm、好ましくは4〜8cmとするのが良い。この大きさにあるとき、ローラの大きさあるいは重さにおいて、使用勝手が良いものとなる。但し、コーナーあるいは模様形成幅が限られる部分では、小さくしたものも利用される。工業的に利用する場合には、模様形成幅を60〜150cm、外径20〜40cmの大きさに製作して利用するのが良い。
ローラの円柱状基面の素材としては、プラスチック、ゴム、あるいはそれらの発泡体、木を単独にて、あるいは、これらを組み合わせて利用することができる。ローラの基面製作は、円筒状の素材を研削加工により所定形状としたり、ローラの模型を作製後、プラスチック、ゴムの発泡成形あるいは鋳込み成形により円柱状基面の製作を行うことができる。但し、紐巻き層の紐の固定を、基面に設けた溝への留め付けの場合には有る程度強度の有る材料を選択することが必要となる。
ローラの基面表面に巻き付けられる紐の素材は、防水加工のある紙、天然繊維、合成繊維からなる撚り紐、合成樹脂テープによる撚り紐、ゴム紐の他、加工性能は悪いが金属製の針金、撚り線であっても良い。入手の容易さ、原料単価、耐水性、耐溶剤性、加工の容易さからは、合成樹脂製のテープを撚り併せたものが好ましい。合成樹脂の種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロンなどがある。
紐の太さは、模様として表れる線の太さを基に選択されるが、直径が2〜10mmにあるもの、好ましくは3〜6mmにあるものを利用するのが好ましい。2mmより細い紐では模様として表れる紐の幅、深さが小さなものとなり、模様付けしたことが分かり辛いものとなる。逆に、10mmを越える太さの紐を用いた時には、紐の押しつけにより表れる線の幅、深さが大きなものとなり、紐の押しつけの無い部分との比較において、紐の押しつけ模様が強調され過ぎる嫌いがある。但し、平坦に塗材を塗り付けた上から、紐の押しつけ模様だけで最終の仕上げ模様とする際には、10mmを越える太さであっても、採用の可能性が有る。紐の太さを3〜6mmにあるものを選択したときには、模様形成を行うことにより得られる仕上げ面は、模様形成用塗材を塗り付けた時/吹き付けた時の、表面模様とローラを押しつけた部分の模様の両者がバランス良く現れるものとなる。
紐の固定は、接着剤による固定、ローラの円柱状基面に溝を作製して紐の結び目を溝に挟み込むもの、紐の両端をローラ表面にて結び併せる方法、ローラの円柱状基面も紐も金属であれば溶接による方法も採用可能となる。
以下、前記実施形態を具体化した実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、塩化ビニル製の内径38mm、肉厚2mm、長さ23cmのパイプを用意し、その両端には幅3mm、長さ12mmの切り欠き溝を一カ所ずつ形成した。次に、ポリエチレン製の5mm径の紐を用意し、一端を前記溝部に挟み込む形にして仮固定し、パイプ表面に紐の重なりが生じないように、且つ、紐と紐の隙間をなるべく作らないように巻き付け、先の一端と結び併せて固定し、密紐巻き層とした。その次に、ポリプロピレン製の5mm径の紐を用意し、一端に結び目を作って溝部に固定し、この紐についてはローラの模様形成幅方向に5cmに一回程度巻き付け、時には巻きを戻る形にして8回転ほど巻き付け、紐の一端は巻き付けてある紐の途中に結び付け固定し、粗紐巻き層とした。
図1では、実施例の模様付けローラの外観斜視図を示している。図中、符号1が円柱状基面、符号2が密紐巻き層、符号3が粗紐巻き層、符号4が円柱状基面に設けた紐固定用の溝である。
製作後のローラは、以下の手順により利用した。始めに、塗装用基板として、PDF板を用意し、下塗りとして水性の合成樹脂エマルションをスプレー塗装した。次に、模様形成用塗材である菊水化学工業(株)製の商品名グラナダ、20kgNETをそのまま、塗装用基板に対し、平米当たり1kg程度多孔質ローラであるマスチックローラにより塗り付けた。この塗材を塗り付けた厚みは、厚い部分と薄い部分があるが、厚い部分で2mmであった。次に、塗材が未硬化なうちに、上記製作したローラに柄を装着したものを利用し、塗料用シンナーを適宜浸しながら塗材表面を横方向に転動させローラの表面凹凸模様を転写させた。
仕上げ模様として、マスチックローラによるスチップル模様の表面に本願のローラによる不連続な曲線模様が転写された模様が得られた。スチップル模様だけでは得られない、変化のあるものとなった。
(実施例2)
実施例2では、ローラの製作において、実施例1と密紐巻き層を作製するまでは同じとし、粗紐巻き層の形成については一部仕様を変更した。粗紐巻き層では、ポリプロピレン製の5mm径の紐を用意し、一端に結び目を作って溝部に固定し、ローラの模様形成幅方向に5cmに10回程度巻き付け、時には巻きを戻る形にし、所々に2回転あるいは3回転は比較的密に巻いた部分のある紐巻きとした。この粗紐巻き層では、合計40回転ほどの巻き付けとし、このローラでも最初に固定した一端以外のもう一端は、巻き付けてある紐の一部に結び付けて固定した。
製作後のローラは、以下の手順により利用した。始めに、塗装用基板として、PDF板を用意し、下塗りとして水性の合成樹脂エマルションをスプレー塗装した。次に、模様形成用塗材である菊水化学工業(株)製の商品名グラナダ、20kgに寒水砂1厘を10kg加え、調整水によりリシンガン(エアースプレーガンの一種、ノズル口径6.5mm)で塗装可能な粘度とし、塗装用基板に対し、平米当たり1kg程度吹き付けた。この塗材を塗り付けた厚みは、厚い部分と薄い部分があるが、厚い部分で1.5mmであった。次に、塗材が未硬化なうちに、上記製作したローラに柄を装着したものを利用し、塗料用シンナーを適宜浸しながら塗材表面を横方向に転動させローラの表面凹凸模様を転写させた。
仕上げ模様として、リシンガンによる聚楽壁模様の表面に本願のローラによる不連続な曲線模様が転写された模様が得られた。聚楽壁模様だけでは得られない、水平方向に曲線による変化のあるものとなった。
(実施例3)
実施例3では、まず、長さ23cm、内径38mmのパイプ表面に、肉厚2cmのゴムスポンジからなる多孔質層を有する多孔質ローラを用意した。ローラの両端には幅3mm、長さ12mmの切り欠き溝を一カ所ずつ形成した。次に、ポリプロピレン製の5mm径の紐を用意し、一端に結び目を作って溝部に固定し、この紐についてはローラの模様形成幅方向に5cmに一回程度巻き付け、時には巻きを戻る形にして8回転ほど巻き付け、紐の一端は巻き付けてある紐の途中に結び付け固定し、粗紐巻き層とした。
製作後のローラは、以下の手順により利用した。始めに、塗装用基板として、PDF板を用意し、下塗りとして水性の合成樹脂エマルションをスプレー塗装した。次に、模様形成用塗材である菊水化学工業(株)製の商品名グラナダ、20kgNETをそのまま、塗装用基板に対し、平米当たり1kg程度多孔質ローラであるマスチックローラにより塗り付けた。この塗材を塗り付けた厚みは、厚い部分と薄い部分があるが、厚い部分で2mmであった。次に、塗材が未硬化なうちに、上記製作したローラに柄を装着したものを利用し、塗料用シンナーを適宜浸しながら塗材表面を横方向に転動させローラの表面凹凸模様を転写させた。
仕上げ模様として、マスチックローラによるスチップル模様の表面を本願のローラによって、紐で押さえた部分には不連続な曲線模様が転写された模様、多孔質材料からなる円柱状基面を押さえた部分では、スチップル模様を細かくした模様が得られた。スチップル模様だけでは得られない、変化のあるものとなった。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・紐巻き層に用いる紐の径を3〜5mmとする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の模様付けローラ。この構成を有するローラを用いて模様形成を行うことにより得られる仕上げ面は、模様形成用塗材を塗りつけた時の表面模様とローラを押しつけた部分の模様の両者がバランス良く現れるものとなる。このバランスは、人が手に持って作業を行う塗装機器を用いた場合に得られる、模様形成用塗材の塗りつけと押さえであり、機械を利用して大柄の模様が先の塗りつけに得られるようになれば、紐の大きな径のものも好適なものとなりうる。
・密紐巻き層の素材をポリエチレンと粗紐巻き層の素材をポリプロピレンとすることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の模様付けローラ。即ち、離型性向上の液体に紐を浸したときに、その軟化の程度が小さいものを粗紐巻き層に用いることを特徴としたときには、密紐巻き層が緩衝層となるため、形成される押しつけ模様の輪郭が明瞭に表れやすいものとなる効果がある。これは、円柱状基面の表面層をプラスチックあるいはゴムの発泡体などの、多孔質材料にして緩衝層にすることと同じ効果を生じる。
・模様形成用塗材の塗りつけあるいは吹き付けにより得られる模様に方向性が無いことを特徴とする請求項8または請求項9記載の模様の形成方法。実施例1ないし実施例3の模様形成用塗材の塗装では、スタッコガン、リシンガン、マスチックローラを用い、これらの塗装器具により得られる仕上げ面には、方向性を感じさせないものとなる。模様に方向性のない塗材塗り付け面に対して、本願の模様形成方法を採用することにより、従来にない変化のある模様を得られることになる。
この発明の実施例によるローラの外観斜視図を示している。
符号の説明
1…円柱状基面
2…密紐巻き層
3…粗紐巻き層
4…溝

Claims (3)

  1. 円柱状基面とこの基面表面に密実に巻き付けた密紐巻き層、及びまばらに巻いた粗紐巻き層からなることを特徴とする模様付けローラ。
  2. 密紐巻き層の素材と粗紐巻き層の素材が異なることを特徴とする請求項に記載の模様付けローラ。
  3. 被塗装面に対して模様形成用の塗材を塗り付けた後、塗材が未硬化の状態において、請求項1又は請求項2に記載の模様付けローラを転動させて、塗材の表面を押さえることを特徴とする模様の形成方法。
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