JP4729166B2 - 塗装方法及び搬送用ローラの製造方法 - Google Patents

塗装方法及び搬送用ローラの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は塗装方法及び搬送用ローラの製造方法に関する。更に詳しくは、流動浸漬塗装法を用いた場合に被塗装体表面に均一な厚さの塗膜を安定して、且つ確実に形成することができる塗装方法に関する。更に、表面に厚さが均一なニップ層を安定して、且つ確実に形成することができる搬送用ローラの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、種々の塗装方法において流動浸漬塗装が用いられているが、被塗装体を回転させる塗装方法は知られていない。また、接触面に凹凸層等を設けることで安定して被搬送体の搬送を行うことができる搬送用ローラが知られている。この凹凸層等は流動浸漬塗装により形成することができる。しかし、被搬送体の材質及びその厚さ等の多様性に更に十分に対応しつつ、斜行等を生じない精度の高い搬送を行える搬送用ローラを安定して確実に量産できるより優れた方法が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決するものであり、被塗装体の表面に極薄く、均一な厚さの塗膜を安定して形成することができる塗装方法を提供することを目的とする。また、この塗装方法を用いた搬送精度の高い搬送用ローラを安定して確実に製造できる搬送用ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の塗装方法は、少なくとも粉体塗料を含むクラウドが形成された流動槽内において、被塗装体を回転させながら、少なくとも該粉体塗料を該被塗装体の表面に付着させ、上記被塗装体は柱状であり、トローリコンベア又はフロアコンベアにより、上記被塗装体を回転させながら移動させることを特徴とする。
【0005】
また、請求項2記載の塗装方法は、少なくとも粉体塗料を含むクラウドが形成された流動槽内において、複数の被塗装体の各々を回転させながら移動させ、少なくとも該粉体塗料を該複数の被塗装体の各々の表面に付着させ、上記被塗装体は柱状であり、トローリコンベア又はフロアコンベアにより、上記被塗装体を回転させながら移動させることを特徴とする。
即ち、請求項1における塗装方法において、被塗装体が複数存在する場合であって、これらの被塗装体の各々を回転させることに加えて移動させながら連続的に塗装する塗装方法である。
【0006】
上記「クラウド」とは、雲状に浮遊している粉体塗料のみ又は粉体塗料とその他の粉末を含む混合粉末(以下、粉体塗料のみの粉末及び粉体塗料を含む混合粉末とを合わせて、単に「粉末」ともいう)の集合体をいう。
上記「粉体塗料」は、塗膜を形成できる樹脂成分を主成分とする。この樹脂成分以外にも、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤及び顔料等を含有してもよい。粉体塗料は流動槽内においてクラウドを形成できる程度に細粒であり、その平均粒径は250μm以下(より好ましくは20〜50μm、更に好ましくは30〜50μm、通常5μm以下)であることが好ましい。平均粒径が250μmを越えると均一なクラウドの形成が困難となる傾向にある。
【0007】
また、粉体塗料を構成する樹脂成分は特に限定されないが、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂及びシリコーン樹脂等を挙げることができ、なかでもグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びアクリル樹脂等を用いることが好ましい。一方、熱可塑性樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂等を挙げることができ、なかでも飽和ポリエステル樹脂等を用いることが好ましい。これらは1種のみを用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0008】
上記クラウドを構成する粉体塗料以外の他の粉末としては、粉体塗料のみからは得られない機能を塗膜に持たせるための粉末を挙げることができる。例えば、塗膜に凹凸を持たせるための突起形成用粉末等を挙げることができる。
【0009】
上記「流動槽」はクラウドを内部に保持する槽である。この流動槽は出入口が常に開放されたトンネル状のものや、扉状部を備えて必要な時には閉じられるものであってもよい。
この流動槽内では、例えば、流動槽の床に堆積する粉末を、床側から吹き上げることにより形成することができる。この床側から吹き上げることに加えて天井側から吸引することで更に確実にクラウドを形成することができる。また、天井側から粉末を振り落とすことでもクラウドを形成することができる。天井側から粉末を振り落とすことに加えて床側から吹き上げることで更に確実にクラウドを形成できる。
【0010】
上記「被塗装体」は特に限定されず、クラウド中においてその形状を保つことができる程度に機械的強度を備えればよい。その形状は、柱状であり、凹部及び凸部等の複雑形状を備えてもよい。更に、中実であっても、中空であってもよい。
また、被塗装体の材質も特に限定されないが、静電流動浸漬塗装法を用いる場合に被塗装体表面が帯電し易いように少なくとも金属から形成されることが好ましく、被塗装体全体が金属であってもよい。例えば、めっきを施した快削鋼、アルミニウム合金、ステンレス鋼、めっきを施した樹脂及び導電性を付与した樹脂等から形成することができる。
【0011】
上記「回転」は、クラウドの形成を妨げず、また、粉末の付着が大きく妨げられない程度の速度(10〜100回転/分)であれば限定されず、更に被塗装体を回転させるための被塗装体中における回転軸は、円滑な回転が妨げられない軸であれば特に限定されない。また、請求項2における上記「移動」も回転におけると同様にクラウドの形成を妨げず、また、粉末の付着が大きく妨げられない程度の速度(10〜100m/分)であれば特に限定されない。
【0012】
混合粉末を用いてクラウドを形成する場合、粉末はその種類により比重が異なるためクラウド内の粉末種による分布を均一に保つことは非常に難しい。しかし、本発明のように回転、若しくは回転及び移動をさせることで、クラウド内に新たな雰囲気の流れを形成することができ、その不均一性を低減することができる。また、移動方向に依らず塗膜の厚さをより均一にできる。
【0013】
このような塗装方法において被塗装体が柱状であ、クラウド内において被塗装体を懸垂させた状態で回転(又は回転及び移動)させることができる。例えば、図1に示すように、トローリコンベア1aに取り付けられた回転部111aを有する懸垂具11aに被塗装体2を懸垂し、トローリコンベア1aを移動させることで回転部111aの一部をベルト3に摺動させ、被塗装体を回転させながら移動させることができる。
【0014】
また、被塗装体を縦立させた状態で回転(又は回転及び移動)させることもできる。例えば、図2に示すように、フロアコンベア1b上に回転部111bを設けた台座治具11bを載置又は設置し、この台座治具11bに被塗装体2を支持させ、フロアコンベア1bを移動することにより台座治具11bの一部をベルト3に摺動させ、被塗装体を回転させながら移動させることができる。
【0015】
尚、参考発明として、クラウド内において被塗装体の長さ方向の軸線が水平となるように位置され、更にはこの軸線を回転軸として回転させるものを紹介する。例えば、図3に示すように、平行を維持して移動するコンベア1c及び1c’の各々に1対の回転ガイド12c及び12c’を設け、この回転ガイドの各々に被塗装体2をその両端で支持する一対の支持具111c及び111c’を自在に回転するように嵌め込む。そして、この支持具のうちの一方がその上方から当接されるように固定されたベルト3と摺動することで被塗装体を回転させながら移動させることができる。
【0016】
尚、参考発明に示す方法においては、流動槽内におけるこの軸の上下方向の位置は特に限定されない。また、以下ではこの軸線を水平な方向に位置することを「寝かせる」ともいう。
このように、被塗装体を寝かせることにより、通常、上下方向に生じ易いクラウド内での粉末種による分布の偏在の影響を最大限小さくすることができる。特に、比重の差が比較的大きな(例えば、最大比重差が4以上)材質からなる粉末を含む混合粉末を付着させる場合には効果的であり、塗膜厚差を特に小さく(例えば、軸線方向の塗膜厚差が10μm以下)することができる。また、上下方向に小さいクラウドであっても塗装を行うことができ、クラウドを形成するための空間を小さくできるため装置の小型化にも貢献する。
【0017】
上記「付着」は、蓄熱した被塗装体に粉末が接触することにより付着させてもよいが、付着量を制御し易いため静電的に付着させることが好ましい。即ち、粉末及び被塗装体の少なくとも一方を帯電させることにより粉末が静電的に付着されることが好ましい。
【0018】
請求項1〜2に示す塗装方法によると、クラウド中で被塗装体を回転させることにより、特に付着むらを抑制でき、より均一な塗膜の形成が可能となる。例えば、静電流動浸漬塗装法により円柱状の被塗装体の表面に目標厚さ35μmの塗膜を形成した場合の周方向の任意の一断面における最大塗膜厚と最小塗膜厚との差は、回転を行わない場合に比べて30%以下(更には15%)に抑えることができる。なお、参考発明に示す塗装方法によると、請求項1〜2に示す塗装方法から得られる効果に加えて、長さ方向における塗膜厚の差をも極めて小さくすることができる。即ち、長さ方向の最大塗膜厚と最小塗膜厚との差を10μm以下(更には5μm以下、通常2μm以上)に抑えることができる。
【0019】
請求項記載の搬送用ローラの製造方法は、請求項1又は2に記載の塗装方法を用いる搬送用ローラの製造方法であって、上記クラウドは上記粉体塗料と突起形成用粉末とを含み、上記被塗装体は円柱状の芯材であり、該芯材の表面に該突起形成用粉末を該粉体塗料からなる樹脂層により固定したニップ層を形成することを特徴とする。
【0020】
上記「芯材」は円柱状であり、その断面円の直径は特に限定されないが、通常、0.8〜20cmである。また、その長さも特に限定されないが、通常、250〜500cmである。
この芯材の材質も請求項1における被塗装体と同様なものを用いることができるが、中でも、静電粉体塗装により効率よく且つ均一に粉体塗料を付着させることができる、少なくともその表面が金属からなる被塗装体であることが好ましい。
【0021】
上記「粉体塗料」は、請求項1〜におけると同様なものを用いることができる。また、粉体塗料を構成する樹脂成分も請求項1〜におけると同様なものを用いることができる。中でも、エポキシ樹脂を主成分とし、その硬化剤であるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。更に、エポキシ樹脂としてはグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。この粉体塗料は、塗膜の厚さを均一に制御し易く、且つ突起形成用粉末を特に強固に固定することができる。
【0022】
上記「突起形成用粉末」は、搬送用ローラ表面のニップ層(ニップ層については後述する)において被搬送体を確実に搬送するための凹凸を形成する。突起形成用粉末の材質は目的に応じて選択することができ、金属(ニッケル及び鉄等)、セラミック(アルミナ、酸化鉄、酸化クロム、酸化セリウム、酸化チタン、非晶質シリカ、ムライト及びカーバイト等)及び/又は樹脂等を用いることができる。なかでも、高い耐久性のニップ層を得ることができるためアルミナ粉末、酸化鉄粉末、酸化クロム粉末、酸化セリウム粉末及び酸化チタン粉末等の硬度が高く、耐摩耗性に優れた粉末を用いることが好ましい。これら突起形成用粉末は1種のみを用いても、2種以上を混合して用いてもよい。但し、1種のみを用いることで、クラウドの形成条件及び帯電条件等の調整は容易となる。
【0023】
また、突起形成用粉末の大きさも目的に応じて選択すればよいが、通常、平均粒径は5〜250μm(より好ましくは10〜120μm、更に好ましくは30〜50μm)とすることが好ましい。平均粒径が5μm未満であるとニップ層としての十分な凹凸を形成でき難く、250μmを越えると芯材の表面に固定・保持し難くなる傾向にある。特に、突起形成用粉末としてアルミナ、酸化鉄、酸化クロム、酸化セリウム及び酸化チタン等を用いる場合、その平均粒径は15〜80μmとすることが好ましい。また、非晶質シリカ、ムライト、カーバイト及び金属粉末等を用いる場合は30〜110μmとすることが好ましい。
【0024】
これら粉体塗料及び突起形成用粉末は、粉体塗料を100質量部とした場合に、突起形成用粉末を5〜250質量部(より好ましくは10〜200質量部、更に好ましくは50〜150質量部)配合することが好ましい。5部未満であると、搬送するために十分な摩擦が得られ難くなる傾向にある。一方、250部を越えると十分に固定し難くなり、使用時等に脱落することがあり好ましくない。
【0025】
また、これら粉体塗料及び突起形成用粉末の平均粒径は、突起形成用粉末の平均粒径(Df)に対する粉体塗料の平均粒径(Dp)の比(Dp/Df)を0.3〜0.7、(より好ましくは0.4〜0.5)とすることが好ましい。Dp/Dfがこの範囲にあれば、搬送に適した摩擦力を有するニップ層とすることができる。この値が0.3未満であると、突起形成用粉末が十分に固定されず、脱落し易くなる傾向にある。一方、0.7を越える場合は、突起形成用粉末を覆うような塗膜が形成され易く、搬送するために十分な摩擦力を有するニップ層が形成され難い傾向にある。
【0026】
上記「ニップ層」は、突起形成用粉末により形成された凹凸をその表面に有し、この凹凸により十分な摩擦をもって被搬送体の搬送を確実に行うための層である。ニップ層の厚さは特に限定されず、被搬送体の性状に応じた厚さとすることが好ましいが、通常、10〜500μm(より好ましくは15〜120μm、更に好ましくは20〜40μm)とすることが好ましい。尚、ニップ層の厚さは芯材の表面から最も高い突起の先端までの距離とする。
【0027】
更に、請求項の搬送用ローラの製造方法のように、断面積が0.5〜7.5cmであり、長さが20〜50cmである芯材を用い、平均粒径20〜50μmの突起形成用粉末を用いた場合には、ニップ層の最大層厚と最小層厚との差は10μm以下(更には5μm以下、特に2μm以下)とすることができる。
【0028】
請求項及び請求項記載の搬送用ローラの製造方法によると、ニップ層の厚さがあらゆる方向に均一であり、且つ下記の(1)式により算出される円筒度が10μm以下(特に5μm以下、通常4μm以下)である搬送用ローラを得ることができる。また、得られる搬送用ローラによると、多様な被搬送体においても斜行することなく精度の高い搬送を行うことができる。
円筒度(μm)=外径の最大値−外径の最小値 (1)
【0029】
本発明の製造方法で得られる搬送用ローラにより搬送できる被搬送体としては、普通紙、再生紙、樹脂含浸紙、熱転写紙、コート紙、光沢紙、及び紙幣等の紙類、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、光沢フィルム、ラミネート用フィルム等のシート等を挙げることができる。更に、この搬送用ローラは、このような高い搬送精度を必要とする被搬送体の搬送に適しており、特に、プリンタ、ファックス機及びコピー機等の搬送装置部に好適である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
[1]実施例1(静電流動浸漬塗装装置及び図1の回転方法を用いた搬送用ローラの製造)
(1)静電流動浸漬塗装装置の概要
図4は、実施例1で用いた静電流動浸漬塗装装置4を正面から透視した模式図である。
静電流動浸漬塗装装置4は、全長1.7m、幅1mの流動槽41を備える。流動槽は略トンネル状を呈し、その入口及び出口は開放されている。この流動槽外上方には図1に示す回転機構を備え、これにより芯材を長さ方向の軸線を回転軸として回転させながら移動させることができる。更に、同時に複数の芯材の塗装を行うことができる。
【0031】
一方、この静電流動浸漬塗装装置4内に投入された混合粉末5(焼付塗料及び突起形成用粉末等)は底板42上で揺動モータ43により揺動され底板上に分散される。この混合粉末は、その後送風機44から供給され第1吹上管451及び第2吹上管452を通って吹き出す空気によりクラウドとなる。そして、クラウドとなった混合粉末は帯電針46の周縁を通過及び/又は帯電針に接触する際に帯電され、更に、吹付管453により芯材に吹き付けられ付着される。クラウドの一部は流動槽の上部から吸い上げられ集粉機47により回収されて、流動槽内に戻される。尚、第1吹上管、第2吹上管及び吹付管は各々流動槽内に等間隔に3ヶ所に設けられている。
【0032】
(2)使用した芯材、粉体塗料及び突起形成用粉末
芯材として、直径12mm、長さ330mmに切削加工した快削鋼(SUM23L)の表面に、約4μmの厚さの無電解ニッケルめっきを施した円柱体を用いた。また、粉体塗料として、ポリエステル/エポキシ系粉体塗料(大日本塗料株式会社製、商品名「V−PET1340QDLB」、平均粒径;25μm、嵩密度;0.5g/cm3)を使用した。更に、突起形成用粉末としてアルミナ(昭和電工株式会社製、商品名「モランダムA」、平均粒径;40μm、嵩密度;1.95g/cm3)を使用した。
【0033】
(3)混合粉末の付着
(1)に示した静電流動浸漬塗装装置の流動槽内に上記の粉体塗料と突起形成用粉末を含有する混合粉末を投入し、芯材を上記回転機構により回転させながらトローリコンベアにより移送し、流動槽内のクラウドを通過する間に混合粉末を付着させた。芯材は毎分20回転するように設定した。また、第1吹出管451からは0.01MPa、第2吹出管452からは0.3MPa、吹付管453からは0.07MPaの圧力で空気を吹き出すよう設定した。帯電針には−35kVの電圧を印加した。
【0034】
(4)焼付処理及び冷却
静電流動浸漬塗装装置を通過し終え、表面に混合粉末が付着された芯材を、そのまま延設されているトローリコンベアにより、引き続いて20kHzの高周波(電圧62V、電流65A)が出力されている高周波誘導加熱炉内に誘導し、40秒間でかけて通過させ、その表面温度を230℃まで上昇させた。その後、更に設定温度を200℃に固定した遠赤外線発生装置内に移送し、この装置内を通過する2分間にわたり加熱を行った。次いで、塗装システムが設置されている空間内(温度30℃、湿度60%)に開放されたトローリコンベア(放冷手段)で4分間にわたって放冷し、更にスポットクーラー(1基あたり1分間に0.5m3を送風)が設置された空間内で、表面温度が40℃となるまで冷却した。その後、塗膜の形成された芯材(搬送用ローラ)をトローリコンベアから降ろした。
【0035】
実施例1により得られた搬送用ローラの評価
得られた搬送用ローラのニップ層の厚さを非接触式レーザスキャンマイクロメータ(株式会社ミツトヨ製、型式「LSM−3100」)により測定した。その結果、ニップ層の厚さは32±4μmであり、前記の(1)式により算出される円筒度は2〜7μmであった。
【0036】
[2]実施例2(静電流動浸漬塗装装置及び図2の回転方法を用いた搬送用ローラの製造)
(1)静電流動浸漬塗装装置の概要
図5は、実施例2で用いた静電流動浸漬塗装装置4を正面から透視した模式図であり、図2の回転機構を用いる以外は実施例1において使用したものと同様である。
【0037】
(2)使用した芯材、粉体塗料及び突起形成用粉末
実施例1と同様な芯材、粉体塗料及び突起形成用粉末を使用した。
(3)混合粉末の付着
(1)に示した静電流動浸漬塗装装置の流動槽内に上記の粉体塗料と突起形成用粉末を含有する混合粉末を投入し、芯材を上記回転機構により回転させながら移送し、流動槽内を通過する間に混合粉末を付着させた。芯材は毎分20回転するように設定した。また、第1吹出管451からは0.01MPa、第2吹出管452からは0.3MPa、吹付管453からは0.07MPaの圧力で空気を吹き出すよう設定した。帯電針46には−35kVの電圧を印加した。
(4)焼付処理及び冷却
静電流動浸漬塗装装置を通過し終え、表面に混合粉末が付着された芯材を実施例1と同様にして焼付処理し、更に同様に冷却し、フロアコンベア上から降ろした。
【0038】
実施例2により得られた搬送用ローラの評価
得られた搬送用ローラのニップ層の厚さを非接触式レーザスキャンマイクロメータにより測定した。その結果、ニップ層の厚さは32.5±7.5μmであり、前記の(1)式により算出される円筒度は0.5〜8μmであった。
【0039】
[3]参考例(静電流動浸漬塗装装置及び図3の回転方法を用いた搬送用ローラの製造)
(1)静電流動浸漬塗装装置の概要
図6は、参考例で用いた静電流動浸漬塗装装置4を正面から透視した模式図であり、図3の回転機構を用いる以外は実施例1において使用したものと同様である。
【0040】
(2)使用した芯材、粉体塗料及び突起形成用粉末
実施例1と同様な芯材、粉体塗料及び突起形成用粉末を使用した。
(3)混合粉末の付着
(1)に示した静電流動浸漬塗装装置の流動槽内に上記の粉体塗料と突起形成用粉末を含有する混合粉末を投入し、芯材を上記回転機構により回転させながら移送し、流動槽内を通過する間に混合粉末を付着させた。芯材は毎分20回転するように設定した。また、第1吹出管451からは0.01MPa、第2吹出管452からは0.3MPa、吹付管453からは0.07MPaの圧力で空気を吹き出すよう設定した。帯電針46には−35kVの電圧を印加した。
(4)焼付処理及び冷却
静電流動浸漬塗装装置を通過し終え、表面に混合粉末は付着された芯材を実施例1と同様にして焼付処理し、更に同様に冷却し、ベルトコンベア上から降ろした。
【0041】
参考例により得られた搬送用ローラの評価
得られた搬送用ローラのニップ層の厚さを非接触式レーザスキャンマイクロメータにより測定した。その結果、ニップ層の厚さは32.5±7.5μmであり、前記の(1)式により算出される円筒度は0.5〜8μmであった。
【0042】
[4]比較例1(芯材を回転させないで製造した搬送用ローラの製造)
実施例2と同様な芯材、粉体塗料及び突起形成用粉末を使用し、実施例2と同様な静電流動浸漬塗装装置を用いるが回転させず、塗装条件も実施例2と同様にして塗装を行い、搬送用ローラを得た。
【0043】
比較例1により得られた搬送用ローラの評価
得られた搬送用ローラのニップ層の厚さを非接触式レーザスキャンマイクロメータにより測定した。その結果、ニップ層の厚さは32.5±25μmであり、前記の(1)式により算出される円筒度は10μm以上であった。
【0044】
[4]評価
実施例1〜2、及び参考例の方法で得られた搬送用ローラはいずれも、比較例1と比べてニップ層の厚さのばらつきが小さくなっていることが分かる。更に、円筒度も比較例1に比べて小さく、搬送用ローラの断面はより真円に近くなっていることが分かる。これらの効果はいずれも被塗装体である芯材を回転させたために得られている。
【0045】
【発明の効果】
請求項1〜の塗装方法によると、流動浸漬塗装法を用いた場合に柱状の被塗装体表面に均一な厚さの塗膜を安定して、且つ確実に形成することができる。請求項及びの搬送用ローラの製造方法によると、芯材の表面に厚さが均一なニップ層を安定して、且つ確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 被塗装体を回転させる方法の一例の説明図である。(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【図2】 被塗装体を回転させる方法の他の例の説明図である。(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【図3】 被塗装体を回転させる方法の参考例の説明図である。(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【図4】 本実施例1に使用した静電流動浸漬塗装装置である。
【図5】 本実施例2に使用した静電流動浸漬塗装装置である。
【図6】 参考例に使用した静電流動浸漬塗装装置である。
【符号の説明】
1a;トローリコンベア、1b、1c、1c’;フロアコンベア、11a;懸垂具、11b;台座治具、111a、111b;回転部、111c、111c’;支持具、12c、12c’;回転ガイド、2;被塗装体、3;ベルト、4;静電流動浸漬塗装装置、41;流動槽、42;底板、43;揺動モータ、44;送風機、451;第1吹上管、452;第2吹上管、453;吹付管、46;帯電針、47;集粉機。

Claims (4)

  1. 少なくとも粉体塗料を含むクラウドが形成された流動槽内において、被塗装体を回転させながら、少なくとも該粉体塗料を該被塗装体の表面に付着させる塗装方法であって、
    上記被塗装体は柱状であり、
    トローリコンベア又はフロアコンベアにより、上記被塗装体を回転させながら移動させることを特徴とする塗装方法。
  2. 少なくとも粉体塗料を含むクラウドが形成された流動槽内において、複数の被塗装体の各々を回転させながら移動させ、少なくとも該粉体塗料を該複数の被塗装体の各々の表面に付着させる塗装方法であって、
    上記被塗装体は柱状であり、
    トローリコンベア又はフロアコンベアにより、上記被塗装体を回転させながら移動させることを特徴とする塗装方法。
  3. 請求項1又は2に記載の塗装方法を用いる搬送用ローラの製造方法であって、上記クラウドは上記粉体塗料と突起形成用粉末とを含み、上記被塗装体は円柱状の芯材であり、該芯材の表面に該突起形成用粉末を該粉体塗料からなる樹脂層により固定したニップ層を形成することを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
  4. 上記芯材の断面積は0.5〜7.5cmであり、長さは20〜50cmであり、上記突起形成用粉末は平均粒径が20〜50μmである場合に、上記ニップ層の最大層厚と最小層厚との差が10μm以下である請求項記載の搬送用ローラの製造方法。
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