JP4727456B2 - 内圧開放特性を有する金属製容器蓋 - Google Patents

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Description

本発明は、内圧開放特性、即ち容器内圧が過剰に上昇すると容器内圧を自動的に開放する特性を有する金属製容器蓋に関する。
一般に、炭酸飲料等を容器内に充填後、容器の口頸部に容器蓋を装着して口頸部を密封した状態で容器の内容物が過剰に加熱された場合、或いは口頸部から一旦容器蓋を離脱せしめた後に再び口頸部に容器蓋を装着して口頸部を密封した後に内容物が腐敗して発酵した場合には、容器の内圧が過剰に上昇するときがある。
上記のように容器内圧が増大したときには、容器蓋が容器口頸部から飛翔してしまったり、場合によっては、容器自体が破裂してしまうこともある。このような容器内圧の増大による不都合を防止するために、内圧開放特性を有する金属製の容器蓋が提案されている。このような金属製容器蓋として、円形天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁の上端部分に、複数の周方向スリットを、破断可能な幅狭の橋絡部を介して配設したものが知られている(例えば特許文献1)。
このような特許文献1の容器蓋では、容器内圧が増大したときには、上記橋絡部が破断し、複数の周方向スリットが連続して大きなスリットとなり、この部分から容器内ガスが外部に放出され、場合によっては、同時に天面壁がドーム状に変形して容器内ガスが放出され、内圧増大により不都合を回避できるというものである。
実公平7−25318号公報
ところで、上述した従来の内圧開放型の金属製容器蓋においては、容器内圧が急激に著しく増大したときに、周方向スリット間を繋ぐ橋絡部が全周にわたって破断してしまい、天面壁を含む容器蓋の上方部分がスカート壁から切り離されて飛翔してしまうという不都合を生じるおそれがある。
従って本発明の目的は、容器内圧が急激に増大したときに、容器蓋の天面壁を含む上方部分がスカート壁から切り離されて飛翔するという不都合を確実に防止しながら容器内のガス抜きを有効に行うことができ、容器内圧の増大による容器蓋の飛翔や容器破壊を確実に防止できる金属製容器を提供することにある。
本発明によれば、円形天面壁及び該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁を有する金属薄板製シェルと、該シェル内に配設された合成樹脂製ライナーとを具備し、該シェルの該スカート壁には、螺子形成領域を備え且つ該螺子形成領域よりも上方部分に、周方向に延びている少なくとも一つの内圧開放領域が形成されている金属製容器蓋において、
前記内圧開放領域は、破断可能な小幅の低強度橋絡部を介して周方向に延びている複数の周方向スリットから形成されているか、或いは周方向に延びている一本の周方向スリットにより形成されているものであり、
前記内圧開放領域の周方向両端部分には、それぞれ軸線方向に対して傾斜して延びている一対の弱化ラインが形成されており、該一対の弱化ラインは、軸線方向に対する各傾斜角θが10乃至45度の範囲で、下方から上方に向かって互いに近づく方向に或いは互いに遠ざかる方向に延びていることを特徴とする金属製容器蓋が提供される。
本発明の金属製容器蓋においては、
(1)前記一対の弱化ラインは、下方から上方に向かって互いに近づく方向に延びていること、
(2)前記弱化ラインは、前記周方向スリットに連続して或いは該スリットの近傍から軸線方向の上方に傾斜して延びていること、
(3)前記内圧開放領域の周方向両側部分には、それぞれ、周方向スリットが存在しない高強度橋絡部から形成された高強度領域が設けられ、各高強度領域の一方側の周方向端部に連続して、複数のスリットが中強度橋絡部を介して周方向に間欠的に延びている内圧開放補助領域が形成されており、該内圧開放補助領域において、中強度橋絡部の周方向幅は、前記内圧開放領域における低強度橋絡部の周方向幅よりも長く、且つ前記高強度領域を形成する高強度橋絡部の周方向幅よりも短く形成されていること、
(4)前記内圧開放領域には、周方向の中央部分に、鉛直方向に延びている少なくとも1本の鉛直弱化ラインが形成されていること、
(5)前記内圧開放領域は1箇所に形成されており、円形天面壁中心を基準として、該内圧開放領域は、5乃至95度の幅に形成され、前記高強度橋絡部からなる高強度領域は、それぞれ10乃至70度の幅に形成されており、該内圧開放領域及び高強度領域を除く領域が、内圧開放補助領域となっていること、
が好適である。
本発明の容器蓋においては、容器内圧が急激に増大したときには、内圧開放領域の周方向両端部分において軸方向に延びている一対の弱化ラインが破断し、内圧開放領域におけるスカート壁が外方に広がるように変形して大きな開口部を形成し、この結果、ガス抜きが行われる。即ち、内圧開放領域に限定してガス抜き用の大きな開口が形成されるため、天面壁を含む容器蓋の上方部分がスカート壁から切り離されて飛翔するという不都合を確実に防止することができ、容器内圧の上昇による不都合を有効に防止することが可能となる。また、容器内のガス抜きを確実に行うことができる。
特に本発明においては、上記一対の弱化ラインが、軸線方向に対して一定の角度θ(10乃至45度)で傾斜して延びており、このため、この弱化ラインが鉛直方向に延びている場合に比して、天面壁を含む容器蓋の部分がスカート壁から切り離されて飛翔してしまうという不都合を防止する効果が極めて大きいという利点がある。
即ち、容器内圧が異常に上昇したとき、上記の弱化ラインが破断するが、一対の弱化ラインが鉛直方向(即ち、軸線方向と平行に)に延びているときには、この弱化ラインが、容器内圧の異常上昇による破断を生じ易く、このため、弱化ラインの破断が、その上端から天面壁の周縁(スカート壁と天面壁との境界部分)に沿って広がるように進行してしまうことがある。特に、スカート壁の内圧開放領域以外の部分に、複数のスリットが橋絡部を介して周方向に延びている内圧開放補助領域が設けられているときには、弱化ラインの破断が進行して、内圧開放補助領域のスリット間橋絡部の破断にまで至ってしまうことがあり、このような弱化ラインの破断の進行の結果、天面壁を含む容器蓋の部分がスカート壁から切り離されて飛翔してしまうという不都合(以下、天面飛びと呼ぶことがある)を生じてしまうことがある。
しかしながら、本発明にしたがって、一対の弱化ラインが、上記の傾斜角度θで軸線方向に傾斜して延びているときには、弱化ラインの破断が内圧開放領域を超えて進行するという不都合を有効に回避することができ、天面飛びの問題を確実に回避することができるのである。
このように、弱化ラインを軸線方向に傾斜して設けることにより、天面飛びの抑制効果が増大する理由は明確に解明されたわけではないが、おそらく、鉛直方向(即ち、軸線方向と平行)に延びている弱化ラインに比して、弱化ラインが下方から上方に向かって互いに近づく方向に傾斜して延びている場合には、弱化ラインの破断が内圧開放補助領域に拡がるおそれが少なく、天面飛びを防止する上で好都合となり、また、下方から上方に向かって互いに遠ざかる方向に延びている場合には、弱化ラインが最も破断し易いため、破断が早く進行して内圧が早く開放され、キャップ飛びが起こりにくくなっているのではないかと思われる。
尚、上記の弱化ラインの傾斜角θは、10乃至45度の範囲にあることは重要であり、例えば、10度よりも小さいと、弱化ラインを鉛直方向(即ち、軸線方向と平行)に形成した場合と大差なく、天面飛びの問題を発生し易くなってしまう。また、傾斜角θを45度よりも大きくすると、この弱化ラインが破断しにくくなり、容器内圧の異常上昇などによるガス抜きが困難となる。即ち、容器内圧が異常上昇した場合、弱化ラインが破断しにくいため、周方向スリット間の橋絡部が破断しても容器内圧が解放されにくく、容器内圧が著しく上昇して、この破断が天面壁の全周にわたって進行してしまい、容器蓋の天面壁が、容器口部から飛翔してしまうという不都合を生じてしまう(以下、天面飛びと呼ぶことがある)おそれがある。即ち、本発明では、傾斜角θが10乃至45度となるように、傾斜した弱化ラインを内圧開放領域の両端に形成することにより、天面飛びの問題を確実に回避することができ、さらには、容器内圧の異常上昇によるガス抜きが有効に行われ、キャップ飛びの不都合も有効に回避することができるのである。
また、本発明においては、傾斜角θが上記の範囲にある限り、内圧開放領域の両端部に形成された一対の弱化ラインは、下方から上方に向かって互いに近づく方向に延びているように形成されていてもよいし、逆に、下方から上方に向かって互いに遠ざかる方向に延びていてもよい。但し、このような一対の弱化ラインは、上記の天面飛びの問題を確実に回避するという観点からは、下方から上方に向かって互いに近づく方向に延びていることが好適である。即ち、仮に、弱化ラインの破断が、その延長線上に拡大して拡がっていったとしても、下方から上方に向かって互いに近づく方向に延びているときには、内圧開放領域を超えて内圧開放補助領域に拡がるおそれが少なく、天面飛びを防止する上で好都合となるからである。
以下、本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態について、添付図面を参照して更に詳述する。
図1は、内圧開放領域がスカート壁に形成されている本発明の容器蓋の好適例の半断面側面図であり、
図2は、図1の容器蓋を容器口頸部に巻き締める工程を説明するための半断面側面図であり、
図3は、図1の容器蓋が容器口頸部に巻き締められる前の状態での形状を示す側面図であり、
図4は、図1の容器蓋のスカート壁の展開図であり、
図5は、図3の容器蓋が、内圧上昇により変形した状態を示す図であり、
図6は、本発明の容器蓋における内圧開放領域において、他のパターンの弱化ラインが形成されているものを、容器口頸部に巻き締められる前の状態で示す側面図であり、
図7は、図6の容器蓋が、内圧上昇により変形した状態を示す図であり、
図8は、内圧開放領域が1本の周方向スリットに形成されている態様の本発明の容器蓋が、容器口頸部に巻き締められている状態を示す側面図であり、
図9は、図8の容器蓋が、内圧上昇により変形した状態を示す図である。
図1を参照して、全体として1で示す本発明の容器蓋は、金属薄板製シェル3と合成樹脂製ライナー5とから構成されている。
金属薄板製シェル3は、例えば厚さが0.22乃至0.26mm程度のアルミニウム系合金製であり、円形天面壁7とこの天面壁7の周縁から垂下する略円筒形状のスカート壁9とを有する。
図1から明らかなように、スカート壁9の下端は、半径方向外方に膨出せしめられており、膨出しているこの下端部には、破断可能な複数のブリッジ11を介してタンパーエビデント(TE)裾部13が連なっている。
上記のスカート壁9の略中央部は、後述する巻き締めによって螺子が形成される螺子形成領域15となっており、この螺子形成領域15の上端には環状溝17が形成されている。この環状溝17は、巻き締めのための治具を導入するためのものである。さらに、この環状溝17の上方には環状ビード18が形成されている。この環状ビード18は、巻き締め時の変形防止のための部材である。
環状ビード18の上方には周方向に凹部19aと凸部19bとが交互に存在する凹凸形状部(ナール)19が形成されており、凹部19aの上端(即ち、円形天面壁7に連なるコーナー部近傍)には、周方向に間隔をおいて延びる周方向スリット20が多数形成されている。かかるスリット20により、後述する内圧開放領域Aが形成され、さらには、高強度領域Bや内圧開放補助領域Cが画定される。通常、このような多数のスリット20の間の部分に凹凸形状部19の凸部19bが位置するようになっている。このような多数の周方向スリット20は、一般に、全て、実質上同一の長さを有しており、2乃至5mm程度の周方向長さを有している。
上記のような容器蓋においては、周方向スリット20は、後述するガス抜き機能を示すと同時に、洗浄水の導入口としての機能をも示し、さらには、このようなスリット20に関連して形成されるナール19は、容器蓋を旋回させる際の滑り止めとしての機能をも有している。
このような金属製の容器蓋1は、図2に示されているように、容器口頸部70に被せられ、巻き締め工程によって容器口頸部70に巻き締められ、これにより、図3に示されているような形状で容器口頸部70に固定され、容器口頸部70が密封されることとなる。
図1に戻って、ライナー5は、軟質ポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から形成されるものであり、天面壁7の内面に合成樹脂溶融物を供給し、この溶融物を所要形状に型押成形することによって好都合に形成することができる。図示の実施形態におけるライナー5は、比較的肉薄の円形中央部5aと比較的肉厚の環状周縁部5bとから構成されている。図1から理解されるように、環状周縁部5bの中央部分は若干凹んだ凹部となっている。また、このようなライナー5は、環状周縁部のみからなる形状のものであってもよい。
さらに、ライナー5は、上記の容器蓋とは全く別個に成形された中栓のようなものであってもよい。
図2及び図3を参照して、容器口頸部70は、金属、ガラス、硬質樹脂等からなるものであり、図2等では金属製のものが例示されている。この容器口頸部70の上端にはカール部71が形成され、側面には、螺子73が形成され、螺子73の下方には顎部75が形成されている。
図2に示されているように、容器蓋1を容器口頸部70に巻き締めるために、容器口頸部70に被せた状態では、容器口頸部70の上端(カール部71)に前述したライナー5の環状周縁部5bの凹部が対面し、また、容器蓋1のTE裾部13の下端が容器口頸部70の顎部75の下側に位置する。
上記の状態で、図2に示すようにして巻き締めが行われる。即ち、容器口頸部70に被せられた容器蓋1を、外側押圧具77で容器口頸部70の上端に押さえ付けて、その肩部を変形させながら、螺子形成用ローラ79を、容器蓋1の環状溝17に導入し、次いで容器蓋1のスカート壁9を押し付けながら容器口頸部70の螺子73に沿ってローラ79を回転させていくことにより、スカート壁9の螺子形成領域15に、容器口頸部70の螺子73と螺子係合する螺子23を形成する。一方、容器蓋1のTE裾部13の下端は、裾部巻き締めローラ81によって容器口頸部70の顎部75の下側に押し付けられ、顎部75の下側に沿って変形する。
上記の巻き締め工程により、容器蓋1は、容器口頸部70に巻き締め固定され、容器口頸部70(カール部71)の上端及び外周部に前述したライナー5の環状周縁部5bが密着することにより、容器口頸部70が密封されることとなる(図3)。この状態において、容器蓋1のスカート壁9は容器口頸部70の外面に螺子係合しており、且つ容器蓋1のTE裾部13の下端は、容器口頸部70の顎部75の下側に固定されている。
容器口頸部70に巻き締め固定されている図3の容器蓋1は、これを開栓方向に回転させていくことにより、スカート壁9が上昇して容器口頸部70から取り除かれるが、この際、TE裾部13は、その下端が容器口頸部70の顎部75の下側に係合するために、その上昇が制限され、この結果、ブリッジ11が破断し、TE裾部13がスカート壁9から切り離される。従って、容器口頸部70から除去された容器蓋1ではTE裾部13が切り離されており、これにより、開封の事実を認識することができる。尚、凹凸形状部(ナール)19は、容器蓋1を回転させる際の滑り止めとして機能する。
ところで、上記のような構造の容器蓋1では、図1や図4の展開図に示されているように、複数の周方向スリット20によって、内圧開放領域Aが形成されている。
内圧開放領域Aでは、複数の周方向スリット20の間の橋絡部(以下、低強度橋絡部と呼ぶ)25が破断可能な程度に幅狭に形成されている。即ち、容器内圧が何らかの理由により上昇した場合(例えば容器内容物の発酵等)、内圧開放領域Aにおいて、スカート壁9に加わる応力によって周方向スリット20間の低強度橋絡部25が破断し、複数の周方向スリット20が連続して大きなスリットとなり、この部分からガス抜きが有効に行われるようになっている。
一方、図4の展開図に示されているように、周方向スリット20がスカート壁9の全周にわたって分布しているが、これらの周方向スリット20間の間隔(即ち橋絡部)の長さ調整によって、上記の内圧開放領域Aとともに、高強度領域B及び内圧開放補助領域Cが形成される。
即ち、高強度領域Bは、周方向スリット20が存在していない領域であり、換言すると、隣り合う周方向スリット20間の橋絡部27(以下、高強度橋絡部と呼ぶ)の間隔が長く設定された領域であり、内圧開放領域Aの周方向両端部分に、それぞれ形成されている。
また、内圧開放補助領域Cは、周方向スリット20間の橋絡部29(以下、中強度橋絡部と呼ぶ)の周方向長さが、内圧開放領域Aの低強度橋絡部25よりもやや長く(当然、高強度橋絡部27よりもかなり短い)設定された領域であり、高強度領域Bの一方側の端部に連なって形成されている。即ち、内圧開放領域Aと内圧開放補助領域Cとの間には、必ず高強度領域Bが存在するように配置される。
即ち、内圧開放補助領域Cでは、スリット20間が中程度の強度を有する中強度橋絡部29となっているため、容器内圧が急激に上昇したときには、この中強度橋絡部29も低強度橋絡部25とともに破断し、ガス抜きが補助的に行われる。一方、このような内圧開放補助領域Cを設けることにより、周方向スリット20をスカート壁9の全周にわたって分布させることができ、この容器蓋1を容器口頸部70に装着した後の洗浄性を高めることができる(スリット20が洗浄液導入口となる)、また、容器蓋1を開栓して容器口頸部70から取り外すときに、スリット20からのガス抜きを速やかに行わせる上でも好適である。しかしながら、前述した内圧開放領域Aに連なって内圧開放補助領域Cが形成されていると、容器内圧の異常上昇により、内圧開放領域Aの低強度橋絡部25が破断していくと、この破断が周方向に広がっていき、内圧開放補助領域C中の中強度橋絡部29の破断と相まって、スカート壁9の全周に破断が進行してしまい、この容器蓋1の天面壁7を含む上部が飛翔してしまう(天面飛び)という不都合を生じてしまう。従って、上記の態様では、内圧開放領域Aと内圧開放補助領域Cとの間に、高強度橋絡部27からなる高強度領域Bを介在させ、低強度橋絡部25や中強度橋絡部29からの破断の周方向への進行を高強度領域Bによって停止させるようにしているのである。
ところで、上記のような周方向スリット20が形成されていると、図2に示す巻き締め工程時にスリット20の下側の部分(凹凸形成部19の凹部19a)が引っ張られ、スリット20間の低強度橋絡部25が破断し、シール不良を生じてしまうおそれがある。即ち、巻き締め工程では、螺子形成用ローラ79によりスカート壁9の螺子形成領域15を容器口頸部70の螺子73に沿って変形させるため、該ローラ79が導入される環状溝17に近接しているスリット20の下側の部分(凹部19a)が大きく変形してしまうのである。前述した環状ビード18は、このような不都合を回避するために設けられているものである。
即ち、このような環状ビード18が形成されているため、図2に示されるように、環状溝17に螺子形成用ローラ79を導入して巻き締めを行っていくと、該ローラ79の押圧による変形の上方への伝達が環状ビード18によって遮断され、スリット20の下側の部分(凹部19a)の変形を有効に防止することができ、例えば巻き締め時のこのような変形に起因するスリット20間の低強度橋絡部25の破断を有効に抑制することができるのである。
本発明においては、図1、図3及び図4に示されているように、内圧開放領域Aの周方向両端部のそれぞれに、軸方向に傾斜して延びている弱化ライン30を設けることが重要である。軸方向に傾斜して延びているこの弱化ライン30は、スカート壁9の外面側或いは内面側に形成されたスコア、或いはスリット、若しくはスリットをミシン目状に形成させてなるものであり、その下端が周方向スリット20に連なっていてもよいし、周方向スリット20の近傍に位置していてもよい。このような弱化ライン30を設けることにより、容器内圧が急激に増大したときに、弱化ライン30に応力が集中し、周方向スリット20の間の低強度橋絡部25が破断すると同時に該弱化ライン30を支点として、スカート壁9が外方に向かって速やかに変形し、この結果、図5に示されているように、内圧開放領域Aに嘴形状の大きな開口32が形成され、この開口32を介して速やかにガス抜きが行われるのである。
即ち、上記のような弱化ライン30が形成されていないときには、容器内圧が急激に著しく増大したときに、低強度橋絡部25の破断が生じるに過ぎず、上記のような大きな開口が形成されず、このため、ガス抜きが迅速に行われず、急激な内圧上昇に対処できず、キャップ飛びや天面飛びなどを生じてしまうこととなる。
また、上記の例において、一対の弱化ライン30は、上方に向かって互いに近づくように傾斜して設けられているが、この傾斜角θは、10乃至45度の範囲に設定されていることも重要である。即ち、一対の弱化ライン30が上記の傾斜角度θで傾斜して延びているときには、垂直方向に延びている弱化ラインに比して、弱化ライン30の破断が進行したとしても天面壁7の周縁部から離れた方向にあるため、天面壁7の周縁部に広がらず、従って、天面飛びを有効に回避することが可能となるのである。
例えば、傾斜角θが上記範囲よりも小さい場合には、この弱化ライン30が鉛直方向に延びている場合と同様になってしまい、容器内圧が異常上昇したときに、その破断が一気に進行し、この結果、該弱化ライン30の上端から天面壁7の周縁部に広がっていき、高強度領域Bの上端部分に沿って破断が進行し、高強度領域Bに隣接している内圧開放補助領域Cの中強度橋絡部29にまで達してしまい、容器蓋1の天面壁7を含む上方部分がスカート壁9から切り離されて飛翔してしまうという天面飛びを生じてしまうおそれがある。また、傾斜角θが上記範囲よりも大きいと、弱化ライン30の破断が生じ難くなり、この結果、容器内圧が著しく上昇して、この破断が天面壁7の全周にわたって進行してしまい、天面飛びを生じ易くなってしまうこととなる。
また、本発明においては、上記の傾斜角θは、特に10乃至30度の範囲にあることが好ましい。即ち、この傾斜角θが大きくなるほど、弱化ライン30は、容器内圧の上昇に際して破断を生じ難い傾向がある。従って、傾斜角θが45度に近づくにしたがい、容器内圧の異常上昇に際して前述した開口32を形成してガス抜きを確実に行うためには、内圧開放領域Aにおける低強度橋絡部25の強度をより小さくし(低強度橋絡部25の周方向幅をより短くする)、この部分での破断を速やかに行うようにすることが必要である。しかるに、低強度橋絡部25の幅をあまり短くすると、前述した容器蓋1の容器口頸部70への巻き締め時に、この橋絡部25の破断を生じやすくなってしまい、このため、巻締工程等の許容範囲が狭くなり、巻締管理に精度を要するようになる。一方、上記傾斜角θが45度よりかなり小さく、10乃至30度の範囲にある場合には、45度と比較すれば、弱化ライン30の破断は生じ易くなっている。従って、低強度橋絡部25の幅を、傾斜角θが45度の場合ほど短くして強度を弱くする必要が無く、このため、巻締工程等の許容範囲が広くなり、不良品の発生を回避し、生産性を高める上で極めて有利となるのである。
また、本発明においては、内圧開放領域Aにおいて、一対の弱化ライン30の間に、軸線方向に延びている変形促進用の弱化ライン33を少なくとも1個設けておくことが好適である。このような弱化ライン33の形成により、容器内圧が急激に上して両端の弱化ライン30が破断したとき、これと同時に、間にあるこの変形促進用の弱化ライン33で折れ曲がり、容易に外方に広がった状態に速やかに変形し、ガス抜きを一層スムーズに且つ迅速に行うことが可能となる。
本発明において、内圧開放補助領域Cでの中強度橋絡部29の周方向幅は、上述した低強度橋絡部25の周方向幅よりもやや長い程度であり、例えば1.0乃至2.5mm程度の長さに設定されるのがよい。
また、内圧開放領域Aは、複数形成することも可能であるが、通常は、一箇所に内圧開放領域Aを設けておけばよい。かかる内圧開放領域Aの大きさは、天面壁7の中心を基準として、通常、5乃至95度、特に40乃至95度の範囲にあるのがよい。
さらに、先にも述べたように、内圧開放領域Aの周方向両端部には、高強度領域Bを設けておくことが、容器内圧の異常上昇時における低強度橋絡部25の破断が周方向に広がっていくことを有効に防止し、また、弱化ライン30の上端からの破断が天面壁7の周縁部に進行したとしても、その進行を途中で停止させ、内圧開放補助領域Cでの中強度橋絡部29の破断との合体を回避する上で好適である。このような高強度領域Bの大きさ(即ち、高強度橋絡部27の周方向幅に相当)は、それぞれ、天面壁7の中心を基準として10度以上であればよいが、特に容器蓋1の洗浄性等の他の要件を考慮すれば、10乃至70度、特に10乃至55度の範囲とするのが好ましい。即ち、高強度領域Bがあまり小さいと、低強度橋絡部25の破断の周方向への広がりや弱化ライン30からの破断の進行抑制効果が低下するし、また必要以上に大きくしても格別のメリットはなく、その分、内圧開放補助領域Cが小さくなり、開栓時におけるガス抜き効果が低下したり、或いは容器蓋1の洗浄性が低下するに過ぎないからである。
尚、内圧開放補助領域Cの大きさは、上記のような内圧開放領域Aと高強度領域Bとを形成した残りの部分とすればよい。
上述した態様においては、一対の弱化ライン30は、所定の傾斜角度θで上方に向かった互いに傾斜して延びているが、本発明においては、図6の側面図及び内圧上昇により変形した状態を示す図7に示したように、このような一対の弱化ライン30を、傾斜角度θが前述した範囲内にある限り、上方に向かって互いに遠ざかる方向に傾斜して延びているものであってもよい。このような場合においても、上記と同様、容器内圧の異常上昇によって該弱化ライン30や低強度橋絡部25の破断によって、図7に示されているように、内圧開放領域Aに嘴形状の大きな開口32が形成され、この開口32を介して速やかにガス抜きが行われる。但し、天面飛びを防止するという点では、前述した図1に示されているように、一対の弱化ライン30が、所定の傾斜角度θで下方から上方に向かって互いに近づく方向に延びている方がより好適である。この場合には、弱化ライン30の破断が、その延長線上に拡大して拡がっていったときにも、内圧開放補助領域から離れる方向にあるため、高強度領域Bの上端部分に沿って破断が進行することがなく、従って、天面飛びをより確実に防止することができるからである。
本発明においては、さらなる設計変更も可能である。例えば、図8の側面図及び図9の変形状態を示す側面図から理解されるように、内圧開放領域Aに形成されている周方向スリット20を1本とすることもできる。この場合においても、容器内圧の異常上昇によって、所定の傾斜角度で延びている弱化ライン30(この例では、上方に向かって互いに近づく方向に延びている)が破断し且つ周方向スリット20が大きく引き裂かれ、図9に示されているように、内圧開放領域Aに嘴形状の大きな開口32が形成され、この開口32を介して速やかにガス抜きが行われることとなる。
ただし、内圧開放領域Aに1本の周方向スリット20しか形成されていない場合には、容器内圧の異常上昇による弱化ライン30からの破断の広がりを有効に抑制し、このような破断の広がりによる天面飛びを防止することは可能であるが、巻き締め時や輸送時におけるスカート壁7の破断或いは変形を起こし易いという問題はある。
本発明の金属製容器蓋の優れた効果を、次の実験例で説明する。
尚、以下の実験例において、内圧開放領域Aにおける低強度橋絡部25の強度は、次のようにして測定し、ベントブリッジ強度(VB強度)として示した。
ベントブリッジ強度測定方法:
各実験例で作製されたアルミニウム製容器蓋について、巻き締め前の形態のものから、内圧開放領域Aに存在する4本の低強度橋絡部25の内側2本分のみを含むような長方形の試験片をはさみで切り出す。次に、この試験片下部を、固定治具で固定した状態で、試験片上部を上方向に引っ張り、軸方向に対するベントブリッジ破断強度を測定器(プッシュプルゲージ)にて測定した。
<実験例1〜4>
住友軽金属社製の板厚0.25mm、引張強度215Nのアルミニウム板を使用し、口径38mmのネジ付金属缶に巻締め可能な容器蓋を作成した。
尚、作製した容器蓋の構造は、図4に示すような展開図を有するものとし、弱化ライン30は、スコアの残存厚みが100μmとなるスコアにより上方に向かって互いに近づくように形成し、その傾斜角θは、表1に示すように、10°、20°、30°及び0°とし、各実験例毎に、それぞれ、10個ずつ作成した。
また、作製した容器蓋の各領域の仕様は、以下の通りである。
低強度橋絡部25の2本合計のベントブリッジ強度:
約60N(幅:約0.60mm)
内圧開放領域A内の低強度橋絡部25数:4本
内圧開放領域Aの幅:21mm
高強度領域Bの幅 :それぞれ15mm
作製されたアルミニウム製容器蓋を以下の手順にしたがって処理し、試験サンプルを作成した。
1.三菱マテリアル社製アルミニウム製ネジ付金属缶(容積339ml)に87±2℃の湯を充填してから、液体窒素を滴下しヘッドスペース内の空気を取り除き、キャッピングをした。
2.キャッピングした容器を30秒間横倒してから正立に戻した。
3.正立状態に戻した容器に76℃−3分、50℃−5分、40℃−5分、35℃−5分の順でシャワーを掛けて冷却した。
4.手で容器蓋を開栓し、その後初期状態の巻締位置までキャップを閉栓した。
5.23℃の試験室内にて容器胴部に窒素供給装置と連結されている針を挿入し、0.034MPa/sで容器内に窒素を供給し、容器内圧を上昇させていった。
6.内圧開放領域が変形して内圧が開放される容器内圧を測定した。
その際、内圧開放領域Aの変形だけでなく容器蓋が破壊されて天面壁が飛ぶ個数も確認した。
その結果を表1に示す。
<実験例5>
傾斜角θを45度とし、低強度橋絡部25の2本合計のベントブリッジ強度が約55Nとなるように変更した以外は、実験例1と全く同様にして試験用サンプルを作製して実験を行った。その結果を、表1に示す。
尚、実験例1〜3及び5が本発明例であり、実験例4は比較例である。
Figure 0004727456
尚、ベント圧は、内圧が開放されたときの圧力であり、MPaで示した。
内圧開放領域がスカート壁に形成されている本発明の容器蓋の好適例の半断面側面図。 図1の容器蓋を容器口頸部に巻き締める工程を説明するための半断面側面図。 図1の容器蓋が容器口頸部に巻き締められる前の状態での形状を示す側面図。 図1の容器蓋のスカート壁の展開図。 図3の容器蓋が、内圧上昇により変形した状態を示す図。 本発明の容器蓋における内圧開放領域において、他のパターンの弱化ラインが形成されているものを、容器口頸部に巻き締められる前の状態で示す側面図。 図6の容器蓋が、内圧上昇により変形した状態を示す図。 内圧開放領域が1本の周方向スリットに形成されている態様の本発明の容器蓋が、容器口頸部に巻き締められている状態を示す側面図。 図8の容器蓋が、内圧上昇により変形した状態を示す図。
符号の説明
1:容器蓋
7:天面壁
9:スカート壁
20:周方向スリット
25:低強度橋絡部
27:高強度橋絡部
29:中強度橋絡部
30:弱化ライン
A:内圧開放領域
B:高強度補助領域
C:内圧開放補助領域

Claims (6)

  1. 円形天面壁及び該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁を有する金属薄板製シェルと、該シェル内に配設された合成樹脂製ライナーとを具備し、該シェルの該スカート壁には、螺子形成領域を備え且つ該螺子形成領域よりも上方部分に、周方向に延びている少なくとも一つの内圧開放領域が形成されている金属製容器蓋において、
    前記内圧開放領域は、破断可能な小幅の低強度橋絡部を介して周方向に延びている複数の周方向スリットから形成されているか、或いは周方向に延びている一本の周方向スリットにより形成されているものであり、
    前記内圧開放領域の周方向両端部分には、それぞれ軸線方向に対して傾斜して延びている一対の弱化ラインが形成されており、該一対の弱化ラインは、軸線方向に対する各傾斜角θが10乃至45度の範囲で、下方から上方に向かって互いに近づく方向に或いは互いに遠ざかる方向に延びていることを特徴とする金属製容器蓋。
  2. 前記一対の弱化ラインは、下方から上方に向かって互いに近づく方向に延びている請求項1に記載の金属製容器蓋。
  3. 前記弱化ラインは、前記周方向スリットに連続して或いは該スリットの近傍から軸線方向の上方に傾斜して延びている請求項1または2に記載の金属製容器蓋。
  4. 前記内圧開放領域の周方向両側部分には、それぞれ、周方向スリットが存在しない高強度橋絡部から形成された高強度領域が設けられ、各高強度領域の一方側の周方向端部に連続して、複数のスリットが中強度橋絡部を介して周方向に間欠的に延びている内圧開放補助領域が形成されており、該内圧開放補助領域において、中強度橋絡部の周方向幅は、前記内圧開放領域における低強度橋絡部の周方向幅よりも長く、且つ前記高強度領域を形成する高強度橋絡部の周方向幅よりも短く形成されている請求項3に記載の金属製容器蓋。
  5. 前記内圧開放領域には、周方向の中央部分に、鉛直方向に延びている少なくとも1本の鉛直弱化ラインが形成されている請求項1乃至4の何れかに記載の金属製容器蓋。
  6. 前記内圧開放領域は1箇所に形成されており、円形天面壁中心を基準として、該内圧開放領域は、5乃至95度の幅に形成され、前記高強度橋絡部からなる高強度領域は、それぞれ10乃至70度の幅に形成されており、該内圧開放領域及び高強度領域を除く領域が、内圧開放補助領域となっている請求項4に記載の金属製容器蓋。
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