JP4727157B2 - スクロール型圧縮機 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、冷凍装置や空気調和装置などに使用されるスクロール型圧縮機に関する。
従来より、冷凍装置や空気調和装置で冷媒ガスなどの圧縮に広く使用されているスクロール型圧縮機においては、固定スクロール部材、旋回スクロール部材及び自転阻止機構を具備することでスクロール型圧縮機構を構成している。このスクロール型圧縮機構において、一方の固定スクロール部材は、吸入管及び吐出管を接続したハウジング内に固定支持された不動のスクロールである。他方の旋回スクロール部材は、固定スクロール部材と上下または左右方向に噛み合わされた状態で配置され、自転阻止機構により自転を阻止されると共に、電動モータなどの駆動源と連結されて、固定スクロール部材に対し公転旋回運動を行うものである。この旋回スクロール部材は、固定スクロール部材と複数の接触点で接触して三日月状の圧縮室を形成し、同圧縮室が外周側より容積を減少させながら内側へ移動することにより、吸入・圧縮・吐出を同時に行うことができる。
また、スクロール型圧縮機においても、焼き付きの防止や冷却等を目的として各摺動部の潤滑が必要になる。このため、スクロール型圧縮機では、従来よりハウジングの底部に潤滑油を貯留する貯留部が設けられ、たとえば電動モータの回転シャフト下端部付近に設けた潤滑油ポンプ機構によって、回転シャフト等に設けた油通路を通して回転シャフト上部の偏心ピン(ドライブピン)上端面から各摺動部へ潤滑油を供給するように構成した潤滑システムを備えている。
以下、従来例として密閉縦型のスクロール型圧縮機の構成及び潤滑システムを図14及び図15に基づいて簡単に説明する。図14は、スクロール型圧縮機を示す図であって、回転シャフトの軸線を含む断面より見た場合の断面図である。また、図15は、同スクロール型圧縮機の油量制御装置を示す図であって、図14のA部拡大図である。
図14に示すように、スクロール型圧縮機31は、有底筒形状の高圧ハウジング32と、該高圧ハウジング32内部の上部に上部軸受33で支持されたスクロール型圧縮機構34と、該スクロール型圧縮機構34の下方、すなわちハウジング32内の下部に上部軸受33などで支持して配設された駆動手段であるモータ35とを備え、該モータ35の回転シャフト36が、スクロール型圧縮機構34の下部に連結されている。
高圧ハウジング32は、筒部32aの下端及び上端が底部32b及び蓋部32cでそれぞれ閉塞状態とされ、ハウジング全体がスクロール型圧縮機構34で圧縮された高圧のガス圧力に耐えうる圧力容器となっている。そして、高圧ハウジング32の筒部32aには、圧縮する冷媒ガスを導入する吸入管37がスクロール型圧縮機構34の内部と貫通状態に接続され、さらに、筒部32aには、スクロール型圧縮機構34で圧縮された高圧の冷媒ガスを外部へ導く吐出管38が接続されており、その一端が高圧ハウジング32内の高圧ガス雰囲気中に開口している。
スクロール型圧縮機構34は、上部軸受33に固定された固定スクロール部材39と、上部軸受33と固定スクロール部材39とで形成された密封空間内にスラスト軸受面40を介して公転旋回運動が可能に支持された旋回スクロール部材41と、該旋回スクロール部材41の外面に設けられ、この旋回スクロール部材41の公転旋回運動を許容しながら自転を阻止する周知のオルダムリンク等よりなる自転阻止機構42とを備えている。
固定スクロール部材39は、固定側端板39aと、該固定側端板39aの内面に立設された渦巻き状の固定側渦巻体39bと、固定側端板39aの周縁部に形成された円筒状の周壁部39cとを備える。このうち、固定側端板39aには、その中央部に吐出ポート43が上下に貫通状態に形成されると共に、同吐出ポート43を開閉する吐出弁44が設けられている。また、周壁部39cには吸入管37が接続されており、該吸入管37により、スクロール型圧縮機構34の密封空間内に、これから圧縮する冷媒ガスを吸入するようになっている。
旋回スクロール部材41は、固定側端板39aに対向状態に配された旋回側端板41aと、該旋回側端板41aの内面に立設され、固定側渦巻体39bと噛み合わされた渦巻き状の旋回側渦巻体41bとを備える。旋回側端板41aには、その外面に円筒形状のボス45が軸線を同じくして立設され、該ボス45の内部には、ブッシュ46が回転可能に嵌装されている。そして、このブッシュ46の内部には、回転シャフト36の軸線から偏心した貫通孔が形成されている。旋回スクロール部材41と上部軸受33との間には、高圧および高圧より低く吸入圧力より大きい圧力にて、旋回スクロール部材41を固定スクロール部材39に押し付け、旋回スクロール41と固定スクロール39とをお互いに軸方向で密封させるべく、それぞれ高圧室を形成するための高圧仕切りシール60および、中間圧力室を形成するための中間圧仕切りシール部材61とを備える。
固定スクロール部材39と旋回スクロール部材41とは、互いに所定の距離だけ偏心した状態で、固定側渦巻体39bと旋回側渦巻体41bとの互いの側面が複数個所で線接触するように180度の位相差をもって噛み合わされている。また、この状態で、固定側渦巻体39b及び旋回側渦巻体41bの先端がそれぞれ旋回側端板41a及び固定側端板39aの内面に旋回スクロールの渦巻き体と反対側から固定スクロールに押し付ける背圧力により密接して、固定側渦巻体39bと旋回側渦巻体41bの中心に対して点対称の位置関係となる複数個所に、密閉空間となる圧縮室Pが形成される。なお、旋回スクロール部材41は、周知のオルダムリンクを備えた自転阻止機構42により、上部軸受33及び同上部軸受33に固定された固定スクロール部材39に対して、自転が阻止された状態で公転旋回運動可能に配されている。
モータ35の回転シャフト36は、上部軸受33と、モータ35の下方に位置する下部軸受60とで軸支され、その軸線から所定量偏心された偏心ピン48が上端に突出状態に設けられている。偏心ピン48は、ブッシュ46の貫通孔に挿入され、ブッシュ46を回転可能に支持している。なお、回転シャフト36などの適所には、一体に回転するバランスウエイト(図示せず)が固定されている。
偏心ピン48及び回転シャフト36には、これらを上下に貫通する油通路49が形成されるとともに、回転シャフト36の下端には潤滑油ポンプ機構50が設けられている。この潤滑油ポンプ機構50は、油通路49の下端に接続されている。また、スクロール型圧縮機構34により圧縮された冷媒ガス(高圧ガス)の雰囲気中となるハウジング32内の底部32bには、潤滑油を貯留しておく貯留部51が設けられており、該貯留部51に所定量以上の潤滑油が溜まった正常な状態では、回転シャフト36下端の潤滑油ポンプ機構50が潤滑油中に位置するようになっている。
そして、スクロール型圧縮機31は、貯留部51と、スクロール型圧縮機34の吸入室SUCとの間を、潤滑油供給流路100で直接接続する構成を採用している。この潤滑油供給流路100は、貯留部51内の潤滑油を吸い込むように下端が開口した油通路49(以下、油通路100aとして説明する)と、該油通路100aの上端開口に連通し、ボス45の凹部内面及びブッシュ46外面間の隙間流路100bと、該隙間流路100b及び吸入室SUC間を連通させるように、上部軸受33内に形成された上部軸受内流路100cと、該上部軸受内流路100cから吸入室SUCに向かう潤滑油のうち、余剰分を貯留部51に戻す戻り流路100dとを備えて構成されている。そして、この潤滑油供給流路100には、吸入室SUCに吐出される潤滑油の流量制限を行う油量制御装置150が接続されている。
図15に示すように、油量制御装置150は、上部軸受内流路100c及び戻り流路100d間を接続する保油部151と、該保油部151内に、鉛直上方をその軸線が向くように固定された外側本体152及び内側本体153と、これら外側本体152及び内側本体153間に挟み込まれた状態に保持固定された複数枚のオリフィス154及びパッキン155(図16参照)と、内側本体153の下端に固定されたストレーナ156とを備えて構成されている。
保油部151は、貯留部51から各オリフィス154に向かう途中の潤滑油を一時的に溜める凹部空間であり、鉛直上方に開口151aを有した状態で、上部軸受33内に形成されている。外側本体152は、周囲に雄ねじが形成された筒体であり、上部軸受33に形成された雌ねじ孔に螺着固定されている。そして、この外側本体152の上端には、流量調整済みの潤滑油を吐出する吐出口152aが形成されている。なお、図15に示す符号40xは、吐出口152aから吐出された潤滑油を、真上のスクロール型圧縮機構34に向かって導出すべく、上部軸受33に形成された貫通孔である。
内側本体153は、保油部151の潤滑油を各オリフィス154に導く導油管であり、その下端に形成された吸い込み口153bが、開口151aを通って保油部151内に溜まっている潤滑油内に挿入されている。さらに、この内側本体153は、周囲に雄ねじが形成されており、外側本体152の内部に形成された雌ねじ孔に対して螺着固定されている。そして、この内側本体153内には、鉛直方向に向かって流路153aが形成されており、各オリフィス154及びパッキン155を介して、吐出口152aに連通している。ストレーナ156は、吸い込み口153bに設けられており、吸い込む潤滑油に含まれるゴミ等を除去し、各オリフィス154の目詰まりを防止する役目をなしている。
図16に示すように、各オリフィス154は、吸入室SUCに向かって吐出される潤滑油の流量を絞る穴あきの円盤状部品であり、これらのオリフィス孔154aを同軸に合わせた状態で、各パッキン155を介在させることによって、互いに所定間隔をおいて多段に重ね合わされている。各パッキン155は、弾性を有する穴あきの円盤状部品であり、各オリフィス154を通って流れる潤滑油が、各オリフィス孔154aを通らずにバイパスする流れを防止するためのシール材としての役目と、各オリフィス154間に、オリフィス孔154aよりも大きい孔径で空間155aを確保し、各オリフィス間の差圧を安定させる役目とをなしている。
そして、これらオリフィス154及びパッキン155は、交互に重ね合わされた状態で外側本体152内に挿入され、さらにこの外側本体152内に内側本体153を螺着させることで、各オリフィス及び各パッキン155間を密接に圧着させるものとなっている。
スクロール型圧縮機31によれば、モータ35を駆動させることにより、旋回スクロール部材41が自転阻止機構42により自転が阻止された状態で、固定スクロール部材39に対して公転旋回運動を行う。この結果、吸入管37から圧縮室Pに吸入した冷媒ガスが、その容積の減少に伴って圧縮され、高圧の冷媒ガスとなる。この高圧の冷媒ガスは、吐出ポート43から吐出弁44を押し開いて高圧ハウジング32内に流出し、高圧ハウジング32内に充満するとともに、吐出管38から外部へと吐出されていく。この時、高圧ハウジング32内は、スクロール型圧縮機構34の吐出圧力と同一またはほぼ同一の高圧状態にあり、この高圧が貯留部51内の潤滑油液面Lにも作用している。
一方、潤滑油ポンプ機構50は、貯留部51内に貯留されている潤滑油を吸い込んで、油通路100a、隙間流路100b、そして上部軸受内流路100cの順序で吸い上げて保油部151に供給する。そして、保油部151内の圧力は、スクロール型圧縮機構34の吸入室SUCにおける圧力に比較して圧が高い(差圧が生じている)ので、この差圧を利用して、高圧側である保油部151から、低圧側である吸入室SUCへ向けて、保油部151内の潤滑油が押し上げられるように流れていく。このため、スクロール型圧縮機構34内への潤滑油の供給は、スクロール型圧縮機31の運転速度に関係なく安定して行われるようになる。
特開2003−227480号公報 特開2002−168183号公報 特開2002−48078号公報 特開平9−228968号公報 特開平11−82335号公報 特開平7−317683号公報
上述した従来の潤滑システムにおいては、潤滑油の減圧手段として、複数のオリフィスを多段に備えた油量制御装置150が設けられており、部品点数が多いという欠点がある。部品点数が少なく、簡易な構成により、潤滑油の減圧を行って流量制御を行う手段が望まれている。
また、安定して確実な給油が可能であり、性能及び信頼性が向上することが望まれている。
本発明の目的は、簡易な構成により、潤滑油の減圧を行って流量制御を行うことが可能なスクロール型圧縮機を提供することである。
本発明の他の目的は、安定して確実な給油が可能であり、性能及び信頼性が向上することが可能なスクロール型圧縮機を提供することである。
本発明のスクロール型圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジング内のスクロール型圧縮機構により圧縮された高圧ガスの雰囲気中に設けられた潤滑油の貯留部と、前記スクロール型圧縮機構の背圧室に形成された前記貯留部から供給される前記潤滑油の油溜まり部と、前記油溜まり部と、前記油溜まり部よりも圧力が低い前記スクロール型圧縮機構の吸入室との間を連結し、前記油溜まり部から前記吸入室に流れる前記潤滑油の流量を調整する流量調整機構とを備えたスクロール型圧縮機であって、前記流量調整機構として、圧縮機における相対的に高圧の高圧室から、前記圧縮機における前記高圧室よりも低圧の低圧室に対して、前記高圧室と前記低圧室との間の圧力差を用いて供給される油の量を制御すると共に、棒状部材と、前記棒状部材を収容し前記高圧室及び前記低圧室のそれぞれと連通する棒状部材収容空間との間の隙間により、前記隙間を通る前記油を減圧させて、前記供給される油の量を制御する圧縮機の給油量制御機構が適用され、前記棒状部材は、前記棒状部材収容空間内において、前記隙間が形成される範囲が可変となるように、前記高圧室と前記低圧室との間の圧力差に基づいて、前記棒状部材の軸方向に移動可能に設けられており、前記高圧室は、前記油溜まり部であり、前記低圧室は、前記吸入室であり、前記棒状部材収容空間は、前記スクロール型圧縮機構の固定スクロール部材を固定し前記スクロール型圧縮機構を支持する軸受又は前記固定スクロール部材に設けられていることを特徴としている。
本発明のスクロール型圧縮機において、前記棒状部材及び前記棒状部材収容空間を形成する壁部の少なくともいずれか一方には、前記棒状部材と前記壁部とが接触するように、前記棒状部材の軸線方向と概ね直交する向きに凸部が少なくとも1箇所以上設けられていることを特徴としている。
本発明のスクロール型圧縮機において、前記棒状部材収容空間は、前記スクロール型圧縮機構の固定スクロール部材を固定し前記スクロール型圧縮機構を支持する軸受及び前記固定スクロール部材に跨って設けられ、 前記棒状部材は、前記固定スクロール部材と前記軸受との間の位置決めピンとして機能することを特徴としている。
本発明のスクロール型圧縮機において、前記油溜まり部に開口するように設けられ、前記油溜まり部から前記吸入室以外の場所に前記潤滑油を排出するための排油穴をさらに備え、前記流量調整機構に含まれ前記油溜まり部に連通する流路の前記油溜まり部に対する開口部は、前記排油穴の前記油溜まり部に対する開口部よりも下方に設けられていることを特徴としている。
(1) 本発明は、旋回背圧スクロール圧縮機に適用されることができる。旋回背圧スクロール圧縮機は、旋回スクロールの背面側から吸入圧力より高い圧力を付加して固定スクロール側へ押し付ける構造を有している。本発明は、旋回背圧スクロール圧縮機において、背圧室(高圧雰囲気)に溜まった油を、上部軸受と固定スクロール部材の合わせ面部分(に相当する半径方向位置)に設けた絞り機構を介して低圧側に供給する。これにより、給油機構の簡素化、部品点数削減、コスト低減、圧縮機の小型化が実現される。
(2) 上記(1)において、絞り機構は、合わせ面の円周方向にわたって設けられた微小断面積流路とする。これにより、流路距離長を長くできるため、流路断面積を大きくできる。よって、流路の詰まりを防止でき、給油機構の信頼性向上、加工コストの低減につながる。
(3) 上記(1)において、絞り機構は、上部軸受と固定スクロール部材の合わせ面部分(に相当する半径方向位置)に設けられたストレートピン絞りとする。ストレートピン絞りにより、より大きな絞り効果が得られる。
(4) 上記(3)において、ストレートピンは、上部軸受と固定スクロール部材の芯出しピンを兼ねる。これにより、給油機構の簡素化、部品点数削減、コスト低減が実現される。
(5) 上記(3)において、ストレートピンは、差圧を検知して軸方向に移動可能であり、ストレートピンの軸方向位置によって絞り量が可変となる。このとき、差圧が大きい場合(概して高回転数)では絞り量大(流量小)、差圧が小さい場合(概して低回転数)では絞り量小(流量大)とする。これにより、運転条件に応じた絞り量の制御が可能となる。広い運転範囲にわたって性能が向上する。
(6) 上記(1)において、絞り機構に通じる油流路の入口(背圧室)は、排油穴よりも下側に設ける。油流路入口を確実に油で満たし、ガスの吹き抜けを防ぐ。これにより、安定して確実な給油が可能となり、性能向上、信頼性の向上につながる。
上記の本発明によれば、旋回背圧スクロール圧縮機において、背圧室(高圧雰囲気)に溜まった油を、上部軸受と固定スクロール部材の合わせ面部分(に相当する半径方向位置)に設けた絞り機構を介して低圧側に給油することにより以下の(a)、(b)の効果が得られる。
(a)筒内へ適正な流量の給油ができる。給油による漏れ損失が低減し、適正量の給油による吸入過熱損失が低減する。また、摺動部(旋回スクロール部材と高圧仕切シール部材との摺動部)への給油による潤滑性が向上する。これにより、圧縮機の性能、信頼性が向上する。
(b)給油構造を簡素化することができる。これにより、部品点数が削減し、組立性が向上し、コストが低減する。
本発明によれば、簡易な構成により、潤滑油の減圧を行って流量制御を行うことが可能となる。
以下、本発明のスクロール型圧縮機の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のスクロール型圧縮機を示す図であって、回転シャフトの軸線を含む断面より見た場合の断面図である。また、図2は、同スクロール型圧縮機の給油量制御機構を示す図であって、図1の要部拡大図である。
図1に示すように、スクロール型圧縮機131は、有底筒形状の高圧ハウジング132と、該高圧ハウジング132内部の上部に上部軸受133で支持されたスクロール型圧縮機構134と、該スクロール型圧縮機構134の下方、すなわちハウジング132内の下部に上部軸受133などで支持して配設された駆動手段であるモータ135とを備え、該モータ135の回転シャフト136が、スクロール型圧縮機構134の下部に連結されている。
高圧ハウジング132は、筒部132aの下端及び上端が底部132b及び蓋部132cでそれぞれ閉塞状態とされ、ハウジング全体がスクロール型圧縮機構134で圧縮された高圧のガス圧力に耐えうる圧力容器となっている。そして、高圧ハウジング132の筒部132aには、圧縮する冷媒ガスを導入する吸入管137がスクロール型圧縮機構134の内部と貫通状態に接続され、さらに、筒部132aには、スクロール型圧縮機構134で圧縮された高圧の冷媒ガスを外部へ導く吐出管138が接続されており、その一端が高圧ハウジング132内の高圧ガス雰囲気中に開口している。
スクロール型圧縮機構134は、上部軸受133に固定された固定スクロール部材139と、上部軸受133と固定スクロール部材139とで形成された密封空間内にスラスト軸受面140を介して公転旋回運動が可能に支持された旋回スクロール部材141と、該旋回スクロール部材141の外面に設けられ、この旋回スクロール部材141の公転旋回運動を許容しながら自転を阻止する周知のオルダムリンク等よりなる自転阻止機構142とを備えている。
固定スクロール部材139は、固定側端板139aと、該固定側端板139aの内面に立設された渦巻き状の固定側渦巻体139bと、固定側端板139aの周縁部に形成された円筒状の周壁部139cとを備える。このうち、固定側端板139aには、その中央部に吐出ポート143が上下に貫通状態に形成されると共に、同吐出ポート143を開閉する吐出弁144が設けられている。また、周壁部139cには吸入管137が接続されており、該吸入管137により、スクロール型圧縮機構134の密封空間内に、これから圧縮する冷媒ガスを吸入するようになっている。
旋回スクロール部材141は、固定側端板139aに対向状態に配された旋回側端板141aと、該旋回側端板141aの内面に立設され、固定側渦巻体139bと噛み合わされた渦巻き状の旋回側渦巻体141bとを備える。旋回側端板141aには、その外面に円筒形状のボス145が軸線を同じくして立設され、該ボス145の内部には、ブッシュ146が回転可能に嵌装されている。そして、このブッシュ146の内部には、回転シャフト136の軸線から偏心した貫通孔が形成されている。旋回スクロール部材141と上部軸受133との間には、高圧にて、旋回スクロール部材141を固定スクロール部材139に押し付け、旋回スクロール141と固定スクロール139とをお互いに軸方向で密封させるべく、高圧室(背圧室165)を形成するための高圧仕切りシール160を備える。
固定スクロール部材139と旋回スクロール部材141とは、互いに所定の距離だけ偏心した状態で、固定側渦巻体139bと旋回側渦巻体141bとの互いの側面が複数個所で線接触するように180度の位相差をもって噛み合わされている。また、この状態で、固定側渦巻体139b及び旋回側渦巻体141bの先端がそれぞれ旋回側端板141a及び固定側端板139aの内面に旋回スクロールの渦巻き体と反対側から固定スクロールに押し付ける背圧力により密接して、固定側渦巻体139bと旋回側渦巻体141bの中心に対して点対称の位置関係となる複数個所に、密閉空間となる圧縮室Pが形成される。なお、旋回スクロール部材141は、周知のオルダムリンクを備えた自転阻止機構142により、上部軸受133及び同上部軸受133に固定された固定スクロール部材139に対して、自転が阻止された状態で公転旋回運動可能に配されている。
モータ135の回転シャフト136は、上部軸受133と、モータ135の下方に位置する下部軸受170とで軸支され、その軸線から所定量偏心された偏心ピン148が上端に突出状態に設けられている。偏心ピン148は、ブッシュ146の貫通孔に挿入され、ブッシュ146を回転可能に支持している。なお、回転シャフト136などの適所には、一体に回転するバランスウエイト136aが固定されている。
偏心ピン148及び回転シャフト136には、これらを上下に貫通する油通路149が形成されるとともに、回転シャフト136の下端には潤滑油ポンプ機構150が設けられている。この潤滑油ポンプ機構150は、油通路149の下端に接続されている。また、スクロール型圧縮機構134により圧縮された冷媒ガス(高圧ガス)の雰囲気中となるハウジング132内の底部132bには、潤滑油を貯留しておく貯留部151が設けられており、該貯留部151に所定量以上の潤滑油が溜まった正常な状態では、回転シャフト136下端の潤滑油ポンプ機構150が潤滑油中に位置するようになっている。
そして、スクロール型圧縮機131は、貯留部151と、スクロール型圧縮機134の吸入室SUCとの間を、潤滑油供給流路200で直接接続する構成を採用している。この潤滑油供給流路200は、貯留部151内の潤滑油を吸い込むように下端が開口した油通路149(以下、油通路200aとして説明する)と、該油通路200aの上端開口に連通し、ボス145の凹部内面及びブッシュ146外面間の隙間流路200bと、該隙間流路200bが開口し、上部軸受133の凹部とボス145との間に形成される背圧室165及び吸入室SUC間を連通させるように上部軸受133内に形成された上部軸受内流路200cと、上部軸受133の上面(上部軸受133と固定スクロール部材139との合わせ面、スラスト軸受面140)に形成された周回溝200d(図3)と、周回溝200dに連通し吸入室SUCに開口するようにスラスト軸受面140の径方向に形成された導入溝200e(図3)とを備えている。
図3は、上部軸受133の上面図である。図4は、上部軸受133の側面図である。図2〜図4に示すように、上部軸受内流路200cは、背圧室165の潤滑油を上部軸受133の上面(スラスト軸受面140)に導くための流路である。上部軸受内流路200cは、その一端部が背圧室165に開口する開口部200gとして形成され、その他端部がスラスト軸受面140に開口する開口部200hとして形成されている。上部軸受内流路200cは、開口部200gから上部軸受133の内部において上部軸受133の径方向外側に延在する第1部分と、その第1部分から連続的に鉛直上方に延びてスラスト軸受面140の開口部200hまで延びる第2部分とを備えている。
図3に示すように、周回溝200dは、スラスト軸受面140において、スラスト軸受面140の周方向に沿って概ね360°周回するように形成されている。周回溝200dは、その一端部が開口部200hに連通し、その他端部が導入溝200eに連通している。導入溝200eは、スラスト軸受面140において、スラスト軸受面140の径方向内側に向けて、スラスト軸受面140の内周側縁部140aにまで延びるように形成されており、吸入室SUCに潤滑油が導入されるように構成されている。
本実施形態では、背圧室165の潤滑油は、上部軸受内流路200cを経た後に、スラスト軸受面140の周方向に流路長が長く形成された周回溝200dを経て、吸入室SUCに導入される。そのため、背圧室165内の高圧の潤滑油は、流路長が長い周回溝200dの絞り効果・流通抵抗により減圧され、その流量が制御された状態で、吸入室SUCに供給される。
本実施形態によれば、背圧室165と吸入室SUCとの間には、潤滑油を減圧させる(潤滑油を流量制御する)ための特別な部材(キャピラリ、オリフィス、螺旋ピンなどの減圧手段)は不要である。即ち、上部軸受133の内部に上部軸受内流路200cを形成するとともに、上部軸受133の上面(スラスト軸受面140)に周回溝200d及び導入溝200eを形成するだけでよい。これにより、減圧用の部材を設けた場合に比べて、コストの抑制が可能となる。
周回溝200dは、その流路の断面積が微小に形成されるとともに、流路長が長く形成されることで、所定の絞り効果が奏するように構成される。周回溝200dは、スラスト軸受面140の周方向に流路長を長くとることができる分、その流路の断面積をそれほど小さくする必要が無く、加工コストが安価であるとともに、ゴミが詰まり難いという効果がある。
なお、上記のように、潤滑油を減圧させるための特別な部材を設けることなく、流路長を長く確保するに際しては、上記のように、周回溝200dを通った潤滑油は、スラスト軸受面140の上面に形成された導入溝200eを通って吸入室SUCに供給される構成に限定されない。例えば、この構成に代えて、周回溝200dの他端部は、上部軸受133の内部においてスラスト軸受面140から鉛直下方に向けて形成される流路(図示せず)に連続し、潤滑油は、その流路から上部軸受133に設けられた開口部(図示せず)を介して、吸入室SUCに供給される構成をとることができる。
また、上記のように、潤滑油を減圧させるための特別な部材を設けることなく、流路長を長く確保するに際しては、周回溝200dのようにスラスト軸受面140上で溝を周回させる構成に限定されない。例えば、固定スクロール部材139の周壁部139cの内部に、上部軸受133の上部軸受内流路200cに連続するように溝を形成し、その溝を周壁部139cの内部で周方向に周回させた後に周壁部139cの外部に開口させて、吸入室SUCに潤滑油を供給させる構成をとることができる。
但し、本実施形態において、スラスト軸受面140に周方向に周回する周回溝200dが形成されることにより以下の効果を得ることができる。高圧ハウジング132内は高圧雰囲気であるのに対し、吸入室SUCは低圧雰囲気である。そのため、上部軸受133の上面(スラスト軸受面140)または、固定スクロール部材139における上部軸受133との合わせ面(スラスト軸受面140に対向する面)のいずれかの加工精度が悪く、上部軸受133と固定スクロール部材139とが軸方向に密封されていないと、高圧ハウジング132内の高圧のガスが、吸入室SUCに、次から次へと入ってしまう。この場合、本実施形態のように、スラスト軸受面140に周方向に概ね360°周回する周回溝200dが形成され、その周回溝200dに潤滑油が満たされることにより、シール効果が生じる。これにより、スラスト軸受面140又はスラスト軸受面140の対向面の加工精度の不良に起因して、スラスト軸受面140を介して、高圧ハウジング132内の高圧のガスが吸入室SUCに流入することが有効に抑制される。
本実施形態のスクロール型圧縮機131によれば、モータ135を駆動させることにより、旋回スクロール部材141が自転阻止機構142により自転が阻止された状態で、固定スクロール部材139に対して公転旋回運動を行う。この結果、吸入管137から圧縮室Pに吸入した冷媒ガスが、その容積の減少に伴って圧縮され、高圧の冷媒ガスとなる。この高圧の冷媒ガスは、吐出ポート143から吐出弁144を押し開いて高圧ハウジング132内に流出し、高圧ハウジング132内に充満するとともに、吐出管138から外部へと吐出されていく。この時、高圧ハウジング132内は、スクロール型圧縮機構134の吐出圧力と同一またはほぼ同一の高圧状態にあり、この高圧が貯留部151内の潤滑油液面Lにも作用している。
一方、貯留部151内に貯留されている潤滑油は、潤滑油ポンプ機構150により圧送されて、油通路200a、隙間流路200bを経て背圧室165に送られる。背圧室165内の圧力は、スクロール型圧縮機構134の吸入室SUCにおける圧力に比較して大きい(差圧が生じている)ので、この差圧を利用して、高圧側である背圧室165から、低圧側である吸入室SUCへ向けて、背圧室165内の潤滑油が押し上げられるように流れていく。この場合、上部軸受内流路200cを通った潤滑油は、流路長が十分に長い上部軸受内流路200cで所定の減圧が行われた後に、導入溝200eから吸入室SUCに供給される。これにより、吸入室SUCには、流量が制御された潤滑油が供給される。
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、第2実施形態について説明する。
第2実施形態において、上記第1実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
図5は、第2実施形態の給油量制御機構を示す側断面図である。図5に示すように、上部軸受133には、鉛直方向に延びる円柱状のピン穴300aが形成されている。上部軸受133には、第1流路300bが形成されている。第1流路300bは、背圧室165と、ピン穴300aに連通するように構成されている。また、上部軸受133には、第2流路300cが形成されている。第2流路300cは、吸入室SUCと、ピン穴300aに連通するように構成されている。
ピン穴300aには、円柱状のピン310が設けられている。ピン310は、例えば、圧入により、ピン穴300aに入れられることができる。ピン穴300aに設けられたピン310とピン穴300aとの間には、微小な隙間が形成されている。即ち、ピン穴300a内の流路は、断面積(径方向の隙間)が小さく形成されている。ピン310の動きは、固定スクロール部材139により規制される。ピン穴300aと、ピン310と、第1流路300bと、第2流路300cは、潤滑油流量制御機構300を構成する。
第2実施形態によれば、背圧室165内の圧力は、スクロール型圧縮機構134の吸入室SUCにおける圧力に比較して大きい(差圧が生じている)ので、この差圧を利用して、高圧側である背圧室165から、低圧側である吸入室SUCへ向けて、背圧室165内の潤滑油が潤滑油流量制御機構300を介して流れる。この場合、第1流路300bを通った潤滑油は、ピン穴300aとピン310の微小な隙間を通ることで所定の減圧が行われた後に、第2流路300cを介して吸入室SUCに供給される。これにより、吸入室SUCには、流量が制御された潤滑油が供給される。
本実施形態によれば、潤滑油を減圧させるための特別な部材を設けることなく、上部軸受133にピン穴300a、第1流路300b、第2流路300cを形成し、ピン穴300aにピン310を設ける構成だけで、背圧室165の潤滑油を減圧させ、流量が制御された潤滑油を吸入室SUCに供給させることができる。
なお、上記において、ピン310は円柱状であり、その周面には凹凸が形成されていない構成であったが、この構成に代えて、ピン310の周面に溝を形成し、その溝とピン穴300aとの間を減圧用の流路とすることができる。ピン310の周面に形成される溝は、ピン310の軸線に沿う直線状でも良いし、螺旋状であっても良い。
次に、図6を参照して、第2実施形態の変形例について説明する。
上記第2実施形態では、ピン穴300a内でピン310が、ピン穴300aに開口する第1流路300b側に寄っている(偏在している)と、ピン310によって第1流路300bが塞がることが考えられる。そこで、本変形例の潤滑油流量制御機構300Aでは、第1流路300bがピン320によって塞がることが無いような構成とされている。
ピン穴300dは、鉛直方向下方が縮径されている。ピン320は、ピン穴300dの縮径部300eよりも大きな径に形成されており、ピン穴300dの縮径部300eよりも鉛直方向下方には入らないように構成されている。ピン穴300dの縮径部300eに第1流路300bが連通している。これにより、第1流路300bは、ピン320により塞がれることがなく、ピン穴300dの縮径部300eに対応する空間320には、常に潤滑油が貯留していることになる。
(第3実施形態)
次に、図7を参照して、第3実施形態について説明する。
第3実施形態において、上記実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
図7は、第3実施形態の給油量制御機構を示す側断面図である。図7に示すように、固定スクロール部材139には、鉛直方向に延びる円柱状のピン穴400aが形成されている。上部軸受133には、第1流路400bが形成されている。第1流路400bは、背圧室165と、ピン穴400aに連通するように構成されている。また、固定スクロール部材139には、第2流路400cが形成されている。第2流路400cは、吸入室SUCと、ピン穴400aに連通するように構成されている。
ピン穴400aには、円柱状のピン410が設けられている。ピン410は、例えば、圧入により、ピン穴400aに入れられることができる。ピン穴400aに設けられたピン410とピン穴400aとの間には、微小な隙間が形成されている。即ち、ピン穴400a内の流路は、断面積が小さく形成されている。ピン410の動きは、上部軸受133により規制される。ピン穴400aと、ピン410と、第1流路400bと、第2流路400cは、潤滑油流量制御機構400を構成する。
第3実施形態によれば、背圧室165内の圧力は、スクロール型圧縮機構134の吸入室SUCにおける圧力に比較して大きい(差圧が生じている)ので、この差圧を利用して、高圧側である背圧室165から、低圧側である吸入室SUCへ向けて、背圧室165内の潤滑油が潤滑油流量制御機構400を介して流れる。この場合、第1流路400bを通った潤滑油は、ピン穴400aとピン410の微小な隙間を通ることで所定の減圧が行われた後に、第2流路400cを介して吸入室SUCに供給される。これにより、吸入室SUCには、流量が制御された潤滑油が供給される。
本実施形態によれば、潤滑油を減圧させるための特別な部材を設けることなく、固定スクロール部材139にピン穴400a、第1流路400b、第2流路400cを形成し、ピン穴400aにピン410を設ける構成だけで、背圧室165の潤滑油を減圧させ、流量が制御された潤滑油を吸入室SUCに供給させることができる。
なお、上記において、ピン410は円柱状であり、その周面には凹凸が形成されていない構成であったが、この構成に代えて、ピン410の周面に溝を形成し、その溝とピン穴400aとの間を減圧用の流路とすることができる。ピン410の周面に形成される溝は、ピン410の軸線に沿う直線状でも良いし、螺旋状であっても良い。
(第4実施形態)
次に、図8を参照して、第4実施形態について説明する。
第4実施形態において、上記実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
図8は、第4実施形態の給油量制御機構を示す側断面図である。図8に示すように、上部軸受133及び固定スクロール部材139には、上部軸受133及び固定スクロール部材139に跨って形成され鉛直方向に延びる円柱状のピン穴500aが形成されている。上部軸受133には、第1流路500bが形成されている。第1流路500bは、背圧室165と、ピン穴500aに連通するように構成されている。また、固定スクロール部材139には、第2流路500cが形成されている。第2流路500cは、吸入室SUCと、ピン穴500aに連通するように構成されている。
ピン穴500aには、円柱状のピン510が設けられている。ピン510は、ピン穴500a内において、固定スクロール部材139及び上部軸受133の両者に亘るように設けられている。ピン510は、例えば、圧入により、ピン穴500aに入れられることができる。ピン穴500aに設けられたピン510とピン穴500aとの間には、微小な隙間が形成されている。即ち、ピン穴500a内の流路は、断面積が小さく形成されている。ピン穴500aと、ピン510と、第1流路500bと、第2流路500cは、潤滑油流量制御機構500を構成する。
第4実施形態によれば、背圧室165内の圧力は、スクロール型圧縮機構134の吸入室SUCにおける圧力に比較して大きい(差圧が生じている)ので、この差圧を利用して、高圧側である背圧室165から、低圧側である吸入室SUCへ向けて、背圧室165内の潤滑油が潤滑油流量制御機構500を介して流れる。この場合、第1流路500bを通った潤滑油は、ピン穴500aとピン510の微小な隙間を通ることで所定の減圧が行われた後に、第2流路500cを介して吸入室SUCに供給される。これにより、吸入室SUCには、流量が制御された潤滑油が供給される。
本実施形態によれば、潤滑油を減圧させるための特別な部材を設けることなく、固定スクロール部材139及び上部軸受133にピン穴500a、第1流路500b、第2流路500cを形成し、ピン穴500aにピン510を設ける構成だけで、背圧室165の潤滑油を減圧させ、流量が制御された潤滑油を吸入室SUCに供給させることができる。
なお、上記において、ピン510は円柱状であり、その周面には凹凸が形成されていない構成であったが、この構成に代えて、ピン510の周面に溝を形成し、その溝とピン穴500aとの間を減圧用の流路とすることができる。ピン510の周面に形成される溝は、ピン510の軸線に沿う直線状でも良いし、螺旋状であっても良い。
第4実施形態によれば、上記第2実施形態及び第3実施形態に比べて、ピン穴500a及びピン510の長さを長く形成することができ、減圧用の流路長を長くとることができる。そのため、ピン穴500aとピン510との間の径方向隙間を相対的に大きく設定することができる。これにより、ピン510をピン穴500aに圧入する作業が容易になる上に、隙間にゴミが詰まり難くなるという効果が得られる。
また、第4実施形態によれば、ピン510を、上部軸受133と固定スクロール部材139との間の位置決め用の芯出しピンとして機能させることができる。言い換えれば、従来より、上部軸受133と固定スクロール部材139は、その径方向及び周方向の位置決めがなされた上でボルト締めされており、その際には、上部軸受133及び固定スクロール部材139に跨るピン穴に位置決めピンが入れられる方法が用いられていたが、本実施形態では、その位置決めピン及びそのピン穴の隙間を、減圧/流量制御用の流路に用いたものである。
(第5実施形態)
図9−1及び図9−2を参照して、第5実施形態について説明する。
第5実施形態において、上記実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
モータ135がインバータにより可変周波数で駆動される場合において、モータ135が高速回転で駆動されるときには、低速回転で駆動される場合に比べて、背圧室165から吸入室SUCに供給される潤滑油の量は少なくて済む。モータ135が高速回転である場合には、冷媒ガスの吸入から吐出までの時間が短く、漏れ面積が晒される時間が短いことことから、圧縮室Pにおける漏れの影響が少なくて済むためである。一方、モータ135が高速回転される場合には、背圧室165と吸入室SUCの差圧が大きくなるように制御される。第5実施形態では、この背圧室165と吸入室SUCの差圧と、吸入室SUCにおいて必要とされる潤滑油の量との関係を利用したものである。
図9−1に示すように、上部軸受133及び固定スクロール部材139には、上部軸受133及び固定スクロール部材139に跨るように鉛直方向に延びる円柱状のピン穴600aが形成されている。上部軸受133には、第1流路600bが形成されている。第1流路600bは、背圧室165と、ピン穴600aに連通するように構成されている。また、固定スクロール部材139には、第2流路600cが形成されている。第2流路600cは、吸入室SUCと、ピン穴600aに連通するように構成されている。
ピン穴600aには、円柱状のピン610が設けられている。ピン穴600aに設けられたピン610とピン穴600aとの間には、微小な隙間が形成されている。即ち、ピン穴600a内の流路は、断面積が小さく形成されている。ピン610は、ピン穴600aの上部から、ばねのような弾性部材620により吊り下げられている。ピン穴600aと、ピン610と、弾性部材620と、第1流路600bと、第2流路600cは、潤滑油流量制御機構600を構成する。
図9−1に示すように、モータ135が高速回転しており、背圧室165内の圧力と、スクロール型圧縮機構134の吸入室SUCの圧力の差(差圧)が大きい場合には、その大きな差圧によりピン610がピン穴600a内で押し上げられる。これにより、ピン穴600a内において、第1流路600bが形成された位置と、第2流路600cが形成された位置の間の全域に亘って、ピン610が存在している。このことから、ピン穴600a内において、第1流路600bが形成された位置から、第2流路600cが形成された位置までの間の全域が絞り区間(流路抵抗が大きい区間)となる。即ち、絞り区間が長くなる。
よって、背圧室165と、吸入室SUCとの間の差圧を利用して、高圧側である背圧室165から、低圧側である吸入室SUCへ向けて、背圧室165内の潤滑油が潤滑油流量制御機構600を介して流れる際には、第1流路600bを通り抜けた潤滑油は、第2流路600cに入る前までの全域に亘って、ピン穴600aとピン610の微小な隙間(長い絞り区間)を通ることで、相対的に大きな減圧が行われた後に、第2流路600cを介して吸入室SUCに供給される。これにより、吸入室SUCには、相対的に少量の潤滑油が供給される。
これに対し、図9−2に示すように、モータ135が低速回転しており、背圧室165と、吸入室SUC差圧が小さい場合には、その小さな差圧による力よりも弾性部材620のばね力が上回って、ピン610がピン穴600a内で下がった状態となっている。これにより、ピン穴600a内のうち、上部軸受133の内部にのみピン610が存在し、固定スクロール部材139の内部には、ピン610が存在していない。このことから、ピン穴600a内において、第1流路600bが形成された位置から、上部軸受133の範囲までの間が絞り区間となる。即ち、絞り区間が短くなる。
よって、背圧室165と、吸入室SUCとの間の差圧を利用して、高圧側である背圧室165から、低圧側である吸入室SUCへ向けて、背圧室165内の潤滑油が潤滑油流量制御機構600を介して流れる際には、第1流路600bを通り抜けた潤滑油は、上部軸受133のピン穴600aに入っているときに、ピン穴600aとピン610の微小な隙間(短い絞り区間)を通るが、固定スクロール部材139のピン穴600aを通るときには、流路の断面積が大きいことから、相対的に小さな減圧が行われた後に、第2流路600cを介して吸入室SUCに供給される。これにより、吸入室SUCには、相対的に多量の潤滑油が供給される。
本実施形態によれば、潤滑油を減圧させるための特別な部材を設けることなく、固定スクロール部材139及び上部軸受133にピン穴600a、第1流路600b、第2流路600cを形成し、ピン穴600aにピン610と弾性部材620を設ける構成だけで、差圧に応じた潤滑油の必要量に応じて背圧室165の潤滑油を減圧させ、必要な量の潤滑油を吸入室SUCに供給させることができる。
(第6実施形態)
次に、図10−1〜図12−2を参照して、第6実施形態について説明する。
第6実施形態において、上記実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
第6実施形態は、上記第2〜第5実施形態におけるピン穴とピンとの相対的位置関係について規制するものである。以下では、第2実施形態のピン穴300aとピン310を例にとり説明するが、第6実施形態は、第2実施形態にのみならず、第3実施形態〜第5実施形態に対しても同様に適用可能である。
図10−1及び図10−2を参照して、ピン穴300aとピン310との相対的位置関係と、流体が流れるときの有効な断面積との関係について説明する。図10−1は、ピン穴300aと同心上にピン310が位置しているのに対し、図10−2では、ピン穴300aに対してピン310が偏心している。この場合、図10−1及び図10−2とで、流体が流れるときの断面積(斜線で示す)が同じである場合にも、流路抵抗が異なる。図10−2の方が流路抵抗が小さく、流量が大きくなる。
上記のように、ピン穴300aに対するピン310の相対的位置関係の変動によって、流量が一定にならないと、最適な流量制御が実施できない。そこで、本実施形態では、ピン穴300aに対するピン310の相対的位置関係による流量の変動を抑制すべく、ピン穴300aに対してピン310が常に偏心した位置となるような構造上の工夫がなされている。
図11−1及び図11−2は、ピン穴300aに突起330を設けた構成を示しており、図11−1は、その正面図、図11−2は、その側面図を示している。ピン穴300aに設けられた突起330は、常にピン310に接触しているため、ピン穴300aとピン310との相対的位置関係が一定であり、流路抵抗が変動することはない。
図12−1及び図12−2は、ピン310に突起340を設けた構成を示しており、図12−1は、その正面図、図12−2は、その側面図を示している。ピン310に設けられた突起340は、常にピン穴300aに接触しているため、ピン穴300aとピン310との相対的位置関係が一定であり、流路抵抗が変動することはない。
(第7実施形態)
次に、図1、図2及び図13を参照して、第7実施形態について説明する。
第7実施形態において、上記実施形態と共通する部分についての説明は省略する。
第7実施形態は、上記第1〜第6実施形態における背圧室165に設けられた排油穴180と上部軸受内流路200c又は第1流路300b〜600bとの位置関係に関する。以下では、第1実施形態の上部軸受内流路200cを例にとり説明するが、第7実施形態は、第1実施形態にのみならず、第2実施形態〜第6実施形態に対しても同様に適用可能である。
背圧室165から上部軸受内流路200cを介して筒内に給油される油量よりも、油通路149を介して背圧室165に供給される油量の方が多いため、上部軸受133には、背圧室165から油を排出するための排油穴180が設けられている。排油穴180は、背圧室165に開口するとともに、上部軸受133を貫通するように設けられている。排油穴180を通った背圧室165からの油は、高圧ハウジング132内に戻される。
図1、図2及び図13に示すように、鉛直方向において、排油穴180は、上部軸受内流路200cよりも上方位置に設けられている。即ち、上部軸受内流路200cは、排油穴180よりも下方位置に設けられているため、上部軸受内流路200cには、常に油で満たされている。これにより、上部軸受内流路200cを介して筒内に確実に油が供給される。
上記の位置関係でない場合、即ち、排油穴180が上部軸受内流路200cよりも下方位置に設けられていると、背圧室165において、上部軸受内流路200cの高さまで油が溜まることなく、排油穴180から油が流出される。この構成では、背圧室165から上部軸受内流路200cを介して筒内(吸入室SUC)には、油ではなくガスが供給されることになり、圧縮機の効率が低下する。これに対して、図1、図2及び図13に示すように、鉛直方向において、排油穴180が、上部軸受内流路200cよりも上方位置に設けられていれば、吸入室SUCにガスが供給されて効率が低下することが抑制される。
なお、上記第2〜第6実施形態は、旋回背圧スクロール圧縮機において背圧室から吸入室に供給される油の減圧手段に限定して適用されるものではなく、差圧があるところであれば、広く適用可能である。上記第2〜第6実施形態は、例えば、スクロール圧縮機において、吐出室及び油分離室を経た油が吸入室側に供給される際の減圧手段として適用することが可能である。
本発明のスクロール型圧縮機の第1実施形態を示す図であって、回転シャフトの軸線を含む断面より見た場合の断面図である。 図1のスクロール型圧縮機の給油量調整機構を示す図であって、図1の拡大図である。 図1のスクロール型圧縮機の上部軸受の上面図である。 図1のスクロール型圧縮機の上部軸受の側面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第2実施形態の給油量調整機構を示す断面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第2実施形態の変形例に係る給油量調整機構を示す断面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第3実施形態の給油量調整機構を示す断面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第4実施形態の給油量調整機構を示す断面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第5実施形態の給油量調整機構の第1の状態を示す断面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第5実施形態の給油量調整機構の第2の状態を示す断面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第6実施形態の給油量調整機構を説明するための図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第6実施形態の給油量調整機構を説明するための他の図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第6実施形態の給油量調整機構の第1の構成を示す上断面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第6実施形態の給油量調整機構の第1の構成を示す側断面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第6実施形態の給油量調整機構の第2の構成を示す上断面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第6実施形態の給油量調整機構の第2の構成を示す側断面図である。 本発明のスクロール型圧縮機の第7実施形態の給油量調整機構を示す断面図である。 従来のスクロール型圧縮機を示す図であって、回転シャフトの軸線を含む断面より見た場合の断面図である。 図14のスクロール型圧縮機の給油量調整機構を示す図であって、図14のA部拡大図である。 図14のスクロール型圧縮機の給油量調整機構の要部を示す図であって、図15のB部拡大図である。
符号の説明
131 スクロール型圧縮機
132 高圧ハウジング
132a 筒部
132b 底部
133c 蓋部
133 上部軸受
134 スクロール型圧縮機構
135 モータ
136 回転シャフト
136a バランスウェイト
137 吸入管
138 吐出管
139 固定スクロール部材
139a 固定側端板
139b 固定側渦巻体
139c 周壁部
140 スラスト軸受面
140a 内周側縁部
141 旋回スクロール部材
141a 旋回側端板
141b 旋回側渦巻体
141c 周壁部
142 自転阻止機構
143 吐出ポート
144 吐出弁
145 ボス
146 ブッシュ
148 偏心ピン
149 油通路
150 潤滑油ポンプ機構
151 貯留部
160 高圧仕切りシール
165 背圧室
170 下部軸受
180 排油穴
200 潤滑油供給流路
200a 油通路
200b 隙間流路
200c 上部軸受内流路
200d 周回溝
200e 導入溝
200g 開口部
200h 開口部
300 潤滑油流量制御機構
300a ピン穴
300b 第1流路
300c 第2流路
300d ピン穴
300e 縮径部
310 ピン
300a 潤滑油流量制御機構
320 ピン
320a 空間
330 突起
340 突起
400 潤滑油流量制御機構
400a ピン穴
400b 第1流路
400c 第2流路
410 ピン
500 潤滑油流量制御機構
500a ピン穴
500b 第1流路
500c 第2流路
510 ピン
600 潤滑油流量制御機構
600a ピン穴
600b 第1流路
600c 第2流路
610 ピン
620 弾性部材
SUC 吸入室
P 圧縮室

Claims (4)

  1. ハウジングと、
    前記ハウジング内のスクロール型圧縮機構により圧縮された高圧ガスの雰囲気中に設けられた潤滑油の貯留部と、
    前記スクロール型圧縮機構の背圧室に形成された前記貯留部から供給される前記潤滑油の油溜まり部と、
    前記油溜まり部と、前記油溜まり部よりも圧力が低い前記スクロール型圧縮機構の吸入室との間を連結し、前記油溜まり部から前記吸入室に流れる前記潤滑油の流量を調整する流量調整機構と
    を備えたスクロール型圧縮機であって、
    前記流量調整機構として、圧縮機における相対的に高圧の高圧室から、前記圧縮機における前記高圧室よりも低圧の低圧室に対して、前記高圧室と前記低圧室との間の圧力差を用いて供給される油の量を制御すると共に、棒状部材と、前記棒状部材を収容し前記高圧室及び前記低圧室のそれぞれと連通する棒状部材収容空間との間の隙間により、前記隙間を通る前記油を減圧させて、前記供給される油の量を制御する圧縮機の給油量制御機構が適用され、
    前記棒状部材は、前記棒状部材収容空間内において、前記隙間が形成される範囲が可変となるように、前記高圧室と前記低圧室との間の圧力差に基づいて、前記棒状部材の軸方向に移動可能に設けられており、
    前記高圧室は、前記油溜まり部であり、
    前記低圧室は、前記吸入室であり、
    前記棒状部材収容空間は、前記スクロール型圧縮機構の固定スクロール部材を固定し前記スクロール型圧縮機構を支持する軸受又は前記固定スクロール部材に設けられていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
  2. 前記棒状部材及び前記棒状部材収容空間を形成する壁部の少なくともいずれか一方には、前記棒状部材と前記壁部とが接触するように、前記棒状部材の軸線方向と概ね直交する向きに凸部が少なくとも1箇所以上設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
  3. 前記棒状部材収容空間は、前記スクロール型圧縮機構の固定スクロール部材を固定し前記スクロール型圧縮機構を支持する軸受及び前記固定スクロール部材に跨って設けられ、 前記棒状部材は、前記固定スクロール部材と前記軸受との間の位置決めピンとして機能することを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール型圧縮機。
  4. 前記油溜まり部に開口するように設けられ、前記油溜まり部から前記吸入室以外の場所に前記潤滑油を排出するための排油穴をさらに備え、
    前記流量調整機構に含まれ前記油溜まり部に連通する流路の前記油溜まり部に対する開口部は、前記排油穴の前記油溜まり部に対する開口部よりも下方に設けられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のスクロール型圧縮機。
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