JP4724296B2 - 高分子膜、及び高分子膜によって表面改質された物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安定した撥液性を有し、好ましくは基材に対しての密着性、硬度、耐磨耗性にも優れる高分子膜、及びかかる良質の高分子膜の形成に用いられる成膜性に優れた撥液処理液、かかる処理液に使用する高分子化合物、及び該高分子化合物の製造方法に関する。
本発明は、又、一成分系の高分子化合物を使用して物品の表面を安定した撥液性にし、更に好ましくは物品の基材に対して密着性に優れ、膜の硬度や耐磨耗性にも優れる成膜性に優れた表面層を物品表面に形成し得る表面改質方法、及び表面改質された物品に関する。
【0002】
又、本発明は、安定した撥液性(更に好ましくは基材に対しての優れた密着性、膜の高い硬度や耐磨耗性)を有する成膜性に優れた高分子膜が形成されている、インク滴を飛翔させて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録ヘッド、該インクジェット記録ヘッドの吐出口プレート(オリフィスプレートとも呼ぶ)の製造方法及びインクジェット記録装置に関する。尚、本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクを液滴として飛翔させて記録媒体にドットを記録するためのエネルギーとして、圧電素子により発生させた機械的エネルギーや、電気熱変換体による熱エネルギーを用いるインクジェット記録装置に特に好適に用いることができる。
【0003】
【従来の技術】
本来、物品の基材表面が有していない特性を該表面に付与する表面改質方法の一形態として、例えば、撥液性等の所望する特性を導入することができる液体組成物を、対象とする物品表面に塗布する方法がある。かかる形態の表面改質方法に用いられる塗布可能な液状の撥液剤は、各種の日用品や、水道管等の様々な分野に用いられているが、液状の撥液剤を画像記録装置として汎用されているインクジェット記録装置のインクジェットヘッドに対しても用いることがある。例えば、インクジェットヘッドに設けられているインク吐出口面の吐出口近傍にインクが溜ると、インクの吐出方向のヨレが発生したり、吐出口の目詰まりといった弊害を生じることがある。これらの弊害を低減すべく、吐出口が設けられている面(以下、「吐出口面」とも称す)に撥液剤を塗布することが行なわれている。
【0004】
上記の場合に用いられる液状の撥液剤としては、例えば、フッ素系のものとしては、特開平10−053639号公報に、少なくとも、成分(a)として、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有し、且つF、Siを含まない多官能エポキシ樹脂を5〜80重量部、成分(b)として、末端にパーフルオロ基を有するエポキシ化合物を5〜40重量部、及び成分(c)として、エポキシ基、アルコール基、カルボン酸基、アミン基のいずれか又は複数を1分子中に2つ以上有するともにF又はSiを含有する化合物を5〜80重量部を含有することを特徴とするフッ素含有エポキシ樹脂組成物が記載されている。
更に、特開平08−132614号公報には、インクジェットヘッドのノズル及び流路の内壁に形成されている電気絶縁樹脂膜が、フッ素樹脂の微粒子を含有したアクリル系電着樹脂であることが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に挙げた従来技術において、特開平08−132614号公報に示されている電気絶縁樹脂膜を構成しているのは、撥液性を有するフッ素樹脂を膜中に混在させただけのものである。従って、使用の際に樹脂膜の表面が擦られる環境下にある場合には、その撥液性が徐々に低下したり、その膜特性に均一性がなくなるといった問題が生じる。
【0006】
又、上記の特開平10−053639号公報に記載されているフッ素含有エポキシ樹脂組成物は、溶解している状態では構成成分が均一に混じり合った相溶状態を呈しているが、塗布条件によっては、塗布膜上での各成分の分布が変化する場合があり、形成された塗布膜の撥液性に分布が生じることがあった。又、溶解している状態の時に各構成成分を均一に混じり合った状態とする必要があるため、溶液の管理が非常に困難であるという問題もある。
【0007】
更に、上記したフッ素系以外の液状撥液剤としては、シリコーンを含有するものがあるが、シリコーンを含有する撥液剤によって撥液膜を形成した場合には、撥液性を有するシリコーンは撥液膜表面に存在しているため、撥液膜が繰り返し擦られる状態下にある場合には、撥液性が低下することがあった。
【0008】
本発明者らは、従来技術についての検討を重ねた結果、上記に述べたように、撥液性を向上させ、その状態を安定に維持させるためには、従来の表面改質技術では不充分な点があるという見解に至った。更に、上述したインクジェット記録の分野に限らず、その表面の撥液性を向上させ、その状態を安定に維持させ得る物品の表面改質方法の実現に対しては、例えば、建物の外壁の撥水処理等、他のあらゆる分野においても、その要望が強いであろうことは容易に理解される。
【0009】
従って、本発明の目的は、主として、従来の表面改質方法に用いていた撥液剤とは全く異なる原理により、物品表面の特性を容易に改質し得る、具体的には、物品の表面に付与して被膜を形成させることによって、種々の材料からなる物品表面の撥液性を容易に向上させることができ、しかも、その状態を安定に維持させることができる新規な高分子膜を提供することにある。
【0010】
更に、本発明の目的は、上記の優れた効果を得ることが可能な高分子膜を形成し得る新規な高分子化合物及び該高分子膜の形成に用い得る撥液処理液を提供することにある。
更に、本発明の目的は、上記の優れた効果を奏することが可能な高分子膜を形成し得る高分子化合物の合成に用いることのできる新規なマクロモノマーの製造方法、及びそのマクロモノマーを用いたフラフト共重合体の製造方法を提供することにある。
【0011】
更に、本発明の別の目的は、撥液性及び成膜性に優れた被膜、より好ましくは物品との密着性に優れ、硬度や耐磨耗性にも優れた被膜を物品の表面に形成し得る表面改質方法、及び表面改質された物品を提供することにある。
更に、本発明の目的は、上記のような優れた被膜が得られ、しかも、エキシマレーザー等の光エネルギーで加工可能な表面改質方法、及び表面改質された物品を提供することにある。
更に本発明の目的は、インクジェット記録ヘッドの吐出口面に塗布することによって、吐出口面に対して優れた撥液特性、更に好ましくは基材との密着性、膜の硬度や耐磨耗性を付与し、更にはかかる撥液特性等が使用によって損なわれることなく維持されるインクジェット記録ヘッド、及びこれを用いたインクジェット記録装置を提供することにある。
【0012】
更に本発明の別の目的は、撥液性等に優れた塗膜が塗布された吐出口面を有する上記の優れた効果が得られるインクジェット記録ヘッドが容易に得られるインクジェット記録ヘッド用の吐出口プレートの製造方法を提供することであり、好ましくはエキシマレーザー等の光エネルギーで容易に加工できるインクジェット記録ヘッド用のオリフィスプレートの製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、フッ素原子を含む高分子鎖である第1のセグメントと、該第1のセグメントとは溶剤に対する親和性が相対的に異なる高分子鎖である第2のセグメントとを有するグラフト共重合体の第1のセグメントの集合体であるフッ素ドメインを内部及び表面の少なくとも一方に含む高分子膜であって、該グラフト共重合体は幹部にフッ素原子を含み、該グラフト共重合体は芳香環又はビニル基を含むことを特徴とする高分子膜を提供する。
【0015】
又、本発明は、上記第2のセグメント同士が化学的に架橋している上記に記載の高分子膜を提供する。
【0017】
又、本発明は、上記に記載の高分子膜を表面に具備していることを特徴とする表面改質された物品を提供する。
【0034】
又、本発明は、複数のインク吐出口を有するインクジェット記録ヘッドの吐出口面に、上記に記載の高分子膜が設けられていることを特徴とするインクジェット記録ヘッドを提供する。
【0036】
又、本発明は、板状部材の一方の表面に、上記に記載の高分子膜であって、且つ所定の波長域の光に対する吸収性を有する高分子膜を設ける工程、及び上記工程によって得られた高分子膜を表面に有する板状部材に対して、上記高分子膜が吸収を示す波長域の光を含む光を照射して上記板状部材に貫通孔を形成する工程を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッド用の吐出口プレートの製造方法を提供する。
【0040】
又、本発明は、前記のインクジェット記録ヘッドと、該ヘッドにインクを供給するインクタンクとが一体的に形成されていることを特徴とするインクジェットカートリッジを提供する。
【0041】
又、本発明は、前記のインクジェットカートリッジと、該インクジェットカートリッジを搭載して走査可能に設けられたキャリジとを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0042】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をより詳細に説明する。
本発明は、種々の分野に利用可能な塗布系の撥液剤の検討を行ううえで、いずれの場合においても優れた撥液特性を発揮できる新たな撥液剤を開発する過程において生まれたものである。
【0043】
<高分子膜の説明>
本発明の高分子膜の一実施形態を、図1を用いて説明する。図1は、基材の上に設けられた本発明の高分子膜の構造を概念的に説明する図である。かかる例では、高分子膜が、フッ素原子を含む第1のセグメントと、該第1のセグメントとは溶剤に対する親和性の異なる第2のセグメントとを有する高分子化合物からなり、且つ上記第1のセグメントの物理的な架橋(凝集)による上記高分子化合物の集合体(フッ素ドメイン)が、その内部及び表面に非局在的に形成されている。
【0044】
具体的には、図1に示したように、かかる形態の本発明の高分子膜は、フッ素原子を含む第1のセグメントと、該第1のセグメントとは溶剤、例えば、トルエンやメチルエチルケトン(MEK)に対する親和性が異なる第2のセグメントとを有する一成分系高分子化合物からなり、且つフッ素ドメインを、膜の内部及び表面に非局在的に含んでいる。そして、このような高分子膜の基材に対向する側と反対側の表面には、図1に示したように、フッ素ドメインを有するので、表面にはフッ素原子が集合した部分(フッ素ドメイン)が点在的に露出することになる。これによって、高分子膜の表面には、溶剤、例えば、水に対する親和性が異なる2つの領域が存在することになり、この結果、高分子膜の表面は優れた撥液性を示すようになる。本発明者らの検討によれば、撥液性を付与しようとする物品の表面が均一な撥水面であるよりも、撥液性を有するフッ素ドメインが、図1に示したように、実質的にフッ素原子が物理的に集合した部分が点在的に存在している状態の方が、液体に対しての表面エネルギーが微小レベルで変化しているため、より優れた撥液性が得られることがわかった。
【0045】
以上のように、一成分系の高分子化合物からなり、且つ膜の内部及び表面の少なくとも一方にフッ素ドメインを有する本発明の高分子膜は、フッ素原子が高分子化合物の一部として取込まれ、且つフッ素ドメインが非局在的に存在するために、従来より知られているフッ素樹脂微粒子を単に膜中に分散させて混在させただけの樹脂膜と異なり、安定した撥液性を長期間にわたり発現するという優れた効果が奏される。
【0046】
<高分子膜の製法>
次に、上記のような特性を有する本発明の高分子膜の製法について説明する。
かかる高分子膜は、例えば、フッ素原子を含む第1のセグメントと、該第1のセグメントとは用いる溶剤に対する親和性が相対的に異なる第2のセグメントとを有する高分子化合物を、前記溶剤に溶解させて得られる溶液(撥液処理液)を基材に塗布し、該溶剤を蒸発させることで容易に得ることができる。この際に使用する高分子化合物の具体的な構造としては、第1のセグメント及び第2のセグメントの、いずれか一方が幹成分となり、他方が枝成分となって構成されるグラフト共重合体構造を有するものが好ましい。従って、フッ素原子を含む第1のセグメントが、幹成分を構成する構造のものでも、枝成分を構成する構造のものでもよい。
【0047】
本発明の高分子膜を構成する高分子化合物として、上記のようなグラフト共重合体を用いた場合には、使用する溶剤にグラフト共重合体を溶解させることで、自発的に、しかも効率よくフッ素ドメイン構造が溶液中で形成されるため、かかる溶液を使用すれば、優れた撥液性を有する膜を容易に形成することができる。
【0048】
次に、フッ素ドメイン構造を有する本発明の高分子膜の構成材料である高分子化合物の製造方法を説明する。先に述べたように、本発明においては、高分子化合物としてグラフト共重合体を用いることが好ましい。グラフト共重合体は、一般的には、セグメントとセグメントとの反応によって、或いはセグメントとモノマーとの反応により合成することができ、通常、幹(主鎖)となるセグメントの存在下に、第2のセグメント(枝)となるセグメントを結合或いは重合させることによって得られる。下記に、第1のセグメントを構成するポリマーの具体的な材料(モノマー)を挙げる。
【0049】
フッ素原子を含有するモノマー成分としては、例えば、1H,1H−パーフルオロ−n−オクチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H−パーフルオロ−1−ドデセン、1H,1H,2H−パーフルオロ−1−デセン、1H,1H,2H−パーフルオロ−1−オクテン等を使用することができる。又、重合性モノマーとして、例えば、エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物である、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリル−2−メチルグリシジルエーテル等を使用することができる。尚、上記において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの双方を意味する。以降も同様である。
【0050】
又、重合開始剤として、例えば、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス−2−アミノプロパン塩酸塩、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、3弗化ホウ素塩等を使用することができる。又、架橋剤として、例えば、ビニル系シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等や、エポキシ基を有する化合物である2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、パーフロロ化ノボラック多官エポキシ樹脂、ビスフェノール型フッ素化エポキシ樹脂、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂等や、ウレタン結合を生じ得るジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物を使用することができる。
【0051】
又、第2のセグメントの構成に使用できる具体的な材料(モノマー)としては、例えば、スチレン、(メタ)アクリレート、アリルフェノール、アリルベンゼン、ブタジエン、プロピレン等の重合性モノマーが挙げられる。
【0052】
更に、第2のセグメントの形成に使用し得る架橋剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤や、エポキシ基を有する化合物である2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、パーフロロ化ノボラック多官エポキシ樹脂、ビスフェノール型フッ素化エポキシ樹脂、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂等や、ウレタン結合を生じ得るジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0053】
本発明者らの検討によれば、本発明の高分子膜に使用するグラフト共重合体としては、枝となる部分を前もってマクロモノマーとして合成し、これを、幹を構成することとなる他のモノマーと共重合の方法で幹中に組み込むマクロモノマー法によって得られるものを使用することが好ましいことがわかった。ここで、マクロモノマーとは、数百から1万程度の分子量を有し、且つ重合し得る官能基を持ったモノマーとみなし得る化合物のことである。かかるマクロモノマーを用いてグラフト共重合体を合成することで、枝の長さや数等、構造の明確な所望のグラフト共重合体を得ることが可能となる。
【0054】
以下に、本発明で使用する高分子化合物の好ましい一実施例の製造方法として、主鎖(幹)となるセグメントに、側鎖(枝)となるフッ素原子を含むマクロモノマーを共重合させることによって得られるグラフト共重合体の製造方法について具体的に説明する。
【0055】
先ず、フッ素原子を含むマクロモノマーの製造方法について説明する。最初に、フッ素原子を含み且つ末端にエチレン不飽和基を有するモノマーと、一端にカルボキシル基を有し、且つ前記モノマーの一端にあるエチレン不飽和基とラジカル付加重合する官能基を有する開始剤を反応させることにより、カルボキシル基とフッ素原子を含むオリゴマーを形成する。
【0056】
この反応の一実施例として、例えば、下記のスキームに基づく方法が挙げられる。下記に化学式で示したように、フッ素原子を含み且つ末端にエチレン不飽和基を有する重合性モノマーとして、下記の構造を有する1H,1H−パーフルオロ−n−オクチルアクリレート(式1)を用い、一端にカルボキシル基と、上記重合性モノマーが有するエチレン不飽和基とラジカル付加重合する官能基を有する下記の構造を有する開始剤4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸(式2)とを反応させる。すると、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸(式2)が重合開始剤となって、(式1)に示したモノマーの官能基がラジカル重合して、カルボキシル基とフッ素原子とを含むオリゴマー(式3)が形成される。
【0057】
【0058】
次に、以上のようにして得られるカルボキシル基とフッ素原子を含むオリゴマーと、エチレン性不飽和基含有エポキシ化合物とを反応させることによって、その一端のみにエチレン性不飽和基を有し、フッ素原子を含んだマクロモノマーを形成することができる。この際に、パーフルオロアルキル基含有のオリゴマーとしては、フッ素原子含有量として10重量%以上、連鎖個数数平均分子量が1,000〜100,000であるものを使用することが好ましい。
【0059】
この反応を前述のスキームに基づく方法に続く一実施例として挙げると、下記に化学式で示したように、前記で得られたカルボキシル基とフッ素原子を含むオリゴマー(式3)に、エチレン性不飽和基含有エポキシ化合物としてグリシジルメタクリレート(式4)を反応させると、オリゴマー(式3)のカルボキシル基とグリシジルメタクリレート(式4)のエポキシ基が反応して、一端のみにエチレン性不飽和基を有したマクロモノマー(式5)を形成できる。
【0060】
【0061】
ここで、(式1)で示されるフッ素原子を含有するモノマー成分に代えて、例えば、1H,1H−パーフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1H,1H,2H−パーフルオロ−1−ドデセン、1H,1H,2H−パーフルオロ−1−デセン、1H,1H,2H−パーフルオロ−1−オクテン等を使用することができる。同様に、開始剤として(式2)で示される開始剤に代えて、例えば、2,2’−アゾビス−2−アミノプロパン塩酸塩、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、3弗化ホウ素塩等を使用することができる。更に、(式4)で示されるエポキシ基含有化合物に代えて、例えば、2−メチルグリシジル(メタ)アタクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリル−2−メチルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基を有するエポキシ基含有化合物を使用することができる。
【0062】
次に、上記方法によって得られたマクロモノマー(式5)を用いて得られるグラフト共重合体の製造方法について説明する。マクロモノマー(式5)の末端にあるエチレン性不飽和基と、該エチレン性不飽和基とラジカル付加重合する官能基を有するモノマーとを共重合させることにより、グラフト共重合体を形成することができる。更に共重合させる際に熱を加えれば反応が促進され、より好ましい形態となる。
【0063】
この反応を前述のスキームに基づく方法に続く一実施例として挙げると、前記一端のみにエチレン性不飽和基を有したマクロモノマー(式5)に、これと反応し得る官能基を有するモノマーであるメチルメタクリレート(式6)又はエチルメタクリレート(式7)を反応させると、下記に示すように、マクロモノマー(式5)の末端にあるエチレン性不飽和基と、メチルメタクリレート(式6)又はエチルメタクリレート(式7)のエチレン性不飽和基とがラジカル重合してグラフト共重合体(式G1又はG2)が合成される。尚、上記において、メチルメタクリレートやエチルメタクリレートに代えて、イソボルニール(メタ)アクリレートやジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート等の他のモノマーを用いることもできる。
【0064】
【0065】
本発明のフッ素ドメイン構造を含有する高分子膜を基材表面に形成する好ましい実施形態としては、例えば、上記で述べたような方法でマクロモノマーを形成後、少なくともマクロモノマーと、該マクロモノマーのエチレン性不飽和基とラジカル付加重合し得る官能基を有するモノマーとを溶液中で重合させ、グラフトポリマーの溶液とし、これを基材表面に塗布、乾燥させるか、或いは基材表面においてこれらを共重合させることにより、基材表面に、フッ素ドメイン構造を含有する本発明の高分子膜を形成することが挙げられる。
【0066】
本発明の高分子膜を形成する場合において、上記のようにマクロモノマーを用いて共重合させることは必須ではないが、マクロモノマーを用いてグラフト共重合体を形成させると、上記のようにしてマクロモノマーを予め合成しておくことで側鎖の長さを揃えることができるので、高分子膜とした場合に、グラフト共重合体の機能をより好ましく発揮させることが可能となる。
【0067】
本発明においては、エチレン性不飽和基を有したマクロモノマー(式5)のエチレン性不飽和基とラジカル付加重合し得る官能基を有するモノマーとして、マクロモノマーとの重合反応後においても維持される反応性基を有するモノマーを使用してもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、水酸基、アミノ基やカルボキシル基を有するビニル化合物等が挙げられる。より具体的には、下記[1]〜[4]に挙げたモノマーを用いることができる。
【0068】
上記[1]及び[2]に挙げたモノマーを用いて得られるポリマーは、特に架橋剤を用いることなしに、該ポリマー同士(第2のセグメント同士)又はポリマーと物品表面(第2のセグメントと物品表面)とを架橋させることができる。架橋の際に触媒を用いてもよく、例えば、ルイス酸、アミン類等が挙げられる。
又、上記[3]及び[4]に挙げたモノマーを用いて得られるポリマーは、上記のようにしてグラフト共重合体を形成後、下記に挙げるようなビニル系シランカップリング剤等の架橋剤を添加することにより、グラフト共重合体の側鎖同士、又、側鎖と基材との間に化学架橋構造を形成させることができる。この際、架橋剤は、グラフト共重合体がフッ素ドメイン構造を形成した後に添加されることが好ましく、架橋剤を物品に塗布した後に、UV照射や熱を加えることにより架橋させて、架橋構造を形成させればよい。
【0069】
この際に架橋剤として用いられる化合物としては、例えば、エポキシ基を有する化合物である2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、パーフロロ化ノボラック多官エポキシ樹脂、ビスフェノール型フッ素化エポキシ樹脂、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂等のエポキシ化合物や、ウレタン結合を生じ得るジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物を使用することができる。
【0070】
又、本発明の高分子膜のその他の実施形態としては、マクロモノマー形成の際に、スチレン等の芳香環を有する化合物や、ブタジエンのようなグラフト重合後にも残存するような二重結合を有する成分を添加しておくことにより、形成される高分子膜に芳香環や二重結合を導入することができ、その結果、その高分子膜は、特定波長の光に対して吸収性を有するようにすることができる。このようにすれば、この高分子膜をレーザー等を用いて加工することが可能となる。図2に、その場合の概念図を示す。図示のように、基材の表面に設けた本発明の高分子膜に、エキシマレーザー等の光エネルギーを照射すると、膜が光吸収性を有するため、膜を容易にエッチング加工することが可能となる。又、このとき、高分子膜の、削られた表面にも先に説明したフッ素ドメイン構造が点在的に存在しており(不図示)、優れた撥液性は依然として維持されている。
【0071】
本発明の高分子膜に光吸収性を付与するための成分としては、例えば、アリルフェノール、アリルベンゼン、アリールビニルメタン、フェニル(メタ)アクリレート、ブタジエン、フェノプレン、4−フェニル−1−ブテン等が挙げられる。尚、上記した形態の高分子膜では、膜に光吸収性を付与するための成分をマクロモノマーに付与する例を説明したが、これに限定されず、主鎖となるモノマーに、上記したような光吸収性を付与するための成分を予め反応させても、同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0072】
本発明のグラフト共重合体の第2の実施形態として、エチレン性不飽和基を有し、且つフッ素を含有している分子鎖を含むモノマーと、架橋可能な官能基を有するマクロモノマーとを共重合させることによって得られるグラフト共重合体の製造方法について次に述べる。尚、本発明においては、かかる形態のグラフト共重合体は、主鎖を構成することとなるモノマーにフッ素原子を含む基が結合していることから、幹部にフッ素原子が含まれているものと定義する。
【0073】
かかるグラフト高分子化合物は、例えば、末端にエチレン性不飽和基を有し、且つ分子内に架橋可能な官能基を有するマクロモノマーとラジカル重合可能な官能基を有するパーフロロアルキル基含有モノマーとを共重合させることによって得ることができる。
【0074】
先ず、末端にエチレン性不飽和基を有し、且つ分子内に架橋可能な官能基を有するマクロモノマーを製造する。このようなマクロモノマーの製造方法は、例えば、特開昭62−277408号公報に詳細に記載されている。具体的に述べれば、末端に、例えば、カルボキシル基等の親水性基を含有しているポリマーに、親水性有機溶媒の存在下で、エチレン性不飽和基含有エポキシドを反応させることによって得られる。ここで該親水性基含有ポリマーは、少なくともヒドロキシ基及びメチロール基の少なくとも一方を有していることが好ましい。又、この親水性基含有ポリマ−の好ましい分子量としては、500〜300,000程度、特には1,000〜100,000程度である。
該親水性基含有ポリマーは、カルボキシル基含有連鎖移動剤と開始剤との組合せの存在下、又はカルボキシル基を含む開始剤の存在下、親水性基として例えばヒドロキシル基やメチロール基を有するエチレン性不飽和基含有モノマーを重合して得ることができる。
【0075】
ここで開始剤としては、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、過酸化カリウム、過酸化アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等がある。
【0076】
又、上記の親水性基を含有するエチレン性不飽和基含有モノマーの例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、多価アルコールのアクリル酸エステル及び多価アルコールのメタクリル酸エステル等がある。この他に、共重合可能なモノマーとして、(メタ)アクリルアミド誘導体、N−メチロール(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリル酸エチルカルビトール、(メタ)アクリル酸メチルトリグリコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートホスフェート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート等がある。
【0077】
親水性基、例えば、ヒドロキシル基及びメチロール基の少なくとも一方を含有するエチレン性不飽和基含有モノマーを主成分とする出発原料を、カルボキシル基含有開始剤の存在下に、水及び/又は有機溶媒中でラジカル重合するに際し、開始剤を上記のモノマー100グラムモルあたり5〜20グラムモルの範囲で使用すればポリマーの片末端にカルボキシル基を確実に導入することができる。
こうして得られた末端カルボキシル基を含有する親水性基含有ポリマーに、親水性有機溶媒の存在下で、エチレン性不飽和基含有エポキシ化合物を反応させることで、末端にカルボキシル基を有する親水性基含有マクロモノマーを得ることができる。この反応は、通常、80〜180℃、好ましくは90℃〜140℃の反応温度で行なうことができる。
【0078】
こうして得たマクロモノマーと、ラジカル重合可能な官能基を有するパーフルオロアルキル基含有モノマー(例えば、2−(パーフロロオクチル)−エチルメタクリレート等)とを、前記した第1の実施形態にかかるグラフト共重合体の製造方法と同様にして共重合させると、本発明の第2の実施形態にかかるグラフト共重合体を得ることができる。ここで、第2の形態にかかるグラフト共重合体の製造を、下記のスキームに基づきより具体的に説明すると、例えば、マクロモノマーを合成するための親水性基を含有するエチレン性不飽和モノマーとして2−ヒドロキシエチルアクリレート(式11)、カルボキシル基含有開始剤として4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸(式2)とを反応させる。
【0079】
すると(式12)に示した構造のオリゴマーが得られる。このオリゴマーと(式4)で示したグリシジルメタクリレートとを反応させることによって、一端にのみエチレン性不飽和基を有し、且つ分子内に架橋可能な基を有するマクロモノマー(式13)を形成することができる。続いて、(式13)のオリゴマーと(式1)で示される末端にエチレン性不飽和基を有し、フッ素原子を含む重合性モノマーとを共重合させると、(式14)に示したように幹部にフッ素原子を有する基を有し、枝部に架橋可能な基を有したグラフト共重合体を得ることができる。
【0080】
【0081】
そして上記(式14)に示したグラフト共重合体は、例えば、下記(式15)に示す2,4−トリレンジイソシアネート等の架橋剤を用いて、枝部同士を架橋させることが可能である。
【0082】
【0083】
以上説明してきた第2の実施形態にかかるグラフト共重合体に関しても、第1の実施形態にかかるグラフト共重合体と同様に、芳香環や二重結合を導入することで、該グラフト共重合体からなる高分子膜に特定波長の光に対する吸収性を担持させることができる。具体的には、例えば、マクロモノマーの合成時に、スチレンやブタジエン等を添加しておく方法が挙げられる。又はマクロモノマーと共重合させるパーフルオロアルキル基を含有しているモノマーに芳香環や、グラフト重合後にも維持されるような二重結合を導入しておく方法がある。
【0084】
本発明の高分子膜は、マクロモノマー等によって上記の実施形態の場合に、側鎖となるフッ素含有基を同様の界面エネルギーとして膜中に均等に分散できるため、本発明でいうフッ素ドメインの集合程度を均等化でき、この結果、フッ素ドメインの均一な分散状態が膜の表面及び内部にも形成されることになる。従って、高分子膜の表面及び内部に、このような均一分散状態で且つフッ素の集中の程度が均一なフッ素ドメインを有することとなる。例えば、上記した光吸収性の高分子膜表面の一部を加工して凹部を形成しても、凹部の全面が、加工前の高分子膜の表面と同様のフッ素の含有状態を維持しているため、本発明の高分子膜を形成後に、膜を加工して使用するような場合にも良好な状態で使用することが可能である。
【0085】
そしてこれまで説明してきた本発明の高分子膜をインクジェット記録ヘッドに適用することによって、インクの吐出口面が、優れた撥液性を有し、且つその撥液性の耐久性が良好なインクジェット記録ヘッドを得ることができる。即ち、インクジェット記録ヘッドのインク吐出口面の撥液性に関しては、未だ十分に満足できるレベルにないことは先に述べた通りである。
【0086】
この点に関して更に言えば、物品に撥液性を持たせるために、物品に塗布する撥液処理液として、ポリテトラフルオロエチレンが知られているが、かかるポリテトラフルオロエチレンを用いた場合には、先ず、ポリテトラフルオロエチレンが粒子状で基材表面に塗布され、その後、300℃で焼成することによって撥液層が形成される。本発明者らは、このポリテトラフルオロエチレンの撥液層を、インクジェット記録ヘッドの吐出口面に形成することにより、吐出口面の撥液性を向上させようと試みたが、吐出口面の形成材料として、一般的に使用されているポリサルフォン等の融点が200℃以下である樹脂の場合には、ポリテトラフルオロエチレンの焼成温度300℃に耐えられず、吐出口面にポリテトラフルオロエチレンの撥液層を形成することはできなかった。
【0087】
本発明者らは、このような技術的背景の下での検討によって、インクジェット記録ヘッドの吐出口面の撥液性を向上させ、その状態を安定に維持させるためには、従来の技術では未だ不充分な点があるという見解を有していた。そして本発明はかかる見解に鑑みなされたものである。
【0088】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明のインクジェット記録ヘッドについて詳細に説明する。先ず、本発明のインクジェット記録ヘッド(以下、液体吐出ヘッドとも呼ぶ)の概略構成を、図面を用いて説明する。図3は、本発明の一実施例にかかる液体吐出へッドの構造を説明するために、構成部材を分解した模式的斜視図である。図5は、図3に示した本発明の一実施例の液体吐出ヘッドの吐出口を有する吐出面の模式的断面図であり、図4は、図5に示した液体吐出へッドの吐出口を有する吐出面の表面状態を説明するための模式図である。
【0089】
上記の図3〜5に示した液体吐出ヘッドは、図3及び図5に示したように、インク流路及び液室を構成するための段差が一体に形成されている天板と、吐出エネルギーを発生するためのエネルギー発生素子(以下、ヒータと呼ぶ)、及び該ヒータに電気信号を供給するためのA1配線とが成膜技術によってSi基板上に形成されている基板(以下、ヒータボードと呼ぶ)とを接合することによってヘッド本体(不図示)が構成される。
そして、かかる構造のヘッド本体において、上記で説明した天板とヒータボードとの接合によって、各ユニット毎に形成される流路の開口が配置されることとなる開口部配設面(以下、ヘッド本体接合面と呼ぶ)に、次に説明するオリフィスプレートとが、接着剤によって貼り合わされて液体吐出ヘッドが構成される(図3及び図5参照)。
【0090】
オリフィスプレートの形成材料としては、例えば、SUS、Ni等の金属フィルム、又は耐インク性に優れたプラスチックフィルム、例えば、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ボリフエニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン等の樹脂フィルム材を用いることが望ましい。又、オリフィスプレートと、ヘッド本体とを接合する接着剤としては、例えば、UV照射によりタック性を保持したままBステージ化して硬化収縮が終了し、更なるUV照射、若しくは加熱することにより硬化するエポキシ系接着剤を用いればよい。かかる接着剤は、加熱圧着のみで接着可能であるので、加工性に優れるため好ましい。
【0091】
かかる構成のオリフィスプレートの表面状態は、例えば、図3に示したように、フッ素原子を含むセグメント又は基を有し、且つその内部及び/又は表面にフッ素ドメインを有している高分子膜を設けることにより、或いはフッ素原子を含む第1のセグメントと、該第1のセグメントとは溶剤に対する親和性の異なる第2のセグメントとを有する一成分系の高分子化合物からなり、且つフッ素ドメインをその内部及び/又は表面に含む高分子膜を設けることによって容易に得ることができる。
【0092】
上記において、第2のセグメント同士、若しくは該第2のセグメントとインクジェット記録ヘッドの吐出口面との間に化学的な架橋を有するように構成することによって、より優れた特性の表面性状が得られる。
【0093】
又、第2のセグメント中に、高分子化合物に所定の波長の光に対して吸収性を持たせるための基、例えば、フェニル基若しくはビニル基を含むように構成することによって、所定の波長域の光に対する吸収性を有する高分子膜を形成することができる。このような高分子膜を基材表面に設ければ、該高分子膜が吸収を示す波長域の光を含む光を照射することで、高分子膜に容易に貫通孔を形成することが可能となる。その結果、優れた表面特性を有するオリフィスプレートの製造が容易になる。例えば、上記の波長域が、紫外領域である場合には、エキシマレーザー等を使用して、所望の部位に光エネルギーを与えることによって、吐出口の形成等の加工を容易にすることができる。
【0094】
<高分子膜の説明>
以下、本発明のインクジェット記録ヘッドにおいて、該ヘッドを構成するオリフィスプレートの表面に好適に設けられる高分子膜について説明する。その一実施形態を、図8を用いて説明する。図8は、基材の上に設けられた高分子膜の構造を概念的に説明するための説明図である。かかる例では、高分子膜が、フッ素原子を含む第1のセグメントと、該第1のセグメントとは溶剤に対する親和性の異なる第2のセグメントとを有する一成分系高分子化合物からなり、且つ図8に示した例では、フッ素ドメインが、その内部及び表面に非局在的に形成されている。
【0095】
具体的には、図8に示したように、かかる形態の高分子膜は、フッ素原子を含む第1のセグメントと、該第1のセグメントとは溶剤、例えば、トルエンやメチルエチルケトン(MEK)に対する親和性が異なる第2のセグメントとを有する一成分系高分子化合物からなり、且つフッ素ドメインを、膜の内部及び/又は表面に非局在的に含んでいる。そして、このような高分子膜の基材に対向する側と反対側の表面には、図8に示したように、フッ素ドメインを有するので、表面にはフッ素原子が集合した部分が点在的に露出することになる。
【0096】
これによって、高分子膜の表面には、溶剤、例えば、水に対する親和性が異なる2つの領域が存在することになり、この結果、高分子膜の表面は優れた撥液性を示すようになる。本発明者らの検討によれば、撥液性を付与しようとする物品の表面が均一な撥水面であるよりも、撥液性を有するフッ素ドメインが、図8及び図4に示したように、実質的にフッ素原子が物理的に集合した部分が点在して存在している状態の方が、液体に対しての表面エネルギーが微小レベルで変化しているため、より優れた撥液性が得られることがわかった。そして図4に示したように吐出口の周囲に、実質的にフッ素原子が物理的に凝集したフッ素ドメインが点在して存在することによって吐出口周囲へのインクの付着を極めて有効に抑制することができるという効果が奏される。
【0097】
以上のように、一成分系の高分子化合物からなり、且つ膜の内部及び/又は表面にフッ素ドメインを有する高分子膜は、フッ素原子が、膜を構成している高分子化合物の一部として取込まれ、且つフッ素ドメインが非局在的に存在するために、従来より知られているフッ素樹脂微粒子を単に膜中に分散させて混在させただけの樹脂膜と異なり、安定した撥液性を長期間にわたり発現するという優れた効果が奏される。
【0098】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。尚、文中「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0099】
実施例1
1H,1H−パーフルオロ−n−オクチルアクリレート(式1)100部、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸(式2)10部、メチルエチルケトン500部及びトルエン500部からなる溶液を、N2気流下、100℃で10時間反応させ、オリゴマー(式3)を生成させた。
【0100】
【0101】
上記で生成させたオリゴマー(式3)にメタノールを加え、未反応成分を溶解しオリゴマー再沈させ、オリゴマーのみを分離した後、トルエンに再溶解させて、オリゴマーの25%トルエン溶液を作製した。このようにして得られたオリゴマー溶液に、下記に化学式で示したように、グリシジルメタクリレート(式4)を10部及びN,N−ジメチルドデシルアミンを0.05部を加え、100℃で5時間反応を行って、ビニル基末端マクロモノマー(式5)のトルエン溶液(不揮発分25%)を得た。
【0102】
【0103】
次に、下記に化学式で示したように、得られたビニル基末端マクロモノマー(式5)(25%トルエン溶液)120部、メタクリル酸メチル(式6)70部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部及びトルエン60部からなる溶液を、N2気流下、100℃で12時間重合反応を行ってグラフト共重合体(G1)を含む撥液処理液を得た。
【0104】
【0105】
以上のようにして得られたグラフト共重合体(G1)を含む撥液処理液を、ポリサルフォン板上にwetで5μm厚さにスピンナーを用いて塗布した後、110℃のホットプレート上で5分間乾燥し、溶媒を除去して、本実施例の高分子膜を形成した。
そして、得られた高分子膜について、純水、オレイン酸の10%水溶液、グリセリン20%水溶液、界面活性剤1%水溶液(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;HLB=10)の各液体を用い、常温にて、静的接触角の測定を行なった。その結果、各液体に対して、夫々、98°、86°、96°、85°と高い接触角を示し、上記で得られた本実施例の高分子膜が、いずれの液体に対しても良好な撥液性を示すことを確認できた。
【0106】
実施例2
実施例1と同様の方法で、ビニル基末端マクロモノマー(式5)のトルエン溶液(不揮発分25%)を作成した。そして、下記に化学式で示したように、得られたビニル基末端マクロモノマー(25%トルエン溶液)120部、スチレン(式11)70部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部及びトルエン60部からなる溶液を、N2気流下、100℃で12時間重合反応を行ってグラフト共重合体(G3)を含む撥液処理液を得た。
【00107】
【0108】
以上のようにして得られたグラフト共重合体(G3)を含む撥液処理液を、ポリサルフォン板上にwetで5μm厚さにスピンナーを用いて塗布した後、110℃のホットプレート上で5分間乾燥し、溶媒を除去して本実施例の高分子膜を形成した。
そして、得られた高分子膜について、純水、オレイン酸の10%水溶液、グリセリン20%水溶液、界面活性剤1%水溶液(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;HLB=10)の各液体を用い、常温にて静的接触角の測定を行なった。その結果、各液体に対して夫々102°、95°、100°、88°と高い接触角を示し、上記で得られた本実施例の高分子膜が、いずれの液体に対しても良好な撥液性を示すことを確認できた。
【0109】
実施例3
実施例1と同様の方法で、ビニル基末端マクロモノマー(式5)のトルエン溶液(不揮発分25%)を作成した。そして、得られたビニル基末端マクロモノマー(25%トルエン溶液)120部、グリシジルメタクリレート60部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部及びトルエン60部からなる溶液を、N2気流下、100℃で12時間重合反応を行ってグラフト共重合体を含む液を得た。
【0110】
次に、上記で得られたグラフト共重合体を含む液に、更に、オプトマーSP170(旭電化製)1部、下記に示す構造を有する2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(式8)10部を加えて充分に攪拌して撥液処理液を調製した。得られた撥液処理液を、ポリサルフォン板上に、wetで5μm厚さにスピンナーを用いて塗布した後、110℃のホットプレート上で5分間乾燥し、溶媒を除去して被膜を形成した。更に、この基板に、高圧水銀灯を用いた紫外線照射装置にて、2J/cm2の積算量の紫外線を照射して架橋させた。次に、100℃で5時間加熱して架橋反応を完結させ、本実施例の高分子膜を得た。
【0111】
【0112】
上記で得られた本実施例の高分子膜について、常温にて、純水、オレイン酸の10%水溶液、グリセリン20%水溶液、界面活性剤1%水溶液(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;HLB=10)の各液体を用いて、静的接触角の測定を行なった。その結果、各液体に対して、100°、90°、93°、86°と高い接触角を示し、良好な撥液性が得られることが確認できた。更に、本実施例の高分子膜は、実施例1の高分子膜と比べて、物品との密着性に優れ、その硬度が高く、耐磨耗性にも優れていることがわかった。
【0113】
実施例4
スチレンの代わりにアリルフェノールを使う以外は実施例2と同様の操作を行い、重合反応を行った。得られたグラフト共重合体を含む液に、ジブチルスズジラウリレート0.1部、下記に示す構造を有するジフェニルメタンジイソシアネート(式9)5部を加え充分に攪拌した後、ポリサルフォン板上に、wetで5μm厚さにスピンナーを用いて塗布した後、100℃で15分間加熱して、架橋反応を完結させて本実施例の高分子膜を得た。
【0114】
【0115】
得られた本実施例の高分子膜について、常温にて、純水、オレイン酸の10%水溶液、グリセリン20%水溶液、界面活性剤1%水溶液(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;HLB=10)の各液体を用いて静的接触角の測定を行なった。その結果、各液体に対して、96°、89°、95°、85°と高い接触角を示し、良好な撥液性が得られることが確認できた。更に、本実施例の高分子膜は、実施例2の高分子膜と比べて、物品との密着性に優れ、その硬度が高く、耐磨耗性にも優れていることがわかった。
【0116】
実施例5
ビニル基末端マクロモノマー(式5)のトルエン溶液(不揮発分25%)を実施例1と同様の方法で作成した。得られたビニル基末端マクロモノマー(25%トルエン溶液)120部、メタクリル酸メチル(式6)40部、下記に示す構造を有するγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A174 UCA製)(式10)30部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部及びトルエン60部からなる溶液を、N2気流下で、100℃で12時間重合反応を行う以外は、実施例1と同様の方法で本実施例の高分子膜を得た。
【0117】
【0118】
得られた本実施例の高分子膜について、常温にて、純水、オレイン酸の10%水溶液、グリセリン20%水溶液、界面活性剤1%水溶液(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;HLB=10)の各液体を用いて、静的接触角の測定を行なった。その結果、各液体に対して、105°、96°、90°、90°と高い接触角を示し、良好な撥液性が得られることが確認できた。
【0119】
実施例6
2−ヒドロキシエチルアクリレート100部、4,4’−アゾビス−シアノバレリアン酸10部及びエチレングリコールモノブチルエーテル200部からなる溶液をN2気流下で95℃で、10時間反応させ、オリゴマーを生成させた。
上記で得たオリゴマーにメタノールを加え、未反応成分を溶解しオリゴマーを再沈殿させ、オリゴマーのみを分離した後、該オリゴマーをトルエンに再溶解させ、オリゴマーの25%トルエン溶液を得た。このようにして得たオリゴマー溶液に、グリシジルメタクリレートを10部及びN,N’−ジメチルドデシルアミンを0.05部加え、100℃で5時間反応を行なって、ビニル基末端マクロモノマーのトルエン溶液(不揮発分25%)を得た。
【0120】
こうして得たビニル基末端マクロモノマー(25%トルエン溶液)120部、1H,1H−パーフルオロ−n−オクチルアクリレート70部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部及びトルエン60部からなる溶液を、N2気流下、100℃で12時間重合反応を行なってグラフト共重合体を含む撥液処理液を得た。
以上のようにして得られたグラフト共重合体を含む撥液処理液に、更にジブチルスズラウリレート0.1部、トリレンジイソシアネート5部を加え十分に攪拌した後、PSF板上に乾燥前の膜厚で5μmとなるようにスピンナーを用いて塗布し、100℃で15分間加熱して架橋反応を完結させて高分子膜を得た。
【0121】
こうして得られた高分子膜について、常温にて、純水、オレイン酸の10%水溶液、グリセリン20%水溶液、界面活性剤1%水溶液(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;HLB=10)の各液体を用いて静的接触角の測定を行なった。その結果、各溶液に対し、92°、85°、90°、88°と高い接触角を示し、良好な撥液性が得られることが確認できた。
【0122】
次に、本発明の高分子膜のインクジェット記録ヘッドへの適用とそれによって得られる効果について、具体例を挙げて更に詳細に説明する。
実施例7
先ず、下記のようにしてビニル基未端マクロモノマー(25%トルエン溶液)を調製した。
1H,1H−パーフルオロ−n−オクチルアクリレート(式1)100部、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸(式2)10部、メチルエチルケトン500部及びトルエン500部からなる溶液を、N2気流下、100℃で10時間反応させ、オリゴマー(式3)を生成させた。
【0123】
【0124】
上記で生成させたオリゴマー(式3)にメタノールを加え、未反応成分を溶解しオリゴマーを再沈させ、オリゴマーのみを分離した後、該オリゴマーをトルエンに再溶解させて、オリゴマーの25%トルエン溶液を作製した。このようにして得られたオリゴマー溶液に、先に(式4)で示した構造を有するグリシジルメタクリレートを10部及びN,N−ジメチルドデシルアミンを0.05部加え、100℃で5時間反応を行って、ビニル基末端マクロモノマー(式5)のトルエン溶液(不揮発分25%)を得た。
【0125】
次に、上記で得られたビニル基未端マクロモノマー(25%トルエン溶液)120部、メタクリル酸メチル70部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部及びトルエン60部からなる撥液処理剤を調製した。そして、オリフィスプレートとして、厚さが50μmのPSF(ポリサルフォン)フィルムを用い、上記で得られた撥液処理剤を、このPSFフィルム上の一方の面に、形成される膜の膜厚が0.5μmとなるようにスピンコータを用いて塗布した。尚、本実施例ではスピンコータを用いたが、その他、ロールコーター、グラビアコーター、スプレイコーター等の通常の精密塗布装置を用いることもできる。
【0126】
次に、上記で得られた一方の面に、撥液処理剤によって塗膜が形成されているPSFを、100℃のオープンに12時間投入し、重合反応を終了させた。次に、上記のようにして得られたPSFを加工して、複数の吐出口を有するオリフィスプレートを作成した。この際の加工には、波長248nmのKrFエキシマレーザー光を使用し、図6に示す装置によって、下記に述べるようにしてオリフィスが600dpi相当の間隔に直線的に複数個並ぶように、加工を行った。即ち、図6に示したように、オリフィスプレートの、塗膜が形成されていない接合面側からエキシマレーザー光を照射し、基材に、図7に示したような、オリフィス径20μmのオリフィスを形成した。
【0127】
一方、UV照射によりタック性を保持したままBステージ化し、硬化収縮が終了し、加熱圧着により接着できる状態のエポキシ系の接着剤を、転写法を用いてヘッド本体の接合面に均一に塗布した。その後、1mW/lcm2の紫外線を60秒照射してBステージ化を行い、接着剤の硬化収縮を終わらせた。
【0128】
次に、図5に示したように、上記のようにして、接合面に接着剤が塗布され、流路、ヒータ、基板、天板を有するヘッド本体の流路と、先に調製したオリフィスプレートのオリフィスとが合うようにアライメントを行った。その後、オリフィス面側から1kg/m2の荷重をかけて、オリフィスプレートとへッド本体とを密着させ、その状態を保持したまま60℃で加熱圧着させ、接着剤の硬化を終了させた。上記で得られた本実施例の液体吐出ヘッドを用いて印字を行ったところ、印字にヨレやムラが発生せず、良好な印字物が得られた。
【0129】
その他の実施例
上記した実施例1では、オリフィスプレートに塗膜(撥液層)を形成してから吐出口を設けたが、本発明の主旨に沿うものであれば、吐出口面に撥液層を設けるインクジェット記録ヘッドの製造方法はこれに限らず、異なるインクジェット記録ヘッドの製造方法であってもよい。
【00130】
図9は、本発明の別の実施例の液体吐出ヘッドの作成手順を示しているが、該ヘッドの場合は、先ず、液室、流路、吐出オリフィス面とを一体成形により作りあげた溝付天板のオリフィス面に、実施例1で使用したと同様の撥液処理剤を塗布した後、これを熱硬化させて撥液膜を形成する。その後、実施例1で述べたと同様にしてエキシマレーザー等による穴あけによって、吐出オリフィス面に吐出オリフィスを形成する。そして、このようにして形成した吐出オリフィスを有する溝付天板を、インクを吐出オリフィスより吐出させるための手段である発熱体を有する基板に接着して、図9(2)に示すような構造の液体吐出ヘッドを作製する。上記のようにして得られる液体吐出ヘッドは、実施例1の場合と同様に、安定なインクジェット記録をいつまでも継続することができる。
【0131】
更に、上記以外の構造を有するものであっても、例えば、吐出オリフィスより液体を吐出させるものであれば、図10に示したような、流路の終端部に吐出オリフィスを形成するタイプの場合や、その他、流路の端部に所定の径の穴を設けた流路とは別の吐出オリフィス板を付設して吐出オリフィスを形成したタイプ(不図示)の場合にも、図10に示したように、吐出オリフィスが形成される面を、撥液処理剤で処理することで、安定なインクジェット記録を行なうことができ、印字にヨレやムラが発生せず、良好な印字物が安定して得られるインクジェット記録ヘッドとなる。
【0132】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来の表面改質方法に用いていた撥液処理液とは全く異なる原理により、物品表面の特性を容易に改質し得る、具体的には、物品の表面に付与して被膜を形成させることによって、種々の材料からなる物品表面の撥液性を容易に向上させることができ、しかも、その状態を安定に維持させることができる新規な高分子膜が提供される。
更に、本発明によれば、上記の優れた効果を得ることが可能な高分子膜を容易に形成し得る新規な高分子化合物、該高分子化合物を含む撥液処理液、及び該高分子化合物の製造方法が提供される。
更に、本発明によれば、撥液性及び成膜性に優れた被膜、より好ましくは物品との密着性に優れ、硬度や耐磨耗性にも優れた被膜を物品の表面に形成し得る表面改質方法、及び表面改質された物品が提供される。
【0133】
又、以上説明したように、本発明によれば、インクジェット記録ヘッドの吐出口面に塗布することによって、吐出口面に対して、優れた撥液特性(更に好ましくは基材との密着性、膜の硬度や耐磨耗性)を付与し、更には、かかる撥液特性等が使用によって損なわれることなく維持されるインクジェット記録ヘッド、及びこれを用いたインクジェット記録装置が提供される。
【0134】
又、本発明によれば、上記の優れた効果が得られるインクジェット記録ヘッドが容易に得られるインクジェット記録ヘッド用の吐出口プレートが容易に得られる該プレートの製造方法が提供される。特に、エキシマレーザー等の光エネルギーで容易に加工できるインクジェット記録ヘッド用のオリフィスプレートの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高分子膜の構造を概念的に説明するための説明図。
【図2】本発明の高分子膜表面を光エネルギーによって加工する状態を概念的に説明する説明図。
【図3】本発明の一実施例にかかる液体吐出へッドの構造を説明するために、構成部材を分解した模式的斜視図。
【図4】液体吐出へッドの吐出口を有する吐出面の表面状態を説明するための模式図。
【図5】図3に示した本発明の一実施例の液体吐出ヘッドの吐出口を有する吐出面の模式的断面図。
【図6】本発明のインクジェット記録ヘッド用の吐出口プレートの吐出口を作成するための装置の模式図。
【図7】本発明のインクジェット記録ヘッド用の吐出口プレートの一例を示す断面図。
【図8】本発明のインクジェット記録ヘッドを構成するオリフィスプレートの表面に好適に設けられる高分子膜を概念的に示した説明図。
【図9】本発明の別の形態の液体吐出ヘッドの作成手順を示す説明図。
【図10】本発明の別の形態の液体吐出ヘッドの斜視図。
Claims (7)
- フッ素原子を含む高分子鎖である第1のセグメントと、該第1のセグメントとは溶剤に対する親和性が相対的に異なる高分子鎖である第2のセグメントとを有するグラフト共重合体の第1のセグメントの集合体であるフッ素ドメインを内部及び表面の少なくとも一方に含む高分子膜であって、該グラフト共重合体は幹部にフッ素原子を含み、該グラフト共重合体は芳香環又はビニル基を含むことを特徴とする高分子膜。
- 該第2のセグメント同士が化学的に架橋している請求項1に記載の高分子膜。
- 請求項1又は2に記載の高分子膜を表面に具備していることを特徴とする表面改質された物品。
- 複数のインク吐出口を有するインクジェット記録ヘッドの吐出口面に、請求項1又は2に記載の高分子膜が設けられていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
- 板状部材の一方の表面に、請求項1又は2に記載の高分子膜であって、且つ所定の波長域の光に対する吸収性を有する高分子膜を設ける工程、及び上記工程によって得られた高分子膜を表面に有する板状部材に対して、上記高分子膜が吸収を示す波長域の光を含む光を照射して上記板状部材に貫通孔を形成する工程を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッド用の吐出口プレートの製造方法。
- 請求項4に記載のインクジェット記録ヘッドと、該ヘッドにインクを供給するインクタンクとが一体的に形成されていることを特徴とするインクジェットカートリッジ。
- 請求項6に記載のインクジェットカートリッジと、該インクジェットカートリッジを搭載して走査可能に設けられたキャリッジとを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
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