JP4724280B2 - 糸状菌含有アンモニア臭消臭用飼料添加物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、アンモニア資化・分解力の高いスコプラリオプシス属に属する糸状菌を用いて、アンモニア性動物糞尿臭消臭用飼料添加物に関する。更に詳しくは、アンモニア資化・分解力の高いスコプラリオプシス属に属する糸状菌の培養物、胞子又は菌体を動物飼料に添加して給与し、排泄された家畜・家禽・ペットの糞尿中のアンモニア臭を消臭する飼料添加物に関する。
【0002】
【従来の技術】
養豚舎、養鶏舎、養牛舎でこれら家畜・家禽類が排泄する糞尿に由来する悪臭や、犬、猫等のペット動物の糞尿に基づく悪臭は今日大きな公害源である。この悪臭の主因の一つはアンモニアであり、畜舎、養鶏舎内における作業者はもとより家畜・家禽にも悪影響を与え、大きな健康阻害要因ともなっている。しかも、この糞尿から発生するアンモニアは、糞尿堆積場において日時の経過に伴って量が増えるという難点を抱えている。そこで、この問題に対処する施策として様様な工夫がなされているが、満足のいく対策はない。
例えば、畜糞処理施設において、化学的消臭剤とある種の微生物を家畜が発生する被処理悪臭成分を含むガスに散布して悪臭物質を分解する装置乃至方法(特開平8−317966号公報)、養鶏舎において、消臭と病原菌対策として、ある種の枯草菌、放線菌、酵母を含む生菌剤を添加した資材が知られている(農文協編 畜産環境対策大辞典記載品等)。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、簡便で効率良く、且つ安全で人畜の健康に悪影響がない方法で家畜・家禽・ペット等の糞尿に由来する悪臭を消臭する技術を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、スコプラリオプシス・ブレビカウリスに属する糸状菌が排泄された動物糞尿中のアンモニアを極めて強力に資化・分解する能力を有しており、この培養物、胞子、又は菌体(本発明においては、これらを総称して培養物と呼ぶ)を家畜・家禽・ペット等に飼料と共に給与、嚥下せしめることによって、これら動物が排泄した糞尿の堆積中に本糞尿中のアンモニア量が著しく低下し、極めて優れた消臭効果を達成することが出来ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。すなわち、本発明は、排泄された糞尿中のアンモニア資化・分解力の高いスコプラリオプシス属に属する糸状菌の培養物を動物飼料に添加して嚥下せしめ、家畜・家禽・ペットが排泄した糞尿中のアンモニアを資化・分解してアンモニア臭を消臭する飼料添加物である。
【0005】
又、本発明は、排泄された動物糞尿中のアンモニア資化・分解力の高いスコプラリオプシス属に属する糸状菌の培養物を動物の飼・餌料に添加して嚥下せしめることを特徴とする家畜・家禽・ペットの糞尿に由来するアンモニア臭を消臭する方法である。
【0006】
本発明のアンモニア資化・分解力の高いスコプラリオプシス属に属する糸状菌の培養物を動物の飼・餌料に添加して嚥下せしめることによって、これら動物が排泄した糞尿の乾燥、堆積、堆肥化、肥料化する工程におけるアンモニアの量が、通常飼料によって飼育・飼養したときに比して大幅に低下するだけでなく、その糞尿中の更なるアンモニアの発生も顕著に抑制される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される、排泄された糞尿中のアンモニアの資化・分解力が高いスコプラリオプシス属に属する糸状菌としては、例えばスコプラリオプシス・ブレビカウリス No. 1株( Scopulariopsis brevicaulis)があげられる。なお、スコプラリオプシス・ブレビカウリス No. 1株は、平成12年5月17日に、工業技術院 生命工学工業技術研究所にFERM P−17829として寄託されている。
【0008】
本発明における、排泄糞中において高いアンモニア資化・分解力を有するスコプラリオプシス属に属する糸状菌培養物としては、本菌を通常の糸状菌を培養する常法によって培養し、得られた培養物をそのまま乾燥したもの、或いはそれらから胞子、菌体のみを分離し、乾燥したもの(本発明においてはこれらを総称して糸状菌の培養物と呼ぶ)があげられる。
そして、本糸状菌を培養する方法としては、穀類を主成分とする培地を用いた固体培養法が便利である。
【0009】
本発明においては、このような糸状菌の培養物を含有するアンモニア臭消臭用飼料添加物を家畜・家禽・ペットの飼・餌料に添加して給与する外、更に他の成分と配合して飼料添加剤の形としても良い。例えば、活性炭、フミン酸、無機吸着体、その他既知の消臭剤、増量剤等を配合し、適宜製剤化することも可能である。その剤型としては、粉末、顆粒、錠剤、液剤、ペーストその他の形態を適宜採用することができる。
【0010】
又、本発明における、排泄された動物糞尿中のアンモニアの高い資化・分解能力を有するスコプラリオプシス属に属する糸状菌と共に、消臭効果のある微生物として知られる酵母、放線菌、細菌、メキシコを中心に生育する天然植物(ユッカ・シデクラ)から抽出したユッカ抽出物、さらに一般に消臭剤として知られる臭い吸着剤を配合して用いることも可能である。これらの臭い吸着剤としては、活性炭、フミン酸、無機吸着体が挙げられ、その例としては、ゼオライト、酸性白土、漂白土、カオリナイト、アルミナ、シリカゲル、ベントナイト、ヒドロキシルアパタイト、各種粘土鉱物、及び/又は、多孔性ガラス等が例示される。
【0011】
本発明の、排泄された動物糞尿中のアンモニアの高い資化・分解力を有するスコプラリオプシス属に属する糸状菌を含むアンモニア臭消臭用飼料添加物の使用量は、対象動物の種類にもよるが、通常例えば、本糸状菌培養物を0.1〜10%を含む外は、適宜ユッカ抽出物2〜50%、活性炭0.5〜20%、フミン酸1〜40%、無機吸着体などを配合した添加剤が例示される。
このようにして調製した消臭用飼料添加剤は、必要あれば増量剤を添加して希釈した後、飼料に添加・混合して経口投与することによって卓越した消臭効果を発揮する。しかも下記の参考例に示すように、本微生物、スコプラリオプシス・ブレビカウリス No. 1株は動物に対しての高い安全性も確認されている。
【0012】
本発明に係る家畜・家禽・ペットが排泄した糞尿中のアンモニアを資化・分解してアンモニア臭を消臭する飼料添加物乃至飼料添加剤は、そのまま直接経口投与したり、飼・餌料や飲水に添加混合して摂取せしめてもよい。飲水の場合は、これを通水性パックに入れてこれを飲水タンクに吊して給与するのが便利である。
【0013】
本発明に係る家畜・家禽・ペットが排泄した糞尿中のアンモニアを資化・分解してアンモニア臭を消臭する飼料添加物製剤の使用量は、通常、 飼料中における微生物の量が、飼料1g当り、スコプラリオプシス属に属し、アンモニアを資化・分解する能力の高い糸状菌の胞子数1000個以上、 好ましくは1〜9×104個、更に好ましくは10万個以上とするのがよい。なお、本発明に用いられるスコプラリオプシス属に属し、アンモニアを資化・分解する能力の高い糸状菌を飲水又は飼料と共に給与したとき、このスコプラリオプシス属の糸状菌は動物の腸内を通過し、糞中にそのまま排出され、排泄された糞中でアンモニアを資化・分解するものと考えられる。
【0014】
本発明に係る家畜・家禽・ペットが排泄した糞尿中のアンモニアを資化・分解してアンモニア臭を消臭する飼料添加物製剤を飼料または飲水と共に給与してやるだけで、排泄糞尿由来のアンモニア臭の消臭が可能となる。そのため、特に悪臭の強い環境下での労働が避けられるので、畜産農家における作業者に益となるばかりでなく、畜産農家の周辺の住民にとっても悪臭から開放され、公害防止上のメリットは極めて大であり、更に飼養されている動物そのものの健康上にも効果は大きい。
また、本発明によれば、家庭やペットショップ内のペット、動物園や水族館の動物、ペットホテル、獣医院等の動物の排泄糞尿由来のアンモニア臭の消臭も簡便に行うことができるので、これらの環境から悪臭を追放することができ、糞尿を放置しておいても悪臭の発生が抑制される。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて更に具体的に説明する。
実施例1
スコプラリオプシス・ブレビカウリス No. 1株(FERM P−17829)を鶏糞エキス寒天斜面培地に接種し、10日間30℃で培養した。
次いで、新鮮鶏糞20gと水道水80mlとを500ml容三角フラスコ中室温で10分間攪拌して鶏糞エキスを調製、その50gをフスマ50g及びモミガラ5gと混合、pHを7.5−8.5に調整した。かくして得た鶏糞エキスフスマ培地の50gを500ml容三角フラスコに入れ、1.2kg/cm2で15分滅菌し(到達温度120℃)、上に調製した鶏糞エキス寒天斜面培地培養物全量を添加、接種し、30℃で12日間静置して培養した。
得られた培養物を45℃にて温風乾燥して、家畜、家禽、ペットが排泄した糞尿中のアンモニアを資化・分解してアンモニア臭を消臭する飼料添加物製剤15gを得た。
【0016】
実施例2
市販の採卵鶏用飼料(日本配合飼料株式会社製 LM17)に実施例1によって調製したスコプラリオプシス・ブレビカウリス No. 1株(FERM P−17829)の乾燥飼料添加物製剤を0.03%(重量比)添加配合して、飼料を調製した。
この飼料を常法により採卵鶏の成鶏に給与し、28日間の飼育期間中に排泄した排泄糞を4羽分宛が1つの容器に堆積するよう、逐次容器で受けて堆積した。アンモニア濃度の測定は、以下の如くして行った。容器に蓋をして一定時間(試験1及び2については1分後、試験3については1時間後)にヘッドスペースのアンモニア濃度を、検知管法(ガステック社製アンモニア検知管)を用いて1週間間隔で測定した。結果を表1に示す。表1に示した如く、採卵鶏の排泄糞からのアンモニアの発生が大幅に抑制されていることが判る。
尚、何れの試験区においても、成鶏の健康状態に異常は認められなかった。
【0017】
【表1】
【0018】
実施例3
市販のブロイラー用飼料(日和産業株式会社製 パワーゴール)に実施例1によって調製したスコプラリオプシス・ブレビカウリス No. 1(FERM P−17829)の乾燥飼料添加物製剤を0.003%(重量比)添加配合して、飼料を調製した。
この飼料を常法によりブロイラーの成鶏に給与し、35日間の飼育期間中に排泄した糞は逐次敷料中に蓄積させた。飼養方法は常法により平飼いとし、飼養密度11羽/m2とした。
アンモニア濃度の測定は、容器を敷料に被せ、1分後にヘッドスペースのアンモニア濃度を検知管法(ガステック社製アンモニア検知管)により、1週間間隔で測定した。結果を表2に示す。
【0019】
【表2】
【0020】
上記結果から明らかなように、ブロイラーの排泄糞からのアンモニアの発生は抑制されている。尚、成鶏の健康状態にも異常は認められなかった。
参考例1
飼料の安全性評価基準(昭和63年4月12日付け、63畜B第617号、農林水産省畜産局長通達)による「鶏ひなの成長試験法」にしたがって、糸状菌製剤の安全性について検討した。
試験は、供試品無添加の基礎飼料を給与する対照区と、基礎飼料に実施例1で調製した糸状菌の乾燥培養物0.0005%および0.1%添加した飼料を給与する試験区2区の計3区を設定し、各区に制限給餌により育成した8日齢の雄雌6羽を1群とした3群ずつを配して6日間飼育した。
その結果、本発明の糸状菌培養・乾燥物添加各区の増体重、飼料摂取量および飼料要求率は、いずれも対照区との間に著差が認められなかった。また、雛の健康状態にも異常は観察されなかった。
【0021】
材料及び方法
・供用雛:餌付時に1羽あたり10gの市販ブロイラー前期用飼料を3日分として給与し、4日目以降は1日1羽あたり3.5gずつ給与する制限給餌により育成した8日齢のブロイラー専用種(コッブ)雄雌107羽の中から体重54〜60gの個体を54羽選抜して用いた。
・試験区の設定 :本試験は、上記飼料の安全性評価基準による「鶏ひなの成長試験法」にしたがって実施した。
【0022】
すなわち、供試品無添加の基礎飼料(配合割合を表3に示す)を給与する対照区と、基礎飼料に供試品を0.0005%および0.1%添加した飼料を給与する2区の計3区を設定し、供用雛を、体重の近似した個体がほぼ均等になるように6羽ずつ配した9群に区分し、各区に3群ずつを無作為に割り付け、供試品給与後6日間飼育した。
【0023】
【表3】
【0024】
注1)1kg中に、ビタミンB1 2.0g、ビタミンB2 10.0g、ビタミンB6 2.0g、ニコチン酸アミド 2.0g、D−パントテン酸Ca 4.35g、塩化コリン138.0g、葉酸 1.0gを含む。
注2)1g中A:10000IU、D3:2000IU、E:20mgを含む。
注3)1kg中、Mn:80g、Zn:50g、Fe:6g、I:1g、Cu:0.6gを含む。
【0025】
・飼養管理:使用雛は、電熱給温式の育雛器で群毎に飼育し、各群の収容位置を毎日移動して、環境条件による影響を出来るだけ排除するように努めた。なお、飼料および飲水は自由摂取させた。
・調査項目及び方法
a.臨床観察
日常の食欲、糞便の性状、鳴声、羽毛の状態等を観察した。
b.体重及び増体量
試験開始時および試験終了時に個体別体重を測定し、群毎の増体重を算出した。
c.飼料摂取量及び飼料要求率
試験期間中の飼料摂取量を群毎に測定し、1羽あたりの飼料摂取量および飼料要求率を算出した。
・試験結果の解析:増体重、飼料摂取量および飼料要求率について1元配置法により分散分析を行って区間差を解析した。
・試験期間 : 平成10年11月17日〜11月23日
・結果及び考察:試験結果を下記表4に示した。
【0026】
【表4】
【0027】
供試品添加各区の増体重、飼料摂取量および飼料要求率は、いずれも対照区との間に著差は認められず、供試品添加量との用量依存性もみうけられなかった。また、供用雛の健康状態にも、異常は観察されなかった。
以上の結果から、供試品は0.0005%、0.1%何れの飼料添加率においても雛の発育や健康状態に悪影響を及ぼす懸念はないものと考えられる。
なお、発育成績を、下記表5に示す。
【0028】
【表5】
【0029】
【発明の効果】
簡便で効率良く、且つ安全で人畜の健康に悪影響がない方法で家畜・家禽・ペット等が排泄した糞尿中のアンモニアを資化・分解して、これら糞尿に由来する悪臭が消臭出来る。更に、これら動物の糞尿の堆積中のアンモニアの発生をも抑えることが出来る。
Claims (3)
- 排泄された糞尿中において高いアンモニア資化・分解力を有するスコプラリオプシス・ブレビカウリスNo.1株(FERM P−17829)の培養物を含有せしめたアンモニア臭消臭用飼料添加物。
- 排泄された糞尿中においてアンモニア資化・分解力の高い能力を有するスコプラリオプシス・ブレビカウリスNo.1株(FERM P−17829)。
- 請求項1に記載のアンモニア臭消臭用飼料添加物を含有せしめた飼料を家畜、家禽又はペットに給与することを特徴とする家畜、家禽又はペット動物の排泄された糞尿由来のアンモニア臭消臭方法。
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Citations (2)
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---|---|---|---|---|
JPH09252728A (ja) * | 1996-03-25 | 1997-09-30 | Natl Fedelation Of Agricult Coop Assoc | 消臭性飼料 |
JPH09322714A (ja) * | 1996-06-06 | 1997-12-16 | Mizuho:Kk | 消臭性飼料 |
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- 2000-09-12 JP JP2000276464A patent/JP4724280B2/ja not_active Expired - Lifetime
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CN109370910A (zh) * | 2018-08-03 | 2019-02-22 | 贵州省植物保护研究所 | 一种短帚霉及其用途 |
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