JP4723713B2 - mRNAの潜在的翻訳制御因子のスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、mRNAの潜在的翻訳制御因子をスクリーニングする方法に関する。具体的には、本発明は、非翻訳領域(UTR)に翻訳制御因子候補が導入されたmRNAを合成し、未処理のもと比べて翻訳効率に変化の生じたmRNAを選択することを含む上記方法に関する。
【0002】
本発明はまた、上記方法でスクリーニングされた翻訳制御因子に関する。
本発明はさらに、そのようなスクリーニング方法を使用することによって未処理のものと比べて翻訳効率に変化の生じたmRNAを単離する方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
mRNAの5'UTRや3'UTRにはmRNAの翻訳効率を制御する因子が存在し、遺伝子の発現調節に重要な役割を演じていることが知られている(Gallie,D.R.およびKobayashi, M. (1994), Gene, 142:159-165; Yamamoto, Y.Y.ら(1995), J. Biol. Chem., 270:12466-12470; Bailey-Serres, J. (1999), Trends Plant Sci., 4:142-148)。このUTR配列は様々な分子機構で翻訳開始頻度に影響を与えていると考えられている。しかしこれまで、UTRと翻訳開始頻度との関係が実際に解析された例はほんの少数であり、多くの遺伝子については未解明である。したがってこれらの領域にはまだ明らかになっていない多くの翻訳制御配列とそれらを介した制御機構が存在していると推定される。さらにそれらの翻訳制御因子全般に共通する性質やモチーフ、構造などが見出された例はない。もしUTR中で機能する翻訳制御配列を体系的に選抜する方法があれば、制御配列として機能するのに必須な基本的性質を明らかにしたり、また目的遺伝子の発現を翻訳段階で確実に制御する技術を確立することなどが可能になると考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の下で、本発明の目的は、in vitro進化の原理を応用し、所与の翻訳系のなかでmRNAの翻訳効率を促進または抑制する潜在的翻訳制御因子をスクリーニングする方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、個々の遺伝子のUTRを一つずつ解析していく代わりにモデル遺伝子のin vitro分子進化系を使って、所与の翻訳系の中で機能するUTR制御配列群を組織的に単離し解析する手法を見出した。すなわちこの手法は、遺伝子発現の潜在的制御部位であるUTR中にランダムな塩基配列集団を導入し、挿入された配列の効果によって所与の翻訳系の中で優先的に翻訳されるようになった(または、されないようになった)mRNAの選抜を繰り返すというものである。
【0006】
すなわち、本発明は以下のように要約される。
本発明は、第1の態様において、非翻訳領域(UTR)に翻訳制御因子候補であるランダムオリゴヌクレオチド配列が導入されたmRNAを合成し、未処理のものと比べて翻訳効率に変化の生じたmRNAを選択することを含む、mRNAの潜在的翻訳制御因子をスクリーニングする方法を提供する。
【0007】
その一の実施態様において、前記mRNAの選択は、(a)UTRに多様な翻訳制御配列候補を含むmRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系に導入してポリソームを生成し、(b)翻訳効率に変化の生じたmRNAを含むポリソームを分離することによって行われる。
【0008】
その別の実施態様において、前記mRNAの選択は、(c)前記分離されたポリソームからRNAを抽出し、(d)該RNAを鋳型にしてDNA断片を合成し、このDNA断片を鋳型にしてmRNAを合成することをさらに含む。
【0009】
そのさらに別の実施態様において、前記mRNAの選択は、(e)前記合成されたmRNAについて前記工程(a)〜(d)を少なくとも1回繰り返し、翻訳効率に変化の生じた実質的に純粋なmRNAを単離し、(f)該単離されたmRNAについて、その中に導入された潜在的翻訳制御因子の配列を決定することをさらに含む。
【0010】
別の実施態様において、上記の方法において合成されたmRNAは、キャップ構造またはポリ(A)鎖、あるいはそれらの両方を含むものである。すなわちmRNAは、(1)キャップ構造およびポリ(A)鎖を有するもの、(2)キャップ構造を有するがポリ(A)鎖をもたないもの、または(3)キャップ構造をもたないがポリ(A)鎖を有するものからなる。ここでポリ(A)はポリアデニル酸を意味する。またキャップ構造は、真核細胞やウイルスのmRNAの5'末端に存在するもので、蛋白質生合成の開始反応等に関与するものをいう。
【0011】
さらに別の実施態様において、前記in vitro翻訳系は無細胞タンパク質合成系であり、前記in vivo翻訳系は真核細胞である。
さらに別の実施態様において、前記工程(b)でのポリソームの分離は該ポリソームのサイズに基づいて行われる。
さらに別の実施態様において、前記の翻訳効率に変化の生じたmRNAは未処理のものと比べて翻訳効率が高いものまたは低いものであり、好ましくは翻訳効率が高いものである。
【0012】
本発明のスクリーニング方法の具体例は、以下のとおりである。
(1) mRNAの潜在的翻訳制御因子をスクリーニングする方法であって、
(a)非翻訳領域(UTR)に翻訳制御因子候補であるランダムオリゴヌクレオチド配列が導入されたmRNAを合成する工程、
(b)UTRに多様な翻訳制御配列候補を含む工程(a)からのmRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系に導入してポリソームを生成する工程、
(c)工程(b)で生成した翻訳効率に変化の生じたmRNAを含むポリソームを分離する工程、
(d)工程(c)で分離されたポリソームからRNAを抽出する工程、
(e)工程(d)で抽出されたRNAを鋳型にしてDNA断片を合成し、さらにこのDNA断片を鋳型にしてmRNAを合成する工程、
(f)工程(e)で合成されたmRNAについて工程(b)〜(e)を少なくとも1回繰り返し、翻訳効率に変化の生じた実質的に純粋なmRNAを単離する工程、および
(g)工程(f)で単離されたmRNAについて、その中に導入された潜在的翻訳制御因子の配列を決定する工程
を含む方法。
【0013】
(2) mRNAの潜在的翻訳制御因子をスクリーニングする方法であって、
(a)5'非翻訳領域(5'UTR)に翻訳制御因子候補であるランダムオリゴヌクレオチド配列が導入された、かつキャップ構造およびポリ(A)鎖配列を含む、mRNAを合成する工程、
(b)5'UTRに多様な翻訳制御配列候補を含む工程(a)からのmRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系に導入してポリソームを生成する工程、
(c)工程(b)で生成した天然型と比べて翻訳効率の高いmRNAを含むポリソームをサイズに基いて分離する工程、
(d)工程(c)で分離されたポリソームからRNAを抽出する工程、
(e)工程(d)で抽出されたRNAを鋳型にしてDNA断片を合成し、さらにこのDNA断片を鋳型にしてmRNAを合成する工程、
(f)工程(e)で得られたmRNAについて工程(b)〜(e)を少なくとも1回繰り返し、未処理のものと比べて翻訳効率の高いまたは低い実質的に純粋なmRNAを単離する工程、および
(g)工程(f)で単離されたmRNAについて、その中に導入された潜在的翻訳制御因子の配列を決定する工程
を含む方法。
【0014】
(3) mRNAの潜在的翻訳制御因子をスクリーニングする方法であって、
(a)3'非翻訳領域(3'UTR)に翻訳制御因子候補であるランダムオリゴヌクレオチド配列が導入された、かつキャップ構造を含まずポリ(A)鎖配列を含む、mRNAを合成する工程、
(b)3'UTRに多様な翻訳制御配列候補を含む工程(a)からのmRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系に導入してポリソームを生成する工程、
(c)工程(b)で生成した天然型と比べて翻訳効率の高いmRNAを含むポリソームをサイズに基いて分離する工程、
(d)工程(c)で分離されたポリソームからRNAを抽出する工程、
(e)工程(d)で抽出されたRNAを鋳型にしてDNA断片を合成し、さらにこのDNA断片を鋳型にしてmRNAを合成する工程、
(f)工程(e)で得られたmRNAについて工程(b)〜(e)を少なくとも1回繰り返し、未処理のものと比べて翻訳効率の高いまたは低い実質的に純粋なmRNAを単離する工程、および
(g)工程(f)で単離されたmRNAについて、その中に導入された潜在的翻訳制御因子の配列を決定する工程
を含む方法。
【0015】
本発明は、別の態様において、翻訳効率の高い天然型mRNAの翻訳制御因子をスクリーニングする方法を提供する。この方法は以下の工程(a)〜(f)からなる。
(a) 非翻訳領域に多様な翻訳制御配列を含むmRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系にかけてポリソームを生成する工程、
(b) 工程(a)で生成した翻訳効率の高いmRNAを含むポリソームをサイズに基いて分離する工程、
(c) 工程(b)で分離されたポリソームからmRNAを抽出する工程、
(d) 工程(c)で抽出されたRNAを鋳型にしてDNA断片を合成し、さらにこのDNA断片を鋳型にしてmRNAを合成する工程、
(e) 工程(d)で得られたmRNAについて工程(a)〜(d)を少なくとも1回繰り返し、翻訳効率の高い実質的に純粋なmRNAを単離する工程、および
(f) 工程(e)で単離されたmRNAの翻訳制御因子の配列を決定する工程。
本発明はさらに、上記のスクリーニング方法によって見出された、配列番号9〜28に示される配列からなる群から選択される配列からなる翻訳制御因子を提供する。
【0016】
本発明はさらに、別の態様において、上記のいずれかのスクリーニング方法を使用することによって未処理のものと比べて翻訳効率に変化の生じたmRNAを単離する方法を提供する。特定的には、該方法は、
(a) 非翻訳領域(UTR)に翻訳制御因子候補であるランダムオリゴヌクレオチド配列が導入されたmRNAを合成する工程、
(b)UTRに多様な翻訳制御配列候補を含む工程(a)からのmRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系に導入してポリソームを生成する工程、
(c)工程(b)で生成した翻訳効率に変化の生じたmRNAを含むポリソームを分離する工程、
(d)工程(c)で分離されたポリソームからRNAを抽出する工程、
(e)工程(d)で抽出されたRNAを鋳型にしてDNA断片を合成し、さらにこのDNA断片を鋳型にしてmRNAを合成する工程、
(f) 工程(e)で合成されたmRNAについて工程(b)〜(e)を少なくとも1回繰り返し、翻訳効率に変化の生じた実質的に純粋なmRNAを単離する工程
を含む。
上記工程(a)のmRNAは、キャップ構造またはポリ(A)鎖、あるいはそれらの両方を含むことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の方法をさらに具体的に説明する。
本方法は、非翻訳領域(UTR)に翻訳制御因子候補であるランダムオリゴヌクレオチド配列が導入されたmRNAを合成し、未処理のものと比べて翻訳効率に変化の生じたmRNAを選択することを含む。
mRNAは例えば以下のようにして合成することができる。
【0018】
任意のタンパク質をコードするDNAを鋳型にし、ランダムオリゴヌクレオチド配列を有する5'UTRまたは3'UTRプライマー(ただし、順方向プライマーの5'末端側にプロモーター配列(例えばT7など)を付加し、一方逆方向プライマーの5'末端側に必要に応じてポリ(T)配列を付加する。)を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、図1に示すような2種類の二本鎖DNA(ランダム5'UTRおよびランダム3'UTR)を作製する。続いて、この二つのPCR産物を鋳型にin vitro転写を行い、上記二本鎖DNAの各々に対応するキャップをもったmRNAとキャップをもたないmRNAを合成する。この手法によりランダム配列が5'UTRまたは3'UTRに導入されたmRNA集団を調製することができる(図1のa'およびb')。
【0019】
ランダムオリゴヌクレオチドは、塩基数10以上、好ましくは10〜100、より好ましくは15〜20を有する。ランダムオリゴヌクレオチド配列上の各位置にはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4つの塩基のいずれかが配置されており、したがってオリゴヌクレオチドの塩基数が例えばn個の場合、4n個からなるオリゴヌクレオチド配列の各々を含むDNAが得られることになる。
【0020】
PCRは文献等に記載される慣用の条件を使用することができる(蛋白質・核酸・酵素第41巻第5号1996年(4月増刊号); F.M. Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.など)。RCRは例えば、ウォーターバスまたは自動サーマルサイクラー中にて、耐熱性DNAポリメラーゼ(例えばAmpli Taq(パーキンエルマー社)、Takara Taq(宝酒造)など)、鋳型DNA、上記プライマーの存在下、DNAの変性(94℃、約15〜30秒)、プライマーのアニーリング(55℃、約30秒〜1分)、および4種類の基質(dNTP)の共存下での伸長反応(72℃、約30秒〜10分)を1サイクルとして約25〜約40サイクル実施したのち、72℃、約5〜10分の加熱処理を1サイクル実施することによって行われる。
【0021】
鋳型DNAは、自動合成機を用いて化学的に作製されてもよいし、あるいは適当な供給源からcDNAクローニングによるかまたは適当なcDNAもしくはゲノムライブラリーからの単離によって得ることができる。cDNAクローニングの手法は例えばSambrookら, Molecular Cloning,第2版(1989年)(Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されており参照できる。
【0022】
UTRに多様な翻訳制御配列候補を含むmRNA集団を作製した後、該mRNA集団の中から、未処理のものと比べて翻訳効率に変化の生じたmRNAを選択し、これによって潜在的翻訳制御配列を確定することができる。この選択の第一段階において、mRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系に導入してポリソームを生成する。in vitro翻訳系は所謂、無細胞タンパク質合成系をいい、通常、リボソームや翻訳因子、tRNAなどタンパク合成に必要な諸因子を含有する細胞抽出液(例えば小麦胚芽抽出液、大腸菌抽出液など)が使用される(Madin, K.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97:559 (2000), Kigawa, T.ら, FEBS Lett., 442:15 (1999)など)。in vitro翻訳系では、mRNA集団をこの系に直接添加してポリソームを形成する。一方in vivo翻訳系では、真核細胞(例えばカエルの卵母細胞など)を直接使用する。この場合mRNA集団はパーティクルガンや顕微注入などの手法で真核細胞内に導入され、適切な培地中で培養される。培養条件としては慣用のものを使用できる。
【0023】
ポリソームは1本のmRNAに複数のリボソームが同時に結合してタンパク合成が行われている状態のものであり、リボソームの数(通常数個〜数十個)に応じてその重量が異なる。これは、UTRにランダム配列をもつmRNAの中には翻訳効率の高くなったmRNAや低くなったmRNAが生じ、様々な翻訳効率をもつmRNAの集団が形成される可能性があるからである。翻訳効率の高いmRNAが翻訳されたときには、mRNAにリボソームがたくさん結合している所謂大きなポリソームが生じ、逆に翻訳効率の低いmRNAが翻訳されたときには、mRNAにリボソームがあまり結合していない所謂小さなポリソームが生じるので、ポリソームのサイズの違いを基にこのmRNA集団を分離すれば、翻訳効率に変化の生じたmRNAを分画することができる。in vivo翻訳系として真核細胞を使用するときには、ポリソームの一部が小胞体に結合して存在しているため、分離操作に先立ってポリソームを例えば界面活性剤処理により小胞体から解離させる必要がある。
【0024】
分離法の例には、密度勾配遠心法(例えばショ糖、塩化セシウム法など)、電気泳動(例えばキャピラリィー電気泳動など)、ゲル濾過またはゲル浸透クロマトグラフィーなどが含まれる。一般に、翻訳効率の高いmRNA分子は、一分子あたりより多くのリボソームと結合しているので沈降速度のより大きなポリソーム画分に分布し、一方、翻訳効率の低いmRNA分子は沈降速度のより小さいポリソーム画分に分布する。しかし一回の分画ではその分離能にも限界があるため、目的のmRNAの分離をさらに少なくとも1回、好ましくは2〜10回、さらに好ましくは5〜8回行うのが望ましい。この場合、先ず、分離したポリソームからRNAを抽出する。次いで、RNAを鋳型にして逆転写(例えばRT-PCR)によりDNA断片を合成し、このとき必要に応じてプロモーター配列、ポリ(T)配列を付加し、さらにこのDNAを鋳型にしてmRNAを合成する。次にmRNAをin vitroまたはin vivo翻訳系に導入し、目的のポリソームを分離し、ポリソームからRNAを分離し、RNAからDNAついでDNAからmRNAを順次合成し、目的のmRNAが単離されるまでこのサイクルを繰り返す。35S-Cysの取込みを利用した翻訳活性の測定(後述の実施例3参照)によってスクリーニングされた未処理のものに比べて翻訳効率に変化の生じたmRNAについて、その中に導入された潜在的翻訳制御配列を配列決定法により決定する。
【0025】
下記においては、添付の図面を参照しながら本発明をさらに具体的に説明する。出発遺伝子としてβ-グルクロニダーゼ(GUSという)遺伝子を改変したモデル遺伝子を例として用いて本発明方法の各工程を説明する。
【0026】
Conrad, R.C.ら(In Smith, C.W.J. (ed.) RNA: Protein Interactions. A Practical Approach. Oxford University Press, New York, pp.285-325)による方法を用いて、5'UTRまたは3'UTRに15塩基のランダム配列をもつプライマーを設計し、順方向プライマーの5'末端側にはT7プロモーター(Lanar, D.E. およびKain, K.C. (1995), Expression-PCR. In Dieffenbach, C.W. and Dveksler, G.S. (eds.), PCR Primer. A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, pp.371-377)の配列を付加した。逆方向プライマーには、GUSコード領域の前半の312塩基がORFになるように終止コドンを導入し、また、転写されたmRNAがポリ(A)をもつように、5'末端側には50塩基のポリ(T)を付加した。次に、これらのプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、図1に示す2種類の二本鎖DNA、すなわちランダム5'UTRとランダム3'UTRを作製した。続いて、この二つのPCR産物を鋳型にin vitro転写を行い、上記二本鎖DNAのそれぞれにキャップをもったmRNAとキャップをもたないmRNAを合成した。この手法によりランダム配列が5'UTR、3'UTRのそれぞれに導入されたmRNA集団を調製した(図1のa'およびb')。
【0027】
小麦胚芽in vitro翻訳系を用いて翻訳反応を行い、実際にショ糖密度勾配遠心によって沈降係数の違いを基にポリソームを分離した(Davis, E.およびAbe, S. (1995), In Galbraith, D.W. et al. (eds.) Methods in Plant Cell Biology, Academic Press, San Diego, pp.209-222)。しかし、一度の分離では翻訳効率の高くなったmRNAと低くなったmRNAを十分に分離することはできなかった。これは同じmRNA分子種でもリボソームの結合する数にはある程度のゆらぎがあり、そのためポリソームRNAの分離回収、RT-PCRとin vitro転写によるmRNAの合成、翻訳反応、ショ糖密度勾配遠心法による再分離、の一連の過程を何度か繰り返した(図2)。その結果、以下に述べるように、ランダム塩基配列の導入によって翻訳開始頻度が上昇/低下したmRNAを段階的に濃縮できることを見出した。
【0028】
図3Aに、キャップとポリ(A)をもちランダム配列を5'UTRに導入した構築物を用いて、また図3Bに、キャップとポリ(A)をもちランダム配列を3'UTRに導入した構築物を用いて、それぞれ上記の濃縮サイクルを行った結果を示した。3'UTRについては活性の上昇が見られなかったのに対し、5'UTRにおいて初期集団に対して約3倍の翻訳活性の上昇したmRNA集団を分離することができた。また両方の構築物の低活性画分において、約4分の1に活性が低下したmRNA集団を分離することができた。5'UTRで分離できた高活性集団と低活性集団の間には約10倍もの活性の差が見られた。これらの結果は、キャップとポリ(A)をもつmRNAでは、翻訳を促進するための配列としては主に5'UTRが機能していることを示唆している。
【0029】
真核生物の翻訳開始反応では、キャップ構造が重要な役割をもっていることが知られている(Gingras,A.C.ら(1999), Annu. Rev. Biochem., 68:913-963)。また多くのRNAウイルスでは、宿主細胞中のキャップ依存性翻訳開始装置を特異的なタンパク質分解酵素によって破壊し、キャップ非依存的な翻訳開始機構をとる自分のmRNAを優先的に翻訳させる例が知られている(Ehrenfeld, E. (1996): In Hershey, J.W.B et al. (eds.), Translational Control. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, pp.549-573)。そこで、キャップ構造が翻訳制御因子の出現に与える影響を本発明の方法で検証するため、キャップをもたないポリ(A)mRNAの5'UTRまたは3'UTRにランダム配列を導入し、上述と同様の実験を行った(図3のCおよびD)。その結果、3'UTRに導入したものでは約3倍の翻訳活性の上昇が見られた。低活性集団は約2分の1に活性が低下しており、高活性集団との差は約6倍であった。
【0030】
上記の結果は、5'UTR上の翻訳制御配列が十分その能力を発揮するためにはキャップとポリ(A)が必要であること、一方3'UTR上の配列にはキャップの欠損を補う効果をもった翻訳促進配列を出現させうることを示している。とりわけキャップ非依存的翻訳促進配列が3'UTRに出現したという事実は、5'キャップのあるべき位置(5'末端)と3'UTRが遠く離れていることを考えると全く驚くべきことである。
【0031】
次に、翻訳活性の高まったmRNA集団が得られた2つの例、すなわちキャップをもつmRNAの5'UTRにランダム配列を導入した例と、キャップをもたないmRNAの3'UTRにランダム配列を導入した例について、得られた高翻訳mRNA集団から個々のcDNAのクローニングを行った。図4にクローニングした構築物のランダム領域の配列と、そのクローンの翻訳活性を測定した結果を示す。翻訳活性を高めた潜在的翻訳制御配列の例を以下に示す(図4A,図4B参照)。
(5'UTRに導入されたランダム配列)
AGGUUGCAUAUUCCG (配列番号9)
UCUAUUGGUUUCAAC(配列番号10)
UAGAUAUCCGCGCUU(配列番号11)
AUACUCGCGUUAUCA(配列番号12)
ACAGUGCCUAAUCCU(配列番号13)
ACUGCAAGUCCGCUC(配列番号14)
GCAUAUUAGCACCGC(配列番号15)
GAGCUGCCAGGUUGC(配列番号16)
AGUACCAUACUCUU(配列番号17)
AACCUUUGCUUUCGC(配列番号18)
(3'UTRに導入されたランダム配列)
UACUUAUAUCUCCAA(配列番号19)
GUACCCACGGCGUUA(配列番号20)
AACUACUUACCUUAA(配列番号21)
CACAAGCCGCCUUAA(配列番号22)
UUGUCGGUUGUCCAU(配列番号23)
UCUGGAUACUCUCUG(配列番号24)
AUACACUGUCCUAUA(配列番号25)
CCAGAUAUAACCACA(配列番号26)
UUUUCACACUCGCCU(配列番号27)
GCGAUGAUACUUUGC(配列番号28)
【0032】
分離した高活性集団から得られたクローンの配列に共通する性質は一見してみあたらなかった。このことはあるmRNAの翻訳を促進するUTR配列は一通りではないことを示している。in vitro進化によってある核酸結合タンパク質の結合配列を選抜する場合、その配列はある決まったものに収束していくことが多い(Szoztak, J.W. (1992), Trends in Biochemical Sciences, 17:89-93)。ところが、翻訳反応という非常に複雑な生化学反応では、UTR翻訳制御配列の選抜に影響を与える因子は多種多様であると考えられる。すなわち翻訳反応に関わるすべてのタンパク質やRNAが、その選抜に影響を与える可能性を有している。UTR配列の選抜に多くの因子が関わったいくつもの制御機構が関係しているために、ある決まった配列が現れない理由であると推定される。
下記の実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されないものである。
【0033】
【実施例】
実施例1 UTR にランダム配列を導入した GUS mRNA の作製
下記の順方向プライマーおよび逆方向プライマー:
(1)5'-GCAGGCCTAATACGACTCACTATAGGGCCGCTCTAGAACTAGTGGATCC-(N)15-ATGTTACGT CCTGTAGAAACCCCAACCCGT-3' (配列番号1)
(2)5'-(T)50-CGAGCTCGAGATTCACACTTCCTGATTATTGACCCACACT-3'(配列番号2)
(3)5'-GCCTGCAGGGCCTAATACGACTCACTATAGGGATCCCTTATGTTACGTCCTGTAGAAACCCCA-3' (配列番号3)
(4)5'-CCCTCGAGGTCGACGGTATCG-(N)15-GAGCTCGAGATTCACACTTCCTGATTATTGA-3'(配
列番号4)
(5)5'-(T)50-CCCTCGAGGTCGACGGTATCG-3'(配列番号5)
をそれぞれ組合わせて、PCRによりランダム配列をGUS遺伝子の5'UTRまたは3'UTRに導入し、図1に示すような二本鎖DNA断片を調製した(LanarおよびKain、前掲)。
【0034】
3'UTRにランダム配列を導入した構築物は、先ずプライマー(3)と(4)を用いて作製し、この断片を鋳型としてプライマー(3)と(5)を用いてPCRを行ってポリ(A)尾部を付加した。キャップをもったmRNAの合成には、Ambion社のmMESSAGE mMACHINE T7 Kit(反応液中にキャップアナローグを含む)を、またキャップをもたないものには同社のMega Script T7 Kit(反応液中にキャップアナローグを含まない)を用いて、in vitro転写を行い、5'UTR、3'UTRにランダム配列を導入したmRNAを調製した。
【0035】
実施例2 小麦胚芽 in vitro 翻訳系での翻訳反応
図1に示したmRNAを、全アミノ酸を含む100μlの小麦胚芽in vitro翻訳系(Promega社)で、25℃、活性画分のmRNAで10分、不活性画分のmRNAで30分間翻訳した(図2、ステップb)。反応後、氷冷した100μlのU-Buffer(200mM Tris-HCl, pH8.5, 50mM KCl, 25mM MgCl2, 2mM EDTA, 100μg/mlヘパリン,2%ポリオキシエチレン10-トリデシルエーテル,1%デオキシコール酸ナトリウム)を加えて反応を停止させた。この反応液を、ショ糖密度勾配(50mM Tris-HCl, pH8.5, 25mM KCl, 10mM MgCl2, 15-60%ショ糖)をつけた溶液の入ったチューブに160μl載せ、125,000gで3時間遠心した(DavisおよびAbe,前掲)。遠心後、フラクションコレクターで約1mlずつ12フラクションに分画した(図2、ステップc)。これらの画分からRNAを回収し、SUPERSCRIPTTM ONE-STEPTM RT-PCR System(GIBCOBRL社)によって二本鎖DNAを作製した(図2、ステップe)。このとき5'UTRにランダム配列を導入したmRNAには、順方向プライマー:
5'-GCAGGCCTAATACGACTCACTATAGGGCCGCTCTAGAACTAGTGGATC-3'(配列番号6)
と、逆方向プライマー(配列番号2)を用いた。3'UTRにランダム配列を導入したmRNAには、順方向プライマー(配列番号3)および逆方向プライマー(配列番号5)を用いた。これらの断片を用いてin vitro転写を行い、再度mRNAを作製し(図2、ステップa)、図2に太線で示したサイクルを繰り返し行った。濃縮サイクルの3回目以降には競合体となるRNAを加えて翻訳反応を行った。
【0036】
競合体mRNAにはホタルルシフェラーゼ遺伝子を改変したものを用いた。キャップをもつmRNAを選抜するときには、キャップをもつmRNAを競合体に用い、キャップをもたないmRNAを選抜するときには、キャップをもたないmRNAを競合体に用いた。図1で示した方法と同様にして、前半の321塩基がORFになるように下記の2つのプライマー(配列番号7と8):
5'-GCAGGCCTAATACGACTCACTATAGGGATCCAAATGGAAGACGCCAAAAACATAAAGAA-3'(配列番号7)
5'-(T)50-CGAGCTCGAGATTTTAGTTCGCGGGCGCAACTGCAACTCCGAT-3'(配列番号8)
を設計し、PCRによって鋳型用DNA断片を得た。
【0037】
実施例3 濃縮サイクルに伴う翻訳活性の変化
キャップとポリ(A)鎖をもつmRNAの5'UTRにランダム配列を導入した構築物を用いて濃縮サイクルを行い、そのサイクルに伴う翻訳活性の変化を測定した。その結果を図3Aに示す。図中、縦軸は35S-Cysの取り込みによって測定した翻訳活性を示し、横軸は濃縮サイクルの回数を示す。翻訳活性の測定は35S-Cysを含む20μlの小麦胚芽翻訳系を用いて行った。25℃で60分反応させた後、予め98μlの1N NaOHが入ったチューブに、反応液2μl分注した。この溶液を37℃、10分間保温した後、25% TCA/2%カザミノ酸を900μl加え、4℃で1時間冷却した。15,000rpmで5分間遠心した後、上清を除き、5%TCAで濯いだ。このチューブに200μlの液体シンチレーターを加え、液体シンチレーションカウンターで放射能を計測した(Herwynen, J.F.V.およびBeckler, G.S. (1995): In Tymms, M.J. (ed.) In Vitro Transcription and Translation Protocols, Humana Press, Totowa, New Jersey, Vol.37, pp.245-251)。
【0038】
同様に、キャップとポリ(A)鎖をもつmRNAの3'UTRにランダム配列を導入した構築物を用いた結果を図3Bに、またポリ(A)鎖をもちキャップをもたないmRNAの5'UTRにランダム配列を導入した構築物を用いた結果を図3Cに、またポリ(A)鎖をもちキャップをもたないmRNAの3'UTRにランダム配列を導入した構築物を用いた結果を図3Dにそれぞれ示した。
【0039】
その結果、キャップ構造をもつmRNAについて、3'UTRについては活性の上昇が見られなかったのに対し、5'UTRにおいて初期集団に対して約3倍の翻訳活性の上昇したmRNA集団を分離することができた(図3AとBの比較)。またキャップ構造をもたないmRNAについて、3'UTRにランダム配列を導入したものでは約3倍の翻訳活性の上昇が見られた(図3CとDの比較)。
【0040】
実施例4 翻訳が促進された mRNA 集団の配列と翻訳活性
キャップとポリ(A)鎖をもつmRNAの5'UTRにランダム配列を導入した構築物から得られた高活性集団の翻訳促進配列の配列決定と翻訳活性を測定した(図4A)。また、ポリ(A)鎖をもちキャップをもたないmRNAの3'UTRにランダム配列を導入した構築物から得られた高活性集団の翻訳促進因子の配列決定と翻訳活性を測定した(図4B)。活性の測定は実施例3におけるのと同様に行った。
その結果、分離した高活性集団から得られたクローンの配列に共通する性質は一見してみあたらなかった。このことはあるmRNAの翻訳を促進するUTR配列は一通りではないことを示している。
【0041】
【発明の効果】
in vitro進化によって生じた配列を介する新たな制御機構の出現は、ある意味で、ウイルスが宿主細胞の中で増殖するために独自の遺伝子発現制御機構を獲得してきたことに似ている。このような観点から、本発明によって翻訳制御配列を包括的、系統的に解析することで、将来出現する可能性がある病原性ウイルスに対する予防的な研究に役立つ可能性がある。
【0042】
タンパク質も機能を変えずに発現量を調節するために5'UTRや3'UTRによって翻訳効率、遺伝子発現を制御することは進化上有効な手段であった。しかし、これまで翻訳エンハンサーや翻訳リプレッサーとして知られているUTR制御配列は、レポーター遺伝子などを用いた他の遺伝子のUTRに導入した実験ではその効果の程度が大きく異なる、全く働かない、逆の効果がでるなど、様々な例が知られている。その理由として、mRNA分子は一本鎖の柔軟な構造をもっているため、塩基配列が変化することによって分子内塩基の相互作用に由来するその立体構造もまた同様に変化するためと、考えられる。これに対して、本発明では、たとえmRNAがどのような立体構造や分子内相互作用をとろうとも、そのmRNAの翻訳効率を確実に上昇、下降させる配列を得ることが可能である。そのため、本発明は、目的遺伝子の発現を翻訳段階において人為的に確実に操作するという新しい技術領域を切り開くものである。
【0043】
本発明をin vivo翻訳系に適用した場合には、例えば植物組織においては、光、ホルモン、組織特異的な発現、動物細胞では、組織、発生分化の過程、ホルモンなど、様々な外的刺激を受けた環境下において特異的な翻訳制御を目的遺伝子のmRNAに付与し、人為的な遺伝子制御を可能にすると予測される。
【0044】
【配列表】
【0045】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:プライマー
配列番号2:プライマー
配列番号3:プライマー
配列番号4:プライマー
配列番号5:プライマー
配列番号6:プライマー
配列番号7:プライマー
配列番号8:プライマー
配列番号9:翻訳制御因子
配列番号10:翻訳制御因子
配列番号11:翻訳制御因子
配列番号12:翻訳制御因子
配列番号13:翻訳制御因子
配列番号14:翻訳制御因子
配列番号15:翻訳制御因子
配列番号16:翻訳制御因子
配列番号17:翻訳制御因子
配列番号18:翻訳制御因子
配列番号19:翻訳制御因子
配列番号20:翻訳制御因子
配列番号21:翻訳制御因子
配列番号22:翻訳制御因子
配列番号23:翻訳制御因子
配列番号24:翻訳制御因子
配列番号25:翻訳制御因子
配列番号26:翻訳制御因子
配列番号27:翻訳制御因子
配列番号28:翻訳制御因子
【図面の簡単な説明】
【図1】UTRにランダム配列を導入したGUS mRNA の作製。
【図2】小麦胚芽in vitro翻訳系での翻訳反応。図中の網掛けの四角はランダム配列を、縞の四角は2回目以降のサイクルでPCRプライマーがハイブリダイズする領域を示す。
【図3】濃縮サイクルに伴う翻訳活性の変化。図3Aはキャップとポリ(A)鎖をもつmRNAの5'UTRにランダム配列を導入した構築物、図3Bはキャップとポリ(A)鎖をもつmRNAの3'UTRにランダム配列を導入した構築物、図3Cはポリ(A)鎖をもちキャップをもたないmRNAの5'UTRにランダム配列を導入した構築物、図3Dはポリ(A)鎖をもちキャップをもたないmRNAの3'UTRにランダム配列を導入した構築物の場合をそれぞれ示す。白丸は翻訳活性の高いまたはほぼ未変化の構築物を、また黒塗りの四角は翻訳活性の低い構築物をそれぞれ示す。
【図4】翻訳が促進されたmRNA集団の翻訳促進因子の配列と翻訳活性。図4Aはキャップとポリ(A)鎖をもつmRNAの5'UTRにランダム配列を導入した構築物、図4Bはポリ(A)鎖をもちキャップをもたないmRNAの3'UTRにランダム配列を導入した構築物の場合を示す。
Claims (9)
- 非翻訳領域(UTR)に翻訳制御因子候補であるランダムオリゴヌクレオチド配列が導入されたmRNAを合成し、未処理のものと比べて翻訳効率に変化の生じたmRNAを選択することを含む、mRNAの潜在的翻訳制御因子をスクリーニングする方法であって、(a)UTRに多様な翻訳制御配列候補を含むmRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系に導入してポリソームを生成する工程、(b)翻訳効率に変化の生じたmRNAを含むポリソームを分離する工程、(c)前記分離されたポリソームからRNAを抽出する工程、(d)前記RNAを鋳型にしてDNA断片を合成し、このDNA断片を鋳型にしてmRNAを合成する工程、(e)前記合成されたmRNAについて前記工程(a)〜(d)を2回以上繰り返し、翻訳効率に変化の生じた実質的に純粋なmRNAを単離する工程、及び(f)前記単離されたmRNAについて、その中に導入された潜在的翻訳制御因子の配列を決定する工程を含む前記方法。
- 前記合成されたmRNAが、キャップ構造またはポリ(A)鎖、あるいはそれらの両方を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記in vitro翻訳系が無細胞タンパク質合成系であり、前記in vivo翻訳系が真核細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記工程(b)でのポリソームの分離が該ポリソームのサイズに基づいて行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記の翻訳効率に変化の生じたmRNAが未処理のものと比べて翻訳効率が高いものまたは低いものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- mRNAの潜在的翻訳制御因子をスクリーニングする方法であって、(a)5'非翻訳領域(5'UTR)に翻訳制御因子候補であるランダムオリゴヌクレオチド配列が導入された、かつキャップ構造およびポリ(A)鎖配列を含む、mRNAを合成する工程、(b)5'UTRに多様な翻訳制御配列候補を含む工程(a)からのmRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系に導入してポリソームを生成する工程、(c)工程(b)で生成した天然型と比べて翻訳効率の高いmRNAを含むポリソームをサイズに基いて分離する工程、(d)工程(c)で分離されたポリソームからRNAを抽出する工程、(e)工程(d)で抽出されたRNAを鋳型にしてDNA断片を合成し、さらにこのDNA断片を鋳型にしてmRNAを合成する工程、(f)工程(e)で得られたmRNAについて工程(b)〜(e)を少なくとも1回繰り返し、未処理のものと比べて翻訳効率の高いまたは低い実質的に純粋なmRNAを単離する工程、および(g)工程(f)で単離されたmRNAについて、その中に導入された潜在的翻訳制御因子の配列を決定する工程を含む上記方法。
- mRNAの潜在的翻訳制御因子をスクリーニングする方法であって、(a)3'非翻訳領域(3'UTR)に翻訳制御因子候補であるランダムオリゴヌクレオチド配列が導入された、かつキャップ構造を含まずポリ(A)鎖配列を含む、mRNAを合成する工程、(b)3'UTRに多様な翻訳制御配列候補を含む工程(a)からのmRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系に導入してポリソームを生成する工程、(c)工程(b)で生成した天然型と比べて翻訳効率の高いmRNAを含むポリソームをサイズに基いて分離する工程、(d)工程(c)で分離されたポリソームからRNAを抽出する工程、(e)工程(d)で抽出されたRNAを鋳型にしてDNA断片を合成し、さらにこのDNA断片を鋳型にしてmRNAを合成する工程、(f)工程(e)で得られたmRNAについて工程(b)〜(e)を少なくとも1回繰り返し、未処理のものと比べて翻訳効率の高いまたは低い実質的に純粋なmRNAを単離する工程、および(g)工程(f)で単離されたmRNAについて、その中に導入された潜在的翻訳制御因子の配列を決定する工程を含む上記方法。
- 翻訳効率の高い天然型mRNAの翻訳制御因子をスクリーニングする方法であって、(a) 非翻訳領域に多様な翻訳制御配列を含むmRNA集団をin vitroまたはin vivo翻訳系にかけてポリソームを生成する工程、(b) 工程(a)で生成した翻訳効率の高いmRNAを含むポリソームをサイズに基いて分離する工程、(c) 工程(b)で分離されたポリソームからRNAを抽出する工程、(d) 工程(c)で抽出されたRNAを鋳型にしてDNA断片を合成し、さらにこのDNA断片を鋳型にしてmRNAを合成する工程、(e) 工程(d)で得られたmRNAについて工程(a)〜(d)を2回以上繰り返し、翻訳効率の高い実質的に純粋なmRNAを単離する工程、および(f) 工程(e)で単離されたmRNAの翻訳制御因子の配列を決定する工程を含む上記方法。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のスクリーニング方法を使用することによって未処理のものと比べて翻訳効率に変化の生じたmRNAを単離する方法。
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