JP4721541B2 - 光学活性プロポキシニトロベンゼン誘導体の製造方法 - Google Patents

光学活性プロポキシニトロベンゼン誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、抗菌性化合物の製造に有用な光学活性プロポキシニトロベンゼン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
S−(−)−9−フルオロ−3−メチル−10−(4−メチル−1−ピペラジニル)−7−オキソ−2,3−ジヒドロ−7H−ピリド[1,2,3−de][1,4]ベンゾオキサジン−6−カルボン酸(レボフロキサシン、LVFX;特開昭62−252790号公報)は優れた合成抗菌剤として知られている。
この合成抗菌剤の製造中間体として式(IV)
【化8】
Figure 0004721541
(式中、X1およびX2は、各々独立してハロゲン原子を意味する。)で表される化合物(以下、化合物(IV)と表し、他の番号で表される化合物も同様に表す。)は有用であり、下記の製法にて製造可能なことが知られている(特開平1−250369号および特開平2−723号)。
【化9】
Figure 0004721541
【0003】
すなわち、化合物(IV)は、市販の光学活性な乳酸エステル(A)の水酸基をテトラヒドロピラニル基で保護して得た化合物(B)のエステル基を還元して化合物(C)を得、これを水素化ナトリウム存在下、化合物(III)と処理して化合物(D)を得、その後、テトラヒドロピラニル基を除去して化合物(E)を得た後、水酸基をメタンスルホニル化することにより製造されている。
この製造方法においては、テトラヒドロピラニル基の導入および除去が必要であって、そのために工程数が増え、その結果、廃棄物量も増大するため、効率的でなく、地球環境への負荷という観点からも好ましい製造方法ではなくなってきている。
【0004】
また、 式(II)
【化10】
Figure 0004721541
(式中、R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数1から6のハロゲノアルキル基を意味する。)で表される化合物は、市販されている光学活性な乳酸エステルの水酸基をスルホニル化後、リチウムアルミニウムハイドライドやアルミニウムハイドライド等の水素化アルミニウム化合物により還元することにより得られることが知られている(Acta.Chemica.Scandinavica B35,357−366(1981),J.Org.Chem.,46,3348−3349(1981)参照)。この化合物(II)は、さらに光学活性なメチルオキシランに導かれ、グリニャール試薬等の求核試薬による位置選択的なオキシラン環の開裂を鍵反応として天然物合成等に利用されている(Can.J.Chem.,57,233−235(1979),Synlett,805−808(1994)等)。しかしながら、化合物(II)自体をそのまま出発物質として光学活性化合物の合成に応用した例は知られていない。これは、化合物(II)が塩基性条件下で不安定でポリマー化しやすい性質を有し(J.Org.Chem.,46,3348−3349(1981))、一般的には光学活性体の出発原料として不適当であると考えられていたからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、抗菌性化合物の製造に有用な光学活性なプロポキシニトロベンゼン誘導体およびその中間体の効率的な製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、塩基として炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩を用いることにより、光学活性な2−スルホニロキシ−1−プロパノール(化合物(II))を1,2,3−トリハロゲノニトロベンゼン誘導体(化合物(III))との分子間反応に適用でき、短工程かつ高収率にてプロポキシニトロベンゼン誘導体を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、式(I)
【化11】
Figure 0004721541
(式中、R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数1から6のハロゲノアルキル基を意味し、R2は、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を意味する。)
で表される化合物を還元剤で処理して式(II)
【化12】
Figure 0004721541
(式中、R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数1から6のハロゲノアルキル基を意味する。)
で表される化合物を得、この化合物と、式(III)
【化13】
Figure 0004721541
(式中、X1、X2およびX3は、各々独立してハロゲン原子を意味する。)
で表される化合物とを塩基存在下で処理することを特徴とする式(IV)
【化14】
Figure 0004721541
(式中、X1およびX2は、各々独立してハロゲン原子を意味する。R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数1から6のハロゲノアルキル基を意味する。)
で表される化合物の製造方法;
塩基がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩である上記の製造方法;
塩基が炭酸カリウムである上記の製造方法;
還元剤が水素化ホウ素金属化合物である上記の製造方法;
還元剤が水素化ホウ素ナトリウムである上記の製造方法;
上記還元剤による処理を非アルコール系溶媒中、一級アルコール類存在下で行うことを特徴とする上記の製造方法;
一級アルコール類がメタノールである上記の製造方法;
1が、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ニトロ基、カルバモイル基およびシアノ基からなる群から選ばれる1または2以上の原子および/または置換基を有するフェニル基または炭素数1から6のアルキル基である上記の製造方法;
1がパラトリル基またはメチル基である上記の製造方法;
2が炭素数1から6のアルキル基である上記の製造方法;
2がメチル基である上記の製造方法;
式(II)
【化15】
Figure 0004721541
で表される化合物と、式(III)
【化16】
Figure 0004721541
で表される化合物とを塩基存在下で処理することを特徴とする、式(IV)
【化17】
Figure 0004721541
で表される化合物の製造方法;
塩基がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩である上記の製造方法;
塩基が炭酸カリウムである上記の製造方法;
1が、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ニトロ基、カルバモイル基およびシアノ基からなる群から選ばれる1または2以上の原子および/または置換基を有するフェニル基または炭素数1から6のアルキル基である上記の製造方法;
1がパラトリル基またはメチル基である上記の製造方法;
2が炭素数1から6のアルキル基である上記の製造方法;
2がメチル基である上記の製造方法;
等に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、化合物(I)を還元剤で処理し、得られた化合物(II)と化合物(III)とを塩基存在下で処理して光学活性プロポキシニトロベンゼン誘導体に導くものである。
【0009】
本発明による化合物(I)から化合物(IV)への製造工程図を下記に示す。
【化18】
Figure 0004721541
【0010】
反応工程中の置換基について説明する。
1、X2およびX3は、各々独立してハロゲン原子を意味するが、ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
1は、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、アルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を意味する。アルキル基としては直鎖状、分岐状、環状のいずれをも含むが、メチル基が好ましい。ハロゲノアルキル基としては直鎖状、分岐状、環状のいずれをも含み、ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素のいずれをも1または2以上有していてもよいが、トリフルオロメチル基が好ましい。フェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ニトロ基、カルバモイル基、またはシアノ基等が挙げられるが、メチル基が好ましい。
2は、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を意味する。アルキル基としては直鎖状、分岐状、環状のいずれをも含むが、メチル基、エチル基、またはイソブチル基が好ましい。
【0011】
なお、上記工程図では片方の異性体のみの製法を示したが、化合物(II)の立体配置が逆のものを使用すれば、もう一方の異性体も同様に合成することができる。また、化合物(II)のラセミ体を利用すれば、化合物(IV)のラセミ体も得ることができる。
【0012】
以下に、本発明を各工程毎に詳細に述べる。
【0013】
工程(a)
工程(a)は、化合物(II)
【化19】
Figure 0004721541
を得る工程である。
【0014】
化合物(II)は、化合物(I)
【化20】
Figure 0004721541
を還元剤で処理することにより得られる。
【0015】
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素マグネシウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素系還元剤が挙げられる。このうちでは、水素化ホウ素金属化合物が好ましく、さらに水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
【0016】
還元剤の使用量は、化合物(I)に対して1から5倍モルの範囲でよく、好ましくは1.1から2倍モル程度である。
【0017】
溶媒としては、n−ヘキサン、n−ペンタン、c−ヘキサン、c−ペンタン等の炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル(IPE)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン(EDC)等のハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられる。この他に、酢酸エステル類等のエステル系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は単独でもよいが複数種を組み合わせてもよい。
【0018】
これらの溶媒のうち、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、またはジイソプロピルエーテル(IPE)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)等のエーテル系溶媒が好ましい。
【0019】
これらの溶媒を使用して水素化ホウ素金属化合物で還元する場合は、一級アルコール類を添加することが好ましい。一級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが好ましい。
【0020】
添加する一級アルコール類の使用量は、化合物(I)に対して3から15倍モルの範囲でよく、好ましくは4から8倍モル程度である。
【0021】
一級アルコールは、当初から溶媒に添加してもよく、または溶媒に水素化ホウ素金属化合物を懸濁させた後に添加してもよく、添加の順序は特に限定されないが、当初から添加しておく場合は、反応が急激に進行しないように水素化ホウ素金属化合物を分割して反応系に投入する等の措置が必要になる場合もある。
反応温度は使用する溶媒により異なるが、−78℃から溶媒の沸点でよく、好ましくは10℃から溶媒の沸点である。
【0022】
反応時間は1から24時間の範囲でよく、好ましくは2から16時間の範囲である。
【0023】
反応終了後に反応液へ水を加えて有機溶媒で抽出し、有機層を水で洗浄し、必要に応じて飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄した後に溶媒を留去し、必要に応じて残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけて化合物(II)を単離することができる。または、反応終了後の反応液へ必要に応じて有機溶媒を添加して水で洗浄し、必要に応じて飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄した後、そのまま次工程に進むことも可能である。
【0024】
工程(b)
工程(b)は、化合物(IV)
【化21】
Figure 0004721541
を得る工程である。
【0025】
化合物(IV)は、化合物(II)
【化22】
Figure 0004721541
と化合物(III)
【化23】
Figure 0004721541
を溶媒中、塩基にて処理することにより得ることができる。
【0026】
塩基としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム等の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩を用いることができる。
【0027】
これらの塩基のうち、アルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩が好ましく、さらに炭酸カリウムが好ましい。
【0028】
塩基の使用量は通常、化合物(II)に対して0.1から15倍モルの範囲でよく、好ましくは1から3倍モル程度である。
【0029】
塩基存在下での処理に際しては相関移動触媒を加えてもよく、相関移動触媒としてはテトラノルマルヘキシルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルフェニルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート等の四級アンモニウム塩;18−クラウン−6、15−クラウン−5等のクラウンエーテル等が挙げられる。
【0030】
溶媒は各種の溶媒を使用することができる。これらのうちで炭化水素系としては、n−ヘキサン、n−ペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。アルコール系としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノール、t―ブタノールが挙げられる。エーテル系としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル(IPE)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。アミド系としてはジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素系としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン(EDC)等が挙げられる。この他に、水、アセトニトリル、酢酸エステル類、アセトン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独でもよいが複数種を組み合わせてもよい。
【0031】
これら溶媒のうち、酢酸エチル等の酢酸エステル類およびジイソプロピルエーテル(IPE)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)等のエーテル系が好ましい。
【0032】
反応温度は塩基の種類や使用する溶媒により異なるが、−78℃から溶媒の沸点で、好ましくは室温から60℃である。
【0033】
反応時間は1から24時間の範囲でよく、好ましくは2から16時間の範囲である。
【0034】
反応終了後に反応液へ水を加え、有機溶媒で抽出し、有機層を水で洗浄後、溶媒を留去し、必要に応じて残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけて化合物(IV)を単離することができる。または、反応終了後の反応液に必要に応じて有機溶媒を添加して水で洗浄し、そのまま次工程に進むことも可能である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例および参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
なお、得られた化合物の絶対配置は、別途合成した絶対配置が既知のサンプルと比較して決定されたものである。
【0037】
また、光学純度(%ee)はHPLCに付して測定しているが、本発明の実施例化合物についてはHPLCによる光学純度の測定が困難であった。そこで、光学純度が測定可能な既知化合物に導いて光学純度を測定した(参考例1〜6)。
【0038】
実施例1:(R)−2−メシロキシ−1−プロパノール
氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム(4.09g)をトルエン(62ml)に懸濁し、その溶液に(R)−2−メシロキシプロピオン酸メチル(16.4g,>97%ee)のトルエン溶液(20ml)を加えた。反応液にメタノール(MeOH,17.5ml)を加え、そのままの温度にて3時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を水、飽和塩化アンモニウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、油状物質として標題化合物(10.3g)を得た。
1H−NMR(270MHz,CDCl3)δ:1.35(d,3H,J=5.1Hz)、2.15(brs,1H)、3.07(s,3H)、3.67−3.79(m,2H)、4.80−4.93(m,1H)
【0039】
実施例2:(R)−2−メシロキシ−1−プロパノール
氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム(4.09g)をメチルt−ブチルエーテル(MTBE,62ml)に懸濁し、その溶液に(R)−2−メシロキシプロピオン酸メチル(16.4g,>97%ee)のMTBE溶液(20ml)を加えた。反応液にMeOH(17.5ml)を加え、そのままの温度にて3時間攪拌した。反応液に水を加え、MTBEにて抽出した。有機層を水、飽和塩化アンモニウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、油状物質として標題化合物(10.8g)を得た。なお、スペクトルデータは実施例1で得たものと一致した。
【0040】
実施例3:(R)−3,4−ジフルオロ−2−(2−メシロキシプロポキシ)ニトロベンゼン
室温にて、(R)−2−メシロキシ−1−プロパノール(3.08g)および2,3,4−トリフルオロニトロベンゼン(1.77g)を酢酸エチル(18ml)に溶解し、炭酸カリウム(2.76g)を加え、16時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、油状物質として標題化合物(2.73g)を得た。
1H−NMR(270MHz,CDCl3)δ:1.54(d,3H,J=6.8Hz)、3.08(s,3H)、4.28−4.44(m,2H)、5.06−5.20(m,1H),7.06−7.18(m,1H),7.69−7.76(m,1H)
【0041】
実施例4:(R)−3,4−ジフルオロ−2−(2−メシロキシプロポキシ)ニトロベンゼン
室温にて、(R)−2−メシロキシ−1−プロパノール(3.08g)および2,3,4−トリフルオロニトロベンゼン(1.77g)をMTBE(36ml)に溶解し、炭酸カリウム(5.52g)を加え、20時間攪拌した。反応液に水を加え、MTBEにて抽出した。有機層を水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、油状物質として標題化合物(1.98g)を得た。なお、スペクトルデータは実施例3で得たものと一致した。
【0042】
実施例5:(R)−3,4−ジフルオロ−2−(2−メシロキシプロポキシ)ニトロベンゼン
室温にて、(R)−2−メシロキシ−1−プロパノール(3.08g)および2,3,4−トリフルオロニトロベンゼン(1.77g)をMTBE(36ml)に溶解し、炭酸セシウム(6.52g)を加え、20時間攪拌した。反応液に水を加え、MTBEにて抽出した。有機層を水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、油状物質として標題化合物(1.96g)を得た。なお、スペクトルデータは実施例3で得たものと一致した。
【0043】
参考例1:(R)−3,4−ジフルオロ−2−(2−メシロキシプロポキシ)アニリン
室温にて、(R)−3,4−ジフルオロ−2−(2−メシロキシプロポキシ)ニトロベンゼン(1.56g)を酢酸エチル(16ml)に溶解し、5%Pd−C(156mg)を加え、水素雰囲気下、16時間攪拌した。Pd−Cを濾去後、得られた濾液を減圧下濃縮し、油状物質として標題化合物(1.41g)を得た。なお、得られた粗体は精製せずに次工程に用いた。
1H−NMR(270MHz,CDCl3)δ:1.61(d,3H,J=4.3Hz)、3.10(s,3H)、3.80−4.00(brs,2H)、4.08−4.24(m,2H)、5.09−5.21(m,1H),6.35−6.42(m,1H),6.66−6.77(m,1H)
【0044】
参考例2:(R)−3,4−ジフルオロ−2−(2−メシロキシプロポキシ)アニリン
室温にて、(R)−3,4−ジフルオロ−2−(2−メシロキシプロポキシ)ニトロベンゼン(1.56g)をエタノール(16ml)に溶解し、5%Pd−C(156mg)を加え、水素雰囲気下、16時間攪拌した。Pd−Cを濾去後、得られた濾液を減圧下濃縮し、油状物質として標題化合物(1.41g)を得た。なお、得られた粗体は精製せずに次工程に用いた。スペクトルデータは参考例1で得たものと一致した。
【0045】
参考例3:2,3−ジフルオロー6−(2,2−ジエトキシカルボニルエテニル)アミノ−[(R)−2−メタンスルホニルオキシプロポキシ]ベンゼン
室温にて、(R)−3,4−ジフルオロ−2−(2−メシロキシプロポキシ)アニリン(1.41g)およびジエチルエトキシメチレンマロネート(1.14g)を酢酸エチル(7ml)に溶解した。100℃にて溶媒を留去しながら、1時間攪拌した。さらに微減圧にて発生するエタノールを除去しながら30分間攪拌した。反応混合物を放冷後、反応液にイソプロパノール(6ml)を加えた。析出した結晶を冷却したイソプロパノールにて洗浄しながら濾取し、標題化合物(1.94g,97.5%ee)を白色結晶として得た。
融点:77−80℃
1H−NMR(270MHz,CDCl3)δ:1.22−1.42(m,6H)、1.58(d,3H,J=6.5Hz)、3.13(s,3H)、4.16−4.42(m,6H)、5.10−5.22(m,1H),6.91−6.99(m,1H),8.41(d,1H,J=13.5Hz),11.25(d,1H,J=13.5Hz)
【0046】
参考例4:2,3−ジフルオロー6−(2,2−ジエトキシカルボニルエテニル)アミノ−[(R)−2−メタンスルホニルオキシプロポキシ]ベンゼン
100℃にて、(R)−3,4−ジフルオロ−2−(2−メシロキシプロポキシ)アニリン(1.41g)およびジエチルエトキシメチレンマロネート(1.14g)を無溶媒にて1時間攪拌した。さらに微減圧にて発生するエタノールを除去しながら30分間攪拌した。反応混合物を放冷後、反応液にイソプロパノール(6ml)を加えた。析出した結晶を冷却したイソプロパノールにて洗浄しながら濾取し、標題化合物(1.98g,97.5%ee)を白色結晶として得た。なお、各種スペクトルデータは参考例3にて得られたものと完全に一致した。
【0047】
参考例5:ジエチル2−[[(3S)−7,8−ジフルオロ−3,4−ジヒドロ−3−メチル−2H−[1,4]ベンゾオキサジン−4−イル]メチレン]マロネート
室温にて2,3−ジフルオロー6−(2,2−ジエトキシカルボニルエテニル)アミノ−[(R)−2−メタンスルホニルオキシプロポキシ]ベンゼン(1g,97.5%ee)および硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム(20mg)をトルエン(12ml)にて溶解し、3N水酸化カリウム水溶液(2ml)を加えた。そのままの温度にて、3時間攪拌した。反応液を分離後、有機層を1N塩酸、水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、黄色油状物質として標題化合物(769.5mg,97.5%ee)を得た。なお、各種スペクトルデータは、特開平1−250369号記載のものと一致した。
【0048】
参考例6:ジエチル2−[[(3S)−7,8−ジフルオロ−3,4−ジヒドロ−3−メチル−2H−[1,4]ベンゾオキサジン−4−イル]メチレン]マロネート
室温にて2,3−ジフルオロー6−(2,2−ジエトキシカルボニルエテニル)アミノ−[(R)−2−メタンスルホニルオキシプロポキシ]ベンゼン(1g,97.5%ee)およびテトラn−ブチルアンモニウムブロマイド(20mg)をトルエン(12ml)にて溶解し、3N水酸化カリウム水溶液(2ml)を加えた。そのままの温度にて、3時間攪拌した。反応液を分離後、有機層を1N塩酸、水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、黄色油状物質として標題化合物(748.4mg,97.5%ee)を得た。なお、各種スペクトルデータは、特開平1−250369号記載のものと一致した。

Claims (18)

  1. 式(I)
    Figure 0004721541
    (式中、R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数1から6のハロゲノアルキル基を意味し、R2は、水素原子または炭素数1から6のアルキル基を意味する。)
    で表される化合物を還元剤で処理して式(II)
    Figure 0004721541
    (式中、R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数1から6のハロゲノアルキル基を意味する。)
    で表される化合物を得、この化合物と、式(III)
    Figure 0004721541
    (式中、X1、X2およびX3は、各々独立してハロゲン原子を意味する。)
    で表される化合物とを塩基存在下で処理することを特徴とする式(IV)
    Figure 0004721541
    (式中、X1およびX2は、各々独立してハロゲン原子を意味する。R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数1から6のハロゲノアルキル基を意味する。)
    で表される化合物の製造方法。
  2. 塩基がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩である請求項1に記載の製造方法。
  3. 塩基が炭酸カリウムである請求項1に記載の製造方法。
  4. 還元剤が水素化ホウ素金属化合物である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 還元剤が水素化ホウ素ナトリウムである請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 上記還元剤による処理を非アルコール系溶媒中、一級アルコール類存在下で行うことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の製造方法。
  7. 一級アルコール類がメタノールである請求項6に記載の製造方法。
  8. 1が、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ニトロ基、カルバモイル基およびシアノ基からなる群から選ばれる1または2以上の原子および/または置換基を有するフェニル基または炭素数1から6のアルキル基である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 1がパラトリル基またはメチル基である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 2が炭素数1から6のアルキル基である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 2がメチル基である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 式(II)
    Figure 0004721541
    (式中、R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数1から6のハロゲノアルキル基を意味する。)
    で表される化合物と、式(III)
    Figure 0004721541
    (式中、X1、X2およびX3は、各々独立してハロゲン原子を意味する。)
    で表される化合物とを塩基存在下で処理することを特徴とする、式(IV)
    Figure 0004721541
    (式中、X1およびX2は、各々独立してハロゲン原子を意味する。R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数1から6のハロゲノアルキル基を意味する。)
    で表される化合物の製造方法。
  13. 塩基がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩である請求項12に記載の製造方法。
  14. 塩基が炭酸カリウムである請求項12に記載の製造方法。
  15. 1が、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロゲノアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ニトロ基、カルバモイル基およびシアノ基からなる群から選ばれる1または2以上の原子および/または置換基を有するフェニル基または炭素数1から6のアルキル基である請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の製造方法。
  16. 1がパラトリル基またはメチル基である請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 2が炭素数1から6のアルキル基である請求項12から請求項16のいずれか1項に記載の製造方法。
  18. 2がメチル基である請求項12から請求項16のいずれか1項に記載の製造方法。
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